大塚角満の ゲームを“読む!”

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【MH3】第67回 モンハンフェスタ`09を“5人衆”と振り返る

 モンハンフェスタ`09決勝大会終了後に、『モンハン』制作チームの面々を会場でつかまえて立ち話をした。撤収作業などでバタバタしていたし、制作チームの皆さんも挨拶まわりで忙しかったのでゆっくりと話すことはできなかったが、フェスタの終了直後だからこそ聞けることが絶対にあると思い、レコーダーを回させてもらった。まずは、フェスタの仕掛け人のひとりである『3(トライ)』の小嶋慎太郎アシスタントプロデューサーから。会話の楽しい雰囲気をできる限り読者の皆さんにお伝えしたいので、関係ない雑談も取り混ぜてお伝えします〜。

大塚 小嶋さん、お疲れ様でした! いやぁ、すごかったですね。
小嶋 ホントですねー! 決勝大会の途中から尿意がどうにもならなくなったんです。※なんと小嶋さん、準決勝の1回戦と2回戦目のあいだにいきなり「ペース配分間違えました。ト、トイレいかせてください」と大観衆の前で発言(笑)。本当にトイレに行ってしまったのだ。
大塚 そんなこと聞いてないっすよ!!(爆笑)
小嶋 あ、そっちじゃなくて?(笑) でもホント、我慢しすぎてステージで3回くらい気を失いそうになりました……。
大塚 俺、絶対に仕込みだと思ったんですよ。バックヤードで何か着てくるのかな、って。そしたら、ホントにトイレ行っただけだし(笑)。
小嶋 いやぁ、ビックリですねえ(苦笑)。
大塚 ……って、そんなことはどうでもいいんです! この決勝大会の感想を聞かせてくださいよ。
小嶋 今回は初めて、『3(トライ)』と『2nd G』の両方を立てたイベントだったじゃないですか? なので不安はありました。「おもしろいものを作ろう!」ってことでチーム一丸となって進めてこれたので自信もあったんですけどね。蓋を開けてみたらいろいろなユーザーさんが来てくれたし、(フェスタの)3年の歴史はしっかりと生きているんだなぁ……って思いました。
大塚 うんうん……。
小嶋 狩王決定戦のステージを見ていたときに思ったんですよ。「この子ら、どんだけこのゲームで遊んでくれてんの!?」って。もうね、途中から込み上げてきちゃってしかたなかったですもん。
大塚 開発者冥利に尽きますね。
小嶋 はい……。だって、ほかにもたくさん遊びってあるわけじゃないですか?
大塚 うん(笑)。ああいう若い子たちだし、誘惑はたくさんありますよー。
小嶋 昔、僕らも夢中になって格闘ゲームで遊んでいましたけど、それと同じような匂いを感じますよね。しかも狩王決定戦の場合は個人技ではなく、コンビが協力して詰めていくわけじゃないですか。ケンカもすると思うんです。それでも、ここまで一生懸命がんばって上り詰めてきてくれることに対して、僕らは「ありがとう!」としか言えないですよね……。
大塚 この2ヵ月あまり、モンハンアスリートと呼ばれる彼らは生活のすべてを『3(トライ)』に捧げたんですもんね。
小嶋 そうなんです……。決勝戦の直前にステージで、artiesの子が「ひと狩りいってきます」ってコメントしたじゃないですか? もう、かっこよすぎですよ!!
大塚 そうそう!!
小嶋 決勝大会のための1プレイじゃなく、何千、何万ってしてきた狩りのひとつでしかない、っていうね……。彼の自信の現れとともに、「たくさん狩ってきたうちのひとつを見せるだけだよ」っていう意味が含まれていると思ったんです。重いひと言だなぁ……って。
大塚 僕も、鳥肌が立ちましたもん。
小嶋 決勝大会に残ったチームも、どれも個性が際立っていて本当におもしろかったですしね!
大塚 ですね! 西と、東のチームの対決の構造とか、本当にプロレスっぽくておもしろくて、かっこよかったですよ!
小嶋 そんな中で、東京代表が初めて優勝したんですよねー。

 ここで、“ミスターモンハン”こと『3(トライ)』の藤岡要ディレクターが登場。話に加わってもらった。

藤岡 お疲れ様でした〜……!
小嶋 お疲れでした〜!!(と、藤岡さん、小嶋さんがハイタッチ)
大塚 終わっちゃいましたね、今年も。
藤岡 終わっちゃいましたねぇ……。今日の夜中あたりに、じわじわと来るんだろうなぁ……。
小嶋 おいしいお酒が飲めますよ、きっと。
大塚 あはは。
藤岡 いまはまだ、「楽しかったなぁ」くらいしか感想が出てこないですね(笑)。札幌大会が終わったあとにも言いましたけど、「ホッとした」がもっともいまの心境を表している言葉かなと。
小嶋 盛り上がってくれたことに、いちばんホッとしましたね。
藤岡 そうやねー。据え置きの『3(トライ)』をメインに据えて行うフェスタは初めてだったので不安もあったんですけど、とりあえず、ひと安心ってところですね。
大塚 うんうん……。そんな『3(トライ)』の狩王決定戦ですけど、決勝の立ち回りを見て、どうでした?
藤岡 じつは決勝のまえにGod君(優勝したartiesのひとり)が、「ベリオロスのときはしっかりと見ていてください!」って言い切ったんですよ。
大塚 ほう!
藤岡 「僕らがボルボロスを狩ったら大スクリーンに映像を映しておいてください」って言うので、そこまで自信があるなら……ってことで裏でちょっと相談して、彼らがボルボロスを討伐しそうになったらスクリーンに映像を抜くようにしておいたんですよ。
大塚 そんなやりとりがあったんだー(笑)。
藤岡 そしたら、エライことになったやないですか(笑)。「闘技場になんか置いとるよ!?」ってビックリしていたら、ベリオロスが着地するまえに起爆して落として、そしたらシビレ罠で麻痺して……。「おいおい……」って感じでしたよ……。
小嶋 去年とかもそうでしたけど、すごいプレイを見ると自然と歓声が上がるんですよね。「うおおお!!」って。まさに“魅せるプレイ”だったなあ。
藤岡 あのベリオロスが、闘技王の大連続狩猟のキーになっていましたね。
大塚 ですねー。ボルボロスで遅れるのは織り込み済みで、ベリオロスから一気に畳み込むというね。
藤岡 準優勝のL.O.Lも、決して悪くなかったですもんね。タイムも、立ち回りも、ポジショニングもすごくうまかったし。
大塚 いやあ、たいしたものでしたよ!
藤岡 でも、そこから突き抜けるには、さらなるアイデアが必要なのかもしれないですね。
大塚 そうですねー。しっかしこの大会、プレイヤーのレベルがめちゃくちゃ高かったですね。実力の底自体がすごく上がった感じがしたし。
藤岡 「こんなタイム出るんや!!」って、そればっかりでしたもんね(笑)。
大塚 ホントに……。
藤岡 こういうのを『3(トライ)』でできた、ってこともうれしいんですよね。同じゲームで大会を続けていくと、マンネリ化するじゃないですか? その流れを変えられたのかな、って思えたし。『モンスターハンター』の可能性を広げられた大会だったんだろうな、って。
大塚 “広がり”と言えば、いきなりなんか発表されちゃいましたしね!

 ここからしばらく、この日電撃発表されたPSP用ソフト『モンハン日記 ぽかぽかアイルー村』の話に。書かないけどね^^;

藤岡 そうそう、いつもフェスタの最後には歌姫に来てもらって歌っていただいていたんですけど、今回はどうしても都合が合わなくて……。急遽、ああいう演出になったんです。※大会終了後、歌姫の歌声をバックにいろいろなアングルからハンターの狩猟風景を見せる、印象的な映像が流されたのだ。
大塚 あの映像は、新たに作り起こしたものなんですか?
藤岡 そうです。作りました。
大塚 やっぱそうなんだ……。カメラのアングルとか、特殊でしたもんね。
藤岡 はい。お客さんの帰りかけに上映したので映像に集中できなかった人もいたかと思うんで、それは申し訳なかったんですけどね……。
小嶋 でもほとんどの人が振り向いて、「え!?」って感じで見てくれたのでよかったです。ウルウルしている人も多かったし。
藤岡 映像を作ってくれた監督さんは、「は! って振り向かせるのがいいんだよ」って言ってくれていたので、ちょうどそういう雰囲気にはなったんですけどね。
大塚 うん、そういう感じでしたねー。
藤岡 最後、自然発生的に拍手も湧き起こったので安心しました。
大塚 オープニングの演出もよかったですよ。歌姫の歌声とともに、各地区大会の印象的なシーンが流れて。
藤岡 小見山(『3(トライ)』の音楽担当)とか、あの映像を観て泣いてるんですよ(苦笑)。Jast25`sが福岡大会を抜けてガッツポーズをしているシーンが流れたのを見た瞬間に、ボロボロ涙を流して……。2007年のチャンピオンながら去年負けちゃって、それでもがんばってきたという彼らのバックボーンを知っているから、泣けたみたいですね。
大塚 すごくコミさんぽい話だなぁ(笑)。でも僕も、あのシーンを観て涙出そうになりましたよ。
小嶋 逆に僕は、感情移入しちゃいそうだったんで「決勝まえには観ない!」って決めて観ませんでしたよ(笑)。
大塚 あははは!
藤岡 じゃあ大塚さん、またゆっくり酒を飲みながら話しましょうね!
小嶋 大阪に来てくださいね(ニヤリ)。
大塚 行きますとも! では、本当にありがとうございました!!
藤岡小嶋 ありがとうございました!!

 藤岡さん、小嶋さんと別れた俺はさらに会場内をフラフラし、『3(トライ)』のメインプランナー、木下研人さんを発見。さっそく話しかけた。

大塚 研人さーん。お疲れ様でした!!
木下 お疲れ様でしたー! もうね、大塚さん……※×%$#α&%△!!

 と、感極まってよくわからないことを言う研人さん(笑)。するとそこに、『2nd G』の一瀬泰範ディレクターが現れた。

一瀬 ……大塚さん、研人さんはコメントがユルいんで、うまい具合にまとめてくださいね(笑)。
木下 そう、なんでもかんでもしゃべっちゃうので、よろしくお願いします(笑)。
大塚 あはは! どんだけユルいんすか(笑)。でもどうでした? ステージの上で体験する初めてのモンハンフェスタは。
木下 やっぱり、終わっちゃって寂しいです……。これまでのフェスタって、『ポータブル』シリーズが中心だったじゃないですか? なので僕は、本格的に参加したこと自体が初めてだったんですよ。
大塚 そうか。『3(トライ)』を作っていたわけですもんね。
木下 はい。今回、2ヵ月っていう長い期間を使っての巡業になりましたけど、各会場でいろいろなドラマがあったじゃないですか? 狩王決定戦も、個性溢れるハンターたちに参加してもらえて。なので僕らがいちばん楽しませてもらったんじゃないかなって思っているんです。「ご褒美をもらった!」って気分なんですよね。それにフェスタで得たことって、「こういう要素があったら、つぎのフェスタでも使えるんだろうな」って感じで、制作の現場にバックできるんですよね。
大塚 ああ、そうなんだー。
木下 クリエーターって、インプットがないと辛いんです。ずっとアウトプットばかりしていると枯れてしまうので。それにゲーム制作って時間がかかるから、モチベーションを維持するのもたいへんなんですよ。でもね、こういうイベントでユーザーにご褒美をもらって、助けてもらって、すごくいい循環になっているな、って。
大塚 そういうものなんですか?(と、近くにいた一瀬ディレクターに話を振る俺)
一瀬 まあ、僕は才能があるのでアウトプットだけでも大丈夫なんですけどねー。
木下大塚 (爆笑)
大塚 あー(笑)。さすがですね、一瀬さんは。……そのまま記事に使いますよ?
一瀬 って、僕が天狗キャラじゃないですか。でも、どうしてもって言うなら「大塚さんの良識ある判断」にお任せしますわ(笑)。
大塚 そうやって、テキトーに丸投げすんのやめてもらえません? ホントやりにくいわ(笑)。研人さん、一瀬さんがこんなこと言ってますよ。
木下 うおおお。ついていきます!(笑)
一瀬大塚 (爆笑)
大塚 でも研人さん、今回のフェスタでいろいろと吸収できたことで、モチベーションは保てますか?
木下 もちろんです!! 保てますとも!!(力強く断言) ゲームを作っている最中にいろいろ思い出すと思うんです。決勝大会に出たチームの立ち回りなんて、鳥肌が立つほどの芸術作品だったし。こういうのが、つぎにつながるんです。
大塚 うんうん……。わかりました! ありがとうございました! 今度、ゆっくりインタビューさせてくださいね。
木下 ぜひ! お待ちしています!

 このあと、テキトーなことを言ったきりフラフラといなくなってしまった一瀬ディレクターをつかまえることができず(笑)、コメントを取ることを断念。最後に辻本良三プロデューサーを見つけて、ちょっと長めに話を聞くことができた。

大塚 じゃあさっそくですけど、『ぽかぽかアイルー村』の詳細を教えてください(にっこり)。
辻本 教えません!!(きっぱり)

 と言いつつ、ちょっとだけ『ぽかぽかアイルー村』を肴に雑談をする。

大塚 じゃ、フェスタの話をしましょう!
辻本 はい! しましょうしましょう!
大塚 今年で3回目だったわけですけど、歴史ができてきましたね。このあいだ良三さんが、「小さかった暴走ランサーがデカくなって現れた!」って話してくれましたけど、そういったエピソードからも歴史をうかがえますね。
辻本 そうなんですよ! あれには本当に歴史を感じましたねえ。
大塚 積み重ねてきたからこその出来事ですもんね。
辻本 毎年のように会場に来てくれる人から「あのときのこと、覚えてる?」って言われると、けっこう僕らも覚えているんですよね。それに子供ってすぐに大きくなるから、背が高くなったのを見ると「長くやってきたんだなぁ」って思いますよ。
大塚 うんうん……。
辻本 それにね、しゃべることも大人びてるんですよ。その暴走ランサーの子も、「まだランス使ってんの?」って聞いたら「いや、いまは太刀なんですよ」って(笑)。
江野本 色気づいたな!!(笑)
辻本 そうそう(笑)。まだ3年目ですけど、続けてこれたから出会える風景ですよね。
大塚 来場者にも歴史を感じますけど、タイムアタック大会に出場する選手にしても、月日の積み重ねを感じますよ。
辻本 タイムアタックに関してはね、今回とくに、出場者全員がすごくプライドを持って参加してくれたと思うんです。いままで以上に「負けられない!」って思いを強く抱いて。過去2回の大会で活躍した人たちを目標に練習して、だんだんタイムアタッカーのたちのあいだにもコミュニティーができて、「あそこには負けたくない!」っていうライバル関係も生まれて、すごくいいプライドも芽生えた。あそこまで極まるために、膨大な時間を練習につぎ込んでいるわけじゃないですか。ゲーム本編も進めずにね。『3(トライ)』が発売されて3ヵ月くらいになりますけど、その間の貴重な時間を練習に割いてくれたということ自体が、ものすごくうれしいです。
大塚 すべてを捧げていましたからね、彼らは。
辻本 決勝のステージに上がった子たちのクオリティーって、ものすごく高かったですよね。過去2回の大会以上に。決勝で負けたL.O.Lは、大連続狩猟はほとんど練習できていなかったって言っていましたけど、あのクオリティーが出せる。それって、蓄積の成せる技ですよね。
大塚 会場も、めちゃくちゃ盛り上がってましたしね。
辻本 そうそう。彼らのすごいプレイに対して、見ているほうもすごく敏感に反応していましたよね。ゲームをここまで集中して見るってことって、あまりないと思うんです。クオリティーの高いプレイが短い時間に凝縮されているからこそ、見ているほうもテンションを保ったまま盛り上がれるんですよね。こういうのって、いいですよね。
大塚 芸術作品を見ているみたいでしたよね。
辻本 ですねー。今年は、そういう雰囲気がいちばん濃かったと思いますよ。今回、シチュエーションとして水中が加わりましたけど、最初は「どうなるんやろ?」とも思っていたんです。でも蓋を開けてみたら、「ラギア、まったく動けません!」みたいなね(笑)。僕らが期待していたものよりも、数段上のレベルでプレイしてくれましたよ。
大塚 決勝戦の大連続狩猟も、開発サイドの見込みでは10分切れば速い、っていう感じだったみたいですけど、優勝したチームなんて、練習だったら5分台で狩れるみたいですからね。
辻本 だからこそ、ボルボロスを相手のほうが速く狩っても焦らなかったんですよね。全部織り込み済みだから。そういうところまで戦術が組めているってのがすごい!
大塚 まさに、そのとおりですね。
辻本 それと、ステージでも言いましたけど、あんなに明るくて楽しい表彰式って初めてだったんです。みんな笑って、ヘンなポーズ決めたりね。僕ね、ああいう雰囲気が本当に好きなんです。それを見て、「よかった!」って思ったんですよ。フェスタが楽しかったってことの、縮図みたいで。
大塚 名古屋大会の決勝ステージで、同タイムで優勝したチームがステージ上で大騒ぎして抱き合ったじゃないですか? そういうところにも通じますね。
辻本 ね! あの子たちって、ライバルなんだけど称えあっているじゃないですか。そういう雰囲気、いいですよね!
大塚 でも、終わっちゃいましたねえ。
辻本 そう……。ちょっと寂しいですね、やっぱり。また寂しい気持ちに襲われますよ(苦笑)。
大塚 ……じゃあ、来年は?(ニヤリ)
辻本 ら、来年?
大塚 うん、来年。どうするんですか?
辻本 ……わからん。
一同 (笑)
大塚 ま、そうですよね(笑)。こっちとしては、いろいろやってほしいですけど。
辻本 「来年が」とか具体的なことはわからないんですけど、来てくれる人がいる限りは、イベントはやるべきだと思っていますよ。ゲームを買ってくれた人への、恩返しの意味も込めてね。
大塚 うんうん。
辻本 こういうイベントを通じて開発陣が得るものって、すごく大きいですし。イベントが終わるとこっちもひと回り大きくなることができて、それがゲーム開発に活かされるんです。このサイクルは必要ですよね。
大塚 研人さんも、同じことを言ってましたよ。こういう会場でユーザーからインプットしてもらえると、つぎの作品を作るモチベーションになる、って。
辻本 うん、そのとおりだと思いますよ。ゲームを作る人間って、人を楽しませたいとか、人を驚かせたいって思っている人種なんです。イベントって、直にユーザーの反応を見ることができる機会なのですごく貴重なんですよね。開発室に篭っていたら、なかなか直接聞く機会ってないですから。
大塚 今年は『モンハン』シリーズの5周年の年だし、それを祝ういいイベントになったんじゃないですか?
辻本 そうですね! ずっとやりたかった『2nd G』での女性ハンター大会とかも、試験的にですけどできましたし。『3(トライ)』の狩王決定戦も盛り上がったし、『ぽかぽかアイルー村』も発表できたしで、大満足ですよ!
大塚 それが聞けただけでも、大満足です。
辻本 あはは。よかったです! 今度ゆっくり、飯でも食いながら振り返りましょうよ。
大塚 ですね! 本当に、ありがとうございました!
辻本 こちらこそ、ありがとうございました!

 というわけでひとまず、俺が書くモンスターハンターフェスタ`09がらみのエッセイは終了かな……。……ってじつはもうちょっとやりたいことがあるので、これから江野本とふたりでコソコソと動こうと思っているんだけどね(笑)。でも、ひと段落だな。

 モンハンフェスタ`09の運営に関わったすべての皆様、お疲れ様でした! 今年も全会場をまわることができて、俺は本当に幸せでしたよ……。そして、狩王決定戦に参加されたタイムアタッカーの皆さん。すばらしいパフォーマンスをありがとうございました! 研人さんの言葉じゃないけど、皆さんの躍動を地区大会、決勝大会で見ることができて、俺の“書くモチベーション”は上がりまくりです(笑)。

 本当に、お疲れ様でしたーーー!!

投稿者 大塚角満 : 14:50

【MH3】第66回 天才は今日も肉を焦がす

 もうちょっとモンハンフェスタ`09について書きたいと思っておりますが、ちょっと今日は箸休めの軽いエッセイを。

 もうひと月ほどまえの話になるが、『3(トライ)』で導入された魅惑の新アイテム“連続肉焼きセット”なるものを手に入れた。その名のとおり、ふたつのコンロ(?)に生肉を連続でセットすることで立て続けに肉を焼くことができるという夢のような機器で、「アイルーキッチンの“よろず焼き”に匹敵する便利さ。何より使って楽しい!!」と、俺の友だち連中は連続肉焼きセットを絶賛しておりました。

 しかしなぜか、俺は連続肉焼きセットを使う機会がなかった。ずっと下位で生活していたので支給品の携帯食料でこと足りていたのと、ロックラックの交換所でいくばくかのこんがり肉を手に入れたことなどにより、自分で肉を焼かなくともなんとか生きていくことができていたのである。加えて、「俺は肉焼きの天才だから、その気になればいつでもこんがり肉セレブになることができる。まだ慌てる時間じゃない」と陵南の仙道くんチックに達観。ときたま生肉を補充することはあったが、連続肉焼きセットに火を入れる日はなかなかやってこなかった。

 そんな俺もついに、上位ハンターとなった。ご存じのとおり上位ではクエストのスタート地点がランダムに割り振られるので、すぐに携帯食料を手に入れられるとは限らない。しかも目の前にいきなり大型モンスターがいることもザラにある。そうなった場合はいちいちベースキャンプまで逃げ戻るのもバカバカしいので、手持ちの食料をすばやく食べてしまうに限るのです。しかしこうなってくると、交換所で手に入れたわずかながらのこんがり肉なんてあっと言う間に底をついてしまうのは当然の成り行きで、俺は『3(トライ)』をプレイし始めて2ヵ月目にして初めて、肉不足という事態に陥ったのである。

 ついにこの、連続肉焼きセットを使う日がきたのか……。

 俺は、つねにアイテムポーチにぶち込まれていたにも関わらず、今日の今日まで一度も使われることのなかった新品の連続肉焼きセットを丁寧に撫で回した。そして、そのときいっしょに遊んでいた女子大生ハンターのKちゃんに「肉を焼きたいので、なんかクエストいこー」と声をかけ、なんかのクエストに出かけたのである。

 さあさあ、肉焼きだ肉焼きだ。俺はこの5年間で一度も肉焼きに失敗したことがないってくらい、この作業に熟達している(このへんのこと、拙著『本日もサヨナラ! 逆鱗日和』に載っている“天才の威厳を守れ!”というエッセイに詳しい)。『2nd G』ではアイルーキッチンのよろず焼きを使ってばかりいたし、『3(トライ)』では前述のとおりずっと肉焼きはしていなかったので肉焼きセットを使うのはじつに久しぶりのことではある。しかし、俺は肉焼きの天才だ。モンハンフェスタのアスリートにたとえたらartiesのMizunoe君ってことになるだろうな。数ヵ月ぶりの肉焼き作業をまえにワクワクしながら、俺はKちゃんに言った。

「んじゃ、肉焼くねー♪」

 これを受けてKちゃんも「ごゆっくりー^^」と返す。よーし焼くぞー^^

 ズバン!! と連続肉焼きセットを地面に放り出すと、聴いたことのない音楽が耳に飛び込んできた。おお……。連続肉焼きセットでは違う音楽に合わせて肉を焼くのか!! 若干ながら、焦りの色を見せる天才。でもすぐに立ち直り、「いつものタイミングでボタンを押せばこんがり肉になるに違いない!」と信じて、音楽が終わってから一拍置いてaボタンを強く押した。すると……。

「上手に焼けました〜!」

 ふん。まぁな。俺は天才だからな。このくらいで褒めるなよ〜^^ 肉焼きセットが連続肉焼きセットになり、音楽が変わったところで、天才には影響しないんだからさぁ〜^^^^

 ……しかしこれ、いつになったら連続で肉が焼けるんだ? 1個焼いたっきり、我が分身はスクっと立ち上がってポケーっとしてるんだけど。俺は少々釈然としないままKちゃんに訊ねた。

「Kちゃん、連続肉焼きセットと言いつつ、1個しか焼けないんだけど……。俺の、壊れてんのかねえ?」

 するとKちゃんは「ぷ!w」と吹き出し、やさしく「ヒデくん、連続で焼くときはR1ボタン(クラコンPROね)を押しながら使うんだよ^^;」と教えてくれた。な、なぁんだ。そうだったのか……。ち、ちくしょう……。じょ、女子大生の前で恥かかせやがって! 俺はリアルに赤面しながらKちゃんに「あ、そなんだ^^;; あんがと!!」とお礼を言い、今度はしっかりとR1ボタンを押しながら連続肉焼きセットを地面に放り出した。

 ヘッドホンから流れ込んでくる、軽快な肉焼きの音楽。さきほどのタイミングは覚えたので、失敗する要素はない。チャンチャラチャランチャチャチャ〜……♪ よし、そろそろだな……と思ったところで、我が分身が思いがけない行動をした。

 ズズン!

 なんとコンロの片側にもうひとつ、生肉と思しき肉の塊を乗せたのである!! う、うわ! なにしやがるんだコイツは! タ、タイミングはどうしたらええの!? さっぱりわからーん! って、さ、最初に乗っけた肉の焼き加減もわからなくなった!! ひぃぃぃ! どうすんだ!!

 年甲斐もなく大いにうろたえていると、ヘッドホンから流れ込んできた信じられない音が俺の鼓膜を揺るがせた。

 ブヒィィン!!

 コゲ肉になりました!!

 わああああ!! コ、コゲ肉なんて作っちまったよおお!! ……って、驚いていたら2個目の肉がっ!! ってちょっとちょっと!! なんで俺の許しも請わずに3個目の生肉をコンロに乗せてるんだよ!!

 ブヒィィン!!

 コゲ肉になりました!!

 ほらみろ!! 2個目がコゲ肉にな

 ブヒィィン!!

 コゲ肉になりました!!

 ちょ!! まだ文字を打ち終わってないのに!! わかったよ!! 遅いんだろボタン押すのが!! ホレ、これでどうだ!!

 ポヨヨン

 生焼け肉になりました!!

 わああああ!! 今度は生焼けかよ!! って、言ってる尻からつぎつぎとコンロに乗せるなああああ!!! ど、どうすりゃいいんだ俺は><

 目を覆いたくなるような地獄のSM肉焼きは間もなく終わり、我がアイテムポーチには信じられない失敗肉の数々が積みあがった。じつに、

 コゲ肉:4個
 生焼け肉:4個
 こんがり肉:2個
 
 この報告を受けたKちゃんは「あはははは!!」と大笑いし、続けて「絶対にそうなると思ったww あのね、連続する音楽が終わるタイミングでポンポンとボタンを押すの。そうすればこんがり肉になるよ^^」とじつに親切にボタンを押すタイミングを教えてくれたではないか。よし、もう失敗しないぞ。立ち直りが早いことが取り得の俺は「じゃあもう1回やってみる! 付き合って!」とKちゃんに言い、再び10個の生肉を抱えてフィールドへとくり出した。

 そしてさっそく、R1ボタンを押しながら連続肉焼きセットをかまえた。大丈夫。俺は落ち着いている。あれだけのヒントをもらえば、もう二度と失敗しない! そして実際、俺は最初の生肉を見事にこんがりと焼き上げ、続く2個目もこんがり肉へと変貌させた。い、いける!! この調子だ!! しかしそのとき、隣で仕事をしている若手記者のキモ次郎に声をかけられた。

「あの〜、大塚さん。記事チェックお願いしたいのですが……」

 肉焼きに集中していたため、ビクン!! と大げさに反応する俺。その勢いで思わず、aボタンを押してしまった。

 ポヨヨン

 生焼け肉になりました!!

 げ。失敗した! お、落ち着け。まだ1個失敗しただけじゃねえか。俺はなるべく平静を装ってキモ次郎の発言は無視し、再び肉焼きに集中しようとした。そんな俺に、キモ次郎は畳み掛けた。

「あの〜、大塚さん。この校正も見てほしいのですが……」

 またまたビクンと身体を揺らし、その勢いでaボタンを押してしまう俺。

 ポヨヨン

 生焼け肉になりました!!

 俺、心よわ!! なんでこんなに簡単に反応して、ボタンを押しちゃうんだ……。俺はなかなかしぶといキモ次郎に向かって「わーったわーった。見る見る。そこに置いといて」とだけ言い、再度肉焼きモードに没入しようとした。しかし今度は別の記者が「大塚さん、このあいだのミスの件なのですが……」と切り出してきて、俺にいろいろと説明をしだす。あの、ちょっと、いま、肉焼きが……とも言えず「あうあうあう……」とあえいでいたらボタンを押すタイミングをすっかり逃して、またまたヘッドホンからあの音が……。

 ブヒィィン!

 コゲ肉になってしまった!!

 天才の看板、下ろさせていただきます……。

投稿者 大塚角満 : 20:38

【MH3】第65回 狩王・artiesにインタビュー! ガンキン討伐のレシピ付き!

