大塚角満の ゲームを“読む!”
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なんとなくの思いつきで、ガンランス・ソロでの武神闘宴に挑戦することになった。もしも成功すれば、“モンハンギネス”に登録してもいいってくらいの偉業になるのではなかろうか。この条件での武神闘宴クリアーは、それだけきびしいと言える。
しかし俺は、身の程知らずと言われるかもしれないが、この挑戦に密かな自信があった。「1発でイケるんじゃね?」と思ってしまうほどに。俺は江野本ぎずもにこう吹いた。
「失敗を期待しているかもしれないが、わりとあっさりとイケる気がしてならぬ」
江野本、顔中が目になったと思えるほど双眸を見開き、素っ頓狂な声をあげる。
「そのナゾの自信はどっから???」
俺、鼻からバフーと息を吐き出しながらこう言った。
「俺は4頭のモンスターが出てくる“モンスターハンター”を10分残しでクリアーできるほどに成長した。武神闘宴は5頭のモンスターが相手だが、プラスされた1頭は余った10分で屠り去ればよいのだ。これ、余裕すぎてお釣りがくるんじゃね?」
言われた江野本、しばしの沈黙のあとに「な、なるほど! 確かにそう言えないこともないですね! 世の達人たちは、無属性ガンランス・ソロ・アイテムなし、という条件でもクリアーするそうですから、アイテムを使いまくれば大塚さんでもなんとかなるのかも!!」と言い、最後にぎこちない笑顔の中でこう付け加えた。
「100回くらいやれば、奇跡が起こるかも」
失礼な。あっさりクリアーしてやるっつーの。
さて、まずは準備だ。究極の大連続狩猟に挑むのだから、どれだけ入念に練ってもやりすぎってことはないだろう。俺はアイテムボックスと武器庫を行ったり来たりしながら、武神闘宴に挑むための装備を整えていった。
武神闘宴はご存じのとおり、ナルガクルガ、ティガレックス、グラビモス亜種、ディアブロス亜種、激昂したラージャンというコワ面モンスターがつぎつぎと襲い来る大連続狩猟だ。50分という制限時間でこやつらを仕留めるには、圧倒的な攻撃力を持つ強大な武器が必要である。ガンランスという縛りの中でそれにふさわしい武器を選ぶとなるとかなり候補は絞られてきて……っていうか、ぶっちゃけ俺は攻撃力と斬れ味に優れる“デゼルトスリンガー”でしか対抗できないんじゃないかなと思っている(俺の腕だと、ね)。このクエストの最大の壁となるグラビモス亜種対策に毒属性の“ベナムデパルファン”を持つことも考えたが、やはりここは初志貫徹(?)で、デゼルトスリンガーにがんばってもらうことにした。でも本音を言うと、毛深いルックスがイマイチなデゼルトスリンガーではなく、エンデ・デアヴェルトとか古龍銃槍エンブレムあたりを担いで出撃したいんだけどねえ。
おつぎは防具。こちらはスキルとして斬れ味レベル+1、見切り+3、耳栓が発動しているいつものモノを着ていくことにした。捕獲することで時間が短縮されるモンスターもいるので“捕獲の見極め”が発動している防具を着ていくことも考えたが、よく考えると俺は捕獲の見極めがついた防具を持っていないので諦めることに苦労はしませんでした。そして持ち物は、閃光玉、音爆弾、シビレ罠、落とし穴、大タル爆弾G、大タル爆弾という使えるアイテム一式はもちろん、閃光玉と落とし穴は調合素材もMAXで持ち込むことにする。これらをフルに使えば、まあどうにかなってくれるだろう。
さあ準備は整った。ネコメシ食って、さっそく出かけるとしよう。前述のような自信から、ネコのキッチンスキルは「なんでもドンと来い!!」という大海原のような広い心で受け止めることにする。しかしいきなり“ネコの運搬の鉄人”なんていう、おまえちょっと空気読めや的なスキルが発動しやがったので無言でリセット(苦笑)。2回目にして“ネコの体術【大】”が発動したのを見て「わかりゃいいんだわかりゃ」とホクホク顔で喜び、俺はようやく闘技場の人となったのだった。
以下次回〜!
ある日、意味なく自分のブログのバックナンバーを読んでいたら“武神の名のもとに、再び”という名の、数回にわたる連載記事にたどり着いた。『逆鱗日和』シリーズの単行本に収録されていない、言ってみれば“埋もれたエッセイ”のひとつなわけだが、書いてあることはいかにも“らしい”ドタバタ劇で、読んでいてなかなか楽しかった(と、自分で言う)。そして俺は、話がクライマックスに差し掛かるころに無意識のうちにカバンを引き寄せ、中からごそごそと何かを取り出した。PSPである。無意識の触手はPSPの電源スイッチにかかり、おもむろにそれをスライドさせる。パッと光るPSPの液晶画面。そこに、村の自室に佇む我が分身の姿が映し出された。いつもの装備に、いつものガンランスを背負っている。その表情がどこか物憂げに見えるのは、電源を入れてあげたのが久しぶりだったからだろうか。しばらくほっといて、悪かったね。でもこれからたっぷりと、おつりが来るくらいのことをやってあげるから……。俺はおもむろに、江野本ぎずもにつぎのようなメッセージを送った。
「ちょっくら武神闘宴に行ってくるわ」
それはまるで、休日のお父さんが「ちょっくら散歩してくるよ」とサラリと言ってのけるのと同じくらい、さりげなくも心涼しい言いようではなかったか。そんな俺の様子にただならぬ気配を感じ取ったのであろう。長年の相棒は、悟りを開いた聖人が如きオーラをまとう俺に悲壮な眼差しを向けて「……まさか、ガンランスのソロで?」と言い、俺が黙って頷くのを確認してから涙ながらにこう言った。「ソレ、絶対に無理だからwwwwww」。失礼な。俺はイケる気満々なんだぞ。
こんな成り行きで、ソロのガンランスで武神闘宴に挑戦することになってしまった。かつて自分が書いた記事に感化されて出撃するってんだから、安っぽさここに極まれりという感じである。でもいいんだ。楽しいから。さあいこう、武神闘宴だ!
短いけど、期待を持たせるために今回はここまで! 次回に続きます!
連日連夜、ロックラックにくり出して狩りに勤しんでおります。ひととおりのモンスターとの顔合わせは済んだと思うが、そうなってから俄然熱くなってしまうのが『モンスターハンター』というゲームの恐ろしいところ。箍(たが)が外れて弾け飛んでしまった大タル爆弾のごとく、毎夜毎夜「ギギネブラの鋭爪が欲しい!!」、「ラギアクルスの上位素材なんでも欲しい!!!」、「いいかげん紅玉出せやリオレウスっ!!!」てな具合に目を血走らせて、孤島やら凍土やらを走り回っている次第です。
そんなある日、俺、江野本ぎずも、茨城フォーのハルス君、ジャッ君といういつもの4人でイビルジョー討伐に出向くことになった。かつてあれほど怖かったイビルジョーも、いまでは「狩ってて楽しいモンスターナンバーワン!!」に祭り上げられるほど、我々のあいだでは人気のモンスターになっている。その強さ、歯応えはハンターサイドから見たら“宿命のライバル”と言ってもいいほどで、例えば星から見た花形、ケンシロウから見たラオウ、ロイエンタールから見たミッターマイヤーというくらい、その宿命っぷり(なんだそりゃ)は際立っているのだ。以前、“イビルジョー恋物語”というエッセイで種の壁を越えてイビルジョーに恋をしてしまったハンターのお話を書いたが、いまでは彼の気持ちもなんとなくだがわかってしまう。それくらい、このいかついモンスターにはハンターを魅了してやまない何かがあるのである。
そんなイビルジョーの討伐に出向くとき、ハンターは万全の準備を整える。全力でぶつかり合ってこそ、真の楽しさってのは享受できるものだからな。なので、それぞれが持つ武器の選定も手を抜かない。可能ならば、攻撃力が最大クラスかつ龍属性を纏った上位のハンマーかランス、そして限界まで育て上げた麻痺属性のランスもしくは片手剣が2名いてくれるととても助かる。ロックラックの酒場で、ハルス君が言った。
「武器、どうしよう?」
どんな武器でも軽々と使いこなせるうえに、武器コレクションも豊富なハルス君とジャッ君は役どころを選ばない。そのときのシチュエーションしだいで、アタッカーにもサポーターにもなれるのだ。ハルス君の発言を受けて、江野本が言う。
「おいどん、麻痺ランスでいく!!」
これは宣言を聞くまでもない、想定内の発言だ。江野本は『モンハン』を遊び始めた『2nd』の時代から、協力プレイを行うときは8割がた麻痺役を担当していたからね。『3(トライ)』でも麻痺属性のランス“チャルク・ムラーカ”をいち早く作成し、日夜モンスターをビリビリと痺れさせては「うけけけけ」とヨダレを垂らしながら笑っているのである。そりゃあ今回も麻痺役になるよなあ。
さて問題は、もうひとりの麻痺担当である。「絶対に麻痺役はふたりいなきゃいけない!」っていうものではないので好きな武器を選べばいいのだが(基本、武器選びなんてテキトーだしね)、なぜかこのときは“ふたりめの麻痺担当を選ばなければいけない”という空気がロックラックの酒場に漂った。その空気の匂いを敏感に嗅ぎ取って、再びハルス君が口を開ける。
「じゃあ僕も麻痺役にまわりますよ〜^^」
そう言ってハルス君は武具工房に飛び込み、それまで担いでいた龍属性のとてつもないハンマーをチャルク・ムラーカに持ち替えた。これを見て、しばらく沈黙していたジャッ君が意外な発言をする。
「ハルスが麻痺にまわるとちょっと火力不足になるかも? なので武器はそのままでもいいんじゃない?」
