大塚角満の ゲームを“読む!”
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※連載回数が前回の190から192に飛びましたが、じつは途中で回数を間違えていたことが『トッテオキ!』の編集さなかに発覚し(苦笑)、今回から正しい表記に修正します! 単行本ではもちろん修正済みです! ゴメンナサイ!
ここのところずっと、9月17日発売の『本日もトッテオキ! 逆鱗日和』の編集・校正作業を行っている。この『トッテオキ!』は書籍の説明文を読むとわかると思うが、『逆鱗日和』シリーズを刊行するタイミングから外れてしまい、泣く泣くお蔵入りになってしまったエッセイの集まりとなっている。なので、収録エッセイが書かれた時代(大げさだナ)もじつに幅広く、古くは2008年10月、新しいものでは2010年8月に書いたものまでが収められているのだ。なので書いた本人も校正紙にある古いエッセイを眺めては、「ほえ〜! こんなん書いたっけー!」とか「いやあ懐かしいなあ。バカだなあ」とかとか、感心したり呆れたりしてまことに忙しいのである。
しかし改めて昔のエッセイを読むと、華々しくぶち上げたのはいいものの結論……というか“後日談”が書かれていない企画が多くあることに気づく。たとえば、トレジャーハンターのその後の話とか卵運びのタイムアタックの結果とか、ソロガンランスによる双獅激天チャレンジの様子とかとかとか……。うーん、書き出したらキリがないな。我ながら、中途半端なところで報告が止まっているお話がこんなにあるとは思わなんだ。うーん、こいつはどうしたもんだ……。うーんうーん……。
ま、いいか^^;
いまさらジタバタしてもしょーがないしな。きっと読者の皆さんも、これらのエッセイの存在は忘れているだろうし。うん、ダイジョブ。平気平気。
俺は「ま、いいやどうでも……」と独り言を言いながら、最近激ハマり中のお菓子、亀田製菓の“パウダー250%ハッピーターン”をボリボリとむさぼり食った。昔からハッピーターンは大好きで物心つく前から食べ続けているのだが、子ども心にも「このお菓子についている粉、もっとたくさんあればいいのにー」と思っていたりした。この30年来の切なる思いが通じたのか、ちょっと前からコンビニでハッピーパウダー増量のハッピーターンが売られている。俺は2個、3個とハッピーターンを口に放り込み、「250%と言わずに300%、いや、いっそ“ハッピーパウダーオンリー”という粉末も発売してくれないかしら……」と独り言を言い続けた。すると……。
「“ま、いいか^^;”じゃないでしょー!!」
大量の校正紙を抱えた江野本ぎずもが、グレムリン化して食ってかかってきた。かなりの剣幕である。
「ウチはずっと気にしてましたよ! 中途半端で終わっているエッセイがたくさんあることを!」
江野本はプリプリしながらそう言ってハッピーターンの袋からパウダーが320%ほども付着した“上モノ”を1枚つまみ出し、ボリボリと噛み砕いた。「この優良な1枚は最後に食おう」と思っていた俺は、プンスカと憤慨する。
「だってしょうがないだろ。こういった企画モノを本気でやるとなるとまとまった時間が必要だしさー。忙しくてなかなかできんのよ。つーか、俺の320%をよくも……」
すると江野本は怒ったネコのように「フンッ」と鼻を鳴らした。
「それはわかってますけど、運搬タイムアタックとかはできるでしょう? おいどんが持つ“2分22秒”の“さいたま記録”に挑戦してくださいよ」
そう言って江野本はドスンと校正紙を俺の机の上に置き、自分の席に帰っていった。うーん、なるほど。運搬タイムアタックか……。
言われてみると確かに、2分ちょっとで1回の挑戦を終えられる運搬タイムアタックだったら、仕事の合間にやることも可能だ。ヨシ、いっちょやってみるか。ネタになるかもしれないしな!
さっそく俺はPSPのスリープ状態を解き、『2nd G』を立ち上げた。見ると、アイルーフェイクを被った、人を小バカにしたようなキャラが自室でたたずんでいる。すぐに、訓練所に。運搬クエストのタイムアタックは、ここにある“初心者演習”の“基礎訓練”の“運搬”で行うのだ。このへんの詳細は、絶賛編集中の『本日もトッテオキ! 逆鱗日和』でご確認ください(ニヤリ)。
俺は、「ま、久々だから様子見も兼ねて軽く回ってこよう」と言いながら1回目のチャレンジを始めた。ベースキャンプに現れた我が分身を右側の壁伝いに走らせて、エリア1との切れ目を目がけてジャンプさせる。このとき、着地のモーションをしながらエリアチェンジができれば“タイムロスなく進めた”という証だ(……俺と江野本の勝手な理論だけどw)。しかし、久しぶりということもあってか俺はまんまとコレに失敗し、我が分身はエリアチェンジポイントの遥か手前に着地してボーゼンと立ち尽くす。
「ハイ、リセット……っと」
「軽く回ってこよう」なんて思っていた俺は夜叉猿に屠り去られましたと言わんばかりに俺は目を血走らせ、「だからイヤなんだよブランクって……!」といつの間にか本気になって再度同じ演習を受注した。
2回目。今回もまたまた、ベースキャンプからエリア1への移動に失敗する。でもここでリセットしたら俺は一生ベースキャンプから出ることはないだろう確信し、「なんのなんの……」と言いながらエリア1に突入した。しかしここで、のんびりと群れを作って歩くポポ軍団の1匹の後ろ脚に引っかかり(苦笑)、衝撃のタイムロス。
「ハイ、リセット……っと」
2回目の挑戦も、あえなく失敗となった。
そして、必勝を期して挑んだ3回目。さすがにコツを思い出したのか、ベースキャンプからエリア1への最速移動に成功し、俺は「いいいいける!! 新記録樹立間違いなし!!」と机の上に置いてある多肉植物の竜鱗(名称・レウス君)にツバを引っかけまくった。そのまま、エリア1のガーディアン・ポポ軍団の度重なる妨害(何もしてこないけど)を華麗にかわし、エリア4→エリア5→エリア3と順調に移動する。そしてそつなくエリア3で肉食竜の卵をかっぱらい、胸に卵を抱えたままエリア5→エリア3→エリア2……と移動。うん、順調だ。ここまで、とくに大きな問題はない。かなりいい記録が見込まれるぞ! 俺は、またまた校正紙を持ってきた江野本に画面を見せながら吹きまくった。
「えのっち! 出るぞさいたま新記録が! 間違いない!!」
我が分身はエリア1を抜け、ゴールとなるベースキャンプに突入。「うりゃあああああ!!」という雄叫びともども、納品ボックスに卵をぶち込んだ。
「タイム、いくつだろう……。なんかドキドキする……」と江野本。
「ヘタしたら2分20秒切ったかも……」と俺。
そんな、新記録樹立を期待するふたりの両目に衝撃のタイムが表示された。
記録:2分27秒
「…………………………」(江野本)
「…………………………」(大塚)
プイーンプイーン……と赤トンボが目の前で飛び交う幻覚が見えたとき、「さ、仕事仕事」と言いながら江野本が去って行くのが見えた。
★『トッテオキ!』の最新情報!★
ずっと同じ告知文をコピペして貼り付けてきましたが……ついに! 9月17日発売予定の新刊『モンスターハンタープレイ日記 本日もトッテオキ! 逆鱗日和』の最新情報をお届けします! 今回は……ついに!(シツコイ) 本書のカバーが完成したので、ここに公開しちゃいましょう!! まさにトッテオキのカバーは……コレだっ!!
▲これが『本日もトッテオキ! 逆鱗日和』のカバーです! ちょっとノスタルジックな感じ。
……え? 「どっかで見たことあるナ」ですって? うんうん。そう思われた方はかなりの『逆鱗日和』通です。じつは今回、イラスト担当のぽん吉さんには「初代『逆鱗日和』のカバーをオマージュしたイラストをお願いします!」と依頼し、この絵を描いてもらったのです。というのも『トッテオキ!』は、『2nd G』、Wiiの『G』、『3(トライ)』と、複数の『モンハン』を遊んだプレイ日記がメインのコンテンツになっています。この作りってじつは、初代『逆鱗日和』以来なんですよね。なので初心に帰る意味も込めて、ぽん吉さんにこのイラストを描いてもらったんですねえ。似ているけど、随所に初代『逆鱗日和』のカバーイラストとは違う部分があるので、じっくりと見比べてもらえるとうれしいです。
そうそう、ぽん吉さんと言えば、8月27日にエンターブレインから『ぽん吉ぼん』なる単行本が発売されるんです。これはファミ通コネクト!オン誌やヴァナ・ディール通信、コミックヴァナ通などに掲載されたぽん吉さんのマンガやイラスト、さらに未発表作品も多数収録したぽん吉さん初の作品集です。『逆鱗日和』で見るイラストと同じ香りがする作品もあれば、まるで違う引き出しから出された新鮮なイラストもたくさん収録されています。読み応え抜群の258ページで、価格は1050円[税込]。宣伝……っていうよりも、『逆鱗日和』でぽん吉さんのファンになられた人にはぜひ手に取って眺めてほしいなと思って、紹介させていただきました〜。
夏休み特別企画が無事(?)終了したので、久しぶりに『2nd G』のプレイ日記をば。
最近、新しい防具を作る必要に迫られて久しぶりに“素材集め”というものを始めた。素材集めは、“狩猟”と対をなすハンターの2大プライオリティーのひとつで、どんなに凄腕のハンターもこの呪縛からは逃れることができない。ガンランスで武神闘宴を制することができる悪魔の子も、爆弾だけでG級ディアブロス亜種を屠り去る神の使いも、必ずハンティングライフのどこかで「マカライトが足らない!! マカくれマカマカ!!」と言ってピッケルかついでフィールドに飛び出したり、「大宝玉だとぅ……? ……そんなものは存在しねえ! 都市伝説だ都市伝説!!」と言って涙を流したりする。でも、この“欲しいものがなかなか手に入らない”という現実が狩猟シーンの絶妙な味付けになっていて、だからこそハンターは1000時間も2000時間も『2nd G』で遊び続けてしまうのである。
これはアレだね。恋愛に似ているネ。
狂おしいほど愛しくて愛しくてたまらない異性にアタックを続けて、つれなく袖にされること3年間で計97回。それでも決して諦めずに「好きだ好きだ」と言い続け、ついに相手が根負けして「もう、あなたには負けたわ。しょうがないわねえ。……ハイ、古龍の大宝玉(ハート)」と好きなあのコが大宝玉を差し出してくれた……ってのと似ている気がする。……って、いま話のポイントがさりげなく交錯してわけがわからなくなってしまったが、ナニゴトも猛暑のなせる業なので気にしないでください。
さて。
今回、俺が「ぜひ欲しいいま欲しい!」と思った素材は、何を隠そう“瑠璃原珠”である。
じつは俺は2年近くも前から、ガンランスのときもハンマーのときもひたすら斬れ味レベル+1、見切り+3、耳栓という3つのスキルが発動した防具を着続けていた。モンスターと立ち回って流れ出た汗はインナーを通り越し、おそらく相当な量が防具の内側に浸透してしまったと思われる。2年の蓄積は凄まじく、もしもこれらの防具の臭いを嗅覚鋭いイヌあたりが嗅いだ日には、0コンマ2秒の早業で失禁&失神し、気付けとばかりに再びこの臭いを嗅がせてみたら0.5秒だけ跳ね起きるも再び失禁&失神。そして「夢よもう一度」と再度この臭いを嗅がせたらまたまた失禁&失神を……ということが永遠にくり返されるくらい、この使い込んだ防具は汚れきっているに違いない。なので俺は、新しい防具を作ることを決意した。まあ理由はこれだけじゃないのだが(だったらこんなに書くな)、とにかく“心機一転”という気分になったんですねぇ。
新たな防具を作るにあたり、俺はスキルとしてボマー、攻撃力アップ【大】、斬れ味レベル+1(これは外せない)を発動させたくなり、珍しくいろいろと調べてみた。すると、わりと簡単にすべてのパーツを揃えられそうな組み合わせを発見。でもこの組み合わせで3つのスキルを発動させるには装飾品の“名匠珠”が絶対に必要で、これの生産素材として瑠璃原珠を2個ほど求められたのである。
さっそく俺は武具屋のオヤジににじり寄り、「すみやかに名匠珠をひとつ作りたまえ。そしてそれを、新たに作ったレウスXメイルの穴ポコにはめ込みなさい」と命令した。しかしオヤジは、俺が持つ素材の在庫を一瞥しただけで「ふんっ」とあからさまに冷笑し、「にいちゃん、瑠璃原珠持って出直せや」と衝撃的なことをのたまったのである! 俺は我が耳を疑った。だって我が分身のMIDO君は、約1500時間もこの世界で生きているんですよ? しかも、目的もなくいたずらにウロウロしていたわけではなく、狩りにも行けば採取も行って、どちらかというとひどく勤勉な生活をしていたわけではないですか?(知らんと思うけど) そんな、“素材セレブ”と呼んでもいいくらい潤ったハンターになっているはずなのに、瑠璃原珠を持っていないなんてことがあるわけなかろう。俺は「たったの2個もないなんて、そんなことあるわけねーべ」と群馬弁でブツブツと文句を言いながらアイテムボックスを開ける。そして箱の最終ページ、宝石のような装飾品がキラキラと並ぶ中をゴソゴソと探し回った結果……!
「瑠璃原珠、1個しかねええええええ!!!」
ということが判明いたしました。
しかし、これはどう考えてもおかしい。前述の通り俺は1500時間もこのゲームをやり込んでいるベテラン中のベテランなのである。そんな勤勉なハンターをしてわずか1個しか所有していない素材なんてものがあっていいのだろうか? いやいいわけがない! でももしかすると瑠璃原珠は、火竜の天鱗や崩天玉などの“天モノ”や古龍の大宝玉すら凌駕する宇宙レベルの超レア素材なのかもしれん。うんそうだ。そうに違いない! 俺はこの事実を確かめるために、『本日もトッテオキ! 逆鱗日和』の校正(さりげない宣伝)で忙しい江野本ぎずもに「ぎずもさん、“幻のレアメタル”と呼ばれる瑠璃原珠をひとつでもお持ちですか?」という質問メールを送ってみた。俺が1個しか持っていないということは、江野本は間違いなくゼロ個であろう。するとすぐに、「幻のうえにレアなんて、持ってないと思うけど……」という予想通りの一文が送られてくる。しかしその数分後、思いもよらなかった衝撃のメールが我が相棒からもたらされた。
「31個あるー。何に使うんスか? コレ」
……どうなっとんじゃああああ!! なんで31個も持ってんのよっ!!
衝撃のあまり口から泡を吹いてダイミョウザザミ化している俺に向かって、江野本は「どうなっとんじゃもなにも、これって農場で採掘したものばかりだと思いますよ。おいどん、クエストが終わるたびに農場に行ってマジメに採掘してるもの」とナマイキなことを言う。しかしこれが事実となると、俺が瑠璃原珠をまったく持っていないのも頷ける話だ。農場での採掘なんて、もう長いことやってないからな。
でも、農場の採掘で手に入るというのならこんなに安い仕事はない。俺は「そっかそっか農場か。忘れてた忘れてた」と歌を歌いながらテキトーな“素材ツアー”を受注。そしてすぐに帰郷して脇目も振らずに農場の採掘現場に取り付き、ピッケルを振り回した。しかし。
瑠璃原珠、まったく出ず……。
1回や2回で出てくれるとは思っていなかったが、3回やっても4回やっても5回やっても6回やっても7回やっても8回やっても(怒)、出てくるのは修羅原珠やカブレライト鉱石ばかり。すべての採掘ポイントで掘り、爆弾採掘まで試みてみたが、ただのひとつも瑠璃原珠は出てくれないのである。おかしい……。俺はあの女に騙されているのではなかろうか……? しかしほかにいい手段も思いつかなかったので、ひたすら素材ツアーと農場での採掘をくり返す。いつしか、狩猟日記はこんな感じになった。
この作業を続けること、じつに18回(苦笑)。それでもまっっっっったく出てくれる気配が感じられないので、ついに俺の心はポッキリと折れてしまった。もうダメだ。いつまでもこんなことやってられねえ!! 俺はどんよりとうなだれながら自室のアイテムボックスに取り付き、中からゴソゴソといくつかの素材を取り出した。そして半べそをかきながら「また、おじいちゃんに、お願いしよう……」とつぶやき、そのまま砂漠フィールドへ。そう、我らが味方・山菜ジイさんに懇願し、物々交換で瑠璃原珠を手に入れようと思ったのである。調べによると瑠璃原珠はガノトトス亜種の上鱗や厚鱗と交換してくれるようなので、それらをどっさりと持っての出撃だ。そして無事、2回目のチャレンジで恋焦がれていた瑠璃原珠を1個手に入れ、意気揚々とポッケ村に帰郷したのであった。
しかし習慣というのは恐ろしいもので、俺は武具屋の前を素通りしてポッケ農場に突入してしまった。そして、もう欲しかったものは集まっているのでそんなことをする必要はなかったのだが、無意識のうちに採掘現場に取り付いてしまったのである。さすがにピッケルを振るうまえに気がつき、「あ。クセで上ってきちゃった」と赤面したのだが、ここまで来て何もせずに帰るのもバカらしかったのでやっこらせとピッケルを手に持つ。そして、「けっきょく、ここで瑠璃原珠が掘れるなんて都市伝説だったんだな。ぎずもも白昼夢を見ているんだな」とかなんとか言いながらガツンと1発鉱脈をぶっ叩いた。すると……!
「瑠璃原珠を手にいれました」
もうホント、いやがらせもたいがいにしてください…………(号泣)。
■緊急告知! 『逆鱗日和』の新刊が出ます!!■
突然ですが、『逆鱗日和』シリーズの新刊が発売されることになりました! 書名は『本日もトッテオキ! 逆鱗日和』で、発売予定日は2010年9月17日! そう!! 俺の誕生日ですよ皆さん!! ま、これは偶然なんですけどネ。いわゆるスピンオフの『モンハン学』シリーズではなく、正調『逆鱗日和』シリーズの最新作となり、中身はWiiの『モンスターハンターG』、『モンスターハンター3(トライ)』、PSPの『モンスターハンターポータブル 2nd G』のプレイ日記が中心となっています。じつはこうやって複数の『モンハン』を遊んだプレイ日記を収録するのって初代『逆鱗日和』以来のことなんですよねえ。「よく1冊にまとめるほど作品があったな」と思われるかもしれませんが、『逆鱗日和』シリーズの刊行スケジュールの間にハマって泣く泣く収録できなかったお気に入りのエッセイが山のようにあり、今回それらを蔵出しのような形で1冊にまとめようと思ったわけです。書名の“トッテオキ!”は、そういった本書の成り立ちをフィードバックさせたものってわけですな。ちなみに、いまここで連載している妄想小説もバッチリ掲載する予定です。書き下ろしエッセイももちろんどっさり! どうぞお楽しみに!!