 2009年10月25日に開催された決勝大会をもって、長かったモンスターハンターフェスタ`09が幕を閉じた。全国5都市で行われた地区大会は32300人を動員し、『モンハン』人気の裾野の広がりをしっかりと感じさせる結果に。『モンハン』の世界観に浸れる会場展示と充実したステージ、そしてたくさんの仲間が集う場所として、ハンターにはすっかり定着したイベントとなった。

 このイベントの根幹を成していたのは『3(トライ)』を使ったタイムアタック大会“狩王決定戦”だ。全国のモンハンアスリートたちが“最速ハンター”の称号を賭けてぶつかり合うガチンコのスピードバトル。過去2回でもさまざまなドラマが生まれたが、今回もそれはそれは印象的なシーンを、各地区大会、そして10月25日の決勝大会で見ることができたのである。

 そんな狩王決定戦を制したのは、東京地区大会を1位で突破したチーム“arties”だ。God君、Mizunoe君によるコンビだが、ぶっちゃけこのブログの読者の皆さんには“エフォクリのゴッディ”、“狩魂TのMizunoe君”と書いたほうがわかりやすいかもしれない(笑)。俺が書く『モンハン』プレイ日記に頻繁に登場しているし(勝手に書いているだけだが)、『逆鱗日和』シリーズの新作が出るたびに行うイベントにも毎回のようにゲストとして登場してもらっているので、すっかり“おなじみ”と言った風情である。

 決勝大会終了後、俺と江野本ぎずもはこの日の主役であるゴッディとMizunoe君を会場から連れ出し、六本木のこじゃれたレストランでインタビューを行った。しょっちゅうリアルでもロックラックでも会っている気の置けない仲なので雑談交じりのインタビューになったが、かなーり興味深い話を聞くことができた。いまやモンハンアスリートの頂点に立つ“神”(ゴッディ)と“天才”(Mizunoe君)コンビは、何を思いながらモンハンフェスタ`09を駆け抜けたのか? じっくりと読んでみてくださいな。


▲見事、第3代のタイムアタックチャンピオンになったartiesのふたり。左がゴッディ、右がMizunoe君だ。

控え室でダークサイドに……

大塚 とりあえず、おめでとうございます!
GodMizunoe ありがとうございます!!
大塚 本当に優勝しちゃったね。
God はい、そうですね(笑)。
大塚 さすが、神と天才コンビ。
Mizunoe いやあ、運もよかったんですよ。
大塚 ちょっと遡って聞きたいんだけど、ふたりは最初に開催された東京大会で優勝したわけじゃん? で、その後の地区大会でラギアクルス討伐のタイムがどんどん更新されていったわけだけど、そういうのを見て焦りとかはなかった?
Mizunoe なかったですね。
God 地区大会のタイムが更新されたら、ウチらはそのチームが持っている最速タイムを更新するようにしていたので(笑)。
大塚 なぬ? 要するに練習での最速タイムも上回ろうと?
God そうです! 福岡大会を制したシャクレが持っているタイムが最速だと聞いたので、「よし! それを超えよう!」って。
大塚 んなことやってたのか!
Mizunoe まだまだラギアのタイムは縮められるってわかっていましたからね。僕らが出た東京大会は一発目の会場だったし、安全策をとれば大丈夫だと思ったうえでの戦略でしたから。
大塚 なるほど……。落ち着いたもんだなあ。じゃあ決勝大会のことを聞きますが、練習時間はとれたの?
God 土日は全部練習に充てることができましたね。
Mizunoe 平日も、夜中に2時間くらいはやれたのかな。それに決勝のクエストが発表されるまえから、God君がJack君(捨てられた狩人の反撃のメンバー。Effort Cristalでのゴッディの相棒)やヒロ君(はらペッコのメンバー。ゴッディの幼馴染み)と立ち回りを詰めててくれたんです。なので決勝の闘技王の大連続狩猟での立ち回りは、ほぼGod君の発案ですね。
大塚 おお……。そこで茨城パワーを発揮していたのかゴッディ!(※角満注:ゴッディ、ジャッ君、はらペッコのヒロ君、ハルス君の幼馴染み4人組を指して“最強茨城カルテット”という)
God あはは。そうですね(笑)。
大塚 ロックラックに4人で集まって、決勝大会の相談とかしていたの?
God いや、ロックラックに集まっていたときははらペッコのラギア討伐の手伝いをしていたんです(※角満注:はらペッコは決勝大会当日の最終予選に参加したのだ)。決勝大会の立ち回りを考えるときは、僕の家に集まっていましたね。
大塚 へぇ〜! それは、画面分割で?
God そうです。決勝で使われそうなクエストを予想して。闘技王の大連続狩猟は絶対に使われると思ったので、わりと早くから立ち回りを考えていました。
大塚 おお……。闘技王の大連続狩猟のほかには、何がくると思ってた?
God 1回戦はロアルドロスかな、って思いましたね。でも準決勝のウラガンキンは、まったくの想定外でした。
Mizunoe そうそう。ガンキンはないと思っていたよねー。
大塚 あ、そうなんだ。
God ラギアクルス×チャナガブルか、レウス×レイアのクエストだと予想していて……。
大塚 予想が当たったのは、ロアルドロスと大連続狩猟、と……。
God 当たったというより、モンカフェ軍団に決勝で使われそうなクエストと、その理由を聞いたのが大きかったんです。
Mizunoe ああ、そうだったねー。
God 東京地区代表のクック捜索隊とか兄弟チームで決勝に残って、オフラインの画面分割だけで練習しているって言ってたじゃないですか? そういうチームもキチンと練習できる環境じゃないと不公平になるので、オフラインにもあるクエストが選ばれる……って聞いたんです。ああ、そのとおりだなって。
大塚 うんうん。まあ、そう考えるよなあ。……東京地区大会が終わってからの2ヵ月間は、練習漬けだったの?
Mizunoe いえ、わりとふつうに『3(トライ)』を楽しんでいましたよ(笑)。
God ですねー。まったく関係ないタイムアタックをしたりとか。
大塚 ああ! やってたよな、キミら! ×××のタイムアタック!
God あ、知ってたんですか(笑)。
大塚 すげえ面子が4人集まって出かけてるのを見て、「あのコら、何やってんの?」って聞いたら、「×××のタイムアタックやってるんです」って教えられて……。俺、そんなモンスター知らねえし!! って思ったわ(苦笑)。でも、そうやって遊んでいたのを見ると、けっこう平常心だったんじゃないかと思えるけど。
Mizunoe いやいや、平常心ではなかったですよー。
大塚 決勝大会の2日まえにロックラックでMizunoe君に会ったとき、「どうせキミは緊張とかしてないんでしょ?」って聞いたら、「緊張してますよー!」って言ってたもんね。
Mizunoe はい……。ていうか、そりゃそうですよ(苦笑)。
大塚 “神”と言われるゴッディと、“天才”と言われるMizunoe君が組んだことで、さんざん「反則!w」とか言われてたじゃん? そういう部分でのプレッシャーはあった? 優勝が義務、みたいな。
Mizunoe 正直、ありました。……いままで言わなかったですけど、ありましたね。
大塚 ゴッディは?
God ありましたね、それは。
江野本 Jackさんを捨ててMizunoeさんと組んだのに、優勝できなかったら首絞められるよ!
大塚 また追い討ちをかけるようなことを(苦笑)。
God でもホント、優勝できなかったらJackに殺されましたよ(笑)。
江野本 あっしも加勢したよ!!
Mizunoe でも、Jack君もキチンと決勝に残ってきて、すごかったですね。
江野本 うん、ホントによくがんばったよね!
God すごくうれしかったですよ。名古屋大会を連覇してくれたので(※角満注:昨年の名古屋大会、ゴッディとジャッ君はEffort Cristalの名で名古屋大会を制覇。そのときに見せたのが、伝説の“シンクロプレイ”なのだ)。
大塚 そのジャッ君のチームは、決勝で強力なライバルになるんじゃないかと思った?
God それが、Jackの相方のワクワクさんが高校3年生でちょうどテスト期間とバッティングしていて、しかも風邪をひいて体調が悪く、あまり練習ができていなかったんですよねぇ……(苦笑)。
大塚 あらあら……。じゃあ、どのチームがライバルになると思っていた?
Mizunoe やっぱりモンカフェ勢ですね(※角満注:決勝大会に残ったRaget、ラージャンどこ行ったの?、華塾、こえび、L.O.L、TEAM LEGENDは同じグループ)。
God 1回戦のロアルドロスの最速タイムは、彼らのほうが速かったんです。なので、すごく焦っていました。1回戦を勝ち抜けたのは、運が大きいですね。
大塚 ロアルドロスの討伐が終わったあと、ゴッディもMizunoe君も「あちゃー」って感じだったよね。
江野本 「微妙」って言ってたね。
Mizunoe あのグループ(1回戦は4チームを4組に分けてタイムアタックが行われた)の中では1位だと思ったんですけど、タイムを見たら1分33秒だったので「えー!!」って……。1分20秒台じゃないと抜けるのは無理だと思っていたんです。
God うん、絶対に負けると思っていました。1分20秒台で安定しているチームがたくさんあったので。それが、終わってみたら20秒台が1チームもなかったので驚いたんです。これが、大会のプレッシャーなんですかね?
大塚 魔物が棲んでいるんだろうね。ちなみにartiesのロアルドロス討伐の平均タイムは?
Mizunoe だいたい1分30秒くらいですね。30をちょっと切るくらいかな?
God 決勝の前日に10回やったときの平均が、1分29秒ちょっとでしたね。
大塚 ああ、そうなんだ。
God なのでほぼ平均くらいのタイムが出たんですけど、ショックでしたね。
大塚 ああ、そういえばさっきこんぺい君(Jast25`sのひとり)と話したら、1回戦が終わったあとにゴッディが控え室でダークサイドに堕ちていた……って言ってたよ(笑)。
God はい、そりゃあすごかったです……。だって通過したってわかったとき、泣きましたもん(苦笑)。
Mizunoe 1回戦さえ通れば、って思っていましたからねぇ。
大塚 狭き門だし、ほかのチームが自分たちよりも速いタイムを出していたってんだから、そりゃあプレッシャーはすごいだろうなぁ……。
God それと、1回戦1組目ってのもショックだったんです。
大塚 あ、そうなの?
God たとえばこれが4組目だったら、ほかのチームが速いタイムを出していそうだったら勝負に出られるじゃないですか。逆に遅そうだったら安全策にもいけるし。1組目って、何もわからない中でやらなきゃなので難しかったです。
大塚 なるほど……。いろいろあるんだなぁ(感心)。で、けっきょく緊張はしてたの?
Mizunoe してましたよ!(笑)
God ひどかったです……。でも今回は、決勝の大連続狩猟をやっているときに会場からの声が聞こえましたよ(笑)。ベリオロスを爆弾で落としたときの歓声とか(※角満注:昨年の名古屋大会でシンクロプレイを披露したとき、会場から大歓声が起こったのだがゴッディは緊張のためまったく聞こえていなかった。拙著『本日もニャンと! 逆鱗日和』に詳しい)。
江野本 あはは! じゃあ去年よりは緊張してなかったんだねー。
God そうなりますね(笑)。とくに大連続は、ほぼ緊張せずに済みました。
Mizunoe 決勝の相手のL.O.Lが、大連続はほとんど練習できていないって言ってたので、その安心感みたいなものもありました。「ふつうに立ち回れれば大丈夫」って思えたので。
God いつもどおり、でしたもんね。少しミスしたところも、いつもどおり(笑)
大塚江野本 あはははは!

片手剣がメインのダメージソース

大塚 でも、決勝大会に残ったほかのチームにも話を聞いたけど、みんな驚いていたよ。artiesのウラガンキンと大連続狩猟の立ち回りを見て。Jast25`sのふたりなんて、感動すら覚えていたもん。
Mizunoe あははは。そうなんですかー。ウラガンキンも?
大塚 うん。「自分たちも同じような戦略なんだけど、artiesのふたりはさらに細かく突き詰めていて、ずっと先を行っている」って。
God ガンキンは、NAMAZONE(今回の全国3位チーム)から「怒ると攻撃が通りにくくなる」っていう情報をもらって、立ち回りを考えたんです。
Mizunoe 怒らせないように、最初から最後までウラガンキンを固め続けて立ち回るんです。……まあ今回は怒らせちゃいましたけどね。
大塚 へぇ〜!
Mizunoe ウラガンキンのときは、太刀が固め役に徹して片手剣がメインのダメージソースになるんです。
大塚 あ、そうなんだ!
Mizunoe 腹があいつの弱点なんですけど、そこに片手剣と太刀って共存できないんですよね。なのでメインの片手剣が腹の下に陣取って。
大塚 で、ほぼミスなく立ち回れたと。
Mizunoe いや、最初の麻痺投げナイフの受け渡しでミスしているんです。もらったはずが受け取れていなくて、何秒か止まっちゃったんです。そしたら、咆哮もされて……。
大塚 ステージ上では、じつは焦っていたと。
Mizunoe 「ヤバい!」って思いましたよ。麻痺投げナイフをもらっているつもりでアイテムウインドを動かしたらこんがり肉になってて。アレ!? って。
江野本 食べちゃわなくてよかったね♪
Mizunoe ホントに……。
大塚 そういう、予期せぬ出来事が起こっていたんだね。
Mizunoe 完全に予定外ですね。まあ、戦局を大きく左右するようなミスではなかったのでよかったんですけど。
大塚 ウラガンキンの討伐タイム、2分53秒というのは、ふたりにとってはどうなの?
God 昨日、5回練習したときの平均が2分47秒だったので、それよりは少し遅いかな……ってところですね。でも、ほぼ練習どおりのタイムなのでよかったです。もしも怒らせなかったら、2分30秒くらいだったと思います。
大塚 うへえ!? すげえな!
Mizunoe でも、あの立ち回りになるまではけっこう揉めた……というか、意見がぶつかったんです。太刀のダメージを重要視するのか、片手のダメージだけでがんばるのか、という部分で。
God 僕は最初、太刀の攻撃参加を主張したんです。でも太刀でのダメージを計算してみるとじつに悲しい結果に……。
Mizunoe なので麻痺役に徹してもらったんです(※角満注:このクエストでの立ち回り、俺などでは到底解説できないので、改めてMizunoe君に具体的な立ち回り方法を教えてもらいました。詳しくは、この記事の最後に)。
God 麻痺するまで砥石は使わない、という取り決めで。
江野本 太刀の斬れ味ゲージ、真っ赤になってたもんね!
God はい。砥石を2回使わないと斬れ味がマックスにならないくらい、斬りまくっていました。
大塚 でもこのふたりだと、メインで作戦を考えるのはどちらになるの?
God ガンキンは半々……ってところですね。
Mizunoe 大連続はGod君ですし。
God 種目によりますね、やっぱり。
大塚 1回戦のロアルドロスは?
Mizunoe あれは……どうだったろうね? 最初は大剣・大剣だったんだよね。
God そうですね。すっごく変わったんですよ、ロアルドロスの立ち回りは。前日にもいじったんじゃないかな。……まあ結果的にはもとに戻したんですけど。
Mizunoe 選択肢は大剣かハンマーしかないんですけど、最初のころは大剣・ハンマーの組み合わせでどう立ち回るのかが想像できなかったんです。でもそのころ、NAMAZONEと協力しながら作戦を詰めていて、徐々に「こうやったらロアルの動きを固められる」っていう部分が見えてきたんですね。そうなると、気絶を狙いやすいハンマーがあったほうが安定するね、ってことになって。
大塚 へぇ〜! でも、興味があったんだよね、このふたりの力関係。ふたりとも作戦立案ができるし、そのうえプレイの実力も拮抗しているので。
Mizunoe ぜんぜん拮抗していないですよ! どう考えたって、そっち(ゴッディ)に不等号がでっかい口を開けているじゃないですか(苦笑)。
大塚 またまたぁ〜。天才のクセにぃ(ニヤリ)。
God 作戦を考えているとき、だいたい自分が「これでいいんじゃないですか?」って言うんですけど、Tさん(Mizunoe君のこと)は必ず「まだいけるんじゃないか」って突っ込んでくるんです。そこからけっこう、立ち回りが変わるんですよね。「このへんがもったいない」っていう部分が見えてきて、そこをちょっと変えただけでタイムが安定したり。そういうところは、大きいですね。
大塚 そのへんが、Effort Cristalとは違うんだね。
God はい。Jackは完全に従うタイプですから(笑)。
江野本 従わせているのは誰よ!(笑)
God なので作戦でミスっていたら、Effort Cristalは終わりなんです(苦笑)。

大剣をハンマーとして使う男

大塚 決勝の大連続狩猟は、自信があったみたいだね。
Mizunoe 相手が練習できていないっていう時点で、いけるかなとは思いました。
大塚 でも、決勝で使われたクエストって俺らまったくやれてないので、どういう展開になるのかわからなかったのね。なのでランス・ランスで挑んだL.O.Lがさきに1頭目のボルボロスを討伐したとき、「おお!?」って思ったんだよな。
God あれは、計算どおりなんです。そうなるのはわかっていたので。
大塚 そうなんだってねー。決勝大会に残ったほかのチームもそう言ってたよ。
God ボルボロスが相手のときは、ランス・ランスに勝てるわけがないですから。
Mizunoe なので大剣を持ったGod君は、閃光玉を取りに行ったり、シビレ罠を設置したりとサポートに徹していたんです。
大塚 予想したとおりの展開だったのか……。じゃあ焦る場面もほとんどなく?
Mizunoe うん、基本的には。
God Tさんがシビレ罠を作っているときに邪魔しちゃったときは焦りましたよ!
Mizunoe あー。あれ、シビレ罠で完全に失敗していたら、ヤバかったかな?
God 30秒以上は遅くなったと思いますよ。でも、「ヤバい! シビレ罠が間に合わない!」って思いながらも強引に頭を攻撃をしたら偶然レウスがひるんでくれて、なんとかなってくれたんですよね。助かりました。
大塚 ゴッディが持ってたの、大剣じゃなくてハンマーに見えたよ……。抜刀攻撃で気絶とったりとか……。
God あはは。確かに、ハンマーですね、あの使いかたは。
大塚 さっき、ジャッ君やヒロ君に「大剣って、あんなふうに使えるんだね」って言ったら、「あんなことできるの、Godだけですよ!」って(笑)。
God できますよ。精度さえ上がれば。
大塚江野本 その精度が上がらないっつーの!!
God 最初のころは、失敗しまくりだったんです。「外した!!」ばっかりで。
Mizunoe そうだったね(笑)。
God ベリオロスはとくに、毎回必ず1回はスカしていたんです。でも決勝ではそれがなく、全部攻撃を当てられたのでよかったですよ。
Mizunoe 暴れられると本当に長引いちゃうんですよ、ベリオロスは。ここを手早く乗り越えられると、すごく気が楽になるんですけどね。
God ホントにそうですね。
大塚 決勝は“手早く”片付けられたほう?
God それに近い、ですね。
Mizunoe ただ、気絶状態になっちゃったからね(苦笑)。攻撃を2回食らって。
God そうだ。生命の粉塵を飲んでくれてありがとうございました(笑)。
Mizunoe あのとき、たまたま狙われたのが僕だったからよかったんですけど、God君のほうにいってたら1オチしてましたよ。
God 確実にそうですね。
大塚 へぇ〜。こう聞くと、けっこう危うい場面もあったんだなあ。

のんびりと、タイムアタックします(笑)

大塚 それにしても、ついにゴッディが優勝したかー。
God そうですねー! やっとです。3年目にしてついに、優勝できました。2007年が4位で2008年が2位。でも、まだ3位がないんですよね。……って、3位じゃ満足できないんですけど(笑)。
大塚 でも、God&Mizunoeコンビは、今回だけなんでしょう?
God そう……ですね。
Mizunoe うーん、どうだろう。
God わからないですか?(笑)
Mizunoe まあ、そのとき考えます(ニヤリ)。
大塚 すげえMizunoe君っぽいなー、それ(笑)。
Mizunoe そもそも、今回僕らがコンビを組んだのも、勘違いが始まりですからね。
God そうそう。
Mizunoe フェスタとは関係ない、狩り仲間が開くタイムアタック大会があったんです。それに出場するときに組んでほしい、って言ってるのかと思って軽く「ああ、いいよ!」って応じたんですよ(笑)。
江野本 そんな単純な勘違いだったのー!?
Mizunoe じつはそうなんです(笑)。そうしたら、じつは『3(トライ)』を使って開かれるモンハンフェスタ`09での相棒だった、というオチで。
God すっごく早くオーケーの返事をもらったんですよ。で、「よかったー!」って喜んでいたら……(笑)。
Mizunoe 「ええ!? 『3(トライ)』ってどういうこと!?」って。すぐにJack君に電話して「いいの!?」って聞いたら、「いいですよー」と(笑)。
大塚 あははは! そんな流れだったのかー! でも、楽しかったかい? 今回のモンハンフェスタは。
Mizunoe 疲れましたね、やっぱり(笑)。
God そうですねー。長かったですから。
大塚 でもフェスタが終わっても、タイムアタックはやるんでしょ?(ニヤリ)
God はい、やりますね(にっこり)。
Mizunoe 『3(トライ)』でタイムアタックをして、たまーに『2nd G』にも戻ってタイムアタックをして……っていう感じになりそうですね。
大塚 ちょっとはのんびりと、ふつうの狩りもするんでしょう?
Mizunoe のんびりと……どうだろう。たぶん、のんびりとタイムアタックやっていると思います(笑)。
一同 (爆笑)

◆artiesのウラガンキン討伐の立ち回り◆

本文中にあるとおり俺ではまったく解説できないので、インタビューの翌日にMizunoe君にメールし、準決勝のウラガンキン討伐の解説をしてもらった。それによるとウラガンキンは怒らせないことが重要で、そのために間断なく麻痺→罠→気絶をくり返すことが理想なのだという。具体的に書くと、まず麻痺投げナイフで麻痺にし、それが終わったら太刀(ゴッディ)が落とし穴に落とす。つぎは片手剣(Mizunoe君)で気絶(!)を取り、そのあとに片手剣がシビレ罠を設置。そして最後に太刀の麻痺属性で麻痺を奪う……。この麻痺が終わった時点でタイムは2分ちょうどくらい。固めているあいだに2回、片手剣の毒属性で毒状態になり、爆弾も使用する。この流れに乗せることができれば「2回目の麻痺は運なんですけど、うまく発動すれば2分前半でまとめることができます」(Mizunoe)とのこと。もちろん、リスクヘッジもしっかりと考えられていて、シビレ罠が終わった時点で麻痺の蓄積が少なかったら閃光玉で固めてから麻痺蓄積を行い、気絶までに十分な麻痺蓄積がされていたらシビレ罠は麻痺のあとに仕掛けるそうだ。

 ……と、猛烈にマニアックなことを書かせてもらったが、もちろん作戦だけあってもいいタイムなど出るわけもない。立ち回るうえで片手剣が徹底的に弱点である腹を攻撃し、太刀は片手剣に干渉しないところに陣取る……といった動きが必要になる。……これを安定して行うことが、いちばん難しいんだけどな!!

投稿者 大塚角満 : 19:13

【MH3】第64回 イビルジョーの悪しき足音

 上位になったとたん、怖い目に遭いました。

 あまりにも怖かったので、詳しい記述は避けさせていただきます。詳細に書きすぎるあのときの恐怖がフラッシュバックして、年甲斐もなくお漏らししちゃいそうだからです。なので今日の記事は非常に短くなると思われます。

 上位になったその日、俺はモンハンフェスタ`09札幌大会の取材に備えて札幌市のホテルにいた。翌日は早くから取材に出なければならなかったが、念願の上位ハンターになれたことがうれしくてうれしくて、俺はまわりにいた友だち連中に「上位のクエスト行こうよ!! 上位上位!!」とわめきまくっていたのである。

 で、女子大生ハンターのKちゃん、『みんGOLオンライン』時代からのネット友だちであるHさんと3人でなんかのクエストに行ったのよ!! 恐怖のあまりどのクエストに出向いたときの出来事だったのかは記憶が封印されてしまって覚えていないのだが、場所は確か、砂原だったと思う。

 上位とは言っても、そのクエスト自体の難易度はそれほど高くなかったと記憶している。俺が行けるクエストはまだ★4までなので、選択肢も多くはないんだけどね。そんなクエストに、ハンターランク100近いKちゃんとHさんが入っているわけだから、ぶっちゃけ俺なんていてもいなくても同じようなもの。そこで俺は餓鬼のように目を血走らせて、「新しい素材くれえええ〜>< 新素材ぃぃぃ〜><」とブツブツとつぶやきながらフィールドをフラフラと彷徨っていた。上位に上がりたてのハンターからみたら採掘場所も採取場所も宝の山みたいなもので、俺は頭の上に採集アイコンが出る場所は片っ端から調べ、初めて見る未知の素材を集めまくった。

 採集で大満足した俺は、「んじゃ、ぼちぼち運動でもするか」ってな感じのゆるーい気持ちで、Kちゃん、Hさんのいるエリア4へとやってきた。ハンターとは傲慢なもので、どんなにショボい装備であろうとも上位に上がった瞬間に「俺、ベテラン。俺、強い」と思ってしまうからタマラナイ。武器の斬れ味はまだまだ悪く、防具の総防御力も100程度だというのに、すべての上位モンスターと対等に渡り合えると錯覚してしまうのである。それが、思わぬ大事故につながるとも考えずに……。

 上位モンスターの攻撃を1発食らうたびに回復薬グレートを飲むという、古いアメ車かロケットかと思えるくらい燃費の悪い立ち回りを続けていたとき、なんとなく狩場に、不穏な空気が流れた。まだそっちを見ていないのに、ザワザワと首筋の産毛が逆立つような恐怖の予感……。な、なにかが後ろにいる……。ふ、振り向いて確認したいけど、俺の深層心理が「絶対に振り向いちゃダメ!!」とマックスの危険信号を送ってきている。『モンハン』をプレイし続けた5年間、かつて一度も感じたことがなかった“圧倒的な終末の予感”が俺の五体を貫いた。や、やばい。逃げなきゃ! KちゃんとHさんも俺と同じタイミングで“招かれざるもの”の存在に気がついたらしく、狩場にふたりの悲鳴が轟く。

きたーーーー!!!ww ヒデ君、逃げて逃げてーーー!!!」

「でたーーーー!!!ww ミドさんあぶなーい!!! 近寄っちゃダメーー!!

 そしてその瞬間、狩場を流れる音楽の雰囲気がガラリと変わった。勇壮でもなく、迫力に満ちているわけでもないのに、ひたすら“恐怖”を喚起させる秀逸なBGM……。この曲に副題があったとしたら、それは間違いなく“破滅”であろう。

 しかし、このままビビって一瞥もしないで逃げ出したとあっては上位ハンターの名が廃る。これ以上ないってくらい好奇心も湧き上がってきていたので、俺は思い切って振り向いてみることにした。なあに、いくら後ろにいるヤツが恐ろしいとは言っても、とって食われるようなことにはなるまいて。

 意を決して、俺は振り向いた。そしてそこにいた“存在”を見て即座に、「この世には絶対に近寄ってはいけないものが確実に存在する」という、大塚家に代々伝わる教えを鮮明に思い出した。子供のころ、父や母に「あそこにだけは何があっても近づいちゃダメよ、ヒデちゃん」ときびしく言われていた場所に、好奇心に負けて入ってしまったときと同じような恐怖……。名も知らぬこのモンスターが発散する絶望のエネルギーをモロに浴びて、俺の心は完全に恐慌を来たした。その恐ろしさは俺のリミッターを簡単に振り切り、「……見た目は怖いけど、じつはなんとかなるんじゃね?w」と気持ちを逆転させるほどに……(苦笑)。

 ホラ、こういうことってよくあるでしょう。前出の「行ってはいけない場所」と聞いたら即座に「行ってみたい!!」と思うし、「そこは触っちゃダメよ。うっふん♪」と言われたら瞬時に「触る触る!!」となるし……。あ、この例えはアレですよ。砦の決戦場でまだラオシャンロンが来ていないのに撃龍槍のボタンに気づき、「まだ触んなよ!」と言われたおかげで「触りたい触りたい!!」となってしまう……という意味だからね。……って、なんで言い訳しているんだ俺は。

 まあそういう心の動きもあったし、ハンターとしての本能が「初見のモンスターには触っておけ!」と告げてもいたので、俺はこの名も知らぬ巨大なモンスターに攻撃を加えてみることにした。討伐できると思っていたわけではないが、なんとなく「俺のこと、覚えておけよ」と楔を打っておきたかったのかもしれない。

 自慢のスラッシュアックスを背に、招かれざる存在に接近する俺。体力は満タンの150だ。ウラガンキンの怒りアゴアタックをモロに食らってもビクともしないくらい、生命力に満ち溢れている数字である。そんな、生きる希望に満ち満ちている俺の身体に、このモンスターの脚が「コツン」と触れた。狩場に来れば日常茶飯事な、本当に何気ない接触である。ところが……!

 ギュイイイイイイイイイイン!!!!!

 って、昨日の日記でも同じような表現をしたが、そんなもんとは比較にならない勢いで我が分身の体力が激減した。いや、激減なんてもんじゃない。こんな日本語は存在しないが、あえて書くなら“爆減”ってくらいの力強さ(?)で、さっきまで満タンだった体力が半分以下になってしまったのだ。ちょっと……。なんなのコイツ……。やっぱりこの世には、近寄っちゃいけないものが存在したんだ!!!

