大塚角満の ゲームを“読む!”
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去る12月20日にカプコンが、“『モンスターハンターポータブル 3rd』、PSP向けタイトルとして史上最速の300万本出荷を達成”というリリースを流した。発売からわずか17日でトリプルミリオンの大台を突破。その人気は、「凄まじい」のひと言に尽きる。しかも、こんなにたくさんの本数が出荷されているというのにいまだ品切れの店も多く、「なかなか手に入らない」という声も聞く。もしも需要を満たすだけの本数が出荷されていたならば初速でどれだけの本数に到達したのか? それを考えるとちょっと寒気すらしてくる。
そんな、“売れに売れている”ことにまつわる、ちょっとほんわかしたお話を書きます。実話ですよ。
『3rd』が発売されてから10日が過ぎた12月11日、俺はツレとともにさいたま市内の量販店にやってきた。主たる目的は、いろいろとヘタれてきている白物家電を買い直そうかな……というものだったが、それと同等以上に「手に入れたい!」と思っていたものが、何を隠そう『3rd』だったのである。いま以上に品切れになっている店舗が多かった時期で、俺のまわりでも「ぜんぜん売っていなくて買えない……」と嘆いている人がちらほらといた。それでも、量販店は週末販売分をしっかり確保しているだろうという読みがあったので、俺はわりと余裕の体で「買えるとしたらこの店だろう」と本命視していた大手量販店のゲーム売り場に入っていった。
ゲーム売り場のレジには、長蛇の列ができていた。並んでいる人の多くがファミリー向けのゲームソフトやボードゲームなどを手にしており、ざっと見たところ『3rd』を持っている人はいなそうである。でもこういったお店では、売れ筋ソフトはパッケージを持っていくことなく、レジの人に直接「もんはんぽーたぶるさーどくだちゃい」と申告すれば「ハイハイ、こちらですネ」と倉庫の奥からソフトを出してきてくれることが多い。なので俺は1ミクロンたりとも心配することなく行列の最後尾に並び、ズリズリとレジに向かって牛歩な歩みを進めていったのでありました。
そして待つこと10分。ついにレジに招き入れられた。俺は平身低頭の態度でレジのおねえさんの前に立ち、頭の中で練習していた言葉をニコニコしながら発声した。
「もんはんぽーたぶるさーどくだちゃい」
しかし、レジのおねえさんが返してくれた言葉は、あまりにも冷静かつ残酷なものであった。
「申し訳ありませんが、品切れです」
……な、なに? い、いまなんつった?
「もんはんぽーたぶるさーどは、品切れでえす!」
がーーーーーーーん!!!
ななな、なんたることだ……。まさか俺まで、品切れのビッグウェーブに飲み込まれることになるなんて……。レジのおねえさんが言うには、まもなく再入荷されるだろうが少なくとも現時点では『3rd』の在庫はない、とのこと。す、すげえ。本当に凄まじく売れているんだな『3rd』は……。
と、感心している場合ではなかった。この店にないとなったら、別のお店を探すしかない!! 俺はツレとともに本命の量販店を飛び出し、近くにある“対抗”の量販店に走っていった。時間をロスするごとに、品切れに近づいてしまうのだ。急げや急げ。
そしてやってきた2店舗目で、俺たちは『3rd』を発見した。よかった……。ここにこのお店があって本当によかった……。俺たちは『3rd』のパッケージを手に、ほくほく顔でレジにできていた行列に並んだ。すると……。
「あの〜、ちょっといいですか?」
いきなり、見知らぬ男性に声を掛けられた。店員さんではなく、一般の人のようである。金髪にヒゲをたくわえた、どちらかというとヤンチャな風貌をした男性である(おめえもだろ)。年のころは、20代後半くらいに見える。
唐突な声掛けに、少々ウロたえる俺とツレ。もしかして俺たち、知らぬうちに列に割り込んだりしてしまったのだろうか? それとも、ほかに何か粗相が!? 俺はわけのわからぬまま、かなりマヌケな声で「はい?」と発言。それを待っていたかのように、ヤンチャな男性はつぎのように言った。
「いま手に持ってるの、『モンスターハンターポータブル 3rd』ですよね?」
確かに、俺はいま『3rd』のパッケージを手にしている。そこにウソ偽りはないので素直に「ええ、これはまぎれもなく『モンスターハンターポータブル 3rd』です」と応えた。すると男性はにんまりと笑い、さらに言葉を継いだ。
「おふたりで並ばれてて、1本だけソフトを買うんですよね?」
そうそう。俺はもう、自分の分は持ってるからね。これはツレの分ですよ。その通りその通り。彼の言わんとしていることの真意が見えず、コクコクと頷く俺。すると男性は急に懇願の口調になり、まったく俺たちが予期していなかったことをのたまったのであった。
「じつはボクも、『3rd』を買いにきたんです! 何店舗も回ったんですけど品切ればかりで、ようやくここで発見できたんですよ! で、さっき自分の分とツレの分、合わせて2本買おうと思ってレジに行ったんですけど、“申し訳ありませんが、おひとり様1本限りで……”と言われて……。でもどうしても今日、ツレといっしょにゲームをスタートしたいんです!」
いきなりの告白に、しばしポカンとする俺とツレ。そんな俺たちに向かって、彼は話を続けた。
「どうしよう……って悩んでいたところに、おふたりが現れたんです! 『3rd』のパッケージを持っていて、かつ、ふたりで1本しか買われないおふたりが……。……で、たいへんお手数なのですが、お金とパッケージをお渡ししますのでボクのツレの分を買ってきていただけないでしょうか……!」
うは!! そういうことか!!(笑)
俺とツレは顔を見合わせてにっこりと笑い、男性からお金と『3rd』のパッケージを受け取った。「もちろん、ぜんぜんいいですよ!」と言いながら。すると男性は顔をくしゃくしゃにして喜び、「ありがとうございます! ありがとうございます!!」と何度も何度も頭を下げたのであった。
ツレがレジに並んでいるあいだ、男性とちょっとだけ話をした。彼は『2nd G』のときから友だちとふたりで狩りをしていたといい、今回の『3rd』もその友だちといっしょに始め、いっしょに成長していきたいと思っていたのだという。でも、ソフトを買うタイミングにタイムラグができてしまうとそれも叶わなくなってしまうので、どうしても今日、2本買って帰りたかったのだそうだ。
「はい、買ってきましたよー♪」
買ってきたソフトとお釣りを、ツレが男性に手渡そうとした。しかし男性は数百円のお釣りを頑なに受け取ろうとせず、逆に俺たちの手に握らせて、「たったこれだけですけど、お釣りは受け取ってください! 本当に、ありがとうございました!」と言って譲らない。俺たちはペコペコと頭を下げる男性を見てほんわかとした気持ちになり、お釣りを彼の手に戻してからつぎのように言った。
「そんな、頭を下げなくていいですよw それよりも、今度どこかで会ったらいっしょに狩りましょうね♪」
すると男性は再び顔をくしゃくしゃにし、元気な声でこう言った。
「はい! ぜひ一狩りお願いします!」
あの人、きっと今日もどこかで、友だちとふたりで狩りをしているんだろうな。いつかまた、会えるといいなあ。
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新たなライバル・ジンオウガを激闘の末に撃破し、どうにかこうにか前に進むことができた大塚角満。肩の荷をひとつ下ろして身が軽くなり、村、集会浴場ともにこれまでよりもフットワーク軽くクエストをこなしていけるようになった。
そんな、12月初旬。またあのモンスターが、俺の前に立ち塞がった。そう、“黒き風の暗殺者”こと“ナルガクルガ”である。
ナルガクルガとは『2nd G』の時代に、本当によく対決した。どれくらいの数になったのかというと……せっかくなので、『2nd G』のモンスター狩猟記録を載せてしまおう。まだプレイすると思うので最終データではなく、2010年12月27日現在のものね。
●大塚角満の『2nd G』モンスター狩猟記録
・ドスギアノス:67
・ドスランポス:77
・ドスゲネポス:36
・ドスイーオス:40
・イャンクック:180
・イャンガルルガ:78
・ゲリョス:150
・ヒプノック:47
・リオレイア:178
・リオレウス:222
・フルフル:87
・バサルモス:70
・グラビモス:94
・モノブロス:40
・ディアブロス:117
・ティガレックス:155
・ナルガクルガ:167
・ドスガレオス:24
・ガノトトス:61
・ヴォルガノス:31
・ダイミョウザザミ:201
・ショウグンギザミ:101
・ドスファンゴ:40
・ババコンガ:334
・ドドブランゴ:81
・ラージャン:69
・キリン:39
・クシャルダオラ:38
・オオナズチ:25
・ナナ・テスカトリ:10
・テオ・テスカトル:34
ナルガクルガの狩猟数は、167頭。じつに、第6位にランクインする数となる。……いま一瞬、「そんな中途半端な順位だったらピックアップする必要ないんじゃね??」という疑問が頭をよぎったが、わざわざ『3rd』のUMDをPSPから取り出して『2nd G』と差し替え、ギルドカードを開いてモンスター討伐数をすべてメモった労力を思い出して、「やっぱり掲載してよかったんだよナ」と思い直しました。なので読者の皆さんは、「167頭も狩っていたんだね! スゴイね角満!!」と拍手でもしておいてください。
そんなナルガクルガの討伐に行くことになった。俺の装備は確か、武器は討伐隊正式銃槍で、防具は全身ジャギィ装備だったと思う。絵に描いたような“下位装備”だ。そして持ち込むアイテムとして、対ナルガクルガの定番である閃光玉と音爆弾をピックアップ。身体に染み込んだ必殺のタイミングで閃光玉&音爆弾をぶちかまし、ナルガクルガの野郎をナルナルのクルクル(意味不明)にしてやるぜ。
出向いたクエストは、渓流を舞台にした“紅煌流星”。ベースキャンプに降り立つと同時にガンランスに弾丸を装填し、2匹のオトモアイルーを従えてベースキャンプを飛び出した。
そしてすぐに、俺はナルガクルガと遭遇する。その刹那、フィールドに数ある『モンハン』関連楽曲の中でも“名曲”と称される、ナルガクルガのテーマが流れ始めた。これを聴いた瞬間、俺の全身にぶわわわわっと鳥肌が立つ。やっぱたまらねえな、この感覚は!! 俺は『3rd』のフィールドで出会うことが叶ったかつてのライバルに、自然とこんな声をぶつけていた。
「ひさしぶりだな、親友!」
芝居がかった台詞だとはわかっていたが、どうにもほかに言いようがなかった。かつて幾度となく苦渋を味合わされた相手ではあるが、それがあったからこそナルガクルガやティガレックスは“親友”と呼べるモンスターなのである。このへんの心情は、完全に『北斗の拳』の世界だ。
しかしこのとき、正直なことを書いてしまうと、俺はナルガクルガをナメていた。『2nd G』時代の167頭の狩猟はいかにヘタクソな俺にもしっかりとした蓄積になっており、ナルガクルガの行動パターンはほぼ完璧に刷り込まれている。致命的な攻撃を受けることなく、致命的な攻撃を確実に打ち込めるだけのフットワークを間違いなく手にしているのだ。
(なんだかんだ言って、このクエストは楽勝に違いない)
俺がそう思っていたからと言って、誰に責められようか。いや責められない。