長らく続いた夏休み特別企画“大塚角満のモンハン妄想小説”も、ついに最終話です。
今回のお話のキーワードは、モンスターハンターフェスタ2008の名古屋大会決勝ステージでEffort Cristalのふたりが見せた、有名な“シンクロプレイ”です。これは江野本と酒を飲みながら小説に関する打ち合わせをしていたとき、本当に何気なく彼女が「村の近くでナルガクルガが暴れていて、颯爽と現れたふたりの若者がシンクロプレイで討伐して去っていく……なんてお話があってもおもしろいですよねw」と言ったひと言を逃さず捕まえて物語に仕立ててみました。書いててとっても楽しくて、じつはシンクロプレイがテーマの妄想小説はもう1パターン存在するのですが、ま、それは置いておいて……。
この夏最後の(?)妄想小説、ご堪能ください。
※著者の妄想が多分に含まれているので、ご了承ください……。
■仕事人はシンクロする(『2nd G』)
樹海に"あの"ナルガクルガが棲みついてから数ヵ月が経過した。その間、村人はいっさい樹海に近寄ることができず、狩猟と採集の機会を逃すばかり。これじゃあ商売上がったりだと、村の腕自慢が徒党を組んでナルガ討伐に出向いたものの、あっと言う間にボロボロにされて荷車アイルーの世話になって帰ってくる。ついには誰ひとりとして樹海に近づくハンターがいなくなり、村長は心底困り果ててしまった。
そんなあるとき、村長は旅の狩猟笛使いの女性ハンターから耳寄りな情報を聞いた。なんでも、いくばくかの謝礼を払うだけでどんなモンスターでも討伐してくれるというふたり組のハンターがおり、しかも運がいいことにちょうどいま、隣の村で依頼をこなしているというのだ。
「あっし、これからその村に行こうと思っていたので、ふたりを見かけたら村長のことを話しておきますわいな」
顔の半分ほどもある大きな目を和らげて、親切な狩猟笛使いの女性ハンターはにっこりと笑った。村長は首の間接が外れるんじゃないかと思うほどガクガクと首を縦に振り、「ぜぜぜぜひお願いしたい!」とツバを飛ばした。
数日後、村長が「いまかいまか」と言いながら集会所の酒場で強者コンビの到着を待っていると、ガチャリとドアが開け放たれて見知らぬふたりの青年が入ってきた。まだ少年と言ってもいいくらいあどけない表情をしたふたりで、いかにも酒場は似つかわしくない。(こいつは叱ったほうがいいのかな?)と思ってふたりの姿をよく見ると、背中にはティガレックスの素材で作った大剣を担いでいる。どうやら彼らはハンターのようだ。
村長はなんとなくふたりに興味をそそられ、失礼は承知でじっとふたりの様子を目で追った。ひとりはヒョロリとして背が高く、細身のメガネをかけている。もうひとりは中肉中背で、いかにもおとなしそうな表情をしていた。一見、どこにでもいそうなふつうの青年たちだったが、じっと観察していた村長は"妙なこと"に気がついた。
なんとこのふたり、動作が完全にシンクロしているのである。
歩いているときに手と足の振りが重なっているのはもちろん、キョロキョロとあたりを見回すときの首の動きもまったく同じ。さらに右手を上げて何かを指さす仕草までシンクロしていたのを見た日には、村長、ついつい吹き出して笑ってしまう。
しかしこの見慣れぬ青年、なにをしにこんな辺ぴな村にやってきたんだろう……。
そんなことを思っていたら、青年ハンターふたりは足をそろえてツカツカと歩を進め、村長の前までやってきた。そして同時に歩みを止めて村長の顔を見、ふたりいっしょにあいさつをした。
「初めまして! 村長さんですね? 狩猟笛使いの女の人に言われて、ここにやってきました!」
なんと驚いたことに、村長の待ち人はこのふたりの青年ハンターのようだ。内心、筋骨隆々の屈強なふたり組がやってくるのだとばかり思っていた村長は、少なからずがっかりした。それでも、あの目の大きな狩猟笛使いの言うことはどこか信用に足る気がしたので、村長はこのふたりに村の命運を賭けてみようと瞬時に思った。
「なるほど。おぬしたちが噂の凄腕ハンターか。わかった。すべておぬしたちに任せるとしよう。で、名前はなんて?」
青年ハンターは軽く目配せしたあと、まずはチームリーダーらしいメガネのハンターから自己紹介をした。
「僕はゴンタ。通称・ゴッディです!」
続けて、おとなしそうなハンター。
「僕はジャンボ。通称・ジャッ君です!」
そしてふたりは声をそろえた。
「ふたり合わせて、エフォートクライシスです!」
その息の合いっぷりに村長は感銘を覚え、この若きコンビに俄然興味がわいてきた。プライドの高いハンターたちをしてウワサになるほどの男たちなのだ。きっと何かやってくれるのだろう。村長はウキウキしながら、ふたりに質問をした。
「相当な腕の持ち主のようだけど、どんなモンスターでも討伐してくれるのかい?」
この質問を聞いたとたん、それまでニコニコしていたゴンタは急に目を伏せ、消え入りそうな声でこんなことを言った。「あ、あの、ゲネポ……じゃなくて、ゲネポスだけは、ちょっと……」。ジャンボも、ボソボソとした声でゴンタの意見に同調する。「うん……。もう、ゲネポ……じゃなくて、ゲネポスだけはどうも、ね……」。
「ふうん……。変わってるんだねえ」
なにやら語りたくない痛い過去があるのだろう。村長はそれ以上の追求はしなかった。
気分を変えるために、村長は今回の依頼内容を詳しくふたりに説明した。樹海に棲みついたナルガクルガのこと、多くのハンターが返り討ちに合っていること、おかげで採取にすらいけなくなってしまったこと……。エフォクラのふたりは同時に頷きながら、真剣な表情で村長の説明に聞き入っている。本当はもっとオブラートにくるんだ言いかたにして、リラックスした状態でクエストに行ってもらおうかとも考えた。しかしそれにより油断が生まれ、取り返しのつかないことになってしまっては元も子もない。なので村長はちょっと大げさなくらい尾鰭をつけて、樹海にいるナルガクルガの恐ろしさを説明した。もしもこれでビビって「今回はちょっと体調が悪いのでつぎの機会に……」とでも言い出そうものならそれまでだ。そのときはあきらめるしかない。
ひととおりの説明を終え、エフォクラの反応をうかがう村長。見るとジャンボも、なにやら考え込んでいるゴンタの表情を伺っている。するとふたりの視線に気づいたのかゴンタはパッと顔を上げ、思いのほか明るい声ではっきりとこう言った。
「わかりました! 任せてください! いますぐ向かいましょう!」
村長は驚いた。引き受けてくれるとは思っていたが、まさかこんなにあっさりと、しかも「いますぐ行こう」なんて言うとは夢にも思っていなかったのだ。
「え? あ、あの、いますぐ……って、ちょっとダイジョブなの……?」
戸惑いながらも、当然の疑問を口にする村長。そんな村長の肩に手を置き、「皆まで言うな」とばかりに制したのはおとなしいジャンボのほうだった。ジャンボは、この集会所に入ってきてから初めて見せる笑顔の中で、村長に向かってこう言った。
「ゴッディがこう言うときは大丈夫です。僕たちに任せてください」
口数が少ないがゆえに、ジャンボの言うことは思いがけない説得力があった。村長は改めて、このふたりにすべてを託そうと思った。
エフォクラのふたりは、さっそくクエストの準備に入った。と言っても、それほど何かを用意するわけではなく、いくつかのアイテムを補充した程度だ。
それにしても、世のハンターに一目置かれるこのふたりはどんな立ち回りを見せるのだろうか……?
村長の心にふつふつと、そんな好奇心がわき起こってくる。こう見えて村長はまだまだ現役のガンランス使いで、村人からは"村いちばんのガンランサー(笑)"と呼ばれているほど。それゆえに、エフォクラのふたりがどう立ち回るのか見たくて見たくてしかたがない。ついに村長は我慢できず、立ち回りについて相談していたゴンタとジャンボに声をかけた。
「ねえ、ゴッディにジャッ君」
いきなりのあだ名呼びで親近感を植え付けつつ、村長はダメもとで懇願した。
「こう見えて俺もハンターの端くれ。強者ハンターに崇められる君たちがどんな立ち回りをするのか、見たくて見たくてたまらない! ……そこで、決してふたりのジャマはしないから、いっしょにクエストに連れてってもらうわけにはいかないかね……? いやホント、遠くで見ているだけでいいから!」
チームを組んで狩猟をしているハンターの中には排他的な人間も多い。なので村長は、ダメもとでお願いしたのだ。ところがエフォクラのふたりはイヤな顔ひとつせず、逆にうれしそうにニコニコと笑いながらこう言った。
「いいですよ! ぜひいっしょに行きましょう! クエストは大勢のほうが楽しいですからね!」
自分でお願いしておきながら、村長はふたりの態度に驚いた。そんな、ポカンとしている老練のガンランサーに向かってゴンタはもうひと言付け加えた。「きっと、おもしろいものを見せられると思います!」と。
準備を整えた3人は、樹海に向けて旅立った。旅の道中でもいろいろとおもしろいエピソードがあるのだが、ページの関係でそのへんはあえてすっ飛ばす。
エフォートクライシスwithおっさんガンランサーの3人は、樹海のベースキャンプに到着した。そこで村長はゴンタから、エフォクラの立ち回りを見学する上での"注意点"を授かることになる。といってもそれほど難しいものではなく、「村長はナルガに見つからないように、木陰に隠れて見ていてください!」ってだけのものだ。
「では行きましょう!」
ゴンタの合図で、3人は走り出した。先頭はゴンタで2番手にジャンボ、そして村長は遠く離れた3番手につけてエフォクラのふたりを追いかける。するとまもなく先頭のゴンタが「隣のエリアにナルガがいるようです!」と短く叫んだ。さあいよいよだ……。握りしめた拳が汗ばむのを、村長は確かに感じた。
ゴンタの言ったとおり、いわゆる樹海のエリア6にナルガクルガがたたずんでいた。遠目にも、かなり大きな個体であることがわかる。村長は緊張で震える足をなんとか前に進めながら、ゴンタに言われたとおり大きなカクサンの木の陰に身を潜めた。
(あんな大きなナルガを相手に、たったふたりで大丈夫なのか……?)
そんな村長の不安をよそに、ゴンタとジャンボは慣れた手つきで立て続けに2個のシビレ罠を設置した。するとその気配に気づいたのだろう。ナルガクルガがクルリと振り向き、「ギャオオオオ!」と威嚇の声を発する。は、始まってしまった。あとはもう、すべてをふたりに託して見守るしかない!
ナルガクルガはわき目もふらず、エフォクラのふたりに向かって突進してきた。隠れて見ている村長にも、大きなナルガクルガが発するプレッシャーが伝わってくる。しかしエフォクラのふたりは表情も変えずに重なるように立っていたかと思ったら、いきなりふたり同時にナルガクルガに向かって走り出したではないか!
「え!」
驚愕のあまり顎が外れそうになる村長。しかし、本当に驚くのはそこからだった。
ゴンタとジャンボはひとつ目のシビレ罠の前でいきなり大剣を抜刀すると、そのままタメ斬りの体勢に入った。するとナルガクルガはふたりに吸い寄せられるように接近してきて、ものの見事にシビレ罠に。動けなくなったナルガクルガの脳天に、2本の大剣が激しく打ち込まれた。そしてエフォクラのふたりはまったく同じタイミングで右側に回避行動をし、一寸のズレもなくスクッと立ち上がる。さらに同時に大剣を抜き放ってタメの体勢となり、ナルガクルガがシビレ罠の拘束から解けるのを合図にまたまた2本の大剣をズレることなく頭に振り下ろした。
圧巻はここからだった。
シビレ罠で拘束しているときだったら同じタイミングで武器を振りおろすことはそれほど難しくはないだろう。ところがこのふたりの立ち回りはそんなものでは終わらなかったのだ。
ゴンタとジャンボはお互いが影のように重なって動き続けていつのまにかナルガクルガの背後を取り、タメ斬りの体勢に入る。そして目標を見失ったナルガクルガが振り向くのに合わせて、最強のタメ3斬りを脳天にズドン! これをくり返しくり返し、屈強なナルガクルガにお見舞いしているのだ。
当初、村長は「たまたま動きが重なっているんだろう」と思っていた。しかしふたりは、移動するときや攻撃をするときはもちろん、回復薬を飲むのも携帯食料を食べるのも、まったく同じタイミングで行うのである! 本当に、信じられなかった。大剣だったら、攻撃力が高いタメ3斬りをモンスターの弱点にお見舞いするのがもっとも効率がいい……という理屈はわかるが、まさかそれを、このような形で実践することができるなんて……。
(ゴッディとジャッ君はこれを身につけるために、どれほどの反復練習をくり返したのだろうか……?)
芸術的とすら言えるエフォクラの立ち回りを惚れ惚れと眺めながら、村長はここが狩場だということも忘れて感動の涙を流した。
狩猟は、ほどなく終了した。さしものナルガクルガもこんなふたりに追い回されては形無しで、エリア移動すらさせてもらえず天に召されてしまったのだ。村長はコーフンしながらふたりに駆け寄り、ナルガクルガの亡骸から剥ぎ取りをすることも忘れてまくし立てた。
「すごい! 本当にすごいよエフォクラ! なんであんな動きができるんだ!?」
ゴンタがテレ笑いを浮かべながら答える。
「いかに速く狩れるのか……ということを追求していたら、この立ち回りにたどり着いたんです」
最近の若者にはあまり見られないストイックなふたりの姿勢に心を打たれ、村長は歳を取って弛くなった涙腺をさらに弛めた。
「いやあ、とんでもないものを見せてもらったよ……。あの動きは……そう! シンクロだ! シンクロプレイだな!」
ゴンタとジャンボは目を輝かせ、
「シンクロプレイ、か……。いいですね、それ!」
と同時に言って笑った。
◆ ◆ ◆
村に到着し、長年の憂いだったナルガクルガ討伐を成し遂げたことを集会所にいた連中に報告した3人。すると集会所のあちこちから地鳴りのような歓声があがった。それを聞いた村長は大いに喜び、「今日はお祝いだ! 偉業を達成したエフォクラのふたりを囲んで、飲み明かそうではないか!」と大声を上げる。するとハンターどもの熱狂はさらに激しくなり、そこらじゅうから「エフォクラに乾杯!」、「村長のおごりに感謝!」とうとうの声がわき起こった。この声に、エフォクラのふたりは「あはははは!」と笑って大喜び。さあ、楽しいパーティーの始まりだ!
そんなとき、いきなり集会所のドアがバーンと開け放たれ、驚いたことにふたつ隣の村の村長がズカズカと入ってきた。シンと静まる集会所の中を突っ切ったふたつ隣の村長はエフォクラの前でピタリと止まり、挨拶もそこそこにこう切り出した。
「村の近くでラージャンが暴れておるのじゃ! おふたりを勇者と見込んでお願いする! ラージャンを討伐してくれええ!」
エフォクラのふたりは困惑して、ガンランサーの村長を見た。せっかくみんなが自分たちのためにパーティーを開いてくれるというのに、その主役がさっそくいなくなってしまっていいものなのかどうか、判断に困っている様子だ。そんな、気のいい若者の表情を見てガンランサーの村長は寂しそうに笑い、滑稽なほど強がってこんなことを言った。
「行ってあげなさい」
この世界のいろいろな人々が、類稀なる才能を持ったこのふたりの力を求めている。それなのにいつまでも、こんな辺ぴな村で足止めするわけにもいくまい。
戸惑いながら、ゴンタは村長の顔を覗った。
「いいんですか? せっかくみんなが……」
村長はゴンタに最後まで言わせず、そのかわりにエフォクラのふたりの肩をがっちりと抱いて涙を流しながらこう言った。
「力を貸してあげなさい。でもまた何かあったら、この村にも来てくれるかい?」
ゴンタとジャンボは寂しさをこらえて笑顔を作り、「今日最後のシンクロプレイだ!」と言わんばかりに口を揃えて元気に言い放った。
「もちろん! いつでも呼んでください! どこにいても飛んできますから!」
そう言って、エフォートクライシスのふたりは旅立っていった。来たときと同じように、ふたり仲良く手と足の動きを揃えて……。
さていよいよ、夏休み特別企画“大塚角満のモンハン妄想小説”も第9話です。
ある日、江野本と酒を飲みながら打ち合わせをしていたとき、俺がふと「“献身ハンター”がほかのハンターのために尽くしているときって、どんな気持ちなの?」という質問をした。江野本はああ見えて(どう見えているのか知らぬが)武器は狩猟笛か麻痺武器専門、防具は広域化を発生させている根っからの献身ハンターで、麻痺武器なんていっさい使わない俺とは対極の存在だったりする。俺の質問に対して江野本は「よくぞ聞いてくれました!!」とばかりにいろいろなことを教えて(?)くれたのだが……。
そこでの会話が、今回の小説のモチーフとなっておりますw
■献身ハンターのキモチ(『2nd G』)
ハンターには"猪突猛進タイプ"と"献身タイプ"の2種類がいる、と言ったのはどこの評論家だったろうか? そんなにバッサリとふたつのタイプに絞れるもんじゃないよとわかっていながら、アヤはついつい自己分析してしまう。
「やっぱりあたしは、生粋の献身タイプよね」
実際、アヤは"仲間が憂いなく狩りするために"をつねに念頭において狩猟のプロセスを考えていた。それこそが、自分のハンターとしてのレゾンデートルなんだと確信していたのである。
この考えに至った最大の理由は、自分がモンスターにダメージを与える"アタッカー"としては人並み以下の実力しかないことに気づいたから。これに尽きる。ハンターになりたてのころは、がむしゃらにモンスターに突っ込んでいって力でねじ伏せるかのような立ち回りをしていたが、ダメージ効率のいいモンスターの弱点を集中的に攻撃する……というアタッカーなら誰しも行っている立ち回りがどうにも身に付かず、途方に暮れてしまったのだ。アヤは焦っていた。
「何の役にも立たない"空気ハンター"にはなりたくない!」
思いばかりが空回りし、アヤは悪循環に陥る。手練のハンマー使いを押し退けてモンスターの頭に張り付き、大剣を装備していれば斬り上げで吹っ飛ばし、片手剣だったら盾コンボで吹っ飛ばし……と、仲間にばかりアタックし続けた。クエスト後に仲間に言われることといったら「今日も元気だったネ^^;」とか「いつも豪快だよね^^;」という顔文字付きのどうとでも取れるコメントばかりで、さすがにそれが続いた日には自分にアタッカーとしての才能がないことに気づいてしまうというものだ。
(モンスターに効率よくダメージを与える能力が低いあたしって……もしかして致命的!?)