「ひぃぃぃぃ!! めっちゃ減ったよぉぉおおお!!」

 俺の悲鳴を聞いて、KちゃんとHさんが立て続けに生命の粉塵を飲んでくれた。これで再び俺の体力は満タンになったが、今度はこのモンスターのアゴによる攻撃がモロに当たって、なんとそれだけで体力が1ミリになってしまう。ダ、ダメだ……。本気で話にならねえ……。俺は逃げ惑いながらふたりに「ホントに無理!! 逃げる!! クエストクリアーしちゃおう!!」とチャットで絶叫。KちゃんとHさんも「了解www」、「それが懸命www」と応じ、我々は夜逃げをするようにクエストの目的だけ達成してロックラックに帰還した−−。

 そして、いま。

 あの忌まわしき存在との距離はまったく縮まっておらず、逆に遭うたびに恐怖が上乗せされてしまいフィールドに出向くのが怖くなりつつある。でも、上位の世界で生きていく以上、あの恐るべきモンスターとの生存競争は避けて通れない。どうやらヤツと渡り合うことが、『3(トライ)』での大きなテーマのひとつになりそうだ。

 ……って、けっきょく長い記事になった(苦笑)。

投稿者 大塚角満 : 16:47

【MH3】第63回 幻ガンキンを捕まえろ!

 まえまえから気になっていたイベントクエストがあった。そのクエストの名は“幻のウラガンキン”。ハンターランク18から行くことができる、まあ下位のクエストである。

 なぜこのクエストが気になるのか? 秘密はそのクエスト名そのものにある。

 このクエストの冠についている“幻の”を見て、ベテランハンターの皆さんはおしなべて「まさか……」と思い、そのうえで「……ま、そんなわけねえよな^^;」と思い込もうとしたに違いない。この俺もベテランハンターのハシクレなので“幻の”を見た瞬間に「ま、まさか」と思ったクチだ。

「あ、あのクエストはトリを思わせるイャンクックだから小鳥が出てきてアレしてソレだから、巨体もいいところのウラガンキンがそんなことになってちょこまかと動いてギャゴーと鳴かれてもアノソノ……」

 “幻のウラガンキン”というクエスト名を見ただけだというのに、俺は混乱の極みに陥った。ウラガンキンのことばかり考えすぎたおかげで、隣に座っている若手記者のキモ次郎が黄色いTシャツを着てきたときなんか、コヤツがウラガンキンに見えてしかたがなかった。痩せこけているし、アゴーンでもない男なのにこの有様だ。

(理不尽な仕事を押し付けまくっているとそのうちコイツはブチ切れて、ぐがああとか言いながら机にアゴをぶつけ始めるのではあるまいか……)

 そんな妄想にまで囚われてしまったのである。

 こいつはいかん。末期症状一歩手前だ。俺はみずからを救うべく“幻のウラガンキン調査部隊”を結成。件のウラガンキンが棲んでいるらしい火山に、調査・研究の旅に出かけることにした。メンバーは調査主任の俺、女性隊員の江野本ぎずも、そして万が一隊員の身に危険が迫ってきたときのために、武闘派の研究員であるEffort Cristal改め捨てられた狩人の反撃のジャッ君と、はらぺっこのヒロ君にボディーガードとして着いてきてもらうことにした。俺はボディーガードのふたりに「我々の身に危険が迫らなくとも、ターゲットを発見次第、火急速やかに攻撃を加えるように!」と厳命。「ペイントボールを当てられるかなぁ……w」、「捕獲用麻酔玉を当てるのも難しいよなぁ……ww」と笑い含みで話すふたりを不思議に思っているうちに、俺たちは火山に到着した。

 ベースキャンプに到着するやいなや、ジャッ君とヒロ君は猛スピードで走り出した。本当にこやつらは、狩場のスプリンターと呼びたくなるくらい足が速い。動きにまったく無駄がなくて、たとえばクーラードリンクを飲むときもお互いを蹴飛ばしてガッツポーズのモーションをキャンセルし、時間のロスをなくそうとするのである。たまに俺はこのことを忘れていて、クーラードリンクを飲んだ瞬間にジャッ君に蹴飛ばされ、「コンニャロ!! 蹴っ飛ばしたな!」と気色ばんで蹴り返したりしてしまう。でもすぐに「あ……。モーションキャンセルの蹴りか……」と思い出してひとりテレビの前でリアル赤面……。って、俺はなんでまたこんな関係のない話を書いているのだ。

 ふたりに遅れること数分、俺と江野本も狩場に到着した。と言っても、そこが狩場だと思った理由はジャッ君がスラッシュアックスを、ヒロ君がハンマーを持って暴れていたからであって、そこに何がいるのかしばらく俺はわからなかった。ん……? ふたりは何を相手に暴れているんだ……? 薄暗い火山の只中でじっと目をこらす。それでも、よくわからない。ま、まさか幻のウラガンキンとは、オオナズチのように透明になるのか……? それだとまさに幻の冠にふさわしいが、オリジナルのウラガンキンとあまりにも性質がかけ離れてしまうのでこの線は考えにくいだろう。俺はちょっとイライラしながら、武器を構えるふたりに接近しようとした。

「おーい。何してんだー」

 そこで俺は、岩にぶつかりそうになった。歳を取ると、予期せぬところでやたらとモノにぶつかるようになるんです。火山はいたるところに岩が転がっているし、土も隆起しているので危なっかしくていかんよ……。それにこの岩、モゾモゾと動いているし。そりゃあぶつかってもしかたない……って、なんじゃこりゃああああ!! 黄色い岩が、ヨチヨチと歩いているんですけどーーーっ!!! 火山に、角満研究員の悲鳴が轟いた。

「なにコイツ!! どこにいるのか、マジでわからんかった!!」

 笑いながら、ジャッ君が応じた。

「それが、幻のウラガンキンですよwww」

 そう……。幻のウラガンキンの正体は“やたらと小さいウラガンキン”だったのである。これまでの『モンハン』シリーズでも“幻の怪鳥”といって小さなイャンクックが登場したことはあったが、いやまさか、あのいかついウラガンキンがこんな姿になるとは……。『3(トライ)』に出てくるモンスターの中でも、ゴツさ、男臭さという点では並ぶものがないくらい存在感があるウラガンキン。それがいまや、一坪タイプの風呂釜くらいの大きさになってしまっているのである(わかりにくい例えだな……)。コレを見てしまった俺に残されていた道は、ただただ叫ぶことだけだった。

「ラブリーーーーーっ!!!」

 と。

 いやしかし、こいつは本当にかわいいよ。見た目は小さいけど一応ウラガンキンなので、キーキー鳴きながらガンガンガン……っていうかカンカンカンとアゴで地面を叩くのよ。こいつう♪ 生意気なことしちゃってからにコノコノ……。俺はふだん、ウニャウニャと暴れるネコを見るとついつい抱きしめたくなってしまう性分なので、この幻のウラガンキンにもホントに危機感なく接近していった。ビチビチと暴れるこのコを、モガの村にいるプーギーと同じようにやさしく抱っこしてやりたい。そんなことを思ったのだ。さあさあ、おいでおいで……。抱っこしてあげるよ……。すると都合がいいことにミニウラガンキンは身体を丸め、例のローリングアタックをしながら俺に接近してきた。その姿は完全に、学校の校庭を転がる古タイヤである。通常のウラガンキンのローリングアタックは火山の地獄車と表現したくなる恐るべき攻撃だが、ミニウラガンキンが敢行するとかわいくてしかたがない。そんな古タイヤアタックが、我が分身にコツンと接触した。すると……。

 ギュイイイイイイイイン!!!

 猛烈な勢いで減少する俺の体力……。こ、こいつ、見た目が小さいだけで攻撃力はデカいウラガンキンと変わらねえのかよ!!! か、考えてみたらミニイャンクックも攻撃力はそのまんまだったよな……。なんて学習能力がないんだ俺……。

 それからは心を入れ替えて、「見た目はかわいいけど、この子はデカいウラガンキンと同じなんだ!」と思うことにし、攻撃に専念した。ところが、あまりにも的が小さいために4人のハンターの攻撃が干渉しまくって攻めづらいったらありゃしない。それでもなんとか部位破壊に成功。こんなちっこいのにまさか尻尾が斬れるとは思わず、切断した瞬間にジャッ君が「うわ。斬れた!」と驚いていたことには笑っちゃったけどねw

 しばらく攻撃を続けると、ミニウラガンキンは脚を引きずり始めた。やった!! もうちょっとで討伐できるぞ!! 歓喜に沸く4人のハンター。しかしそこで、我々の攻撃の手はピタリと止まってしまった。傷ついた身体を抱え込むようにして歩くミニウラガンキンの姿が、あまりにも痛々しかったのである。

「……なんか、おじいちゃんが怪我してるみたいだな……」と俺。

「うん……。いたたまれなくて攻撃できない……」と江野本。

 すると、そんな感傷的な雰囲気を察して、ジャッ君がミニウラガンキンの前に回りこんで落とし穴を設置した。そう、これ以上傷つけずに静かに捕獲してやろうというやさしい配慮である。落とし穴に吸い寄せられるようにピコピコと歩を進める小さな生き物。しかし……。

「あ。コースがズレてるww」

 とジャッ君。見ると彼の言うとおり、ミニウラガンキンは落とし穴の端を悠然と通過してしまったではないか。エフォクリのJackともあろう男が、なんていうケアレスミスだ。俺は言った。

「ちょっとじゃっくー。何外してんだよー。しかたない。俺が手本を見せてやる」

 言うが早いか、俺はミニウラガンキンが歩くルートを想定して落とし穴を作成した。そしてアイテムカーソルには捕獲用麻酔玉をセット。あとは落ちるのを待つばかりである。ところが……。

「あ、あれ? コースがズレてる……ww」

 なんとミニウラガンキンは俺が作った落とし穴も一顧だにせず、ズリズリとその上を通過してしまったではないか!! 相変わらず脚は引きずったままだが、なかなか狡猾な野郎である。

「wwwwww」

 とジャッ君。ちくしょう……。俺のメンツが丸潰れじゃねえか……。

 すると今度は、ヒロ君が動いた。心やさしい彼はジャッ君と俺の失敗をフォローしようと、同じエリアに手早くシビレ罠を作ってくれたのだ。と、ところが……。

「ああああ……。コ、コースがズレてる……www」

 これ、冗談ではなく本当の話なのだが、俺たちは3つも続けて罠に失敗してしまったのだ。あまりにもミニウラガンキンの身体が小さいがために罠にかかるポイントがわからず、スルスルと避けられてしまったわけですねえ。

 けっきょくこのときは、「最後の砦!」とばかりに江野本が作ったシビレ罠にようやく捕らえることができ、クエストは成功に終わる。しかし的が小さいがゆえに捕獲用麻酔玉をなかなか当てることができず、俺は4球ほどビーンボールを投げて貴重な捕獲用麻酔玉を無駄にしてしまったけどね……。

 それにしても、そこらじゅうに仕掛けられた罠などまったく気にせず、無人の野をゆくように悠然と歩むミニウラガンキンの姿は聖人を思わせるほど神々しかった。

「この小さなモンスターのまわりにある4つの罠が、彼の偉大さを物語っている……」

 眠るミニウラガンキンの姿を眺めながら、俺はそう、ひとりごちた。

投稿者 大塚角満 : 14:37

【MH3】第62回 上位になったときの顛末

 峯山龍ことジエン・モーランとの激闘を終え、俺と江野本は無事、上位ハンターとなった。……って、昨日までに書いた2本のジエン・モーラン関連のエッセイを読んでも、この巨大古龍を退けた記述はいっさい載っていないけどな!! なんとなく「このままでもいいかな」とも思うのだが、もうちょっとジエン・モーランがらみで書いてみる。

 俺と江野本が揃ってジエン・モーランの緊急クエストを行ったのは10月10日の夜である。そう、モンスターハンターフェスタ`09札幌地区大会の前日だ。

「ってことは、大塚角満は大会の当日に札幌入りしたってわけか。ムチャすんなあ」

 俺が書いた札幌地区大会リポートを読んでおられない方はこう思ったことだろう。でも真相はそうではなく、俺はわざわざ札幌まで自分のWii本体を持っていってホテルのネット回線に接続し、そこからロックラックに参上したんですねえ。「そこまでするか!!!」という呆れ声には「そこまでするんです!!!」と答えるしかありません。

 それにしても、札幌大会リポートにも書いたが、この日はハプニングが立て続けに起きてしまってまったく気が休まらなかったよ。最大の過ちは宿泊日を間違えてホテルを予約しちまっていたことで、それに気づいた瞬間からあちこちに電話をかけまくって右往左往……。3連休の初日の札幌ということもあっていくら調べても空いているホテルがなく、ようやく1泊15800円という分不相応なところを予約できるもそれはコンピュータの誤作動で予約できちまったものでホテル側から「じつは空き部屋などない」と神も仏もないものか的な電話がかかってきて愕然となる。でも、その誤作動ホテルのご好意で近くにある別のホテルに予約することができ、「やった! 一夜の宿を確保した!!」と喜んだのも束の間、今度はWiiを有線接続するアダプターを持っていなかったことを思い出す。もともとホテルにチェックインしてからのんびりと札幌見物をした足で買おうと思っていたのだが、ホテル騒動のおかげでそんな余裕はすっかりなくなってしまった。なので大きな荷物を抱えたまま札幌駅前の量販店に飛び込んで目当てのブツをゲット。いろいろと不幸が続いていたので「どうせ品切れなんだろ。けっ」と先行投資でやさぐれていたのだが、これは無事に手に入れることができました。よかったよかった。

 そして俺は、グルメン垂涎の美味しいモノ都市・札幌に身を置きながら迷わずコンビニに飛び込み、弁当、お菓子、おつまみ、酒、雑誌、マンガ等々を大量に買い込んだ。これからホテルの部屋に篭って、心置きなく『3(トライ)』に興じる計画なのである。「最後の地区大会の前日がソレかよ……。寂しいヤツ」と思うなかれ。確かに俺は、気の置けない仲間と居酒屋で酒を飲むことが大好きだが、こうやって引き篭もって好きなゲームと戯れる瞬間も、それはそれは好きなのである。要はそのときの心構えで、「今日はひたすら引き篭もる! 自分だけの城に篭城して徹底的に『3(トライ)』で遊ぶ!」と決め込んでいさえすれば、そのホテルがイケナイ大人の歓楽街のど真ん中に建っていようと、フラフラとあんな施設やこんな施設に吸い込まれる心配はないのです(何言ってんだ)。

 話が逸れた。

 ホテルの部屋に戻った俺は、快適な『3(トライ)』ライフを実現するためのセッティングを始めた。それなりの値段のホテルということもあってか、セミダブルのベッドの脇には快適なシングルソファーと丸テーブルが設えられており、置かれているテレビは26インチの液晶タイプ。しかも、かなり新しい。これならばチャットの文字も十分視認できるに違いない。ウキウキしながらWiiをテレビに接続し、買ってきたばかりの有線LAN用アダプターをくっつけてネットのセッティングをする。丸テーブルの上にはコンビニで買ってきた北海道の地ビールと、アーモンドやチーズといったおつまみ各種をズラリと並べて手前には持参した小型キーボードを置いた。ソファーの高さと丸テーブルの高さはジャストサイズで、じつにキーボードを引っ叩きやすいではないか。

 もう、完璧。
 
 自宅で遊ぶときよりも圧倒的に快適な“『3(トライ)』用コックピット”ができあがった。これならばジエン・モーランの背中にレウス・レイア夫妻が乗っかって現れても、余裕で討伐できるに違いない。

 そして俺は札幌のホテルからロックラックに出向き、江野本ぎずもと合流。ふたりしてロックラックの酒場で「だ〜れかこないかなぁ〜♪」と合唱しているところに女子大生ハンターのKちゃんが現れてくれたの見て、「よし! これでいける!」と意気込んで緊急クエスト“峯山龍ジエン・モーラン”を受注し、3人でのこのこと大砂漠へ向けて出発したのであった。

 ジエン・モーランと立ち回っているときにやったことは基本、ふたりのときも3人のときも変わらない。大きく違うのはKちゃんの圧倒的な攻撃力で、背中に飛び乗ったりしたときのジエン・モーランの嫌がり具合が、明らかに俺と江野本ふたりのときと違うのである(気のせいだけど)。いつしか巨大古龍の背中にはところどころに穴が空き(弱点があったらしい)、当然ながら牙も折れ、決戦ステージに着くころには前脚も部位破壊がされていた。気が減ったその姿は、ひと回り小さく見えたほどである(気のせいだけど)。

 こうして俺と江野本は無事に、ハンターランク31となった。いまやハンターランク100の人なんてザラにいるロックラックだけど、そういう人とも気後れせずにいっしょに遊べるのが『モンハン』シリーズのステキなところだ。これからものんびりマイペースで、末永くこの作品で遊び続けるぞ! ……これが上位ハンター・大塚角満の、所信表明演説ですw

投稿者 大塚角満 : 16:57

【MH3】第61回 ジエン・モーラン 〜キャッチ&リリース〜

 というわけで上位ハンターへの最終関門、緊急クエスト“峯山龍ジエン・モーラン”が俺と江野本ぎずもに出てしまった。ここでふつうだったら、「あんなに巨大な古龍を相手にするなら、ハンターは4人のフルメンバーのほうがいい」と思い、「救援部隊が来るまで酒場で待とう」となりそうなものだが、なぜか俺たちはふたり揃って「ま、俺たちだけでもどうにかなるダロ」と根拠のない自信に背中を押されて、ホイホイと危機感ゼロで大砂漠に出撃してしまったのである。このへん、テキトー極まりない逆鱗日和ファミリーの面目躍如といったところではあるまいか。

 それでも俺は、いつかやってくるジエン・モーランとの対決に備えて、密かに氷属性のランス“トゥースランス”を作成してあった。ジエン・モーランは氷属性か龍属性が効くとモンハンフェスタ`09名古屋大会で『3(トライ)』のメインプランナーである木下研人さんに聞き(ていうか、ステージで行われた開発者チャレンジクエストの相手がジエン・モーランだったのだ)、それ以来ヒマを見つけてはコソコソとモガの村に出向き、このランスの元となる素材を持つベリオロスの尻を追い回していたんですねえ。そうしてできたトゥースランスは剥き出しのベリオロスの牙そのもので、熱い砂漠にはピッタリの涼しげなたたずまいをしている。「このランスの試し斬りの相手がジエン・モーランか。その相手に、不足なし!!」とカッコつけて俺は言った。あたりめーだ。不足なわけないだろが。

 そして始まった俺の緊急クエスト“峯山龍ジエン・モーラン”。とりあえず撃龍船の船倉からデッキに出て、バリスタの弾を探る。江野本は船の後方に走っていって大砲の弾を胸に抱え、ボッカンバッカンと派手にぶっ放していた。その動きに迷いはなく、なかなかどうして、ジエン・モーランを相手にしたときの立ち回りに慣れているようである。聞くと江野本はこの間に何度かイベントクエストで配信されるジエン・モーラン撃退クエストに出かけていて、撃龍船でやることはひととおり把握しているのだという。おお。こいつは頼もしいではないか。トゥースランスを持った俺の武力と、経験に裏打ちされた江野本の頭脳があれば、やはりジエン・モーランは恐るるに足らずに違いない。

「いける!!」と俺はわめいた。

 そして実際、俺たちの立ち回りはなかなかにして見事だったんじゃないかなといまでも思う。ジエン・モーランが撃龍船に接近すればすぐさまその背中に飛び乗り、“動く鉱山”の異名のもととなった背中の採掘場所に取り付いてガンガンとピッケルを振るった。そのついでに、背中のウィークポイントをトゥースランスとスパイラルランス改(江野本の武器ね)の切っ先で突っつきまわす。そして大砂漠に落とされても動揺せずにすぐに撃龍船に戻り、タイミングを見計らって江野本が大銅鑼で怯ませ、バリスタ用拘束弾を撃って巨大古龍をがんじがらめにし、さらに撃龍槍も会心のタイミングでぶちかました。撃龍船に積まれた撃退用の兵器は、これですべてが有効活用された形となった。

「すげえなえのっち!! バッチリじゃん!!

 と、俺は心からの賛辞を相棒に贈った。大銅鑼もバリスタ用拘束弾も撃龍槍も、俺はまったく使いどころがわからなかった。江野本がいなければこのかっちょいい撃龍船も、石神井公園の池に浮かぶアベック用のボートと大差なかったに違いない。

「えへへ。何度か人がやっているのを見て、覚えていたんです♪」

 ちっこい江野本が、このときばかりは偉大に見えた。

 そして気がつくと我々は撃龍船から下船し、砂漠のど真ん中に放り出されていた。しばしボーゼンと、真っ白な砂の海の上で黙ってたたずむ。すると、同じように頭から「……」と三点リーダーを出していた江野本がこんなことを言った。

「……ここ、どこッスか?w

 俺よりもジエン・モーランのクエストを熟知している江野本が知らないのだ。かつて1回しかやったことがなく、それも一瞬で終わってしまった俺が知るはずもない。江野本に向かって、俺は言った。

「俺が知ってるわけないだろが。いやあしかし、こいつはどうしたもん……って、うわあああ!!」

 言い終わらぬうちに、茫漠とした大砂漠に情けない男の悲鳴が轟いた。ふとカメラを回してみたら、ズンガズンガと大きな山がこちらに向かって歩いて来る姿が目に飛び込んできてしまったのである。どうやらここは、ジエン・モーランと最終決着をつける決戦ステージのようだ。見ると彼方に、先ほどまで乗っていた撃龍船が横付けになって砦の様相を呈している。ここを拠点として攻め、守りながらジエン・モーランを撃退するのか。なるほどなるほど。そうかそうか。

 とりあえず俺と江野本は左右に分かれて、比較的攻撃がしやすそうな前脚を集中的に攻撃していった。同じような巨大古龍・ラオシャンロンは腹が弱点だったので、一度だけジエン・モーランの腹を攻撃しようと津波を思わせる巨体の下に潜り込んでみたが、速攻でロードローラーに轢き潰されるようにペシャンコにされてしまったので「ハイハイ……」といじけて定位置の前脚に専念することにしたのであります。

 やりかたはよくわからないながらも、俺たちは必死の抵抗を試みた。ジエン・モーランが撃龍船に接近してからはひたすら弾置き場と大砲を往復してボッカンボッカンとその大きな顔に集中砲火。気がつくとジエン・モーランの巨大な牙は折れて消し飛び、さらに江野本が大銅鑼を叩き、バリスタ用拘束弾を発射してこちらの攻撃ターンを作った。そして俺は船首付近に陣取って立ち回っていたのだが、ジエン・モーランが首を持ち上げて攻撃の姿勢をとったのを見て「うわ!!」とビビり、咄嗟にRボタン、aボタン、xボタンを同時押し。攻撃をガードしようと思ったのである。ところがこの行為が撃龍槍の発射ボタンを押す行動に直結していたらしく(aボタン押してるからな……)、なんと船のわき腹(?)あたりから大きな槍がバイーンと発射され、こいつがものの見事にジエン・モーランに突き刺さったのであるっ!! これにいちばん驚いたのは刺されたジエン・モーランではなく、間違いなくこの俺。ふ、船のわき腹から槍が出たっ!!

ナイスタイミング!!! 撃龍槍って横からも出るんだ!! 知らなかった!! 大塚さん、よく知ってましたねー!

 と江野本。手離しで俺の活躍を喜んでいる。

お、おうよ。よ、横からも出るんだよコレ……。バ、バッチリだったネ

 と俺。偶然のファインプレイだったので、どうしたって歯切れは悪い。

 でも、こんな奇跡にも後押しされて俺たちふたりはジエン・モーランを攻めに攻めた。ありったけの大砲の弾とバリスタを発射し(まあ、いくらでも転がってるんだけど)、前脚や顔面をランスで突っついて、「もしや圧勝!?」と思えるところまでこの巨大古龍を追い詰めたと思う。しかし、なぜか……。

 クエスト失敗……。

 おかしい……。完全にこっちのペースだったのに……。何がいけなかったんだ……。いまいち釈然としないまま俺と江野本はロックラックに帰還し、つぎのような会話を交わした。

大塚 「うーん……。完全に俺たちに軍配は上がると思ったけどなぁ……」
江野本 「ですね……。まさか失敗するとは思わなかった……」
大塚 「……でもけっこう、いい線いってたよね?」
江野本 「……どう考えても、追い詰めていたでしょう!!」
大塚 「だよね?? 苦しそうだったもんな、ジエン・モーラン!」
江野本 「悶絶してましたよ!! 牙も折れて情けない顔になってたし!」
大塚 「惜しかったな><」
江野本 「もう一歩やった><」
大塚 「まあでも、今回のは様子見だもんな。温情だよ温情!」
江野本 「ですね! あえて逃がしてやった!
大塚 「要するにコレは、釣りで言う“キャッチ&リリース”ってヤツだ!! 食わない魚は逃がしてやる!」
江野本 「……でもキャッチなんてしてないよ?」
大塚 「いやいや! 途中でぎずもさんが変な紐で捕まえてたでしょう!(バリスタ用拘束弾のこと)」
江野本 「!! そうや!! ウチ、キャッチしてやった!!
大塚 「だべ! な、余裕のキャッチ&リリースだったんだよ!!」
江野本 「すごいすごい! やれるもんですね、ウチらだけでも!」

 で、この2日後にまたまた緊急クエストのジエン・モーランに行くことになるのだが、なぜかそのときは俺と江野本、ふたりでロックラックにたたずんで誰か友だちが来るのを待ち続けていました(苦笑)。余裕のキャッチ&リリースをしたばかりだというのに、なんでだろ?(笑)
 

投稿者 大塚角満 : 15:58

【MH3】第60回 ジエン・モーラン 〜無邪気なふたり〜

 『3(トライ)』が発売されて1週間が経過した週末、親友のKさんから「大塚さん、この週末のロックラックは見ものですよ。ぜひ行ってみてください」とメールをもらった。Kさんに言われるまでもなく俺はロックラックに住民票を移してしまったような男なので、「もちろん行きますとも!」と元気に返信。ロックラックに何が起こるのかアレコレと想像しながら、週末までの数日間を過ごした。

 そして週末。ワクワクしながらロックラックに出向くと、なんだかいつもと雰囲気が違う風景が広がっていた。やたらと砂が舞っているのである。ロックラックは砂漠に浮かぶオアシスのような街なので、天気や風向きによっては埃っぽい日もあるのだろう。……にしたってこの砂の量は、ちょっと異常だと思えた。「い、いったい何が起こっているんだ……」。わけがわからぬまま、誰もいない酒場で酒をあおった。

 するとそこに、前出のKさんがやってきた。彼は俺を見るなりニヤリと笑い、「どうです? ロックラックの雰囲気、どこか違うと思いませんか?」と言った。俺は「よくぞ聞いてくれました!」とばかりに勢い込んで、「そうなんです! これは、黄砂か何かですか?」とKさんに訊ねた。するとKさんは「うんうん」と頷き、「そう、砂塵……ですね。このあと、さらにすごいことが起こりますよ」と謎の上乗せをした。

 そして翌日。細かいやり取りは忘れてしまったのだが、とにかく見たこともない超巨大なモンスターが砂の海をザブザブバッシャンと泳ぐ……というか疾走するムービーを観て肝をつぶし、Kさんのもとに駆け寄って震える声で「ななな、なんですかありゃあ!! チョーーーーでっかいモンスターがいたんですけどーーー!!」とわめき散らしたのである。俺の素の反応を見たKさんは安心した様子でちょっと笑い、ひと言、「はい。ジエン・モーランです」と言った。

 けっきょくこの日は、俺とKさん、そして仲良しの女性ハンターCさん、そして『みんGOLオンライン』時代からのネット友だちであるSちゃん(身内の大学生S君ではない)の4人で、「試しに行ってみますか!!」ということになってイベントクエストとして配信された“峯山龍の撃退”に出撃したのである。Sちゃんもジエン・モーランは見たことがないらしく、「こええw でも、楽しみー!」と言いながらついてきたのだ。

 クエストを受注し、迫力のムービーを鑑賞した我々4人は、気がつくと撃龍船の中に放り出されていた。このとき初めてジエン・モーランを見たSちゃんはすかさず「……じゃ、ロックラックに帰りますか^^;;;」と日和った発言をする。それを「まあまあw とりあえず、無駄な抵抗をしてみようよw」と3人でなだめすかし、撃龍船のデッキに出て、Kさんの指示のもとでアレやコレやと動き回ったのだ。でも、当時はまだハンターランクがひと桁の人間ばかりだったので撃退なんてできるわけもなく、気がついたら3オチして(誰がどうオチたのかすらよくわからなかった)、パンツの中まで砂まみれになってロックラックに帰ってきたんだよな。懐かしいなあ。

 しかしこのときほど、『モンハン』を遊んでいて“無力感”を感じたことはないかもしれない。かのラオシャンロンと初めて対峙したときでも、「討伐なんて絶対に不可能」とは思わなかった(た、たぶん)。しかしこのジエン・モーランときたら……。背中に乗っかって、ピッケルで採掘できるんですよ? 峯山龍という異名が示しているように、こいつは間違えて山に手足が生えちゃって、ついでになぜか泳げることに気がついて、この大砂漠を疾走しているようなものなのだ。

「こいつを狩ることなんて、できるのか……?」

 いつの日かガチンコで相見える予感に貫かれながらもまったくこのモンスターの上をゆくことが想像できず、俺とSちゃんは顔を見合わせて「……ま、そうなったらそうなったで、そんとき考えよう^^;;」とまたまた日和った発言をして、心に満ちた恐怖心を紛らわせようとしたのだった。

 あれから、2ヵ月−−。

 気がついたら「そんとき」が来てしまった。俺と江野本は同時にハンターランク30になり、ふたりに上位ハンターになるための緊急クエスト“峯山龍ジエン・モーラン”が出現したのである。10月8日の深夜、俺と江野本はロックラックで落ち合ってつぎのような会話を交わした。

大塚 「ジエン・モーランが出ちまったわけだけど……どうする?w」

江野本 「うーん……。これはふつう、何人で行くものなんですかねえ?」

大塚 「さっき、arties(モンハンフェスタ`09狩王決定戦東京代表)のMizunoe君に、“僕とふたりでやってみます? ……たぶん無理ですけどw”って言われたよ」

江野本 「でも“たぶん”ですよね? ……もしかしたら、いけるんじゃない?w」

大塚 「……やっぱそう思う?w じつは俺も“意外とイケんじゃね?”ってw」

江野本 「……ウチらふたりで、やっちゃいます?」

大塚 「……だな! ここはやるしかねえべ!!」

江野本 「チーム逆鱗日和で、ジエン・モーランを撃退してやろう!!