なるほど。それはもっともだ。最強クラスに強い龍属性のハンマーとチャルク・ムラーカでは、基本攻撃力に大きな開きがある。どの武器を選んだところで4人がかりだったら問題なくイビルジョーを狩ることはできるが、討伐までにかかる時間はかなり違ってくるだろう。ジャッ君はそれを指摘しているのだ。ジャッ君の発言を受けてハルス君は「うーん……。まあ、どっちでもいいんだけどね〜」と少々迷っている様子。それを見て、俺はここぞとばかりにつぎのようなことを言った。
「んじゃあさ、俺が麻痺役やるよ。まだチャルク・ムラーカまで育てきっていないから、少々麻痺の精度が落ちるかもしれないけど」
言い終わったとたん、酒場は異様な静けさに包まれた。あまりにも意外なことを聞いてしまい、二の句が告げなくなっているという風情である。こういうことって、たまーにあるでしょう。たとえば、深夜にひとりで会社に戻ってきて守衛室の前を通ったら、警備員さんに「あれ?? いま防犯カメラにいっしょに映っていた女性はどちらに行かれたんですか?」と真顔で言われたときとか、オトナの歓楽街を歩いていてイケナイお店から出てきた同僚とバッタリ顔を合わせてしまったときとか……。この、なんとも言えないカオスな空気を吹き飛ばしたのは江野本ぎずもの絶叫。彼女は成長途中の麻痺ランス、チャク・ムルカ改を背負った俺に向かって失礼千万なことを言い放った。
「ちょっと! 似合わなすぎのこと言わんでくださいよ!! 大塚さん、かつて1回も麻痺武器なんて使ったことがないでしょう?? ビックリさせないでくださいよまったく……」
確かに俺は、好んで麻痺武器を使うハンターではない。ていうか、かなり徹底して麻痺武器は使ってこなかった。理由は、補助的な麻痺武器よりも攻撃力の高い無骨な武器で突撃するほうが好きだから……ってことに尽きて、ライトボウガンがメイン武器だった初代『モンスターハンター』の時代も麻痺弾はいっさい撃たず、貫通弾や拡散弾をぶっ放してひとり悦に入っていたのである。で、数年後に当時いっしょに遊んでいた女の子のハンターに「ミドさん(俺のこと)のボウガンの役立たずっぷりはヒドかったwww」と言われるのだが、いまではそれもいい想い出です(何言ってんだ)。
で、このエッセイで何が言いたいのかというと、ある程度ゲームをやり込んだハンターには、その人なりのカラーというか固有の“属性”が植えつけられる、ってことなんです。それは文章で表現できるものもあれば短い単語に紐づく場合もあり、たとえば“大塚角満”からは“ガンランス”、“麻痺武器嫌い”、“毒好き”、“見極めができない”、“薄毛”、“肉焼きの天才”なんていう単語が簡単に出てくるし、“江野本ぎずも”からは“麻痺好き”、“着たきりスズメ”(いつも同じ防具)、“貧乏”、“食中り”(いつもネコメシで失敗する)、“声がでかい”(ゲームと関係ない)なんていうキーワードがポンポンと飛び出してくる。言ってみればこれらの属性は“こだわりハンターの看板”みたいなもので、仲間と円滑なハンティングライフを送るうえでの格好の潤滑油の役目も果たしてくれるのである。
「あの人はこういう属性だから、自分はこの格好でいこう」
「彼にはこんなキーワードがあるから、あえて違う提案をしてみよう」
仲間が背負ってる看板を見直すと、また新しい狩猟風景に出会えるかもしれませんよ。
たまには軽いネタを。
とある週末。珍しく何の予定もなく、のんびりと過ごせる時間ができたので、俺はここぞとばかりに「深夜のロックラックライフのために!」と意気込んでモガの村に出向いた。モガの森に散策に出て山菜(草系の素材ね)を集めたり、農場に入り浸って光蟲や不死虫の飼育に励もうと思ったのである。ナンダカンダ言ってこの手の素材を手っ取り早く集めるには、モガの森や農場を利用するのがイチバンだ!! ……ってことに、『3(トライ)』を始めてから297日目で気がつきました。
モガの森にはいつも、何かしらの大型モンスターがいる。好きなときに出入りができ、悠久の時が流れるモガの森では大型モンスターを狩ろうが狩るまいがハンターの自由なのだが、目の前にリオレウスやラギアクルスといった歯応えあるモンスターが現れれば、ある程度強い武具を身につけた上位ハンターであれば狩らずにはいられなくなるのではなかろうか。
その日、モガの森では1頭のリオレイアが蛮勇を奮っていた。産卵直後(エリア8の飛竜の巣を調べたら卵があったので産卵直後ってことで間違いない)ということもあって気が立っていたのかめったやたらと好戦的で、動くものを見るや「おるあああぁぁああ!!」と怒鳴って突進してくる。そのイラつき具合は、家の庭でウロつく野良ネコを見て激昂し、怒髪天を衝いて「フンギャラギャ〜〜〜〜!!!」と鋭く吠えて、居間の網戸を突き破って庭に飛び出し、野良ネコに襲い掛かった我が家の愛猫・アクアちゃん(雌・8歳。実話)のようである。
それほど猛り狂ったリオレイアを見たら、こちらも黙っちゃいられない。俺は作ったばかりで、早く試し突きをしたくてしかたのなかったランス“アトロシスタワー天”を握り直してリオレイアに突進した。イビルジョーのレア素材を使って作ったこのランスは恐ろしいほど強く、リオレイアを圧倒するが、そこはさすが陸の女王。変幻自在のサマーソルトや高出力火炎放射などを駆使して敢然と応戦してきた。
そんな、ハンターとリオレイアが1対1のタイマン勝負を演じている舞台に、1匹の闖入者が現れた。ドスジャギィである。彼は野次馬根性を丸出しにした狡猾そうな顔をニタつかせて、「なになに? なに話してんの??」とでも言いたげな風情で近寄ってくる。その様子は完全に、場外馬券売り場でなれなれしく会話に割り込んでくる見知らぬ酔っ払いそのもの。俺は心底げんなりした声色で「こっちくんな酔っ払い! 俺とレイアの逢引に入ってくるんじゃねえ!!」とわめいた。しかしドスジャギィは俺の声になど耳を貸さず、やたらとカプカプと甘咬みしてくる。女の子と遊んでいる最中に、赤ら顔のおっさんに腕やら足やらをカプカプと甘咬みされるところを想像してごらんなさいよあなた!! これがこの世の終わりじゃなくてなんであろうか。
しかしある瞬間、猛るリオレイアが吐いた火球がドスジャギィを直撃した。まあ『モンスターハンター』のフィールドではよく見られる風景である。が、これだけでは終わらないのがリアルな生の営みが広がる『3(トライ)』世界の懐深さ。なんとドスジャギィは火球の直撃にブチ切れ、「なにしやがる!!」と叫ぶやいなやリオレイアに襲い掛かったのだ!! 「『3(トライ)』の世界ではこういうことが起こりうる」ということはわかってはいたが、ドスジャギィがレイアに対して激怒する過程があまりにもはっきりと目の前で展開されたので、俺は思わず爆笑してしまったよ。「うん、そりゃ怒るよなww やっちゃえやっちゃえwww」てな感じに。おかげで狩場の力関係はガラリと変わり、それまでの“リオレイア+ドスジャギィvs.角満”の図式は“角満+ドスジャギィvs.リオレイア”に。ただでさえ劣勢だったリオレイアは窮地に陥り、「こりゃたまらん(汗)」と翼を広げてバサバサとどこかに飛び去ってしまった。ハンター&モンスター連合軍の完全勝利である。ところが、そんな共闘をしても心から分かり合えないのがヒトとケモノの悲しい宿命(さだめ)。リオレイアがいなくなったとたんにドスジャギィはモンスターとしての仕事を思い出したのか、再びガブガブと俺を咬み始めた。俺は、遺伝子の命ずるがままにハンターに襲い掛かるケモノの血に哀れみの涙を浮かべ、そのわりには喜々としてアトロシスタワー天をドスジャギィの脳天に突き刺したのだった。
ドスジャギィを仕留めた俺は、リオレイアの追跡を始めた。行き先はわかっている。彼女は隣のエリア4に行ってアプトノスを襲い、その肉を食らってスタミナ回復をはかろうとしているのだ。エリア4に駆けつけるとまさに、上空から爪をむき出しにしたリオレイアが、小さな子アプトノスに襲い掛からんとしている場面である。いかん。親アプトノスの前で子アプトノスが食われてしまう! そしてそれ以上に、レイアにスタミナ回復されるとやっかいだった。俺は「いま助けるぞ!!」と叫びながら、リオレイアの鼻っ面にランスの切っ先を向けた。するとなんと、ハンターに続けとばかりに近くにいた親アプトノスがリオレイアに突進! 思いがけない草食竜アタック(?)をお見舞いしたではないか! おおお……。子を想う母の気持ちはかくも強く、たくましいものなのだなぁ……。俺は感涙にむせびながら、親アプトノスに向かって涙声を上げた。「種の壁を越えて手を携え、リオレイアを追っ払おう!!」と。
しかし俺と親アプトノスの結託もむなしく、リオレイアに襲われた子アプトノスは天に召されてしまった。嗚呼……。やっぱり遅かったか>< すまん、親アプトノス……。俺にもう少し力があれば……>< 力尽きた子アプトノスの横に佇み、呆然とする我が分身。そんな、涙に暮れる俺の身体が「ドン!!」と突き飛ばされてしまった。ナンダナンダ。リオレイアか!? と思って振り向くと、そこにいたのは親アプトノス。つい10秒まえまでのパートナーは、何を思ったのか怒りの矛先を俺に向けてきやがったのだ! ちょ、ちょっと待て! 誤解だ誤解!! 子を食ったのは俺じゃなくてレイアでしょが!! 勘違いすんな!! ……だから押しこくるなって! 押すな押すな! やめろやめろやめろ!!