そんなことを思って絶望し始めたとき、アヤはふらりと街にやってきた旅の女性ハンターに出会った。何となく酒場で話すうちに彼女が狩猟笛使いだと知り、それまでこの武器を持ったハンターと一度もクエストに行ったことがないアヤは興味津々となる。「どんな武器なの?」、「強いの?」なんていろいろ質問しているうちに、「見てみるのがいちばん早いんじゃない?」ということになって、いっしょにクエストに行くことになった。
そこからは、目ってこんなにウロコが付いていたんだと感心してしまうほど、驚嘆と衝撃の連続だった。この女性ハンターは典型的な"献身ハンター"で、狩猟笛で狩りに役立つ音色を奏でるのはもちろん、仲間の体力が減ると見るや瞬時に生命の粉塵を飲み、さらにスキルとして広域化+2まで発動させていて、いつでも回復薬や怪力の種などを飲めるようにスタンバっていた。
「私、アタッカーとしてはまったく大したことないから、だったら仲間をサポートすることに徹しようと思ったの。才能あるアタッカーはいくらでもいるわ。そういう人に気持ちよく立ち回ってもらえたほうが狩りの効率がいいし、なにより"私もちょっとは役に立ってる"って思えるから」
クエストを無事にクリアーして街に戻る道すがら、狩猟笛使いの女性ハンターはそう言って恥ずかしそうな笑みを浮かべた。その言葉を聞いてアヤは、この日20枚目ほどになるウロコを目から落とした。
アヤの"第二のハンター人生"が始まった。
彼女はまず、テキトーにそろえていたいくつかの武器、防具をすべて売り払い、そのお金を元手に何本かの狩猟笛と広域化+2のスキルが発動する防具を作った。そして残ったいくばくかのお金は、薬草、アオキノコといった、広域化+2のスキルで恩恵を受けられるアイテムにつぎ込む。こうして、あの女性狩猟笛使いをそのままコピーしたかのような、"にわか献身ハンター"が誕生した。
仲間をサポートすることに徹した立ち回りは、思いのほかアヤの性質に合っていた。最初こそ、攻撃の手数を減らして狩猟笛を吹いたり、ダメージを負った仲間のために回復薬を飲んだりする行為に戸惑い、(ほ、ホントにこれでいいのかな……?)と思ったりもしたが、そのたびに仲間から「お? 回復サンキュー!」とか「狩猟笛のおかげで攻撃力めっちゃ上がったんですけど! ありがとう!」という感謝の言葉を贈られたので迷いは消えた。
「感謝されるって気持ちいい!」
アヤは献身プレイのトリコとなった。
以来アヤは、どんなモンスターの討伐に行くときも狩猟笛を手放さず、アイテムポーチには回復系のアイテムを山盛り入れて立ち回り続けている。アヤの献身プレイの恩恵を受けて、いつもいっしょにクエストにいく昔なじみの仲間たちは、皆立派なアタッカーへと成長していった。これも、献身プレイの効能のひとつと言えた。
そんなある日、アヤはいつもの仲間3人とともにドドブランゴ討伐に出向いた。もちろん、装備はいつもと同じ。
「今日もガンガン回復してあげるから、体力は気にせずに立ち回ってね!」
と、アヤは元気に仲間に告げた。
ところが。
どういうわけか仲間のアタッカー3人は、ほとんどダメージを食らうことがなかった。ドドブランゴと言えば以前だったら相当手こずり、全員が青色吐息になってアヤの回復がなければ間違いなく3オチさせられていたような相手である。しかし仲間はドドブランゴのトリッキーな攻撃を巧みにかわし、じつに効率的にダメージを与えている。ときたま攻撃を食らったのを見てアヤはすかさず回復薬を飲むが、仲間からは「あ、大丈夫大丈夫!」と言われてしまう始末。なんとなく、すっきりしない。
けっきょくアヤがほとんど活躍できぬまま、クエストは終了してしまった。どうやら経験を積むうちに仲間の実力が日増しについていって、そうそうダメージを食らわなくなったようなのだ。
そういえば、と思い出す。
ここのところこのメンバーでクエストに行っても、アイテムがほとんど減らないなぁ……と。アタッカーたちがダメージを食らわなくなってきたことは喜びこそすれ、どこにも非難する部分などないのだが、アヤはなぜか、気分がモヤモヤするのを感じていた。
「まあいいや。気にしない気にしない。つぎのクエストでがんばろー」
基本的に前向きなアヤは、すぐに気持ちを切り替えた。
翌日。同じメンバーで、今度はティガレックス討伐に出向くことになった。昨日のドドブランゴより、遙かに格上の相手である。
「今日はあたし、忙しくなりそうだね!」
アヤはどこかうれしそうに、仲間3人に言った。そんなアヤに仲間から「回復よろ!」、「笛の効果に期待してる!」とうとうの声が飛ぶ。献身ハンターの、至福の瞬間だ。
そして、ティガレックスとの生存競争が始まった。さっそくアヤは、攻撃力アップや強走効果の音色を狩猟笛で奏でる。この狩猟笛という武器にだけ許された強烈なドーピング効果に押されて、アタッカー3人は果敢にティガレックスに挑みかかった。アヤは緊張しながらも、いつでも仲間を回復できるように生命の粉塵を握りしめた。
しかし。
この日も仲間は、ほとんどダメージを食らわない。ときたまティガレックスの攻撃が当たって体力を減らすこともあったが、アヤが生命の粉塵や回復薬を飲む前に自分で回復してしまう。ピキキキ……と、アヤのコメカミに血管が浮かんだ。
(ちょっと。空気読みなさいよあんたたち)
とアヤは思った。(あたしが回復してあげるんだから、何も飲まなくていいのよ!)。
アタッカー3人の立ち回りは、かなりのレベルにあった。ティガレックスの動きを読み切って攻撃をかわし、確実に間合いに踏み込んでダメージを与えている。クエストを遂行する上では、これ以上ないくらい頼もしい仲間だ。しかし、"献身イノチ"のアヤから見たら、これほど張り合いのない仲間もいない。
(あ! またギリギリでティガの攻撃を避けた! もう、食らっちゃいなよそんなの!)
(だからガードしなくっていいから! ダメージ負いなよ! あたしが回復してあげるんだから!)
(いい加減、誰かボコボコにやられてよぉ! あたしの活躍する場面がないじゃない!)
しかしいつまで経っても、アタッカー3人はダメージを負わない。このままではまたもやアヤの活躍の場がないまま、クエストが終了してしまうだろう。焦るアヤ。クエストに来ている以上、一度くらい自分の見せ場が欲しい!
その一途な思いは、行動になって現れた。
アヤは「もしものときのために……」と持ってきた大タル爆弾を取り出すと、エッチラオッチラそいつを運び、仲間が懸命に立ち回っている最前線にいきなりズズンと設置した。いきなり現れた大タル爆弾に、仲間3人は声にならない悲鳴を上げる。
「!」
「!?」
しかし振り回していた武器を止めることなどできるわけもなく、大タル爆弾はハンマー使いの振り上げ攻撃により豪快にドカン! アタッカー3人は爆風に煽られて、ピュルルルル〜と空を飛んだ。その様子を見て、アヤは喜色満面で絶叫した。
「あ! 大丈夫!? いまあたしが回復してあげるからね!」
夏休み特別企画、大塚角満のモンハン妄想小説も今日で8話目。いよいよこの企画も大詰めだ。……って、何話公開するのかどこにも書いた覚えがないので、これが大詰めなのか始まりなのか読者の皆さんはさっぱりわかりませんね。スミマセン。じつはこの企画、全10話公開予定となっております。なのでこの第8話を含めて残り3話ということですな。
さて、今回のキーワードとして江野本ぎずもは「無印の世界を舞台に、ハンターがついついやってしまう行為にスポットを当てた小説って、書けますか??」なんて言ってきました。うーん……。こいつは抽象的でむずかしい注文だなぁ……と思いましたが、わりとサラサラと書いてしまったんですねぇ。とっても短いショートショートです。どうぞお楽しみください。
■試すのは、どっち?(無印)
ハンターは新しい武器ができるとまず間違いなく感激し、必ず「"試し斬り"にいこう!」ということになる。読んで字のごとく手頃なモンスターを斬りつけてその武器の威力を試す儀式のようなもので、ターゲットにされるモンスターにしてみたらたまったものではないが、ハンターの本能によるところの行動なのでこれはしかたのないことなのである。ちなみに、ここでいう"手頃なモンスター"とはもちろん、あの"イャンクック"である。
片手剣・デッドリィポイズンが完成したばかりのその男も新武器を手に小躍りし、仲間のハンターに向かってひと言「クック相手に試し斬りしてくる!」と言って集会所を飛び出した。
そのころ。
森と丘にイャンクック数匹が集まり、神妙な顔でなにやら話し込んでいた。年かさの雄のイャンクックがズイと前に出て、集まった面々に向かって厳かに言う。
「コホン。皆の衆、ここにいる若き雄の戦士、その名も耳男が元服を迎えて男としてひとり立ちすることになった。今日は晴れて、成長したそのクチバシで"試しついばみ"をする日である。ブギャー」
ギャースギャース! ギャゴーギャゴー! と集まったイャンクックどもから歓声が上がる。年かさのイャンクックが続ける。
「さあ耳男、行ってきなさい。ちょうど向こうから、片手剣を持ったハンターがやってくる。試しついばみを楽しんでくるがいい」
言われた若き雄イャンクック、襟巻きのような耳をピンと立てると、森と丘のエリア3に向けてバサバサと飛び立った。
エリア3ではそのころ、デッドリィポイズンの試し斬りをしたくてうずうずした男がイャンクックがやってくるのを待っていて……。
ものすごくどうでもいいことなんですが、ちょっとショックだったので書かせていただきます。
さきほど、通勤電車の中で仲のいい友だちとメールのやり取りをしておりました。でまあ、細かいやり取りは関係ないので省きますが、とにかく「17−10」という算数の引き算が話題に。そこで俺はすかさず「じゅうななひくじゅうだから……答えは10だね!」と素早く返信したのです…………。すぐに間違いに気がついて「ごめ……まちがっちった……」とメールを送ったのですが、あまりにも恥ずかしくてその友だちからの返信メールがいまだ開けられません……。
以上、夏の怪奇現象のお話でした。
さて。
夏休み特別企画・大塚角満のモンハン妄想小説も今回で7話目。もうちょっと続きますので、読者の皆さま、ぜひぜひついてきてくださいねw
第7話は、江野本がふと口にした「無印の世界を舞台に、誰もが経験したことのあるような体験を小説にしてほしいなぁ」というひと言をきっかけに書いてみたものです。ご堪能くださいませ〜!
※著者の妄想が多分に含まれているので、ご了承ください……。
■知ったかぶりのビビりハンター(無印)
ハンターになんて簡単になれる……と思っている人がいるかもしれませんが、それは大きな間違いです。屈強なモンスターと命のやりとりをしなきゃいけない危険で危ない職業なんですよ? そうそう誰にでもなれるというものではありません。人並み以上の体力、狩猟に関する知識、そしてどんな困難に遭遇しても折れない心があって初めて、ギルドにハンターとして認められるのです!
じゃあどうすればギルドに認められてハンター登録できるのかというと、方法はいくつかあります。ハンター養成所、つまり訓練所に入所して鬼教官に鍛えられ、一定の課題をクリアーして"卒業"するのがもっともポピュラーな方法。ほとんどのハンター志望者はこの方法をもってギルドにハンターとして認められています。
でも僕はあえて、この方法は採用しませんでした。一応、もっともオーソドックスなこの方法でハンターになろうかとも思ったのですが、どうにも教官とソリが合わなくて入所早々に脱走……じゃなくて辞めちゃったんですよね。
結果、僕は通信教育の"ハンター講座"を受講して、そこでなんと"首席"を取ってハンターになる権利を得たんです! 訓練所で危険な思いをして、泥にまみれてからハンターになるなんて、もう古いんです。身を汚す必要はありません。頭脳と理論を駆使して要領よく立ち回れるハンターこそ、次世代の狩猟シーンの中心となるのでええええす! はあはあはあ。
というわけで、僕はハンターになりました。なんたって首席ですから、狩猟における知識はそんじょそこらの上位ハンターにも引けを取るものではありません。ハンターって、飛び級はないんですかね? 僕クラスになったら、いきなり上位から狩猟に出てもいいかと思うんですけどね。まあ、ルールだから甘んじて下位の狩猟を受け入れますけど。あっと言う間に駆け抜けてしまうと思いますけどね。
さっそく僕は、クエストを受注しました。森丘フィールドを舞台にした"サシミウオの納品"です。何度も言いますけど、いきなりグラビやディア(ベテランは略して呼ぶんです)でもいいんですけどねえ。ま、仕方ない。
僕は森丘フィールドに向けて出発しました。ハンターの登竜門的な、もっともポピュラーなフィールドですね。ちなみに僕の装備は、武器がハンターナイフで防具はインナー……。首席ハンターとしてはじつに不本意な格好なのですが、ナニゴトも順番があるということなので受け入れざるを得ません。ま、すぐにきらびやかな上位装備が山ほど作れると思いますけど。
しばらく歩くと、森丘のベースキャンプに到着しました。実物を見るのは初めてですが、なんたって首席の僕ですからベースキャンプのこともよく知っていますよ。ここには休憩できるベッドと、ギルドからの支給品が入った支給品ボックスがあるんでしょ? ……ホラ、あった。青い箱。でも僕はあえて、この箱を開けることはしません。だって上位のクエストになると、ギルドの人間すらフィールドに近づくのが危険ってことから支給品が来なかったりするわけですよ。僕が上位ハンターになるのは時間の問題ですから、いまからそれに合わせて調整しておいて損はないかな、と。ていうかそもそも、首席の僕が下位のクエストごときで支給品の世話になんてなるわけないんですけど(笑)。
僕はすぐさま、フィールドに飛び出しました。目指すはサシミウオ。じつに安いクエストですが、森丘の見学もかねて、いろいろなエリアに行ってみましょうかね。
ベースキャンプからトンネル状の通路を潜り抜けると、目の前に広大な平原が広がりました。おお……。ここが森丘か……。背後からなんとなく、「チャ〜チャラララ〜♪」って雄大なBGMが聞こえたような気がしました。それほど、ここは美しい土地なのです。見るとこのエリアの平地部で、草食竜・アプトノスの親子が平和に草を食んでいるじゃないですか。僕の中の、首席ハンターの血がたぎります。
"アプトノスを見たら生肉と思え!"
通信教育のハンター教科書の、最初のページに書いてある格言です。ハンターはまず最初にアプトノスを狩り、その身体から剥いだ生肉でこんがり肉のお弁当を作らねばいけないらしいじゃないですか。確かに、腹が減っては狩りはできませんからね。僕は先人の例に倣ってハンターナイフを抜き、アプトノスの群れに飛び込みました。アチョーーーッ!
ところがいくら斬っても、アプトノスは倒れません。
正確には倒れる以前の問題で、アプトノスは2、3回斬りつけるとひどくイヤがり、急に早足になってスタコラサッサと川を渡って対岸に行ってしまうのです。いっそ追いかけて向こう岸で狩ってやろうかとも思いましたが、じつは僕は生来のカナヅチで毎朝顔を洗うのも躊躇われるほどの水恐怖症でして。なので左手に片手剣をぶら下げながら、川を渡るアプトノスをおとなしく見守るしかありませんでした……。
けっきょく、7頭もいたアプトノスはすべて向こう岸に渡ってしまいました。でもまあ、いいんです。いま僕、お腹減ってないし。そんなときに殺生しても寝覚めが悪くなるだけだ。「まあいいやどうでも……」とつぶやいてから、僕は森丘の奥地を目指して走り出しました。
しかし走り出したのはいいものの、一瞬で僕は道に迷いました。じつは僕は生来の方向音痴で自分の家の中でも迷ってしまうほどでして……。そんな僕の目の前に、パッと見は人に見える赤ら顔の小さな生き物が現れました。かなり小柄です。
こ、これはナニモノだろう……?
首席脳ミソの中にあるモンスターリストで、キーワードが該当するモンスターがペカペカと明滅します。うーん、どれだ……? どのモンスターか決めかねていると、いきなり赤ら顔の生き物が声を発しました。
「おお! おぬしの持っている何かを、ワシのトッテオキと交換する気はないかや!?」
な、なに? アイテムを出せって言ってんの? も、もしかして、カツアゲ……? ……あ! わかった! こいつがモノを盗むという噂のモンスター、"メラルー"らしいな。危ない危ない。しっかり勉強しといてよかったよ。じゃなきゃ身ぐるみ剥がされるところだ。
僕はメラルーの前を早々に立ち去り、再び走り出しました。すると目の前の木に、茶色いボールのような物体がぶら下がっているのを発見しました。
あ! ハチの巣だ!
ハチの巣からは回復薬グレートを作るのに必須な素材、ハチミツが採れるのです。さっそく採ろうすぐ採ろう。僕はハチの巣に接近し、その茶色い塊をしげしげと眺めました。
でもこれ、どうやってハチミツを取り出すんだ? 教科書には「ハチの巣にはハチミツが入っていて採取することができる」って書いてあるだけで採りかたなんて書いてなかったけど……。
でもきっと、この乾いた球体の中にじゅぶじゅぶにハチミツが詰まっているのだろう。となると、こいつを壊して取り出すしかないな。ヨシ、壊しちゃえ。えい。パキャン! 壊れた! ……おお! 無残に壊れた巣の中から、ハチミツがどろどろと流れ出てきたぞ! おーし、さっそく採集するぞ……ブーンブーンブーン! ってハチだ! ハチが襲ってきたぞ! チクチクチク。痛い痛い! 刺すな刺すな! やめろやめろやめろ!