 というわけで俺と江野本のふたりで、ジエン・モーラン撃退に出向いてみました(苦笑)。……ホント、無邪気で微笑ましいなあ(しみじみ)。さて、そんときのドタバタっぷりは……次回ってことで!

投稿者 大塚角満 : 16:20

【MH3】第59回 ハットトリックの記憶

 先日、火山に棲まう炎の化身・アグナコトルと初めて遭遇したときのことをつらつらと書いた。でも、そのときいっしょにクエストに出向いたメンバーが、フラリとフィールドに行けばモーゼの十戒のようにモンスターが道を開ける……という伝説まであるツワモノ中のツワモノだったので、アグナコトルはいつまでも地面に刺さったまま動けず、そのまま天に召されてしまった(要するに連続して落とし穴に落とされてそのまま息絶えてしまった、ってことね)。指をくわえて見ているだけで屈強なモンスターが斃れてくれるなんて楽でいいじゃないかと思われるかもしれないが、これじゃあ、アグナコトルがどんなモンスターだかさっぱりわからん!! ナゼか俺は怒り心頭に発し、「もういい! ひとりで行く!!」とゲラゲラ笑う3人の悪魔の子に捨て台詞を吐いてロックラックをあとにしたのである。そう、モガの村に向かうのだ。ひとりで行くなんてかっちょいいことを言いつつ、ロックラックの高難度クエストではなくて、基本的にひとりでも立ち向かえるように調整されていると思われる村のアグナコトルを選ぶあたりが俺のカワイイところだ。

 さてちょっと話は変わりますが、皆さんは『3(トライ)』においてハットトリック(ひとりで3回オチること)を経験されたことはありますか? まあ、『3(トライ)』でモンハンデビューしたルーキーハンターさんなどはハットトリックは日常茶飯事かもしれないね。クルペッコについばまれ、ロアルドロスに水浸しにされ、チャナガブルに食われまくり……。無印(初代『モンハン』)のときの俺が、イャンクックに小突きまわされ、ゲリョスに毒まみれにされてのた打ち回っていたのと同じように。でもそんな俺も5年もこのシリーズをやってりゃ成長するもので、『3(トライ)』ではなかなかオチなくなった。……いま俺の仲間どもが「えーwww」と蔑みの笑いを浮かべたのが見えたような気がしたが黙れ黙れ。ダンコとして俺は、『3(トライ)』ではオチる回数が少なくなった。もう、言ったモン勝ちだ。

 で、問題のハットトリックだが、俺は『3(トライ)』では2回しか経験していない。ハットトリックの苦い思い出はなかなか消えないので、この“2回だけ”という数字は誰がなんと言おうと間違いないところである。

 初めての3オチは、村★5のクエスト“大海の王、捕獲大作戦!”だった。思いのほか順調にラギアクルスの討伐を果たし、しかもそのときよりもワンランク上の武器を作ることに成功してから臨んだのが件のクエスト。武器が強くなっていることに加えて捕獲で事足りるので、俺に失敗する要素はなかったはずだった。しかし狭い水没林の沼(なのか?)を舞台に巨体のラギアクルスを相手にすることは困難を極め、俺は屍を積み上げ続ける。けっきょく「アレヨアレヨ」と踊っているうちに3オチしてしまい、俺の『3(トライ)』プレイ史に初めて、“ハットトリック”の文字が刻まれたのであった。

 そして、2回目のハットトリックは……ということで、本題に戻ります。

 モガの村にやってきた俺はさっそく、★5のクエスト“火の海に棲む竜!”を受注した。茨城の魔人3人にあっさりと屠り去られてしまったアグナコトルではあったが、もとより慎重なこの俺。「あれは連日の疲れが見せた白昼夢だ」と思うことにして、万全の準備を整えることにした。回復薬、回復薬グレート、薬草を限界数持ち(いまだ秘薬を作れるほどの余裕はない)、俺にとってはまだまだ貴重なシビレ罠、落とし穴、閃光玉もアイテムポーチにぶち込む。そして、さすらいのコックに体力がMAXになる食事を食べさせてもらい、いまの俺にできる対アグナコトル用の限界装備が整った。ちなみに防具は、当時はそれしか持っていなかったので全身ロアルドロスシリーズ……。恐ろしいことに“火耐性−15”という、おまえ本気でアグナコトルを討伐する気あんのか的な、ナメきった防具である。そして武器は、このころからハマり始めていたスラッシュアックスのバンカーバスター。この俺が、初めてサシで挑む屈強なモンスターにガードのできないスラッシュアックスで臨もうとするあたり、ここにも“慢心”が見て取れる。やはり直前に見た白昼夢が、俺の心を存分に蝕んでいたようだ。

 それでも、クエスト開始当初はワクワクしっぱなしだった。火の精霊のようなアグナコトルの姿はどっからどう見てもかっちょいいし、熱線を吐くときに「カカカカッ!」とクチバシを鳴らしたり、反動で後ずさりするところなんて心に刺さりまくってしかたないではないか。そして何より、ザッパンザッパンと火山の大地を泳ぐように高速移動するその姿……。俺は、ここが鬼気迫る決戦の場だということも忘れてしばしその様子を眺め続け、ホレボレとした口調でつぶやいた。

「こいつはまるで、太陽のプロミネンスだ……」

 プロミネンスは簡単に言うと、太陽のガスが吹き上がって火柱のように見える現象のこと。日本語では“紅炎”という。吹き上がる炎の姿そのままに火山の大地を縦横無尽に駆け巡るアグナコトルの躍動は、じつにじつにかっこよかった。「このまましばらく見続けたい!」と本気で思ってしまうほどに。

 しかし俺の想いとは裏腹に、サシでのアグナコトルとの生存競争は苛烈を極めた。見惚れてしまうほどかっこいいプロミネンスの跳躍も当然ながら当たり判定があり、直撃すると思わず「……………………」と三点リーダーがとめどなく頭から飛び出てしまうほどのダメージを被る。怒り時に攻撃を食らおうものなら、MAXだった体力が半分以下にされてしまうほどだ。まあこれもひとえに、突然の豪雨でずぶぬれになってしまったダウンジャケットのようなロアルドロス装備の火耐性のおかげなのだが、それにしたってアグナコトルの攻撃力は尋常ではない。俺はただただ回復薬をガブ飲みするしかなく、しかもアグナコトルの行動パターンをまったく知らないので回復した端から追撃を食らい、「ハイ、いまの回復薬グレートぜーんぶ無駄ネ」という不毛な自転車操業をさせられるハメに……。2オチしたころには回復薬軍団は底をつき、道端に生えてる薬草も食べつくして、俺はキャンプと狩場を往復するしか手段がなくなってしまった。久しぶりの、壮絶な消耗戦である。

 それでも、時計の針が40分を過ぎたころにアグナコトルが脚を引きずる仕草をした。うおおおお!! 逃げ惑いながらもきっちりと、アグナコトルにダメージを負わせることができていたんだなぁオイ!! よよよよし、捕獲しよう。こうなったときのために、虎の子のシビレ罠をひとつ、使わずに取っておいてあるんだ!! 火山の最奥部、エリア10にアグナコトルが逃げ込んだのを確認し、アイテムカーソルにシビレ罠をセットしてから最終決戦場へと飛び込んだ。そして、すぴーくかーとかわいい寝息を立てている炎の精霊の足元にシビレ罠を設置。よし! かかった!! あとは捕獲用麻酔玉をぶつけるだけだ!! グルグルグルとアイテムウインドを回転させる俺。ほとんどのアイテムを使いきってしまっているので、すぐに捕獲用麻酔玉が出てくるはずだった。しかしすでに、ペイントボールのアイコンを8回くらい見ている気がする。な、ない……。いくら回しても捕獲用麻酔玉が出てこないよーーーーっ!! そう、持ってきていなかったのだ。捕獲用麻酔玉を持ってくるのを忘れてしまったのだっ!!

「ぎゃおおぉぉぉおおお!!」

 眠りを妨げられたうえに、いきなりビリビリと痺れさせられたアグナコトルは激怒していた。や、やめろやめろ。おまえ、脚引きずっていただろう! とっとと斃れてくれえええ! ヤケクソになって斬りかかろうとする俺の耳に、いつもより大音量で「カカカカカッ!!」というクチバシを叩く音が聞こえたような、聞こえなかったような……。

 これが俺の、2回目のハットトリックの瞬間です……。

投稿者 大塚角満 : 14:05

【MH3】第58回 ハンターノートを活用する! ……って話のはずが

 2009年10月10日、無事に我がファーストキャラのハンターランクが上位になった。『3(トライ)』をプレイし始めたのはソフトの発売日である8月1日なので、じつに71日かけての上位進出である。発売日からほぼ1日も欠かさずロックラックに出入りしていた人間で、これほどの牛歩を実現したのは俺と江野本ぎずもくらいではなかろうか?(江野本も同じ日に上位になっている)

 まあ歩みは遅いながらも晴れて上位ハンターの仲間入りを果たせたので、ここで俺のキャラデータを公開したいと思う。と言っても、『3(トライ)』にはギルドカードっぽいものはないので、お知らせできるのは総プレイ時間とハンターノートに載っているモンスター討伐数くらいなんだけどね。では恥ずかしげもなくさらしてみる。

◆大塚角満の『3(トライ)』プレイ時間◆

・ファーストキャラプレイ時間:219時間33分
・セカンドキャラプレイ時間:28時間41分

 合計すると……248時間14分!! こんなにやってて、まだハンターランク32かよ俺!! ってまあ、この半分は闘技場に入り浸ってクルペッコを追い回していた時間なので額面どおりに「250時間もやってんのか!!」と驚いてはいけないよ。また、「250時間も仕事サボってんのか!!」って驚かれても困ります。さて、つぎはモンスター討伐数だ。えーっと、これを見るには“ハンターノート”を開けばいいだよナ。ナンダカンダ言っても、俺ももう上位だからナ。たくさんのモンスターの詳細がノートに記されているだろうナ。俺はウキウキしながら「ナ! ナ!」とくり返し、ハンターノートを開いてみた。

◆大塚角満のモンスター討伐数◆

・オルタロス:140
・リノプロス:53

 うんうん。まあこいつらはそんなもんだろうナ。多いんだか少ないんだかサッパリわからないけどネ。えーっと、ほかのモンスターは……。ガシャガシャとコントローラーを操作し、ハンターノートをあっちこっちにひっくり返してみる。しかし出てくるのは、

・オルタロス:140
・リノプロス:53

 こればっか。わかったわかった。オルタロスとリノプロスは140と53なのね。はいはい。それはもういいよ。10年後に聞かれても即答できるくらい、その数字は何度も見たって。俺はほかのモンスターの討伐数が見たいんだよ。……って、いくら捜しても出てこないってことは……!!

「オルタロスとリノプロスしかハンターノートに登録してなかったーーーっ!!」

 最初はおもしろがってハンターノートに登録していたようだが、しだいに「ハンターノートへの登録はつぎに会ったときにしよう」というモードになり、そのうちすっかりデータ収集することを忘れてしまっていたらしい。な、なんたることだ……。モンハンジャーナリスト(?)とは思えぬ大失態ではないか! というわけで今回は企画の主旨を変えて、ハンターノートを小脇に抱えて手当たり次第にモンスターのデータを集めまくることにしました。その結果わずか数分で、アプトノス、ジャギィ、ジャギィノスのデータゲットに成功! さらに、「間違いなくもっとも狩っているはず!」と確信していたクルペッコのデータも手に入れることが叶ったのであった。ではその数値は……。

・クルペッコ:534

 デターーー!! 恐怖の500頭オーバー!! タイムアタックの練習でさんざん狩ったとは思っていたが、まさかこれほどの数字になっているとは!! 俺の感覚ではせいぜい200頭程度だろうと思っていたので、たまげるのも当然というもの。すぐに俺は、いっしょにクルペッコ討伐に精を出していた相棒の江野本に話しかけた。

「突然ですが、問題です。俺……というか我々のクルペッコ討伐数はどれくらいになっているでしょーか? 思ったよりもずっと多いので、かなーりゲタを履かせないと当たらないと思いますよ」

 言われた江野本、10秒ほど「えー……」と考え込むも、すぐにつぎのように答えた。

「500頭くらいかな?」

俺、会社の自席できっかり1メートルほどは飛び上がってわめき散らした。

!!!! なんでわかるんだよ!!! さてはハンターノートを見たことあるな!?」

 江野本は「見てない見てないw ま、そんなもんですよw」とサラリと言ってクスクスと笑っている。ちくしょう……。これだからオンナの勘はイヤなんだよな……。しかしどうにかして目にモノを見せてやりたい。悔し紛れに、俺は江野本に吐き捨てた。

「じゃあ、つぎはメディア大会の練習でさんざん狩ったボルボロスの狩猟数を調べてくる。そしたらまた、問題出すからな」

「はいはい^^;」と呆れ笑いする江野本を横目で睨みながら、俺はボルボロスが待つ砂原へと出発した。

 砂原のドロ沼に出向くと、いましたいましたボルボロス。しかもそのまわりを、まだハンターノートに登録していないブナハブラがブンブンと飛び交っている。こいつはいい。一気に2種類のモンスターのデータが集められるではないか。

 俺は「まずは手始めに……」と言いながら画面にポインターを出し、ブナハブラを追い回し始めた。しかしさすが虫ケラ、小さいうえにすばしっこくて、なかなか捕らえることができない。「チョロチョロ動くな!!」とわめいたところでブナハブラの躍動がおさまるわけもなく、わんわんわんわんと羽音を発生させながら我が分身にまとわりつく。同時に、尻から突き出た破廉恥な針でブッチュンブッチュンと刺されまくる哀れなハンター。そのたびに、ちょっと見過ごせないほど減っていく緑色の体力ゲージ……。

「お、おいおまいら、エエかげんにせいよ……」

 言ったとたん、バタリとドロ沼に倒れて動けなくなる我が分身。ま、麻痺しやがった……。しかもいつの間にか、ドロ沼から突き出た岩状の物体が近づいてきて……!

「ぎゃおおおおお!!」

 ひぃぃぃ! ボ、ボルボロスがキターーー! いきなりの突き上げに吹っ飛ばされ、我が分身の体力は半分以下にまで減少してしまった。

 ここで慎重でマジメなハンターだったら「命は大切に! ちょっとでも体力が減ったら回復を!」ってことで応急薬のひとつも飲むのであろう。しかし俺は、そんなことにはならぬ。

「ナンダカンダで俺も上位のハンターだからナ。下位のボルボロスごときに遅れをとるわけがない」

 そう。こんなところで慢心したのである。

 “上位になった”というじつに意味のない根拠に押されて、画面にポインターを出す俺。この期に及んで、ボルボロスのデータ収集をしようと思ったのだ。猛り狂うボルボロスに、何度も何度もポインターを合わせようと試みる。しかし、相変わらずブナハブラに邪魔されるわボルボロスは怒って突っ込んでくるわでなかなかうまくいかない。気づいたころには体力は1センチほどになり、「あ!!」と思った瞬間にボルボロスの尻尾が当たって我が分身は天に召されてしまった(苦笑)。まったく、俺は何しに来たんだ……。

 それでもどうにかこうにか、ボルボロスのデータ収集には成功した。いやあ、たいへんだった……。でも苦労して集めたこのデータには、すばらしい数値が記載されていることが約束されている。さんざんタイムアタックで狩ってくれたのだ。ボルボロスの討伐数、少なくとも100はいっているだろうな。いや、200オーバーもあり得るぞ!! ドキドキしながら、ハンターノートのボルボロスのページを開いてみた。すると……!

・ボルボロス:8

 ……。

 もう、家帰って寝よ……。

※ボルボロス討伐の練習はセカンドキャラでやっていたことが影響したみたいです。……ホントだぞ!!

投稿者 大塚角満 : 17:16

【MH3】第57回 お守りを捜して

 モンハンフェスタ`09の地区大会が終わり、我ら逆鱗日和チームのタイムアタック挑戦もひと段落ついたので、ようやく俺は齷齪しないのんびりした日常を取り戻した。タイムアタックに挑む日々もそれはそれは楽しかったが、やっぱり俺らにはスローライフが似合っているよなぁ^^ レッツのんびりドタバタプレイ!! さあさあ、早いところゲーム本編を進めて、まだ見ぬあんなモンスターやこんなモンスターに会いに行くぞー。これからはロックラックの主となって、目を血走らせながらクエストをクリアーしまくってやるのだ!! ……って、どこが齷齪しないのんびりした日常なんでしょうか? でもまあいいや。

 そんな俺がここ最近ハマっているのが“お守り集め”である。お守りというのは『3(トライ)』から導入された新しい要素で、防具以外にひとつだけ装備できるステキアイテムだ。お守りには基本、何らかのスキルポイントが入っていて、「もうちょっとでガード性能のスキルが発動するのに、装飾品を入れる穴がもうない。……そうだ! そんなときこそお守りだ! ガード性能のスキルポイントがついているお守りを身につければ、スキルが発動しちゃうぞお! さあ皆さん、さっそくこちらにお電話を……」と、思わず深夜の通販番組のようなわざとらしいコメントで紹介してしまったが、とにかくお守りはそうやって、スキルポイントの底上げ、補足に使えるんですねえ。でもこのお守り、採掘やクエストの報酬でもらえるんだけど、クエスト終了後に鑑定を行うまでどんなスキルポイントが入っているのかわからない仕組みになっている。ポイントもランダムで割り振られているようなので、鑑定の瞬間はスクラッチカードを削るときのようなドキドキ感が味わえるのである。

 お守り集めをしようと思ったきっかけは、最近作ったナバルデウス装備にある。ナバルデウスの素材から作る“ヘリオス”シリーズにはスキル系統“匠”がついていて、これを15ポイント以上集めると近接系ハンター垂涎のスキル“斬れ味レベル+1”が発動する。全身5ヵ所をヘリオスシリーズで固めれば晴れて斬れ味レベル+1を身にまとうことができるうえに、オマケというにはあまりにもうれしい“高級耳栓”も発動してくれちゃうのだ。こりゃあもう、ナバルデウスを何度撃退してでも作るしかないではないか。

 というわけでわりとすんなり、俺はヘリオスシリーズの防具で全身を覆うことに成功した(でもあとで仲間に「ナバルの装備できたよー」と話したら、「ナバル、すごく出にくい素材があって、僕は48体も相手にしましたがいまだにその装備作れません……」と言われてしまった。この『3(トライ)』において俺はすごく素材の引きがいいらしい)。まだ下位のハンターだというのに(当時)、早くも魅惑の斬れ味レベル+1の発動だ!! ところが、発動した全スキルを眺めてみると……。

◆ヘリオス装備の発動スキル

・斬れ味レベル+1
・高級耳栓
・なまくら
・悪霊の加護

 ……ってオイオイ、微妙にボディーブローな、嫌〜なマイナススキルも発動しているじゃねえか……。せっかく斬れ味レベル+1で武器がギラギラのキレキレになったのに、なまくら(斬れ味の消費量がマイナス2倍)で相殺されちまう感じ……。しかも悪霊の加護(受けたダメージが一定確率で増加)までついてくるとは……。うーん、こいつは弱った。悪霊の加護は下位のうちは目を瞑るとして(上位だと目を覆いたくなる大惨事につながる可能性もあるが)、なまくらだけはなんとかせねば。そこで装飾品の“斬鉄珠”でフォローしようと思ったが、こいつ斬れ味が+1になるのと同時に匠が−1になりやがるのでまったく意味がなかった。となると、残る手段は……!

「お守りでなんとかしてもらうしかない!!」

 ってことで、俺は決死のお守り捜しを始めた。目指すは斬れ味にたくさんのプラスがついたお守りである。

 お守りを効率よく手に入れるために、俺は街★2のクエスト“飛竜の卵の納品”に目をつけた。風の噂でこのクエストをクリアーすると、報酬としてたくさんのお守りがもらえることを知ったのである。運搬クエストにノーマル装備で出向くほど俺は人間ができていないので、急いでスキル“運搬の達人”が発動する防具を作る。たまたまお守りで“運搬+6”のスキルポイントが入っていたものがあったのでそれを装着。これにより足の防具を変更しただけで運搬の達人が発動してくれた。

 さあさあ、久々の卵運びだ。この、独特の緊張感とイラつきを覚える運搬クエストは多くのハンターが苦手意識を持っているが、俺は何気に嫌いではない。もう、いくらだって卵運びしたるど! ってな心境である。なので何度も何度も、俺はこのクエストを受注した。「ひとりで卵運びなんかやってるの!?」と驚く人もいるが、たった3個を飛竜の巣からかっぱらってくるだけでステキなお守りの恩恵が受けられるかもしれないのだ。そこになんの苦労もあるものか。

 そして実際、このクエストをクリアーすると大量のお守りが報酬として手に入った。鑑定するまでどんな効用があるお守りなのかわからないことが、俺のギャンブラー魂に火をつける。いやあ、楽しいなコレ!

 しかしなかなか、「これだ!」と納得できるお守りは出てきてくれない。なので俺は時間が許す限りくり返し、運搬クエストに出撃する。「つぎこそ、すばらしいお守りが出てくれるのでは……」とか「なんだかつぎはいいものが出る予感がする」なんていう気持ちに突き動かされて出かけるわけだが、もらえるのはガード強化−10とか調合成功率−8といった、おまえエエかげんにせんと許さんよ的な、とてもじゃないけど看過しえないものばかり……。いつしか当初の目的がなんだったのかも忘れてしまい、ただ単に「つぎこそプラスがたくさんついたお守りを!」、「何でもいいからプラスプリーズ!!」と守銭奴のごとく得することばかり考えてギャンブルにうつつを抜かすようになってしまったよ。しかしこれでは、休日のたびに「今日は出るような気がするんだいねー」と群馬弁を振りかざしながらイソイソとパチンコに出かけて行くウチのお袋と同じじゃねえか。……血は争えない!! なんて口が裂けても言いたくないがね。

 こんな感じで損得勘定をむき出しにして卵を運びまくっていたら、いつの間にか俺が所持するお守りの数は91個になった。よーし、もうすぐ100個になるぞ。とりあえず100個集めたら、そのつぎの目標は150個かな。いや、このペースだったら200個も夢じゃないな!! いやあ、お守り集めは楽しいなあ^^^^

 ……って、俺は何のためにお守り集めをしていたんだっけ?

投稿者 大塚角満 : 17:54

【MH3】第56回 モンハンフェスタ`09札幌大会 全部まとめてリポート!

 今回の札幌行は、呪われていたとしか思えない。

 まず、札幌に向かう前日の金曜日。会社に、最近すっかり凝って肌身離さず持ち歩いているコーヒー用タンブラーを忘れた。

「飛行機の中でおいしいコーヒーを飲もうと思っていたのに……」

 取りに戻るのも面倒だったのでそのまま帰宅。家に帰ったら江野本ぎずもとロックラックで落ち合うことになっている。ふたりとも同じタイミングで上位に上がるための緊急クエストが出ていたので「最後の地区大会のまえに上位ハンターになろう!」と話していたのだ。ところが、深夜に帰宅したこともあって、俺はそのまま寝てしまう。江野本から朝の4時半に「もう、寝ます……」というメールが届いていたことに気づいたのは、翌土曜日の正午だった。

「やばい! 飛行機に乗り遅れる!」

 慌ててカバンに着替えや取材道具、そしてWiiを1セットぶち込み、江野本に「札幌のホテルからロックラックに行くから、緊急クエストやろう!」とだけメールして電車に飛び乗る。ところがそのWiiが空港の手荷物チェックで引っかかり、衆人環境下でWiiはおろか、カバンに入れておいた育毛シャンプーなどもすべてさらすという辱めを受ける。それでもなんとかお許しをいただき、札幌へ向かう機上の人となった。

 そして札幌。新千歳空港から札幌市へ向かう快速電車の中で、泊まるホテルの資料をなんとなく眺める。最近のビジネスホテルは高速インターネットが無料で使えるところがほとんどなのでありがたい。今回泊まる宿ももちろん、そういうところを選んだ。えーっと、場所は……って、アレ? 泊まる日付が10月11日ってなってるけど、これでいいんだっけ? た、確か今日は……。

 10月10日……。

 やべえ!! 泊まる日を間違えた!! 慌ててコソコソとホテルに電話し、「日にち、間違っちった^^; 明日の予定を今日に変更してくだされ^^」と猫なで声で告げる。ところが返ってきた返事は「3連休の初日に、ここ観光都市札幌でいまさら部屋が空いてるわけねえだろwwwww」というつれないもの。俺、さらに慌てて携帯電話で宿泊ガイドにアクセスし、10月10日に札幌市内で泊まれるホテルを検索した。ところが……。

 1軒もない……。

「ひぃぃぃいい!!」というリアル悲鳴をあげながら別のサイトを出し、祈る思いで検索をすると1軒だけ、1泊15800円という予算10000円オーバーの宿に泊まれることを突き止めた。しかたねえ……。予算オーバーの分は自腹になるが、もたもたしているとここもすぐに埋まってしまうに違いない。俺は「10000円あれば2回飲みにいけるのに……」と泣きながら携帯電話を操作し、当日予約を入れた。その宿は駅からちょっと離れていたので、タクシーで移動する。すると突然タクシーの中で、見知らぬ番号から着信が。不審に思いながらも電話に出ると……!

「大塚様、ご予約ありがとうございます……。じつはご予約いただいたお部屋、コンピューターの誤作動で予約完了になってしまいましたが、じつはもう、満室なのです。申し訳ございません……」

 あーはいはい。そーですかそーですか。まあそういうこともあらあな……ってどうすんだよ俺!! たまらず、電話の向こうのホテルの人に泣きついた。「そ、そこをなんとか! 布団部屋でもいいから泊めてくださいぃぃ!! オバケさえ出なければなんでもいいですからぁああ!!」。すっかり薄着で来てしまった俺に、10度の気温と土砂降りの雨の中で宿泊先を捜すのはキツすぎる。するとホテルの人は「そう思って、ウチの目の前にある別のホテルに確認したところ、お部屋が空いているそうです。お値段は11000円とのことですが、よろしいでしょうか?」とうれしいことを言ってくれるではないか!! 俺は「ありがたいです! むしろお宅が満室でよかったです!!」と失礼なことを言い放ち、無事風俗街のど真ん中にあるキレイなビジネスホテルに泊まったのでした。

 で、翌日。

 チェックアウトを済ませて会場に行き、取材道具を旅行カバンから手提げ袋に移しているとき、録音用のICレコーダーが紛失していることに気がついた。ひぃぃぃぃ! 今日の取材、全部メモだけで対応しなきゃいけないの!? ……というわけで今回のリポートは、すべてメモをもとにして書き起こした、非常にアナログなものになります。……って、いつもそうなんだけどな。

 しかし我ながら、なんて長い前フリなんでしょう。でもこれ、モンハンフェスタ`09地区大会のリポートがこれで最後になってしまうことの寂しさを紛らわせる意味もあるのです。書いたら終わっちゃうよー……。毎年毎年、地区大会の最後はこういう気持ちになるんだよなぁ……。

 というわけで、モンハンフェスタ`09最後の地区大会、札幌会場のリポートです! 速報でも書いたがこの日はじつに変な天気で、開場まえから会場のまわりは強風が吹き荒れ、突然大粒の雨が降ってきたかと思ったらいきなり青空が広がり、あーよかったよかった……とニコニコしながら上空を眺めていたらその脳天に雹がぶち当たる……という、ここはギアナ高地かキリマンジャロかと言いたくなるような不思議な天候でありました。それでも朝から1000人もの人が会場のまわりに列を作り、最終的な来場者はじつに3300人に! 昨年比1.5倍という驚異的な集客となったのでした。そんな会場の模様を写真で見てみましょー。


▲早朝から月寒アルファコートドームのまわりにはご覧の行列ができた。しかし、気温は低いわ風は強いわ大粒の雨は降るわでたいへん……。来場者の皆様、お疲れ様でした!


▲看板娘そろい踏み! どの会場でも笑顔を絶やさず、来場したハンターたちを癒しまくっておりました。まさに看板娘の働き! お疲れ様ー。


▲北の大地に、頭骨標本がよく似合う。


▲『2nd G』のリアル集会所はご覧の混みよう。『2nd G』の女子ハンタータイムアタック、親子ハンタータイムアタックも盛り上がっていましたよ!