何を言っても怒り心頭に発した親アプトノスは聞く耳をもたず、「ずもーずもー」と言いながらやたらと俺を押しこくる。俺は、子を失った悲しみに我を忘れて、自分よりも遥かに強いハンターに向かってくるアプトノスにランスを向けることができず、「やめろやめろ」と言いながらパタパタとフィールドを逃げ回るだけ。その様子を、「なにをやってんだか」という顔で騒ぎの元凶であるリオレイアが遠くから眺めていた……。
先日、出張で大阪に行った。移動は新幹線。インタビュー取材だったので、カメラマンが同行した。
このカメラマンは永山(通称・ナガ)という名前で、ふだんあまりゲームはしないくせに『2nd G』にだけはドップリとハマり、いまだ未クリアーのクエストをこなしたり、武具を作るための素材集めに奔走していたりする。かなり徹底したソロプレイヤーで、ハンターランク9になるまで一度も協力プレイを行わなかったという、ロンリーで孤高なハンターである。それでも、俺や江野本の出張に同行することになると、新幹線での移動中だけは壁を取っ払うようになり、いっしょに遊ぶことができるようになった。
で、先日の話。この日の出張は俺ともうひとりの編集者、そしてナガという組み合わせだった。俺は新幹線が動き出すやいなや、東京駅で購入しておいた“牛すき重”1000円ナリをバリバリと開け、ヨダレを撒き散らしながらがっつき始める。腹が減ってたまらなかったのだ。新幹線は品川を過ぎ、新横浜を越えて、さあぼちぼち静岡あたりか……というところで、振り回していた割り箸を静かに置く。キレイに完食。いやあ、満足じゃ満足じゃ。さあここから2時間ほど、新幹線に揺られながら昼寝でもするべかな……と思ったところで、ひとつ挟んだ席に座っていたナガがおもむろにPSPを取り出し、その画面を無言で俺の眼前に突き出してきた。見ると集会所で彼のキャラが、G級★3のクエスト“異常震域”を貼って佇んでいる。俺が画面を確認したのを見てナガはニヤリと笑い、ここで初めて声を出した。「いきましょ」と。うむ、いいだろう。ハンターには安息の時などないということだな。俺もカバンからPSPを取り出し、電源を入れた。
異常震域は、砂漠を舞台にしたティガレックス2頭同時討伐クエストだ。ただでさえやっかいなティガレックスが2頭いっしょに現れるうえに、強さはバリバリのG級である。拙著『本日もニャンと! 逆鱗日和』の“新・へっぽこ3人組の挑戦”というエッセイに詳しいが、俺はかつて逆鱗日和ファミリーの中目黒目黒、江野本ぎずもとともにティガレックスに挑み、ボコボコのビリビリにされた苦い思い出がある(しかも相手は下位ティガ)。しかしその後、俺は数々の腕利きハンターと出会い、さらに日々の研鑽を続けたことによりハンターとして著しい成長を遂げた。この異常震域に、ハンマーで挑めるほどに……。
クエストは難航を極めたが、なんとかクリアーすることができた。俺が2オチし、精神的なプレッシャーも多大にかかる中で、どうにかこうにかティガレックスを討伐することができたのである。俺はホッとした。まだ新米ハンターと言っていいナガの前で、ハットトリックをするわけにいかないからな。
村に戻ってきて、「あ〜今日もよく働いたなぁ……」とかなんとか言いながら肩をトントンと叩いていると、すかさずナガがつぎのクエストをクエストボードに貼り付けたのが見えた。見ると、G級★3の大連続狩猟“誇りを賭けた試練”である。大闘技場を舞台に、ディアブロス亜種、グラビモス亜種、そしてナルガクルガを相手にしなければならない骨太なクエスト……。「よろしくお願いします」と、ナガは笑わない目で言った。
よーし、いいだろう。やってやろうじゃないか! 俺は面倒なグラビモス亜種対策としてハンマーを毒属性のダイダラボラスに持ち替えて、さらに落とし穴を3セット分用意する。こいつでグラビモス亜種はなんとかしよう。そしてこの横綱飛竜の前後に出てくるディアブロス亜種とナルガクルガは、それぞれ閃光玉と音爆弾を使いまくってメロメロにしてやれ!! 俺は威勢のいいことを言いながらも若干足を震えさせながら闘技場に向かった。ハンターがふたりしかいない以上、なんの波乱もなく終わらせられるはずがないからな。
それでもどうにかこうにか、俺、ナガともに1オチずつを計上するも3頭のモンスターを退けることができた。こんな重いクエストを、たったふたりで連戦したのは久しぶりだ。
「疲れたけど、楽しかったなー^^」
心地よい疲労に身を委ねながらシートの背もたれに体重を預ける。そんな俺の横でナガはガチャガチャとPSPをいじくり回し、その10秒後に決意の篭った口調でこんなことを言った。
「つぎ、コレお願いします」
うは! まだやるのか。まあ時間はまだたっぷりあるので、ぜんぜんいいんだけどネ。でも手強いクエストが2回続いたので、ここらでクックとかフルフルとか、ちょっと軽めのクエストで息をつきたくはある。俺はクエストボードを覗き込んだ。
“黒のカタクラフト”
デターーーー!! G級のグラビモス亜種2頭討伐クエストじゃねえか!! 重いどころの話じゃなく、ギガトンクラスの最重量クエストじゃんよー! 唖然としてナガを見ると、彼は眉間に皺を寄せた神妙な表情で「コレ、どうしてもひとりでクリアーできないんですよ……」と暗い声でボソリと言う。まあ、そりゃそうだろうな……。黒のカタクラフトは難攻不落のクエストとして名高い、ソロハンターにとっては最大級の壁のひとつだし……。俺がここで付き合ってあげないと、ナガは一生このクエストをクリアーできないかもしれない。いやそうに違いない。俺はとたんにナガが哀れに見えてきて、若干涙で濡れた声を出した。「わかった……。俺に任せろ><」。
しかし、たいした腕でもないハンターふたりで黒のカタクラフトに臨むのは無謀だと思えたので、俺は「今回だけ、使わせてもらいます……」と独り言を言いながら、武器庫の片隅に立てかけてあったヘビィボウガン“老山龍砲・極”を手に取った。となると防具は当然(?)、自動装填と根性のスキルつき。そう、究極兵器“ラオート”でグラビモス亜種を蜂の巣にしてやろうと思ったのだ。……ってソコ!! 「きったねーw」とか、冷笑含みで言わないの!! 太刀オンリーのナガとふたりでこのクエストをクリアーする方法、これしか思いつかなかったんですっ!!
