大塚角満の ゲームを“読む!”

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【MH3】『本日もただいま! 逆鱗日和』のカバーを大公開!

 読者の皆様に見ていただきたいものができあがりましたので、取り急ぎ更新させていただきます。何ができたのかというと……2010年1月22日発売予定の新刊『本日もただいま! 逆鱗日和』のカバーなんですよ!!

 今回の『ただいま! 逆鱗日和』は『3(トライ)』について書いたエッセイをまとめた本になるということで、編集を始めた当初からイメージカラーは“海”とか“水中”を連想させる“青”でいこうと思っておりました。そして、イラストレーターのぽん吉さんにお願いするカバーイラストについても「水の中で楽しそうにしている向こうで、ラギアクルスが睨みをきかせているものに」とオーダーし、この美しく描き込まれたイラストが完成したのです。すごく『3(トライ)』っぽくて、ステキなカバーでしょう? 俺も江野本ぎずもも、非常に気に入っております。早く実物を、皆さんに手にとって見てほしいわぁ〜♪


投稿者 大塚角満 : 15:10

【MH3】第74回 物欲センサー3(トライ)

 訳あって、ここのところずっと、江野本ぎずもとふたりでイビルジョーを追い回して……いや、追い回されていました。訳あることなので、遠くない未来にそのときの顛末は公開されます。ってまあ、ぶっちゃけ先日告知した『逆鱗日和』シリーズの新刊、2010年1月22日発売予定の『本日もただいま! 逆鱗日和』に絡んだことなんですけどねっ! どうかこちら、お見逃しのないようにひとつ……。

 で、そんなイビルジョーな日々の中で、「むむむ」と思ったことがあるのでご報告させていただきます。皆様の大好きな“物欲センサー”のお話です。「そんなコラムを読んだら物欲神に祟られるから読まんとこ」なんて言わずに目をお通しください。ちなみに、話の内容はイビルジョーとはまるで関係ございません。

 皆さん、『3(トライ)』を遊んでいて素材の引きで困ったことってありますか? 具体的に言うと、無印で言うところの“火竜の逆鱗”、『2(ドス)』で言うところの“炎龍の塵粉”、そして『2nd G』で言うところの“古龍の大宝玉”のような、おまえそれ都市伝説だろ的に一生出てくれない素材にぶち当たったことがありますか? とお聞きしているわけです。……え!? 「いくらでもある」ですって!? そういう、想定外のことを言われるとこのコラムが成立しなくなるので、ここは「そういや『3(トライ)』では素材の引きで苦労した記憶がないナ」ってことにしておいてください。

 実際、俺は現時点まで、素材が出なくて出なくて困りますわ><  なんてことにはなっていない。そりゃあ雌火竜の逆鱗とか火竜の逆鱗とか、ギギネブラのおそろしいクチとか獄炎石とか欲しくて欲しくて死んでしまいそうなのにまったく出てくれないけど(センサー、発動してるじゃねえか)、それでも頑なに、「こここ今回の物欲センサーは威力が弱い!!」とヤケクソになって言ってしまいます。実際、体感的にはそれほど素材に困っていないしぃ。

 ところがここにきて、許容量の限界値を突破したダムが決壊したかのごとく、恐るべき物欲センサーがアギトを開いて俺と江野本に襲い掛かってきた。しかも、モンスターから剥ぎ取る素材ではなく、もっと生活に密接した部分で……。

 最初に「あれ?」と思ったのは、ロックラックの酒場で食べる“食事”だった。格上のモンスターと対抗するために、俺は“ネコの火薬術”が、江野本は“ネコの特殊攻撃術”がどうしても必要なのに、こいつらが頑として発動しなくなってしまったのだ。それまで、なんのことはないクエストに行くときは火薬術も特殊攻撃術もうるさいくらい発動していたし、ついでとばかりにネコの体術とかネコの医療術まで付録としてついてきたというのに、いざ必要になったとたん、ウンともスンとも言わなくなってしまった。最初は、「まあこういう日もあらあな」と大らかな態度でいられた。しかし、テキトーに食事をする→クエストを受ける→リタイアして戻る→食事をする→クエストを受ける……という“食事マラソン”を30分くり返しても欲しいスキルを得ることができず、さらにトドメとばかりにリストに“ネコの運搬の鉄人”、“ネコのおまけ術”、“ネコの火薬術”、“ネコの火事場力”が並び、しかも食材が両方とも“新鮮”だというのに発動したのが運搬、おまけ、火事場の3つ……なんていうことになった日には怒りを通り越して爆笑してしまったよ。