▲ファンにサインする藤岡ディレクター。フェスタごとに描いてくれるイラストが変わる藤岡さんのサイン。『3(トライ)』がテーマの今回は、かわいいチャチャを描いてくれていたんです! もらえた人はラッキーですなあ。

 さて最初はモンハンフェスタ名物の人気コーナー、開発者チャレンジクエストだ。おなじみ、『3(トライ)』の辻本良三プロデューサー、藤岡要ディレクター、小嶋慎太郎アシスタントプロデューサー、木下研人メインプランナー、『2nd G』の一瀬泰範ディレクターによるゆるーいステージである。良三さん、藤岡さん、一瀬さん、研人さんの4人がプライベート装備で『3(トライ)』に出てくるモンスターに挑戦するわけだが、今回のお相手は……。

「ここは北の大地。ってことで、北海道にはリアルにいそうなモンスターである凍土の主、氷牙竜“ベリオロス”に挑みます! 今回の討伐に成功すればチャレンジクエストは3勝2敗で勝ち越しですからね!!」

 とチームリーダーの研人さん。これを聞いたMCのウサミスが「最後くらいがんばってほしいですね!」と突っ込んだことに対し、藤岡さんが「いつもがんばってないみたいじゃん!」と気色ばんだのが笑えました。

 さて、ベリオロスに挑む4人の装備をざっと列挙すると、まず一瀬さんはベリオロスの氷属性への耐性が高いギギネブラの防具一式に、武器は麻痺攻撃が自慢のスラッシュアックス、バンカーバスター(もしかしたらバンカーバスター改だったかも)。研人さんもギギネブラの防具に、武器は「火炎弾が強いので」ということで火竜のボウガン。藤岡さんはランサー垂涎のガード性能、ガード強化のスキルが発動するアグナコトルの防具に、同じくアグナコトルの素材から作るランス、スパイラルヒート。そして良三さんは……なんか中途半端な防具でよくわからなかったんですけど!!ww そこでいまメールで良三さんに確認したところ、「腰がリノプロ、足がブラックレザーで、あとは何もつけてませんw」とのこと。武器は一応、火属性のスラッシュアックスでした。スラッシュアックスを持ってきた理由は、「練習したかったんだよねー」だって。この発言に対し一瀬さんが「そんなの会社でやってくださいよ(苦笑)」と、じつにまっとうな突っ込みを入れていました。

 しかし今回の相手はベリオロス。しっかり準備をしないと15分という制限時間内のクリアーは難しそうだ。ということで良三さんのおごりで、ロックラックの酒場で4人が食事をすることになった。すると良三さんは、「テキトーでいいよね!!」ってことで、なんと酸素アップと火耐性アップの効果が出る食事を選択!! しかもネコのスキルは運搬の鉄人!!w 「いらねーよこんな効果!!」(藤岡)、「運搬なんかしませんよ!!」(研人)と、最初から“モンスター寄りのハンター”こと良三さんに振り回されまくるのであった。

 そんなこんなで始まったベリオロス討伐だが、チームリーダー研人さんは「ベリオロスは翼にトゲがあります。このトゲを壊すと雪原で踏ん張りが利かなくなるので先に壊しましょう! 僕が眠らせるので、爆弾を翼のまわりに置いてくださいね!」とじつにまっとうな作戦を披露! 藤岡さん、一瀬さんは「了解!」と言い、ベースキャンプを飛び出した。しかし良三さんはやたらとスラッシュアックスを振り回しているだけで何も聞いておらず、5分後に「え!! どうすりゃいいの!? なんか作戦ないの!?」とまったく空気を読まない発言をして、来場者からも「さっき言ったじゃん!」と突っ込まれておったよ。

 それでも狩りは始まるもの。4人のハンターとベリオロスは、凍土のエリア6に集結した。するとお約束のように突然、そこに白い霧が立ち込めてくる。まあこれ、“大阪のミスタースモーク”こと良三さんが投げたケムリ玉のせいなのだが、いつもにも増して効果がすごいような……。


▲凍土が吹雪き始めています。でもこれ、まだ視界が良好なほうで、良三さんが本気を出してケムリ玉を投げ出した後半は、画面が本当に真っ白でした……。

「吹雪いてますよ!!」と良三さん。ちょうどそのころ、ほかの3人は研人さんの作戦どおり睡眠→大タル爆弾のコンボをやろうと思っていたからタマラナイ。画面が真っ白でベリオロスが寝たのかどうかもようわからず、けっきょく爆弾は誤爆するハメに(苦笑)。しかし自分のせいで作戦が水泡に帰したにも関わらず、良三さんはなぜか「閃光玉とか、投げてほしい??」と上から目線な発言。加えて、凍土のエリア6には広い高台があるが、狩場が低地になったのを見た良三さんはここに上り、うなずくボディーアクションをしたまま「その作戦、いいよいいよ!」、「みんな動きが硬いな!」としゃべってるだけという……。藤岡さんに「せめて粉塵くらい飲め!」と言われてもそ知らぬ顔を決め込むのであった。

 それでも、こんなことばかりしていたらバチが当たるのは当然のこと。ベリオロスが移動する直前に良三さんが置いてしまった大タル爆弾の近くを、忘れたころにのこのこと置いた本人が通りかかったとき、ボウガンの研人さんが狙い済まして発砲!! 「うわ!!!」という悲鳴とともに良三さんは火ダルマとなって吹っ飛ばされ、なんと体力は残り1ミリwww 「やった!!」と研人さん。拍手喝采が沸き起こる会場。これまで各地区大会でさんざんクエストを邪魔されてきた研人さんが、良三さんに一矢報いた瞬間だった。

 しかしこんなことで懲りない良三さんがさらに狩場にケムリ玉を放り、どのハンターの画面も真っ白に……。あまりにも多く投げすぎて良三さん自身が「ヤバい!! 何も見えへん!!ww」と絶叫する有様。凍土は背景が白いうえにベリオロスも白いモンスターなので完全にカモフラージュしてしまったようだ。でも残り3分ってところでなんとか討伐には成功。ステージ終了後に良三さんを捕まえて、「アナタ、ケムリ玉投げすぎだからw」と言うと良三さんは腹を抱えて笑い、「なんたって調合分まで持っていったからね!!w」と元気に発言。アナタにゃ負けました(苦笑)。

 こうして、地区大会5会場で行った開発者チャレンジクエストの戦績は3勝2敗。辛くも開発者の面目を保ち、舞台はつぎのステージとなった。そう、『3(トライ)』に出てくるモンスターの生態を藤岡要先生が解説してくれる“教えて藤岡先生!”のコーナーだ。今回は北の大地札幌ということと、開発者チャレンジクエストの余韻を引き継ぐ感じで“凍土のモンスター”の解説が行われた。

◆ベリオロスの生態

小嶋助手 もっとも特徴的な“牙”について教えてください。
藤岡先生 ベリオロスの牙は非常に鋭利で、刃物のようになっています。これは獲物を捕獲したらまず最初に、脂肪やビタミンなどを摂取できる内臓を食べるときに都合がいいように進化したためです。ベリオロスは寒い地方に棲んでいるので、最初にエネルギー効率のいい要素を摂れる動物の内臓から食べる。そのとき、ナイフを扱うように牙を使って動物の体をさばくのです。また凍土に棲む草食種はポポのように長い毛で体が覆われているものが多い。これらを捕獲して食べるときにも、刃物状の牙が役に立つのです。
小嶋助手 もうひとつ、翼についているトゲも気になります。
藤岡先生 ベリオロスはす速く動くわりに身体が大きい。この身体を、足場が悪い凍土できびきびと動かすために、翼についたトゲをスパイク代わりに使うんです。これにより滑る場所でも俊敏に動けるのですが、逆にこれを壊されると踏ん張りが利かなくなって体勢が崩れやすくなるんです。

◆ギギネブラの生態

小嶋助手 ツッコミどころ満載のモンスターですが、やっぱり気になるのはギギネブラが吐き出す毒。これが作られる仕組みは?
藤岡先生 見るとわかりますが、ギギネブラの身体はところどころが光っています。これは“毒腺”と言われる器官で、ここで毒を生成しているんです。そしてこの毒は、獲物を食べるときに使います。ギギネブラは捕らえた獲物はすぐには食さず、毒で腐食させる習性があるんです。腐食させ、巣に運んだ獲物は凍土の寒さで冷凍されますが、これを口に生えたヤスリ状の歯で削りながら食べる。……食ってるところは見たくないモンスターですね(苦笑)。ちなみに、身体が光るのは「俺は毒を持っているぞ! 無闇に近寄るなよ!」とまわりの生き物に知らせる“警戒色”でもある。怒ったときに身体が黒くなるのは、興奮して一気に毒が身体を巡るからです。
小嶋助手 ギギネブラは、どっちが頭なんですか?
藤岡先生 これは擬態をしているのでわかりにくいですよね。頭が急所なので見分けにくくなっているんです。見分けかたは、ちょっと暗いほうが尻尾、と覚えておいてください。
小嶋助手 狩っている最中に卵を産むのも気になります。
藤岡先生 ギギネブラはフルフルと同じく雌雄同体でオスメスの区別はなく、尻尾のほうから産卵します。卵は泡状の物質に包まれた“卵塊”というものですね。
ウサミス 卵から産まれるギィギがかわいいですよねー♪ フルフルも好きなような気がしていたんですけど、ギィギを見て確信しました(はぁと)。
藤岡先生 ギィギがときたまハンターに吸い付きますが、このとき、血を吸われています。ギギネブラは血液を生成して毒を造っているんですけど、産まれたばかりのギィギは血液も少ないのでたくさんの毒を造れません。そこでほかの生き物の生血を吸って毒を造る。血を吸って大きくなったギィギが毒を吐くようになるのはそのためです。
ウサミス カワイイからぜんぜんいいです♪
藤岡小嶋 ……。

◆大砂漠を走る砂上船について

藤岡先生 ジエン・モーランという巨大な古龍が大砂漠に現れたときに乗る船で、撃龍船と呼ばれます。デカいモンスターを相手にするので非常に頑丈、しなやかで、フレームはモンスターの骨を加工して作ってあります。使われている木も堅く、しなやかで、古くから伝わる大切な気を使って作ってあるんです。そして撃龍船には武器が搭載されています。撃龍槍、バリスタ、大砲、大銅鑼。この中の大銅鑼ですが、ジエン・モーラン討伐では、まずこのモンスターを捜すところから狩りが始まります。小さなサポート船がクエストに同行しますが、ジエン・モーランを発見したらこの大銅鑼を鳴らし、ほかの船に知らせるようになっているんです。また、モーランは聴覚が発達しているので、船に接近したときに打ち鳴らしてひるませることができます。


▲かっちょいい撃龍船の秘密も語られた。

 うーん、今回もじつにタメになったなあ。

 このあと、ステージではケータイサイト“モンハン部”の紹介、来場者を壇上に招いてのチャレンジクエストなどが開催。クルペッコ、ボルボロスを相手に北の大地のハンターが大暴れした。

 そして、気になる狩王決定戦札幌地区大会の予選の結果が発表に! 今回はこのまま一気に書いちゃうぞ! 速報でもアップしたが、予選を通過した8チームと入賞2チームは以下のとおりだ!

1位 P&K 1分33秒

2位 北国蒼翠〜SOU・SUI〜 1分35秒

3位 ハマーのごとく 1分38秒

3位 チーム最北端 1分38秒

5位 ファミ通王闇鴉 1分41秒

6位 怪盗電波ジャック団 1分50秒

7位 有効気管 1分57秒

7位 彩鳥禁猟区 1分57秒

9位 YASYA 2分00秒

10位 ぽてと!?(笑) 2分11秒


▲予選を勝ち抜いた8チーム!

 東名阪の大会と比べると予選参加チーム自体が少ないので記録は落ち着いているが、話を聞くと「北海道にだって本気でタイムアタックをしているハンターがいることを知ってほしい!」という気合に漲っているチームも! 惜しくも予選突破はならなかった9位のYASYAもそんなチームのひとつ。覚えている方もいるかと思うが、彼らは昨年のモンハンフェスタ`08で北海道代表になったチームだ。当時、まだ中学2年生だったふたりはグンと背も伸び、すっかり大人びていた。拙著『角満式モンハン学〜ハンター編〜』にも投稿してくれていたので、予選終了後に彼らを見つけて話しかけてみる。すると彼らははにかみながらも、「去年は運で北海道代表になったんですけど、今年はきっちりと練習できたので実力で代表権を勝ち取りたかった!」と本当に悔しそう。決勝の種目であるラギアクルス討伐では2分7秒なんていうタイムも出ていたそうで、「本当に悔しいです!」と大人になりかけの男っぽい表情で話してくれた。きっと彼らは、優秀なタイムアタッカーになるだろうなあ。

 そんな熱いハンターの上をゆく8チームで行われた決勝ステージだが、全チームが太刀・太刀の組み合わせで挑む“ガチンコバトル”となった。太刀・太刀だと圧倒的な火力でねじ伏せることも可能だが、引いたラギアクルスの機嫌しだいでいいタイムにも、悪いタイムにもなる。要はその日の運次第って部分も多いので、まあ一発勝負のこういう舞台で選択するにはもってこいの武器、という気もする。しかしこれまでの地区大会を見てみると太刀・太刀での作戦の骨子は、まず眠り投げナイフでラギアを眠らせ、ひとりがシビレ罠を設置している最中にひとりは背中を攻撃して起こし、ひとつ目のシビレ罠の効力が消えたらもうひとつを……というものがほとんどだったようだ。


▲全チームが太刀・太刀のコンビでラギアクルス討伐に挑んだ札幌大会決勝ステージ。

 このような背景があるなかで、札幌大会ではひとつのチームがおもしろいことをやってみせた。予選を1位で通過したP&Kだ。じつは彼らが予選を終えたあとに話しかけられて、「決勝に進出できたら、ちょっとおもしろい立ち回りをお見せできると思いますよ」と言われていたのである。そんな彼らがやってみせたのは……なんとアイテムをひとつも使わないでラギアクルスを圧倒する立ち回り!! ふたりともこれ見よがしにアイテムカーソルは眠り投げナイフにしてあるのに、なぜかひとつも投げないし、シビレ罠も使用しないのである! ステージで解説していた藤岡さんもこれに気づき、「僕の見間違いでなければ、彼らはひとつもアイテムを使っていないですね……。これは驚いた」とビックリ仰天。俺は彼らのオリジナリティー溢れる立ち回りを見て、モンハンフェスタ`08名古屋大会で全国のハンターの度肝を抜いたEffort Cristalのシンクロプレイを思い出していたのだが、それくらい、彼らのやったことは鮮烈だったのである。しかも、タイムも速そうだった!

 そんな、個性的なハンターも参戦した見所ある札幌大会決勝ステージの結果は!!

1位 ハマーのごとく 3分01秒 太刀・太刀

2位 有効気管 3分21秒 太刀・太刀

3位 P&K 3分26秒 太刀・太刀

4位 彩鳥禁猟区 4分00秒 太刀・太刀

5位 ファミ通王闇鴉 4分18秒 太刀・太刀

6位 北国蒼翠〜SOU・SUI〜 4分20秒 太刀・太刀

7位 チーム最北端 4分26秒 太刀・太刀

8位 怪盗電波ジャック団 6分18秒 太刀・太刀


▲札幌からは2チームが10月25日の決勝大会に進む。おめでとうございました!

 終始安定した立ち回りを見せたハマーのごとく、有効気管の2チームが見事、10月25日に行われる決勝大会への切符を手にした! 個性溢れるP&Kは3位にランクイン。いやあ、じつにおもしろかったよ札幌大会も!

 そして大会終了後、優勝したハマーのごとくのtaさん、Dさんにインタビューを敢行したぞ。

大塚 優勝、おめでとうございます! 決勝で出した3分01秒という記録は、ふたりからするとどんなものなんですか?
ta 一発勝負のステージで、ということを考えると、それほど悪いタイムじゃないと思います。
D そうですね。決勝まえから「これくらいのタイムが出ればいいね」と話していたタイムと大差なかったので、上出来だと思います。
ta ウチら、練習のときの最速も2分17秒どまりなんです。それを考えればよかったなと。
大塚 予選の1分38秒というタイムは?
ta まあまあ……ですかね。
D これも、札幌の予選突破ラインを考えて「1分30秒台でまとめたい」って話していたところで出たタイムだったので、よかったと思います(笑)。
大塚 いいほうに回ってたんだねえ。ってことは、緊張もせずにできたと?
ta いやいや! 緊張してましたよー(苦笑)。
大塚 でもこれで、全国大会ですね!
D そうですねー。いまから緊張します……。
大塚 ライバルになりそうなチームって、どこかありますか?
D いや、僕らは全国的に見ればクルペッコもラギアクルスもタイムがよくないじゃないですか? なのでライバル以前に、腕を磨かないと。帰ってちょっと休んだら、すぐに決勝へ向けた練習を始めます。
ta 緊張して、疲れました……。決勝大会のポイントとなるのは、やっぱり1回戦のロアルドロス討伐ですね。僕ら、あまりロアルドロスは得意じゃないので。まずは、ここをなんとかして1回戦を突破しないと!
大塚 1回戦を突破できるの、いきなり4チームだけだしねぇ……。
D えええ! そんなに少ないんですか!! 知らなかった(苦笑)。
大塚 いきなり狭き門ですけど、がんばってくださいね!(笑)


▲優勝、準優勝のチームが記念撮影。決勝大会で北国旋風を巻き起こせるか!?

 そして、モンハンフェスタ`09の地区大会は幕を下ろした。片づけが進む会場で行われた終礼を聞いていると、カプコンのイベント担当のOさんがステージで「昨年を大幅に上回る32300名の皆さんに来場していただけました!!」と感激の面持ちで宣言していた。隣にいた藤岡さんを見ると、「よかったぁ……」と安堵の声でつぶやいている。そんな藤岡さんに、終礼後に話しかけた。するとモンハン世界の守り人は感慨深そうな表情で静かに語った。

「去年までのフェスタがものすごく盛り上がっていましたけど、『3(トライ)』がメインとなる今年はどうなるのか、正直想像できませんでした。それが、過去2回よりもたくさんの人が来場してくれたうえに、多くの人が「『3(トライ)』でモンハンデビューしました!」と言ってくれたんです。本当に、うれしかったなぁ……」

 そして良三さんは俺の顔を見るなり、「大塚さん、“福岡の暴走ランサー”覚えてる!?」と聞いてきた。もちろん、忘れるわけがない。こちらの記事に詳しいが、昨年のモンハンフェスタ`08の福岡大会で俺と良三さんといっしょにチャレンジクエストを行った、傍若無人な少年ランサーのことである。「もちろん覚えているけど、それがどしたの?」と聞き返すと、良三さんは弾けんばかりの笑顔でこんな報告をしてくれた。

「じつはね、このあいだの福岡大会の会場で少年に話しかけられたんですよ。「プロデューサー、俺らのこと覚えてる?」って。それがね、去年の暴走ランサーだったんよ! 「ああ!! 覚えてる覚えてる! 暴走ランサーやろ!!」って言ったら、すごくうれしそうに笑ってくれて。でも1年も経ったから、彼ら、すごく背が伸びていたんです。それを見て初めて、(モンハンフェスタも歴史ができてきたんだなあ)って実感したんですよね」

 人気シリーズとして定着し、さらにプレイヤーの裾野を伸ばしているからこそこういった全国規模のイベントを行うことができる。そして開催した結果、過去2回よりも大幅に多い来場者を招くことが実現でき、福岡の少年のようなリピーターも現れる。本当にステキな循環に『モンスターハンター』は乗っているんだなということを再確認できた気がした。

 さあ残すは、2009年10月25日の決勝大会だ。地区大会を勝ち上がった強者たちが“最速”の座を賭けてガチンコのぶつかり合いをするのだ。毎年、ドキドキするほどのドラマが展開される決勝大会。今年はどんな感動が待っているのだろうか……?

投稿者 大塚角満 : 21:34

【MH3】第55回 タイムアタック挑戦記 その7

 9月6日のモンハンフェスタ`09名古屋大会、9月15日のメディア大会が終了してから、つぎのモンハンフェスタ`09福岡大会までいくばくかの時間ができた。といっても、福岡大会までの20日ほどの時間をすべてタイムアタックの練習に費やせるわけもない。それどころかこの期間は、俺と江野本が所属するファミ通ニュースチームが1年でもっとも忙しくなる“東京ゲームショウ週間”で、練習はおろか、まともにゲーム機の電源を入れることすらできなくなるほど業務に忙殺されてしまうのだ。そして予想どおり今年も、幽体離脱してふたりに分裂し、作業を分担したくなるほど仕事の荒波にもまれた。俺たちに残された時間は、多くなかった。

 けっきょく、メディア大会終了後に我々がまともに練習できたのは2日ほどだった。正直、この時間の少なさは、もともとの能力が低い俺には致命的だと思えた。

 俺たちは練習を始めたら1発目から1分30秒とか1分20秒とかのタイムが叩き出せるほど極まったチームではない。何度も何度も試走をした結果、ようやくタイムが安定してきて、そういったタイムが出るようになるのである。これはすべて俺の責任なのだが、ハンマーを持つ我が腕はアイドリング(暖気)の時間をしっかりとらないとまともに走り出せない、冬場のハーレーやドゥカティの旧車みたいなものなのである。ホラ、よくあるでしょう。何シーズンかぶりにスキーに出かけて、「前回やったときはかなり滑れるようになっていたはず!」と勢い込んでゲレンデに降りてみたものの、勘を取り戻すまでに何時間もかかっちまって「こ、こんなはずじゃなかったのに……」と愕然とすることが……。けっきょくその日は勘を取り戻すことに精一杯で1センチも成長することができず、そのままスキーシーズンは終わってしまう。で、翌年再び「前回やったときはかなり滑れるようになっていたはず!」と鼻息荒く雪原に降り立つも、けっきょく滑れなくてボーゲンから始めることになり「こ、こんなはずじゃなかったのに……」という無間地獄に陥ってしまう……。……まあスキーに関しては俺はハンマーほど情けないことにはならないが、このまま脱線したことを容認して話を膨らませていくと二度とタイムアタックのことに触れなくなるのでこのへんでやめておきます。

 こんな感じで納得のいく練習時間を確保できぬまま、10月4日になってしまった。福岡入りする前日にどうにか2時間ほど時間を作って立ち回りの最終確認だけはできたのだが、そのときの最速タイムは1分36秒。平均だと2分ちょうどくらいで、「これだと予選突破はきびしいな……」と俺たちは顔を曇らせた。

 そして、大会当日。寝不足頭を揺すりながら西日本総合展示場に行くと、カプコンパブリシティーチームの担当さんから「逆鱗日和チームは11時15分くらいにタイムアタックをしてください」と告げられる。なるほど。11時15分か。了解了解。やりましょう! 不思議なほど、俺の心は落ち着いていた。見ると江野本もすました顔で、「11時15分かぁ。じゃあいまのうちに飲み物買ってきますね。何がいいですか?」と極めて平常心でいるように見える。まあこんだけ何度も挑戦していたら慣れてもくるし、いままでにかけるだけの恥はかいたという自覚があったので余計な力が入らずにいられたのかなと思う。しかしさすがに、モニターの前に立ち、コントローラーを握ったときには心臓の鼓動が速くなった。緊張、というよりも、胸が高鳴ってしかたがないという感じ。って、それを緊張っていうのか(苦笑)。まあとにかく、平常心からはちょっと離れたところに俺の心は飛んでいきそうになっていた、ってことですな。

 そんな俺の様子を見て江野本が、「大丈夫ですか?」と声をかけてきた。江野本も先ほどと比べると、いくぶん表情が硬くなっている。でも、そりゃそうだよな。これが最後のタイムアタックだもんな。いままで一生懸命練習してきたすべてを、ここで吐き出すんだもんな。こわばらずに気楽になんて、できるわけがないよ。真剣だったからこそ、この場面で奮えるんだよな! 予選突破なんてできなくてもいい。自分たちで納得ができるタイムが出せさえすれば、それでいい! 心臓の鼓動が少しずつ収まっていくのを感じながら、決意を込めて相棒に言った。

「うん、大丈夫だよ。……いこうか!

 俺の言葉を受けてコクンと頷き、元気な声で江野本が応えた。

「はい!! いきましょう!

 練習でグダグダになった俺が「あと1回だけ……」と言ったときに、必ずチャットで返ってきたのと同じセリフが耳に飛び込んできた。うん、いこう。クルペッコが待っている! これがチーム逆鱗日和の、最後のタイムアタックだ!!

 そして始まった最後のクルペッコ討伐タイムアタック。まずはベースキャンプで、俺が江野本から支給用大タル爆弾を受け取ることになっている。でもここで、江野本がアイテム選択に手間取った。しかしこれは、想定済みのこと。というのも最後に練習できたのは画面2分割モードで、それぞれが1画面でプレイできる本番とはアイテムリストに並ぶアイテムの数が違っていたのである。なのでプレイまえから「アイテムの受け渡しでタイムをロスするかも」と想定し、「もしそうなっても、慌てずにいこう」と話していたのだ。

 ちょっとイラつきながら差し出された支給用大タル爆弾を受け取り、続けて江野本が怪力の種を飲んだのを見て渾身のローキックを放つ。これで、怪力の種を飲んだあとのモーションをキャンセルすることができた。さあ、クルペッコのもとへ向かうぞ!

 俺たちの姿を見届けてヨチヨチと歩いてきたクルペッコのもとに駆け寄り、向かって左側に俺が支給用大タル爆弾を、右側に江野本が落とし穴を設置する。2個の大タル爆弾を置いたら俺はすぐさま右側にちょっとだけ寄って、小タル爆弾を置く。そして間髪入れずに飛び退いて、ハンマーのタメを開始。クルペッコが穴に落ちるのとほぼ同時にタメ3を頭にお見舞いしてバトル開始の銅鑼を鳴らした。江野本も俺のタメ3攻撃と同じタイミングでジャンプ斬りをくり出し、クルペッコに密着してその身体を斬り刻み始める。俺は練習どおり、穴に落ちて頭を振り回すクルペッコの左側に歩み寄って、縦振り攻撃を開始した。しかし、1発目の縦振りのタイミングが微妙にズレてしまう。いかん……。これだといちばん攻撃力が高い振り上げが当たらないかもしれん! そして心配したとおり、俺は1回目の振り上げを外してしまう。万事休す! いままでの俺だったらこの失敗でパニックになり、ドミノを崩すようにその後の立ち回りをしっちゃかめっちゃかにしていたことだろう。

 でも、このときの俺は違った。(1発外しても、すぐに取り戻せる!)と強く思うことができたのである。これは前回の記事で書いたとおり、クルペッコをしっかり観察し、正しいタイミングで攻撃をくり出す練習を何度も何度も積んだおかげでたどり着くことができた境地と言える。実際、俺はこのとき2発目の振り上げを当てることにだけ集中し、がむしゃらに攻撃をしたい気持ちを抑えて動きに“間”を作り、練習で身につけた“正しいタイミング”になった瞬間を逃さずに縦振りを始めた。そして、見事に振り上げ攻撃がクルペッコの頭にドカン! すぐさま、俺は隣の相棒に向かって叫んだ。

「すまん! 1発外してる! 気絶が遅れる!」

 江野本も、まわりの音に負けない大きな声で応えた。

「はい! 了解です!!」

 俺は焦らず、穴から飛び出したクルペッコが降下してくるタイミングを見計らってまたまた縦振りを始めた。1発目が頭部に当たり、思わずのけ反るクルペッコ。そのせいで俺と距離が開き、2発目の縦振りは外れてしまう。でも、これでいいのだ。このタイミングだったら……!! 俺のハンマーの振り上げ攻撃が、クルペッコの頭部目がけて飛んでいく。すると……!

 ボカンッ!!

 強烈な気絶のエフェクトが頭部からほとばしるのと同時に、クルペッコがドウッと倒れた。これは!!

「よし!! 気絶した!!」

 と俺は絶叫した。タイムロスはあったが、なんとか最小限のダメージで再び“俺たちの立ち回り”にクルペッコを乗せることができたぞ……! 江野本も順調に、肉質の軟らかいクルペッコの胸をズバズバと斬り刻んでいる。この流れならば、気絶が解除になった瞬間に麻痺になるのだ!

 そしてクルペッコは計算どおり、江野本の片手剣により麻痺状態にさせられた。ここまでは、致命的なミスは犯していない。でも問題はこのあとだ。足止めをする方法が切れたここからの立ち回りいかんで、タイムは大きく変わってくるのである。麻痺から開放されたクルペッコが、「クエーーーーッ!」と大きく鳴いた。さあこれが、本当に最後の勝負だ!

 そして−−。

 闘技場に、クエスト終了のファンファーレが鳴り響いた。若干ぐだぐだになりかけたが、感触的にはこれまでの4つの大会とは比べ物にならないくらい、まともなタイムが出ている気がするけど……?

 すぐにスタッフがすっ飛んできてガチャガチャとコントローラーを操作し、タイム確認画面を表示させた。緊張しながら覗き込むと……!

 記録 1分58秒

 練習時の最速タイムは1分16秒だったので、それよりも40秒以上遅いタイムである。タイム自体は、特筆すべきことのない平凡なものだ。それでもようやく、一生懸命練習をしてきた成果のひとつが出せたような気がした。

「やっと2分を切れましたねーーー!! まあタイムはどうっちゅうことないですけど……なんかホッとしました^^」

 にっこりと笑いながら、江野本が言った。この、毎日毎日明け方まで練習に付き合ってくれた相棒のためにもせめて1分30秒台を……と思っていたが、これが本番にできる、いまの俺の限界パフォーマンスなのだろう。笑顔を返しながら、俺が言った。

「……まあ、こんなところか! ……でもホント、長いことありがとうございました!! めっちゃ楽しかった!!