僕はほうほうの体でハチの巣の近くから逃げ出しました。まったく、泥棒モンスターは出るわハチに刺されるわでロクなことがないよ。あームシャクシャする。八つ当たりしたい。お? ちょうどいいところでステキなモンスターに出会ったぞ。あのブタだかイノシシだかに見える四つ脚のモンスターは……モスだ! おとなしい草食種のモスじゃないか! よーし、やつを蹴っ飛ばしてやれ。うりゃ! ボコ! 当たった! あーすっきりした。ちょうどここ、渓流地帯になってて釣りもできそうだから、サシミウオも釣ってやれ。えーっと、竿を出して……ってぎにゃああああ!! さっきのモスが突進してきたあ! 草食種が放ったものとは思えない、体重の乗った体育会系なタックルをモロに食らい、僕は壁際まで吹っ飛ばされました。その直線的で無骨な動きは猪突猛進を地でいくもので、モスを「人畜無害でおとなしい草食種」なんて最初に言ったヤツをこの場に連れてきたくなりましたよ……。しかもこのモス、やたらと好戦的で、振り返ったと思ったらまた突進、振り返ったと思ったらまた突進……と、何度も何度も僕目がけて突っ込んでくるではないですか! しかたないので僕は剣を抜き、1回、2回とモスを斬りつけました。しかしどうにか狩れたときには僕の身体はボロボロで、いますぐにでも回復アイテムを摂取しないと力尽きてしまう……ってところまで追い詰められていました。しかし自信満々でここに来たものだから回復系のアイテムなんてひとつも持っていやしない。もちろん、支給品の応急薬も取っていません。
でもこんなときこそ、僕の知識が役に立つのです。フィールドで傷つき、体力が減ってしまったら"薬草"を現地調達して食べりゃあいいんです! というわけで僕は、そこらに生えている草をいくつか採取しました。僕くらいの知識があれば、本物の薬草を見たことがなくてもカンだけでそれがどれかわかってしまうものなのです。えーっと、薬草はと……コレだ! 間違いなくコレだ! ギルドの掟では、フィールドでは特定のもの以外食べちゃいけないことになっているけど、薬草は大丈夫。さっそく食べよういま食べよう。いっただきまーす! ムシャムシャムシャ…………zzzzzzzzzzz
は! 恐ろしいモンスターが跋扈するこのフィールドで、なぜか突然寝てしまったぞ! どうなってんだ!? ま、まあ最近寝不足だったからな。こういうこともあるよな。ウンウン……。あ、もしかしたら薬草って、その場で強引に眠らせて体力の回復を図らせる……っていうアイテムなのかもしれない。うん、そうだ。そうに違いない。
体力があまり回復したとは思えませんでしたが、僕はクエスト遂行のために渓流に糸をたらしました。とっととサシミウオを釣って、村に帰ろうと思ったのです。しかしここで、またまた問題が発生しました。
サシミウオって、どのサカナだ……?
そう、サシミウオの実物を見たことがないのです。いつも目にするのは切り身になっているものなので、サシミウオがどんな姿をしているのか皆目見当がつきません。納品数は3匹。いろいろなサカナを片っ端から釣り上げてすべて納品ボックスに入れる……っていう方法も考えましたが、それじゃあ首席のプライドが許しませんよ。やっぱりどうにかして、サシミウオを突き止めないといけませんよね。そしてほどなく、僕はサシミウオを判別する方法を思いつきました。
そうだ。食ってみりゃいいんじゃん。
サシミウオだったら子どものころから、幾度となく食べたことがあります。舌はキチンと、その食材の味を覚えているものですからね。それでサシミウオがどのサカナかわかったら、集中的にそいつを釣り上げればいい。うん、完璧。さすが首席。
さっそく僕は、1匹のサカナを釣り上げました。かなりの大物で、引き上げるのには苦労しましたよ。これだけたいへんだったんだから、こいつがサシミウオである可能性はかなり高いと思われます。よし、では食ってみよう。僕は食べでのあるそのサカナの背中付近に思いっきり歯を立てました。すると……!
ボカーーーンっ!!
なんとサカナがいきなり破裂……。その衝撃で僕は力尽きたらしく、気がついたら診療所のベッドに横たわっていました。いったい、あのフィールドで何が起こったんだ……。
しばし呆然としていると、診療所の先生が入ってきました。僕が気を失っている間に、いろいろと検査をしてくれたようです。神妙な顔で、先生はこう言いました。
「おまえさん、いったい何をしてきたんじゃ? えーっと、まずはハチに刺されたことによるハチ毒による重度のアレルギー、それとネムリ草の中毒症状、そしてハレツアロワナの暴発による外傷性ショック……。どれもこれも、ふつうのハンターは決してやらないことばかりじゃぞ」
ふつうのハンターじゃやらないことばかり、か……。
僕は先生に「どうもスミマセン」と頭を下げながらも確信していました。
やっぱ、僕って天才?
大塚角満のモンハン妄想小説、第6話です。今回のキーワードは“『3(トライ)』”の世界と“草食種”。ちょっと長いですけど、お楽しみくださいな。
※著者の妄想が多分に含まれているので、ご了承ください……。
■怪物ケルビとの死闘(『3(トライ)』)
俺はその日、砂の都・ロックラックの酒場で、賑やかな喧騒を肴にひとりでポッケビールをあおっていた。
もうこれで、3杯目だろうか。
今日はいつも以上に日差しが強いので、屋根がないこの酒場の気温はとんでもないことになっているだろう。でも砂漠気候特有のドライな空気のおかげで、直射日光が当たらない日陰に入れば不快な暑さはかなり和らぐ。ここはビールを飲むには、最高の環境なのだ。
ビールのアテは、孤島名産の天日塩を軽く振ってフライパンで炒っただけのエールナッツだ。少し歯応えがある仁(植物の種子のことだよ)をコンニャロと噛み砕くと、中からホロホロとたんぱく質のカタマリが崩れ出てくる。その独特の旨みは天日塩の刺激で引き立てられ、キンキンに冷えたポッケビールによく馴染んだ。
あーうまい……。ボリボリゴキュゴキュ……。なんて平和で、なんて心安らぐ状況なんだろう。ここ最近はジエン・モーランもやってきていないし、裏の畑でイビルジョーが暴れてる……なんて話も聞かない。じつに平穏。このうえなく無風。道行くハンターの顔からはすっかり険が取れ、武器も防具も身につけずにウロウロしている連中もそこかしこで見られるくらいだ。
しかし……と、俺は少し酔いが回り始めた頭で考えた。こんなに平和でいいのか……?
ロックラックに暮らす一般市民ならいざ知らず、俺たちはまがりなりにもハンターである。進んで危険に身を晒し、モンスターがアギトを開けて待つ未知なるフィールドに喜んで飛び込んでこそ、その存在価値を発揮できる人種ではなかったか。いやそうだ。そうに違いない!! 俺は持っていたビールのジョッキを「ガンッ!!」とテーブルに叩き付け、「刺激が欲しい!!」とわめいた。
そんなときである。向かいのテーブルに座っていたふたりのハンターの会話が聞こえてきたのは。上半身はインナー、下半身はハイメタ装備という、脱ぐのか着るのかはっきりせいや的な格好をした中年ハンターが声を潜めてこんなことを言ったのだ。
「おまえ、知ってるか? 孤島に出る不気味なモンスターの噂……」
な、なに? 不気味なモンスターだと?? 魅力的なキーワードがカンフル剤になったのか俺の酔いは瞬時に吹っ飛び、そのふたりの会話以外の喧騒がまったく聞こえなくなった。
半分ハイメタハンターの言葉を聞いた仲間と思しき男が、プルプルと首を横に振る。否定のボディーアクションだ。ちなみにこの男は、全身5ヵ所の防具すべてがバラバラになっている。あれじゃ何もスキルは発動していないだろうな……と関係ないことを考えていたら、半分ハイメタハンターが説明を始めた。
「知らないか? 不気味なケルビが出没するって噂。なんでも、男性ハンターが見上げてしまうほどの巨体をしているうえに、とんでもなく狂暴で手が付けられない固体らしい。もう何人ものハンターがコイツに追い回されてヒドい目に遭っているらしいぜ……」
「マジでえええええ!!?」
半分ハイメタハンターとバラバラハンターが、怪訝な表情で俺のほうを振り向いた。いかんいかん。興奮してつい、大声で絶叫しちまったよ。
俺は何食わぬ表情で「マ、マジでえェエエールナッツ超うめえ!!」と見事にその場を取り繕い、心を落ち着かせるためにジョッキに残ったポッケビールをグビグビと飲み干した。しかし、躍り上がった我が心臓は簡単に静まってくれそうもない。でも、そりゃあそうだよ。こういう話こそ、俺は待っていたんだから! ケルビのくせに見上げるほどの巨体で、ハンターを追い回すほど狂暴だと!? ホントにそんなケルビが存在するのか……? 大法螺を吹くハンターは大勢いるから、話半分くらいに聞いておいたほうがいいかもしれない。でも半分でも、十分以上に心躍らされる話じゃないか!
「よーし! いますぐ出発だ! 孤島目指して、レッツゴー!!」
俺は酒場を飛び出した。
さあ準備だ準備だ。前代未聞の"ケルビ討伐クエスト"だ。
ケルビなんて通常、そこらにいる野良ネコかスズメくらいの存在でいっさい危険を感じたことなどなかったが、ハンターのあいだで噂になるほど巨大で獰猛だというのだから、その戦闘能力をナメてはいけない。クルペッコと同等くらい……と思う程度では痛い目に遭うかもしれない。いっそラギアクルスに挑むくらいの気持ちで、万全の態勢を整えたほうがいいだろう。
俺はアイテムポーチに回復系フルセット、シビレ罠、落とし穴、閃光玉を入れ、さらに力の護符、守りの護符も懐に忍ばせた。そして火力が足りなくなることも考えて、大タル爆弾G、大タル爆弾、小タル爆弾ももちろん持参。最後に「万が一に備えて……」とモドリ玉をぶち込んでアイテムポーチの口を閉めた。これだけの準備をしても、まるで安心できない。この段階ですでに、俺はまだ見ぬ怪物ケルビに飲まれつつあった。
孤島に到着した俺の足は、明らかに震えていた。武者震い……ではない。完全にビビっているのである。酒場では酔いも手伝って、自分がナニモノにも負けない修羅か悪鬼にでもなったつもりでいたが、孤島に来るまでの道のりですっかり酒は抜け、強い気持ちはいまいずこ。それでも引き返さずにここまでやって来たのは抗えぬ"ハンターの好奇心"に背中を押されたから。ハンターとは、どんな危険が待っていようともそこにまだ見ぬモンスターがいるのなら、我先にと近づきたくなってしまうめんどくさい生き物なのである。
持ち物の最終チェックをしてから、俺はベースキャンプを飛び出した。最凶モンスター・イビルジョーを屠り去って作ったランス、"アトロシスタワー天"が、これまたイビルジョーの素材で作ったバンギス系の防具の背中でギシギシときしんだ音を立てる。俺がいま身につけられる、最強の武器と防具だ。どんなモンスターもこの武具を見たら裸足で逃げ出す……ってほどのシロモノだが、怪物ケルビを相手にすることを考えたらこれでもまったく十分とは思えなかった。
「もう、逃げ出してしまいたい……」
俺は防御力500を超える防具の中で涙声を出した。
しかしアレコレ迷いながら走っているうちに、俺は問題のエリアに入り込んでしまった。そう、ケルビの群れがピョンピョンと跳びはねているエリア4である。怪物ケルビがどのエリアにいるのか具体的な情報は何もなかったが、ケルビは基本的に群れで生活する生き物だ。この近くにいるとみて間違いないだろう。額からひと筋の汗が流れて顔を洗い、アゴの先端から地面に落下したのがわかった。
ごくり……。
いつの間にかカラカラになった口で強引にツバを飲み込み、同時にアトロシスタワー天を左腕にかまえる。そのエリアに飛び交っているはずの鳥の鳴き声やブナハブラの羽音、ケルビのいななきも聞こえなくなった。心臓が早鐘のように打ち鳴らされている。インナーはいまや、吹き出した汗で何倍もの重さになってしまっていた。出てくるなら、早く出てきてくれ怪物ケルビ! ボロボロにされるのは覚悟のうえだ。とにかくこの緊張から早く解放してほしい!!
俺がまだ見ぬ恐怖に押し潰されそうになったとき、エリアの空気がいきなり変わった。それまで、孤島独特の爽やかな潮の香りに満ちていたのに、どこからともなく生暖かく、ケモノ臭い臭気が流れ込んできて、瞬時にエリアを覆いつくしたのだ。
い、いる! 間違いなく近くに、怪物ケルビがいるっ!!
俺は恐慌を来たしそうになる心を懸命に静め、キョロキョロと周囲を見渡した。どこだ……? どこにいるんだ怪物ケルビ!! 目だけでなく、大げさなほど首を左右に振って怪物ケルビの姿を探す。しかし、いない……。前方180度を懸命に見渡してみたが、まったくその姿を確認することができないのである。恐怖のあまり、俺は絶叫した。
「どこにいやがる!! とっとと姿を現してくれえええ!!」
そのときだった。
カサ……。
俺の真後ろで、ナニモノかが枯れ葉を踏む音が聞こえた。ままま、まさか……。いるのか俺の後ろに……。そんな怪物じみたモンスターに、背後を取られちまったのか俺は……!
「ブヒィ」
いいいいま俺の頭の遥か上空から、ケルビのいななきが聞こえたんですけど……! やばい……。このままじゃやられる!! 俺は完全に金縛り状態になってしまった身体を呪縛から解放するために、思いっきり自分の舌を噛んだ。その瞬間、猛烈な激痛と鉄の味が口の中いっぱいに広がる。しかし、それで目が覚めた。クルリと、俺は振り返った。
最初に目に入ったのは、ふさふさの柔らかそうな毛のカタマリだった。
色は灰色がかった白で、陽光に照らされてキラキラと輝いている。そこから下に目を動かすと毛のカタマリは2本の丸太に枝分かれし、それが生き物の脚だとわかるまであまり時間はかからなかった。さらに視線を上に動かすと、俺の頭の位置から確実に70センチは上方に、突き出た突顎と小さな口、黒い瞳と2本の角をそなえたおなじみの顔が……! いいい、いた! ホントにいた!! とんでもなく大きくて獰猛とかいう、伝説の怪物ケルビが目の前にいたっ!!! 俺はインナーの中にジョバーっと豪快に失禁し、思わずその場にへたり込んでしまった。でも、そりゃあそうだろう。これほど規格外の大きさを誇るケルビを見て、失禁しないヤツがいたらお目にかかりたいわ。
そのケルビは噂にたがわぬ存在感を放ちながら、じりじりと俺に近づいてきた。こういう都市伝説ってたいがいが尾ヒレつきまくりで話題だけが先行し、実際にタネを見たらてんで大したことがなかった……っていうのが相場だが、このケルビは噂にたがわぬ怪物オーラを放っている。見開かれた黒い瞳は暗黒世界への入り口を思わせるほど大きく、不気味で、突き出た2本の角なんてディアブロスが見たら舌打ちするんじゃないかと思うくらい鋭く発達している。
その神々しいまでのたたずまいを見て、俺は確信した。とてもじゃないけど敵う相手ではない、と。俺くらいの一流ハンターになると、一瞥しただけで相手モンスターと自分のポテンシャルを天秤にかけて力の優劣を量ることができる。その一流ハンターの本能が、かつてないほどの非常ベルを鳴らしていた。「逃げろ!」と。「いますぐクエストをリタイアしてロックラックに帰ったほうがいい!」と……。
しかし、怪物ケルビはそんな暇を与えてはくれなかった。いきなり大きな頭を下に下げたかと思ったら、そのままの姿勢で突進してきたのである! 向けられた2本の角は決戦場に備え付けられている撃竜槍もかくやという迫力で、完全なる殺意を込めて俺に向かってきている。
「うわあああああ!!」
俺は恥も外聞もなく緊急回避し、間一髪のタイミングで怪物ケルビの突進をかわした。危ないところだった。一瞬でも躊躇っていたらバンギスメイルは粉々に砕けて、俺は串刺しになっていたことだろう。しかし、安心するのはまだ早い。怪物ケルビは強靭な脚力を駆使して方向転換し、再び角を突き出して突進してきたのである!
や、やばい! 緊急回避から立ち上がったばかりで、避けることができないよ! あの迫力で突っ込んでくるのだ。ランスのガードすら通用しないに違いない!
俺は再び、インナーの中に失禁した。顔はすでに恐怖のために、涙と鼻水でぐちゃぐちゃになっている。
嗚呼……。俺の人生、短かったな……。まさかケルビの突進を食らって、昇天させられるとは思わなかったよ……。でもハンターとして生きてきたのだ。こういう最期は、ある種当然のことだ。神獣とも言えるこのケルビにやられるのだったら本望だよ……。
俺は悟りの境地に達しながらも、闇雲にアトロシスタワー天を振り回した。最後の抵抗……ってわけではなく、本能的に身体を守ろうとしたのかランスを前方に突き出してしまったのである。
この切っ先が、怪物ケルビのどこかをかすめた。かすかに、その感触が左手に伝わってきたのだ。でもこんなの、ブナハブラに刺されたほどにも怪物ケルビは感じていないだろう。ひょっとしたら、雨滴が当たったくらいにしか思っていないかもしれない。ああ……もうダメだ。俺は昇天を覚悟した。しかし。
「ブヒィィィィン!!」
悲痛ないななきを放ちながら、怪物ケルビの巨体がもんどり打って後方に吹っ飛んだ。そしてそのまま、ピクリとも動かない。俺はあんぐりと口を開けたまま、再び金縛りになった。
……え? お、終わり?? 怪物ケルビ、ち、ちんじゃったの……!?