 そんなこんなで、欲しいスキルが出るまで食事マラソンをくり返した最長記録は、じつに62分……。延々1時間以上も、俺はネコ飯を食らい続けたことになる。どこまでヒマなんだ俺は。

 しかし、物欲センサーの猛威はこれではおさまらない。苦労したすえにネコの火薬術、ネコの特殊攻撃術を発動させたところで、今度はお目当てのクエストがまったく出てくれないのである。行きたいクエストの筆頭は★5の高難度ジャギィノス討伐だったのでもともと出にくいという側面はあったが、それにしたっていつまで経ってもリストに登場しようとしない。こちらはふたりがかりだというのに、だ。しかたがないので上位クルペッコ討伐を選んでクルペッコにイビルジョーを呼んでもらおうとするも、そういうときに限って空気を読まないKY鳥が呼び寄せるのはドスジャギィとかルドロスとかリオレイアばっか。そのたびに俺たちはどよ〜んとうなだれてロックラックに帰郷し、30分から1時間かけて火薬術と特殊攻撃術を発動させ、またまた高難度ジャギィノスがないからクルペッコ捕獲を選んでも呼び寄せられるのはリノプロスとディアブロスばっか……なんてことをくり返していたのでありました。

 素材の引きが悪くなるのも精神的にこたえるが、そこに至るまえに物欲センサーに発動され続けると、体調すら崩して鼻血が吹き出そうになる。あまりにもひどいセンサー台風の直撃に遭い、ロックラックで呆然とたたずみながら、俺と江野本は今日もこう言うのだ。

「物欲センサー、恐るべし……」

 何度目だ? この台詞書くの……。

※ただいまこちらのページで、2009年のゲーム業界の重大ニュースを決めるアンケートをとっております! 2009年がどんな年だったかを俯瞰する記事となりますので、ぜひぜひ皆様、アンケートにご協力くださいませ。よろしくお願いします!

→重大ニュースアンケートはこちら!

投稿者 大塚角満 : 15:17

【MH3】 1年以上ぶり! 『逆鱗日和』本編最新刊発売決定!

 ここ1ヵ月ほど、ブログの更新が滞っております。本当にスミマセン……。ときたま場を取り繕うように『2nd G』のことを持ち出してコッソリと更新しておりましたが、『3(トライ)』のプレイ日記がなかなか書けず……。じつは俺も江野本ぎずもも、『3(トライ)』をプレイする時間もほとんど取れないほど“ある作業”に没頭……というか忙殺されていたのです。

 いったいこの間、我々が何をしていたのか?

 本日、プロデューサーの江野本から「もう発表しちゃっていいですよ!!」とお許しが出たので、包み隠さず我々のたくらみを公表しちゃいましょう。じつは……!

 『逆鱗日和』本編の制作を進めていたのですっ!!

 2008年11月に『本日もサヨナラ! 逆鱗日和』を出して以降、シリーズのスピンオフとなる『角満式モンハン学』を2冊刊行しましたが、これはあくまでも“別冊”でありプレイ日記中心の『逆鱗日和』本編とは毛色の異なる単行本でした。つまり“サヨナラ!”してから1年以上も、『逆鱗日和』のナンバリングタイトルは出ていなかったわけですねぇ〜。

 しかし2009年8月1日にWii用ソフト『モンスターハンター3(トライ)』が発売されるやいなや、俺はこのファミ通.comのブログを中心に週刊ファミ通、ケータイサイトのファミ通DXなど、書けるメディアがあればところ構わず首を突っ込んで『3(トライ)』に関するエッセイを書き散らしてまいりました。いつしかその数は膨大になり、ふたりで「ぼちぼち1冊にまとめられるかなぁ?」と話しているうちにモンハンフェスタ`09が幕を下ろして、時間的にも精神的にもちょっとだけ余裕が生まれて「よし!! 単行本を作ろう!!」と決意したのが2ヵ月ほどまえの2009年秋の出来事。それから毎日のように、通常業務を終えた深夜からフラフラとなじみの居酒屋に出向いて単行本の打ち合わせ。“新刊は『3(トライ)』に関するエッセイだけで構成する”こと、“書き下ろしも多数盛り込む”ことなどを決めていきました。

 打ち合わせをする中で、ひとつの懸案事項となったのが“書名”です。1年以上ぶりとなる『逆鱗日和』本編なので、それらしい雰囲気の言葉をくっつけてあげたい……。そこで決まったのが、この書名です。