 笑いながら、江野本も言った。

「はい^^ 楽しかったですねー!! 本当に、お疲れ様でした!」

 こうして、俺たちのタイムアタック挑戦の日々は幕を下ろした。でもちょっとオマケとして、俺たちが出した1分58秒という記録は福岡予選の9位となり、ステージ上で名前を読み上げてもらえたのだ。そのときの模様はこちらの記事に詳しいが、辻本良三プロデューサーみずからが「9位のチームが気になります!!w」と言って、このチームが『逆鱗日和』を作っている大塚と江野本によるタッグであることを来場者に発信してくれたのである。遊び心あふれる良三さんらしい言葉のプレゼントを、俺と江野本はステージの下でありがたく受け取ったのだった。

 というわけで、じつに7回に及んだ“タイムアタック挑戦記”はこれにて終了です。タイムアタックに対する心構えを助言してくれた皆さん、ロックラックで目を血走らせてタイムアタックばかりやっていた俺たちをやさしく見守ってくれた仲間たち、そして、頼りないハンマー使いに文句ひとつ言わず付き合ってくれた相棒のえのっち。本当に、ありがとうございました!! 今回、真剣に競技としての『モンハン』に向き合うことができて、またいままでとは違う視点からもいろいろと書いていくことができそうです。皆様へのお礼は……よりおもしろくなる当コラムの中身で、ってことで……(笑)。

 さあてこれからは、いままでどおりのスローライフに戻って、ダラダラとロックラックライフを満喫するぞー! 俺たちの『3(トライ)』は、まだ始まったばかりだ!!

投稿者 大塚角満 : 18:33

【MH3】第54回 タイムアタック挑戦記 その6

 練習でタイムが安定しなかったり、本番でしょぼしょぼの結果になってしまう唯一にして最大の理由は、ハンマーを使う俺に立ち回りを安定させるだけの実力がないことだ。片手剣の江野本の立ち回りはMizunoe君の助言を得てから目に見えて安定して、おそらくそれなりに熟練したハンマー使いと組みさえすれば、大崩することなく毎回1分30秒くらいのタイムを叩き出せるくらいには極まっていたと思う。実際、それを証明するこんな出来事があった。

 ふたりで練習していたとある深夜、昨日のブログで書いた最強茨城カルテットの面々がロックラックにやってきた。そこで、何かの参考になればと、俺がEffort Cristal改め捨てられた狩人の反撃のジャッ君(片手剣担当)と、江野本がはらぺっこのヒロ君(ハンマー担当)と組んで闘技場のクルペッコ討伐に出向いたのである。結果、俺とジャッ君のコンビで2分7秒、江野本とヒロ君のコンビは1分33秒を記録して闘技場から戻ってきた。すると江野本はすっかり興奮して、つぎのようにまくし立てた。

「すごい!! 超新鮮!! めっちゃやりやすかった!! 大塚さん、うまいハンマー使いといっしょに行って勉強するといいですよ!!」

 このセリフが俺に与えた影響は、小さくなかった。オノレに実力がないことは百も承知していたが、実際にその事実を突きつけられたときのダメージは計り知れないものがある。でも、こんなことを言われて奮い立たなければ男じゃない。俺は、感情の波にもまれて溺れそうになりながらも懸命に水面に浮上し、あえぎながらも「目に物を見せてやるぞ……」とつぶやいた。そしてこの瞬間、俺が『モンハン』で遊び続けた5年の月日の中でもっとも真剣に立ち回りと向かいあうことになる“必死の日々”が始まったのである。

 俺が身につけなければならないのは、確実にクルペッコの頭部をハンマーで殴るタイミングと、それを実行するための技術だ。こうやってサラリと書くのは簡単だが、動いているクルペッコはそうそう簡単に弱点の頭を殴らせてはくれない。

 俺は、空き時間があったらいつでも練習ができるようにと、つねにWii本体を携帯していた。会社にいるときはWiiの電源は入れっぱなしで、キャラはいつも闘技場の前にたたずんでいる。そして、ちょっとでも隙を見つけたらモニターをゲーム画面にして練習。本当にがむしゃらに、何度も何度もくり返し闘技場に入ってはクルペッコを追い回した。

 深夜に帰宅したら、江野本とふたりでタイムアタックをした。しかし、個人練習を厚く行っていたこの時期、俺はひとりでクルペッコを相手にするときとふたりで相手にするときの微妙な立ち回りの違いに翻弄されて、動きがメチャクチャになってしまう。結果、当然のようにタイムはまったく伸びなくなり、精神はかなり荒んでいった。本当に心が折れそうになり、何度も「もう、俺みたいなヘタクソと組まないほうがいいよ」とチャットで打ちかける。でも、実際に打つ文字はなぜかいつも「ごめん……。もう1回だけいい?」というものばかり。へこたれることが悔しくて、「もう1回だけ」が10回にも20回にもなった。そんな状態なのに、相棒の江野本は一度も愚痴を吐かなかった。彼女から返ってきた言葉はいつも「はい! いきましょう!」というもの。こんな感じだったのでこのころは、オンライン上で練習できる午前4時までびっしりとロックラックに居座ってタイムアタックをしていた。でも、それでも俺は納得できなくて、江野本と別れたあとはオフラインの闘技場に入って空が明るくなるまでハンマーを振り回した。そこまでがむしゃらにやっても、俺のハンマーの精度は向上しなかった。

 もう、どうすりゃいいんだ俺は……。

 俺が行っていた個人練習は、波打ち際で砂の山を作っていたようなものなのかもしれない。時間と労力だけは費やしてうずたかく砂を積んでみたものの、つぎの瞬間にはザッパーンと強烈な波に洗われて積んだはずの砂は跡形もなく消えてしまった。極限状態に達した俺は、ほとんど無意識のうちにある男にメールを打った。

「ゴッディ〜……。ハンマーが上達しないよ〜……!」

 情けないことに、Effort Cristal改めartiesのゴッディに断末魔のメールを送ったのである(苦笑)。いまや日本でもっとも腕が立つハンターと言われ、最強のハンマー使いと羨望のまなざしで見られるこの男に、ついつい救援信号を発してしまったのだ。するとゴッディはすぐに、つぎのような返事を送ってくれた。

「ただがむしゃらに、ダメなタイミングで練習を重ねても上達しません。よく観察して、冷静に考えながらやってみると必ずいいタイミングが見つかると思います! そこで徹底的に反復練習をするといいですよ!」

 言われてみると確かに、俺はがむしゃらに回数を重ねることをマストだと思って、ただ闇雲にハンマーを振り回していた気がする。いや、きっとそうだったのだろう。俺はゴッディの助言を得て驚くほど心が軽くなり、「よし、クルペッコの動きを冷静に見て、どのタイミングでどの攻撃を出せば頭に当てられるのか、しばらく実験してみよう」とつぶやいた。

 そして、俺の立ち回りは変わった。

 闘技場での個人練習ではハンマーは落とし穴を持っていないので、俺はふつうに立ち回る中でクルペッコの頭に攻撃を当てるタイミングを捜した。そして冷静にクルペッコの動きを観察した結果、ついばみ攻撃から振り返った瞬間、右回転尻尾攻撃(いわゆるクルクルペッコ)の隙間などで、ハンマーの縦振り攻撃を脳天にお見舞いできることを知った。さらに、火打石攻撃が終了して振り返った瞬間には、縦振り2回からの振り上げ攻撃も頭にぶちかませることを突き止める。頭の中にかかっていた靄が、少しずつ晴れていくことを実感した。

 そして、今回のタイムアタックでもっとも重要となる“クルペッコが落とし穴に落ちたときの対応”については、闘技場ではなくふつうのクルペッコ討伐クエストを受注し、野生のクルペッコを相手に自分で落とし穴を作ってハンマーで殴るタイミングを捜した。しかもありがたいことに前出のゴッディがハンマーを、ジャッ君が麻痺属性の片手剣を装備して、何度も俺のクルペッコ討伐に同行してくれたのである。彼らは俺の目の前でクルペッコを落とし穴に落とし、ジャッ君が片手剣を振るい、ゴッディはハンマーで頭部を攻撃した。抜群のタイミングで、ゴッディのハンマーがクルペッコの頭部を直撃する。そう、彼らはふつうにクエストに同行したフリをして、俺の眼前で至高のハンマー使いの立ち回りを見せてくれたのだ。

「僕がハンマーを振るうタイミングはほかの人とぜんぜん違うので、あまり参考にならないと思いますけど^^;」

 とゴッディ。確かに、いま俺がたどり着いたタイミングと彼のタイミングはまるで違うのだが、「遠まわしでもいいから何か力になりたい!」という彼らのやさしさが伝わってきて、俺は涙が出るほどうれしかった。

 そんな時を経て臨んだメディア大会はけっきょく2位(ややこしくなるのでメディア大会にまつわるドタバタはそのうちどこかで……w)。ここでも自分たちの納得いく立ち回りができず、残る大会は10月4日の福岡大会のみとなってしまった(江野本が札幌に同行しないため)。このまま結果を残せず、俺たちのタイムアタック挑戦記は終わってしまうのか……? 次回、最終回!

投稿者 大塚角満 : 17:53

【MH3】第53回 地獄ローテーション〜火山の悪夢〜

 一般的なプレイ日記も書きたくてしかたないので、いきなり投下してしまおう。

 ここのところクルペッコ討伐のタイムアタックに明け暮れていた俺だが、これまでのスローライフから180度違う世界にずーっと浸っていられるわけもない。なので非常に歩みはゆっくりながらもコツコツと、ゲーム本編も進めておりました。やっぱり、友だちの会話や人様のブログなんかに出てくるあんなモンスターやこんなモンスターに1日でも早く会いたいじゃーん! というわけでハンターランクが20になったある日、かねてより恋焦がれていた”あのモンスター”に会いにいった。そのモンスターとは火山に潜む炎の化身、"炎戈竜"こと"アグナコトル"だ。

 俺がアグナコトルの存在を初めて知ったのは、『3(トライ)』が発売されるまえに行われた『モンスターハンター3(トライ)』完成披露会のときだ。そこで上映された最新PV(プロモーションビデオ)の中に、ゴロゴロゴロと猛スピードで転がるウラガンキン、白い疾風のように躍動するベリオロスとともに、真っ赤な火山の景色の中をザッパンザッパンと縦横無尽に駆け巡る炎の槍のようなモンスターがいたのだ。これまでのシリーズで火山を根城にしていたモンスターと言えばバサルモスやヴォルガノス、テオ・テスカトルなんかが思い出されるが、このPVの中にいるそれはこれら歴戦のモンスターのどれとも符合しない容姿と動きをしていた。

「なんなのあいつ……」

 会場の片隅で、俺は成す統べなく呆然とたたずみ続けた。

 そしてそのとき、確か辻本良三プロデューサーを完成披露会の会場でつかまえて、「あの、火山でドッパンザッパンと暴れていたモンスター、ありゃなんですか!?」と詰め寄ったと記憶している。良三さんは「あーw はいはいw」と笑ったあとに俺の目を見て、「あのね、あいつはかなり手強いモンスターですよ」とだけ言ったのだ。この言葉を聞いて、俺の期待はさらに高まった。

 いま思うとこれぞまさしくアグナコトルだったわけだが、俺の熱い想いとは裏腹に、彼はなかなか我が分身の前に現れてはくれなかった。しかし、ちょっとまえに開催した『角満式モンハン学〜ハンター編〜』発売記念イベントのとき、「せっかくなのでまだ見ぬモンスターの討伐にいこう!」ってことになり、ベリオロス、ウラガンキン、リオレウス、ディアブロスあたりとの対面を済ませたあと、俺が「噂に聞くアグナコトルとやらにも会ってみたい!」と言ってイベント参加者がクエストを捜してくれたことがあった。このイベントのとき、俺は1オチもせずに順調な狩りをしていたのだが、アグナコトルの名を聞いたベテランハンターたちは口々に「ついにアグナで、角満さんに土がつくのか」、「アグナで1オチする可能性大です」、「ヤツは一筋縄じゃいきませんよ」等々の脅しの言葉をたくさん投げかけてきたのだ。(マジで……? アグナに行きたいなんて、余計なこと言っちまったかな……)と、俺はこのモンスターの名前を口に出したことをちょっとだけ後悔した。しかし★3のアグナコトル討伐は“高難度クエスト”とかいうなかなかリストに載らないレアなものらしく、このときの参加者には誰ひとりとして出ていなかった。「いやあ〜、残念だなあ^^^^」と俺は心からの声を発した。

 で、話は冒頭に戻るのだが、ある日ロックラックでフラフラしていたら、おなじみEffort Cristalのゴッディ(ていうか、モンハンフェスタ`09東京大会優勝のartiesのGod君)とジャッ君(ていうか、モンハンフェスタ`09名古屋大会優勝の捨てられた狩人の反撃のJack君……ってややこしいな!w)、そしてその幼馴染みで、モンハンフェスタ`09東京大会、名古屋大会で決勝ステージに上った“はらぺっこ”のヒロ君がやってきた。ここにはらぺっこのハルス君を加えた幼馴染み4人組、通称“最強茨城カルテット”は、フィールドに行けばウラガンキンやラギアクルスと言った屈強なモンスターどもが「!! ダンナ! お疲れさまっス! 今日も男っぷりバツグンっスね!!」と、手をハエのようにこすり合わせてペコペコしだすという伝説があるくらいの、とんでもない猛者どもだったりする(我ながらすげえたとえだな……)。そんな恐るべき3人がやってきたので、俺はここぞとばかりに懇願した。

「ゴッディ〜、じゃっくー、ヒロく〜ん、アグナコトル連れてって〜」

 すると、3人の中ではもっとも人に近い(?)ヒロ君が、「いいですね! いきましょいきましょ!」とふたつ返事。最強の男・ゴッディはこのとき、『モンスターハンター ハンティングカード』のデッキを組む作業で忙しかったらしいが(笑)、「神も行くと申しておりますww」とジャッ君。晴れて4人で、アグナコトル討伐に出向くことになった。しかしなかなかクエストが出現せず、3人が何度も何度もクエストを回してようやく出してくれたんだけどな。

 さあ、初めてのアグナコトルだ。PVで激しく動き回る姿しか見ていないので、どんな容姿をしているのかもよくわからない。でもこの3人がいてくれれば俺は何もせずとも、遠目からじっくりと、その躍動を観察できるに違いない。俺はウキウキしながらクーラードリンクと回復系フルセットを準備し、火山の人となった。

 そして、クエストスタート! 俺はいそいそと支給品ボックスにとりつき、中身を物色する。茨城軍団の3人は何も取らずにベースキャンプを飛び出してしまったので、ありがたいことに取り放題である。うひひひひ。大漁だ大漁だ。と持てるだけの支給品をボックスから取り出して「さあ俺も行くぞ!」と思ったころには、3人にモンスターに発見されたときに出る目のアイコンがついていた。ビックリして、俺は絶叫した。

「おまえら、足速すぎだろ!!」

 昔から感じていたのだが、明らかに手練のハンターになればなるほど、足が速くなっている。こいつは間違いありません。ゴッディなんてとくにそうなのだが、モンスターがエリア移動をするな……と思ったころには、すでに移動先のエリアにいてハンマーを抱えてモンスターが降りてくるのを待ち構えているんだよ!? 「おまえはウサイン・ボルトか!」ってな感じですよ……。モンスターにしてみたら「ひぃぃぃ……。なんかおっかないのが待ってるんですけど……」ってなもんで、ぶっちゃけゴッディが待ち構えているエリアには降下したくないだろうなぁ、と思う(苦笑)。まあこれは要するに、モンスターの些細な動きも見逃さず先手先手で行動できるから、俺のような凡人からは足が速いように見える……ってことなんだけどね。

 話が逸れた。

 とにかく、俺が動き出したころには3人はすでにアグナコトルに遭遇して、バチバチのしばき合いを始めていたのである。大慌てで彼らのいるエリアに駆けつける俺。しかしそこで、悪夢のような光景を目撃してしまった。

 俺が狩場に到着したとき、落とし穴にハマっていた大きなモンスターがゴッディに頭を攻撃されて気絶した。そして、それが解けた瞬間に再び落とし穴に落ち、そいつから脱出したと思ったらまたまた落とし穴に落ちて、なんとか這い出たと思ったら今度は麻痺を食らう……という、恐るべき地獄のローテーションが展開されたのである。結果、5分とかからずに大きな赤いモンスターは討伐……!! 俺、穴でひたすらもがいているか、痺れて悶絶しているデカいモンスターしか見ていないんですけど……。呆然とする俺に向かって、ジャッ君が笑いながら言った。

「これが、アグナコトルですwww」

 火山に、俺の断末魔の悲鳴が轟いた。

「ちっともわからんわーーーー!!!!」

 ホント、恐ろしいハンターがいたものです……。

投稿者 大塚角満 : 19:03

【MH3】第52回 タイムアタック挑戦記 その5

 モンハンフェスタ`09大阪大会から戻ってきて、つぎの名古屋大会へ向けた練習を始めた俺と江野本ぎずもだったが、どうにもタイムは伸び悩んだ。ときたま1分30秒台のタイムが出ることはあっても、平均すると1分50秒台ってところ。名古屋大会でさらにタイムが極まることは確実だったので、安定して1分20秒台が出せるまで自分たちの実力の底上げを図りたかった。しかし、いまだ最速でも1分20秒台が出せずにいた。

 そんなあるとき、江野本が別件でモンハンフェスタ`09東京大会1位のartiesのひとり、Mizunoe君に電話をした。その中で「クルペッコ討伐のタイムが安定しない……。平均で1分50秒台なんだよね……」と打ち明けたという。すると、全国のタイムアタッカーから一目置かれる天才プレイヤーからつぎのような返事がきた。

「それはきっと、ガチでクルペッコと渡り合わなければいけない時間を作ってしまっているからです。ガムシャラに攻撃するのではなく、もっとも強い攻撃を弱点部位に当てられていますか? それができるだけで、まったく違ってきますよ」

「クルペッコは、こうやって、こうするといいですよ!」という具体的な“クルペッコ攻略法”ではなく、効率的にモンスターにダメージを与えるための“心構え”の部分のみを伝えてくれるのが、いかにもMizunoe君らしい。

 でも、天才のこの言葉は俺たちふたりにとって天啓とも言えるものだった。いままでこの“タイムアタック挑戦記”で何度も我々の立ち回りのフローチャートを掲載したが、そのフローを最後までやりきった段階でクルペッコが討伐できているのかといったら、じつはそんなことはまったくない。フローを最後までやりきったあとは、やたらとハンマーと片手剣を振り回してクルペッコを追い回す“ガチンコタイム”が始まっていたのである。当たり前のことだがガチンコタイムが長くなればなるほど、クルペッコがパタパタと飛んだり、その場でグルグル回る“クルクルペッコ”になることが多かった。こうなると俺たちは成す術がなくなり、暴れるクルペッコをイライラしながら追いかけて3分とか4分といったグダグダな記録を叩き出し、充血した目を怒らせてハァハァと荒い息をつくしかなかったのだ。

 でもMizunoe君の言葉を噛みしめてからオノレの立ち回りを振り返ったとき、ハンマーの打撃攻撃でダメージが通りやすい箇所(つまり肉質の軟らかいところ)をキチンと狙って攻撃できていたのかというとはなはだ心もとなかった。片手剣の江野本も、まったく同じ気持ちらしい。そう、俺たちはここにきてようやく“ダメージ効率”というものを考えるようになったわけだ。

「肉質の軟らかいところを集中して攻撃できるようにクルペッコを研究して、イチから立ち回りを構築し直しましょう!」

 と江野本が言った。壁を越えた先にある境地でタイムを安定させるには、もうそれしか方法はないと思えた。目を輝かせて、俺は言った。

「うん、そうしよう! 個人練習もしっかりやって、もっと効率よく立ち回れるように詰めていこう!」

 そして俺たちは、週刊ファミ通やら『モンスターハンター3(トライ) ルーキーズガイド』を開き、クルペッコのページと首っ引きになって打撃系武器と切断系武器でどうやれば効率よくダメージを与えられるのかを研究した。“アームチェアフィッシング”ならぬ“アームチェアタイムアタック”である。その結果、ハンマーは徹底して頭を、片手剣は胸、胴体を集中して攻撃するという結論に達する。そこで江野本が、こんなことを言った。

「クルペッコが落とし穴に落ちたりハンマーで気絶したとき、ウチはいままで頭を狙っている大塚さんに干渉しないように横とか後ろから攻撃していたんです。でも胸や胴体を狙うとなると、クルペッコの正面から首の横に入って攻撃するのがいちばんよさそう……。ハンマーに吹っ飛ばされちゃうかもしれませんけど、練習させてください」

 もちろん、俺に否はない。首の横にいる江野本を吹き飛ばしてしまったら、それはもっともダメージ効率がよく、気絶も狙える頭部にハンマーの攻撃が当たっていないということになるだろう。「俺もその立ち位置で、頭にハンマーの振り上げを当てる練習がしたい!」と俺は言った。

 俺たちはダメージ効率を強く意識しながら、何度も何度も練習をした。仕事が忙しくて練習を始められるのはいつも深夜1時過ぎとかになってしまったが、集中力を切らさないように1回やるごとに反省点をディスカッションして立ち回りを微調整していく。その甲斐あって、少しずつタイムは底上げされていった。

 そして立ち回りに調整を加えていった結果、闘技場に入ってからクルペッコが攻撃を始めるまでのあいだに、ハンマーが縦振り2回と振り上げ1回を当てる、という部分を切り捨てることにした。キレイに決まればこれでもいいのだが、成功率が上がらなかったうえに、俺がもたもたしていると江野本が作る落とし穴にクルペッコが落ちないという致命的な状況に陥ってしまうことが何度かあり、「このリスクは背負えないな……」ということになったのである。そこでふたりでアレコレと話し合い、何度か練習してみた結果、以下の作戦にたどり着いた。

1:ベースキャンプで江野本が支給用大タル爆弾を大塚に渡す。
2:ベースキャンプで江野本が怪力の種を飲むと同時に、大塚がこれを蹴飛ばしてモーションをキャンセルさせる。
3:わずかな時間差で大塚、江野本の順番で闘技場に入り、江野本がクルペッコの若干右側に落とし穴、大塚が左側に支給用大タル爆弾を2個設置する。
4:大塚、ちょっとだけ江野本側に動いて小タル爆弾を置く。そしてすぐに飛び退ってハンマーのタメを始める。
5:クルペッコが穴に落ちると同時に、その頭目がけてハンマーのタメ3をお見舞いする。江野本は例の位置に入って片手剣で攻撃開始。
6:大塚、クルペッコの首を挟んで左側に立ち、縦振り2回からの振り上げを頭に。これを2セットくり返す。
7:クルペッコが穴から脱出し、着地すると同時にハンマーの縦振りを1回頭にお見舞い。これで確実に、クルペッコは右側に倒れて気絶する。
8:大塚、倒れているクルペッコの頭に縦振り2回からの振り上げ攻撃を2セット食らわせる。江野本は胸と胴体を狙って斬り続ける。
9:気絶から立ち上がると同時に、クルペッコは片手剣の麻痺攻撃で麻痺状態に。大塚、またまた縦振り2回からの振り上げを2セット、クルペッコの頭部に。

 この作戦にたどり着いたとき、俺と江野本は同時にチャットで「wwwwww」とたくさんの笑いマークを打った。もう、これが笑わずにいられるものか。モニターの向こうで明らかに爆笑しながら、江野本が言う。

「あの……www これって、最初のころに立てた作戦とほとんど同じじゃない?www」

 腹を抱えて笑いながら、俺は江野本の言葉に頷いた。

「俺も思った!!www ……けっきょく、ボロボロになるまで作戦をいじくり回した結果、たどり着いたのはスタート地点じゃねえか!!www」

 そう……。ここにきてようやく俺たちは、いいタイムが出ないことを作戦のせいにすることのオロカさに気づいたのだ。もちろん、作戦はタイムアタックをするうえでの“幹”になるものなのでプライオリティーはもっとも高い。でもだからこそ、ある程度これが固まったらむやみやたらに動かさず、それに即した効率的な立ち回りをするように努力しないといけないのである。小手先だけで何とかしようと思うから、たまたまいいタイムが出た危うくてマニアックな作戦に手を出してしまうのだろう。

 俺たちは、すごろくで“振り出しに戻る”を踏んだような気持ちになりながらも、比較的落ち着いてクルペッコの前に立った。すると……。

 最速 1分18秒!

 これは俺たちにしたら突然変異のようなタイムだが、驚いたことに平均でも、1分20秒台後半から1分35秒くらいでまとめることができるようになった。こいつは自分たちでもビックリの、驚異的な進歩である。

 ここまで本当にさまざまな紆余曲折があったし、遠回りしたのだろうが、決して無駄なことをしてきたわけではないんだろうな。これだけの時間を費やして本気で立ち向かったからこそ、練習し始めのころでは考えられないくらいハンマー、片手剣での立ち回りがわかってきたのだから。その証拠に、序盤に作ったシンプルな作戦と同じような立ち回りで、ここまでのタイムが出せるようになった。確実にチームとしての底上げがなされたことを、俺たちは実感した。

 しかしサラっと書いてしまうが、必勝の決意を持って臨んだ名古屋大会でのクルペッコ討伐は、惨憺たる結果に終わってしまう。でもこのときはいろいろとあったので、俺と江野本の中では名古屋の結果は「ノーカウント」ということになっていたりするのだ。なので、タイムも書かない。ていうか、覚えていない。

 そんな名古屋大会の会場で、辻本良三プロデューサーに話しかけられた。ニヤニヤしながら「大塚さん、名古屋の美容室も予約しておきましたからね。ていうか、ボチボチきつくなってきたんやないですか?」と言う良三さんに向かって、俺は悔し紛れに言い放った。

「いいの!! つぎの俺たちの目標は、9月15日に行われるメディア対抗タイムアタック大会なんすよ!! そこで優勝してやる!!」

 メディア対抗タイムアタック大会というのは、ゲーム誌や一般メディアのゲーム担当者を集めて行う大会のこと。予選の種目はモンハンフェスタ`09と同じクルペッコ討伐で、参加14チーム中、上位2チームだけが決勝の種目であるボルボロス討伐に挑めることになっている。

 しかし俺の宣言を聞いた良三さんは、腹を抱えて笑いながらつぎのように言った。

「なんやそれ!!w めっちゃハードル下がっとるやん!!(爆笑)」

 ……まあ確かに、そうなんだけどネ(苦笑)。でもとりあえず、カプコンのパブリシティーチームには出場するって言っちゃったし、出るからには本気で挑んで優勝しないとな!

 というわけで、タイムアタック挑戦記はもうちょっとだけ続きます。ぶっちゃけ、メディア大会の結果は中途半端すぎて恥ずかしいったらないので、一刻も早くモンハンフェスタ`09福岡大会のことを書きたいんですけど……(笑)。

投稿者 大塚角満 : 12:50

【MH3】第51回 モンハンフェスタ`09 福岡大会・狩王決定戦編

 モンハンフェスタ`09福岡大会リポートの続きです。速報ですでにお伝えしているが、ここでは『3(トライ)』を使ったタイムアタック大会“狩王決定戦”の福岡大会の詳細をお届けしよう。

 まず、クルペッコ討伐のタイムを競う予選。決勝ステージに上がる上位8チームと入賞の2チームは以下のとおり!

1位 シャクレ 1分18秒

2位 PhalaenoちYUKI 1分22秒

3位 持ってるdos 1分24秒

4位 Jast25`s 1分32秒

5位 マクロコスモス 1分36秒

6位 RUNAWAY 1分45秒

7位 SURIRAR 1分46秒

8位 Blue Impact 1分53秒

9位 逆鱗日和 1分58秒

10位 黒猫狩猟団 2分00秒

 最初の会場だった東京は除いて、その後の大阪、名古屋大会に比べるとだいぶタイムは落ち着いた印象だ。参加チームの数自体が東名阪の大会よりも少なくなるし、なにより3会場目の名古屋から1ヵ月の冷却期間があったので、この間も緊張感をキープして練習を続けるには、かなりの集中力を要したはず(つぎの札幌大会に参加するチームも含めてだけど)。そんな中での一発勝負できっちりと1分台でまとめた8チームが決勝ステージに上がることになったのである。ちなみに、速報でも書いたが1位のシャクレはモンハンフェスタ`08の福岡大会を制し、その後全国3位にまでなる“タレメ”がチーム名を変えたもの。そして4位のJast25`sはモンハンフェスタ`07の全国チャンピオンだ。そして5位のマクロコスモスは、モンハンフェスタ`08の福岡代表。地元の強豪チームが順当に勝ち上がった印象だ。

 さてここから、みっともないほど手前味噌なことを586文字ほど書かせてもらう。読者の皆様はちょいと覚悟してから読んでくださいね……。

 ステージ上でMCのウサミス(宇佐美友紀さん)が入賞2チームを発表した直後、辻本良三プロデューサーが「ちょっと待ってください! 気になるチームがあります……。9位のチームが、気になります!」と苦笑いしながら突っ込みを入れてきたのだ。ウサミスも「もしかして、このチームは……」とじつにわざとらしい反応をする。すると良三さんは観念したのか開き直ったかのような口調になり、はっきりとこう言ったのだ!

