大塚角満の ゲームを“読む!”

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【MH3】第46回 タイムアタック挑戦記 その3

 というわけで迎えてしまったモンスターハンターフェスタ`09東京大会。当然ながら『モンハン』タイムアタックの競技人口がもっとも多い地区ではあるが、俺と江野本は「予選突破の可能性がもっとも高いのは東京だ」と確信していた。というのも、地区大会は後半に進むほど予選の立ち回りが先端に向かって極まっていって、ボーダーラインのタイムに隙がなくなってしまう。『3(トライ)』の発売から日が浅く、立ち回りが突き詰められるまえの最初の大会だったら我々にも付け込む余地があるのではないか? 俺たちはそう考えていたのだ。

 しかし……。

 かつてこれほど緊張したことが、我が人生においてあったであろうか? せっかくなのでかなりどうでもいいことだが、“大塚角満の人生緊張ランキングTOP10”なるものを作ってみよう。ランキングにしたかったがどれも甲乙つけがたいので、箇条書きにします。

●ソニー・コンピュータエンタテインメント社長(当時)、久多良木健氏にコメントをもらいにいったとき
●ロンドンから日本に向かう飛行機に乗っていたら、いきなり尻が浮き上がってしまうほど飛行機が急降下したとき
●以前勤めていた会社でとんでもないミスをして、怖い人のところに菓子折りを持って謝りにいったとき
●中学3年の冬、好きだった娘に告ったとき(玉砕)
●『バキ』シリーズの作者、板垣恵介先生にインタビューしたとき
●高校3年の夏、インターハイの初戦直前
●学生時代、しこたま酔っ払って記憶をなくし、朝起きたら全身泥だらけ&傷だらけだったとき
●我らが浜村通信に社長室に呼ばれ、サシで仕事のアレコレを話したとき
●バイクで群馬の有名な峠道を走っていて思いっきり路肩の砂を踏んでしまったとき(奇跡的にコケなかった……)
●心霊スポット取材で某幽霊トンネルを真夜中に訪れたとき

 ……って、なんで俺は墓場まで持っていこうと思っていた人生の汚点まで赤裸々にしてんだ……? でもまあ、書いちまったものはしかたない。

 これら、とてつもない緊張軍団を向こうにまわしても、今回のタイムアタック予選直前の緊張感は堂々のTOP5には入ってしまうと思われる。しかも緊張していたのは俺だけではなく、相棒の江野本もメインステージのイベントを呆然と眺めながら「はぁぁぁぁ……」と世界の終わりのようなため息(どんなだ)をついてばかりいた。俺たちは次第に、追い詰められていった。

 俺と江野本が緊張しまくった最大の理由は“真剣だったから”にほかならない。本気で作戦を練り、本気で練習し、本気で勝ちたいと思っていた。しかしそういう気持ちになればなるほど“一発勝負の怖さ”が覆いかぶさってきて、心の身動きがとれなくなってしまったのである。昨年の東京大会でも予選に参加させてもらい、そのときもそれはそれは緊張したものだが、やっぱり今回とは緊張の質が違った。

(真剣さに比例して、緊張は強くなっていくのかぁ……)

 妙なところで、俺はしみじみと感心した。

 その緊張を拭えぬまま、予選参加の時間になってしまった。俺と江野本は瞳孔が開ききったハニワのような顔を向き合わせ、言葉にならない「あうあうあう」という断末魔の悲鳴で会話を交わしただけで闘技場に放り込まれてしまう。もう後には引けない。これまでの努力を、ぶつけるしかない!

 しかし、俺たちは失敗した。いや、俺が失敗した。前回のコラムで東京大会用の作戦を明記したが、立ち回りの起点は“江野本が落とし穴を作ったら立ち上がりのモーションをキャンセルするために大塚がキックをお見舞いする”というところにある。しかし、慌てた俺が江野本が落とし穴を作り終わるまえに蹴りをくり出してしまい、作戦の大本を作ることに失敗してしまったのだ。

 我々の作戦は、クルペッコが落とし穴に落ちることが大前提だった。そこから、爆弾→気絶→麻痺……といった具合にクルペッコを拘束しながら大ダメージを与える“ハンター側のターン”が続くはずだったのだ。しかし俺のミスで大前提が崩れてしまったためにガチンコで立ち回るしかなくなり、結果、練習でも滅多に見ることがなくなっていた3分32秒なんていうタイムを出すハメに……。ふたりして本気で泣きそうになりながらうなだれていると、世界でいちばん会いたくなかった“あの男”がニヤニヤしながら現れた。

「大塚さん、見ましたよ。……でも、約束は守ってもらいますからね(ニヤリ)」

 辻本良三プロデューサーは俺の頭髪を指差し、「いやあ、残念でしたねえ(笑)」とまったく残念がっていない口調で言ってから「あはははは!!」と腹を抱えて笑ったのであった。そしてこの続きが、“プロデューサーとの約束・第二章 その1”というコラムになるのである。