俺は7秒ほどその場に立ち尽くしたのち、左手に持ったアトロシスタワー天と、身を覆いつくしているバンギスシリーズの防具を眺めた。さらに目を転じて、アイテムポーチから溢れんほどになっている各種回復系アイテムと罠、爆弾軍団を一瞥する。そしてこれ以上ないほど赤面したのち、誰にともなくつぶやいた。
「……やっぱケルビはケルビだな」
まだまだ続きます大塚角満のモンハン妄想小説シリーズ。第5話のキーワードを、江野本はつぎのように指定してきました。
「ここらで大塚さんの大好きな“オトモアイルー”がメインのお話を書きましょうよ! オトモアイルーと……ガンナーのハンター主人公の短編なんてどうですか? ぜひ読みたいです♪」
オトモアイルーか……いいねえ!! というわけで、第5話です。
※著者の妄想が多分に含まれているので、ご了承ください……。
■オトモアイルーにくびったけ(『2nd G』)
近所に住んでいる弓使いのハンター、リョウリョウさんが、「いてはりますか?」と言いながら俺の部屋のドアを開けた。ベッドに寝転んで『看板娘の告白 私、竜神族出身です』という何がおもしろいのかわからないかわら版のコラムを読んでいた俺はムクリと起き上がり、リョウリョウさんの呼びかけに応じる。「いてはるいてはる」。
部屋に入ってきたリョウリョウさんは、カクサンの木の切り株でできた椅子にドカっと腰を下ろして「今日も暑いね〜!」と元気な声で言い、それに対して俺が応じるのも待たずに話の本題を切り出してきた。この人はいつも、こんな感じなのである。パタパタと手で顔を扇ぎながら、リョウリョウさんは言う。
「ミドさん、オトモアイルーが欲しい欲しいって言ってたでしょ? でも、ネコバァがぎっくり腰になって寝込んでからオトモアイルーの流通がストップしちゃっているけど、あるルートから1匹だけ、入手することができたんですわ」
リョウリョウさんの言うとおり、オトモアイルーを斡旋してくれるネコバァというおばあさんが2ヵ月まえにぎっくり腰になり、以来我が村には新規のオトモアイルーがやってきていない。ソロ狩猟がメインのハンターがパニックに陥っているのは言うに及ばず、愛玩動物としてオトモアイルーを愛でている一部の愛好家も、今回の事態には辟易しているらしい。
そんな状況下でよくもまあ、1匹とはいえ新規のオトモアイルーを手に入れられたもんだ。目を剥きながら俺は尋ねた。
「このご時勢にスゴイっすね!! で、あるルートってどんなの?」
リョウリョウさんは顔を扇いでいた手をピタリと止め、俺から微妙に視線をズラしながら歯切れ悪くこう答えた。
「西にある"カイハツ"っていう村に用事でいったときに……って、まあそれはどうでもいいやないですか」
そしてリョウリョウさんは身体を反転させて入り口のドアのほうを向き、左手で"おいでおいで"をしながら大きな声で呼びかけた。「オスカー!」と。
リョウリョウさんの呼び込みに導かれて、ドアの隙間から1匹のアイルーが飛び込んできた。毛色はポピュラーな"白"で体つきは少々小柄、身体のサイズと微妙に合わないドングリメイルを着込んでいる。その"オスカー"と呼ばれたオトモアイルーは、2本脚で立ち上がりながらいそいそとドングリヘルムのズレを直し、いかにもアイルーな口調で自己紹介した。
「ご紹介にあずかったオトモアイルーのオスカーですニャ。よろしく頼むニャ」
そう言ってオスカーは、生意気にも胸を張ってみせる。生来のネコ好きである俺はその仕草を見ただけでメロメロになり、ついつい「おーよしよし^^ これからはここがあなたの家でちゅよー^^」と赤ちゃん語を発してしまった。
「きも」
リョウリョウさんがつぶやいた。
俺はそんなつぶやきは敢然と無視して、デレデレ状態のままオスカーに近寄ろうとした。ところがオスカーは華麗に身を翻して俺との距離を保ち、キラリと目を光らせながらこんなことを言った。
「オトモアイルーを求めていたところをみると、ダンナのハンターとしての腕は高が知れているニャ。まあこれからボクがなにかと面倒をみてやるのでありがたく思うニャ」
どうやらこいつは、本格的に生意気なオトモアイルーのようだ。「あはははは!!」と、リョウリョウさんが軽薄に笑った。
しかしネコ好きというものは得てして、ちょっと生意気なくらいの個体を好む傾向がある。なので俺はリョウリョウさんに「このオトモ、ぜひ俺にちょうだい!!」と激しく迫り、無事その日からオスカーとの生活が始まったのだった。
翌日、俺はさっそくオスカーを連れてクエストカウンターにやってきた。オトモアイルーといっしょにクエストに行くことは俺の長年の夢だったので行動は早いのである。クエストカウンターにいる看板娘とあれこれ話しながらクエストを物色していると、足元からこんな声が登ってきた。
「さっそくクエストかニャ? でもダンナは、ボクがどんな特性を持っているオトモなのか確認もしていないニャ。はなはだ心配だニャ」
出かかっていた言葉を思わず「うぐっ」と飲み込む俺。でも言われてみると確かに、俺はオトモアイルーを手に入れたヨロコビに浮かれるばかりで、オスカーと狩猟に関する話をいっさいしていなかった。俺は看板娘に「ちょ、ちょっと待ってて!」と慌てて言い、くすくすと笑う彼女を背中にオスカーに言った。「えーっと、クエストを選ぶ前にミーティングをしようではないか」。するとオスカーは「フンッ」と鼻から息を出し、「わかればいいんだニャ」とボソリと言った。
聞くとオスカーは、基本的に何でもできる"勇敢"な性格をしており、「攻撃もサポートも満遍なくこなせるニャ」とのこと。だったらいちいちミーティングなど行わなくとも黙ってついてきて臨機応変に立ち回ってくれればよさそうなもので、俺が看板娘に笑われる必要もなかった気がする。
そんな思いが顔に出たのだろう。オスカーは俺を見つめていた目をすっと細め、若干尻尾を太くしながら低い声で唸った。
「事前に打ち合わせをするという、マジメな心根こそが大事なんだニャ。そういう心構えが、クエストを成功に導くんだニャア!!」
俺はオスカーの剣幕に驚いて情けなくも悲鳴を上げた。「し、しいましぇん……。マジメにやります……」。
それでもクエストに関しては「なんでも好きなものを貼っていいニャ」とのことだったので、俺はかねてより行きたかった砂漠のティガレックス討伐クエストを受注した。ひとりで行くには荷が勝るが、オトモアイルーがいればなんとかなるだろう。オスカーはクエストボードを見てなにやら難しい顔をしていたがとくに何も言わず、俺たちはそのまま砂漠へ向かって歩き出した。
そして到着したベースキャンプ。俺はオトモアイルーが傍らにいてくれる安心感から支給品ボックスを無視し、フィールドに駆け出そうとした。支給品でもらえるものなんて、高が知れているからな。そんなことに時間を使うくらいなら一刻も早くティガレックスを発見し、攻撃を加えたほうがいい。ところが、走り出した俺の背中に思いも寄らない怒鳴り声が飛んできた。
「ダンナ!! どこに行くつもりニャア!!」
声の主、オスカーは支給品ボックスの前で四つんばいになり、背中を弓のように撓らせている。かわいらしいその顔は震えるほどの怒気にまみれ、口からは犬歯がむき出しになっていた。俺はオスカーの剣幕にゾッとしながら、オロオロ声でたずねた。
「な、なんだよオスカー。大声出して。どうかしたのか?」
するとオスカー、「フニャーッ!」とひと声発してからピョンと立ち上がり、支給品ボックスを左手の肉球でバンバンと叩きながら一気にまくし立てた。
「なんで支給品を取らないんだニャ! そういう油断が命取りなんだニャ! はっきり言って今回のティガレックス討伐はかなりの困難が予想されるニャ。ていうか、ぶっちゃけ相当危ないニャ。そんなクエストなのに支給品をバカにしてかかるなんて、神をも畏れぬ行為だニャ!」
そしてオスカーはピタリと動きを止め、いくぶん声のトーンを落としてから、こちらの思いを見透かしたようなことを言った。
「それとダンナ、オトモアイルーに過度な期待は禁物ニャ」
俺、怒ったババコンガのように顔を真っ赤にして「わ、わかったよ! そこまで言うことないだろ……」とかなんとかブツブツと言い、しぶしぶ支給品ボックスに取り付いて中から携帯食料や応急薬を取り出した。それを見てオスカーは納得したのか「うんうん」と頷く。本当に、生意気なネコだ。
そんなやりとりがあったおかげで時間をロスしてしまったが、幸い目標のティガレックスはすぐに発見することができた。さっそく俺は自慢のライトボウガン・ジェイドテンペストに散弾Lv2を装填し、攻撃の態勢を作る。このボウガンはほとんどすべての弾丸を発射できるので非常に使い勝手がいいのだ。そして相棒のオスカーもティガレックスの姿を見て「フニャアッ!!」と大興奮状態に陥り、ドスランピッケルを片手に猛烈な勢いで走り出す。そんな姿を頼もしく感じながら、俺は1発目の散弾を思いっきりぶっ放した。
ところが。
「フニャアアアア!!」
解き放たれた散弾はティガレックスとともに、かなりの数がオスカーに命中してしまったではないか。
「な、なにをするニャ!!」
俺のほうを振り返って憤慨するオスカー。「あ、すまん」と謝る俺。しかしそんなことをしていたら隙が生まれるのは当たり前で、オスカーと俺は順番に、突進するティガレックスに轢か潰されてしまった。
そのあとは、もう散々だった。どういうわけだか俺がいつも通りのポジショニングをし、もっともダメージ効率がいいモンスターの頭を狙って攻撃をすると、必ずと言っていいほどオスカーに弾が当たって立ち回りのリズムが崩れてしまったのである。そのたびに「フニャーッ! ボクに当たってるニャ! 気をつけるニャア!」と騒いで怒りまくるオスカー。まったく、騒ぎたいのはこっちのほうだ。
いつもどおりにモンスターを狙うとオスカーに当たり、それを回避しようとすると弾はモンスターにかすりもせずに空に吸い込まれていく……。ひとりで狩っていたときよりも明らかに、攻撃力が落ちていた。(邪魔するなよオスカー!)と、俺は腹の中で舌打ちばかりしていた。
けっきょく、ダメージらしいダメージを与えられぬままクエストは終了してしまった。時間切れで、ギルドより強制撤退のお達しが来たのである。この惨憺たる結果を受けて、情けないことに俺はキレた。なぁにがオトモアイルーだ。ご主人の足を引っ張ってばかりじゃないか! 俺は押し黙ったままトボトボと後をついてくるオスカーに向かって、大人気ない声をぶつけた。
「オスカー! お前が俺の行動に干渉しまくるおかげでクエストに失敗したじゃんか! もっとちゃんと立ち回ってくれよ!」
生意気なことばかり言うくせに、実際は何の役にも立たない相棒に対してついに堪忍袋の緒が切れてしまった形だ。これだけ怒ればさしものオスカーもシュンとして、しばらくおとなしくなるに違いない。
ところが、オスカーはシュンとするどころか猛然と怒り出し、俺以上の大声でたまっていたものを吐き出した。
「ネコにあたるとはナニごとニャ! 悔しかったらオノレの腕を磨いて、自分の力で前に進むしかないんだニャ! ボクはあくまでも"オトモ"アイルーだニャ。戦局をガラリと変えてしまうほどの活躍を期待されても困るニャ!」
俺は目を丸くした。
「ネコのくせに、なかなか本質的なことを言う」
オスカーは鼻から「フン」と息を吐き出し、ここぞとばかりに俺を責めてきた。
「そもそもダンナは、ライトボウガンの扱いがニャっちゃないニャ。目先のダメージばかり考えているから、協力プレイが機能しなくなっているんだニャ!」
そう言ってオスカーは、尻尾を太くして威嚇の姿勢をとった。
俺の立ち回りのせいで、協力プレイが機能しなくなっている……? どういう意味だ?? 俺はオスカーの言った意味がさっぱりわからず、ただ「悔し紛れにご主人のせいにするな!」とだけ言って会話を打ち切った。なんとも後味の悪いオトモアイルーとの初クエストになってしまった。
翌日。
昨日の言い争いのことなど忘れてしまったのか、オスカーは夜が明けるなりに「朝だニャ! ダンナ、起きるニャ! ネコメシ食ってクエストに行くニャア!」と大騒ぎ。俺は開けきらない目をこすりながら(わだかまりは残っていないみたいだな……)と胸をなでおろし、「わかったわかった。いま起きるからサ……」と言って再び布団にもぐりこんだ。オスカーはそれを見て「フニャ!?」と言い、「起きるニャ起きるニャ!」とわめきながら布団の上でピョンピョンと跳ねるのだった。
しかし、心機一転臨んだクエストは同じことのくり返しとなってしまった。俺とオスカーの動きがどうしても干渉してしまい、ストレスがたまるばかりなのである。
しかたがないので俺は、いつのころからかオスカーが張り付いているモンスターの頭を狙うのは避けて、横方向や後方に回り込んで弾丸を撃つようになった。いつまで経ってもオスカーは「頭は近接武器に任せておくのがいちばんいいんだニャ!」と言って譲らなかったので、やむを得ず人間様である俺のほうが折れてやったのである。まったく、これではどちらがご主人様なのかわかったものではない。俺は、オトモアイルーのくせにクエストでの主導権を握ろうとするオスカーにほとほと嫌気がさし、ついついこんなことを言ってしまった。
「おまえみたいに生意気なオトモアイルー、もうどっかいっちゃえ!!」
と……。
そんなある日、リョウリョウさんに誘われてふたりでリオレイア討伐に行くことになった。オトモアイルーではなく、人間のハンターといっしょにクエストに行くのはじつに久しぶりである。リョウリョウさんは最近、ハンマーに凝っているとかで、"アイアンインパクト"を装備している。そして「ライトボウガンでのサポート、よろしゅうたのんます」と言って片目を瞑ってみせた。さあ、クエストスタートだ。
リョウリョウさんとふたりで密林フィールドの木々を抜けていくと、いましたいましたリオレイア。ハンマーをかまえたリョウリョウさんは当然のように頭方面に回り込み、俺は無意識のうちに横、そして後方から弾丸を撃ち込んでゆく。以前は多用していた散弾は持ってきてすらいなくて、撃つのはもっぱら麻痺弾と通常弾ってところ。するとリオレイアはおもしろいように麻痺状態となって動けなくなり、ハンマーを手にしたリョウリョウさんに無防備な頭をさらした。リョウリョウさんはこれを見逃さず、頭部にスタンプを1発、2発……。リオレイアは簡単に"めまい"を起こしてドゥと倒れ、さらにふたりのハンターの猛攻を浴びたのだった。結果、ほんのわずかな時間で討伐完了。俺もリョウリョウさんもほとんどダメージを受けない"完勝"と言える立ち回りだった。
クエスト終了後、興奮した様子のリョウリョウさんが俺のもとに駆け寄ってきて、はぁはぁと息をつきながらこんなことを言った。
「ミドさん、めっちゃいい動きだったわ! こちらをサポートしながらもダメージを与えていたし、なにより近接武器と干渉しないように立ち回ってくれていたのでめっさ楽だったよ!」
ビックリして、俺は聞き返した。「え? 俺の立ち回り、そんなに変わった?」。
するとリョウリョウさんはニヤニヤと笑いながら「そりゃあもう」と言ったあと、じつに衝撃的な事実を告げた。
「ちょっと前までのミドさんは、散弾を多用するし、頭ばかり狙うしで、協力プレイ向きのガンナーやなかったんですわ。それが、今日の動きは正反対。自分で気づいて、練習したんやねぇ〜」
自分の言葉に「うんうん」としきりに頷いているリョウリョウさんをぼんやりと見つめながらも、俺は頭の中ではオスカーのことばかり考えていた。
あいつ……。俺にガンナーの立ち回りの基本を教えてくれていたのか……。
俺はリョウリョウさんに慌しい別れの挨拶をしたあと、脇目も振らずに家に向かった。悪いのは、俺だった。オスカーに謝らなきゃ。そして明日からまた、いっしょにクエストに行くんだ!
家のトビラを開けて中に入ると、意外なことにオスカーの姿は見当たらなかった。考えてみたらオスカーが我が家にやってきてから、出かけるときも寝るときもつねにいっしょだったので、彼が待っている家に帰宅するというシチュエーションは、これが初めてのことだったのだ。
あいつ、どこに行っちゃったんだ……? まさか俺があんなことを言ったから、本当に出て行ってしまったのでは……!
不安のカタマリが腹の底から込み上げてきて、思わず吐きそうになってしまう。イヤだ……。オスカー、どこにもいくなよ……。俺たち、まだまだこれからじゃんか!
「オスカー!!」
かすれた声で、相棒の名前を呼ぶ俺。そして同時に、彼が隠れていそうなところを片っ端から調べ始める。テーブルの下、クローゼットの中、そして、寝室……。すると、俺が使っている枕の脇に、小さな毛のカタマリが盛り上がっているのが見えた。模様は、白……! オスカーだ!! なんだ、いたんじゃんか……。返事がないから、心配したぞ><
そっと近づいて見ると、オスカーは手で顔を隠すように丸まって静かな寝息を立てていた。よかった……。どこにも行っていなかった……。
静かなその寝顔を、黙って見つめる俺。いつも先頭切ってモンスターの正面に立っている勇敢なネコとは思えないくらい、その寝顔はあどけない。思わず手を伸ばして頭を軽く撫でてあげる。するとオスカーは夢でも見ていたのだろう、身体をビクンと一度だけ震わせて、途切れ途切れの寝言を言った。
「ムニャ……。ダン、ナ……。あぶない、ニャ……。いま、ボクがモンスターを引きつけるから、待っててニャ……。ずっと、いっしょ、ニャ……ニャニャ……」
夢の中でもオスカーは、ご主人様を守るために自分の何十倍もあるモンスターの正面に立ち続けているのだろう。俺はその小さな身体を撫でながら、静かに涙を流した。
そして今日も俺は、相棒のオスカーに怒られてばかりいる。
「ダンナ! 拡散弾は使いどころを考えないといけないニャ! こぼれ弾に仲間が巻き込まれるニャア!」
「不用意に調合なんてしちゃダメだニャ! ガンナーは防御力が低いんだから、まずは身を守ることを考えるニャ!!」
てな感じ。生意気さは日ごとに増しているようで、いまではどっちが主人なのかわからないくらいだ。
「何をボサッとしているニャ! ダンナ、つぎのクエストにいくニャ!」
はいはい、わかりました。いまいきますよ^^;
生意気で頼りになって、ときにムチャでさびしがり屋で……。
そんなすべてをひっくるめて、俺はオトモアイルーに首ったけなのである。
昨日発表させていただいた『逆鱗日和』シリーズ最新刊『本日もトッテオキ! 逆鱗日和』に関連する作業で、連日深夜帰宅となっております。夕べも江野本ぎずもと遅くまで『トッテオキ!』のキャッチコピーなんかを考えていたのですが、深夜になると脳ミソの回転がおかしくなってくるのか、まあ出るわ出るわくだらない案が(苦笑)。ここで出た案はいつか日の目を見ることがあるかもしれないので、あまりにもくだらないキャッチコピーを見かけた際には「ああ、コレのことね。ハイハイ(苦笑)。クダラネ」と思っていただけるとシアワセです。
そんな作業のさなか、江野本が妄想小説第4話のキーワードを唐突に突きつけてきました。
「長いお話が続いているので、ここらで引き締まったショートショートを読みたいです♪ 『本日もトッテオキ! 逆鱗日和』を発表したばかりなので、“火竜の逆鱗”が出てくるショートショートをお願いします!」
というわけで、第4話をどうぞ。
※著者の妄想が多分に含まれているので、ご了承ください……。
■運の悪い男(無印)
その男は、ひたすら運がなかった。
ピッケルを鉱脈に打ち付けると石ころしか出てこず、メラルーのいるエリアに足を踏み入れようものなら速攻でまわりを取り囲まれ、10秒後には身ぐるみはがされている。モンスターから剥ぎ取りをしても出てくるのは竜骨【中】やら竜の牙といったどうでもいいものばかりで、レア素材なんてついぞ見たことがない。
「こんなにがんばって狩っているのに、火竜の逆鱗も火竜の紅玉も見たことがない……。もういっそ、ハンターをやめてくれようか……。本当に俺は運が悪い……」
そのころ。
森と丘の飛竜の巣で、つがいのリオレウスとリオレイアが神妙な顔で話し込んでいた。2頭とも身体は擦り傷だらけ。旦那のリオレウスは、つい先ほどハンターにつけられた生傷を忌々しく眺めながらため息を吐き出した。
「またやられたよ……」
ダンナの重苦しい声を聞いて、妻のリオレイアはそっと目を伏せる。「そう……。毎度毎度、たまらないわね……」。
旦那レウスは切れた尻尾に悲しげな視線を落とした後、妻レイアの顔を見ながら涙声を出した。
「ちくしょう……。なんでハンターは毎回毎回、俺から火竜の逆鱗と火竜の紅玉を持っていきやがるんだ……。どっちもそうそう取れないようになってんのに……。本当に俺は運が悪い……」
前回アップした『ウラガンキンとボルボロスのガールズトーク』のどこが小説やねん!! ……というツッコミはこの際スルーさせていただくとして(突っ込まれると反論のしようがない)。大塚角満のモンハン妄想小説、第3話です。例のごとく、江野本ぎずもが第3話用のテキトー極まるキーワードを俺に突きつけてきました。
「夏と言えば、大塚さんの大好きなオカルト話! そこで今回は、読んで涼しくなるようなお話を書いてくださいな♪ 舞台は、なんとなく夏っぽい砂漠で! よろしくお願いしまーす♪」
……。
簡単に言ってくれちゃうけど、そうそううまくいくかねぇ……。でもまあ、やってみますか! というわけで、第3話のスタートです!