「これはですね、某ブログで僕を友だち扱いして好き勝手書いてる、あの人のチームじゃないですかねえ……。ていうかね、『逆鱗日和』っていうブログ本があるんですけど、その人のチームだと思います。……ていうか、大塚さんですね。大塚さんのチームです!www」

 そう! ようやく俺と江野本ぎずもによる“チーム逆鱗日和”が、9位入賞を果たしたのですっ!! 苦節1ヵ月……。クルペッコ討伐の練習時間は100時間に達し、予選に参加させてもらうのも4会場目になっていた。詳しくは“タイムアタック挑戦記”で書くつもりだが、ようやく一定の成果を出せたことだけ、ここに報告させていただきます……。

 さて。

 福岡大会でも上位8チームが挑むのは、水中闘技場を舞台にしたラギアクルス討伐だ。すでに速報をアップしているので、ここでも前フリなしで福岡大会決勝の結果を公開しよう!

1位 シャクレ 2分44秒 太刀・太刀

2位 Jast25`S 2分53秒 太刀・太刀

3位 PhalaenoちYUKI 3分14秒 太刀・ランス

4位 SURIRAR 3分16秒 太刀・太刀

5位 マクロコスモス 3分19秒 太刀・太刀

6位 持ってるdos 3分25秒 太刀・太刀

7位 RANAWAY 5分59秒 太刀・太刀

8位 Blue Impact 6分51秒 太刀・太刀

 見事、全国でも実績のある2チームがすばらしいタイムを叩き出して福岡代表となったのである。

 それにしてもこの決勝の、ハイレベルな激戦ときたら……。6位でもタイムは3分25秒という極まったもので、ここまでくるとステージ下でスクリーンを見ているだけではどのチームが速かったのかがさっぱりわからない。おかげで決勝のステージを見ながら江野本と「ど、どこが速かったんですか……?」、「どれも同じくらいに思えたんですけど……」、「派手なガッツポーズをしていたJast25`sはかなり速かった?」、「ガッツポーズではシャクレも負けてなかったような」なんていうマヌケな話に終始してしまったよ。それくらい上位のチームは拮抗して見えたし、実際に上にあるとおりの激戦になったのである。心から、どのチームが勝ってもおかしくない、緊張感に満ちたすばらしいステージだったと思うわ……。

 それでは恒例の、優勝チームインタビューをお届けしよう。福岡大会V2を成し遂げた、シャクレのダイさん、太郎さんだ。

大塚 さあ、優勝したシャクレ(旧・タレメ)のおふたりです。このふたり、昨年のフェスタで全国3位になったわけですが、そのときの立ち回りを見た次長課長の井上さんが、「タレメのふたりは本当にうまい!」といまだに言ってるくらいすごいチームなんです。さて、これで福岡大会はV2ですね。
太郎 いやぁ〜、去年は運で優勝できたようなものなんです。でも今年はきっちりと練習もできたので、「実力で勝てた!」という実感があります。なので今年のほうがうれしいですね。
ダイ うん、V2はものすごくうれしいですね!
江野本 プレッシャーはめちゃくちゃあったんじゃないですか?
ダイ 全国3位でしたからねえ。……まあ、覚えられてはいないと思っていましたけど(笑)。
江野本 チーム名を変えたのは、プレッシャーから開放されるため? って思ったんですけど、どうですか?(笑)
ダイ これは、ジンクスなんです。去年のJast25`sさんとか今年のもうゲネポさんとか、全国区のチームが名前を変えずに苦戦したじゃないですか? それが、Effort Cristalさんは名前を変えて地区予選を勝ち抜いた……(07年のGotsummerが08年にEffort Cristalに改名したことを指すと思われる)。
大塚 ああ、なるほど〜……。
太郎 ジンクスを跳ね除けるために、名前を変えてみたんです。
大塚 練習は、クルペッコとラギアクルス、どっちを多めにやったの?
太郎 ふたりで重点的にやったのは、ラギアクルスですね。
ダイ 僕は、嫁さんがタイムアタックの練習に付き合ってくれたんです。なので、両方きっちり練習できましたね。
大塚 へぇ〜! で、ペッコのタイムは1分18秒だったわけですけど、ふたりにするとこのタイムはどうなの?
ダイ 平均的なタイムですね。
太郎 うん。「これくらい出せればいいな」って思っていたのがこのあたりだったので、よかったです。……でも、予想に反して1位になりましたけど(笑)。
ダイ そうそう(苦笑)。
太郎 うわ、大トリか……。3位くらいがよかったな……って感じでした(笑)。
大塚 ああ、そうかそうか(笑)。ちなみに、緊張は?
太郎 してましたねぇ……。
ダイ 僕も緊張していました。1分18秒が出て、思わず叫んじゃいましたもん。「おっしゃ!」って。
大塚 じゃあ、ラギアとペッコを比べると、緊張が大きかったのは?
太郎ダイ やっぱりペッコです。
大塚 そうなるよねぇ〜。でも見事に突破して、つぎはラギアクルス。タイムは2分44秒でしたけど、これは今大会最速だよね。
太郎 ですね! この大会では、いまのところの最速になりました。
大塚 いい立ち回りができた?
ダイ いや、僕が2回、ラギアの攻撃を食らっているんです。なので、かなり焦っていました。
太郎 自分は、1発も攻撃を食らわずによかったんですけどねー。
ダイ なので予想よりも30秒くらい遅かったんです。2分20秒台が目標だったので。
大塚 うへぇ……。すげえな……。じゃあ練習では平均してそれくらいが出ていると?
太郎 そうですね。平均は2分20秒〜30秒くらいだと思います。
大塚 うーむ(苦笑)。……そうだ、今回は1位がシャクレ、2位がJast25`sと、地元九州の2チームが代表になったじゃないですか? これについては、かなり思い入れがあるのでは?
ダイ はい! やっぱりリベンジ組に九州の枠は渡したくない! って思ってやっていたので(にっこり)。
太郎 負けたくない! って思ってがんばってきたので、そこは素直にうれしかったですねー。
ダイ Jastさんと、ワンツーフィニッシュしたいって思っていましたし。それも実現できました。
江野本 ウチ、すごく鮮明に覚えているんですけど、去年のフェスタの決勝大会でJastのふたりに「福岡に金色のトロフィーを持って帰れなくてごめんなさい」って言ってたじゃないですか?
ダイ はい(笑)。「スミマセン、これが限界です!」って言いましたね(テレ笑い)。
江野本 そしたらJastも「いいよいいよ! よくがんばったよ!」って涙ながらに言ってて。今回、そんな2チームが決勝に行くんだなあって感慨深く思いました。
大塚 では決勝大会ですけど、自信のほどは?
ダイ まだどのクエストになるのかわかりませんけど、まあこのふたりならなんとかなるかな、って思っています!
大塚 おお〜! 期待してるので、がんばってくださいね!
太郎ダイ はい! がんばります!

 そして、やっぱりここはこのふたりにも登場してもらわねばなるまい。モンハンフェスタ初代チャンピオンにして、見事福岡大会を2位通過したJast25`sだ。反骨の涙腺クラッシャー・こんぺい君と、東シナ海の諸葛孔明・raven君(命名・大塚角満。こちらの記事参照(笑))に話を聞いた。

大塚 ついに悲願の決勝大会進出だねぇ……。
こんぺい ホントにそうですね(にっこり)。
大塚江野本 おめでとうございます!
こんぺいraven ありがとうございます!!
大塚 率直なところ、ホッとしたのとうれしいのと、どっちが強い?
raven うわー、どっちかなぁ……って、どっちもです!
こんぺい うん、両方ありますね(笑)。ホッとしたし、とにかくうれしいし……。
raven 正直に言うと、この大会を通じていい立ち回りができた時点ですごくホッとして、「これだったら負けても悔いはない」って思ったんです。で、結果を見たら2位ってなっていたので、「やった!!」ですよ。
大塚 raven君、すごく緊張していたよね。下で見ていて、わかったよ。
raven もう、ダメなんですよ(苦笑)。むちゃくちゃ緊張するんです。
江野本 でも、いままで見てきたなかで、いちばん緊張していたと思うよ、今日のふたりは。
大塚 だね。……ウチらの“角満カップ”よりも緊張した?(ニヤニヤ)
こんぺい え! あ、いやぁ〜(ごまかし笑い)。
raven アレもアレでキツいですよ!!(笑)
大塚江野本 あはははは!!
こんぺい God君がね!
raven そう! God君(Effort Cristal、artiesのGod君のこと)のかませ犬にしかなれないのがたまらなくて!(笑)
江野本 そんなことないよー!!
大塚 でもこれで、そんなゴッディ(God君のこと)たちとも全国でぶつかるわけだし。
こんぺい はい。がっぷり四つに組んでやりますよ! ……玉砕するかもしれませんけど、自分たちの力を出し切ります!
raven うん、がんばりますよ!
江野本 ライバルっていうと、やっぱりGod、Mizunoeコンビ(arties)になるの?
こんぺい そうなりますね。
raven もうゲネポが、まだどうなるかわかりませんからね。なので、馴染みの顔で壁になるのは、間違いなくあのふたりです。
大塚 ……しっかしあのふたりは、全国的に包囲網を敷かれているなあ(笑)。
江野本 ホントにね(笑)。目立つからなあ。
大塚 でも今回、地元のシャクレとともに代表になれたね。
こんぺい そうなんです! 去年から仲良くしていたふたりなので、すごくうれしいです!
raven 本当にうれしいんです。「このメンバーで全国に行けるんだ!」って。いっしょに行きたいって、心から思っていたので。
大塚江野本 うんうん……。
大塚 でもよく、集中力を切らさずに練習できたね。……長かったでしょう。
こんぺいraven ……長かったです(苦笑)。
江野本 でも、これまでの大会の動画がアップされていたし、知り合いも多いからいろいろ聞くでしょう? そのへんは、どうだったの?
raven だいぶ引っ張られましたよ、作戦的に。ほとんどトレースになっちゃいましたから。でも、さっきの決勝に上がったチームと話をして、これまでの大会の動画に引っ張られて考えること、研究することを半ば放棄してしまった自分を反省したんです。
大塚 あ、そうなんだ。
raven はい。彼らと作戦の情報交換をしたら、「そこまで考えると、そんなところまで進歩するんだ……」ってことに気づかされたんです。で、もっとがんばらないと! って思ったんですよね。
江野本 具体的には、どんな部分で?
raven “ひるみ値”の計算が、すごく緻密だったんです。彼らはひるみを取るために、攻撃を控える一瞬を加えているんですよ。攻撃をいったん控えることでダウンを取って、そこでダメージを稼ぐ……という段階に行っているんです。僕らはそうではなく、ひるみを取るまでに最大火力を投入する……って感じだったんですよね。それを複数のチームが、とくにラギアがそうだったんですけど上位のチームのほとんどが“攻撃を控える一瞬”を意識して立ち回っていたんです。
大塚 へぇ〜。
raven タイムアタックにおいてひるみ値の計算って基本なんですけど、僕らはこれまでの大会の動画を見て、ほとんどそのままトレースしてしまって……。そこに悔いが残ります。
こんぺい だよねぇ……。
raven だからもっとちゃんと、勉強しないといけないんです。
江野本 Jastのふたりはずっと“魅せるプレイ”をしたいって思ってやってきたわけだけど、今回のラギアクルスでは、そこに至らなかったと。
raven そうですね。できればいいものが見せたいんですけど、地区大会は抜けないと意味がないので、そこはすでに速いタイムを出しているチームの立ち回りに呑まれてしまった感じです……。
江野本 でもこれで、つぎの決勝大会で魅せられるね。
こんぺい そうですね、そこでやるしかないですね!
raven はい! 何かおもしろいものを見せられるように、がんばります!

 というわけで、モンハンフェスタ`09の地区大会は札幌大会を残すのみとなりました! もうすでに寂しい気分満載なんですが(苦笑)、10月11日に札幌に乗り込みます! そこでもまた、ステキな試合が見られるといいなあ。

投稿者 大塚角満 : 15:27

【MH3】第50回 モンハンフェスタ`09福岡大会 序章編

 2009年10月4日、朝。

 枕元に置いておいた携帯電話が「ブルブルッ! ブルブルッ!」と元気に震えた。寝ぼけ眼で時計を見ると、デジタルの無機質な数字で“7:33”と表示されている。あれぇ〜? 携帯電話の目覚ましはいつも午前8時30分にセットしてあるのに、なんで1時間もズレたのかなぁ……? まだ3割程度しか目覚めていない脳ミソからにょろにょろと触手を伸ばし、目覚ましアラームを止めようと思って携帯電話を手に取り画面を見ると、なぜかそこに“えのっち”と表示されているではないか。なんだこりゃ。コレ、えのっちの携帯電話だっけ……? どうしてこんなところに転がっているんだ? しかし画面に自分のニックネームを書き込んでおくなんて、自意識過剰だなぁ(笑)。わはははは〜と笑ったところでようやく、江野本ぎずもからの着信だと気づいた。朝っぱらからナニゴトだ? 3割6分ほど目覚めた頭に携帯電話を押しつけ、フニャラ声で俺は言った。

「もひもひぃ? ぎじゅもしゃんれすか? 朝からどうひたんどす?」

 すると携帯電話から、人間ここまで呆れることができるんだと感心したくなるくらいの苦笑いボイスが流れてきた。

「……大塚さん、7時半ですよね??

 ん? どれどれ……。うん、確かに7時半だ。いや、正確には7時34分になっているぞ。携帯電話に向かって、俺は言った。

「へい、たひかにいま、7時半れすね」

 と言ったとたん、携帯電話のスピーカーからグレムリン化した女の怒声が響いた。

じゃなくって!! 今朝の集合時間は7時半ですよね? って言ったの!! 完全に、いま起きたでしょう!! もう、駅でコーヒー飲んで待ってますからね……!」

 ハイ、完璧に寝坊しました。

 一瞬で目を覚ました俺はなんと6分で出発の準備を整え、アグナコトルのように身体に炎を纏って待っていた江野本ぎずもと合流。モンハンフェスタ`09福岡大会の会場である小倉の西日本総合展示場へと向かったのでした……。

 さて、気を取り直してモンハンフェスタ`09福岡大会のリポートです(苦笑)。

 9月6日の名古屋大会以来、約1ヵ月ぶりとなるモンハンフェスタ`09の地区大会。福岡でモンハンフェスタが開催されるのは、なんと1年ぶりのことである(あたりめーだ)。天気は、晴れ。高くなった空のところどころに秋の雲がなびく、じつに気持ちのいい日になった。

 会場に到着すると、そこにはすでにとぐろを巻くようなハンターの行列が!! 毎年、福岡、札幌大会はどれくらいの人が集まるのか想像ができなくて会場に着くまでドキドキしっぱなしなのだが、毎回杞憂に終わるんだよな。今年も福岡は、たくさんの人が来てくれました!! というわけで、写真で会場の様子をお伝えしましょー。


▲福岡大会にも、これだけのハンターが早朝から詰め掛けました! ちなみに総来場者数は4000人! 昨年が2500人だから、じつに1.5倍増ですか? すごい! ちなみに東名阪の大会よりも、親子連れが多くてほのぼのとした雰囲気に満ちておりましたー。


▲福岡でも、看板娘3人とアイルーがお出迎え♪


▲会場の様子。これはペイントボール投げですな。


▲そしてこちらは輪投げ。お祭りの縁日のようなムードが漂っております。


▲物販コーナーは福岡でも大盛況。100分待ちくらいになっていました。

 さてさて、ここからステージイベントの様子をリポートしましょう! まずはおなじみ、『モンハン』開発陣が登場してのトーク&チャレンジクエストだ。『3(トライ)』の辻本良三プロデューサー、藤岡要ディレクター、小嶋慎太郎アシスタントプロデューサー、木下研人メインプランナー、『2nd G』の一瀬泰範ディレクターが登壇し、ここ福岡でもゆる〜いトークと爆笑プレイを見せてくれました。


▲藤岡ディレクターと並ぶラギア装備のハンターさん。なぜかこの日、ハンターさんはやたらと緊張していたらしく、ステージに現れたとき手と足がいっしょに出ておりましたよ(笑)。

 今回、良三さん、藤岡さん、研人さん、一瀬さんの4人が挑戦するのは、火山に棲まう炎の化身・アグナコトルとなった。討伐目標をアグナコトルにしたことについて、チームリーダーの研人さんは、「同じ火山に棲むウラガンキンは有名ですが、アグナコトルは見たことがないという人も多いはず。なのでそんな皆さんのために、アグナコトルを狩るお手本のプレイをお見せしたいと思います!」とみずからハードルを上げる大胆な宣言。続けて、「このアグナコトルは“高難度クエスト”ということで、★3のクエストの中ではかなり手強いものです。なので今回は3人ではなく、4人の力が必要です!」と、遠まわし(でもないか)な良三さん批判を展開(意味がわからない人は東京大会リポート大阪大会リポート名古屋大会リポートを読もう!)。すかさず良三さんは「おいおい! いつも4人でやっとるやろ!」と突っ込んでいたが、藤岡さんの「ホントにダイジョブなの……?」という不安そうな声にかき消されておりました(笑)。ちなみに今回の4人の装備は、一瀬さんがスラッシュアックスのバンカーバスター(麻痺属性)にレウス装備一式、研人さんはロアルドロスのボウガン(水冷弾速射)に、こちらもレウス装備一式。藤岡さんは水属性のスパイラルランスを手に、闘技場をこなすことでもらえる“コイン”をもとに作る“城塞遊撃隊”シリーズで身を固めていた。しかも「スキルとして広域化が発動してます」というステキなオマケつき。そして最後の良三さんはごっついウラガンキン装備に身を包み、武器は、

 サメ

 でした。……って、何回サメ(水属性のランス、シャークキングね)持ってくるんだ!! ……でもよくよく考えると今回だけは、水属性が有効なアグナコトルが相手なので適材適所ってことになるのか……。うーむ……。まあそれだけ、このクラスで挑むアグナコトルが手強いってことだろうな。その証拠に研人さんは良三さんに向かって、かなーり素で「ホントに参加してくださいね?」とお願いしている。しかしハンターに向かって「狩りに参加してね」とお願いするあたり、これまでに良三さんがどれだけの狼藉を働いてきたかがよくわかるやりとりでありますなあ。

 さて、アグナコトルだ。こやつについては俺も近々ブログに書こうと思っているのだが、なかなか一筋縄ではいかない。溶岩を身体にまとって、「どっからどう見ても近寄りたくないナ」という姿をしているときは肉質が軟らかくなっていて、逆に溶岩が取れて体色が黒くなったときはガッキガキに攻撃が弾かれてしまう。「前脚、後ろ脚、そして尻尾は攻撃が当てやすいのでそこを狙う感じで!」と研人さん。かなーり必死である。しかし、そうそう簡単にことは運ばない。いつものように(?)狩場に、不自然な白い霧が立ち込めたのだ。

「さすが高難度クエスト」

 と良三さん。しかし藤岡さんは「こんな温泉みたいな効果、入れてないぞ!」と苦笑い。立ち込める霧はすさまじい勢いで濃さを増し、ついには大型スクリーンに映し出される火山の風景は完全にホワイトアウトしてしまった。この様子を見て、良三さんが叫んだ。

なんやコレ! まったく画面が見えん!!」

 ……って、アンタがケムリ玉投げまくったからだろ!!

 こんな感じでスタートしたアグナコトル討伐だが、良三さんも含めて本当に真剣に狩りをしている感じだった(当たり前なんだが)。アグナコトルにピタリと張りつき、キャンセル突きを駆使して前脚を部位破壊する藤岡さん。スラッシュアックスの剣モードから属性開放突きをお見舞いする一瀬さん。自慢の水冷弾速射をぶちかます研人さん……。そして良三さんも空気を読んだのか、珍しくマジメにシビレ罠を設置。しかしそれを待っていたかのようにアグナコトルはすたこらさっさと別エリアに移動するという、さらに空気を読んだ行動をしたではないか(笑)。良三さんの見極めの悪さに、会場は爆笑に包まれた。


▲アグナコトルに挑む開発者4人。ざっぱんざっぱんと縦横無尽に火山を泳ぐこのモンスターに、手こずること手こずること……。

 それでも今回は、全員が罠や閃光玉をしこたま持ち込んだ甲斐もあって、順調にダメージを与えられていたと思う。しかし、部位破壊や尻尾の切断にも成功し、あと1歩というところまで追い詰めたところで、マタタビ爆弾(モンスターに当てると付近のアイルー、メラルーがその対象を攻撃するようになる)を一瀬さんにぶつけて遊んでいた良三さんにアグナコトルが猛アタックし、なんとこれで1オチ(笑)。今フェスタを通じて初めて、開発者チャレンジクエストで犠牲者が出た(ていうか自業自得)。

 ちなみにクエスト自体は、制限時間15分ギリギリで見事クリアー! 「正直、無理やと思ってた……(苦笑)」という一瀬さんの言葉に実感がこもっておりました。

 そしてお次は、『3(トライ)』に登場するモンスターの生態を藤岡さんが詳しく解説してくれる“教えて藤岡先生!”のコーナーだ。今回のテーマは“火山に棲むモンスター”で、ウラガンキンとアグナコトルについて語られた。小嶋助手とのやりとりも含めて再現しよう。

◆ウラガンキンの生態

藤岡先生 ウラガンキンと言えば突き出た顎が特徴的ですが、これは火山の鉱石を溶岩で溶かし、顎にコーティングしているんです。なので成長とともに大きくなっています。なぜこういうことをするのかと言うと、ウラガンキンは岩石を食べるのですが、そのために大量の岩を砕く必要がある。それでこのように発達したのです。それともうひとつ、このモンスターは体重が重い。それを2本の脚で支えるわけですが、身体の中心に重心があるほうがバランスを取りやすいのです。そのために、顎を重くしているという説があります。また、身体を丸めて転がるときにも、身体の中心に重心があるほうが都合がいいですからね。

小嶋助手 その、転がるときに利用していると思われる背中の突起物が気になるのですが?

藤岡先生 転がるときに地面をがっちり噛めたほうがいいわけですが、そのグリップの役目を果たすのが背中の棘。またこれは成長するとどんどん伸びてくるのですが、転がることで先端部分を削っているようです。その証拠に、棘の先端は平らでキレイでしょう。人間が爪が伸びたら切るのと同じ。 

小嶋助手 このウラガンキン、雄と雌はどうやって区別するんですか?

藤岡先生 繁殖するわけですから雌雄はあります。でも外見上ではほとんど違いがないので見分けるのは非常に難しいです。ちなみに、ウラガンキンの体表がキラキラしているのは食べた鉱石の成分が出ているからなのですが、繁殖期になると雄は美しい鉱石をたくさん食べるようになります。そうすると、より美しい色が体表に現れるようになり、それで雌にアピールするようになる。なので美しいウラガンキンは繁殖期の雄かもしれませんね。

◆アグナコトルの生態

藤岡先生 アグナコトルは火山のマグマの中にも平気で潜っていきますが、それはマグマの熱にも耐えられる外殻があるから。ではなぜ耐えられるのかと言うと、外殻にある鱗の隙間から絶えず、不燃性の体液が噴出しているからです。そしてマグマに潜るとそれが体表に付着しますが、これはマグマがくっつきやすいように身体に凹凸があるからなのです。

小嶋助手 地面に潜るときなどに使うクチバシの秘密は?

藤岡先生 当然、ものすごく堅いです。これはなぜかというと、もともと火山に棲んでいる生き物というものは、外殻がカタくなりがちなんです。その外殻を割って食事をするために、アグナコトルのクチバシは堅く進化しました。カニの殻を割って食べるような感じでしょうか。ときたまクチバシをカチカチ鳴らすのは仲間とコミュニケーションを取ったり、外敵に対する威嚇の行動だとも言われております。

◆ナバルデウスの生態

 どの会場でも最後に、『3(トライ)』を彩る世界観やまだ見ぬモンスターについても解説が行われてきたのだが、今回のテーマはモガの村を襲う巨大な古龍、ナバルデウスだ。

藤岡先生 さまざまな伝承、伝説が残されている幻の古龍です。目撃例は少ないのですが白く発光しているのを見た人がいて、そういう人が伝えているのです。立ったようなポーズをすると巨人に見えることから、ある人は「巨人を見た!」と言い、新月とか神とかいう意味が集まった“ナバルデウス”という名がつけられたのです。
 また地域によって、ナバルデウスの捉えかたが違うのも特徴的です。発光していると光に魚が集まってくるので“大漁の象徴”として崇める地域もあれば、あの巨体から地震を起こす“災害の神”と恐れる地域もあります。

 またこのあと、来場者やケータイサイトのモンハン部に寄せられた質問に藤岡先生が答えるコーナーがあるのだが、そこでおもしろいやり取りがあったので再現してみる。

MC宇佐美 “幻のウラガンキン”を飼いたいのですが、そのために注意しなければいけないことはありますか? という質問です。

※オンラインのイベントクエストとして配信されている“幻のウラガンキン”では、めっちゃ小さいウラガンキンが登場する。

藤岡先生 うーん……。とりあえず小さいとは言え、ふつうに考えたらデカいのでそれなりに土地は要りますね。

小嶋助手 転がるために坂道を用意してあげてください。

宇佐美 ……キレイな石を餌として与えたらカワユクなりますかねえ?

藤岡先生 繁殖期にキレイにならなかったら、それは雌ということです(笑)。

宇佐美 「あー! ハズレた!!」みたいな?

小嶋助手 ハズレとか言わないの!(苦笑)

藤岡先生 まあトカゲとかでも成長してからじゃないと雌雄の区別がつかないものは多いですからねえ。……あと、ガンガンと床を顎で叩くので、マンションの下の階の人に迷惑がかからないように注意してください(笑)。

 ホント、こういうの大好き(笑)。

 このあとにステージでは、『2nd G』を使った女子ハンタータイムアタック、親子ハンタータイムアタックの上位3チームの表彰式が実施。一瀬さんが登場して商品を手渡した。さらに、来場者をステージに招いてのチャレンジクエストが行われたあと、いよいよ狩王決定戦福岡予選の上位10チームが発表に! その模様は、別の記事でお伝えしちゃいます!

投稿者 大塚角満 : 17:43

【MH3】第49回 タイムアタック挑戦記 その4

 東京大会で大惨敗を喫しながらも、俺と江野本ぎずもの心は折れなかった。「まだ俺たちは詰め切れていない!」という思いが、つぎの大会に臨む原動力になったのである。

 東京大会で用いた立ち回りを改良するうえで、まず最初に手を着けたのは”落とし穴を作っている江野本を蹴飛ばしてモーションキャンセルをさせる”という部分だ。この作戦を東京大会が終わったあとに『3(トライ)』の藤岡要ディレクターに話したところ「またずいぶんとマニアックなことをやりますねえw」と呆れ驚かれたのだが、冷静に考えると確かにこいつは、かなーりリスキーなうえに無駄の多い作戦だとわかる。江野本が落とし穴を作っている最中はダメージソースのハンマーはボケーっと突っ立っているだけだし、東京大会で犯した“穴を作るまえに江野本を蹴飛ばしてしまう”というミスや、“蹴りを空振りする”という目を覆いたくなるようなオロカな間違いをしてしまう可能性がどうしても残った。しかも、この作戦がうまくいって序盤をノーミスで乗り切れたところで、叩きだせるタイムは1分45秒程度なのである。これでは、時が経つごとに先端に向かっていくクルペッコタイムアタックの分野でイニシアチブをとることはできないだろう。

 俺たちはまたまた、トライ&エラーをくり返すターンに入った。どんな作戦にするにしろ、メインのダメージソースであるハンマーが的確に攻撃できなければタイムはまるで縮まらないので、俺はつねにWiiとクラコンPROを持ち歩いて隙があればいつでも練習ができる体勢を整えておいた。そして実際、10分でも仕事の空き時間ができたらWiiの電源を入れてひとりで闘技場に飛び込み、クルペッコと戯れる。おかげでようやくクルペッコを相手にしたときのハンマーの立ち回りを冷静に考えられるようになり、ソロでのクルペッコ討伐の最速タイムは3分45秒まで到達した。

 しかしやはり、個人練習は個人練習。ひとりでやるかふたりでやるかによって、『モンハン』のタイムアタックは立ち回りが大きく変わってくる。まず俺が「こいつは使っちゃダメだ……」とオノレの立ち回りを考えたときに修正を痛感したのがハンマーのタメ3攻撃。威力は高いかもしれないが、叩きつけたときに仲間を吹っ飛ばしてしまうという、1秒を争うタイムアタック時にはあまりにも大きいデメリットがあった。これを食らって江野本が吹っ飛ばされると片手剣による攻撃回数が減ってしまうとともに、麻痺が安定しなくなってしまった。「タメ3は極力使わない方向で!!」と俺は自分に言い聞かせた。逆に「あ、これは使えそう」と思ったのが、ハンターが闘技場に入って、クルペッコに気づかれてからしばき合いが始まるまでに存在する“間”である。クルペッコは基本、ハンターに気がついてのしのしと歩いてきても、何度か足踏みをして1回吠えるまでは攻撃してこない。これまで、この時間を使って落とし穴を作ったり爆弾を置いたりしていたのだが、(ここでもうちょっと踏み込んだダメージを与えることはできないだろうか……?)と思ったのだ。

 そして俺は個人練習で、立ち止まったクルペッコの頭にハンマーの“縦振り”からの“振り上げ”を当てる練習を徹底的に行った。最初はタイミングがまるでわからず失敗ばかりしていたが、クルペッコがハンターの目の前で立ち止まって足踏みを2回するのと同時に縦振りを始めると、振り上げがちょうどいい具合に相手の頭にぶち当たることに気がつく。クルペッコの動きが毎回変化するため、練習を積んでみたものの振り上げを頭に当てられる確率は7割程度ってところだったが、タイムアタックスタート直後にこの大ダメージを入れられるのは大きいと思った。俺はすぐにこの立ち回りを江野本に報告し、これを起点にトライ&エラーをくり返して以下のような作戦を練り上げた。

1:ベースキャンプで江野本が大塚に支給用大タル爆弾を渡す。大塚は閃光玉を江野本に渡す。
2:爆弾を受け取ったら、大塚は闘技場にダッシュ。その間、江野本は怪力の種を飲む(大塚が闘技場に入る直前に広域化+2の効果が炸裂)。

3:大塚、クルペッコに接近して例の縦3振り上げを当てる(ことを試みる)。江野本はクルペッコの足元に落とし穴を設置。
4:クルペッコが落とし穴に落ちる直前に大塚は支給用大タル爆弾を設置。江野本が小タル爆弾で起爆する。
5:大塚、タメ3攻撃を2回、クルペッコの頭にお見舞いする(最初の縦振りが当たっていると、ここでクルペッコは穴に落ちたまま気絶した)。
6:クルペッコが落とし穴から飛び出したら、江野本が閃光玉を放る。
7:上空から落下したクルペッコの頭に大塚はハンマーのタメ3。ここで確実にクルペッコは気絶する。
8:気絶解除と同時に、クルペッコは片手剣の麻痺攻撃で麻痺状態になる。

 ……上で「ハンマーのタメ3は使っちゃダメぇ」なんて書いているが、ここまでの立ち回りだと江野本を吹っ飛ばす恐れはまずなかったので、縦振り→振り上げよりも当てやすいタメ3に頼っていたんですねぇ。

 この立ち回りで練習を積んだ結果、俺たちの最速タイムは1分35秒になった。うん、確実に作戦は極まってきているぞ。目前に迫った大阪大会は今フェスタの最激戦区になることが予想されたが、ベストの立ち回りができればなんとかなるかもしれない!