 最初の目標だった東京大会は、ダメだった。でも、これではあまりにも悔しいし、悲しいので、できることならつぎの大会でも予選に参加したいと思った。東京大会の予選で上位に入ったチームのタイムを見て、「まだまだクルペッコのタイムアタックは詰められる!」と思ったことも大きかったんだと思う。そう思いながら相棒を見ると、彼女もメラメラと双眸を燃やして、リオレイアの火炎ブレスの勢いで言葉を吐きだした。

「大塚さん!! もっともっと練習しましょうよ!! そして大阪で、予選を突破するんですっ!!」
 
 真剣に挑んでみてわかったことだが、『モンハン』のタイムアタックを詰める作業は時間も労力もとてつもなく使うので、同等のモチベーションを持ち、練習を「楽しい!」と思える相棒を見つけられないと途中で心が折れてしまう可能性もある。その点で俺は恵まれていたし、何よりまわりにいるたくさんの“ベストタッグ”を見てきたことが、「もっと上に行きたい!」という向上心につながった。うん、落ち込んでる場合じゃない。まだ続きがあるんだ!

 というわけで、このコラムも次回に続く〜。

投稿者 大塚角満 : 18:51

【MH3】第45回 タイムアタック挑戦記 その2

 前回の記事にあるとおり、俺たちはクルペッコタイムアタックの壁にぶつかった。何度やっても、よくて2分30秒前後のタイムしか出なくなり、抜本的な改革をしなければとてもじゃないけど地区予選を突破するレベルには到達できないと直感的にわかった。

 このころ、江野本が「2分30秒を基準タイムとして、10回の挑戦で何度超えられるか数えてみますね」と言ってタイムを集計した。しかし、基準タイムを超えられたのは3回だけ……。いよいよ、「完璧な立ち回りができたとしても、この作戦じゃきびしいね」ということになった。

 そして俺たちは再び、作戦会議を開いた。もちろんチャットで行うわけだが、ふだんキーボードを使って仕事をしている関係でふたりともキータッチが速いので、さほどのストレスは感じない。でもストレスと言えば、ドサクサに紛れて関係ないことを書いてしまうが、このチャットの変換辞書には少々「むむむ……」と思わせられることがある。なかでも「いいかげん覚えろや!!」と毎回毎回リアル絶叫してしまうのが“人”という漢字がまともに変換できないこと。必ず“ヒと”となってしまうんですねえ。ついでに書くと“気”も簡単には出ない。“気がつく”と打とうとすると“キがつく”になる。でも最近ではさすがに慣れてしまって、俺の仲間連中はまったく気にせず、「あのヒとなかなかキづかなくてさー」とナチュラルな会話に組み込んでいたりする。以上、関係ない話でした。

 さて、このときの作戦会議で真っ先に取り上げられたのは“閃光玉”の存在意義についてだ。現状、片手剣の江野本は闘技場に入ってすぐに隅っこに置かれている閃光玉を取りに走っているのだが、ここに改善の余地があるのではないかと江野本が言い出したのである。

「ウチが閃光玉を取りに行くと、だいたい45秒くらいは攻撃ができなくなるんです。そうすると時間のロスとともに片手剣の麻痺が安定しなくなるんですよね……」

 確かに、それは俺も思っていたことだった。加えて、個人スキルの問題もあるが閃光玉は外してしまうことが多く(爆弾を設置したあとに俺が閃光玉をミスることが多かった)、さらにうまく視界を奪えたところでクルペッコはその場でおとなしくしていてくれるものでもない。逆に、その場ジャンプの回転(これを俺たちは“クルクルペッコ”と呼んでいる)をくり返すことも多く、そうすると攻撃の間合いに入ることが難しくなってしまう(リーチの短い片手剣の江野本はとくに)。じつはこの間、江野本だけじゃなくハンマーの俺も闘技場の端っこに走って計5個の閃光玉を投げまくる……という作戦を試してみたこともあるのだが、じつはいいタイムが出るときは閃光玉を使いきらず、逆に時間がかかるのは閃光玉が当たってクルクルペッコになってしまったときで、どうしても閃光玉の有効性に疑問符がついてしまったのだ。

「閃光玉を取りに行く戦略を捨てませんか?」

 と江野本が言った。もちろん、俺に否はない。

「うん。閃光玉ナシの作戦を考えてみよう」

 ということで組み立てたのが、つぎの立ち回りである。

1:ベースキャンプで大塚が江野本に閃光玉を渡す。
2:闘技場にふたりいっしょに入り、クルペッコに接近したら大塚は支給用大タル爆弾、江野本は落とし穴を設置。
3:穴に続いて江野本は支給用大タル爆弾を設置。それを見届けて大塚が小タル爆弾で起爆。
4:穴に落ちたクルペッコの頭に大塚がハンマーのタメ3を2回お見舞いする。江野本は閃光玉を準備してクルペッコの後方から攻撃。
5:穴からクルペッコが飛び出したら江野本が閃光玉を投げる。上空から落ちてくるクルペッコの頭に大塚はタメ3を合わせる。
6:これでほぼ確実にクルペッコは気絶。

