大塚角満の ゲームを“読む!”
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先日こっそりと、「KONAMIから発売中の定番野球ゲーム『実況パワフルプロ野球2011』に激ハマりしている!」という内容の日記をアップしましたが、気づいてもらえたでしょうか? 「角満のヤツ、ちんだと思っていた」と都市伝説に踊らされていた人も、これを読んで「角満、健在ナリ」を知ってくれたと思います。ぶっちゃけ、会社ではかなりヘロっていますが、一歩会社を出れば楽しくゲームで遊ぶ日々を送っているのでありますよ。
で、『パワプロ2011』だ。わかっちゃいたけどこのゲーム、神の良薬なのか悪魔の作りし劇薬なのかわからない、とんでもない中毒性を持った作品だったよ……。
さてここで、昔からの俺のエッセイの愛読者の方々はこんなことを思うだろう。「角満がパワプロ? なんか似合わねー」とか「パワプロ?? なんかの間違いじゃないの」とかとか……。でも、角満本人に言わせるとちっとも意外じゃなく、どっちかというと「いつか書く気がしていた」、「機を狙っていた」という感じらしいのです。
というのもじつは俺、懐かしのニンテンドウ64用ソフト『実況パワフルプロ野球4』を一生遊んでいたという知られざる過去がある。このソフトが発売されたのは1997年なのでいまから14年も前(!)のことになるのだが、当時25歳の俺はいまと同じように睡眠時間を削って『パワプロ4』に没頭し、サクセスモードで超人レベルの選手を作っては大好きな広島東洋カープに送り込んでペナントレースで優勝させ、「やったあ!! やっぱ広島最強!!」とひとりで喜んでいたのである。確実に、丸2年くらいは遊んでいたと思う。
しかし、このときにハマりすぎてお腹いっぱいになってしまったのか、俺はこのシリーズから足が遠のいてしまった。遊べば超絶おもしろいことはわかっていたくせに、「いまはやめておこう……」と思ってしまったのだ。
このおかしな感情、恋愛のソレとちょっと似ている。ホラ、あるでしょう。「好きになりすぎるのが怖い……」とか「これ以上好きになるわけにはいかないんだよ><」なんて思うことが。そんな感情に押されて、俺は10年以上の長きにわたって『パワプロ』から遠ざかることになるのだ。
そして2011年。俺は週刊ファミ通の副編業務に専念することになり、1号すべてのページをしっかりとチェックしなければいけない立場となった。紹介記事だろうが特集だろうが穴が開くほど読み込まなければいけないので、ゲームに関してはものすごく惚れっぽい俺はうれしい悲鳴を上げる日々となる。だって記事を読むたびに「このゲーム、超おもしろそう! 買わなきゃ!!」ってなっちゃうんだもの。その代表例が『最後の約束の物語』や『ダンボール戦機』だ。ニュースチームにいたときだったら、もしかしたらスルーしていたかもしれないこれらの良作に触れることができて、俺のホクホク顔は極まった。
そんなある日、ファミ通編集者のジャスト野島が、何日も寝ていないと思われるゾンビのような表情をしながら、俺に“あるゲーム”の攻略記事の束をドサリと手渡した。
「チェックお願いします……」
そうつぶやき、ジャスト野島は事切れる(寝た、ってことね。念のため)。俺は、疲労困憊で崩れ落ちるほど身を削って作られた記事の束を、ちょっと涙含みのまなざしで見つめた。
“『実況パワフルプロ野球2011』熱狂の夏攻略−−”
その記事のトビラには、そんな文言が踊っていた。
そしてこの記事との出会いが、俺と『パワプロ』の14年にわたるすれ違い(?)を修復する、格好の接着剤となったのである。
というわけでしばらくのあいだ、『実況パワフルプロ野球2011』のプレイ日記を綴らせていただきます。正直、かな〜りショッパイ記事の連続になると思いますが、「角満のことだから想定済み」という寛大な気持ちで読んでもらえると幸いです……。
ここを更新しなくなってしばらく経ちますが、入院したり死んだりしているわけではありません。もちろん、群馬の実家に帰って引きこもったり、ましてやリアルハンターになってイノシシを追い回しているわけでもありません。単純にやたらと忙しくて、書きたいことがあっても文章に書き起こせていないだけなんです(と言いつつ、アメブロは更新してるけど)。