そんな“余裕の相手”のナルガクルガに、俺は思いもよらない劣勢を強いられた。なんか知らんが、やたらと攻撃を食らってしまうのである。「あれ?」と思った瞬間に尻尾のなぎ払いを食らい、「むむ?」と思ったときには恐怖の尻尾ビタンを脳天にぶちかまされていた。「調子に乗んなよ!!」といきり立って音爆弾をお見舞いしてやろうと思っても、『2nd G』では確定パターンだったバックステップからの“かまえ”を、『3rd』のナルガクルガはしなくなっている! これでは、俺に音爆弾を成功させることなどできるわけがない。応用力のない俺の脳ミソは、刷り込んだ特定のことしかできないのだ。キーボードのブラインドタッチはできないくせに、エッチな言葉だけは神の速さでタイピングできる週刊ファミ通編集部の百人乗っても稲葉みたいなものだ。
それにしても、なぜ俺はこれほどまでにナルガクルガの攻撃を食らってしまうのか? 当然、ナルガクルガの行動パターンが変わっているのも理由のひとつなのだろうが、じつは俺の立ち回り自体が『2nd G』のときと比べて変化したことも理由のような気がする。
『3rd』のガンランスは『2nd G』と比べて、砲撃部分がクローズアップされてかなりの改良が施された。新たに導入されたクイックリロード、フルバースト、溜め砲撃などを駆使することで、砲撃を立ち回りのメインに据えることができるのである。もとより砲撃が大好きだった俺、『3rd』ではこれまで以上に調子に乗って砲撃系の攻撃ばかりくり出している(ソロのときはとくに)。これにより、『2nd G』のときとはかなり違ったガンランサーになったはずなのだ。
そしてどうやらこれが、ナルガクルガの攻撃を食らいまくっている理由のひとつのようだ。クイックリロードやフルバーストを行ったときにできる隙にナルガクルガの痛撃を浴び、何度も何度も回復薬グレートを飲む。でも砲撃楽しいから、やめられないし止らない。でもそこで攻撃食らう。でもやめられない止まらない……。でも……という、不の自転車操業に陥ってしまったわけだ。
それでも、ほとんど相打ち覚悟で攻撃をくり出し、どうにかこうにかナルガクルガのスタミナを奪うことに成功。親友は脚を引きずってエリアチェンジをする。すかさず追いかける俺。見ると遠くで、ナルガクルガがケルビを狩ってむしゃむしゃと食事をしているではないか。その様子を、緊張感なくしばし眺める。ナルガクルガは前脚でケルビを押さえ込み、キョロキョロと落ち着きなくあたりをねめ回しながら首をピョコピョコと上下させて獲物をむさぼっていた。その姿は丸っきり、大好物を与えられて「これは誰にもやらないニャ!!」とコーフンし、「フーッ!!」と唸りながら食事をするネコそのものではないか。とたんに、俺は相好を崩した。
「ちょ、超ラブリーーーーーッ!!!」
こんなかわいい仕草をするモンスターを、俺が狩れるわけがない。
そして俺はこの後、手負いのナルガクルガに本当に1オチ(苦笑)。20秒前まで「ラブリー!」と吠えていたことなどすぐに忘れて怒りの猛攻をお見舞いし、どうにか討伐を果たした。
クエストクリアータイムは、20分46秒。思いもよらなかった“大苦戦”だった。
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書きたいことが山ほどあるにも関わらず、なかなか筆が追いつかなくていまやっていることをタイムリーにコラム化できないっ!! 最近はそれが悩みです。具体的に言うと、じつはかなーり前に上位ハンターの仲間入りを果たしてはいるのですが、上位のことを書くのはまだまだ先のことになるでしょう。しばらくは序盤のことを書くかと思いますが、辛抱強く読んでやってくださいな。
でも今回は序盤のことなじゃく、タイムリーなことを書きます。
12月23日よりスタートした、『3rd』と信州渋温泉のコラボイベント“ユクモノ気分で狩り放題!”のプレスツアーに参加してきた。22日〜23日の1泊2日でユクモノ気分を満喫しちゃおうというツアーで、仕事半分、遊び半分くらいの比較的ユル〜イ気持ちで渋温泉を巡ってきた。
じつは俺、渋温泉に行くのは2回目だったりする。もう週刊ファミ通で記事になっているので書いてしまうが、『3rd』が発売された直後の12月3日〜5日にかけて、次長課長の井上聡さん率いる“井上軍団”の4人とともに渋温泉入りし、2泊3日の狩り合宿を行ったのである。このときはコラボイベントの前だったので、『3rd』の垂れ幕も狩猟神社も、ニャン泉岩もなかった。それでも、古きよき時代をそのまま残してあるような街並みと、源泉掛け流しの熱いお湯がじつに魅力的で、井上さんたちと「いつかまた、来てみたいですね」と口々に言い合っていたのでありました。
そんな渋い渋温泉の街並みは(シャレではない)、3週間足らずの月日を経て驚くほどの変貌を遂げていた。温泉街のいたるところに赤い垂れ幕が飾られ、そこにはしっかりと渦を巻いたユクモ村のマークがペタリ。ふだんは一般開放されていない由緒ある木造建築を集会所にしたり、広場に屋台村を作ってモンハンメニューをふるまったりと、街をあげて『3rd』とのコラボレーションを盛り上げているのがよくわかった。
さて、そんな『3rd』一色の温泉街を取材し、記事を書いたりしているうちに力尽きて、22日は温泉にも入らずに寝てしまった。せっかく源泉掛け流しの贅沢な温泉に来ているというのに、もったいないったらありゃしない。
なので23日は早くに起きて、宿の展望風呂にでも行こうと思っていた。渋温泉は9つの共同浴場を巡る“外湯巡り”が有名だが、この日は朝から雪やミゾレが豪快に降っていたので、断腸の思いで「外湯は断念」と宣言した。
そんな、23日午前7時15分。携帯電話に1本のメールが届いた。「こんな朝から誰だろう??」と思いながら開封すると、差出人は『3rd』のアシスタントプロデューサーを務める小嶋慎太郎さんではないか。ナンダナンダと口に出して言いながら開封すると、そこにはこんなことが書かれていた。
「大塚さん、これから温泉クエストにでも行きませんか??」
お、温泉クエスト!! やっぱり、小嶋さんとは通じるものがあるなあ! すぐに、「いきますいきます!」と返事をする。すると小嶋さんから「じゃあロビー集合で♪」とすかさずメールが届いた。この宿の大浴場は5階なのに、なんでロビー集合?? そう思いながらもタオルと着替えを袋に詰めて、ロビーに降りていった。
まもなく、小嶋さんがやってきた。見ると、宿に備え付けの厚手の半纏をしっかりと着込んでいる。片や俺は、上下ともに薄い作務衣1枚だけだ。俺の姿を見て、小嶋さんは目を丸くした。
「大塚さん、その装備で外湯に行くつもりですか!? それじゃ、思いっきり氷耐性にマイナスがついてますよ!!」
そ、外湯!? 温泉クエストとは、渋温泉名物の外湯巡りのことだったのか!! しかし、外の雪はさらに強くなってきている。防寒具を着込んできたところで、かなりのダメージを被ることは覚悟しないといけないかもしれない。小嶋さんも、じゃばじゃばと降り続くミゾレ状の雪をみて「うーん……」と唸っている。しかし、このフットワークの軽い御仁はこれくらいではめげない。小嶋さんは早朝とは思えない元気な声で「まあ何とかなるでしょう!」と言ったあと、俺の目を見てこう言った。「大塚さん、どうします?」。彼にこう言われたら、俺が返す言葉はひとつしかない。俺は小嶋さんに負けぬように声を張り上げた。
「オトモするニャ!!」
というわけで、外湯クエストの始まりである。
渋温泉の外湯巡りは、一番湯の“初湯”から九番湯の“渋大湯”まで9つの共同浴場を巡るものだ。“苦(九)労を流す”という願掛けの意味もあるありがたい湯けむりツアーで、付近の住民の方や渋温泉の宿に泊まっている人には各湯の扉を開けられる鍵が渡されていて、利用することができるのである。この外湯巡りとも『3rd』はコラボレーション。“九頭巡りスタンプラリークエスト”と題し、各湯にモンスターを当てはめてこれを討伐するツアーに見立てている。↓こんな感じ。
●一番湯・初湯:クルペッコ
●二番湯・笹の湯:ティガレックス亜種
●三番湯・綿の湯:ロアルドロス
●四番湯・竹の湯:アグナコトル
●五番湯・松の湯:ベリオロス
●六番湯・目洗の湯:ナルガクルガ
●七番湯・七操の湯:ハプルボッカ
●八番湯・神明滝の湯:リオレウス
●結願湯・渋大湯:ジンオウガ
●渋高薬師
各浴場の外にはスタンプが置かれていて、配られた手拭いに押していくことで“クエストクリアー”になっていくという趣向だ(お湯に入らなくてもスタンプは押せますヨ)。
小嶋さんとふたりで、早朝の渋の街に出る。空から落ちてきていたミゾレは完全な雪となり、さらに気温が下がったことを俺たちに伝えてきた。本気で寒い……。しかし、旅行者の勝手な言い分だがレトロな雰囲気の街に舞う雪ほど幻想的なものはなく、俺たちはしばしのあいだ寒さも忘れてまわりの景色に見惚れてしまった。「旅情、マックスですね……」と小嶋さんがつぶやいた。
今回のコラボレーションのことや『3rd』のことを話しながら、ふたりでポクポクと石畳の街を歩く。温泉宿には浴衣の女性も似合うが、作務衣と半纏のおじさんふたりもなかなか絵になるのである。
まもなく、9つの湯の中でいちばん大きいという“渋大湯”に到着した。「まずはここに入っちゃいましょう!」と小嶋さん。前述の通り俺は渋温泉に来るのは2回目だが、2泊3日の期間中、まったくと言っていいほど外に出ずに狩りばかりしていたので一度も外湯に入っていない。なのでどの湯であろうと、新鮮この上ないのだ。「入りましょう入りましょう! つーか、寒いので早く入りましょう!!」と俺はわめいた。
“大湯”というだけあって、ジンオウガの名を冠した渋大湯の湯船は大きかった。さっそく作務衣を脱ぎ捨て、小嶋さんと同時に湯船のお湯を足にかけてみる。すると……!
「うわっちゃっちゃっちゃ!!」(大塚)
「ひぃぃぃ!! あっちぃぃぃい!!」(小嶋)
そう、源泉掛け流しの渋温泉のお湯は、とっても熱いのです(笑)。
それでも、渋大湯の湯は我慢して浸っているとじきに熱さが身体に馴染んできて、とってもとっても気持ちよくなってくる。温泉成分が遠慮なく、身体に染み込んでいく感じが、なんとも言えずありがたい。「はぁ〜……極楽……」と、俺と小嶋さんは悦に入った。
ほどよく温まったところで、俺たちはつぎの湯に向かうことにした。外は相変わらずの雪だったが、渋大湯でポカポカになった身体は“寒さ無効”のスキルが発動したかのように強靭になっている。「あついあつい」と言いながら、俺たちは雪が舞う小道に出た。
せっかくなので、渋大湯の真上に設置された狩猟祈願神社で願掛けをすることにした。そして、そこにあった足湯に入ることに。「そこでPSPを出して、ひと狩りやっちゃってくださいよ♪」と小嶋さん。なるほど。そりゃあいい。じゃあお言葉に甘えて、さっそく……。しかし足を浸した2秒後に、俺は飛び上がった。
「うわっちゃっちゃっちゃ!!!!」
渋大湯もそうだったが、この足湯も俺たちが一番風呂なのだろう。まだまったく水で薄められていないので、熱さがむき出し状態なのである。「あはははは!!」と笑いながら小嶋さんが撮ったのが、以下の写真。
ホント、熱かったわ〜(苦笑)。
さらに氷耐性がアップした俺と小嶋さんは、一番湯のクルペッコ討伐にやってきた。「ここ、昨日入ったときの熱さは渋大湯どころじゃなかったですよ……」と小嶋さん。でも俺は究極と思える熱さの足湯を体験しているので、小嶋さんの言葉はほとんどスルー。「へいきへいき。へっちゃらっすよ♪」と言いながら浴室に入り、桶で湯船のお湯をザバリと足にかけた。すると……!!!
「ぎゃあああ!! あっちいいぃぃいい!!」
俺は風呂の床で、裸でのた打ち回った。
そこに、小嶋さんが入ってきた。俺がのた打つ姿を見て小嶋さんは「大塚さん、大げさだナァ(苦笑)。いくらなんでも、そこまで熱くはないでしょ」と言い、「どれどれ。僕は昨日、入ってますからね」と桶で汲んだお湯を足にかける。すると……!!!