■占いハンター危機一髪(『2nd G』)
ハンティング情報誌『ドンドルマかわら版』は、ドンドルマの街で狩猟活動をするハンターに広く読まれている日刊紙だ。狩猟に関する情報、たとえばモンスターの出現傾向や穴場の採掘スポット、人気の武器や防具に関するトレンド情報が載ってるのはもちろん、ドンドルマの街で人気のショップや食べ物、求人情報まで載っている。ここに掲載されている記事をソースにハンターどうしが交流を深めることも多いので、そういう意味では『ドンドルマかわら版』は、この街で狩猟を生業にしている人間にとってはバイブル的な存在と言えた。
大剣使いのハンター、イーダも例に漏れず、『ドンドルマかわら版』の熱心な読者だった。もともとがミーハーな性格で、流行に敏感なところを密かに誇らしく思っていたので、記事への食いつき具合は"読者の鑑"と称してしまって差し障りがないほどだ。"いまイーオス装備がキテる! 毒無効を身につけて沼地に行こう"という記事が掲載された翌日にはイーオス装備一式を購入していたし、"次世代への布石? "斧系"武器が持つ可能性を掘り下げる"という特集を読んだあとはしばらくのあいだジャッジメントやエクスキューションといった斧の形をした武器しか使わなかった。いい意味でも悪い意味でも、純粋で流されやすい。そんな彼が"占い"にハマってしまったのはある種必然だったのかもしれない。
きっかけは『ドンドルマかわら版』に毎日載っている"今日の狩猟占い"のコーナーだった。それまで、定例コーナーとして毎日載っている占いの記事をしっかり読むことはなかったのだが、ドスガレオス討伐に向かう直前になぜかそのコーナーが目に留まり、初めてじっくりと内容をチェックしたのである。この占いは六星占術で占われている簡単なもので、イーダに該当する"繁殖期生まれの人"の欄にはその日、
「注意日! とくに麻痺には気をつけて。ラッキーアイテムは炎属性の武器」
などと書かれていたではないか。彼は、ドスガレオス用にと用意した炎属性の大剣、バルバロイブレイドに目をやって、
「あ、当たってる……! 俺がいまから炎属性の大剣でドスガレオス狩猟に行くことが見透かされしまったかのようだ」
と驚き、さらに「この分だと麻痺に関しても注意したほうがよさそうだな」と独り言を言った。
ベースキャンプに降り立ったイーダは「麻痺攻撃をしてくるランゴスタとゲネポスには細心の注意を払おう」と指差し確認をしてから、ドスガレオスが待つ砂漠に飛び込んだ。麻痺攻撃をしてくるのはこの2種だけなので、「気をつけていれば大丈夫だろう。占い、ハズレだな」と心の内で思う。そんなとき、砂に潜ったドスガレオスがいきなり砂の海から飛び出して、低空飛行でイーダ目がけて飛んできた。
「あ!」
と思ったときにはもう遅く、イーダはビリビリと痺れて砂の上に倒れ付してしまった。そう、ドスガレオスは時たま、麻痺の効果を持ったジャンプ攻撃を仕掛けてくるのである。
まさかこんなレアな攻撃を食らってしまうとは……。
砂の上で動けなくなりながらイーダは思った。「占いすげえ!!」と。そしてこの日から、イーダは占いのトリコになった。
とは言っても、占い欄がある書籍や雑誌はドンドルマのような大きな街でもほとんど売られていないので、「もっとあれこれ占ってほしい!」と思っているイーダのストレスは溜まるばかりだった。にわか占い狂信者は、今日の運勢とざっくりとしたラッキーアイテムが書かれている程度ではもはや納得できなくなっていたのである。しかしいくら捜したところでドンドルマに占い師はいなかったし、かわら版の占いコーナーが拡大される兆しもない。なので、イーダは決意した。「占いがなかったら、自分で占っちゃえばいいんだ!」と。
イーダはすぐによろず屋に飛び込んで、たまたま売っていた占いのハウツー本と、さいころ、カードといった"占い七つ道具"を購入してきた。「こいつがあれば岐路に立たされたときもつねに正しい道を選択できるに違いない」。たった1回、たまたま当たっただけなのに、彼はそこまで占いの効果にのめり込んでいた。
その日からイーダは、自分の身に降りかかるあらゆる判断をすべて、占いの結果で決めるようになった。たとえば、その日の昼ごはんに食べるものや外出時に着る服のチョイスといった日常的なことはもちろん、今日はどのクエストに行くべきなのか? そしてそのクエストにはどの武器を持っていくのがいいのか? といった狩猟の成否に関わる重要な判断も、占いの結果に任せるようになったのだ。
ある日イーダは、頭はブルファンゴフェイクで両腕にタロスアーム、胴と腰はインナーのままで脚にファミ通漢布……というイカれた格好で集会所を訪れた。もちろん、みずからの占いで"本日のラッキー装備"を導き出して、その通りの格好をしているわけである。得たいスキルのためにあえて全身バラバラの防具を身につけるハンターは多いが、彼のようにスキルそっちのけでこんな格好をしている人間はまずいない。イーダの出で立ちは当然ながら、多くのハンターでごった返す集会所でも目立ちまくっていた。
イーダがクエストカウンターに近づくと、ギルドの看板娘のほうから声をかけてきた。
「あら、イーダさん。こんにちは。今日はどのクエストに?」
こんなふざけた格好をして歩いているのはイーダくらいなので、ブルファンゴフェイクで顔全体を隠していても大概の人にはわかってしまう。イーダは呼びかけにはとくに応えず、ブルファンゴフェイクの奥からくぐもった声でひと言「火山のテオ・テスカトル」と言った。もちろん、占いのお告げにより選ばれたクエストだ。
火山に到着したイーダはまず、ピッケルグレートを片手に構えてエリア2の採掘ポイントに向かった。事前の占いにより"今日は鉄鉱石の当たり日"というお告げを得ていたので、「まずは採掘から」と決めていたのである。すぐに目当ての採掘ポイントに到達し、一瞬の逡巡もなくピッケルグレートを鉱脈に突き立てる。するとその一撃で、見慣れた鉄鉱石の塊がボロリと鉱脈から転げ出てきた。
「おお。やっぱり占い通りだ」
たった1発殴っただけで粉々になってしまったピッケルグレートをポイッと投げ捨て、イーダはニヤリとほくそ笑む。よく考えれば鉄鉱石1個と引き換えにピッケルグレートが壊れてしまったのでは赤字もいいところなのだが、彼のプライオリティーはつねに"占いが当たるかどうか"に置かれているので、そんな細かいことはどうでもいいのである。
採掘を終えたイーダは、そのままエリア2に止まり続けた。これは占いにより導き出された行動ではなく、テオ・テスカトルの巡回ルートにエリア2が入っていることを知っての判断だ。エリア2ならば火山の熱波の影響を受けずに立ち回ることができる。ふだんは変人もいいところの言動ばかりくり返しているが、このへんはさすが、現役ハンターと言ったところか。
イーダの予想通り、まもなく本当にテオ・テスカトルがやってきた。屈強な古龍の中でもとくに忌み畏れられる炎の化身である。
イーダは持参した雷属性の太刀、鬼神斬破刀を下段にかまえた。なぜテオ・テスカトルに雷属性で挑むのかイーダ自身もよくわからなかったが、占いで"雷属性の太刀がラッキーアイテム"と出てしまったのだから、これはしかたのないことなのである。
イーダは「うりゃああああ!!」という気合もろとも、テオ・テスカトルに突進していった。そして頭上に振り上げた鬼神斬破刀の刀身を思い切り、テオ・テスカトルに振り下ろす。バチバチバチッ! と飛び散る雷属性特有の白いいかずち。しかし残念なことに、猛る炎帝にはまったく効果がない。逆にイーダは踏み込み過ぎたため、テオ・テスカトルが振り回した前脚に簡単に吹き飛ばされてしまった。
「ぎゃああああ!!」
ゴロゴロと灰色の大地を転がる占いハンター。そんな彼を目がけて、いままさにテオ・テスカトルが突進してこようとしているではないか。ややや、やばい……。この状態で突進を食らったら確実に力尽きてしまうぞ! 太刀はガードができないから、オノレを守るには避けるしかない。テオ・テスカトルの突進は直進か、左右どちらかへの変化という3つの軌道をもつ。どれだ……。どの方向に突進してくるんだ!! イーダは、ダラダラと流れる冷や汗もそのままにやおら懐に腕を突っ込み、中から1組のカードを取り出した。そしてドカッと地面にあぐらをかき、「どの方向に避ければいいか、いまから占ってみよう」とブツブツと言って、その場でカード占いをご開帳。ズドドドドーとテオ・テスカトルが左に逸れる突進をくり出しても占いは終わらず、ようやく「出ました! テオは左に逸れるからそのまま立ってればオーケー!」との答えを得たときには、テオ・テスカトルはどこぞの空に飛び去ったあとであった……。
イーダはそれからもあらゆる場面で、占いを実施した。でも所詮はシロウトの手習いなので、当たる確率はよくても2割程度といったところだろう。この占いはあまりアテにならない……と誰よりも強く思っているのはイーダ自身だったが、退屈だった日々の格好のカンフル剤になってくれたのは間違いないので、これからもマメに占いを続けていこうと彼は心に誓ったのであった。
そんなある日、イーダは久々に狩友から狩りに誘われた。「たまには仲間どうし集まって、ディアブロス討伐にでもいきたいな」ってことで、そのメンバーに選ばれたのである。
イーダはふたつ返事で「いくいく!」と応えた。このところソロでの狩りが続いていたので、ちょうど協力プレイがしたいと思っていたのだ。
「ではさっそく……」
イーダはテーブルの上にカードを広げた。例のごとく、今日のクエスト運を占うことにしたのである。
慣れた手つきでカードを裏向きに配置し、いくつかの約束事に沿って1枚、また1枚とそれをめくっていく。そこで現れたカードの種類によって、じつに多岐に渡ってその日の運勢が導き出されるのだ。さてさて、今日の運勢は……?
「……あれ?」
表になったカードを見渡して、イーダは首をかしげた。信じられないほどズラズラと、凶兆を表すカードばかりがそこに並んでいたのである。素直にこの並びを解釈すると……。
「……絶対に、行くな……?」
イーダの背中に、冷たい汗が流れた。こんな結果が占いで出たのは、もちろん初めてのことである。当たる確率が2割程度とはいえ、クエスト前にこの結果はあまり気持ちのいいものではない。
なのでイーダは、やってはいけないことだとわかっていながら再びカードを並べだした。もう一度、同じ占いをしようと思ったのである。
先ほどと同じように、よく切ったカードをスピーディーにテーブルに並べていく。そして若干緊張しながら、1枚ずつそれらを表向きにしていった。すると……。
「……そんなバカな」
出てきた順番は違ったが、表になったカードはすべて1回目の占いと同じものだった。2回続けてまったく同じカードが表向きになる確率は、何千、いや何万分の1というレベルの話ではなかったか……。
イーダは震える手で再度カードの束を持ち、これ以上ないほどよくシャッフルしてからテーブルに並べた。吉兆なんて出なくていい。最悪の結果さえ出なければ、それでいいから! しかし、イーダの願いむなしく表になったカードは、1回目、2回目とまったく同じ。
"絶対に、行ってはいけない−−"
カードはそう、告げていた。
イーダはやむを得ず手に武器を持たぬまま集会所に向かい、イライラしながら待っていた3人の仲間に頭を下げた。
「すまん、今回のクエストはやめておくよ……」
さんざん待たされたうえに突然の不参加表明を聞かされ、3人の仲間は烈火の如く怒り出した。理由はなんだ? なぜいまさら不参加なんだ!? 怒りに任せた執拗な追求に抗うことができず、イーダはことのしだいをすべて3人に打ち明けた。そして、
「このディアブロス討伐、きっととんでもないことが起こる。だからみんなも、クエストに行くのはやめるべきだ!!」
と涙ながらに訴え、「日を改めよう!」、「せめて違うモンスターにしよう!」と決死の説得を試みた。しかし、イーダが占いに夢中になっていることを知っている3人は怒りも忘れて「ぎゃははははは!!」と身体を折って大笑いし、
「そんなことを聞いたら余計に行きたくなるぜ。俺たちがディアブロスの首を持ち帰って、占いなんてアテにならないってことを証明してやるよ」
と言って、イーダの制止も聞かずに砂漠に向かって歩き出してしまった。
翌日、イーダが(やっぱり俺も行けばよかった。あんな占い、当たるわけがないのに……)と後悔しながら村の目抜き通りを歩いていると、3台のネコタクが猛烈なスピードで砂漠方面からやってきた。ネコタクを運転するアイルーはひどく慌てた様子で、「急患急患!! ヒジョーに危険な状態だニャ!!」とわめいて診療所に向かおうとしている。見ると、ネコタクに乗せられているハンターには白い布がかけられ、ところどころに赤い血と思しきシミが付着していた。どうやら3人のハンターが、砂漠のクエストで手痛い目にあったらしい。
「……え? さ、砂漠?」
イーダは目を見開いた。砂漠って、昨日自分が3人の仲間とともに向かおうとしていたフィールドじゃないか……。そこから運ばれてきた、3人のハンターって……!
「ちょ、ちょっと待ってそのネコタク!」
叫び声にも似たイーダの呼びかけに驚いて、ネコタクが急ブレーキをかけた。運転していたアイルーは「なんだニャ! こっちは急いでるんだニャ!!」と怒って頭から湯気を出している。そんなアイルーをイーダは無視して、荷台に乗せられているハンターに接近した。そして恐る恐るかけられている白い布に手をかけ、ゆっくりとその一端をめくってみた。
そこには、ボロボロにされた仲間のハンターが横たわっていた。ということはほかの2台に乗っているのも、イーダの仲間とみて間違いないだろう。
「絶対に、行ってはいけない!」
背後からそんな声が聞こえた気がして、イーダは「ひっ」と小さく悲鳴を上げてその場にへたり込んだ。
幸い、3人の仲間は一命を取りとめた。しかし身体に負った傷は深く、しばらくは狩りに行くことができないと言う。
「本当に、最悪のクエストだったよ……。砂漠なのにいきなり前が見えないほどの豪雨が降ってきたかと思ったら、現れたのはいままでに見たこともない片角の巨大なディアブロス……。体力は無尽蔵だし、攻撃力もメチャクチャ高くて、あっと言う間にこのザマさ」
仲間はそこまで言うと苦しそうに息を継ぎ、残りの力を振り絞ってこんなことを言った。
「でも、なんだかおかしかった。こうなることは最初から決まってたんじゃないかってくらい、無力感を感じたっていうか……。まったく、おまえの占いを信じておけばよかったよ……」
診療所から帰る道すがら、イーダは肌身離さず持っていた占いカードを村の焼却炉に放り込んだ。それ以来二度と、どんなに請われても彼が占いをすることはなかった−−。
というわけで話題騒然(?)、大塚角満のモンハン妄想小説第2話です。「いったい何を始めやがったんだこのオトコは!!」と驚かれた方は、ぜひとも前回、前々回の記事をお読みくださいな。
さて第2話のキーワードについて、出題者の江野本ぎずもはこんなことを言いました。
「んーと、じゃあつぎはねぇ……。そうだ! 『モンスターハンター3(トライ)』に出てくるモンスターをキーワードに、とくにごっついウラガンキンとボルボロスを中心に据えた短編をお願いしますっ!!」
ガ、ガンキンとボルボロスが主人公か……。
てなわけで、第2話のスタートです!