でもじつは沈黙していたこの間に、ちょっと無理してでも遊びたいゲームにドカドカとぶち当たってしまったので、近況報告もかねて最近のワタクシめのゲームライフを記しておきましょう。
ここのところ俺は、ずーっと寝不足である。増刊号やら合併号やらが立て続けに押し寄せてきている週刊ファミ通の制作業務が地獄の様相を呈している……というのもあるが、それよりも何よりも“イケないあのコ”が俺を寝かせてくれないのが大きい。「今日は寝かせないわヨ(ハート)」と言われ、断る口を俺は持っていない。
ここで言う“イケないあのコ”とは、もちろんゲームである。じつは直近の2ヵ月ほどのあいだに立て続けに俺好みのゲームが発売されてしまい、「このクソ忙しいさなかにこんなコたちに言い寄られて……。いったい俺はどうすりゃいいの……><」とうれしい悲鳴を上げていたのだ。そのテンパり具合たるやヒドいもので、自分の誕生日と結婚式と葬式が同日に集中してしまったようなもの。これに対処するにはけっきょく「睡眠時間を削るしかない」ってことで、俺は深夜に帰宅してからも明け方まで、ワイワイギャアギャアと騒ぎながらゲームに興じているのです。
ではいったいどんなゲームが、俺の睡眠時間を侵食しているのか? ここでドドンと発表してしまおう。どれもこれも、すばらしくよくできた作品ですよ。
・『ダンボール戦機』(6月16日発売・PSP・レベルファイブ)
・『L.A.ノワール』(7月7日発売・PS3、Xbox 360・ロックスター・ゲームス)
・『実況パワフルプロ野球2011』(7月14日発売・PSP、PS3・KONAMI)
あろうことかこの3作品を、俺はいま同時進行しているのである。しかも『パワプロ2011』に至っては、プレイステーション3版とPSP版の両方を手に入れて、シチュエーション別に2作品ともプレイしているという熱狂ぶりなのだ(苦笑)。おかげで、いまの俺の1日の時間割はつぎのようなものとなっている。
・午前8時10分 起床
・午前8時10分〜8時20分 『パワプロ2011』のサクサクセスで選手を1名作成。でもたいがい失敗し、「……ざけんな」の声とともに10分間いじけ寝する。
・午前9時10分 家を出る
・午前9時30分 電車に乗車。“PSP1号機”をカバンから取り出し、『ダンボール戦機』を始める。
ここで“PSP1号機”という単語が出てきたということは、当然“2号機”というものも存在する。そしてそれは、同じ通勤カバンの中に忍ばせてあったりする。なぜか? じつは『ダンボール戦機』のみを遊んでいたときは持ち歩くPSPは1台だけでよかったんだけど、『パワプロ2011』が発売され、並行プレイをしなければならなくなると(べつに無理して同時進行しなくていいんだけど……)、とたんに頻繁なUMDの差し替えが面倒くさくなってしまった。そして「この煩雑さを解決するには、それ専用のPSPを2台持ち歩くしかない」となり、ただでさえ重い通勤カバンにはつねに、2台のPSPがぶち込まれているのである。……まあよくよく考えたら、『パワプロ2011』はダウンロード版を購入すればUMDの抜き差しをすることなく1台のPSPで用が足りたわけだが、そういうことをいまさら言われても困ります。
と、話が脱線してしまった。1日の時間割の続きです。
・午前10時30分〜午後11時 会社でマジメにお仕事。仕事の隙を見て『ダンボール戦機』で遊んだりもする。
・午後11時30分 帰りの電車に飛び乗る。乗り込んだらすぐにPSP2号機を取り出し、『パワプロ2011』のサクサクセスで選手育成。しかしたいがい失敗し、「カンベンしてくれ……」といううめき声を出す。
・午前1時 晩酌をしつつ『L.A.ノワール』のプレイを開始。同時にPSP2号機も起動し、『パワプロ2011』のサクセスモードを始める。
さてここで、『L.A.ノワール』と『パワプロ2011』の同時プレイが可能なの? という疑問が浮かぶかもしれない。とくに『L.A.ノワール』なんて、容疑者の顔の表情をじっくりと観察し、ウソの証言や心の動揺が顔色に現れたのを見逃さずに追及しなければいけないので(このシステムと作り込みはマジでスゲエ!!)、文字通り画面から目が離せなくなる。なので俺は、『パワプロ2011』でひとり選手ができたら『L.A.ノワール』を、『L.A.ノワール』で事件をひとつ解決したら『パワプロ2011』を……てな具合に遊び分けているのだ。