クエストは思ったとおり、凄絶を極めた。鼻息荒く「俺の老山龍砲に任せとけっ!!」なんてほざきながら自信満々でフィールドに降り立った俺が開始5分で電光石火の2オチ(苦笑)。ルーキーのナガに「ちょっと!! まだ1頭目っすよ!! ダメじゃないっすか!!」とダメ出しを食らい、半ば本気で泣きそうになる。しかしここでリアル根性が発動したのか怒涛の踏ん張りをみせて、奇跡的にグラビモス亜種2頭を乗り越えることに成功する。
「いやっはあああ!! よかった!! いけるもんだ!! しかし疲れた!!」
村に帰ってくるやいなや俺はそう叫び、超ド級クエストから解放された安堵感もあって新幹線のシートでぐったりとなる。よーし、寝よう。大阪まで、まだ1時間半くらいある。この疲れを癒さないと取材どころじゃないぞ! さあ寝ようすぐ寝よう! ……と思ったところで、またまたナガに肩をトントンと叩かれた。うつろな目を向けると、すでにクエストボードにクエストが貼られている。能面のような無表情で、ナガが言った。「つぎはコレです」。
貼ってあったのは“真夜中の謁見”だった。G級★3のテオ・テスカトル討伐クエストである。こ、これまたきびしいな……。ふたりだと、時間も体力も猛烈に消耗するぞ……。しかし、乗りかかった船だ。こうなったら付き合おうじゃねえか。俺は思いのほか元気な声をナガにぶつけた。「おっしゃ。やったろうじゃねえか!」。
このクエストもどうにかクリアーすることができた。さすがG級のテオ・テスカトルはハンパなく強く、俺、ナガともに1オチを喫するも、時間をかけてゆっくりと料理してやった。しかも俺は久々に、半ば都市伝説と化している激レア素材・古龍の大宝玉をゲット!! いやあ、やってみるもんだ。がんばってルーキーのお手伝いをしていることを、狩りの神様は見てくれているんだなあ!! 俺はほくほく顔で村に戻り、今度こそ寝ようとした。しかし、ナガは許してくれない。
「大塚さん、つぎコレね。どうしてもクリアーできないんです」
貼ってあったのは“雷電”……。またまたG級★3の、しかも俺がもっとも苦手とするキリンの討伐クエストじゃねえか! でもここで「キリン、ヤだからひとりで行け」とは言えないのが大塚角満のいいところ。俺は「わかった。毒を食らわば皿までだ!」と言いながら久々に大剣を装備し、沼地へキリン討伐に向かった。
そしてこのクエストも、ナガが2オチしたがギリギリのところでクリアーすることができた。ふたりとも回復薬のほとんどを使いきってしまう壮絶な消耗戦で、「キリン、負けてなお強し!」を思わせる名勝負だったと思う。
さあさあ、いい加減寝るぞ。俺は村に戻ってすぐにPSPの電源を切り、新幹線のシートに身を沈めた。しかし横から、またまたナガの声が届く。
「大塚さん、つぎはクシャでお願いします」
クエストボードには、G級★3の“風をまとう古龍”が貼られていた。これを見て俺は半ばお地蔵さんになりかけながらも、「なんのなんの……」とつぶやきながら震える手で受注。クシャルダオラの風のブレスに翻弄されたが、どうにかクリアーすることができた。それでも、ナガの要求は止まらない。
「つぎはこれで」
クエストボードに貼られた“宵闇に消ゆ”。G級★3のオオナズチ討伐クエストだ。「なるほどなるほど……。そうきたか……」と言いながらこれを受け、どうにか討伐して村に戻る。そして。
「せっかくなのでコレもぜひ」
クエストボードで光る“最後の招待状”の文字。おなじみ、G級★3のラージャン2頭討伐……。
「……………………」
無言でクエストに参加する。そして15分後、2オチした身体を引きずるようにして村に帰郷。どんだけ重いクエストを連発すんだこの男は……。しかし、彼の要求は止まらなかった。
「じゃあついでにコレも^^;;;」
えーっと、“接近!ラオシャンロン”って………………ってできるかーーーーー!!! トドメとばかりにラオなんか貼るんじゃねええええええ!!!!!!
新幹線は静かに、大阪に到着した。
ここのところずっと、深夜のロックラックに集合して、リオレウスやリオレウス、ときにはリオレウスとかリオレウスなども狩ったりして遊んでいる。メンバーはいつも、俺、江野本ぎずも、茨城フォーのうちのスリー(ややこしい)で、日によってハルス君がいたりジャッ君がいたり、はたまたヒロ君がいたりする。ロックラックでの行動パターンもだいたい決まってきていて、狩りから戻ってしばらくのあいだはロックラックでチャットをし、再び誰かがクエストを受注したらそそくさとそれに出かけてゆく……という感じ。まあこれは俺たちだけじゃなく、ロックラックのあちこちで見られる風景だと思う。
この心地よいワンパターンに、最近ひとつのピースが加わった。それは“その日の最後のクエストとしてイビルジョー討伐に出向く”というもので、ワイワイキャアキャアとその日いちばんの大騒ぎをしてから、元気に「今日もお疲れ様でした!」と言ってから解散しているのである。
昨夜もそうだった。
時間は深夜3時近くになっており、場の空気は自然と「ぼちぼちつぎのクエストでお開きかな」という感じになった。メンバーは俺、江野本、ジャッ君、ヒロ君の4人。さあイビルジョータイムである。江野本が言った。
「じゃあいつものアレ、行っちゃいますか!! イビルジョー!!」
ヒロ君が元気に応じる。
「いきましょう!! せっかくだからイベントクエストの“恐暴の宴”にします?w」
“恐暴の宴”というのは闘技場を舞台にしたイビルジョー討伐クエストのことで、最初は1頭しかいないのに、5分をすぎたあたりでナゼかもう1頭のイビルジョーが現れてしまうという、アナタちょっといい加減にしないと怒るわよ的なトンデモクエストである。1頭でも厄介な相手だというのに、いったい誰が地獄絵図と化している闘技場にもう1頭を放り込みやがるねん。そんな悪魔の所業としか思えないこのクエストに前日、俺、江野本、ジャッ君、ハルス君の4人で5回挑戦し、2勝3敗と負け越しを食らっていた。こいつはもう、恐暴の宴に行くしかないではないか。
俺たちは「本日最後のクエですし、楽しく終えられるやつにしましょうよ」としごくまっとうなことを言うジャッ君を「まあまあ^^ おもしろそうだから2頭のにしようよ^^^^」となだめすかし、晴れて闘技場のヒトとなったのだった。
このクエストの成功のポイントは、2頭目のイビルジョーが現れるまでに、いかに1頭目にダメージを蓄積させられるかにある。……ってそんなのは当たり前のことなのだが、狭い闘技場で2頭のイビルジョーが暴れだしたら規律も平和も安眠も安寧もない終末的な焼け野原が待っているだけなので、ほかのモンスターの2頭同時討伐のとき以上に、なるべく1頭に火力を集中して多少なりとも秩序を回復させる必要があるのである。
俺たち4人は「1頭目にすべてを注ぎ込む!」を合言葉に、そのとおりのことを実践しようとした。落とし穴、シビレ罠を間髪入れずに使いまくり、シビレ生肉、眠り生肉も駆使して集中砲火を浴びせた。しかしタフなイビルジョーはなかなか屈せず、気がつくと背後から絶望の足音が……!
「もう1ぴきキターーーーー!!」
誰かが叫んだ。やばい……。破滅だ! 終末だっ!! しかし闘技場に2頭のイビルジョーが揃ってしまうのは毎度のことなので、心のどこかには冷静な部分もある。このクエストがしっちゃかめっちゃかになってしまうのは織り込み済みだ。あとはひたすらがむしゃらに、攻撃をするしかない!!
しかしさすがはイビルジョー。“『3(トライ)』最恐モンスター”の名は伊達ではない。なんと、茨城フォーの中でも順応性とゲームセンスはナンバーワンと目されているヒロ君が立て続けに2オチ。後がなくなってしまう。屈辱の連続オチを喫したヒロ君はキャンプに転がされながら「ホントにすんません!!」と叫び、続けてジャッ君にこんなお願いをした。
「じゃっくん、闘技場に入ったら秘薬ちょうだい><」
秘薬を切らしてしまったらしい。まだ2頭のイビルジョーが暴れている闘技場でノーマル体力のまま立ち回るのは、さしもの実力者でも荷が勝るようだ。ヒロ君の必死の訴えに対し、ジャッ君は短く「りょかい」と応じる。イビルジョーを向こうに回してのチャットはそれだけで命取りになりかねないから、応答はつねに短文になるのである。
ヒロ君が決死の覚悟で闘技場に飛び込んできてから間もなく、1頭目のイビルジョーが天に召された。よしよし! この調子ならいけるかも! しかし2頭目のイビルジョーはほぼ新品状態なので、ちょっとでも気を抜いたら瞬時に地獄に突き落とされてしまう。俺たちはいままで以上に緊張感を漲らせて、巨大な暴力のカタマリと対峙した。
イビルジョーは強かった。とくに、怒り状態になるとまるで手がつけられなくなる。暴力の嵐が吹き荒れる闘技場。その中でジャッ君とヒロ君が必死になって接近を図ろうと動いているのが目の端に見えた。しかし、ようやく重なったと思ったジャッ君とヒロ君の影はイビルジョーの狼藉により瞬時に分断され、同時にふたりの体力がぎゅいいいいいいいんと減っていくのがわかった。大慌てで生命の粉塵をガブ飲みする俺と江野本。はたして、秘薬の受け渡しは完了したのだろうか?