※著者の妄想が多分に含まれているので、ご了承ください……。
■ウラガンキンとボルボロスのガールズトーク(『3(トライ)』)
『モンスターハンター3(トライ)』が誇るコワ面モンスター、ウラガンキンとボルボロスの仲良しふたり組のある日の会話。待ち合わせの喫茶店に、時間通りに到着したボルボロスのボル子。そしてちょっと遅れて、ウラガンキンのガン子がやってきた。時間に遅れて慌ててるらしく、ガン子は"地獄のホイール"の形状になって猛スピードで転がってくる。
ガン子 「ごめーん、ボル子ちゃん! 遅れちゃって……。はあはあはあ……。今日、日差しが強いから日焼け止め対策でクリーム塗り始めたら、手が短くて半日仕事になっちゃって……。あ、すいませーん! ここ、アイスカフェラテのベンティサイズ特盛りを、LLサイズでおねがいしまーす」
ボル子 「ううん、いいの。あたしもいまついたばかりだから♪ あ、クリームってもしかして、あたしがこのあいだあげた泥沼クリーム?」
ガン子 「そう! あれ、いいわあ……(うっとり)。すごくイイ……。とってもキメ細やかで、塗ると一日中お肌がしっとりしてるのよ。しかも、紫外線からお肌を守ってくれるんでしょう?」
ボル子 「そうよお♪ よかった、喜んでくれて。あれ、ボルボロス一族が砂原の暑さ対策で肌に塗るクリームなんだけど、いま「火山で暮らすモンスターに販売したら儲かるのでは」ってことで試供品を配りまくってんのよ」
ガン子 「売られたら、まとめ買いするわ! だって、やっぱりお肌のお手入れは大事ですもの」
ボル子 「そうよねえー。健康な美は、やっぱりお肌からだから……ってそうだ! 思い出した! 知ってる? ギギネブラのネブラ子ったら、このあいだもデパートの化粧品売場で実施してる"肌年齢チェック"に行って、顔の肌を調べてもらったらしいわよ」
ガン子 「あらやだ。またあ? どうせ結果がわかってるくせに調べてもらいに行ったんでしょ」
ボル子 「そうなのよ! ネブラ子ったら、あたしに会うなりこう言うのよ! 「ボル子ちゃん、さっき顔の肌年齢を調べてもらったら化粧品売場のお姉さんに"お客様、とってもキメの細かいお肌をなさってますわね! しっとり艶やかで、これぞもち肌ですわ。えーっと、お肌年齢は……17歳です! やだあ、うらわやましいわぁ"って言われちゃったのお♪ あたし、そんなに肌きれいかなあ♪」だってよ! っっっざけんじゃないわよ! わかってて調べてもらったくせに「きれいかなあ♪」じゃねえだろ! 嫌味全開じゃねえかあの毒婦!」
ガン子 「ホント、あったまくるわねネブラ子ったら! 確かにあんたの肌は白くてプニプニかもしんないけど、そりゃ凍土で暮らしてりゃそうなるっつーのよ! 過酷な火山や砂原に住んでみろ! おお、おめえの柔肌なんてあっと言う間にああああばたとたたた、ただれだらけになるから! そもそも肌年齢チェックの結果なんて、若い年齢を言うことになってんのよ!」
ボル子 「そおよねえ! だいたいあの子、そこらにポコポコと卵を産みまくって迷惑なのよ! ホント、尻が軽いんだから! 「コレなんだ?」と思って匂いを嗅ぎに近づくと、パーンッ! とかいって破裂するし!」
ガン子 「……ってそうだわ。凍土で思い出した。聞いてよボル子ちゃん。ベリヨいるでしょ、ベリヨ。ベリオロスのさあ」
ボル子 「はいはい。出っ歯のベリヨね。クスクスクス……。あのコ、なんかしたの?」
ガン子 「ハンターに歯を折られてさ。出っ歯じゃなくなったのよ」
ボル子 「え! それホント!? やだあ。クスクス。ただでさえみっともなかったのに途中で折れちゃったらどうなるのよお。……フン、いい気味ね」
ガン子 「それがさあ……。せっかくの機会だからってんで根本から形成手術して、キレイに歯を揃えたらしいのよ……」
ボル子 「え」
ガン子 「そしたらすぐに芸能事務所からスカウトが飛んできて、"タレントとしてデビューしませんか!?"だって……」
ボル子 「ちょっと、なによそれ。そんな都合のいい話があっていいの?」
ボル子の脳天についている鼻の穴から、ポヒーと一発熱い鼻息が噴出した。
ガン子 「小顔で美白で非の打ち所がない、ですって! なに言ってんのよ! ついこのあいだまで出っ歯気にして丑三つ時にお百度参りしてたんだからねあの女は! わら人形に「出っ歯」って書いて五寸釘打ちつけていたんだから!」
ボル子 「そうよそうよ! ウチらが慰めてあげてたんだから! 「歯が出てるくらいなにさ。ガン子なんてアゴとおデコがハルマゲドンレベルに飛び出してんだからアレと比べりゃ大したことないわよ」ってね!」
ガン子のつぶらな瞳が、スッと細くなった。
ガン子 「ちょっとアンタ。いまなんつったの? よく聞こえなかったんだけど」
ボル子、口を押さえながら慌てて取り繕った。
ボル子 「ううん、なんでもないなんでもない! ……ってそれよりさあ! 聞いた? ペッ子の話!」
ガン子 「ペッ子? ウチらと同い年のクルペッコの女子の? なんかあったの?」
ボル子 「それがさ、ナンパされたんだってよ、孤島で!」
ガン子 「うそー! あのハデなだけで何の取り柄もないペッ子があ? まさかあ」
ボル子 「それがさ、ホントらしいのよ」
ガン子 「でも、ペッ子の虚言癖って、ウチら同級生のあいだじゃ有名だったじゃん? ちょっとからかったらキレて、「いまレイア姐さん呼んだから!」って言うから緊張して待ってたらジャギィがギャンギャン言いながらやってきたりして……。今回の話も、虚言じゃないの? だいたい、あんな子を誰がナンパすんのよ」
ボル子 「あいつよあいつ。ホラ、札付きのワルの……」
ガン子 「札付きのワル?」
ボル子 「察しが悪いわねえ! ほら! イビル一家のさあ……」
ガン子 「ああ! ジョーのこと? イビルんとこのジョー?」
ボル子 「そうよ! そのジョーよお! まあジョーはモンスターとみるや「俺とつき合えよ」と言って近づいて、隙を見せると食おうとするらしいから、今回もそれとおんなじだと思うけどね」
ガン子 「ふうん。そうなんだー。まあ確かにジョーは、女には見境がないからね。女であいつに声かけられていない人、いないんじゃないの? 実際、あたしもこのあいだ声かけられたしさー」
ボル子 「ウソ!! ウソでしょう!?」
ガン子 「ホントよお。……って、ボル子ないの? ジョーにも声かけられてないの?? ……あらあ、ゴメンなさいね。クスクス……。ジョーも一応、見るところは見てんのね。クスクスクス……」
ボル子 「ちょっとあんた、それどういう意味よ!」
ガン子 「気に障ったのならごめんなさいね。ちょっとびっくりしただけよ。あのジョーにすら声をかけてもらえない女がいたなんてねえ。クスクスクス」
ボル子 「あったまきた! なによあんた! 黙って聞いてりゃ調子に乗りやがって! あんたみたいなデコっぱちのアゴっぱちに言われたかないわよ!」
ガン子 「ちょっといきなり何よ! あんた、人のこと言えた義理? そんなボコボコの肌しちゃって! 泥が付くから震えないでよね!」
ボル子 「ムッキー! 言ったわね! あんただってその背中のイボイボがキモいんだよ! だいたいジョーが寄ってきたの、腹が減ってただけでしょ! あんたは食いでがあるからね。このデブ! でーぶでーぶ!」
ガン子 「言わせておけばこの顔デカ女が! あんたのその頭は何よ! リーゼント? 宇宙戦艦でも乗っけてるの? 悔しかったらジョーに声かけてもらえるくらい魅力的になってみなさいよ。でもそのお肌じゃダメね。ネブラ子にでも弟子入りすればあ?」
ボル子 「きーーーーっ! もう許さない。ちょっと! 覚悟しなさいよ!」
ガン子 「おう! あたしとやる気? やったろうじゃないの。ケガしても知らないよ!」
ボル子 「ギャローーーッ!」
ガン子 「ブギャアアアア!」
こうして、ボルボロス対ウラガンキンの異種格闘技戦が始まった。
※著者の妄想が多分に含まれているので、ご了承ください……。しかも超長いので覚悟しておいてください!
■ほめられたい男(『2nd G』)
マルの家の向かいに、親戚の一家が引っ越してきた。10年ほど前までずっとその家で暮らしていたのだが、マルのおじさんに当たる家主の仕事の都合で、村から遠く離れたドンドルマという街に移り住んでいたのである。
マルはこの日が来ることを、一日千秋の思いで待ち続けていた。親戚一家にはマルより3つ年上の"ミウ"という名の女の子がひとりおり、彼は少年時代からずっと、いとこに当たるこの女の子に憧れていたのである。
色白で、いかにも深窓の姫君といった風情のミウは、この手の物語のヒロイン像の例に漏れず病弱な子どもだった。活発で、どちらかと言うと単細胞の部類に入るマルはか弱くも美しいミウがそれはそれは愛おしくて、子ども心にも「ミウお姉ちゃんはボクが守る!」と単純に思っていた。さらにハンターという勇ましい職業があることを知った暁には、「お姉ちゃんを守るために立派なハンターになろう!」と短絡的に心に決めていたのである。ところがあるとき、一生守ると勝手に誓っていた対象が突然引っ越すことになり、少年マルは茫然自失状態に。それでも別れ際にミウから「何年かしたら、必ず帰ってくるからね」と言われて息を吹き返し、さみしさを紛らすためもあってがむしゃらに身体を鍛えまくった。その結果、数年後には本当にハンターになってしまったというのだから、愛の力とはじつに偉大なものである。
マルとミウは、10年ぶりの再会を果たした。3つ年上ということもあって村にいた当時は頭ひとつ分くらいミウのほうが背が高かったが、いまではそれがすっかり逆転。頭ひとつ半ほど、マルのほうが背が高くなっていた。立派な青年に成長したマルは、少女時代の面影を残すミウの美しい顔をチラチラと盗み見ながら、いつもより1オクターブ高い緊張ボイスで第一声を発した。
「おお、お姉ちゃんひさしぶりっ! ボボボ、ボク、ハンターになったんだ!! い、一生守ってあげるからねっ!!」
心優しいミウは「いきなりプロポーズかよっ!」なんて無粋なツッコミを入れることなくにっこり笑って「うん♪ これからよろしくね」と言い、続けてこんなことをマルに言った。「じつは私も、ハンターになったんだ♪」と。
この台詞に、マルは跳び上がるほど驚いた。体が弱く、外で遊ぶことも滅多になかったおとなしいお姉ちゃんが、まさか危険で体育会系なハンターという職業に就くとは夢にも思っていなかったのだ。
「お父さんに、体が弱いからってずっと家にいるのはよくない。思い切って外に出てみたらどうだ、って言われて」
とミウ。父に勧められるままベテランハンターにくっついてフィールドに出ているうちに、自然の美しさ、豊かさ、怖さを知り、そこで生の営みを展開するモンスターたちに興味を覚えていった。
「凄惨にも見えるモンスターとの命のやりとりも、そこで生きるため、家族や仲間を守るためには絶対に避けては通れないことだって少しずつわかっていったの。もうそのときには、ハンターという職業の魅力に抗えなくなっていた感じかなあ」
テレ笑いを浮かべながら、ハンターになった理由を説明するミウ。その言葉を上の空で聞いていたマルは、心の中でこんなことを思っていた。(む、むずかしくて、よくわからん……)。
それでも根が単純なマルは、最初こそ戸惑ったものの憧れのミウが自分と同じ職業を選んだことの利点に思い至り、ヨロコビを爆発させる。
「お姉ちゃんもハンターだったら、いっしょにフィールドに出て守ってやったり、かっこいい姿を見せることができるじゃないか!!」
と。さっそく、マルはミウに言った。
「お姉ちゃん、明日いっしょにクエストに行こうよ! ああ、大丈夫大丈夫。さっきも言ったように、ボクが守ってあげるから。危険な目には絶対に遭わせないからサ! 欲しい素材、あるでしょう? それを取りに行こうよ。何度でもボクが付き合うから、安心してね!」
それを聞いたミウ、しばらく小首をかしげて考える仕草をしたあと、おずおずとこんなことを言った。「リオレイアなんて、どうかな……?」。
そのモンスターの名前を聞いた瞬間、マルの背中に冷たい汗が流れた。
レ、レイアか……。いいい、いきなりリオレイアか……!
"陸の女王"の異名を持つリオレイアは、それはそれは危険な相手だ。口から吐き出される火球はもとより、その強靭な後脚からくり出される突進とサマーソルトはまともに食らえばただでは済まないだろう。マルはかつて2回、この飛竜に挑んだことがあるが、そのときは村のベテランハンター3人に守られての狩猟だった。雌火竜の鱗がどうしても欲しくて、集会所にいた屈強そうなハンターに無理矢理頼み込んでレイア討伐に連れて行ってもらったのである。そんな有様だったのでリオレイアと対峙しても何もできず、やたらとフィールドでウロチョロしていたことだけ覚えている。
しかし、憧れのミウが「リオレイア討伐に連れてって♪」と言っているのだ。ここで情けない姿を見せるわけにはいかない。震える声で、マルは言った。
「ははは、はいはい。リ、リオレイアね。イャンクックじゃなくて、リオレイアね。りょーかいりょーかい……。あ、それともイャンクックにする?」
花のような笑顔で、ミウは言った。「ううん。クックはいいや^^; レイアにしよ♪」。マルはこれ以上ないほどひきつった笑顔を浮かべた。
翌日、マルは万全の準備を整えて集会所に行った。回復薬、回復薬グレートはもちろんだが、彼にとっては貴重な秘薬と、いにしえの秘薬までアイテムポーチに忍び込ませてある。しかしそれでもまったく安心できなかったので、薬草とハチミツ、アオキノコも持参。絶対に回復薬が足りなくなると確信できたので、現地で調合して調達しようと考えたのだ。
まもなく、集会所にミウがやってきた。昨日会ったときは普段着だったが、今日はクエスト用の防具を身につけ、手にはハンターナイフと思しき片手剣を持っている。
見たところ、防具はゲネポスシリーズで固められているようだった。マルの視線に気づいたのか、ミウは恥ずかしそうに身をくねりながら「この防具、色が好きなんだ」とはにかんで言い訳めいたことを言っている。それを聞いて、マルはこれ以上ないほどの優越感に満たされた。
(ゲネポスシリーズかあ^^; ボクの防具より、ちょっと落ちる感じかな)
マルが装備している防具は、決死の思いで狩ったゲリョスの素材をもとにした"ゲリョスシリーズ"である。ジロジロと自分の防具とミウの防具を見比べながら、マルは言った。
「ゲネポスの防具とハンターナイフね。うん、ルーキーハンターにはぴったりの装備だと思うよ。悪くない。お姉ちゃんも一生懸命クエストをこなしていればボクと同じくらいの装備を作れるようになれるかもしれないので、がんばってね!」
これを聞いたミウはしばらくのあいだ、困り笑いを浮かべていた。どう言えばこの真っ直ぐで純真な幼なじみを傷つけずに済むのか、考えていたのである。でも、どう取り繕ったところで自分がとっくの昔にマルのいる下位レベルを超えたG級ハンターになってしまったことは、ごまかしようがない事実である。しかしミウは言い出すことができなかった。
じつはミウは、マルがこの装備を見た瞬間にすべてを理解してくれるものと思っていた。身につけているのは確かにゲネポス装備ではあるが"S"クラスのものだし、手にしている片手剣も言われてみればハンターナイフに似ているが、こちらもバリバリのG級武器・マスターオデッセイである。しかし、生まれ育ったド田舎の村から1歩たりとも出たことのないマルはG級装備やらG級武器なんて見たことも聞いたこともないらしく、"さりげなく気づいてもらおう"というミウの心遣いはまったく届いていないようだった。
(どうしよう……)
タイミングを逸して言うに言えなくなり、ミウはただただ身もだえするばかりだった。
そんなこんなでふたりは、密林フィールドにやってきた。ベースキャンプに着くやいなや、支給品ボックスに齧りつくマル。回復系アイテムは持ちきれないほど持ってきてはいたが、強大なリオレイアが相手となるとそれくらいではちっとも安心ができない。この支給品にある応急薬が、自分の命の鍵を握っているかもしれないのだ。
いきおい、マルは4セットある応急薬すべてを信じがたいスピードでアイテムポーチにぶち込んだ。そしてその瞬間に、背後に憧れのミウがいることを思い出した。
(ななな、なんてカッコ悪いことをしてしまったんだ自分は……!)
マルは慌てて応急薬2セットをアイテムポーチから引きずり出し、ミウに向かって差し出した。
「ご、ごめんお姉ちゃん^^; ひとりで狩りに出ることが多いから、ついクセで応急薬全部を取っちゃったよ^^;; は、はいコレ、おおおお姉ちゃんの分」
応急薬を持つ手が震える。これから展開されるであろうレイアとの激闘を思うとひとつも手放したくなかったが、ここでケチな男と見られるわけにはいかないのだ。
「あ、ももももう1セットあげる。ボボ、ボクはベテランだから、ダイ、ジョブ……」
応急薬をもう1セット、ミウの手に乗せた。こいつはイタい。イタすぎる! でもマルは、ちょっとくらい無理をしてでもミウにかっこいいところを見せたかった。どうしても褒めてもらいたいのだ!