・午前3時 ひとしきり『L.A.ノワール』で遊んだらROMを取り出し、プレイステーション3版の『パワプロ2011』を起動する。
この瞬間から、恐怖の“パワプロ2台同時プレイ”が始まる。プレイステーション3版での選手作成は身内の大学生・S君やHに任せ、俺はひたすらPSPのサクサクセスで選手を作る。なぜこんなことをするのかと言うと、PSP版で作った選手をプレイステーション3版にデータ移行することができるから! つまり我が家では、通常の2倍の効率で選手を製造(?)することができるってわけだ。……でもだからと言って、超優秀な選手が誕生するとは限らない。どうやったら週刊ファミ通の攻略ページに載っているような怪物が作れるんだ……。
・午前?時 空が白んできたら「やべえ!!」と言いつつ就寝。
我ながら、呆れんばかりのゲーム漬けである。でも、ゲームを生業としている視点から見れば、「なんて仕事熱心なんだろう!」と思ってもよさそうな感じもする。だって、この観点に立って1日の時間割を作ったなら、以下のようになるはずだもの。
・午前8時10分 起床
・午前8時10分〜8時20分 仕事
・午前9時10分 家を出る
・午前9時30分 電車に乗車。電車の中でも仕事。
・午前10時30分〜午後11時 会社で仕事。
・午後11時30分 帰りの電車の中でも仕事。
・午前1時〜午前?時 家でひたすら仕事。
うーん、ギネス級の仕事漬けではないか。こいつは“ゲーム無間地獄”ならぬ“ゲーム無間天国”という感じでしょうか(しかもホントはここに、大好きなボードゲームやアプリのプレイも加わる)。
せっかくこんなに遊んでいるんだから、どれかのプレイ日記でも書こうかなあ。
そんなことを思っている、今日このごろです。
USTREAMでの生配信が終わり、イベント会場は安堵の空気で満たされた。……っていうか、俺が安堵した。ここからの“逆鱗日和パーティー”は中継がないので、幾分かは気楽にできるぞ。
パーティーの開催に先立ち、まずは乾杯をすることになった。とはいえ、ここでひとりひとりにコップを配ってビールやジュースを注いで回る……というわけにもいかない。そこで俺と江野本は“あるもの”を作って仕込んでおいたのだ。それがコレだ!!
逆鱗日和印のラムネ〜〜〜!!
乾杯で互いに手にしたものをぶつけたとき、「キンッ!」もしくは「チンッ!」という音が発生しないと興醒めだ……ということになって、急遽ラムネを注文。しかしそれだけじゃ何か物足りないな……と欲張りなふたりは考えて、写真にあるラベルも発注したのである。デザイナーの松岡さんにラベルの体裁を整えてもらい、江野本が超特急でラベル用シール紙に印刷してくれる業者に発注。それをイベント前日の土曜日に、数時間かけて俺と江野本で貼り付けたのだ。
しかしこのラベル、貼るのがむずかしかったのなんの……。
というのも、シール紙の裏にある“受け”の紙に切れ込みがなかったため、貼ろうと思ったら受けとシール部を全部はがしてから作業をする必要があった。ここで、ケータイとかゲーム機の画面にシールを貼るときのことを思い出してほしいんだけど、この状態で貼り始めると絶対に画面とシールの隙間に空気が入ったり、シワが寄ったりしてしまってかっこ悪いこと甚だしいことになってしまう。こういう経験って、あるでしょう。
何枚か失敗したのちに俺はやむなく、受けの紙にカッターで1枚1枚、切れ込みを入れることにした。シール紙まで切断してしまうとエラいことになるので、受けの紙だけに切れ込みが入るよう、慎重に、慎重に……。この作業に半日ほどを費やしてしまったのは言うまでもありません。でも切れ込みが入ったところで、見事にラウンドしているラムネのビンにキレイにラベルを貼るのは至難の業。片側だけ受けの紙を剥がしたラベルを、ゆっくり、力を込めてラムネ瓶に貼る。それが終わったらもう片側のシールを露出されてじりじりと……。ラベルを付けなければいけないラムネ瓶は、100本以上あった。その遥かなる道のりは、アンドロメダ銀河を目指して飛び立った銀河鉄道を思わせるほど果てしないものではなかったか(ちょっとオーバーかな)。