ますます怒り狂い、暴れまくるイビルジョー。攻撃を食らったヒロ君の体力が、またまた絶望的なところまで減ってしまっている。生命の粉塵は、もう飲み尽くしてしまった。援護することができない!! なんとか逃げ切って、回復してくれヒロ君!! 必死に立ち回りながら画面を凝視していると突然、チャットウインドが立ち上がり、そこにヒロ君の言葉が表示された。
「j」
……?? な、なんの暗号だ?? つ、釣り針か??? しかしジャッ君にはアルファベットひと文字で通じたらしく(さすが幼馴染み)、チャットウインドに彼の台詞が表示される。
「わたせない」
“j”はジャッ君への呼びかけで、どうやら秘薬のことを言っているらしい。でもまあ、そうだよな。イビルジョーが暴れている中で、なかなかアイテムの受け渡しなんてできないよな。ヒロ君も了解したらしく、なんとか自力で危機を脱出。そしてイビルジョーの隙をついて再びジャッ君に接近を試み、いまかいまかと秘薬が渡されるのを待っている。数秒の間。それだけの時間があれば、アイテムひとつの受け渡しくらいは完了しただろう。ところが、ヒロ君は意外すぎるひと言を発した。
「ひやく」
その1秒後、イビルジョーの攻撃が体力の減っていたヒロ君を直撃。クエストはあえなく失敗となってしまった。
そしてロックラック。戻ってきたヒロ君は開口一番「ハットトリックしてしまってすいません!!」と謝り、続けてジャッ君のほうを向いてこんなことを言った。
「ジャッ君、秘薬くれないんだもん!」
なんと秘薬の受け渡しが完了せず、それが影響して3オチしてしまったらしい。そうか……。だったら俺から渡してあげればよかったな……。そんなことを思っていると、ジャッ君がボソリとつぎのような発言をした。
「秘薬、わたせなかった」
うんうん。わかるわかる。イビルジョーが近くで暴れているんだもんな。そうそう簡単にアイテムを渡せないよな。これを聞いた江野本が「そうだよねー。ウチが渡してあげればよかったな」とつぶやく。そうだよな……。みんなでもっと協力し合えば、3オチは防げたかもしれないよな……。そんなことを思いながらしきりに反省している俺たちに向かって、ジャッ君は再びこう言った。
「秘薬、わたせないんですよ」
うん、だからそれはわかったって。イビルジョーが暴れててアイテムの受け渡しが難しいんでしょう? 俺がそう文字を打ちかけたところで、ジャッ君が衝撃のひと言を発した。
「秘薬、レア4だから受け渡しができないんですよ」
ぴゅるるるる〜〜〜……と、マヌケなハンターたちの脳ミソに、季節はずれの秋風が吹いた音が聞こえた気がした……。
ハンターランクが50を超え、どこに出しても恥ずかしくない経験と知識を身につけたベテランハンターになったところで、“アレ”で苦労させられることには変わりがない。そう、“虫”である。
以前、“牙は、どこにいった”というエッセイで“『3(トライ)』になって劇的に地位が向上した素材アイテムTOP3”として、雷光虫、カクサンデメキン、クモの巣の3つを挙げさせてもらったが、最近は“不死虫”が、TOP3に肉迫するほど需要と供給のバランスが崩れてしまった素材としてリストアップされるようになった。
不死虫がその能力を最大限に発揮する瞬間は、“秘薬”と“生命の粉塵”を調合するときだ。不死虫はアオキノコと調合することで“栄養剤”となり、この栄養剤をハチミツと調合することで“栄養剤グレート”ができ、栄養剤グレートをマンドラゴラと調合することで秘薬が完成する。さらに不死虫を竜の牙と調合すると“生命の粉”ができ、生命の粉と竜の爪を調合することで生命の粉塵に……。ハンターの生命を守る2大アイテムの大本は、間違いなく不死虫なのである!! ……なんてエラそうに書いてはみたが、数日まえにアップした“ライバルは物忘れ”というエッセイにあるとおり俺は秘薬と生命の粉塵の調合レシピをド忘れしておりました。でも、忘れたままだと今回のエッセイを書くことができないため、断腸の思いでハンターノートにある調合リストを見てやったのです。おかげで、アハ体験はできずじまいです。
まあいいや。
下位ハンターのころは、秘薬も生命の粉塵もそれほど使用頻度は高くないかと思う。言ってみれば“お守り”のようなもので、「持っていると安心できるからとりあえずアイテムポーチには入れておく」という、通勤カバンに入っている文庫本みたいな存在だ。……って、我ながら非常にわかりにくい例えなので解説しておくが、通勤や通学の途中でふいに、「はっ!! な、何もやることがない!!」という手持ち無沙汰の空白の時間ができてしまうことがあるでしょう。そういうときに文庫本の1冊でも持っていれば、「ああ、よかった……。文庫本があったおかげでヒマ死にせずにすんだ。持ってて助かったなあ><」ってなるわけですね。しかし捻り出した例えをみずから解説するのって、なんだかじつに恥ずかしいですな……。
まあそんな秘薬と生命の粉塵なわけだが、難度の高い上位クエストに行くようになると俄然存在感が際立ってくる。っていうか、必携必須のアイテムになる。「ぜぜぜ、絶対にこのふたつだけは切らすわけにはいかん!! 武器を忘れても秘薬と粉塵忘れるなっ!!!」とまなじりを吊り上げて絶叫してしまうほどに。そういう意味で、これらのアイテムの大本となる不死虫は崇め奉られる存在なのだ。
それほど使い勝手のいい不死虫だが、なんとも微妙に手に入りにくい。モガの村の農場で増やせばいいのだろうが、ロックラックに入り浸っていると都会の風にあてられて田舎(モガの村ね)に帰るのが億劫になり、ついつい「ま、まあなんとかなるべえ」とつぶやいて今日も拠点選択画面で“街に行く”を選んでしまうのである。
そういう、俺のような都会かぶれのハンターは、ロックラックでどうにか不死虫を調達する必要がある。その方法はかなり限られていて、最終的には虫あみを持ってフィールドに飛び出し、チョウチョが飛んでいるところでめったやたらとコレを振り回すというもっともアナログかつ原始なところに落ち着くしかなくなる。しかし、そうそう簡単に「今日は不死虫が大漁だ!!」ってことにはならない。たいがいは釣りバッタや虫の死骸といった招かれざる客をウジャラウジャラと虫あみに捕らえてしまい、「俺は釣具屋か」とつぶやくハメになるのだ。
しかしそんなある日。ささやかな奇跡が起こった。
いつものメンバー(俺、江野本、茨城フォーのハルス君、ジャッ君)で上位のリオレウス、リオレイア同時討伐クエストに出かけたとき、俺はクエストが終了間際なことを察してこっそりと虫の採取ポイントに接近し、虫あみを振るった。すると1発目からお目当ての不死虫を捕らえることができたではないか。おお、これは珍しい。幸先がいいぞ。この勢いで、さらに虫を捕ろう!! そう思って虫あみを振り続けると……!
不死虫を手に入れた!
不死虫を手に入れた!
不死虫を手に入れた!
不死虫を手に入れた!
不死虫を手に入れた!
なんと5回連続で不死虫をゲット!!! こ、こいつはすげえ……。孤島の神秘だ。奇跡の虫あみだ!!! この珍しい現象、仲間に自慢しない手はないでしょう。皆、驚くに違いない。さあさっそく報告だ!! そう思ってキーボードに手を伸ばしたところでクエストが終了となってしまった。まあいい。ロックラックに戻ったら真っ先に報告してやろう。俺はロックラックに戻るまでのわずかな時間が長く感じるほど、ドキドキワクワクし続けた。
そしてロックラック。俺は全員が戻ってきたのを確認してからキーボードを叩き始めた。「5連続で不死虫が出たよ!!」。そんなことを書こうとしていたと思う。しかし俺が決定キーを押すまえに、興奮した様子の江野本がつぎのような発言をした。
「ちょっと聞いてよっ!! 報酬でレウスとレイアの紅玉が1個ずつと、逆鱗も2枚出たっ!!! すごくない!!?」
とたんに巻き起こる「うおおおお〜〜〜っ!!」という地鳴りのようなどよめき。ハルス君もジャッ君も、心から感心しているようだ。
そうかそうか、そうだよネ。紅玉と逆鱗だもんネ。1回のクエストでそんなに大漁にゲットするなんて、滅多にないもんネ……。なるほどなるほど。わかったわかった……。
俺は「5連続で不死虫が出たよ!!」と書き終わったテキストを無言で眺め、静かにデリートキーを押した……。
逆鱗日和な一夜が明け、俺たちは再び、火竜の紅玉を追い求める旅を始めた。あまりにも長いこと出現してくれないため、いまや何のためにこの素材を手に入れようと思っていたのか忘れてしまったのだが(ダイジョブか俺)、何かしら目的があったほうがこのゲームは圧倒的に楽しいので「とりあえず1個でも紅玉を手に入れるまでがんばろう!!」ってことで、飽きもせず火山や孤島に出向いて上位リオレウスの尻尾を斬り続けた。尻尾から剥ぎ取りをして目当てのものが出なかったらリタイアして戻ってくる……というナントカマラソンではなく、1頭1頭確実に仕留めて(捕獲だけど)、報酬もしっかりともらってからロックラックに帰ってくる。時間はかかるがこのほうが間違いなく楽しいし、紅玉は出ないまでもハンターランクポイントやほかの素材を唸るほどゲットできるので、俺たちは誰が言うでもなくふつうに、クエストを遂行し続けたのであった。
気がつくと俺のハンターランクは、復帰時に46だか47だったものがいつのまにか55になっていた。そうなるまでに出向いたクエストは、8割以上が上位リオレウス(苦笑)。そこまでやっても俺は、火竜の紅玉を手に入れることができなかった。ちなみに、最後に訪れる試練は「この3人じゃ絶対に3オチすると思いますが……w」というハルス君の予想を覆して、俺、江野本、ハルス君のトリオで1発クリアー。俺たちもやるときゃやるんだかんな、ということを見事に証明する。そしてそれが終わってからも、ひたすら火竜の紅玉を求めて上位リオレウスを狩り続ける。そりゃあハンターランクも上がるってぇもんだ。
そして昨夜。
いつものように午前0時すぎに、俺、江野本、ヒロ君、ハルス君の4人がロックラックに集結した。俺は仲間3人の顔を眺めながら、バーに入って「とりあえずビールとチーズね」と注文するのと同じように慣れた口調で「とりあえず上位リオレウスね」とサラリと言う。とりあえずもなにも、紅玉が出るまでは永久に「とりあえずリオレウスね」が続くんだけどナ。
そのときの狩猟も、じつによどみなく進行した。はらペッコのふたりは強大な力をもってリオレウスを気絶させたり怯ませたりし、江野本は麻痺属性のランスで突っついていいタイミングで麻痺を奪う。俺は、とりあえず急ぎでやることもなかったので、中途半端な強さの水属性のランスでリオレウスを小突き、仲間が攻撃を食らったのを見たらすかさず回復薬を飲んで体力回復の手助けをした(広域化+2がついているからな)。俺だけが飛びぬけて地味な立場に見えるが、これが我々4人のベストな布陣なので何ら問題はないのである。狩りは順調に進み、リオレウスが何度目かの気絶でぶっ倒れるころには尻尾の切断に成功。「尻尾は鮮度が命っ!!」と叫びながら切断面から湯気が立つような新鮮な尻尾に取りついて、ザクザクと剥ぎ取りをする。……ハイ、火竜の上鱗ネ。そうだろうと思ったけどネ。しかし何度目かね、アンタに会うの。もうぼちぼち、出しゃばらなくてもいいかと思うんだけどネ。いいかげん、会いたいあのコに会わせてほしいんだけどネッ!! と凄んだところで上鱗が紅玉に突然変異するわけもないので、すぐに落ち着いて狩猟の続きに勤しむ俺。けっきょく大きな波乱もなく、5分ほどで上位リオレウスは捕獲されてしまった。さあ、いよいよ報酬だ。俺は横たわるリオレウスを傲然と見下ろしながら、心からの叫びを発した。
「もう火竜の紅玉なんていらねえ!! 欲しくない!! ……いらないから、とっとと出てくれええええ!!!」
これを聞いた江野本、ヒロ君、ハルス君の3人は、腹を抱えてゲラゲラと笑い転げるのだった。
そして、報酬画面。
どうせ今回もロクなものが出てないんだよ。わかってるんだよ。でも、わかっているのについつい期待してしまっている自分がじつに小さく、卑しい人間に思えてきて思わず涙を流しそうになる。でもしかたないのだ。いまの俺は日本で3本の指に入るくらい火竜の紅玉を欲している男なのだ。紅玉さえ手に入れば、向こう1ヵ月くらいはリオレウスから剥げる素材すべてが竜骨【中】になってしまってもいい!!(いやよくない) そこまで思いながら報酬画面を見ると、ひとつだけ見慣れない、丸っこいアイコンが表示されているのに気がついた。俺の双眸は、端っこから血が滲むんじゃないかと思えるほどクワと見開かれた。
こ、これはまさか………………!!