汗だくになって応急薬を押し付けてくるマルを黙って見つめていたミウは、無論のこと彼が無理をしていることを知っていた。なので彼女はこう言った。
「あ、いいよいいよ、応急薬は。マル君が使って♪ 私、回復アイテムたくさん持ってきちゃったから、きっと大丈夫」
マルの両目が飛び出した。
「ほほほホントにい!? よかった……じゃなくって、いやボクもいらないんだけどそこまで言うなら預かっておくよ!! 応急薬も荷物になるからね! いつでも渡すから、言ってね!!」
そうしてふたりはベースキャンプを出て、リオレイアが待つエリア10へと向かった。マルが持つ武器はハンマーのアイアンストライク。恐るべきリオレイアの頭付近に張り付いて、めまいを奪ってやるつもりなのだ。壮絶な消耗戦になることが予想されたが、ボロボロになりながらも果敢に立ち向かう姿を見せられれば、ミウはきっと褒めてくれるに違いない。
エリア10に到着すると、いましたいましたリオレイア。イャンクックやゲリョスとは桁違いの迫力に足がすくみかけながらも、マルは大声でミウに指示を出した。
「あああ頭はボクが潰す!! お姉ちゃんは後ろから攻撃して! むむむ無理しなくていいからね!」
これを聞いたミウは「はい!」と素直に応える。もとより、ミウはそれほど無理して攻撃する気はなかった。マスターオデッセイで本気で斬りつけたら、下位のリオレイアなどものの数分で屠り去れてしまうから……。そうやって自分の正体を明かすという手も考えたが、やっぱり自分の口から言おうと思ったのだ。
「いまボクがめまいを奪うからね! そうなってから攻撃してくれればいいから!」
勇ましいマルの言葉がエリア10に響き渡る。しかし言葉とは裏腹にマルの立ち回りは目を覆いたくなるばかりのもので、ハンマーの打撃は一向にリオレイアの頭に当たらない。しかもポジショニングがまるでなっちゃいないため、レイアの攻撃という攻撃をすべてまともに食らいまくる。気がつくと、あんなにたくさんあった回復系のアイテムはものの5分で底をついてしまった。
「ま、マル君、大丈夫……?」
リオレイアの攻撃をヒラリヒラリと華麗に避けながら、ミウが心配そうな声をあげた。しかしどっからどう見てもマルは大丈夫な状態ではなく、いまにも力尽きそうなほどヘロヘロになっている。ところがそんな惨状にも関わらず、マルはミウの身を案じた。
「ボ、ボクはへっちゃら……。お姉ちゃんこそ、気をつけて……! ……って、あぶなーい!!」
リオレイアが放った火球が、ミウ目がけて飛んできた。しかし手練のミウはしっかりとそのモーションを捉えており、余裕の体で盾でガードしようとする。まもなく、火球が盾にぶつかる……と思ったところで、いきなりマルが間に割って入ってきた。
「おおお、お姉ちゃんはボクが守る!!」
ボカンとド派手にマルに衝突したリオレイアの火球。その破壊力に押されて、マルの身体はゴロゴロと砂浜を転がった。
「ええ……? ま、マル君!?」
ビックリしてマルのもとに駆け寄るミウ。まさかあのタイミングで、ガードができないハンマーを持った彼が飛び出してくるとは思わなかった。ぷすぷすとケムリが立ち上るマルの身体。でもどうやらギリギリで体力は足りたらしく、マルは重そうにまぶたを上げる。そして、心配げに顔を覗きこむミウの姿を認めて、決死のハンマー使いはつぎのように言った。
「お、お姉ちゃん、大丈夫……?」
それはこっちの台詞だよ! ……とは言えず、ミウはひと言「う、うん。ダイジョブ……」とつぶやいた。
それでもどうにか、こっそりとミウが攻撃を加えたりしていたおかげでリオレイアを討伐することはできた。自分の活躍のおかげでリオレイア討伐という偉業を成し遂げられたと思っているマルは、もちろん大喜びである。街に戻ってきてから、マルは胸をそびやかせてミウに言った。
「お姉ちゃんはけっこういい線いってると思うけど、立ち回りがおっかなびっくりでモンスターとの距離が遠い。遠いねー。ボクがいたからなんとかなったけど、まだまだだね」
ミウはすっかり困り顔。気を遣ってなるべくモンスターに近寄らないようにしていたので、確かに間合いは遠かったが……。マルは続ける。
「つぎはボク、麻痺属性の片手剣でサポートするよ。麻痺ったモンスターは攻撃してこないから、そのときに一気に攻めてね!」
そして2度目のリオレイア討伐。マルは完成したばかりの麻痺属性の片手剣、ヴァイパーバイトでの出撃だ。
「すぐに麻痺するからね! そうしたら攻撃ね!」
そう言って果敢に攻め込むマル。ここでリオレイアを麻痺らせまくれれば、ミウは褒めちぎってくれるに違いない。
しかし皆さんご承知の通り、ヴァイパーバイト程度の属性値では、そうそう簡単にリオレイアは麻痺してくれない。刻々と時間だけが過ぎて行き、マルにプレッシャーをかける。
(や、やべえ……。まったく麻痺らねえ……)
うろたえるマル。ヘタするとこのまま一度も麻痺らずに、時間切れになってしまうかもしれないぞ……。
しかしそう思った瞬間、ついにリオレイアがヴァイパーバイトの麻痺毒に犯されてその場で動けなくなった。ややや、やった! ついに麻痺ってくれた!! 喜びの舞を踊りたいのを必死で我慢し、マルは冷静を装ってミウに言った。「いまだ! 攻め込んで!!」。ミウは「はい!」と返事をして凶悪なマスターオデッセイを振りかざしてリオレイアに斬りつけた。するとその一撃で、リオレイアは天に召された。
「ま、まあざっとこんな感じだよ。麻痺なんてそうそうするもんじゃないからね」
街へ向かう道すがら、強がってそんなことを口にするマル。これを聞いたミウは(わかってもらえるチャンスかも!)と直感し、風になびく長い髪を押さえながらさりげなく宣言した。
「じゃあ今度は、私が麻痺役をやろうかな♪」
目を丸くしてマルが言う。
「本気? 見たと思うけど、麻痺って難しいんですよ。ボクが持っている武器ですら、あんな感じだからね」
ミウは(このチャンスを逃すわけにはいかない!)とばかりに食い下がった。「うん。でも、がんばってみるね♪」。
つぎの討伐目標に選ばれたのは、リオレイアより格上と見られているリオレウスだった。G級ハンターのミウからすると下位のモンスターから取れる素材で魅力があるのは火竜の逆鱗、雌火竜の逆鱗くらいしかないので、彼女にクエストを選ばせるとどうしてもこういうことになってしまうのだ。クエストボードに貼られた"リオレウス討伐"の文字を見て、マルはワニワニと足を震わせた。そして、(生きて帰れないかもしれない……)と絶望の底で慟哭した。
ところが、クエストは思いもかけず楽なものになった。ミウが装備する片手剣、メラルーガジェットの強力無比な麻痺能力のおかげでリオレウスは何度も何度も動けなくなり、好き放題に攻撃することができたのである。幾度となくビリビリと悶絶するリオレウスの姿を見て、マルはアゴが外れそうになった。
「知らなかった! レウスってレイアと比べてこんなにも麻痺に弱かったんだ! それになんだかこのレウス、顔色が悪そうだし。ボクもリオレウス狩猟のときに麻痺武器を持つことにするよ!」
今度はミウのアゴが外れそうになった。
そして翌日。
いつものようにマルとミウが集会所に入ると、ギルドの看板娘がふたりのもとに駆け寄ってきた。いつもポワ〜ンとしている彼女には珍しい慌てっぷりである。
「どうしたの?」
と看板娘にやさしく声をかけるミウ。すると看板娘は「よくぞ聞いてくれました!」とばかりに一気呵成にしゃべり始めた。
「聞いて! 村の近くの雪山に、狂暴なティガレックスが現れたんだって! 雪山草を摘みに行っていた村人が襲われて、命からがら逃げてきたらしいの」
看板娘はそこでいったん言葉を切り、真っ直ぐミウの目を見つめながらつぎのように懇願した。
「ティガレックスを退治して! あなたなら、下位のモンスターなんて余裕でしょう?」
看板娘はハンターにクエストを斡旋するという職業柄、誰がどの程度のハンターランクなのかしっかりと把握している。このときはもちろん、村にひとりしかいないG級ハンターのミウに危険なティガレックス討伐を依頼したつもりだった。
ところが、何を勘違いしたのか顔を紅潮させたマルが看板娘とミウの間に割って入り、興奮した口調でつぎのようにまくし立てた。
「ティティティ、ティガレックスか……! な、なんて恐ろしい相手……。でもボクの実力を見込んで"余裕でしょ"なんて言われた日には断るわけにはいかない。よよよ、よーし! ボクに任せておけ! 必ずや雪山のティガレックスを討伐して帰ってくるからな!」
マルの狩猟におけるベクトルはすべて、"ミウに褒められたい!"という方向に向かっている。村人が恐れおののくティガレックスに臆することなく立ち向かい、かつ討伐してのけたりしたら、これ以上はないほど褒められるに違いない。
「お姉ちゃん、ボクが守ってあげるから、いっしょに雪山に行こう!」
バフーッと熱い鼻息を噴出させながら、マルは吠えた。
翌日、準備を整えたふたりは雪山のティガレックス討伐に向かった。
武器は、マルがハンマーでミウがランス。
じつは前日の別れ際にマルが「ハンマーでめまいを取りまくってあげるからね!」と無謀なことを言ったのを聞いて、ミウは「私も全力でやらないとたいへんなことになっちゃう……」と確信し、"本気装備"のひとつであるランス"鬼神槍ラージャン"を持ってきていた。驚異的な攻撃力を誇るこのランスにかかれば、いかなティガレックスでもひとたまりもないだろう。そんな、最強クラスのランスを初めて目にしたマルはひと言、「ふうん……。変わった形のランスだね。ちょっと弱そうな……」とボソリ。思わずミウが(^^; こんな顔をしたところで、目の前に巨大なティガレックスが現れた。
「うわあああああ!! ティティティティガだ!! ティガレックスがでたああああ!!」
恐慌を来たしたマルは、豪快にインナーの中に失禁した。イャンクックやゲリョスはもちろん、レイアやレウスにすらない独特のスゴ味が、このモンスターには確かにある。
(こ、今度こそ生きて村に帰れないかも……!)
思わず、そんな絶望的なことを考えてしまう。しかし、
「落ち着いて! がんばろう!」
背後から聞こえた憧れの人の声は活力剤や栄養剤グレート以上の効果をもたらし、マルの背中をドンと押した。よーし! やってやろうじゃないか!!
ティガレックスの頭方向に陣取ったマルは、ハンマーのスタンプ、振り上げ攻撃を果敢にくり出していった。しかし、初めて対峙するティガレックスの動きがなかなか読めず、投石や回転アタックといった凶悪な攻撃をことごとく食らってしまう。いつものとおり大量に持ち込んだ回復薬軍団は早々に底をつき、あっと言う間に後がなくなってしまった。
一方のミウはティガレックスの後脚付近にピタリと張り付いて、とてつもないスピードで躍動するランスの切っ先を問答無用に突き刺していった。ミウの強烈な攻撃が当たるたびに、ティガレックスの身体はエビ反りに跳ね上がったり、ズドンと横倒しになったりする。
これが、街で鍛え上げられたG級ハンターの実力だ。
もう、すべてがバレてもいい。マルを怪我なく無事に帰還させることが、目上のG級ハンターの私の務めだから−−。
ランス特有の華麗なステップを織り交ぜながら立ち回るミウの耳に、驚愕の篭ったマルの叫びが飛び込んできた。
「え!! お、お姉ちゃん!? な、なんてことだ……!」
ああ……。ついにすべてを知られてしまった……。最初は隠すつもりなんてなかったのに、あまりにも彼がうれしそうに「守ってあげるからね!」なんて言うから、ついつい言いそびれてしまって……。心から申し訳なく思いながら、ミウは言った。
「マ、マル君……。これには事情が……」
しかし、マルはミウの言葉など聞いていなかった。激しい怒りからなのか顔を真っ赤にし、コメカミに血管を浮き上がらせて怒鳴り声をあげた。
「お姉ちゃん!! 聞いてよ!!」
やはり、彼は怒っている……。きっと、深く傷つけてしまったに違いない。ミウはおろおろしながら、ティガレックスの後脚に深くランスを突き立てた。この攻撃で再び、横倒しになるティガレックス。その瞬間、マルの歓喜に満ちた声がフィールドに轟いた。
「!! まただ!! お姉ちゃん! ボクの攻撃、ティガレックスとバツグンに相性がいいみたいだよ!! だってさっきからボクの打撃が当たるたびに怯んだり、横倒しになったりしてるし!!」
ミウ、本気でズッコケて、珍しく攻撃の的を外してしまった。でもこれがたまたまティガレックスの尻尾に刺さり、この一撃でポーンと、縞模様の肉の塊が宙を舞った。
◆
雪山から村に向かう帰り道。いまだミウの実力に気づいていないマルは、今回のティガレックス討伐も自分の活躍で成し遂げられたものだと思い込んでいる。
「危ない場面もあったけど、なんとかなるもんだな! お姉ちゃん、これからもボクが守ってあげるからね!」
なんて応じたらいいかわからず、ミウはただただ困り笑いを浮かべる。
(マル君は前向きにがんばっているし、いまのままでいいのかな……? それともキチンと説明して、私が先生役になっていろいろ教えてあげたほうがいいのかしら……)
遠く、西日の中に村のシルエットが見えた。あともう少しで到着だ。ティガレックスを討伐したと聞いたら、ギルドの人たちは喜んでくれるに違いない。
ふとミウは、マルが腰にぶら下げているアイテムポーチがペラペラになっていることに気がついた。あの薄さだと、薬草のひとつも入っていないに違いない。
(マル君、序盤から勇者プレイしまくりで、ティガの攻撃を食らいまくっていたからなあ^^; 早々に回復系のアイテムがなくなっちゃったんだろうな)
そんなことを思ったとき、ミウの脳裏にある疑問が浮かんだ。
(……いつからマル君は、回復が切れていたんだろう……?)
動きをすべて見ていたわけではないが、狩猟の中盤以降、マルは回復系のアイテムを飲む仕草をしていなかった気がする。でもそんなこと、できるわけが……。
「え……。ちょっと待って……」
無意識のうちに、ミウの口から声が漏れた。この独り言に反応して、マルが怪訝そうな目を向ける。でもそんな視線はお構いなしに、ミウは以前マルといっしょに出向いたリオレイア討伐のことを思い出していた。あのときも確か、マル君は序盤に回復薬を使いきってしまっていたような……。
ミウは西日に顔をしかめているマルのほうに向き直り、頭に浮かんだ疑問をそのまま口に出した。
「ねえ、マル君。今日のクエストで回復系のアイテムを飲み尽くした?」
突然の質問にうろたえるマル。こ、これはどういうテストだろう……。ここで素直に答えたら、ボクの株が急落するのではあるまいか……。
「正直に答えて」
畳み掛けるミウ。その表情は、意外なほど真剣である。しかたなく、マルは答えた。
「う、うん……。じつはティガレックスと出会ってからものの数分で飲み尽くしちゃって……。そのあとはずっと、体力が残りわずかの状態で立ち回っていたんだ^^;」
驚きのあまり、クワっと目を見開くミウ。やっぱりそうだったんだ……。
「じゃあ、このあいだのレイアのときも……?」
毒を食らえば皿までだとばかりに、マルは正直に答えた。「うん……。いつもたいがい回復薬を使いきって、ぎりぎりの体力になってるね……」。
そっか……。そうだったんだ……。
おそらく、マルは回復薬があるうちはついつい油断して、無謀にもほどがある勇者プレイに走ってしまうのだろう。でも使いきってからは驚異的な集中力を発揮して、ネコ火事場のような状態のまま"オチることなく"立ち回れるという信じられない才能を持っている……!
「ででで、でもお姉ちゃん!! 大丈夫だから!! 攻撃食らっちゃうし、すぐにボロボロになっちゃうけど、それでもお姉ちゃんのことはボクが守るから!!」
ミウが幻滅したと思ったのだろう。マルは身振り手振りも交えて必死になって弁明している。その仕草がおかしくて、思わずクスクスと笑ってしまう。
(この調子だと本当に、私が守られるようになる日も近いのかもしれないな)
子どものころよりずっと上にあるマルの顔をまぶしく見つめながら、ミウは心からの思いを込めてこう言った。
「うん♪ これからもよろしくね」
【MH妄想小説】夏休み特別企画 モンハン妄想小説・序文
最近よく見るなぁ……と思ったらとたんに消え、また忘れられたころにノコノコと現れる……という、おまえはヤブ蚊かゴキブリか的な神出鬼没っぷりを発揮している大塚角満です。ホント、テキトーでスミマセン……。じつはここんとこ、アレコレといろいろと立て込んでおりましてゴニョゴニョゴニョ……。
まあそれはいいんですが(だったら書くな)、すっかり夏ですね、皆さん! 夏と言えば……そう!! 俺の大好きなオカルト話のシーズンですよ! というわけで本日からこのブログは“夏限定! 大塚角満の心霊日記”と題してヒュ〜ドロドロドロ〜〜〜……と不気味にお送りしたいと思います……というわけにもいかないので(若干の引きはあると思われるが)、いつもと同じ調子で参ります。
いつの間にかもう8月。学生諸君はとっくの昔に夏休みに突入していることだろう。夏休みの思い出というと、俺などは部活7割、川遊び1割、心霊体験1割(まだ言う)、そして宿題1割って感じで、ぶっちゃけ中学、高校時代はハンドボールしかやっていなかった。たいして勉強ができたわけでもないので山のような宿題は帳尻を合わせるので精一杯だったが、唯一本を読むことと文章を書くことだけは好きだったので、読書感想文の宿題だけは喜々としてこなしていたように思う。でももしかすると少年時代をついつい美化してしまうファルスメモリーシンドロームかもしれんがね。
「いまの子どもたちも、夏休みの宿題で読書感想文ってあるんですかねえ?」
酒を飲みながら「夏休み期間にブログで企画モノをやりたいね」ということをテーマに打ち合わせをしているときに江野本ぎずもが放ったこのひと言が、今回の企画の出発点だ。どういう話の展開から出てきた言葉なのか本当に覚えていないのだが、こうやって酒を飲みながら出てきたキーワードを強引にとっ捕まえて“何か”につなげてしまうことを、我らコンビは得意としている。江野本は、最近我々が超ハマっているカルバドス・ブリーというウォッシュタイプのチーズをジントニックで流し込んでから、さらに言葉を継いだ。
「この“夏休み”と“読書感想文”ってのをもとに、何かおもしろいことできないかなぁ」
なるほど……。それはちょっとおもしろそうだな……。
俺たちは、“馴染みのバーその5”のいつもの席でチーズを突きながら、議題として出されたふたつのキーワードをもとにアレコレとディスカッションを行った。せっかくの夏休み期間なんだから、それなりにじっくりと読めるものを提供したい。となると、サラッと読めるプレイ日記ではなくまったく別の“何か”を作ったらいいのではないか? そんな意見が出され、ディスカッションは先端に向かって徐々に贅肉がそぎ落とされていった。そして。
「小説なんて、どうだろう?」
俺たちはほぼ同時に同じことを言った。過去、俺は何度か『モンハン』を題材にしたふざけた妄想小説を書いてきたが(『サヨナラ! 逆鱗日和』に収録されている“テオ物語”とかね……w)、プレイ日記とは毛色が違うこういった文章、じつは何気に読者人気は高い。長編小説を書くとなるとそれこそホテルに1週間かそこらは館詰めにならないと書ききれない気がするが、短くまとめたものだったらなんとかなるかも……。そう思い、俺はそのとおりのことを江野本に言った。
「短編……というか妄想小説のようなものをいくつか書いてみるかね。で、学生諸君に読書感想文の題材にしてもらうとか!!」
カルバドス・ブリーといっしょに頼んだブルーチーズ“ロックフォール”を口に放り込みながら俺は言った。すると江野本は「うん、いいですね! まあ120パーセント読書感想文の題材にはならないでしょうけど」と言ったあと、「でもせっかくだから……」と言ってこんな注文をつけてきた。
「あまり幅を広げると書きづらいと思うので、舞台を限定して書きましょう。『2nd G』が舞台とか『3(トライ)』の世界が舞台とか。それと、ちょっとゲーム性を持たせましょうよ。たとえば、ウチがキーワードをいくつか挙げるから、それに沿って妄想小説を書くとか♪」
なるほど。落語でいう“三題噺”みたいなものか。目をキラリと光らせて、俺はこう応じた。
「いいだろう。やらいでか! ドンとこい!」
江野本は「じゃあねえ……」と言いながらしばらく思案したあと、1回目の短編小説のテーマを俺に突きつけた。
「では、こんなのどうですか? キーワードは“ネコの火事場力”、“恋愛”っていうの。きゃー、おもしろそう!」
……ネコ火事場の恋愛小説だと!? ……うーん、こいつはエラいことになったな……。
というわけで、つぎにアップする記事が“夏休み特別企画! 大塚角満のモンハン妄想小説”の第1回目となります。覚悟して(何をだ)読んでね! 長いからね!
大塚角満

週刊ファミ通副編集長にして、ファミ通グループのニュース担当責任者。群馬県出身。現在、週刊ファミ通誌上で“大塚角満のモンハン研究所”というコラムを連載中。そこら中に書き散らした『モンハン』がらみのエッセイをまとめた単行本『本日も逆鱗日和』シリーズ(4巻)が発売中。また、そこからのスピンオフとして別の視点から『モンハン』の魅力に迫る書き下ろし作品『別冊『逆鱗日和』 角満式モンハン学』シリーズも。このブログではさまざまなゲーム関連の話題を扱うつもり。一応、そのつもり。
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