そんな苦労の結晶とも言える、尊いラムネを手に持って乾杯の音頭をとったのは江野本ぎずもでありました。彼女の「かんぱ〜〜〜い!!」という掛け声を合図に、会場のあちこちから「キンッ!」、「キンッ!」という涼しげな金属音が発生したのがわかる。それを聞きながら俺と江野本は口々に、「たいへんだったけど、作ってよかった!!」と言い合った。
ここからはもう、アッと言う間だった。
『3rd』の入ったPSPを手に持ち、来場者の座るテーブルをひとつひとつ回ってギルカの交換と短い会話をさせてもらう俺。ほとんどが初めてお会いする人ではあったが、中には『逆鱗日和』関連イベントやモンハンフェスタの会場で何度も顔を合わせたことがある人もいた。
皆口々に「イベント、すごく楽しいです!」と言ってくれた。そして涙ながらに「これからも『モンハン』のことを書き続けてください!」と訴えてくる人もいた。ひとつひとつの言葉がありがたく、心に染み入るもので、だからこそ無情に進んでいってしまう時の流れが疎ましかった。
(もしも生涯で一度だけ、時を戻せる魔法が使えるなら、俺はいまこの瞬間に使っちまうかもしれないな……)
そんなことまで思った。
本当にいろいろな人が、俺に会うために会場に来てくれていた。
わざわざ鳥取から来たという青年は、「必死に親を説得して、貯めていた小遣いをすべて叩いて旅費にしました!!」と言って屈託なく笑った。
耳の不自由な女性は筆談で、「いつも読んでいます! あなたの書く文章が大好きです。これからもがんばってください!」と緊張の面持ちで書いてくれた。
会場にいたすべての人が懸命に、俺に感謝の気持ちを伝えようとしてくれているのがよくわかった。本当に、泣きたい気分だった。
そしてイベントが滞りなく終了し、会場入り口で来場者を見送っていると、ひとりの青年に声をかけられた。彼はちょっと恥ずかしそう頭をかきながら、こんなことを言った。
「じつは僕、地元が岩手県の陸前高田市なんです。震災で壊滅的な被害を受けた……。もう地元はメチャクチャになっちゃってふさぎ込んでいたんですけど、『逆鱗日和』を読んで『モンハン』で遊びたくなり、時間と電気の許す限り『3rd』で遊んでいました(笑)」
俺は言葉を失い、ただただ黙って頷くだけになってしまう。でも青年は気にせず、さらに言葉を続けた。
「モンハンフェスタの仙台大会も、すごく楽しみにしていたんです! でも震災で中止になっちゃって、本当にがっかりして……。そんなときに、逆鱗日和ライブの開催を知ったんです! 絶対に生で見てみたい、って思っていたら運よく当選して、今日ここにこれました!」
くったくなく笑う青年に、俺は尋ねた。「楽しんでくれたかい?」と。すると青年は、その日いちばんの笑顔を見せてくれた。
「もちろんですよ!! 楽しくて、すごく温かい気持ちになりました! 参加できてよかった。本当に、ありがとうございました!!」
お礼を言うのは、こっちのほうだ。その言葉に、どれだけ救われることか。俺は読者の皆さんに助けられてばかりいるよ……。
俺と青年はその場で、ガッチリと握手をした。そして手を握ったまま、俺は青年にこう言った。
「また、どこかで会いましょう。『モンハン』をやっていれば、そのうち会える気がするよw」
この言葉に、青年は元気に「はい!!」と応えた。
そしてこの瞬間、長かった俺の青春が幕を下ろした−−。
◆◆◆
こうして、『逆鱗日和』の最後のイベントは終了しました。そして、僕がここで書く『モンハン』がらみの記事もこれにて小休止……なのか大休止(なんだそりゃ)なのかわかりませんが、ひとまず終了ということになります。皆さん、7年以上の長きにわたり本当にありがとうございました!
とは言っても、僕が『モンハン』をやめるわけではありません。“趣味で”遊んでいくと思います。なので最後に青年に告げた通り、いつかまた皆さんの前に現れるときがくるかもしれません。わからんけどw とりあえず今後はのんびりコツコツと、自堕落な狩猟生活を送っていこうと思います。
……でも、そこで何かおもしろい出来事に遭遇するたびに思うんだろうな。「これはいいネタになるぞ!」って。そしてその瞬間に、
「あ……。もう書かないんだ、俺……」
って呆然とするというね^^;
ではハンターの皆さん、お元気で。ありがとうございました!