「は、はうっ!!!!! あっっっっっつい!!!!」
床に倒れ伏した小嶋さんは、そのまま動かなくなった(笑)。
何度も書くように渋温泉は、豊富な源泉をどばどばと掛け流している贅沢で豪快な温泉だ。なので各湯にはルールとして、「熱いときは水で薄めるように。そして、水は絶対に流しっぱなしにしないように」と注意が書かれている。俺たちは明らかな一番風呂だったので誰も水で薄めることをしておらず、本当に剥き出しの温泉を楽しめたというわけ。そういう意味では、とても貴重な体験ができたのである。俺は、どうやっても3秒以上浸かれないクルペッコの湯から飛び出し、あえぎながら小嶋さんに言った。
「ここ……どこがクルペッコなんすか……! めっちゃ強いっすよ!!」
俺と同じように湯船から飛び出し、床で固まったまま小嶋さんはこう返した。
「ルンルン気分でクルペッコの討伐に来たら、いきなりナルガクルガあたりを呼ばれて「ぎゃあ!」とか「わあ!」とかわめいている感じですね……」
それでもしばらくするとお湯が身体に馴染んできて、渋大湯と同じような極楽気分に(それでも、ふつうの温泉よりぜんぜん高い温度だと思うが)。
「今回は仕事でしたけど、今度ゆっくりとプライベートで訪れたい場所ですねぇ」
小嶋さんのこの言葉に、俺は素直に「うんうん」と頷くのだった。
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昨日サボった分際で、今日も軽く……。
『2nd G』の時代よりネコ好きハンターに絶大な支持を得ていたオトモアイルーだが、『3rd』になってさらに、そのラブリーさが増大した。ユクモ農場で見せる小生意気な表情に始まり、いっしょに温泉に入ったときの仕草、そしてクエスト中に見せる性格やスキルに基づいたさまざまな行動を見るにつけ、あまりのかわいさに卒倒しそうになる。
そんな、バラエティーに富んだ“新生オトモアイルー”の仕草の中で、俺がとくにお気に入りなのがスキル“オトモ同士の注意術”を発動したオトモが、サボっているもう1匹のオトモをぶん殴りに行くときのやりとりだ。「サボってるんじゃないニャ!!」、「ピッピと働くニャ!!」なんて台詞が聞こえてくる気がして、画面を見ながらついつい「ムフフフ」と笑ってしまう。オトモの注意に巻き込まれて採取がおろそかにされているのにも関わらず、ね。まあこのへんのことは、こちらのエッセイでも書きましたな。
さて、なんでこんなことを書き始めたのかというと、最近身近で“リアル・オトモ同士の注意術”を見てしまったからなのだ。そのことを記しておきたい。ちなみに、こっから先の文章は『3rd』とは99パーセント以上関係ないので注意してください。
我が家には2匹のネコがいる。体重が6キロもあるミュウという名の大きな雄ネコと、アクアという名の小柄な雌ネコだ。たびたび俺のエッセイには登場しているので覚えがある人もいるかと思う。
この2匹のネコ、ふだんはとても仲がいい。お互いペロペロと舐めあって毛づくろいをしてあげたり、寒い季節になると2匹で絡まるように丸くなってクークーと寝ていたり……。甘え上手な妹という風情のアクアのほうがミュウにべったりで、「遊んでニャ。かまってニャ!」と言いながらついて歩いている……という感じだ。その姿はじつに微笑ましく、ついつい「アクアちゃん、ダメでちゅよー。ミュウたんが迷惑がってるでちょ♪」と赤ちゃん語で話しかけてしまうほどである。大丈夫か俺は。
そんな、誰もがうらやむ仲のいい2匹なのだが、ときに怪獣大戦争もかくやという壮絶な大喧嘩をおっぱじめて近隣住民(俺のことだが)を凍りつかせることがある。拙著『本日も逆鱗日和』にこの壮絶なガチンコマッチの様子を綴った“メラルーとアイルーの決裂”というエッセイが収録されているが、なんとこれと同じことが3日ほど前にくり広げられてしまった。
その報は、1通のEメールでもたらされた。現地特派員からの「一触即発。早クモ流血沙汰。指示ヲ願ウ」という内容のもので、俺はすぐに「ヤツら、またおっぱじめやがったな……」と現地の状況を理解した。ドキドキしながら帰宅すると、すでに乱闘の張本人であるミュウとアクアはふすま1枚で区切られた別々の部屋に隔離されており、戦場には束の間の平穏が取り戻されているようだった。
「アクアがミュウの顔を見たとたん、突然“フンギャラギャーーーーッッッ!!!”と怒り狂ってミュウは防戦一方に。チビのくせにアクアの攻撃力はすさまじく、ミュウ、なんとか前脚で防御するも流血する被害を被りました。さらに、ガードをかいくぐったアクアの一撃がミュウの額を襲い、そこに爪が刺さりました」
乱闘が行われた時間は、わずか2秒足らず。すぐに2匹は引き離されて隔離状態になった……という。原因はさっぱりわからず、「とにかく、ミュウの顔を見た瞬間にアクアが飛び掛っていった」らしい。まったくこいつらは……。年に1回くらいのペースでこの2匹は乱闘をくり広げるのだが、いまだはっきりとした原因はわかっていない。でも、数時間〜3日ほどで何事もなかったかのように再びもとの「アクアちゃん、ダメでちゅよ♪」状態に戻るので、ますます近隣住民は困惑の度を深めるのである。
ためしに、俺は2匹を隔てている部屋のふすまをちょっとだけ開け、隙間越しに2匹を対面させてみた。何気にもう仲直りしているかもしれんからな。ところが、隙間からミュウの顔が見えたとたんにアクアは、
「フギャギャギャギャッ!! フニャーーーーッ!!」
といきり立って、ミュウに攻撃を加えようとする。ダメだこりゃ……。仲直りにはもうちょっと時間がかかるな……。俺はほとほと呆れ果てた。
しかしその瞬間、俺の脳裏にピカッと何かが閃いた。この様子、どこかで見たことあるぞ……。しかも、すごく最近……。しばし考えた後、俺はハタと思い出した。
「この2匹の様子、オトモ同士の注意術に似てるんだ……」
サボる仲間に「働くニャ!!」と渾身の一撃をお見舞いするオトモアイルーと、「なによ!」と言ってミュウを殴るアクア……。叱咤するオトモと、因縁をつけているとしか思えないアクアの差は大きいような気がしたが、「オトモ同士の注意術を考えた人は、こんなネコの姿を参考にしたのかもしれないなぁ……」なんてことを思うのでした。
ちなみに乱闘から2日後、ミュウとアクアはまたもとの「アクアちゃん、ダメでちゅよ♪」状態に戻りました。
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ジンオウガの攻撃は、想像していた以上に重く、そして速かった。あの巨体からするに、1発1発は強烈でも動きは鈍重で避けやすいのでは……と淡い期待を抱いていたのだが、それは手前勝手で能天気なゆとりオヤジの早とちり(そこまで言わんでも)だとすぐに気づいた。
ジンオウガとの初対決(厳密には初じゃないけど)は、苦戦を極めた。しなやかさと力強さを兼ね備えた立ち回りに翻弄されて、俺の口から出てくる言葉は「あの、その、えっと……」という狩場にはまったくそぐわないものばかり。超苦手な数学の時間に大嫌いな教師に「おい大塚、この問題を前に出て解けや(ニヤニヤ)」と指名され、問題の意味すらまったくわからずに無言で5分間立ち尽くしてしまった高校1年の夏を思い出してしまったほどだ。
柔と剛が同居するジンオウガのフットワークの基点となっているのは、とにもかくにもあのぶっとい前脚であろう。突進してきたと思ったら横にヒラリ、攻撃をぶちかましてやろうと間を詰めたら背後にクルリ……。フワリとした軽さとは違う「キュンキュンッ!」と切れるようなフットワークは、ストロー級のスピードを手にしたヘビー級のボクサーを想像させるものだった。ナルガクルガのそれとは違う“柔”を持ち、ティガレックスのそれとは違う“剛”を持つモンスター−−。
「こいつはやっぱり、一筋縄じゃいかねえぞ……」
攻撃をガードしていいのか避けていいのかわからず、やたらと狩場をウロつくだけになってしまった老境のガンランサーは冷や汗を流しながらそんなことをつぶやいた。
それでも、超頭がよくなったオトモアイルー、オリガミとレウスの活躍により、どうにかこうにかジンオウガに食らいつく。モンスターの注意を引き付けながら巧みに爆弾とブーメランを使って攻撃するレウス君と、ダンナが体力を減らしたとみるやすかさず回復笛を吹いてくれるオリガミちゃんがいなかったら、俺は開始5分で3オチして自室のベッドに転がされていたことだろう。
「この相棒たちがいれば、なんとかなりそうだ!」
クエスト開始から7分ほどが経過したところで、俺はようやく手応えを得た。
しかし、好事魔多し。
クエスト開始から10分、ついにジンオウガが持てる力をすべて解放する。そう−−。“超帯電”状態になってしまったのだ。
情報をシャットアウトしていたとはいえ、ジンオウガが動きを止めて雷光虫を集めて電気を溜め込み、恐るべき超帯電という状態になることくらいは知っていた。なのでジンオウガが雷光虫を集めようとするたびに「わーーーーっ!! 虫集めんな集めんな!! 漏電してますよ! 危ないですよ!!」と騒ぎ立てて必死の引き止めを図っていたのだが、ついに超帯電を“完成”させてしまったのである。「やばい!!」と思ったときにはもう遅い。俺は超帯電になった瞬間の雷撃を浴びて吹っ飛び、間髪入れずに襲いきた前腕の剛拳をモロに浴びて瞬時の昇天。開始10分で早くも2オチを喫してしまった。
しかし、真剣勝負の狩場においてまことに不謹慎だとは思うが、俺は超帯電状態になったライバルの姿に思わず見入ってしまった。「見惚れていた」と言ってもいいかもしれない。蒼白い雷光をその身にまとい、幽鬼のような揺らめきとともにより斬れ味の増した動きで獲物を仕留めんと侵略してくる。月明かりの下で閃く蒼い光の躍動を見ながら、俺はこんなことをつぶやいていた。
「名刀……」
雷光をまとったジンオウガの動きは、鍛え抜かれた刀そのものだった。光とともに獲物を斬り、光とともに駆け抜ける−−。その峻烈なきらめきは、獲物を仕留める道具でありながら、そのたたずまいだけで人を感動させてしまう名刀と同じものに見えた。
やっぱり、“象徴”と呼ばれるモンスターは違う。
かつて俺の前に立ち塞がった“ライバル”と呼べるモンスターと同じような、独特の“何か”をジンオウガは持っている。「これからこいつと、どれだけの名勝負をくり広げることになるんだろう」。名刀からくり出される痛撃が、俺の心に天邪鬼な喜びを生んだ。「俺ってホントにマゾなんかな^^;」。そんなことも思った。
クエスト開始15分で、俺はすべての回復系アイテムを飲み干した。でも同時に、屈強なジンオウガも苦しそうに脚を引きずり始める。もう、いっさいのハンデなし。人間とモンスター、ふたりの狩人が残る力をぶつけ合って決着をつけるだけだ!
俺はキャンプのベッドに戻るのももどかしく、エリアチェンジしたジンオウガの後を追った。これでねじ伏せられたとしても、まったく後悔はしない。この段階でどちらが上なのか、とにかくはっきりさせたかった。
唸るガンランスの切っ先が、ジンオウガの長い尻尾を捉える。そして、切断。この勢いで、ジンオウガが脚をもつれさせる。
「いまだ!!!」
俺は深く腰を落とし、その日初めての竜撃砲の体勢を作った。フルバーストも狙えるけど、ここはやっぱり竜撃砲しかない。『2(ドス)』の時代からともに歩んできたこの必殺技を、最後にジンオウガにお見舞いしたいんだ。
「いけえええええ!!!!」
チリチリと迸る種火に導かれるように、討伐隊正式銃槍の切っ先から相手を食い尽くすかのような巨大な火炎が飛び出した。視界を埋め尽くす凶暴な火のカタマリ。そのすべてが、ジンオウガに叩きつけられた。そして−−。
「グァオォォオオオオ……!!」
生命力に溢れていたジンオウガの悲鳴が、渓流にこだました。狩った……。すべてを出し尽くした結果、どうにかライバルとの最初の対決を制することができたぞ!!
「よっしゃああああ!!!」
クエスト開始から19分32秒。俺はようやく、ジンオウガを討伐することに成功する。持てるアイテムをすべて使い、オトモアイルーの活躍に再三助けられた、文字通りの“死闘”であった−−。
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ジンオウガと本気でやり合おうと思ったこのとき、俺がこのモンスターについて知っていることはほとんどなかった。一応、東京ゲームショウ2010の体験コーナーで対決はしていたが、いっしょにいったメンバーがメンバーだったので(中目黒目黒、女尻笠井、江野本ぎずもの3人)ドタバタにつぐドタバタとなり、「あの、蒼く光ってるデッカいモンスターはどなたでしょう??」なんて思っているうちにクエストは終了。この製品版でもとりあえずの対面は済ませていたが、こちらのエッセイにある通り「アレヨ! アレヨ!」と言ってるうちにハットトリックを達成して村に強制送還されてしまう。ジンオウガがどんな動きをするモンスターなのかその一端すら理解することは敵わず、こんにちに至ってしまった。
さらに書いてしまうと、俺はジンオウガにどんな属性の武器が効くのかもわかっていない。まあわかっていたところでこの段階では、無属性の討伐隊正式銃槍しか持っていなかったのでどうにもならなかったんだけどね。もちろん、これは故意的な情報遮断により生まれた状況である。
なぜそんな、自分に不利になるような状況に追い込むのか? 単純に俺がマゾだから……という理由ではないよ。
初めてナルガクルガに挑んだときのことを描いた“そのとき、樹海に黒い風が吹いた”というエッセイ(『本日もサヨナラ! 逆鱗日和』に収録)にも書いたが、ジンオウガのような将来ライバルになることが約束されているモンスターに初めて挑むときは、弱点についての情報や攻略の類はいっさい見ずに、可能なかぎりフェアな土俵に上りたいと思っている。「だからどうした」と言われればそれまでだし、「あらゆる手段を用いて挑んでこそ相手をリスペクトしていると言える」と言われれば「それも一理ある!」とヒザを叩いてしまうのだが、やっぱり俺はジンオウガのようなモンスターには、可能な限り“素”の状態で臨みたいと思ってしまうのだ。
その点においては今回も、胸を張ってライバルの前に立てるな−−。
自己満足以外のナニモノでもないが、この小さな事実は俺に、思った以上の喜びをもたらした。
月明かりに照らされた渓流の道なき道を、愛猫・オリガミとレウスを従えて突っ走る。黒雲が絡みついた大きな月は思いがけない強い光で水墨画のような風景を照らし、俺たち3人(?)のまわりに影絵のような陰影を作る。そんな景色の中を、ライムグリーンの雷光虫がヒュンヒュンと飛び交う。まもなく、互いの存在を賭けた壮絶な生存競争がくり広げられるとはとても思えない美しい風景……。俺は、不謹慎ながら夢幻の世界を彷徨っている旅人のような気分になって、しばし恍惚と静かな景色を眺め続けた。しかし。
「ウォォォオオオオォン!!!」
現れた異形の存在の遠吠えが、渓流に満ちていた静寂と月光を切り裂いた。来た−−。ヤツが来た−−!! 『3rd』を象徴する“雷狼竜”ジンオウガが、ついに俺の前に現れたのだ!! PSPを握る手に、必要以上の力がこもる。景色に癒されて余裕が生まれていた心が、ジンオウガとの邂逅の瞬間に一気に緊張で飽和状態になってしまったのがよくわかった。
それにしてもこのジンオウガというモンスターの、なんと雄々しいことか−−。トルコ石のような味わい深い青の身体に効果的なゴールドの装飾。小さな頭部とは裏腹に首から下の筋肉は一流アスリートのように発達し、その身体にとてつもない瞬発力を秘めているであろうことを主張してやまない。とくに両前脚の太さは特筆もので、この豪腕からどのような攻撃がくり出されるのかを想像しただけで震え上がってしまう。
(この才能が本気になって攻撃してきたら、俺はどうなってしまうんだ……)
PSPを持つ手に、さらに力がこもった。
しかし目の前に立つジンオウガは、ガードを固める俺の分身を下に見ながら、しばらくのあいだ動こうとしなかった。なんだよこいつ……。なんで攻撃してこないんだ? 拍子抜けしつつ、ジンオウガの顔を見る。そしてその瞬間、ヤツがいま何をしているのかを本能的に察してしまった。
「こいつ、俺を値踏みしてやがるな!!!」
ジンオウガは、俺を見ているのではなかった。睥睨していたのだ! 頭ふたつほども高いところから見下ろし、「この小さな生き物は、どれだけのことができるんだ?」と値踏みしていたのである。もちろん、これは俺が勝手に思ったことであり、人によって感じかたはぜんぜん違うと思う。でも、俺は見下されていると思った。そしてこの気持ちが、俺の闘争本能に火をつけてくれた。
「よーし、やってやる!! オリガミ! レウス! 援護してくれ!!」
言葉を自分に叩きつけ、俺はガードを解いた。そしてグッと深く踏み込んで、突きを1発、2発……。派手なエフェクトが、討伐隊正式銃槍がジンオウガの厚い胸板に確実に突き刺さったことを告げてくれる。よし、このまま叩きつけをお見舞いし、必殺のフルバーストをぶちかましてやる! 刹那の思考でそこまで考え、ガンランスを高く振り上げる。新モーション、叩きつけだ! まだ始まったばかりなので大勢に影響する攻撃でないことはわかっていたが、狩場の天秤をハンターサイドに傾ける景気づけにはピッタリだろう。ガンランスの重い銃身がジンオウガの頭目掛けて振り下ろされる。間違いなく、直撃する。そう思った瞬間、いきなり目の前からジンオウガの巨体が消えた。
「え!!?」
ジンオウガは発達した四肢の力を使って瞬時に横っ跳びし、ガンランスの叩きつけをかわして見せた。さらにその勢いで、太い前脚を使った重爆のような一撃をお見舞いしてくる。軽々と吹っ飛ばされる我が分身。狩場の天秤が瞬時に、モンスターサイドに傾いたのがわかった。
そしてクエストスタートから2分30秒。俺はあっさりと1オチを喫してしまう。いかん……。これじゃ前回の二の舞になるだけだぞ……!