●『本日もただいま! 逆鱗日和』

 じつは本決まりとするまえから僕と江野本は、『逆鱗日和』新刊のことを“ただいま”と呼んでいました。コードネームみたいなものですね。しかしこれが正式書名に決まるまでには二転三転があるんですけど、最終的には出発点である“ただいま”にたどり着いたのです。なぜ“ただいま!”なのかについては、本書に巻かれているオビを読んでいただければわかるんじゃないかなぁ(ニヤリ)。

 本書を構成しているエッセイ群はすべて、前述のとおり『3(トライ)』に関するものです。ファミ通.comで書いているプレイ日記を中心に、週刊ファミ通で連載している“大塚角満のモンハン研究所”、ファミ通DXで書いたエッセイも盛り込んでみました。前者にはナバルデウスとの激闘の様子を描いたプレイ日記が、後者には『3(トライ)』にまつわるクダラナイ都市伝説を検証したじつに“らしい”エッセイが掲載されていたので、「ぜひこれも入れよう!」となったのでした。それと既出のものでは、週刊ファミ通に添付された攻略小冊子に寄稿したエッセイ“『モンスターハンター3(トライ)』へのオマージュ”も収録することにしました。いかに僕がこの作品の発売を心待ちにしていたのかがわかる丸裸なエッセイで、書いた本人もお気に入りの文章でした。非常に長い文章だったのですが、無理矢理これも掲載しております。

 そして書き下ろしですが、ページが限られているっつーのに僕も江野本も欲張りなのでアレもコレもと盛り込むことに……(苦笑)。恒例の開発者座談会は、『逆鱗日和』本編では初となる巻頭のカラーページにドドンと掲載。こだわりまくった写真に、ぜひ注目を! そして、モンハンフェスタ`09がらみで3本、毛色が違う作品を書き下ろしています。なかでもぜひ読んでいただきたいのが、“あるハンター”にフィーチャーして書いたドキュメンタリー。ものすごく切ない物語なのですが、最後まで読んでいただければきっと、感動してもらえるものと自負しております。さらにプレイ日記系での書き下ろしとして、『3(トライ)』で“最凶”と言われるあのモンスターに僕と江野本のふたりで挑んだときのドタバタ劇を掲載。……まあ、笑ってやってくださいな(笑)。

 こんな感じで、「いま盛り込めるものはすべて入れてしまおう!」を裏テーマに絶賛編集中の『本日もただいま! 逆鱗日和』ですが、じつは発売日も決定しております! それは……!

●2010年1月22日発売予定 価格998円[税込]

 です!! 読めば必ず『3(トライ)』を遊びたくなる1冊になっておりますので、ハンターの皆さん、書店で見かけたらぜひとも手にとってみてくださいね!


投稿者 大塚角満 : 16:05

【MHP 2nd G】第186回 た、卵運びで勝負だ! その2

 なかなか更新できなくてスミマセン……。しかも、話の途中で……。

 『2nd G』の訓練所にある初心者演習のひとつである基礎訓練の中の“運搬”(長えな!!)で、タイムアタックをすることになった俺と江野本ぎずも。今年の狩王決定戦で活躍したモンハンアスリートたちが「なにげに基礎訓練のタイムアタックは熱い」と言っていたのを思い出し、突発的に挑戦することになったのだ。場所は、俺と江野本のたまり場であるバー“S”。ゴッディが持つという2分16秒という世界記録(じつはこれは勘違いで、この記録は狩王決定戦で決勝大会に進出したJuiceの方が持っているものだと後に判明した)更新を目指して、バーSのカウンター席でギャースギャースと大騒ぎしながら運搬クエストに挑み始めたのであった。

 このクエストによる運搬ルートは、大きく分けてふたつある。前回のエッセイでも書いたが、ひとつはエリア1→エリア4→エリア5→エリア3と回る“右回りルート”。もうひとつがエリア1→エリア2→エリア3と回る“左回りルート”だ。なんとなくの先入観で、しばらくは左回りルートで卵を運ぶ。すると何度目かの挑戦で江野本が「キターッ!!」と叫び、勝ち誇った声でつぎのように言った。

出た!! 2分25秒!! 世界記録まで、あと9秒に迫りましたよ!!」

 江野本の声にビックリし、スタミナが真っ赤になっていることを一瞬忘れてしまった俺のキャラが、納品ボックスを目の前にして卵をバキャンと割ってしまった。俺は「にゃあにゃあ!!」と言いながら喜びの舞を踊っている江野本に非難の声をぶつけた。