▲ウチのイベントでは恒例の“角満カップ”(『モンハン』のタイムアタック大会ね)も実施。今回は『3rd』のウルクスス討伐演習に、ガンランス×ガンランスのコンビで挑んでもらった。そして成績の上位3チームと下位3チーム、そしてちょうど中間の順位のチームにプレゼントを差し上げた。写真は、中間順位チームにおなじみ(?)の角満サイン入りハンドボールをプレゼントしているところw
※注:このブログは続くからね!w
このままダラダラ書いていると一生このリポートは終わらないと確信し、ここから加速していきたいと思います。
『逆鱗日和』シリーズでもっとも美しい『ただいま!』、裏表紙側から縦書きで掲載している妄想小説が異色の『トッテオキ!』、そして最終巻の『明日もきっと!』の紹介が終わった後、なんでか知らないが「大塚角満の狩猟の腕を見てみよう」という話になった。ホント、そっとしておいてほしいというか大きなお世話というか……。なんで全国ネットでオノレの狩猟風景を配信しなきゃならんねん!! と憤ったところで台本にそう書かれているのでやらざるを得ないらしい。
それにしても毎度毎度のことなのだが、マヌケ面をさらしたりとかしょっぱいトークをすることは俺的に何の問題もないんだけど、人様の前で『モンハン』をする……っていう行為はいつまで経っても慣れないわ……。本当に、恥ずかしいし恐ろしい……。しかも今回、俺の相手になるモンスターは……!
「えー、今回の討伐目標は孤島のイビルジョーですね!!」
「おお〜〜〜!」という歓声が上がる会場。その声が消えぬうちに、佐治がさらなる燃料を投下する。
「しかも制限時間は15分!! 15分でイビルジョーを狩ってもらいますかね!! もちろん、武器はガンランスでっ!(笑)」
この発言を受けて、会場の歓声は「ぎゃはははは!!」、「うひゃ〜〜っ!!(笑)」、「きつーーーっ!!(爆笑)」なんていう笑い混じりのものに変化する。ナンダナンダ。なんでそんなに笑うんだ。俺は「コイツならいけるだろう!」と踏んでイビルジョーを相手に選んだんだぞ。
ここでちょっと裏話をすると、当初はさんざんエッセイで「このモンスターはマジで苦手!」と書いてきたジンオウガに挑もうかと思っていた。もちろん、上位のソレに。しかし、上位のジンオウガは2頭討伐のクエスト。さすがに15分じゃむずかしいかもしれない(制限時間15分は進行上マストの条件だったのです)。でも、「やってみなけりゃわからない」ってことでテストプレイに行ってみたのだが……。
「……あれ? 1頭討伐するのに15分以上かかるぞ……」
ってことでジンオウガは泣く泣く却下。そこで、『3rd』でジンオウガ以上のインパクトとプレゼンスを持つモンスターはどいつだ? という議論を江野本ぎずもと交わし、行き着いたのが恐暴竜・イビルジョーだったのである。イビルジョーは『3(トライ)』の時代からさんざん狩ってきたので動きはわかっているし、『3rd』でもソロで何度も狩ってのけていた。15分という制限時間だけが心配ではあったが、俺は「まあ大丈夫だと思うよ」と江野本に安請け合いし、まともにテストプレイもせぬまま本番のこの日を迎えてしまったのである。佐治が言うには、このチャレンジが俺の“モンハン卒業試験”らしく、成功すれば無事に卒業ということらしい。しかし失敗したときのことは誰も教えてくれない。俺の緊張は、さらに上塗りされた。
そして時間がかなり押していたこともあり、どこからともなく漂っていた“とっととやれオーラ”に気圧されて、俺はクエストに出発してしまった。頭の中は完全にパニックである。俺は、この手のイベントでは毎度そうなのだが、操作方法すら頭からぶっ飛んでしまう。そして−−。
ゴキュ。
ピキーーーン!
なんと俺、フィールドに降り立ったその瞬間に回復薬をガブ飲みしてしまったではないか!! しかも会場から漏れ聞こえてきた「秘境www」、「秘境にいるwww」という声で気づいたのだが、俺、秘境にいるし……。会場に満ちる「ぎゃはははは!!」、「げらげらげら」という盛大な笑い声。もうヤだ俺……。
しかしこれで吹っ切れたのか、その後俺はわりと落ち着いてイビルジョー相手に立ち回れたと思う。フィールドに肉をやたらと置いたり、ジョーに食われて瀕死になったりするのはいつものことだが、我ながらなかなか華麗に動けたのではなかろうか。ただ、時間を気にするあまりブルファンゴなどの小型モンスターを無視して立ち回ったのはいただけなかった。なぜかと言うと、俺が叩きつけからの渾身のフルバーストをぶっ放そうとするたびに、
ズドドドドドドッ!!