額にジワリと汗が浮かぶ。閉じられなくなった口の端から、イビルジョーのようにタラリとヨダレが漏れた。心臓は早鐘のように打ち、震える手はそのままマッサージ器として売り出せるほど小刻みに揺れ続けている。こいつはもしや、あの素材では……。俺は涙で曇る目をゴシゴシとこすり、視界を明瞭にしてから思い切ってカーソルをそのアイコンにかぶせた。そして……!
「にゃあああああ!!! か、かりゅうのこうGYOクがデなぎ098kっつ!!!!!!」
デタ!! 出たよ!! ついに出ましたよ火竜の紅玉が!!! 『3(トライ)』を遊び始めてから約8ヵ月。これだけの時間を費やしてようやく、俺は火竜の紅玉を手に入れたのだあああああ!! ……って、紅玉探しを始めたのってここ数週間のことだけどナ。それでも、俺たちのまわりには「このまま永久に出ないのでは……?」という空気が漂い始めていたので、それを払拭できたことは大きかった。これでようやく、前に進めるぞ!!
それにしても、「ここでつれなくされたら本気でアンタのこと嫌いになるぞ!!」と叫びたくなるギリギリのタイミングで、こちらの心を見透かしたように「うっふん。よく我慢したわね。好きよ♪」としなだれかかってくるあたり、口説いてもどうしても落とせなかった百戦錬磨のおっさんキラー(なんだそりゃ)と対峙しているようで寒気すら覚える。この、追い求めていたものがようやくようやく出てくれたときの快感が忘れられず、俺たちハンターはさらなるレア素材を求めて狩りに出撃しちゃうんだよなぁ……。
苦労に苦労を重ねてようやく手に入れたナケナシの火竜の紅玉は、レウスGヘルムを作るために使おうと思っていた(ってことを思い出した)。これで全身をレウスG装備で覆うことができるのだ。よーし、さっそく作るぞ、レウスGヘルム!! 俺は武具屋のカウンターににじり寄り、「レウスGヘルム1個ヨロシク!!」と発注しようとした。
ところが。
決定ボタンを押す直前になって、俺の脳裏に火竜の紅玉を手に入れるまでの苦難のシーンがつぎつぎと蘇ってしまった。これほど苦労して手に入れた希少中の希少素材を、ポンと使ってしまっていいのか……? ここで使ってしまったら、つぎにいつ手に入るのかまったくわからないんだよ……?? お、おそろしい……。そんな貴重なものを、簡単に使うわけにはいかねえ!! レウスG装備に身を包んだハンターが現れるのをいまかいまかと待っている3人に向かって、俺はつぎのように宣言した。
「もったいなくて火竜の紅玉が使えませんっ!! こいつはこのまま封印することにしますっ!!!」
ロックラックの酒場に、「なんでやねん!!!」の怒声が轟いた。
“例のセンサー”にまたまた感染しました。
センサーに感染する……なんて日本語としてどうかと思うが、最近『パンデミック』という、世界中に蔓延する病原菌を仲間と協力しながら駆逐していくボードゲームに激ハマり中のため、ついついこういう単語を使ってしまうのです。“例のセンサー”とは当然ながら“物欲センサー”のことで、俺は『モンハン』に出会ってからの5年間でかれこれ3800回くらいはこいつに感染してのた打ち回ったと記憶している。
今回、物欲センサーのターゲットとなった“ブツ”は、上位リオレウスから稀に取れる素材“火竜の紅玉”だった。『3(トライ)』のリオレウス素材の中では火竜の逆鱗と並ぶ最重要・最レア素材なので簡単に出てくれないことはわかっていたが、じつは心の奥底では(『3(トライ)』における俺の素材の引きは神がかっている。なので蓋を開けてみたら拍子抜けするくらいあっさりと、手に入る気がしてならない)と思っていた。でもそう思ってしまった時点で、俺は物欲センサーの魔の手に絡め取られていたのだろう。
俺、江野本、はらペッコのハルス君の3人は、しばらくまえからリオレウス以外のモンスターには見向きもしなくなった。俺が「紅玉欲しい!」と騒ぎ出すまえから江野本も「紅玉欲しい!! べにだまべにだま!」とわめき散らしていたので、素材集めの同志としてまことに都合がよかったのである(ハンターランク200オーバーのハルス君は必ず「なんでもいいですよ〜^^」と言ってくれる)。しかし5頭狩っても10頭狩っても火竜の紅玉は誰にも出ず、ロックラックの酒場に暗澹とした空気が立ち込めてくる。それでも最初のうちは「出ないからこその逆鱗や紅玉だ!!」、「こういうのはあっさり出ないほうが楽しいのだ!!」とかなんとか強がりを言いながら酒場と火山を往復していたのだが、3日間リオレウスを狩り続けてただの1個も出ないとなると、「仏の角さん」と呼ばれるほど温和な俺も限界に達する。チャットの台詞に元気がなくなり、口に運ばれる酒の量は増えて、つられるようにツマミの量も増加した。それでも、俺以上に目をギラつかせて「べにだまべにだま! にゃあにゃあ!!」とわめき散らす江野本にも火竜の紅玉が出ていないことが、かろうじて俺を仏の世界に止めてくれた。
「がんばろうよ、えのっち。夢をあきらめてはいけないよ。そこにリオレウスの尻尾がある限り、紅玉が入っている可能性はあるのだからね。キレちゃいけない」
と言えるほどに。ところが……。
「にゃあああああ!!! か、かりゅうのこうGYOクがデなぎ098kっつ!!」
上位リオレウスを追い掛け回して幾星霜……。ついに江野本が報酬で火竜の紅玉を引き当てやがったではないか!!! この信じられない報を聞いて、2秒まえまであんなに穏やかだった仏の角さんは瞬時に鬼すら頭から喰らう修羅と化した。
「すすすす捨ててしまえそんなものっ!!! おおおおまえに紅玉なんて出なかったっっっ!!!(泣)」
これを聞いた江野本、ニヤニヤと笑いながら「ホント、この人ちっさいwww」と勝ち誇るのだった。
その後も俺は一向に、火竜の紅玉を引き当てることができなかった。かといってあきらめるわけにもいかないので、ロックラックで江野本、ハルス君と合流しては上位リオレウス討伐についてきてもらう。しかし10回、20回と連続するとさすがに気が引け、だんだんとこちらも卑屈になってくる。口から出る台詞も「今回は上位レウスね」、「たまには上位のレウスにでも行こうよ」、「ひさびさに上位レウス希望!」、「やっぱモンハンっつったらレウスだよね!!」なんて、申し訳ないのとテレ臭いのと情けないのとがゴチャ混ぜになった複雑な感情から生成されるようになり、自分でも何を言っているのかよくわからなくなってくる。そんな状態が、5日ほど続いた。
そんな、5月9日の夜……。
俺はハルス君、はらペッコのヒロ君という屈強なふたりとともに、飽きずに上位リオレウスを追い回していた。しかし、いくら尻尾を斬ろうが討伐しようが(正確にはすべて捕獲していた)火竜の紅玉は出てくれず、日付はいつしか5月10日になった。そのころには江野本も現れて、ひさびさに4人フルメンバーでクエストに行くことに。それでも、求めるものはまっっっっったく出てくれない。物欲センサーの見えない手は今日も俺を底なしの奈落に引きずり込もうとし、いつしか俺はジンクスめいた不気味なことばかりつぶやくようになる。たとえば、リオレウスが滅多に行かないエリアに飛び去ったのを見て「あ!! レウスが変わった行動をしている!! 紅玉が出る前兆だ!!!」とか、狩りを3人に任せてこっそり採掘をしているときに5回連続でボロピッケルが壊れてしまったのを見て「ボロピッケルが5連続で壊れた!! なんたる不運!! この反動で紅玉が出るに違いない!!」とかとか……。そんな俺に3人は慈しみの篭った眼差しを向け、「うんうん、出るといいね^^」、「きっと出ますよ^^」とやさしい言葉を投げかけてくれるのであった。
しかし日付が5月10日になったころから何かが変わったのか、やたらと火竜の逆鱗が手に入るようになった。尻尾から剥ぎ取りをしたら火竜の逆鱗が出て、そのクエストの報酬でさらに1枚手に入る。それが2回続いたときには、3人から慈しみのオーラは消え去っていた。いわく「ちょっとぉ……。おかしくない!?」(江野本)、「紅玉よりも逆鱗のほうがうらやましいっすよ!」(ハルス君)、「逆鱗のほうが使う用途はぜんぜん多いですよ!!」(ヒロ君)等々……。しかしこちとら、火竜の逆鱗10枚と火竜の紅玉1個を交換してくれと心から願うほどの紅玉求道者。逆鱗が何枚出ようがうれしくもなんともない。ああああ……。もうこれ以上、レウスの顔見るのヤダ……。