もったいぶって、次回に続く!
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ジンオウガとの初対決でズタズタのボロボロにされ、しかも『3rd』では初となる3オチまで喫してしまい茫然自失の状態でユクモ村に強制送還された……というところまで昨日のエッセイで書いた。今日はその続きである。
初めて対峙して得たジンオウガに対するイメージは、「デカくて速くて強くて怖い」というものだった。言葉を覚えたての赤ん坊のような単純発言だが、このジンオウガというモンスターの特徴を端的に現せているんじゃないかと思う。
「怖いけど、早くこのモンスターとバチバチにやり合いたい!!」
3オチして帰ってきた直後、蒼白く光るジンオウガの姿を思い浮かべながら、俺はそんな台詞を放った。
しかし、このときの俺の防具は全身ユクモノシリーズのままで、武器もユクモノ銃槍改くらいだったと思う。手練のハンターだったらこの程度の装備でもジンオウガを屠り去れるのかもしれないが、もとより俺は手練でもなんでもない、ガンランスの使用回数が多いだけのおっさんハンターである。
「ジンオウガと対等に並び立つには、まだ時間が必要かもしれないな……」
趣深くてステキなユクモノシリーズの武具を眺めながら、俺はそうつぶやいた。
その日から、俺は「打倒! ジンオウガ!」を旗印にして村長さんのクエストをこなしまくった。キークエストがなんなのか調べてもいないので(いまだに知らない)、とにかく手当たり次第、採取も兼ねてクエストを受注しまくる。新生ガンランスでの立ち回りに慣れるとともに、集めた素材をつぎ込んで徐々に装備を整えていった。『モンスターハンター』というゲームは、捧げた時間にほぼ比例してハンターとしての“技術”と“知識”、そして“強い装備”が蓄積されていく。これにより、再び俺の前にジンオウガが立ち塞がったころ、我が分身は全身にジャギィシリーズの防具をまとい、手には討伐隊正式銃槍が握られていた。まだまだ十分な装備とは思えなかったが、ユクモノシリーズと比べたら格段の進歩と言える。
「よし! いま持てる力を『3rd』の象徴にぶつけてやる!!」
俺は、対ジンオウガに向けた準備を始めた。
まず持ち込むアイテムとして、『3rd』で初めて回復薬グレートを作った。いつかこんな日が来るだろうと、フィールドに出るたびにハチミツを集めていたのである。さらに、やはり『3rd』で初めてシビレ罠と落とし穴も持参。まだ秘薬を持てるような身分ではないので(栄養剤グレートもマンドラゴラも持っていなかった)オチてしまったときの保険が何もないのが不安だったが、いまはこの持ち物でやりくりするしかない。
「おっかねえよぉ……」
まだ体力プラス10程度しか効能がない、ほとんどニセ温泉と言えるお湯に浸かりながら涙声を発する俺。さっきまで「よし!」なんて言ってた俺は、温泉卵になってアオアシラに食われたらしい。
それでも俺は意を決してクエストを受注し、渓流フィールドに向かう。そこで待っていたものは……!
短いけど、今日はこのへんで。続きは次回ってことで!
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友だちとふたりで、お化け屋敷に入ったところを想像してほしい。
舞台は古い、江戸時代の街並み。
身のまわりにある灯りらしい灯りは、手にしている提灯の頼りない炎と、非常口を示す緑色の常夜灯のみ。そのかすかな光に照らされて、江戸時代の街並みがぼんやりと視界に広がっている。
こんな状況に放り込まれたとき、人の神経は異常なほど研ぎ澄まされてあらゆる物事に敏感になる。ほんの小さな物音に反応して飛び上がり、空気のゆらめきを感じただけで総毛立って悲鳴を上げたりする。そして、刃物のように尖がった五感は設置された怪しいポイントを見逃すことなく、心を身構えさせるだろう。
「あ! あの古井戸、絶対に怪しい!! 誰かが潜んでいて驚かしに出てくるに決まってる!」
こんな具合に。
でもここで、本当にその古井戸から魑魅魍魎が飛び出してきたとしたら、そのお化け屋敷は一流とは言えないのではないだろうか? そこから単純に何かが出てきても人は「!」となってくれるだろうが、身構えた心とはランス使いがガード性能+2とガード強化のスキルを発動させて貝のように固まっているようなもので、真の“ビックリ”を提供することはできないに違いない。
では、どうやったら人は心から驚いてくれるのか? 「!」ではなく「!!!!!」となるのか? 答えは簡単だ。心が弛緩したときに、驚きの燃料を投下すりゃいいのである。
このお化け屋敷だったら、「その古井戸に何かいるのはわかってるんだからね!!」と古井戸を覗かせて、「なあんだ。いないじゃん^^;」とこの子をひと安心させてあげるといい。そして、緊張から開放された心で「さあ、先に進もう^^」と後ろを振り向いたとき、そこにいるはずの友だちがいつの間にかゾンビになっていて(江戸時代にゾンビってのもナンだがw)「があああああぁぁぁああ!!」と襲い掛かってくる……。これだったら大概の人が、「!!!!!!!!!!」となってくれるのではないだろうか?
さてここで多くの読者が、「なんで『3rd』のプレイ日記のアタマにこんなことを書いてんだ?」と思われたに違いない。「角満のヤツは大丈夫か??」と心配された向きもあろう。でもご心配なく。安心して、ここから先の文章を読んでやってくださいな。
『3rd』を手に入れてまもないある日、俺は村長★2のとあるクエストに出向いていた。新生ガンランスの使いかたにもだいぶ慣れ、あたふたとしていた★1のときと比べて、かなり余裕をもった立ち回りができるようになってきていた。
俺はこのクエストにおいて初めて、新生ガンランスで竜撃砲を放った。じつは新必殺技・フルバーストの魅力に心奪われて、大好きだった竜撃砲をここまでまったく使っていなかったのである。しかし、心に余裕が生まれたこのときに「はっ!! そういや俺、まったく竜撃砲を使っていなかった!!」と気づき、「なんて不義理なことをしちまったんだ……。俺が悪かった><」と心改め、満を持して渾身の1発をぶっ放したのである。この勢いに乗って、なんとフルバーストの一撃でメインターゲットの討伐に成功。初の“フルバーストフィニッシュ”を成し遂げる。初めてづくしの、メモリアルクエストだ。俺は意気揚々とユクモ村に凱旋しようとした。
しかしその瞬間、フィールドの空気がいきなり変わった。そして、「ビービービーッ!!」と鳴り響く耳障りな警告音。な、なんだなんだ……。何が起きようとしているんだ……? あまりにも突然のことに、慌てふためくガンランサー。そんな俺の目に、意外すぎる文字が飛び込んできた。
「WARNING!」
ウソだろ……。なんでここで“乱入クエスト”になるんだ!? こんなの1ミリも想定してなかったよ!!
背後に流れるBGMは、俺の骨で作った楽器で奏でているんじゃないかと思えるほど悲愴極まりない調べに変わった。「これからおまえの葬式だよ……」と、ふいに現れた死神に告げられた気がした。俺の手はイヤな汗でびっしょりになり、かわいそうなほどカタカタと震えだす。あまりにも想定外の出来事に、心がパニックを起こしていた。
なぜ俺がこれほど心を乱してしまったのかというと、じつは「初の乱入クエストはコレだろうな」と勝手に確信していたクエストがほかにあったからだ。
村長★1のとあるクエストの名前を見た瞬間に「絶対にこのクエストはメインターゲットを屠ったあとにヤバいモンスターが乱入してくる」と決め付け、お化け屋敷の例で言うところの「何か出てくるのはわかっているんだからね!」の心境で出撃したのだ。しかしそのクエストはそれほど難しいものではなく、あっさりクリアーしてしまう。おかげで「なあんだ。たいしたことなかったな^^」と、すっかり心が“弛緩”してしまった。
そんな、安心しきった俺の心臓を乱入クエストが鷲づかみにした。悔しいくらい効果的に、驚きの燃料を投下されてしまったのだ。
「ウォオォオオオオン!!!!」
支給品を取りに戻った俺がベースキャンプで呆然としていると、聞いたことのないモンスターの遠吠えがビリビリと空気を震わせた。
「な、なにいまの声……」
画面中の我が分身と同じ縮こまったポーズをしてしまうリアルな俺。
「いまの声の主には、絶対に近寄っちゃダメ!!!」
と、俺の守護霊(いるのか?)が必死に叫んでいる声が聞こえた気がした。
しかし、俺は震える手でガンランスの柄を握り直した。
フィールドに降り立ったモンスターは、きっと“あいつ”だろう−−。
だとしたらここで、逃げるわけにはいかない。俺の存在を、新たなライバルになるであろう“あいつ”に、ちょっとでも刻み込まなきゃいけないんだよ!!
そして俺は『モンスターハンターポータブル 3rd』において、初の“3オチ”を喫する。迫り来る雷撃にガードを解くことができず、攻撃はすべて弾かれて、本当に何もできぬまま村に強制送還されたのだった。
それでも、俺は3オチを喫する間際に、どうにか“あいつ”にペイントボールをぶつけた。「俺のこと、覚えておけよ!!」の強がりを込めて……。
ジンオウガ−−。
俺というハンターの、新しい物語が始まった。
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土曜日(12月11日)、とある仕事をこなすために都内にやってきた。この週末は家に閉じこもって『3rd』をむさぼりプレイしてやろうと思っていたが、仕事となれば仕方がない。それでも、仕事の行き帰りに電車の中で遊べるだろうと、カバンに『3rd』のUMDが入れっぱなしになっているPSPを忍び込ませた。
そして無事、ある芸人さんたちとの収録を終えて、この日のお仕事は終了。ありがたいことに、かなり巻き(早め)で片付いた。さあ帰ろう。帰って『3rd』で遊ぼう。そうしようそうしよう。
その現場からちょっとでも早く家に帰ろうと思ったら地下鉄を利用するのがイチバンだった。が、俺は時間的余裕から得た安心感により菩薩のような心境となり、「のんびりと山手線に乗って帰ることにしよう」とつぶやいた。たまにありませんか? こういうこと。
しずしずと乗り込んだ山手線は、意外なほど空いていた。チラホラと立っている人もいたが、ポツポツと空いている座席もある。そんな感じの混みようだ。ふだん、その程度の空き具合ではまず席に座ることはないのだが、このときは「ちょっとでもいい環境で『3rd』をプレイしたい!」という思いが強く、ラングロトラのベロのごとき素早さでそのひとつに滑り込む。そしてすぐに、カバンからPSPを取り出そうとした。
しかしそこで、俺の隣に座っていたかなりキレイ(強調)な女の人の動きが、視界の端から脳髄に飛び込んできた。歳のころは、20代後半くらいか。長い髪が印象的な美人である。カバンに突っ込んだ手を止めて、ついつい目の端でその人の動きを追ってしまう。何かを予感していたのかもしれない。するとその人は太ももに乗せていたCOACHのバッグから、とある物体を取り出したではないか。なんとそれはPSP。しかも、最新のハンター工学に基づいて作られたという、かの“ハンターズモデル”ではないかっ!!
「!!! ハッ! ンターズモデルだ……」
思わず声が漏れそうになる俺。でも、そりゃあそうでしょう。山手線の車内で隣に座ったキレイな女の人が、コンパクトやケータイを取り出すがごとき自然な振る舞いでハンターズモデルを取り出したんだから。
こうなったら、もう俺の視線は釘付けである。
チラリチラリと、その女の人の動きを追い始める俺。チラリチラリと言うわりには、どんな細かな動きも見逃すまいと横目ながらギロギロと凝視する。いま思うと、明らかに気持ち悪いオヤジである(自分で言うな)。
彼女は不気味なおっさんが凝視していることも気づかずに、慣れた手つきで電源スイッチをスライドさせる。どうやら『3rd』がスリープ状態になっていたようだ(決め付け)。パッと光を発する液晶画面。見ると彼女の分身は、ユクモ村の村長にいままさに話しかけんとしているところだった。思った通り、PSPに入っていたソフトは『3rd』だったのである。
(さあさあ、なんのクエストを受注するんだ?)