と突進してきてふっ飛ばしやがったから……。どこからか「ファンゴ、わかってるなぁww」なんて声が聞こえた気がした。
しかしいくらうまく立ち回れても、やっぱり15分という制限時間はきびしい。実際、15分針を回った時点で俺はイビルジョーを討伐することは叶わず、作戦は失敗に……。でもこれではあまりにも寂しいので、俺はMCの佐治にひとつの提案をした。
「これ、いまからシビレ罠を仕掛けて捕獲できたら、作戦成功ってことでいいかね??」
これを受けて佐治は「なるほど! まあいいんじゃないっすかね」と快諾。俺は嬉々としてその場にシビレ罠を設置し、イビルジョーがハマるのを待った。しかし……。
スタタタタ〜……。
イビルジョー、俺のシビレ罠など眼中になく、スタコラサッサと隣のエリアに……(苦笑)。俺は爆笑の渦の中でただただ、イビルジョーに向かってパタパタと手を振るのだった。
▲がっくりとうなだれる佐治キクオ。俺はただただ、苦笑いするしかなかった……。
……まあこの結果をどう解釈するかは人によってマチマチだろうが、見ようによっては「イビルジョーが大塚角満の気迫に圧されて逃げていった」とも取れるので、ここは“クエスト成功”で見事“卒業”ということで^^ こういうとき、プレイした人間とそれをリポートしている人間が同じというのはたいへん都合がよろしい。
▲来場者の方々が、パネルに寄せ書きをしてくれた。ありがたい!
このあと、来場者の方々との協力プレイ(訓練所のロアルドロス亜種討伐)を楽しみ、逆鱗日和ライブはいよいよフィナーレ。俺から、全国のファンへ向けた“ラブレター”を朗読させてもらった。その中身を、そのままここに掲載しちゃおう。
■『逆鱗日和』の読者の皆様へ
僕の書くモンハンプレイ日記を読んだことのある読者の皆さん。
長きにわたり『逆鱗日和』をかわいがってくれて本当にありがとうございました。
思えば7年以上も昔。
まだ知る人ぞ知るゲームだった無印と出会ったときが、僕の運命の歯車が回り始めた瞬間でした。
それ以来、いったい僕は何篇くらい、このゲームにまつわるエッセイやコラムを書いてきたのでしょう。
いまや書いた本人でも、その総量はさっぱりわかりません。
正直、単行本を9冊も作れるほど書き続けられるとは、連載開始当初は思ってもいませんでした。
なんでこんなに長く、連載を続けられたのでしょうか。
もちろん、モンスターハンターというゲームが底なしにおもしろかったことは言うまでもありません。
でもそれと同じくらい読者の皆さんから寄せられる声が、僕に力を与えてくれたことは紛れもない事実です。
毎日のように送られてくる『逆鱗日和』のアンケートハガキや、
ブログ、SNSなどで、皆さんが活発に僕の文章についての感想を述べてくれ、
それを読むたびに力をみなぎらせたり、反省して明日への活力にしたりしていました。
そんな『逆鱗日和』は、これをもって完結となります。
なんとなく忘れられてフェードアウトしていくのではなく、
たくさんの読者の方々に惜しまれつつ終わりにできること、
これこそが“作者冥利に尽きる”というものではないでしょうか。
書き続けてよかったと、いま心から思います。
『逆鱗日和』に関わってくれた関係者の皆様、
カプコンのモンハン開発チームの皆様、
そしてここにいる読者の方々、USTREAMをご覧の読者の方々、
本当にお世話になりました。
またいつか、止まった時が動き出すその日まで。
ありがとうございました。
◆◆◆
リポートはもうちょっとだけ続きます。
リポートの途中で止まってしまってスミマセン……。もうぜんぜん書く時間がなくて……。
さて。
今回のイベントの軸のひとつとなっていたのは、読者の皆さんから届いた“『逆鱗日和』へのラブレター”である。『逆鱗日和』を読んでどんな影響を受けたのか? またどんなエッセイが好きなのか? なんてことを、好きなように書いてメールで送ってもらったのだ。俺はイベントで読み上げてもらうまで内容をまったく知らず、(いったいどんなことを言われるんだろう……。だだだダイジョブかな……)と気が気ではなかった。