そして、今日。
通勤電車で居眠りをしていたところにメールが1通届いた。見ると、差出人は江野本である。ナンダナンダと思って開けてみると、そこには以下のような一文が書かれていた。
「うっかり忘れていたんですけど、5月10日って初代『本日も逆鱗日和』の発売記念日じゃないですか! 3周年ですよー! おめでとうございます!!」
あ、そういえばそうだっけ。火竜の紅玉に夢中になってて、すっかり忘れていたよ。
でも、もう3年になるんだなぁ……。最初の『逆鱗日和』を出してから。月日が流れるのは早いものだ。『モンハン』のレア素材って言えば真っ先に火竜の逆鱗が思い浮かぶ時代に、7秒くらい考えてつけた書名(正しくは当時連載していたコラムのタイトル)なんだよな。あのころの火竜の逆鱗の貴重さは紅玉やら天鱗やらの遥か上をいってて(俺の主観だが)、誰かが「逆鱗デタ!!!!」なんて言おうものなら一斉に「すーてーろ! すーてーろ!!」のシュプレヒコールがあがったんだよな。いやあ懐かしい懐かしい……と思ったところで、俺はふと数時間まえの“逆鱗ラッシュ”を思い出した。仲間3人にはまったく出ないのに、5月10日になったとたんに俺にばかり火竜の逆鱗がザクザクと出たことを……。『逆鱗日和』発売3周年記念日を迎えたとたんに、うるさいほど出てきた火竜の逆鱗。あまりにも出来すぎた話だとは思いながらも、俺はうれしくなって江野本にこう返した。
「夕べの逆鱗ラッシュ、『逆鱗日和』の発売記念日ってことで神様がたくさん出してくれたのかもしれんねw」
数十秒後、ちょっと恨みがましい返事が『逆鱗日和』のプロデューサー&ディレクターから届いた。
「確かに……。ウチたちにはまるで出ませんでしたしね……。……まあ今日だけは、好きなように言わせておいてあげますよ^^」
嗚呼、本日も逆鱗日和−−。
ゲームに復帰してしばらくは、その環境に順応するまでに時間がかかる。どんなに慣れ親しんだ世界であっても、ちょっとでもブランクができればいろいろなことに反応できなくなったり、忘れてしまったりしているものだ。
『モンハン』ももちろん、この呪縛からは逃れられない。いやそれどころか、シンプルな世界ながら覚えることがいろいろとあるのでド忘れの影響を多分に受ける気がする。この間の俺がそうだった。
まず忘れたのが(……ってヘンな言いかただけど)、食事の効能である。セミリタイアするまえは確か、攻撃力アップ+体力増加の食事をしていたような気がするが、ハテ、それがどの組み合わせだったのかまったく思い出せない。よく見りゃ画面に小さな文字で食事の効能も書いてあるのだが、そのことすら忘れているのでテキトーな組み合わせで食べるしかない。しかし拠りどころとなるのは実生活でのオノレの経験くらいしかないので、結果、「酒と野菜なんて、バーニャカウダを肴にワインを飲むようなものだなぁ^^」と言ってこれを食べてぶっ倒れ、「魚のミルク煮ってのをウチの社員食堂で食ったことがあるので、魚+乳製品にしよう」と勢い込んでコレを食べて、体力−30、スタミナ−50という毒を盛られたとしか思えない被害を被って七転八倒したりした。
さらに俺は、調合のレシピも忘れた。まあこれについては、ハンターノートという偉大なノートに調合経験のあるレシピはすべてメモられているので見りゃ済む話なのだが、「俺はベテランハンターだ! んなもの見なくてもレシピはすべて頭に入っている!!」といういらないプライドが邪魔をして調合リストを見ることができない。その結果、秘薬と生命の粉塵というふたつの必須アイテムの作りかたを忘れてしまった俺は、1オチした瞬間に上位の屈強なモンスターとノーマル体力で対峙することを強要され、さらに仲間がピンチになっても生命の粉塵で救済することができないというアブラムシ的な役立たずハンターと化す。秘薬がないのは自分が恐ろしい目に遭うだけなのでどうでもいいのだが(よくないが)、生命の粉塵を持たずに協力プレイに臨むのはどうにも気が引ける。そこで俺は広域化+2が発動した防具に身を包み、仲間の体力が減るたびに薬草や回復薬をガブ飲み。生命の粉塵を持っていないことを仲間(江野本とハルス君)に悟られないよう、健気な立ち回りを続けた。おかげでふたりはまだ、俺が生命の粉塵を持たずにクエストに出ていることに気づいていない。レシピを思い出すまで、なんとかこのまま隠しとおしたいものだ。
そしてもうひとつ、忘れてしまった……というか過去の経験と蓄積を過信してエラい目にもあった。
ロックラックに集まった俺、江野本、ハルス君の3人は、その日のアイドリングクエスト(肩慣らしのために出向く比較的軽いクエストのこと。いま命名した)に上位のクルペッコ討伐を選んだ。まずは手早くこいつを狩って身体をほぐし、続けて上位ベリオロスや上位アグナコトルなんかを狩っちゃおうと思ったのだ。
孤島に降り立った3人はすぐにクルペッコを発見し、順調に攻撃を当てていった。上位とはいえクルペッコ。我ら3人にかかれば物の数ではない。顔といわず羽といわずボコボコのズタズタにし、ああ、もうまもなく討伐だなぁ……と思ったところで、クルペッコが「ズモモモモォォォ〜〜〜!」と低い声を発したではないか。そう、例の鳴き真似である。上位のクルペッコに鳴き真似をされると多くのハンターが「ままま、まさかイビルジョー!?」と一瞬にして顔面蒼白になるものだが、俺はそうはならない。なぜかと言うと俺はクルペッコの微妙な声色の変化をすべて聞き分けることができるので、どんなモンスターが呼ばれたのかを一瞬で判別できてしまうのだ(エッヘン)。かつて江野本とふたりでイビルジョー討伐に挑戦していたとき、毎回のようにクルペッコにこのモンスターを呼んでもらっていたので、いつしか声を聞き分けられるようになったんだよねえ。なので俺は、確信に満ちた声でこう言った。
「あ、これはレイアの鳴き真似だ。ジョーじゃないから、余裕だね」
これを聞いたハルス君、心の底から感動した風情である。
「わかるんですか角満さん! すごいですね! なあんだ、レイアかあ^^」
江野本、我がことのように俺の特技に胸を張る。
「さんざんペッコにいろいろなモンスターを呼んでもらったもんねー^^ これだけはすごいのよ大塚さん!」
俺、鼻からバフーバフーと荒い息を吐き出しながら調子に乗って畳み掛ける。
「まあねえ! たいしたことないけどサ^^; まあレイアだったら狩っちゃおうかね^^ ジョーでもいけると思うけどサー^^^^^」
そして我々がいるフィールドに、クルペッコに呼ばれたモンスターが黒い巨体を揺らしながら現れた。それを見た瞬間、冷静なハルス君が珍しく金切り声をあげる。
「……って、どこがレイアっすか!!! 思いっきりイビルジョーが来ましたよっ!!!!」
江野本も、5秒まえに角満を褒めた自分よ死んでくれとばかりに、烈火のごとく怒りだした。
「また外したのおおお!!? どんだけ見込みが甘いんすかっ!!!!」
はた迷惑な物忘れと記憶違い症候群に侵されたハンターの、波乱の道中は続く……。
ロックラックでご活躍のハンターの皆様、ご無沙汰しております。大塚角満でございます。ワタクシこのたび、『3(トライ)』の世界に復帰いたしました。雌伏(なのか?)の時代はついに終わりを告げ、つい1週間ほどまえから本格的にロックラックに足げく通うようになったのでありました。
じつはずっと、中途半端な状態でロックラックライフが“小休止”のような状態になってしまっていたことを、俺は密かに悔いていた。「できることならやり直したい……」、「掛け違えたボタンをもとどおりにしたい……」と心から思っていたのである。しかしいくら後悔しても、一度離れてしまったものに対して「いやぁ〜、あんときゃスマンかったねぇ^^; ま、昔のことは水に流してまたひとつよろしくたのんますよ^^;;;」なんていう軽薄なことを簡単に言えないのが昭和生まれの悲しい性(さが)。何かしらきっかけが現れ、「ネェネェ! やろうよお! 大塚さぁあん!」と強く背中を押してくれないと、「……まぁ、そこまで言うんだったら復帰しなくもないけどサァ^^;」と言うことができないのだ。自分で書いてこう言うのもナンだが、ホントにおっさんてメンドくせえな。