ウキウキしながら横目凝視を続ける俺。すると彼女はなんと、村長★4のクエスト“砂上のテーブルマナー”を受注したではないかっ!! そう、かの難敵“ハプルボッカ”の討伐クエストである。
「ハッ!! ……プルボッカかよオイ……」
またまた声が漏れそうになる。それほどの衝撃を受けた。
ちょっと話が逸れますが、12月13日現在で88時間ほどプレイした俺の感覚だと、このハプルボッカというモンスターは“(現時点での)手こずる相手ベスト3”に堂々ランクインするほどの“クセモノ”だと思う。新モンスター特有の「何をされるかわからない!!」という恐怖にプラスして、四六時中砂の中に潜っていることからくる攻撃しにくさ、さらに射程の長い砂のブレスやジョーズを想起させる噛み付きなどがどれも恐ろしく、「なるべくならお付き合いしたくない!」と思わせるに十分な存在感を放っている。しかもいまだ、支給品として配られる音爆弾をどのタイミングで投げていいかわからねえし……。そんなハプルボッカに、この勇猛な女性は挑もうとしているのである。
(山手線のジャンヌ・ダルクだ!!)
と、俺は心の中で叫んだ。
ほどなく、彼女の分身は砂原フィールドのベースキャンプに現れた。そしてここでまたまた俺は、叫び声を上げそうになる。
「!!! ガッ!!! ンランスだよこのシト……」
そう、ジャンヌさんはガンランスを背にして砂原に現れたのである! ……まあべつに驚く必要もないのだが、まさかここで我がメイン武器と同じガンランスを背負ったハンターに出会えるとは夢にも思っていなかった。えーっと、この武器は……“真ユクモノ銃槍”かな? だとしたら、かなりいい選択だ。真ユクモノ銃槍は、攻撃力、斬れ味ともに非常に優れているからね(エラそう)。
ジャンヌさんはわき目も振らずに砂漠地帯に突入し、まもなく恐怖のハプルボッカに遭遇した。その迷いなき行軍は、ジャンヌさんがかなり手練のガンランサーであることを物語っていると言える。ワクワクが止まらない俺。さあさあ、その気高き銃槍でもってハプルボッカを焼き魚にしちゃってちょーだい!!
ジャンヌさんは背負ったガンランスをおもむろに前に突き出し、ハプルボッカの顔面目掛けて武器出し攻撃をお見舞いしようとする。しかし。
ガキーーーンッ!!
は、弾かれた!! ハプルボッカの顔はかなーり堅いけど、斬れ味の緑ゲージが長い真ユクモノ銃槍だったら問題なく刺さるはず……。ってことは、ジャンヌさんが持っている武器はほとんど斬れない古ユクモノ銃槍か、ユクモノ銃槍あたりってことか!
それでもジャンヌさんはめげず、ツンツンツンとガンランスの突き攻撃をハプルボッカ相手にくり出している。しかし、1発も砲撃を出さない。それどころか、彼女のガンランスには1発も弾が装填されていない。
(ホラッ! 弾を装填してッ! 新ガンランスは砲撃がステキなんだからサッ!)
ついつい口出ししたくなる俺。しかしジャンヌさんはひたすら突きをくり出して、砲撃するそぶりすら見せない(弾入ってないから撃てないけど)。その立ち回りは、丸っきりノーマルのランスである。
(ホラッ!! ボッカの動き止ってる! そこで突き2回やって叩きつけて、渾身のフルバーストをっ!!)
心の中での発言ではあるが、我がことながらうるさいったらありゃしない。
しかし、ジャンヌさんは慣れぬガンランスを持ったせいかハプルボッカにいいようにもてあそばれ、1回、2回と昇天していく。ああ……。手伝ってあげたい!! 俺がそう思った矢先に、ついに3度目の昇天をしてしまう。あああ……。残念……。自分のことのように落胆する俺。そんな俺の耳に、意外すぎる音が飛び込んできた。
「チッ!!!」
し、舌打ちキターーーッ!! ま、まさかこんなキレイな人が舌打ちをぶっ放すとは思わず、目を剥いてしまう俺。でもまあ、これだけボロボロにやられたら、ついつい舌打ちも出ちゃうわなあ。うんうん、そうだよね。悔しいよね。わかったわかった。皆まで言うな。ここはひとつ……。
「うぉっほん!!」
俺はじつにわざとらしい聞こえよがしの咳払いをかましたのち、大げさな手振りでカバンからPSPを取り出した。そして必要以上にPSPを前にかまえ、ジャンヌさんに画面が見えるようにする。俺もハプルボッカは苦手だけど、3オチするようなことはないかんな。ひとつお手本に、ガンランスによるハプルボッカのしばきかたを見せてやるかんな!
俺はユクモ村の村長に話しかけ、ジャンヌさんと同じく“砂上のテーブルマナー”を受注。砂原に向かった。その瞬間、ジャンヌさんの視線を確かに感じる。いやあ、ドキドキするな……。でもここで華麗な立ち回りを見せたら間違いなく尊敬され、もしかすると「あの……。よろしかったら、ギルドカードの交換などさせていただけたりしませんでしょうか(ハート)」なんてことになるかも!! うおおおお! 燃えてきた!! 待ってろハプルボッカ!!
プッシューーーー。
山手線が、どこぞの駅に到着した。
そしてジャンヌさんは何事もなかったかのように立ち上がり、俺のことなど一瞥もせずにスタコラサッサと電車を降りていった。
俺はこれ以上ないくらい赤面し、静かにPSPの電源を落とした。
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気がつくと、まったく武器のことを書いていませんでした。なので今回は武器のことを書きます。
全国のほとんどのハンターが、ハンター稼業を始めるに当たりメインで使っていく武器を決めていると思う。「俺、生粋の太刀使いだす!」、「ウチは双剣やわあ」、「『モンハン』と言ったら大剣しかねえべさ!」、「ワイのメインはピッケルじゃけえ」と、全国津々浦々のモンハン会話が聞こえてくるようではないですか(一部誤解アリ)。『3rd』から新たに『モンハン』世界に入ってこられた新米の皆さんも、おぼろげでもいいから「この武器と添い遂げようかな」というものをひとつ選んでおくと狩猟生活の彩りになっていいと思う。たったひとつの武器に絞ってしまうとキツくなると思うので、そこはぼちぼちファジーに。壁にぶつかったら、とっかえひっかえでもいいのです。心の内でちょっとだけ(俺はやっぱり○○が好きかも)と思っているだけで、ユクモノライフが潤うのですから。
でもここで、「ひとつの武器……っつーことは、最初に持ってる古ユクモノ鉈のみで進んで行けっつーことだナ」と勘違いしてはいけないよ。キチンと加工屋のおっちゃんに相談して武器を強化するなり買い換えるなりしてね! と、ついつい余計な心配をしてしまいます。
で。
今回のハンターライフにおいて俺がメイン武器に選んだのは、あろうことかガンランスであった。
「んなこたぁ百も承知だ!! 出来レース出来レース!!」
という声が全国214万人からいっせいに挙がった気がしたが、まあ聞いてくださいな。
『3rd』にはシリーズ最多となる12種もの武器カテゴリーが存在する。しかも、『ポータブル』シリーズ初登場となるスラッシュアックスを筆頭に各武器が大幅リファインされて、使用する上での“味”がかなり変わったと喧伝されているではないか。実際、製品版に先駆けて配信された体験版で試したところ、いままであまり使ってこなかった双剣やヘビィボウガンも動きに手が加わり、「なんじゃこりゃ!! 超楽しいんですけどっ!!」と目を剥いてしまうものになっていた。こいつは体験版に入っていない狩猟笛や弓も、心躍る使い心地になっているに違いない。
「『3rd』の武器庫は宝の山だ!!」
と、俺はPSPを握り締めながら絶叫した。
そんな、よりどりみどりであたし困っちゃう>< てな状況にありながらも、俺は『2nd G』で1500回以上も使ったガンランスを手に取った。と言っても、「武器縛りでやらなきゃ……」とか「使命感に押されて……」というどちらかと言うとネガティブな理由からではなく、本当に自然に、「よし。今日もよろしくな」というじつにナチュラルな流れからこの武器を手にしたのである。漁師が釣竿を持つように、カメラマンがカメラを手にするように、大塚角満はガンランスを手にした−−。ただ、それだけのことだ(かっこよすぎ)。
終生のご主人様の元に帰ってきたガンランスは、『2nd G』までのそれとはまったく別物に変貌を遂げていた。もちろん、いい意味で。この使い心地、タマランぞ……。
12月10日午後1時現在、143回使用した上でのインプレッションとなるが、ガンランスでもっとも変わったのは“砲撃”の部分だ(と思う)。『2nd G』までのガンランスの砲撃はどちらかというと“つなぎ”の意味合いが強く、立ち回りのメインに据えることがほとんどなかった(相手モンスターにもよるけど)。ところが『3rd』では“クイックリロード”、そして“フルバースト”という新技が加わったことで、一躍砲撃に脚光が当てられることとなったのだっ!! もとより、砲撃が好きだからガンランスを使い続けていたと言っても過言ではないこの俺。そのバリエーションが増えたことは僥倖以外のナニモノでもない。
さっそくアオアシラ討伐クエストを受注して渓流フィールドに出向いた。ベースキャンプでガシャコンと弾丸を装填し、空突きを出してから虚空に向かって1発砲撃する。続けざまに○ボタンを押してクイックリロード。うん、じつにいい流れだ。しかもモーションがいちいちかっこいいし! さらに俺は「はあはあはあ!」と大興奮状態になって、「うりゃうりゃ!」と△ボタンを2回押して前方に突きを2発くり出す。さらにもう一度△ボタンを押すと、またまた新モーションの“叩きつけ”。それを見た俺は「キタ!!」と叫び、間髪入れずに○ボタンをズビシッと強く押した。すると……!
ズバババンッ!!
砲撃タイプが“通常型”のガンランスの切っ先から、一気に5発の弾丸がド派手に発射された。そう、これこそがフルバースト! 竜撃砲に次ぐ、ガンランスの新必殺技だ。
「ぎゃあ!!」
俺の放った記念すべき1発目のフルバーストの餌食になったのは、いっしょにクエストにやってきた江野本ぎずも。「どうやんのかなぁ〜♪♪」と楽しげに狩猟笛と戯れていたその背中に、5発の弾丸が命中したのであった。
このフルバーストという技、あえて例えるならボクシングのコンビネーションブローのようなものではなかろうか。一撃必殺のメガトンパンチをくり出す竜撃砲とは違い、目にも止まらぬ速さで「右左右左右ッ!!」とフラッシュのようにパンチをお見舞いしているイメージ……と言ったら伝わるかな? 1発放ったらしばらく使えない竜撃砲とは違い(砲身を冷却しなきゃいけないからね)、弾丸が入ってさえいればいつでも使えるところもじつに具合がいい。しかもこれまで、ガンランスは各砲撃タイプ(通常型、放射型、拡散型)の個性がそれほど際立っていなかったが、フルバーストは“装填中の弾丸の数に比例して攻撃力が高くなる”とのことで、一躍通常型にスポットが当てられることになった。これに呼応して、放射型は竜撃砲に、拡散型は溜め砲撃にダメージボーナスが与えられるとのこと(ファミ通に書いてあった)。つまり砲撃タイプによって、立ち回りに変化をつけられるというわけだ。
……と、エラそうに書いているが、いまのところどの砲撃タイプのガンランスを持っていっても「うっひょっひょ〜!!」と言いながらフルバーストばっかりやってるけどな。
江野本と出向いたアオアシラ討伐でも、俺はフルバーストばかり狙っていた。東京ゲームショウ2010で体験したときは緊張もあってかまるで出せなかったが、いまでは余裕で、ズババババンといつでもフルバーストを発射できる。正面から叩きつけてのフルバースト、背後から叩きつけてのフルバースト……。もう、楽しくてたまらない。
「ええええのっち!! フルバースト、超楽しいよ! ガンランス、めっちゃイケてる!!」
ピピピピピッとツバを飛ばしながら、フルバーストとともに溢れるガンランス愛をほとばしらせる俺。そんな俺を冷ややかに見ながら、江野本は凍てつく声でこう言った。
「……そのフルバーストとやらが、さっきから全部あっしに命中しているんですけどね……(−_−メ」
しかしそんな声も耳に届かず、俺はいつまでも「うひょひょひょひょーーーっ!!」と言いながらフルバーストをぶっ放し続けたのであった。
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『3rd』には、見て楽しい、触ってうれしい新機能が多数盛り込まれている。前作『2nd G』の時点で「これ以上快適なユーザーインターフェースはありえないだろう」と思っていたのだが、いざ『3rd』をプレイしてみると「コレうれしい!!」、「アレも感激!!」という場面にたびたび出くわして、驚くやら感動するやらで忙しくてたまりません。たとえば、調合リストから調合ができる“リストから調合”や、つねに安定したステータスアップが図れる集会浴場の温泉、非常に頼もしくなったオトモアイルーなんて、その最たるものだろう。そして、システム面でゲームの序盤から楽しませてもらっているのが“ふらっとハンター”システム。コレ、なんだかとっても楽しい。
ふらっとハンターとは、ギルドカードを交換した狩友の分身が本当にふらっと、オフラインの集会浴場に現れてくれる……というシステムだ。NPC(ノンプレイヤーキャラ。コンピューターが制御するキャラクターね)と同じ扱いなので厚いコミュニケーションができるわけではないが、いままでNPCしかいなかったオフラインの集会所に血の通った狩友の分身がいてくれるのを確認するだけで、妙にうれしくなってしまう。ふらっとハンター最高。
と言っても、まだ俺は12人としかギルドカードを交換していないので(12月9日現在)集会浴場にやってくる人もかなり限定されている。毎回のように俺んちに来て温泉に浸りまくっている人もいれば、まったく現れない人もいる。たった12人なのに、それぞれがかすかな特徴……というか傾向がある感じがして、おもしろくてたまらない。
そしてこのふらっとハンター、話しかけるとときたま、ささやかな贈り物をしてくれることがある。ここにもまた、狩友の分身によって傾向がある気がして(気がしているだけだが)ちょっとおもしろいのだ。
たとえば、わりと頻繁に現れる次長課長の井上聡さんの分身は、なぜかしょっちゅう“ピッケル”をプレゼントしてくれる。なんとなく、「大塚さん、狩りもいいですけど『モンハン』の基本は採取ですよ。しっかり掘ってくださいね」と言われている気がしてならない。なので俺は井上さんの分身にピッケルをもらうたびに採取ツアーを受注して、キンキンカンカンと石を掘ることにしている。おかげで今回は、マカライト不足に陥らないで済んでいます。
一方、井上さんの分身以上に頻繁に俺の集会浴場に現れるEffort Cristal・ジャッ君の分身は、なぜか知らぬが“音爆弾”ばかりを俺に手渡そうとする。音爆弾は、『2nd G』まではイャンクック討伐の支給品ボックスに入っている4発を使わずに持ち帰って備蓄する……という方法で意地汚くかき集めたものだが、『3rd』では“支給用音爆弾”が導入されたのでこのセコ技は使えなくなった。なので、ふらっとハンターにプレゼントされる音爆弾は非常にありがたく、感激以外のナニモノでもないのだが、こうも毎回音爆弾ばかり手渡されると逆に心配になってくる。
(ジャッ君は気遣い男だから、俺が音爆弾不足に悩んでいることを知ってナケナシのコレを渡してくれているのではなかろうか……)
そんなことを思ってしまう。さらには、
(もしや「大塚サンは音爆弾使うのヘタクソだからコレを使って練習しなさい」とでも言おうとしているのか!!?)