うるせえ!! おめえがいきなりデカい声を出すから、卵割れちゃったじゃんよー!!」

 これを聞いた江野本、腹を抱えて笑いながらこう言った。「大塚さん、まわりの影響受けすぎwww」。

 こんな感じで夢中になって卵運びをしていたら、バーSのマスターとたまたま居合わせた常連客のアデューさんが「どれどれ……」と言ってタイムアタックに参戦してきた。これはまさに、“さいたま市最速”を決めるタイムアタック大会ではないか。

 それから俺たちはしばらくのあいだ、ちびちびと酒を飲みながら卵運びに没頭した。しかしどうやっても世界記録の2分16秒はおろか、江野本が持つさいたま市記録も抜くことができない。俺は3回連続で2分27秒を出したことで何かが吹っ切れ、イギリス産の生ビール、バス・ペールエールを喉に流し込んでから3人に告げた。

「ちょっと抜本的に考え直さないと、さいたま市記録すら塗り替えられない。よって俺は左回りルートをやめて、右回りルートで挑戦してみます」

 記録保持者の江野本も、何度やっても2分25秒が出てしまうことに辟易していたらしく、俺の考えに同調した。「大塚さんの様子を見て、ウチもルート変更を考えます」。

 そして俺は、3人のライバルたちの期待を背負いながら右回りルートで卵運びを試みた。……あ、一応ここで書いておくけど、ただ漫然と卵を担いで戻ってくるだけでは2分20秒台すら出すことはできないよ。たとえば、ベースキャンプからエリア1に出るときは右の壁を舐めるように走って高台からジャンプし、着地モーションの途中でエリアチェンジになるようにする……とか、なかなかこれでテクニカルなことをしているのだよ。

 で、期待と不安の右回りルートで挑戦してみた結果……!

「うおおお!! 2分25秒が出た!! さいたまタイ記録!!」

 江野本もこれには驚いた。

「マジっすか!? 1回目でそれだったら、右回りルートのほうが記録が見込めるのかも!!?」

 そこから、右回りルートを詰める作業が始まった。とりあえず何度かチャレンジしてみて、ちょっとでもタイムを詰められそうな箇所を江野本とふたりで抜き出していく。その結果、

(1)エリア3で高台から飛び降りるときは卵を目がけること。着地点に卵があれば、すぐさま採取できる。
(2)卵を持ってエリア3からエリア5に入るとき、大回りになることが多いので注意する。
(3)エリア2で卵を持ったまま段差を降りるとき、1段抜かしを狙って飛び降りる。

 これらが念頭に置いておくべき注意事項としてピックアップされた。で、その後も一喜一憂しながら卵を運び続けた結果、ついに俺が壁を越えた。

おおおおっし!! 2分23秒!! さいたま新記録樹立したぞおおお!!」

 新しい記録が出なくてお通夜のようになっていたバーSの空気が、一気に華やいだ。記録を狙うライバルどうしということも忘れ、江野本が喜びを爆発させる。

「すごいすごい!! 世界記録まで、あと7秒ですよ!! いける!! 絶対にいけるーーーっ!!

 しかし、喜んだのも束の間、それからいくら挑戦しても2分23秒を超えられなくなってしまう。これでもかと卵を運び続けたが、不思議なことに出る記録は2分23秒ばかりなのである。冗談抜きで、「これはいける!!」と思っても2分23秒、「いまのはグダった……」と思っても2分23秒(笑)。2009年のジャパンカップで勝ち馬のウオッカが出した記録が2分23秒くらいだったので(正確には2分22秒4)、もしかしたらこのくらいのタイムが流行っているのかもしれない。そうじゃないかもしれない。

 そうこうしているうちに、江野本も2分23秒を叩き出した。さいたまタイ記録だ。このとき、マスターとアデューさんは2分30秒前後だったので、勝負は逆鱗ファミリーに絞られた感じである。俺たちは再び、卵運びの世界に入り込んだ。

 しかしどうしても、2分23秒の壁が越えられない。どこで間違えているんだ……? 俺と江野本は、このクエストでハンターに影響を及ぼす事象をひとつひとつ潰してゆき、ある盲点に気がつく。江野本が言った。

支給品ボックス! 何か入っていませんか?」

 すぐに俺がクエストを受注し、青い支給品ボックスを開ける。するとそこには……!

け、携帯食料が入ってるーーーっ!!