そんな4月のある日、俺と江野本ぎずもを中心に結成され、最近やたらと活動が活発化してきた“ごきぶり友の会”の会合が開かれた。ごきぶり友の会とは、トランプやカードゲーム、ボードゲームといったアナログゲームをこよなく愛する志士の集まりで、メンバーは俺、江野本、茨城フォー(ゴッディ、ジャッ君、ヒロ君、ハルス君)、もうゲネポの唯君となっている。メンバーの数名がカードゲームの“ごきぶりポーカー”にハマったのをきっかけに結成された集まりなので、この名が冠せられたんだけどね。その活動の模様と遊んだアナログゲームのプレイ日記もボチボチ書いているので、いつかどこかで公開したいと思っていたりします。
そんなごきぶり友の会の集まりで、はらペッコのヒロ君、ハルス君と世間話をしていたとき、話題が『3(トライ)』のことになった。先に行われた第4回角満カップの思い出話や、発表されたばかりの『モンスターハンターポータブル 3rd』のことを話しているうちに、「そういや、最近『3(トライ)』はどう?」と誰からともなく話が振られたのである。そこで俺と江野本は、第4回角満カップが終了してからずっと、燃え尽き症候群に侵されてなかなかWiiの電源を入れられずにいること、しかも中途半端なところで止まっている自分の姿を省みるのが怖くて余計に『3(トライ)』から遠ざかってしまっていることを強者たちに話した。ふたりで復帰したところでけっきょく、「俺たちで対抗できるのはよくて上位ペッコだよな……」といじけながらモノマネ鳥の尻を追いかけ回して、ハァハァと荒い息をつくのが関の山に違いない。そんな醜態を晒すくらいだったら、復帰なんてしないほうがいいんじゃなかろうか? そうだそうだ! そうに違いない!!
「俺のような老兵は、もう後進に道を譲ったほうがいいのだろう。うん、そうだ! そうに違いない!! さあそうだと言ってくれ!!」
俺はセンス溢れる新進気鋭のハンター、ヒロ君の胸倉をつかんで涙ながらにわめき散らした。するとヒロ君は優しく俺の腕を払いのけてからメガネの奥の目をキラリと光らせ、予想だにしなかったことをのたまった。
「いっしょにやりましょうよ角満さん、ぎずもさん! 僕はついこのあいだ3ヵ月分の課金をしたばかりなので、たっぷりと遊べるんですよ!!」
ぽかーんとする俺と江野本に向かって、茨城の寡黙な仕事人・ハルス君が畳み掛ける。
「僕はいまでも毎日のようにロックラックに行って遊んでいますよ。なので復帰するようでしたら、いつでも連絡してください!」
こうして逆鱗日和ファミリーは、長く離れていたロックラックに帰省することになったのであった。
ここまでくればあとは、課金をしてロックラックに出向き、仲間と合流してクエストに……という、ハンターのセオリーに則った行動をすれば万事オッケー。ところが、俺と江野本の足並みは簡単にはそろわなかった。
復活日と決めたその日、俺と江野本は「のちほどロックラックで会おう!」と互いに言い合いながら会社で別れて、おのおのの自宅へと向かった。家に着いたらWiiを起動し、ロックラックで落ち合おうという算段なのである。帰宅した俺は軽い食事とほどほどのお酒に気分をよくしながら久しぶりにWiiの電源を入れ、課金の処理を済ませてから勇躍ロックラックに乗り込んだ。
ロックラックは、今日も変わらず埃っぽかった。ジエン・モーランが大砂漠に来ているらしく、目を開けられないほどの砂塵が街の風景を霞ませている。いかにも『3(トライ)』っぽい風景が広がっている日にロックラックに来られたことを、俺は狩りの神様に感謝した。「久しぶりだけど、いい狩りができそうだ」。砂が浮かぶ達人ビールをあおりながら、俺はそうひとりごちた。
とりあえずアイテム交換所のおばちゃんや武具屋のおっさんに話しかけて現在のロックラックのトレンドを教えてもらい、さらにずっとほったらかしだった自室にも足を運んだりして、懐かしの故郷ライフを満喫する。それでもまだ時間がありそうだったので、街に佇むロックラック案内人のアイルーや滅多に話しかけない調合屋のオヤジ、加えて武具屋から出るときについつい話しかけてイラっとさせられるリッチなハンターにも、あえて声をかけてみる。しかし、なかなか我が相棒はロックラックに現れない。
「なんのなんの……」
俺は力なくそう言いながらクエストカウンターに取り付き、「とりあえず肩慣らしをしておかないとな……」とボソボソと言葉を発して闘技訓練のクルペッコ討伐を選択。ひとりでクルペッコ討伐のタイムアタックをして時間を潰すことにした。しかし、端から時間潰しのためと思って立ち回っているので集中力の欠如は著しく、俺はクルペッコの前に無数の屍を築いてしまう。でもそんなことはいっさい気にせず、「ぼちぼち戻らないと相棒を待たせてしまうからな」と健気な台詞を発しながらロックラックに戻り、酒場に誰もいないことを確認して再びムナシク同じクエストを選択して闘技場にゴー。そんな作業を十数回もくり返すうちに、ついに俺はキレた。
「何をやっておるのだあの女は!!!」
すぐに江野本の携帯にメール。しかし待てど暮らせど彼女はロックラックに現れず、けっきょく2時間ほどひとりでポケーっとしただけで俺は故郷を去ることになった。
翌日、朝起きて携帯を確認すると「すません!! メシ食ってすぐに寝ちゃいました!!」という懺悔メールが江野本から届いているのを確認した。まったくこの女は……。食ってすぐ寝るとは、修行中のお相撲さんかおまえは。俺は「今日はキチっと集まって『3(トライ)』すんぞ!」と殴り書いたメールを送信してから出社。帰り際にも「家に着いたらロックラックだかんな!」と江野本に念を押してプンスカプンスカと頭から湯気を出しながら自宅に向かった。
そして……。
俺は窓から射し込んでくるキラキラの陽光に顔をしかめながら、ゆっくりと起き上がった。いつの間にか、コタツで寝てしまったらしい。見るとテーブルの上には、空っぽになったコンビニ弁当の箱と白ワインのビンが転がっている。そうか……。メシを食ってそのまま寝てしまったのか。最近、睡眠不足だったからなぁ。こういうこともあるよなぁ……と考えたところで、俺は「!!!!!」と頭の上にビックリマークを5個ほど飛び出させた。し、しまった……。江野本とロックラックで落ち合う約束をしていたのに寝ちまったよ……。しかも、前夜に現れなかった彼女をさんざん罵倒したばかりだっつーのに、まったく同じことを……。俺は一瞬で覚醒した頭をグルグルと振り回しながら周囲を見回し、足元に転がっていた携帯電話を拾い上げた。恐る恐る確認すると、メールボックスに江野本からのメールが……!
「ロックラックに入りましたよー^^」
「まだ来れないのー?」
「ハルちん(ハルス君のこと)も来ましたよ!」
「……ふたりで待ってるんですけどー……」
俺は午前2時過ぎに届いていた最後のメールの返信ボタンを押し、2秒で「すません!! メシ食ってすぐに寝ちゃいました!!」と打ち込んで江野本にメールした……。
こんな、お互い様の極みとも言うべきしょーもないすれ違いをくり返した結果、俺たちの本格復帰は1週間以上もズレ込んでしまいました(苦笑)。それでも無事にロックラックで落ち合うことができ、いまでは毎日のように俺、江野本、ハルス君の3人で上位のクエストをこなしているのです。そこでの出来事は追々、ここで書いていくことにします。お楽しみに〜。
大塚角満

週刊ファミ通副編集長にして、ファミ通グループのニュース担当責任者。群馬県出身。現在、週刊ファミ通誌上で“大塚角満のモンハン研究所”というコラムを連載中。そこら中に書き散らした『モンハン』がらみのエッセイをまとめた単行本『本日も逆鱗日和』シリーズ(4巻)が発売中。また、そこからのスピンオフとして別の視点から『モンハン』の魅力に迫る書き下ろし作品『別冊『逆鱗日和』 角満式モンハン学』シリーズも。このブログではさまざまなゲーム関連の話題を扱うつもり。一応、そのつもり。
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