なんてことまで深読みしてしまう。いったい、彼の本心はどっちなんだ!? ということでさっそく、ジャッ君にメールしてみた。はた迷惑な妄想オヤジは行動が早いのだ。
「じゃっくのふらっとハンターがいつも音爆弾をくれるのですが、なぜですか???」
メールを送信した2分後に、件のジャッ君から返事が届いた。いわく……。
「ちょ、ちょっと音爆弾を作りすぎちゃったもんで……(汗)」
「夕飯のおかずの煮物を作りすぎちゃったんで、おすそわけ♪」と言って近所に煮物を配りまくるサザエさんかおまえは(笑)。ニヤニヤしながらメールを眺めていると、その30秒後にもう1通、ジャッ君からメールが届いた。開けてみると……。
「そういう大塚さんのふらっとハンターが頻繁に“虫あみ”をくれるんですが、なぜですか???」
ジャッ君の逆襲に笑いながら、「キミはモンスターをいじめてばかりいるので、たまには童心に戻って昆虫採集でもしなさい、と言っているんです」と返す。通勤の電車を待っているあいだの、小さな小さなやりとりだ。
でもこういうのって、おもしろいな。ふらりとやってくるNPC同然のキャラクターを媒介に、ちょっとおもしろいリアルな交流が生まれるなんて。『3rd』の懐は、まだまだ深そうだ。
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じんましんが出ました。いまも痒くて痒くて仕事が手につきません。
昨夜、“会食”の名を騙ったささやかな“狩り会”を上野の居酒屋で実施したのだが、そのときに「うめえうめえ」と舌鼓を打って食いまくったサバが悪かったらしい。会の終わりごろから「なんか、腹まわりが痒い気がする」と思い始め、こっそりとポリポリ。会を終えて電車で帰宅途中、両足の膝裏がやたらと痒くなってきてボリボリボリ……。家に着いたころには痒みは抜き差しならない状態になっていて、「痒い!」、「掻きたい!」以外のことが考えられなくなっておりました。すぐに上着を捲り上げ、とくに痒みがひどかった腹まわりを見てみると、ぶわわわわ〜〜〜! と赤いじんましんがズラリと並んでいるではありませんか!! じんましんの赤い発疹は秒単位で増えていき、気づけば俺の全身はボルボロスのようにボコボコに……。飲み薬や塗り薬も大して効果はなく、あまりに痒くて眠ることもできない。とたんに俺の精神はやさぐれ状態となり、
「もういいやどうでも……」
と言ってカバンからPSPをズルりと引っ張り出す。そしてズビシと電源を入れて『3rd』を起動し、コツコツと進めている村クエに……。おかげさまでまったく眠れなかったので、じつにクエストがはかどりました。
ありがとう、じんましん。こんなに村クエをこなせたのは、間違いなくあなたのおかげです。でも頼むからもう二度と、発生しないでくださいね。
……と、じんましんに向けたメッセージが完成しましたので、ふつうのコラムを書きたいと思います。とっても軽いお話です。
とある日。
相棒の江野本ぎずもと集会浴場★1のクエストに出かけた。何のクエストだったのかは忘れてしまったが、それほど重いクエストではなかったと思う。ま、狩人の入り口でもある★1のクエストだからな。
場所は、『3rd』で初登場となった新フィールド“渓流”であった。豊かに木々が生い茂り、美しい水の流れが生きとし生けるものの営みを育む、じつに情緒細やかなフィールドである。エリアのところどころで朽ち果てている人の生活の残骸が、なんとも言えない物悲しさと哀愁を演出している。この、人とモンスターの生活圏のはざまに落ちたかのような独特な雰囲気が、渓流というフィールドの“個”を際立たせているのは間違いない。
そんな渓流のベースキャンプを飛び出してエリア1に入ると、奇妙な姿をした鳥と思しき生き物が、のんびりと水面を突っついている姿に遭遇した。まん丸の胴体から生えた細長い首。その上についた頭は、スタイリッシュなほどに小さく、かわいらしい。そうこれ、『3rd』の新モンスターである鳥竜種の“ガーグァ”。人畜無害なモンスターで、ユクモ村の人々は家畜として飼いならして日々の生活に活用しているそうだ。
「おお!! ガーグァだガーグァだ!!」
こちとら、見るもの触るものすべてに安っぽく反応してしまう浪漫派ハンター。無害な存在とは言え、初見のモンスターには必要以上に絡みたくなってしまう。すぐに俺は、どこかマヌケな顔をした1匹のガーグァに近づき、「お近づきのしるしです」とつぶやいてから、ボコンと1発、そのケツあたりに砲撃を食らわした。
「!!! このおっさんいきなり、鳥に発砲したっ!!!」
やかましく騒ぎ立てる江野本ぎずも。黙れ黙れ。俺のガンランスは、モンスターと見るや自動的に発砲される武闘派仕様になってるんだ。しかたないだろ(んなわけねーだろ)。
見ると、俺に脅かされたガーグァは「ピギーーーーッ!!」と大げさにのけ反り、文字通りハトが豆鉄砲を食らったような表情で恐慌を来たしている。しかも、驚きのあまり力んでしまったのか、その股間付近にでっかい白い物体が……!
「あ!! ガーグァが卵産んだぞ!! やったやったうまそうだ!!」
ガーグァというモンスターの生態で特徴的なのが、脅かされるとついつい卵を産み落としてしまう(っていうか、漏らす?w)ことがあること。この卵は飛竜の卵や草食竜の卵と同じく持ち上げることが可能で、清算することができるというからタマラナイではないか。俺は嬉々としてホカホカでトレトレのガーグァの卵に飛びつき、やおらそいつを持ち上げた。「さっそく納品ボックスに収めてくる!」。そんなことを叫びながら。ところが……。
ひゅんっ! ズババッ!! ガシャーンッ!!
まるでクノイチのように背後から忍び寄ってきた女ハンターの凶刃が我が分身を一刀両断に斬り捨てて、新鮮で貴重なガーグァの卵は無残に落下してしまったではないか! 重力に導かれた卵はなすすべもなく地面に激突し、粉々になって消えてしまう……。その間、わずか0.7秒の惨劇であった。
「あw すいませんww 割れちゃった?w」
笑い混じりで俺に謝る江野本容疑者。つーか、割れるに決まってるだろーーーがっ!! せせせ、せっかく拾ったガーグァの卵が!! 貴重で新鮮な鳥の卵がっ!!
怒りのあまりプルプルと震えながら、呪詛と罵倒の言葉を必死に探す俺。そして「おま、あのな……!」と言いかけたところで、江野本の黄色い声が狩場にこだました。
「あ!! ウチのガーグァも卵産んだ!! さっそく持っていこーっと♪」
言うが早いかガーグァの卵に取り付き、スタコラサッサと走って消えてしまった江野本。そして「よし、納品……と。さ、クエストいきましょ♪」と言って、パタパタと先頭を切って走りだした。
「…………じゃ、俺らも、いこか……」
二の句が告げなくなった俺は愛猫・オリガミに寂しくそう言い、江野本にくっついて静かに静かに走り出した。
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ものすごく突然の告知ですが、アメーバブログにおいて“大塚角満のブログ”という、「ちょっと名称そのまんまやんけ」と突っ込みたくなるブログを始めました! 一応、ワタクシめのオフィシャルブログとなります。
ここに“大塚角満のゲームを読む”というブログがあるのにわざわざ外で何をやるのか? と多くの方が思われるでしょうが、アメブロのほうではゲームとは関係のない、僕の日常で起こったちょっと目を引く出来事や頭の中で考えていることなどを、おもしろおかしい文章で発信していくつもりです。
はっきり言ってしまいますが、ものすごくくだらないことばかり書きます。でもきっと、おもしろいものになるはず! なのでぜひ、この“ゲームを読む”の読者の皆さんもフラリと足を運んで、書店でおもしろい記事だけを立ち読みするような感覚で楽しんでいただければな、と。
おそらく最初のうちは、とても頻繁に更新すると思います。いままで書き溜めておいたエッセイがたくさんあるので、毎日のように新しい記事を楽しんでいただけるんじゃないかなあ……。ですのでぜひ、油断せずにチェックしていただければ。そしてこの“ゲームを読む”もいままで以上にバリバリ更新しちゃうので、合わせてよろしくお願いします!
【MHP 3rd】第12回 オトモなしではいられない!
ハンターネームをどうするか悩みに悩み、さっそくセーブデータを3つとも使ってしまった……というマヌケなところで昨日のコラムは終わってしまいました。でも、こうやってドツボにハマッたときってたいがい「この選択肢だけはないだろな(苦笑)」と思っていたところに着地してしまうもので、今回の俺もまんまと“かどまん”、“MIDOY”以上に「???」な名前で決着をつけてしまった。いまだに、「どうしてこの名前でナットクして始めてしまったんだろう……??」と首を傾げています。
こだわりにこだわった結果がこれでは目も当てられないが、もとより俺は楽天家。すぐに、どうということのない名前を見ても「ま、いっか」と思うようになり、「こういうこともある。しかたねえしかたねえ」と歌を歌いながら楽しくクエストに出向くようになった。単純な脳ミソは、こういうときにまことに便利である。
しかも、俺はこのハンターネーム事件(?)を経てひとつの決意を得ることになる。それは、
「最初に雇うオトモアイルーは、絶対に“あのコ”にする!」
というもの。“あのコ”というのはそう、『2nd G』の時代に最初に雇ったオトモアイルー“オリガミちゃん”のことだ。「ネコバァがオリガミを連れてきてくれるまで、オトモアイルーは雇わない!」と、俺は固く心に誓ったのであった。
さてここで、「ちょっと待てや」と言う人が現れると思う。その人はちょっと憤りながら「おまえは『3rd』のオトモアイルーのシステムを知らんのか?」と言うことだろう。ついでに「薄毛は大丈夫か?」とどさくさにまぎれて関係ないことまで言うかもしれぬ。でも、ご心配なく。もちろん知っておりますよ。『3rd』のオトモアイルーは自分で名前をつけられるってことくらいね! なのでその気になれば俺は、そこらをウロついている野良アイルーをとっ捕まえて「今日からキミがオリガミちゃんだよ! 嗚呼……やっと会えたねオリガミ……(涙)」と、いくらでも愛しのオリガミちゃんを生産することも可能なわけだ。実際、俺のまわりのハンターたちはネコバァから雇ったオトモアイルーに思い思いの名前をつけて、文字通りの猫かわいがりをしている。しかし、俺はこうしようとはまったく思わなかった。とりあえず最初の1匹だけは、ネコバァが連れてくるオリガミにしたかったのです。このこだわり……というか微妙な男心、わかっていただけるだろうか?
しかし、ネコバァは俺の男心がわからないのか、なかなかオリガミを連れてきてはくれなかった。「連れてきてほしい子がおったら、言うてちょうだいなぁ」と言ってくれてはいるので、画面に向かって哀願ボイスで「オリガミ連れてきてくだせぇ〜><」と訴えかけているのだが、なかなか思いは通じない。そうこうしているうちに友だち連中から「オトモ、2匹になってかわいさ倍増ですね♪」、「オトモを見ているだけで癒されるぅ><」なんてメールが届き、俺の焦りに拍車をかける。
(ももも、もしかしたら『3rd』には、オリガミという名のオトモアイルーはいないのかもしれない……!! 俺は一生、オトモなしで生きていかねばならないのか!?)