そしてこの“ダイジョブかな”の中には、(いまやさしいことを言われたら、泣いてしまうかもしれない)という心配も多分に含まれていた。ライフワークだったことを完結させる事実だけで精神状態は荒波の木っ端船のように揺れまくっていたし、しかもここのところ通常業務が鬼のように忙しくて、いろいろなことに集中できなくなっていた。なので(俺は褒めてもらえるようなことは何もしてない……)とか(ホントに申し訳ない……)なんて思うばかりで、ひたすらドキドキするしか手段がなくなっていたのだ。我ながら“だいぶキてるな”と思うがね。
そんな俺に向けて、このときのために招聘した本日の秘密兵器、声優の卵のEさんが、バックヤードでラブレターを読み始めた。いかにもなBGMに乗せて、Eさんのよく通る温かい声が場内に満ちてゆく。そして、俺の心にも……。
せっかくなので1編紹介します。※若干編集させてもらいました
「『明日もきっと!逆鱗日和』が最終巻になることを初めて知ったときは突然のことに驚き、もう『逆鱗日和』が読めないんだなと寂しい気持ちになりました。
『逆鱗日和』を読み始めたのは去年からで、友人に勧められて借りたのがきっかけでした。もともとアクションゲームは苦手なほう。『2nd G』でイャンクックやティガレックスがなかなか倒せなくてやる気がなくなったときに『逆鱗日和』を読み、「大塚さんも負けずにがんばっているので自分もがんばろう!」とやる気が沸いたり、ときどきおもしろいコラムを読んで電車の中で笑いそうになったり、モンハンフェスタのタイムアタックのチャンピオンのインタビューを読んで勉強になったこともありました。
いちばん好きなエピソードは『本日もサヨナラ! 逆鱗日和』の第115回“モンスターハンター 〜始まりの唄 その2〜”です。『モンハン』を始めたころは「自分は最後のクエストなんて到底できないだろう」と
思っていましたが、何十回もクエストに失敗しても諦めずにがんばるエピソードを読んで、私も最後のクエストまでがんばろうと思いました。またネコが大好きなので、オトモアイルーや大塚さんが飼っているミュウ、アクアの出るコラムも好きです。
途中から読み始めたので最終巻はあっという間でさらに寂しい気持ちがありますが、大塚さんのやりたいこともあると思うので受け入れたいなという気持ちもあります。最終巻は何度も読み返したりして、大切にしたいと思います。
いままでお疲れ様でした!」
いかに自分が『逆鱗日和』が好きか、いかに大塚の書く文章に影響を受けたか……ということが切々と綴られたラブレターが読み上げられるたびに、なんとも言えない感情がこみ上げてくる。顔を出して文章を書いている以上、叩かれることなど百も承知というか想定済みではあるのだが、やはり俺も人間なのでバッシングされればそれはヘコむ。そんなとき、俺の背中を押してくれたのはこのラブレターにあるような読者の声に違いなく、それが生で、やさしい声で読み上げられているこの状況は「泣け!!」と言われているのと同義である。
しかしここでラブレタータイムの第一部が終了し、再びトークは『逆鱗日和』の歴史を振り返るコーナーとなった。あ、危なかった……。マジで全国に泣き顔をさらすところだったぜ……。
長くなりそうなのでサラッといかせてもらおう。
『サヨナラ!』のつぎに出した単行本は、『逆鱗日和』シリーズ初のスピンオフ『角満式モンハン学〜モンスター編〜』だ。俺自身初となる書き下ろしの単行本で、制作時のエピソードは「キツすぎてヤバかった」というひと言に集約される。『2nd G』までに出てきたほぼすべてのモンスターにフィーチャーし、それぞれを主役にしたエッセイと図説を盛り込んだ“怪獣大図鑑”のような本を作ろう、という気合のもとスタートした企画だが、実際に執筆に使えた時間は2週間ほど。当然、その間も通常業務は行っているわけで、実質使えたのは2回の週末(つまり4日ほど)だけだった。それでも、質も量もナットクのいくものが完成し、『逆鱗日和』シリーズの中でも指折りのお気に入りとなっている。
▲『モンスター編』の解説では、シリーズの苦手なモンスターをピックアップして紹介した。
つぎに出したのはスピンオフ第2弾『角満式モンハン学〜ハンター編〜』だ。俺の体験から紡ぎ出した文章ではなく、全国のハンターさんから集めた“モンハンあるある体験”をもとに編纂した単行本。そういう意味で、もっとも異質な『逆鱗日和』と言える。