 俺のこの言葉に、バーS内は沸きに沸いた。すぐに「よし!! クエストが始まったらすぐに携帯食料を食ってスタミナ値を上げ、それから卵運びに行こう!」ということになり、ウキウキしながらその作戦を実行してみる。ところが。

「ナニコレw 2分30秒とかしか出ないんですけどww」と江野本。

「うは……。時間をロスしてるだけだわコレ……」と俺。どうやらこの携帯食料は、開発陣が仕込んだトラップだったらしい(んなことはない)。

 携帯食料作戦をあっさり捨てて、再度俺たちは卵運びに没頭した。そして20分ほどが経過したころだろうか。その日何度目かの江野本の絶叫が、深夜のさいたま市に轟いた。

「ぎゃあああ!!! 2分22秒が出たああああ!! さいたま新記録!!」

 ビックリしてバキャンと卵を足元に落としながら、俺がわめいた。

「マジで!? すげえなオイ!! どうやったんだ!?」

 聞くと江野本は、エリア2の段差を降りるときに、着地場所によってはハンターが着地モーションを取らずにチョンチョンチョンと段差を駆け下りられる(言葉で説明すんの難しいなこれ!)ことに着目。それを狙った結果、“永遠の1秒”とも思われた時間の壁を越えることに成功したのだ。うーん、我がライバルながら、あっぱれの快挙ではないか。

 しかし、ここからはどうやっても記録を伸ばすことができなかった。さいたま記録保持者の江野本も2分22秒は一度しか出すことができず、完全なる頭打ちとなる。何か革命的な発見でもない限り、さいたま記録を更新することは不可能と思えた。しかもその先には、2分16秒という信じられない大記録が控えているのである。チーズをジントニックで流し込みながら、俺はため息をついた。

「さすがゴッディ……。さすが狩王……!(※注:記録保持者はゴッディじゃありません) 2分16秒は、奇跡の記録だ……」

 パルメジャーノレッジャーノを齧りながら、江野本もうめき声をもらす。

「ホントに……。恐るべしゴッディ……(※注:記録保持者はゴッディじゃありません……ってシツコイな)。ウチたち、どこかで致命的な見落としをしているんですよね……。じゃないと、6秒なんて絶対に縮まらない……」

 致命的な見落とし……。ここで俺は、ある衝撃的な事実に気づく。このクエストに潜む、ハンターに影響を及ぼし得る驚きの不確定要素の存在に……。俺はバーSのカウンターを両のコブシでドンと叩いて「わかったっ!!」と叫んでから、宇宙の真理を解き明かした聖人のような口調(我ながら意味不明)で絶叫した。

ギアノスだっ!! エリア3にいるギアノスだよっ!! こいつが怪しすぎる!!

 一瞬、ぽかーんとした表情で俺の発言を聞いていた江野本はなぜか身体を折り曲げて「あはははは!!」と笑い出し、笑いの収まらない顔のまま俺に向き直ってこんなことを言った。

ギアノス、まったく怪しくないからっ!!(爆笑) どう考えても、何も考えずにエリア3で立ってるだけですよぉ!! もう、あんま笑かさないでください……」

 しかし、俺は食い下がる。

「そおかなあ? だって、卵があるエリア3にいるんだよ? しかもなんか、ほかのギアノスに比べてひとクセありそうな顔してない? 絶対にこのギアノスがカギを握ってるぜ」

 江野本、「ひーーーっ!(笑)」と悲鳴をあげたあと、ぜいぜいとあえぎながらなんとか言葉を発した。

「ちっともクセありそうな顔じゃないよ!!(爆笑) ギアノスなんて、みんな同じ顔してんの!! もうダメ……。笑かさないで……」

 それでも俺は諦めきれず、ギアノスが何か行動を起こしてくれないものかとエリア3にたたずみ続けた。しかしいまだ、2分22秒のさいたま記録を超えられずにいる。怪しいと思うんだけどなぁ……。

投稿者 大塚角満 : 21:19

大塚角満

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週刊ファミ通副編集長にして、ファミ通グループのニュース担当責任者。群馬県出身。現在、週刊ファミ通誌上で“大塚角満のモンハン研究所”というコラムを連載中。そこら中に書き散らした『モンハン』がらみのエッセイをまとめた単行本『本日も逆鱗日和』シリーズ(4巻)が発売中。また、そこからのスピンオフとして別の視点から『モンハン』の魅力に迫る書き下ろし作品『別冊『逆鱗日和』 角満式モンハン学』シリーズも。このブログではさまざまなゲーム関連の話題を扱うつもり。一応、そのつもり。


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