そんなことまで考え始めたある日(と言っても12月2日のことだが)、ついにネコバァのオトモアイルーリストに、“オリガミ”という名が表示されたではないか!! 俺は、ここ1年のベスト5に入るくらいのヨロコビを得て、会社の自席で轟いた。
「オリガミーーーッ!!! 会いたかったよおぉぉおお!!」
こうして無事、俺もオトモアイルーのオーナーになれたのでありました。そしてすぐさま、ずっと雇いたかった『2nd G』からのデータ引継ぎによって得られる“特典”のオトモアイルーを雇用(名前は“レウス”でした)。『3rd』のウリのひとつである“オトモアイルー2匹体制”は、こうして完成したのであった。
さて、苦労のすえに手に入れたオリガミちゃんだが、以下のような特徴を持っている。
・毛並み:アメショー
・攻撃方法:攻撃しない
・標的傾向:大型優先
・性格:平和主義
・コメント:ボクは採取とかを頑張るニャ!
どうやら、攻撃に加わる気がいっさいないらしい(苦笑)。ちなみに、もう1匹のレウス君は以下のようなオトモアイルーだ。
・毛並み:赤虎
・攻撃方法:爆弾とブーメラン
・標的傾向:バランス
・性格:勇敢
・コメント:攻撃こそ最大の防御なのニャ!
ものの見事に、正反対の特徴を持ったオトモがそろったようだ。
この2匹のオトモアイルー、なるほど、見ているだけですこぶる楽しい。オリガミは本気で攻撃をする気がなく、猛るモンスターに苦戦するダンナとレウス君を尻目にスッテケテーと採取ポイントに取り付き、虫の死骸やカラの実といったオマエちょっとエエかげんにせいよ的な素材をかき集めて♪マークを撒き散らしている。かたや、レウス君は確かに勇敢でたくましいのだがまるで採取には興味がないらしく、鉱石掘りやキノコ集めに汗を流しているダンナとオリガミを尻目にぐうたら親父のように寝転がって、「あ〜ヒマだニャ。用があったら起こしてニャ」と言いたそうな顔をしている有様だ。
このままでもおもしろくていいのだが、せっかくなのでお互いのいいところを見習ってもらおうとスキル“オトモ同士の注意術”を2匹に覚えてもらった。サボッているオトモを見るとボカンと殴って注意するという“アレ”である。
さっそくオトモ同士の注意術を覚えた2匹を連れてクエストに出向いた。すぐに採掘ポイントを発見し、採掘を始める俺とオリガミ。そしてその真後ろでいつものように、レウスがだらけだした。すると……。
ボカンッ!!!
サボるレウスを見て烈火の如く怒った平和主義のオリガミちゃん。モンスターには振るうことのない巨大ネコどんぐり(オトモの武器ね)を猛烈に振り回し始めた。ウンウン、えらいえらい。サボる子には愛の鉄槌だよね……って、コラ、オリガミ!! おまえの攻撃、全部俺に当たってんだよ!! やめろやめろ。おまえのどんぐりが当たって採掘ができねえ!! しかも最近はなぜか、勤勉だったオリガミも採取でサボることがあり、ここぞとばかりにレウスが「日ごろの恨みニャ!」とばかりに叱咤しようとする。もちろんそれも俺に当たり、またまた採取に支障が……(苦笑)。おまえたち、もっと仲良くしなきゃいけないよ……と、オトモ同士の注意術を教えた張本人でありながらそんなことを思うのであった。
でも今回のオトモアイルーは本当に使える。ものすごく頭がよくなったと思うのだ。これまでに何度、オリガミとレウスの活躍に助けられたことか……。このへんのエピソードは、またつぎの機会に。
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いったい何から書いていいやら……。
全国数百万のハンターが待ちに待っていた『モンスターハンターポータブル 3rd』が、12月1日に無事発売された。当然、俺もその日のうちにソフトを手に入れて仲のいい狩り仲間数人と一斉にパッケージの封を開けるという“開封式”を行い、幸先のいいスタートを切った。が、そっからがまことによろしくない。なんと仕事に忙殺されて、まるでゲームを遊べなくなってしまったのだ。仲間たちは開封式の勢いを駆って、徹夜明け(ソフトを買うために徹夜で都内の量販店に並んでいたのだ)にも関わらずガンガン狩りに出かけている。デモボク、忙シイ。狩リ行ケナイ。記事書カナキャイケナイアル。ボク悲シイ……と、ナゾの外国人のカタコト日本語思考に陥るほど悔しさとやるせなさで胸がいっぱいになるも、仕事が俺を机に縛り付ける。こりゃあもう、
「火星人が攻めてきたぞーーーっ!!!」
と嘘八百を撒き散らし、楽しく狩りをしている仲間連中を蹴散らしてやろうかとも思ったが、かわいそうなのでやめておいた。仕方ない。仕事するか(とっととやれ)。
そんなわけでなかなか『3rd』をPSPに入れることすらできなかったのだが、必死こいて仕事にひと段落をつけてどうにか12月1日中にソフトを起動することできた。時間はすでに午後3時。発売カウントダウンイベントの取材を終えて会社に戻り、開封式を行ったのが正午くらい。なので俺は3時間も、悶々としていたことになる。間違いなく、我が人生で最長の3時間だったわ。
さあやるぞすぐやるぞ。『3rd』を起動しちゃうぞ!! えーっと、まず最初に考えなければいけないことは……PSP本体を買ったばかりの“ハンターズモデル”に切り替えるかどうかだな。このたび無事、火竜の逆鱗なみにレアと言われるハンターズモデルを手に入れることに成功し、引越ししようと思えばいつでも、最新のハンター工学に基づいて作られたといわれるこのマシンに乗り換えられることになった。居酒屋とかバーとか大衆酒場で狩りをすることが圧倒的に多い俺にとって(酒飲むところばっかだが)、大容量バッテリーが標準搭載されたハンターズモデルは“珠玉”と呼んで差し支えない逸品である。俺のために作られた、と言っても過言ではないだろう(いや過言だが)。なので本来ならこんなところで迷う必要はなく、バリバリとサルのように梱包を開けてハンターズモデルをつかみ出せばいいのだが、なぜか俺の手はピクリとも動かない。そのくせ、近くで狩りをしていた江野本ぎずものハンターズモデルをチラリチラリと見て、ダラダラとヨダレをたらす始末である。
ハンターズモデルは、じつに美しかった。水墨画を思わせる煙ったような黒いボディーカラーに、ゴージャスなゴールドのラインがこれでもかと主張してハンターの目を奪う。背面に目を移せば“あの”大容量バッテリーが頼りがいあるファットなたたずまいを隠そうともせずにポコンとかわいらしく突き出しており、そこはかとない安心感を演出することに成功している。そしてそこに、センスよくデフォルメされたジンオウガのモチーフ。手にしたときのグリップ感はどこまでもよく、自慢の特製アナログスティックは「もう離れない!」という幻聴が聞こえるくらい、ほどよく左親指に吸い付いた。まさにコイツは“狩りをするために作られた”究極のPSPだ。
そんな逸品を、俺も持っている。なのでヨダレなんてたらす必要はいっさいないのだ。とっとと箱を開けて引っ張り出し、頬ずりだろうが添い寝だろうがなんでもしていいのである。
しかし俺はハンターズモデルを箱から出さず、代わりにカバンから使い古しのPSPを引っ張り出してその中に『3rd』のUMDを入れた。そして江野本に「ちょっとハンターズモデル触らせて」と言って強引に彼女のマシンを奪い取り、ベタベタといじくりまわしてその感触を確認した。続いて、ハンターズモデルの感触が残ったままの手に自分のPSPを乗せ、無言でプレイ開始。そんな、挙動不審のオッサン然とした俺に向かって、江野本が不思議そうに声をかけた。
「?? さっきから何やってんスか??」
ボソリと俺は応えた。
「ハンターズモデルで遊んでいる気になっているんだから、話しかけないでください」
ウナギ屋の前で白米の入ったドンブリを抱え、匂いだけでご飯を一膳食べるようなものか。そんな俺に向かって、心の底からの呆れ顔で江野本が言った。「ホント、このおっさん小っさいww」。
というわけで、ハンターズモデルはもったいないので触れません。しばらく封印することにします。
そんなこんなを経たのちに、ようやく俺の『3rd』人生が始まった。まずは、我が分身たるハンターを作成せねばならない。なんたってこれから数千時間は顔を付き合わせることになるのだ。慎重に慎重を期して命を吹き込まねばならない。
問題となるのは、ハンターネームだ。さて今回は、どんな名前で始めようか。いままでの『モンハン』シリーズは基本的にアルファベットでしかハンターネームをつけられなかったが、なんと『3rd』では平仮名はもちろん、漢字でも名前をつけることができてしまう。となったら、これしかあるまい。俺はハンターネームのところに、堂々と“かどまん”と入力した。
そしてついに、ゲームがスタート。美しいムービーを堪能したのち、ついに我が分身のかどまん君が、ユクモ村に降り立った。
しかし、どうにもしっくり来ない。
画面につねに平仮名の“かどまん”という名前が表示されていることが、どうにも気恥ずかしくてたまらない。なんというか、別人を操っている気がしてならないのだ。
そういえば最近ハマっていたシリアスなゲームで、主人公の名前を“かどまん”にして大いに後悔したことがある。気恥ずかしさは今回と変わらないうえに、ストーリーの要所で女性キャラから「あたしが愛しているのはかどまんだけなの! かどまん、こっち向いてよ! ああ、かどまん大好きよ!」とかなんとか熱烈な台詞をバンバンぶっ放されて、「ひえええ! へ、ヘンな名前付けて悪かった! ヘンな名前を連呼させて悪かった!!」と大いに反省したのである。『3rd』においてはこんな展開にはならないだろうが、他人のようなかどまん君を操り続けることは、ストレスにしかならないに違いない。仕方ないので俺はPSPを再起動し、新規のキャラを作ることにした。ところがまたまた名前が決まらず、十数分間も頭を抱えることに。うーん、どうしたもんだろうか……。すると近くにいた仲間のひとりが、「ここにいる何人かは、いつものハンターネームの最後にナゼか“Y”をつけてやってますよ」と教えてくれる。ナルホド。そうやってチームとしての一体感を出しているというわけか。そうかそうか。そうきたか。俺は「うん、そりゃいい。俺も乗るぞ」と言い、8秒前まで「慎重に」と言ってた俺は北斗百烈拳を食らって消し飛びましたと言わんばかりの勢いで、そのアルファベットをいつものハンターネーム“MIDO”の最後につけた。完成したハンターネームは、
MIDOY
である。
こ、これはなんて読むんだ? み、みどい?? それとも、みどぅーい??? うーん、読めん……。でもこれ以上新しい名前を考えるのは面倒くさいので、俺は自分でつけたくせに読みかたすらわからないという不幸な名前を背負ったキャラを操作し、再び同じムービーを堪能してからユクモ村に降り立った。
しかし、やっぱりしっくり来ない。
“他人感”はかどまんの比ではなく、まるでスズメとかカマキリとか地底人とか、とにかく人在らざるものを操作しているような気分すらしてくる。これでは数百時間も数千時間もゲームを続けることは不可能だろう。俺はうなだれながら「こうするしかないな……」とつぶやき、再びPSPを再起動。3人目のキャラ作成を始めた。
こうして、俺は開始約1時間ほどでセーブデータを3つすべて埋め尽くしたのであった。
ゲームはなかなか始まらない……。
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今日からがんがん、『3rd』のプレイ日記をアップしちゃうぞ!!