この『ハンター編』に代表される通り、俺は本当に全国津々浦々のハンターさんに『逆鱗日和』でお世話になった。さまざまなハンターさんと時間を共有することは本当に楽しく、幸せなひとときで、そのときの情景すべてを思い出すことができるほどである。そしてなんと、その方々からもメッセージが届いているとのこと。そのひとつを聞いたとき、俺は本気で「これは……ヤバい! ホントにヤバいよ……」と言い、カメラの前で大泣きする寸前となる……。読み上げられたのは、つぎのようなメッセージだ。
「大塚さんと初めて会ったのは何年か前の、残暑の残る蒸し暑い夜だったと思います。
まだかなぁ〜……と店の戸を開けて、道路の向こうを見ると、こちらに手を降る影がふたつ。道路を挟んだ向こう側にいてもひと目でわかるほど、大塚さんは、予想以上に大塚さんでした。
それから、酒をかっくらいながらの楽しい時間を過ごしたんですが、じつはこのときに、4人協力プレイを初めて体験したのでした。それまでは、まわりにプレイしている人間はいたものの、黙々とひとりでクエストをこなし、あれを作った、あいつを狩ったなどの報告をするくらいで、協力プレイをなぜかあんまりやっていなかったんです。
そしてあの初体験です! 酒の力もあったんでしょうが、『逆鱗日和』のドタバタが自分も参加者となって眼前でくり広げられたんですから、その時の衝撃は相当なものでした。
それをきっかけに、すっかり協力プレイの楽しさに魅了された僕は、あちこちに顔を出してはいろんな人と『モンハン』をするようになったのでした。
ということで、大塚さん、江野本さんは、『モンハン』の新たな魅力を教えてくださった恩人なのです。たくさんの笑いや遊び、人に出会えました。本当にありかとうございます。
『逆鱗日和』は終わってしまいますが、楽しかった思い出はいつまでも忘れません! そして、みんなで書いた寄せ書きを、ずっと守っていきたいと思います!
それでは、今日という新たな門出の日、ぞんぶんに楽しんでください!」
『ニャンと!』が発売されたことを記念して、全国のハンターさんに会いに行くという“出張狩猟企画”を実施したことがある。そのうちのひとつが、この手紙の主である佐賀県の居酒屋“せん屋”の店長さんだった。『サヨナラ!』にそのときの模様を綴った旅日記が掲載されているが、その締めのひと言として、俺はつぎのような一節を書いている。
もしも1回だけタイムマシンに乗れるなら。
あの佐賀の夜に戻りたいなあ−−。
いまでも、この気持ちはまったく変わっていない。それくらいこの夜の出来事は楽しく、思い出深いものだったのだ。
俺はその後も何度か佐賀県を訪れ、店長のもとに顔を出している。ちょうど店が改装しているときに行ったときは、集まった面々で床下の板の上にそのときの想いを油性ペンで書き殴った。それが店長の手紙にある“寄せ書き”のくだりだ。朗読がここに差し掛かったとき、俺は隣の佐治にこうささやいた。
「佐治くん……! ヤバいよコレ! ホントに泣いちゃうよ!!」
これを聞いた佐治は「まあいいじゃないッスか」と言いたそうな笑顔を作り、黙って「うんうん」と頷いた。
手紙が読み上げられたあと、俺が感極まってしまったことの意味がわかる人間は俺と江野本、そして佐賀の夜をともにした人たちだけだと思われたので、俺はなんとか、この手紙が意味するところを説明しようとした。でも、完全に震え混じりの涙声になってしまったのが自分でもわかったし、頭の中が思い出とか寂しさとかいろいろな感情でグチャグチャになってしまって、自分が何を言っているのかもサッパリわからない。そんな俺の耳に、「何を言いたいのかわからないくらい、感極まっているみたいですねえ」という佐治の声が聞こえた。
……って、すげえ長くなりそうなので今日はこのへんで区切ります。ダラダラ書いてすんません!
大塚角満

週刊ファミ通副編集長にして、ファミ通グループのニュース担当責任者。群馬県出身。現在、週刊ファミ通誌上で“大塚角満のモンハン研究所”というコラムを連載中。そこら中に書き散らした『モンハン』がらみのエッセイをまとめた単行本『本日も逆鱗日和』シリーズ(4巻)が発売中。また、そこからのスピンオフとして別の視点から『モンハン』の魅力に迫る書き下ろし作品『別冊『逆鱗日和』 角満式モンハン学』シリーズも。このブログではさまざまなゲーム関連の話題を扱うつもり。一応、そのつもり。
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