 そして俺と江野本は、モンハンフェスタ`09大阪大会で狩王決定戦の予選に臨んだ。しかし、悲しいのであっさりと書いてしまうが、ここでも俺がミスを連発して予選順位は29位に止まってしまう。

 本当に、情けない限りだった。

 それまで自分のことを本番に弱い人間だなんて思ったことなどなかったのだが、まわりの人間に言われるまでもなく、この惨憺たる結果を見れば自分が竜頭蛇尾もはなはだしい心の弱い男だということがよくわかる(竜頭だったことがかつてあったかどうかも怪しいがね)。しかし……。

「ホント、ヘタですまん……。でもまだ、あきらめたくないんだけど……」

 大阪大会から帰る道すがら、俺は江野本に消え入るような声で懇願した。アホにつける薬はないが、あきらめの悪い男につける薬もなかなかないのである。これを受けて、江野本は我が意を得たりとばかりに顔に力を込め、元気な声でこう言った。

「当然ですよ!! まだまだウチらは練習が足らないんです!! 帰ってちょっと休んだら、つぎに向けての練習を始めますよ!! それに立ち回りについて、いろいろと見えてきたこともあるしねー」

 めげないふたりのタイムアタック挑戦記は、まだ終わらない。

投稿者 大塚角満 : 22:58

【MH3】第48回 対談! 小嶋アシスタントプロデューサーと語らった 後編

 というわけで、モンハン4人衆のひとりにして『3(トライ)』のアシスタントプロデューサーを務める小嶋慎太郎さんとの対談、後編です。小嶋さんが取り仕切る『モンハン』関連のグッズやアパレルの話から、モンハンフェスタに代表されるユーザー参加型のイベントにまで話は及ぶ。ボリュームたっぷりでお届けするので、秋の夜長にゆっくりと読んでみてくださいな。

タイムアタック誕生秘話

大塚 さて、現在の小嶋さんのメインの仕事はどんな感じなんでしょうか?
小嶋 メインはやはり、タイトルを見ることですね。Wiiの『G』とか『2nd G』の海外版を作っているときもサポートで入って補佐していましたし。『3(トライ)』もそうですね。そういうことをしながら、もともと得意だったイベントとかグッズまわりのことを全般的にやっています。“モンハン部”もそうです。
大塚 ここ最近で、一気に広がりましたよね、『モンハン』って。
小嶋 そうですね。基本的に同じことを続けていても仕方ないと思っているんですよ。ホームページがポピュラーになったので、じゃあ携帯電話を使っておもしろいことやってみようか、とかね。すごくおもしろいゲームを開発が作るのはわかっているので、それをどうやって世間にアピールしていくか考えるわけです。そこで、「あ、今年もこれやってるんだ」ってお客さんに思われたら残念だし、失礼なので、何かネタがあるなら試してみたいなって思うんです。

大塚 パセラで行った“狩人たちの宴”も小嶋さん主導なんですよね。
小嶋 そうです、いろいろ企画は出させてもらいました。あれは、集会所みたいなお店とか作れたらいいな……って考えていたら、パセラさんが協力しますよ、って言ってくれて。そこから「料理もいけます」って言われて、「じゃあ回復薬を……それにハチミツを混ぜると回復薬グレートになりますんで」とか言っていたんですよ。パセラのシェフの方々がノリがよくて、こちらのムチャ振りにも対応してくれたんです。
大塚 思い出した。2007年のモンハンフェスタが終わったあとに小嶋さんと話していたとき、「もっといろいろな場所に集会所が作りたいんですよね」って言ってましたよね。それがパセラのイベントとかにつながっているんだ。
小嶋 そうですそうです。もっとみんなが集まれる場所を用意したい、という思いからスタートした企画ですね。“モンハン夏期講習”もそうです。
大塚 ああ、夏期講習もあったかー。
小嶋 「夏にイベントをやりたい」って話が持ち上がったとき、「夏? 夏と言ったら宿題でしょ? 宿題といったら忘れがち。となったら夏期講習でしょう!」って(笑)。
大塚 連想ゲームじゃないスか(笑)。
小嶋 で、「どうせやるなら学校を借りよう。そうすれば絶対に大人も喜ぶ」ってなって、あのクソ暑い中でやることに……(苦笑)。
大塚 あれは本気で暑かった!! 俺、会場に行って思ったもん。「だ、騙された?」って(苦笑)。
小嶋 でも、こういうものの発想のスタートはすごく単純なんですよね。「学校とゲームって、おもしろいじゃん!」って、まずはそこ(笑)。あとは、ユーザーさんがニヤリとできるエッセンスを加えることができればおもしろいものが成立するなって思っているんです。
大塚 フェスタもそうですよね。
小嶋 ですねー。……でも本当に、フェスタは1回目が成功してよかったな、って思っているんです。わからなかったですからね、どうなるか。
大塚 2007年の最初の会場だった福岡大会に行くまで、僕もドキドキしていましたよ。どのくらい人が集まっているのかな? って。……まあその前日、萩原さん(カプコンパブリシティーチームのボス。ほろ酔いのハギー)とベロベロになるまで飲んで思いっきり二日酔いでしたけど(苦笑)。
江野本 サイテー。
小嶋 フェスタの前日って、独特のお祭り感がありますもんね(笑)。
大塚 でも本当に、モンハンフェスタはやってよかったと思いますよ。
小嶋 『2nd』の制作中にティガレックスを監修してほしい、って言われたとき、「それはいいけど、条件がある」って言ったんです。『2nd』って、制作途中のものとか企画書を見ると間違いなくおもしろくなると思ったんですけど、他人と遊ぶことのおもしろさをさらに広めるには“何か”を入れたほうがいいって感じていて、「タイムアタックの要素を入れてほしい」って頼んだんです。
大塚 ええ! そうだったんですか!
小嶋 はい。時期的には、かなりギリギリだったんです。でも辻本さんは「おもしろそう!」って言ってくれて、いっちゃんも「うん、わかった」と。本当に、急遽導入されたんですよ。
江野本 ビックリ! そういう歴史のもとに入った要素だったんですね、タイムアタックって!
小嶋 そうだったんです。せっかく制作に参加するんだから、何かを盛り込みたいって思ったのでね。
大塚 小嶋さんのひと言がなかったら、いまいるモンハンアスリートたちは誕生していなかったわけか……。
小嶋 ふふふ。ホント、ありがたいです。
江野本 いまや、ふつうに遊んでいますよね。みんなで集まったときに「じゃあチーム分けてタイムアタックしようか!」ってなるし。
小嶋 最初から『2nd』のチームにいたら、ティガレックスを作って終わっていたと思います。でも途中から入ったので「何かやらにゃ!」って思ったのが大きかったんです。『2(ドス)』でも、東京ゲームショウとかでタイムアタックをやりましたけど、当時はストップウォッチで計ったりしていたんですよ。それでも、おもしろかった。で、これをキチンと計測できたらさらにおもしろくなるに違いないって思って。『2(ドス)』のときにもやりたかったんですけど、当時のネットワーク環境だと正確にタイムを計測することが難しかったんですよね。
大塚 いまやタイムアタックは、強力な柱になりましたね。
小嶋 ねえ(にっこり)。「フェスタはお祭りだ!」って言っても、やっぱりメインコンテンツは必要ですからね。『モンハン』って、ヘタな人でも上手なプレイってわかるじゃないですか? そういうのを見せる場を設けたら盛り上がるに違いないって思って。だいぶムチャしましたけどねえ……。でもこれができたのも、ゲームとしての土台がしっかりしているからこそですけどね。僕がチームに加わったとき、すでにいいものができていたので、こちらも「こんなにいいゲームなんだから、これも入れられない?」っていうムチャなお願いができたんです。やっぱり、最終的にまとめる一瀬ディレクターの能力はすごいものがあるんですよねえ。あんなに飄々としてますけど(笑)。
大塚 小嶋さんと一瀬さんって、同期なんですよね?
小嶋 そうです。学校もいっしょの、同級生ですね。当時からよくいっしょに遊んでいましたよ。
大塚 小嶋さんから見た一瀬さんって、ライバル?
小嶋 ライバル……って言えばライバルですけど、うーん……難しいですねえ。彼のすごいところはよく知っているけど、逆に僕にしかできないこともあると思っているので。まあひとつ言えるのは、彼ががんばっているのを見ると「俺もがんばらにゃ!」って思うところはあります。
大塚 ……いいなあ。
江野本 ですねー!
小嶋 同じ畑じゃなくなっているので、うまく言えないんですけどね。

グッズ展開のお話

大塚 モンハンフェスタ`09が盛り上がっている真っ最中ですけど、そこでとくに人だかりができるのが物販コーナー。あそこで扱っているアイテムを取り仕切っているのは、小嶋さんなんですよね。
小嶋 総監督的な感じでやらせてもらっていますね。
大塚 いったいどれだけアイテムが増えるんだ!? ってくらい、『モンハン』グッズの種類は増えていますね。
小嶋 そうですねー。ここのところ毎週のように東京出張に来ているんですけど、大阪に帰ると必ず、机の上にダンボールが積み上がっているんですよ。グッズのサンプルの。
大塚 あー、そうなんですか(笑)。でも、持ち込まれるグッズの企画も多いんでしょうね。
小嶋 多いですねー。でも、全部作れるわけもないので、やっぱりそこはバランスです。こういうのって、増えすぎると財産を食いつぶすことになりかねないので、絶対に抑えることが必要になる。同じようなものばかり発売しても仕方ないですし。なのでグッズのスケジュール管理は重要なんです。
大塚 ここは、ぜひ聞きたいと思っていたところなんです。人気が出たコンテンツって、関連グッズも一気にブワーーーっと出るじゃないですか? うれしい反面、ついていけなくなる人も出てブランドの疲弊にもつながりかねないと思っていて。そのへんを、『モンハン』の場合はどう考えておられるのかなーと。
小嶋 まさにいまが、いろいろな要求もあって広がりつつあるところだと思うんです。間口が広がるターンってのは絶対に必要なのでいいんですけど、やっぱりゲームあってこそのグッズや本ですよね。ここを間違えてやりすぎてしまうと、大本のゲームそのものにも悪い影響が出てしまうかもしれない。けっきょく、ゲームを楽しんだ結果にグッズなどにも興味を持てて、それを買ったらさらにゲームに帰ってくる……というような循環を作りたいんですよね。やりすぎちゃうと循環は生まれず、どこかでブツッと切れちゃうんじゃないかなと。
大塚 サジ加減……ですね。
小嶋 本当に、それ次第です。ユーザーさんが「欲しい!」と思ったときにそのアイテムを提供できるのが理想じゃないですか? 難しいですけど、すごく気を遣っていますね。
大塚 小嶋さんって、いまや『モンハン』ファンの間では顔も名前もすっかり認知されているのでなかなかそうはできないでしょうけど、かつてはユーザーの集まりとかに潜りこんだりしていたじゃないですか?
小嶋 ああ、そうですね(笑)。
大塚 そうやってユーザーから近いところにいる人だから、グッズとかを取り仕切るのはピッタリなんだろうなぁって思うわー。
小嶋 もともとアパレルとか雑貨とか、おもちゃとか大好きですしね。たまの休日は部屋にこもって休むか、プラっと外に出て雑貨屋さんやおもちゃ屋さんとか覗きにいったりのどちらかかな。ギャップがありますね(笑)。でもそこで何か見つけたら、イベントやグッズ作りに反映させられるかもしれないですから。
大塚 そんな小嶋さんの、最近のオススメグッズは?
小嶋 やっぱりスカジャンですね。いろいろ考えていたんですよ、去年くらいから。節目の5周年なので、何か作りたいなって。Tシャツもいいですけど、それだとふつうじゃないですか? せっかくやるんだから、ユーザーさんに「お!」と言われるものを作りたい。そこでいろいろ捜して、スカジャンに辿り着いたんです。
大塚 藤岡さんにリオレウスの絵を描いてもらって。
小嶋 はい。デザインのベースを作ってもらって、ああいう形になりました。色味とか、だいぶ苦労しましたけどねー。
大塚 こだわりの商品だけあって、値はけっこう張るんですよね。
小嶋 ええ、これはかなり……。クオリティー的には、十分値段に見合うものですけど。こういった、高いけど目を引くものと、小さい子のお小遣いで買えるような商品もそろえてあげたいんですよね。そうそう、人気の武器をフィギュア化した“モンスターハンター 狩猟武器コレクションVol.1 ”、すごくいいですよ。
大塚 あー! あれはいいですね!
小嶋 “エンデ・デアヴェルト”もありますからね。あれは大塚さんに捧げます(ニヤリ)。
大塚江野本 あはははは!
小嶋 エンデ・デアヴェルト、ガンランスの中でも人気ありますもんね。ほかの武器もそれぞれのカテゴリーで人気のものを集めたので、ぜひチェックしてほしいなあ。
大塚 こういうグッズ展開って、今後も小嶋さんがバランスを取っていく感じになるんですか?
小嶋 そうですね。まだまだおもしろいことはあると思うので。
大塚 何をたくらんでいるんですか?
小嶋 ……そりゃあいろいろありますよ(ニヤリ)。
大塚 スカジャンとかシルバーアクセサリーとか大人向けのものから、子供でも買えるリーズナブルなものまで。
小嶋 そこはこだわりたいですね。お子さんがスーパーでお母さんから「300円まで買っていいよ」って言われたときに、「じゃあこれ!」って選べるものを用意してあげたいので。子供にとって300円の上限も、僕らが自由に使えるお金の上限も同じ価値ですからね。まあこれも、幅広くできるようになったいまだからこその展開ですけど。

地方に注目だ!

大塚 小嶋さん、仕事が楽しそうですねえ。
小嶋 楽しいですよ! ……すぐに休みたくなりますけど(笑)。
大塚 あはは! でも、ぜんぜん休んでいないでしょう。
小嶋 ですねえ。でも、どんなに忙しくてもきっちり休めるのがプロなんでしょうけどね。……ヘタなんです、時間の使いかたが(苦笑)。
大塚 休日も休んでないんじゃないですか?
小嶋 そんなことないですよ。「休む! 引きこもる!」と決めたら、本当にボサボサ頭で寝巻きのまま、冷蔵庫にあるものだけで食いつなぐ……っていう生活になりますから(笑)。でも、「出る!」と思ったらとことん出てますけど。休みの日に旅行に行ったりするのも、脳ミソのリフレッシュですからね。
大塚 去年、藤岡さんと3人で温泉に行きましたけど(詳しくは『サヨナラ! 逆鱗日和』を読もう!)、またどっかに行きたいですね。
小嶋 いいですね〜。……でも大塚さん、このあいだ福島弾丸ツアーに行ってきたんでしょ? どうでした?
大塚 うん、よかったですよ!
小嶋 あぶくま洞にも行かれたんですよね?
大塚 行った行った!! あそこはすばらしかったなあ。そこを皮切りに、ほぼ福島県を1周しました(笑)。でもこういう企画もおもしろいですね。
小嶋 フェスタにしても、福岡とか札幌って、独特の熱があるじゃないですか? 地域ごとに何かができたらおもしろそうですよね。「いちばんタイムアタックが速いのは長崎だ!」、「滋賀も負けないぜ!」みたいな(笑)。
大塚 よく江野本と、酒飲みながらそういう話をするんですよ。「いまいちばん強いのは、茨城じゃね?」とか(笑)。
江野本 絶対に言うと思った!!(笑)
小嶋 そういうの、楽しいですよねー。競技人口が多い東京や大阪に強い人がいるのはなんとなくわかるけど、もっと地方に、荒削りだけどすごい才能が眠っているんじゃないか、って考えたり。
大塚 そうそうそう。
小嶋 大塚さんが地方に行って、そこのハンターさんにインタビューとかしているじゃないですか? やっぱり読んでいて楽しいですもん。「ああ、そんなことして遊んでるんだ!」っていう発見もあったりして。
大塚 やりたいこと、たくさんありますね。
小嶋 ですね! まあいろいろとやっていきますので、暖かく見守っていてください(笑)。

投稿者 大塚角満 : 13:37

【MH3】第47回 対談! 小嶋アシスタントプロデューサーと語らった 前編

 モンスターハンターフェスタでのステージや、俺のエッセイにも何度も何度もご登場いただいているのでこのブログの読者の皆さんにはすっかりおなじみであろう“モンハン4人衆”。辻本良三プロデューサー、藤岡要ディレクター、一瀬泰範ディレクター、小嶋慎太郎プランナーの4人の総称だが、この中の小嶋プランナーの肩書きが、モンハンフェスタ`09では“小嶋アシスタントプロデューサー”と紹介されている。小嶋さんは長く、『モンハン』のモンスター担当として個性的なモンスターたちに息を吹き込んできた“現場の”ヒトだが、『3(トライ)』ではゲーム制作の現場の外に出て、辻本プロデューサーとともにソフトのプロデュース業に専念する“仕掛け人”として、ソフトそのものと制作チームを支える立場となった。

 そんな小嶋さんと、対談をさせていただく機会に恵まれた。モンハンフェスタ`09の地区大会が行われている真っ只中の9月半ばに、1時間半ものあいだいろいろなことを語らったのである。仕事の話だけではなく、小嶋さんの考えかたや人間性にも踏み込んだこの対談。胸を張って、大塚角満だからこそ書ける内容です。前後編の2回に分けてアップするので、じっくりと読んでみてくださいな〜!

ええ? モンスター!?

大塚 何気に小嶋さんとサシで対談するの、これが初めてなんですよね。
小嶋 そうですね。たいがいほかに、何人かいましたもんね。
大塚 今日は“モンハン4人衆の小嶋プランナー”と呼ばれていた人がアシスタントプロデューサーという肩書きになり、なにやらアレコレと暗躍しているというので、読者の皆さんに小嶋アシスタントプロデューサーのあらゆる部分を知ってもらおうと思い、こうして参上した次第です。
小嶋 なるほど、そういうわけでしたか……。わかりました。よろしくお願いします。

大塚 ま、ざっくばらんにいきましょう(ニヤリ)。あのね、たぶん読者の中には、モンハン4人衆の小嶋プランナーと小嶋アシスタントプロデューサーが同一人物だということに気づいていない人もいると思うんです。それまでの名前が定着していたから。なので最初は、小嶋さんの人となりから掘り起こしていきたいなと。
小嶋 そんなところからッスか!?
大塚 ええ、そりゃあもう(ニヤニヤ)。小嶋さんって、初代『モンハン』の創生期からこのシリーズの制作に携わっているんですよね?
小嶋 そうですね。いま、フェスタとかでステージに上がっている人の中では、僕がいちばん古くなります。藤岡さんがディレクターで入るまえからですから。辻本さんがネットワークの部分で『モンハン』に関わるのはもう少しあとですし、いっちゃん(『ポータブル』シリーズの一瀬泰範ディレクター)は別のチームでしたしね。研人さん(木下研人さん。『3(トライ)』のメインプランナー)も、ちょっとだけ僕のあとだったと思います。なので『ポータブル』シリーズのメインプランナーをやってる江口勝博さんら数人と、プランナーをやっていたんですよね。
大塚 本当に、黎明期から。
小嶋 でも、いまの『モンスターハンター』という形になるまえの、ただのネットワーク対応ゲームって言われていた時代は、僕は『アウトモデリスタ』(カプコンのプレイステーション2用ネットワーク対応レースゲーム)を作っていたので。横から『モンハン』チームを見て「たいへんそうなことやってるなぁ……」って思っていたクチですから(笑)。
大塚 へぇ〜。
小嶋 で、初期のころから作られていたラオシャンロンを傍から見ていて、「こんなデカいモンスターをネットワークでどう遊ばせるんだろう? めんどくさそうだなぁ……」って思っていました。
大塚 あはは。で、『アウトモデリスタ』の仕事が終わってから……。
小嶋 「モンスターの企画やって」って言われて。「ええ!? モンスター? ぜんぜんわからないんですけど!」ってなったんですよ。でもカプコンに入ってからアーケードの格闘ゲームを作っていたので、「基本は敵側のルーチンを作るのもモンスターを作るのもいっしょでしょ?」って言われて(苦笑)。いろいろと当時の上司に教わりながらやっていたんですけど……まあ、ボッコボコにされましたね(苦笑)。
大塚 え、ダメ出しだらけってこと?
小嶋 そうですそうです。ダメ出し、多かったですね。新しいモノを生み出す苦労はハンパなかったです。まわりのメンバーにも助けられて何とか形になったと思います。
大塚 当時、何歳くらいだったんですか?
小嶋 もう7年くらいまえだから……27歳くらいですかね。そこから、『モンハン』のホームページを担当するようになるんです。モンスターの作成とホームページの運営でそりゃあキツかったんですけど、やってよかったですよ。『モンハン』のおもしろい要素を伝えることって、当時はすごく難しかったじゃないですか? どこがおもしろいかって特定のものではなく、組み合わせておもしろいものだったので。デカいモンスターをデカい武器で、っていう部分もあれば、釣りをしたり肉を焼いたり、なんていう要素もある。これを単純に並べたところでおもしろさは伝わらないと思って、“ハンター日誌”なんてのを作ったんですよね。
大塚 あれは斬新でしたよ。
小嶋 で、『G』、『2(ドス)』までガッツリとモンスターを作っていました。そのあたりから当時のプロデューサーに「もっとプロデュース側の仕事もやってみたら?」って言われてイベントなんかを企画するようになったんですよ。
大塚 エンターブレインの2階にあるイベントスペースとか、原宿のKDDIデザイニングスタジオでもやってましたよね、イベント。
小嶋 そうですそうです。で、そのあとの『2nd』ではティガレックスとアカムトルムは製作。あとのモンスターは監修をしていました。『2nd G』では亜種モンスターとかナルガクルガはチェックしていましたけど、もうそのころには若手プランナーが上げてくる案に対しての口ぞえがメインになっていましたね。『2nd』で50パーセントくらいがプロデュース作業だったとしたら、『2nd G』のときには90パーセントくらいにまでなっていましたよ。
大塚 ああ、そうなんですか。
小嶋 なので、いまやっていることとそれほど違いはないんですよね(笑)。
大塚 “なんでも屋”ですよね、小嶋さんって。
小嶋 そうなんです。よくわからないんです(笑)。

“小嶋スタイル”ができるはず

大塚 でもそうは言いつつ、やっぱりモンスターのイメージが強いですよ。
小嶋 ずっとそれをメインにやっていましたからねー。
大塚 なのに最初は、モンスターを担当することに対して「えー!」って思ったというのが意外だわー。
小嶋 格闘ゲームをやったあとはネットワークゲームのシステムを考えるという仕事をしていたんです。ちょうどそのころに、家庭にブロードバンドが普及し始めてきて「ああ、これで考えていたことがいろいろと実現できるわ」って考えていた矢先に「じゃ、モンスターね」って言われたので(笑)。でも当時は戸惑いましたけど、いま思えば「そればっかりじゃなくいろいろやっとけ」という導きだったので、ありがたかったですよね。
大塚 でももともと小嶋さんって、気質的には現場なんですか? プロデュースなんですか?
小嶋 結果的には、プロデュース業のほうが向いているんでしょうね。素材を作るよりはそれをもとに調理するほうが合っているんだろうなって、いまになって思います。もちろん、プランナーも大好きだしゲームも作りたいんですけど、それができる人ってウチの会社にはゴマンといるんですよね。大塚さんもご存じのとおり、『モンハン』チームもそうですけどカプコンって優秀なプランナーがすごく多いんです。そんな中で僕は、ゲームをもっとアピールできる仕事もやってみたいという欲望が大きくなっていったんですよね。プランナー出身でゲームの本質を知っているからこそできるプロデュースがあるかもな、という思いがふつふつと湧いてきたんです。
大塚 ……小嶋さんと酒飲むと、たいがいこういう話になるんですよね、俺ら。
小嶋 うん、そうですね(笑)。
大塚 (同行した江野本ぎずもに向かって)小嶋さんとは、けっこうマジメな話を飲みながらしてるのよ。
江野本 ……へぇ〜、そいつは意外です(ピシャリ)。
大塚 ……すません、マジメじゃない話もしています(苦笑)。
小嶋 あははは! ですね!
大塚 でもね、小嶋さんと飲みながら、具体的な業務の話ではない“思想”の部分の話をするのが、すごく好きなんよ俺。
江野本 ああ、それはよくわかりますよー。
大塚 そんな中で小嶋さんが言った言葉ですごく印象的なことがあるんです。ちょうど小嶋さんが現場の仕事から離れつつあるという時期で、俺が「愛着ある現場から離れることに未練はないの?」って聞いたらキッパリと「ないです!」って言い切って。それを聞いて、俺はショックを受けたのよ。自分と丸っきり違うから。
小嶋 ありましたね、そんなことが。そう言ったのは、そうしないと中途半端なことをしそうだったからです。だから、自分に言い聞かせる意味もあったんだと思いますよ。吐いた言葉には責任を持とう、っていう感じで。とは言ってもベースはやっぱりプランナーですから。それぞれの出身畑によっていろいろなプロデュースのやりかたがあると思うんですけど、そこにプランナーあがりの小嶋スタイルができるといいなって。捨てるというよりは、切り替えですね。現場のことがわかりすぎているとやりにくいこともあると思うんです。キツいとわかっていることは依頼しにくいとかね。でも知らないととんでもないことを依頼しちゃいそうなので、そのへんはやはり、バランスですね。辻本さんともよく、そういう話をしますよ。
大塚 良三さんとは、畑が違うんですか?
小嶋 辻本さんも、もともとはプランナーですね。でもネットワーク担当が長かったので、またちょっと視点は違うと思います。
大塚 へぇ〜。
小嶋 趣味も違えば土壌も違うので、いい感じにあーだこーだ言い合えていると思いますよ。辻本さんはライトな、一般的な感性で打ち出すことが得意で、僕は正直オタクなのでぜんぜん発想が違いますね。
大塚 バランスがいいですね。
小嶋 モンハンチームは、すごく恵まれていますよ。適材適所でいい人材がいるというか。辻本さんや藤岡さんしかり、一瀬しかり。でもいくら秀でた能力を持っている人がいても、きっちりまとまらないと意味がないじゃないですか? モンハンチームの強みは、そういう人たちがしっかりとまとまっているところですね。
大塚 けっこう体育会系ですよね、モンハンチームって。
小嶋 ガチガチの体育会系ですよ!(笑)
大塚 あははは! それでも、なんとかしちゃいますもんね。
小嶋 ですねえ。でもそこは、バランスですね。きっちりと仕切れる人がいて、その中でチャレンジする人間がいて……。たいへんだと思いますよ、ガチガチで勝負しているから。『モンハン』を1本作ったら、「もう『モンハン』はいい!!」って思っている人、きっといますもん(笑)。全力疾走でマラソンを走っているようなものですから。でも、アップ休みをもらったり、ユーザーさんの反応を見てまたやる気をだしたりしますよね(笑)。

※後編に続く!

投稿者 大塚角満 : 01:03

大塚角満

プロフィール画像

週刊ファミ通副編集長にして、ファミ通グループのニュース担当責任者。群馬県出身。現在、週刊ファミ通誌上で“大塚角満のモンハン研究所”というコラムを連載中。そこら中に書き散らした『モンハン』がらみのエッセイをまとめた単行本『本日も逆鱗日和』シリーズ(4巻)が発売中。また、そこからのスピンオフとして別の視点から『モンハン』の魅力に迫る書き下ろし作品『別冊『逆鱗日和』 角満式モンハン学』シリーズも。このブログではさまざまなゲーム関連の話題を扱うつもり。一応、そのつもり。


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