……と思っていましたが、でもその前に。どうしても区切りの1本を書きたくなりました。『3rd』発売直前に書き始め、ついさっき完成した、このエッセイを読んでやってください。
◆◆◆
いま、2010年12月1日午前2時14分。あと5時間もすれば、『モンスターハンターポータブル 3rd』のカウントダウンイベントが始まり(東京の渋谷TSUTAYA)、多くのハンターにソフトが手渡される。『ポータブル』シリーズの前作『モンスターハンターポータブル 2nd G』の発売から、約2年9ヵ月。400万人以上のファンを魅了したこのソフトの続編が、ついに発売されるのだ。
そんな“お祭り”を間近に控えた11月30日午後10時30分。俺と江野本ぎずもは会社近くの中華料理屋の席に座っていた。あと1時間で、お店は閉店。そんな瀬戸際(?)の店に飛び込んだふたりの手には、なぜかPSPが握られていた。
「さてはどこぞで入手した『3rd』をイチ早く遊びやがったな!?」
と思われる向きもあるかもしれないが、もちろんそんなことは1ミクロンもありません。じゃあこの土壇場で何をしたのかというと、あろうことか『2nd G』でありました。
なぜか? その理由はたったひとつだ。
俺たちはこの『2nd G』という稀代のコンテンツに、本当にいろいろなところに連れて行ってもらった。言葉通りに、モンハンフェスタを始めとするさまざまな取材で北は北海道、南は沖縄まで全国の至るところに行くことができたし、いろんな人と知り合う“出会いの場”もこれでもかと言うくらいたくさん提供してもらった。2008年3月27日の発売以来、公私ともに俺の生活の中心にあったのは間違いなく『2nd G』だ。それほどお世話になった存在とキチンとした形で“区切り”をつけたいと思い、我が相棒たる江野本と「『3rd』の発売前日に、ひとまずの“最後のクエスト”をやろうではないか」と話していたってわけだ。
俺たちが選んだ区切りのクエストは、毎度おなじみ究極の大連続狩猟“武神闘宴”である。「またか!!」と言われてしまうかもしれないが、ひとまずの区切りで挑むとしたら、ソロならモンスターハンター、ふたりでだったらやはり、武神闘宴しかない。
武器は当初、「とにかくいちばん好きな武器にしよう」ということで、武器種にも性能にもこだわらずに選択するつもりだった。なので俺は思い入れの強い“エンデ・デアヴェルト”にしようと思ったのだが、顔を突き合わせて「どうやればふたりでクリアーできるか」、「優位に進めるにはどすればいいか?」なんて話しているうちにどんどん武器が絞られていき、けっきょく古龍銃槍エンブレムに。なぜこうなったのかと言うと、スキルとして斬れ味レベル+1、ボマー、攻撃力アップ【大】をつけようとすると武器スロットまで使う必要があり、アレコレと考えるのがめんどくさくなって「もともとこのスキル用にセットされていたエンブレムでいいやもう」ってことになったのだ(苦笑)。一方の江野本は狩猟笛の“シャミセン【凶】”。グラビモス亜種に有効な毒属性かつ攻撃力アップの音色が吹けるので、この武器を選択してもらった。思い出に残るセピア色のクエストになるはずが、完全に“ガチ”じゃねえか(笑)。
闘技場に降り立った俺たちの前に最初に現れたのは、『2nd G』の象徴・ナルガクルガだ。
ナルガクルガ−−。
初めてこのモンスターの前に立ったとき、俺はその変幻自在の動きに翻弄されてガードを解くことすらできなくなった。一瞬にしてハンターの視界から消え、横や後ろから攻撃を加えてくるというトリッキーさとスピードはこれまでのモンスターにはなかったもので、そのスタイリッシュなルックスとあいまって俺は一気にナルガクルガが好きになった。「新たなライバルとして、幾多の激闘をくり広げることになるんだろうな−−」。初めて会ったそのときに、そんな確信を覚えたものだ。
俺と江野本はナルガクルガを相手に、閃光玉と音爆弾を駆使して果敢に立ち回った。最初の予感は当たり、俺たちふたりはことあるごとに「ナルガやろ!」と言っては樹海にくり出して壮絶なしばき合いを演じたので、いまやその動きは手に取るようにわかる。結果、6分30秒ほどで見事討伐。闘技場には、つぎのモンスターが現れた。
ティガレックス。
このモンスターを「もっとも苦手」とするハンターはじつに多い。俺も、そのひとりだ。ナルガクルガとは対照的な、ド真っ直ぐなシンプルな動きを身上としているモンスター。でもシンプルだからと言って、決して狩りやすいわけではない。迫り来る迫力は、数いるモンスターの中でも随一と言える。狩猟に慣れたベテランでも、ちょっと油断すれば一気に三途の川を渡らされてしまう瞬発力は、いつまでも脅威だ。
このティガレックス戦において、江野本が1オチ。ふたりして「いま何がおきたの?w」と笑ってしまったくらいアッと言う間に体力を削られてベースキャンプ送りになってしまった。それでも、35分24秒残しで討伐に成功。闘技場には、“あの”モンスターが現れた。
グラビモス亜種……。
多くの手練ハンターをして「もっとも狩りにくい相手」と言わしめる超重量級の横綱モンスターだ。巨大な身体に強靭な外殻を備え、ハンターの攻撃をことごとく弾き返す。この武神闘宴においても“最大の壁”と言われ、グラビモス亜種の討伐に手こずったがために時間切れの失敗を喫してしまったハンターは、星の数ほどいるに違いない。
俺たちはこの壁を越えるために、クエストに大量の罠と爆弾を持ち込んでいた。とにかくひたすら罠を使ってグラビモス亜種の脚を止め、爆弾を使ってダメージを蓄積させる算段なのだ。この作戦は功を奏し、22分30秒残しで討伐することに成功。しかし途中、巨体に巻き込まれた江野本が2オチ目を喫してしまう。
そして闘技場に4頭目のモンスター、ディアブロス亜種が現れた。
スピード、体力、攻撃力の3部門で、ディアブロス亜種ほどバランスの取れたモンスターはいまい。自由に動き回らせてしまっては本当に付け入る隙がなく、何もせぬまま3オチを喫して泣きながら村に帰るしかなくなってしまうだろう。先のグラビモス亜種のことを武神闘宴における“壁”と書いたが、ようやくその壁を乗り越えたところで現れるディアブロス亜種の存在感は、やはり格別だ。ヘロヘロのハンターに、このモンスターの迫力はあまりにも残酷である。
そんなプロレスラーのようなディアブロス亜種に、俺たちは閃光玉で対抗した。とにかく闇雲にパーンパーンと閃光を炸裂させ、脚を止めにかかったのだ。これで、どうにかクリアー。12分50秒という時間を残して、“最後のあいつ”が現れた。
激昂したラージャン−−!!
『2nd G』におけるキング・オブ・モンスター。俺のラージャン狩猟数は70頭ほどだが、間違いなくこの3倍くらいは、我が屍がラージャンの前に転がったはずだ。ナルガクルガやティガレックスにもさんざん苦労させられたが、数を重ねたことによって、「あ。いま俺こいつを超えたかも」と思えた瞬間があった。しかしこのラージャン(激昂はとくに)についてはついに一度も、「上をいけた!」とは思えなかった。そういう意味でラージャンは、いつまでも俺の上に存在する、唯一無二の絶対的な存在なのである。その激昂したラージャンに、区切りの立ち合いを挑んだ。
しかし、さすがラージャンだ。俺たちはわずかに残った回復系のアイテムを齧りながら必死に立ち回ったが、残り時間7分ほどを残したところで江野本が昇天−−。これで3オチとなり、クエストは終了と相成った。区切りの武神闘宴は“失敗”となったわけである。
それでも、俺たちに暗さはなかった。
「3オチしてしまってすみません……。……でも、本当に楽しかった! これから『3rd』に夢中になっちゃうわけですけど、たまーにここにも帰ってきたくなるかもw」
にっこりと笑って、江野本が言った。うん、ホントにそうだな。どんなにほかのゲームに夢中になっても、また帰ってきたくなる魅力が『2nd G』にはあるんだよな。
だから、ひと区切り。お別れじゃなく、ひと区切り。
俺はゲームを終了し、『2nd G』のUMDをPSPから取り出した。そして、2年9ヵ月ものあいだ開けることのなかった『2nd G』のパッケージをパカッと開き、元の場所にUMDをカチャリと収める。
「よーしいまから、『3rd』に一直線だ!! 『2nd G』に注いだ以上の愛情を、『3rd』に注ぎまくっちゃおう!!」
俺のこの言葉に、江野本は元気に「はい!」と応える。
また新しい狩りが始まろうとしていた。
でも、その前にひと言。
ありがとう、『モンスターハンターポータブル 2nd G』。
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時計の針が深夜0時を過ぎ、12月1日になったのを確認してから、取材用のカバンを肩にかけて編集部を出る。地下駐車場でカメラマンと合流し、彼の運転するクルマに乗って深夜の青山通りを走った。
目指すは渋谷。
『モンスターハンターポータブル 3rd』の発売カウントダウンイベントが行われる渋谷TSUTAYAがこの段階でどのような状況になっているのか、“夜回り”に行く算段なのだ。現場に到着して行列が伸びているビルの非常階段を見ると、すでに200人以上が並んでいる様子。『2nd G』で協力プレイをしている人、膝を抱えてじっと動かずに体力を温存している人、寝袋にくるまって仮眠をしている人……。それぞれが思い思いの体勢で、やがてもたらされるとびっきりのクリスマスプレゼントの到着を静かに待っている。そしてこの段階ですでに、都内のほかの行列スポットにも長大な行列が発生。本格的に熱い冬の1日が始まろうとしていた。
渋谷を出た俺とカメラマンは、池袋、秋葉原の行列スポットをチェックしたのちにいったん帰社。軽く腹ごしらえをし、書きかけのコラムを消したり書いたりしているうちに、時計の針は午前4時を回ってしまった。よし。ちょっと早いけど、渋谷に向かおう。発売の喜びを、多くのハンターと共有するために。
午前4時半の渋谷TSUTAYAには、すでに400人を超える人が並んでいた。すでに非常階段に並びきらず、外にはみ出してしまった人々は店頭に行列を成している。その列もみるみるうちに伸びていき、始発電車が動き始めたころにはセンター街の入り口付近にまで達した(数にして150人ほどか)。このままではどこまで伸びていくかわからない。それほどの勢いだった。
この長い行列を、たまたまTSUTAYAの前を通りかかって目撃した渋谷族の女の子たちが口々に「え!? 何この行列!」と目を丸くして驚いていたのがおもしろかった。そんな彼女たちは必ず、ぶっ飛んだ表情のまま視線を動かして店舗の入り口にたくさん貼られた『3rd』のポスターやポップを眺め、「あ!! もんはんだもんはん! もんはんの発売日みたい!!」と大声でぎゃーすぎゃーすとわめき散らしていた。勝手な印象で書いてしまって申し訳ないが、ゲームとはまるで縁のなさそうないまどきの女の子たちが口を揃えて「もんはんもんはん!」と合唱しているのを聞いて、改めて「『モンスターハンター』の知名度と裾野は広がってきたんだなぁ……」と思ったりする。しかしここで店舗側は、近隣への迷惑と危険防止のために、非常階段に並んだ約400名と予約者のみに絞って早朝販売を行う旨を発表。店頭にできた行列は解消となり、行列からあぶれてしまった多くの人は大慌てで都内のほかの店舗に散っていった。
そして店の中では、辻本良三プロデューサー、次長課長の井上聡さん、パンクブーブーの佐藤哲夫さんによるカウントダウンイベントが実施。その模様はニュース記事に詳しく書かれているので、そちらをぜひご一読ください。
カウントダウンイベントがとどこおりなく終わり、行列に並んだ熱心なファンひとりひとりに『3rd』のソフトやハンターズモデルが手渡されていく。そこにいたのは、年齢、性別もバラバラな、文字通りの老若男女のハンターたちであった。50がらみの熟年男性もいれば、渋谷な匂いを発散させている若い女の子もたくさんいる。『モンハン』の裾野の広がりを物語る、モデルケースのようなバラエティーに富んだユーザー構成だ。開発チームやパブリシティーチームの面々がずっと抱いていた“ユーザーの裾野を広げたい”という思いから生まれた取り組みの数々が、確実に実を結んできているのを実感した瞬間だった。
多くのハンターが手に入れたばかりの宝物を持って家路を急ぐ姿を間近に見ながら、俺はたくさんの人と話をした。
“ミスターモンハン”こと、シリーズの世界観監修を務める藤岡要ディレクターは「すごくよくできた孫の旅立ちを見ているようですね」とにっこりと笑った。そして「僕もがんばらにゃ、と強く思います」と言って目に力を込める。
いつも自然体で緊張知らずの辻本良三プロデューサーは珍しく「なんか今日、緊張しましたわ……」と言ったあと、「いまはちょっとだけ、ホッとしてます。でも“またすぐにスタートだな”っていう思いも強いです」と遠くを見るような表情で語った。開発陣が一生懸命作った作品を世間に訴えかけることがプロデューサーの役目。そういった意味で、まだまだ良三さんが休まることはないんだろうなと、徹夜明けで充血した彼の目を見てしみじみと思った。
良三さんと同様にこれからが腕の見せどころである小嶋慎太郎アシスタントプロデューサーは「まだまだ! これからです!」といつもの熱い口調で言い放った。そして別れ際にさっと右手を出して俺の手を取り、「今回も長い付き合いになると思いますけど、『3rd』もよろしくお願いします!」と言って握った手に力を込める。本当にこの人は、熱い男だ。俺はそんな小嶋さんの手を握り返して、「こちらこそ。今回もオトモさせていただきますね」と心からの声で応じた。
加速度的に大きくなる『モンスターハンター』の存在を目の当たりにしたとき、自分の存在のちっぽけさを痛感して立ち尽くしてしまうことがある。「俺は何を書いたらいいのだろうか?」。そんなことを思って、筆が鈍ってしまったことは一度や二度ではない。
それでも気がつくと、俺は出会ったステキな仲間たちのことやおもしろおかしかった出来事、そして感動的なシーンを思い起こしていくつもいくつも文章を書いている。『モンスターハンター』というゲームだからこそ出会える奇跡のような瞬間を切り取って、みんなに見せたくてたまらなくなるのだ。
よーし、やりますか!
『モンスターハンターポータブル 3rd』という新しい世界で、あまたの出会いが俺を待っているのだ。
深く考えずに、シンプルに、ただ狩りの懐へ−−。
皆さん、PSPを持ちましたか? 2年9ヵ月前に『2nd G』に出会ったときと同じように、あの言葉とともにフィールドに飛び出そう。合言葉は、そう!
「一狩りいこうぜ!!!」
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大塚角満

週刊ファミ通副編集長にして、ファミ通グループのニュース担当責任者。群馬県出身。現在、週刊ファミ通誌上で“大塚角満のモンハン研究所”というコラムを連載中。そこら中に書き散らした『モンハン』がらみのエッセイをまとめた単行本『本日も逆鱗日和』シリーズ(4巻)が発売中。また、そこからのスピンオフとして別の視点から『モンハン』の魅力に迫る書き下ろし作品『別冊『逆鱗日和』 角満式モンハン学』シリーズも。このブログではさまざまなゲーム関連の話題を扱うつもり。一応、そのつもり。
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