 この作戦を骨子に何度かチャレンジした結果、最速タイムは一気に1分53秒に! 平均でも余裕で、2分30秒を切れるようになった。

 しかしこれでも、俺たちは納得できなかった。っていうより、何度も何度も練習しているうちに集中力もスタミナも切れてグダグダになって、オノレのスキルというよりも“作戦自体が悪い”という思考に陥って、ガラガラと立ち回りをいじくりまわしてしまっていたのである。いま思うとこれは悪循環もいいところで、最終的に落ち着いた立ち回りとこのときの立ち回りを比べると思わず苦笑してしまうのだが、当時は作戦さえ変えればタイムが詰まっていくと考えていたのだ。

 ちなみにこの間、仲のいい全国レベルのモンハンアスリートたちと、立ち回りについての情報共有はいっさいしていない。それどころか、最速タイムや平均タイムがどれくらいになっているのかについても、まったく話をしなかった。いくら仲が良くても、これは真剣勝負。チームのふたりで考えた立ち回りで挑戦したかったので、いつもいっしょに遊んでいる連中とも、この時期はほとんどロックラックで会わなかったのだ。そしてモンハンアスリートたちも気持ちはまったく同じらしく、彼らからタイムアタックに関する報告はいっさいなかった。うん、そうこなくっちゃな。

 世間やファミ通編集部がお盆休みを迎えた8月半ばも、俺と江野本は会社に出社してタイムアタックの練習をした。もともとこのころに『角満式モンハン学〜ハンター編〜』の最終チェックを入れていたのでタイムアタックがあろうがなかろうが出社することにしていたのだが、やはりチャットよりも顔を付き合わせてアレコレと相談しあったほうが効率的なので、俺たちはこの時期にお盆休みがあったことを歓迎した。通常業務に追われることなく、単行本の作業と練習に専念できるからね。そして何より、俺たちは本気で東京大会の決勝ステージに上がるつもりだったので、クルペッコだけじゃなく“もうひとつの課題”もこなす必要があったのだ。そう、決勝ステージの課題クエスト“ラギアクルス討伐”だ。これについてはリアルに会話をしながら作戦を練らないと、エライことになると感じていた。なので「お盆期間中はラギアもキチンと詰めよう」と話していたのである。

 しかし、通常業務がほとんどないとは言っても、俺はこの期間中に福島県に出張に行ったりしていたし、江野本も『ハンター編』の最終チェック作業に忙殺されていたので、練習に割けた時間は思いのほか短かった。ていうか、ほとんどなかった。そのわずかな時間でクルペッコとラギアクルスの両方を詰めていくことは至難の業で、俺たちは焦りの境地に達した。それでも、「絶対にステージに上がる!」という闘志は消えない。焦燥と闘魂の狭間に心が落ちてしまい、俺たちは若干ながらパニック状態に陥った。青い顔をして、江野本が言う。

「大塚さん、ラギアを詰める時間がないよ……。ふつうに10分くらいかかるし……。こんな状態でステージに上がったら、たいへんなことになりますよ……?」

 震える声で、俺が返す。

「そ、そうだな……。予選突破したら、決勝ステージは辞退したほうがいいかもね……」

 クルペッコも詰めきれていないのに、ふたりして東京大会の決勝ステージに上がったときの心配をしていたのだから、ずうずうしい話があったものである。

 それでも、どうにかこうにか仕事をやりくりして時間を捻り出し、クルペッコ討伐だけは「これでなんとかいけるかな……」というところにまで到達した(いま思えばひでえものだが)。俺たちがモンハンフェスタ`09東京大会の予選に挑んだときの立ち回りは、以下のとおりである。……って、週刊ファミ通9月17日号の“モンハン研究所”コラムで書いているので、手を抜いてそれをコピペする。

“クエストが始まったらまず、ふたりほぼいっしょに闘技場に入る。クルペッコはしばらくのあいだハンターの存在に気づいても攻撃してこないので、片手剣が所持している落とし穴をいきなりその足元に作ってしまう。でも、落とし穴を作り終えて立ち上がるまでの時間がもったいないので、ハンマーの俺が江野本に蹴り! これで立ち上がりのモーションがキャンセルされてす速くつぎの行動に移れるのである。つぎの行動とは……そう! ふたりが1個ずつ持っている支給用大タル爆弾を設置すること。うまく決まるとクルペッコは、落とし穴に落ちると同時に小タル爆弾で起爆された支給用大タル爆弾の爆風に包まれて火ダルマとなる。江野本はこの間、ちょっと離れたところに立って怪力の種をゴクリ。俺は、穴でもがくクルペッコの頭にハンマーのタメ3、タテ3攻撃を当て、穴から飛び出て降りてくるところにまたまたタメ3を1発。これで確実にクルペッコは"気絶"となり、地面に倒れて長時間もがきまくる。その間ずっと、江野本は麻痺属性の片手剣で斬りつけているので、気絶から立ち上がると同時にクルペッコは麻痺状態に。これにより再び、哀れな彩鳥は動けなくなって攻撃し放題に……”

 この作戦どおりに立ち回ることができれば最速で1分45秒、ちょっとグダっても2分20秒くらいでまとめることができた。これなら、それなりの立ち回りができればギリギリ、東京予選を突破できるのでは……。そういう都合のいい希望的観測を抱いて、チーム逆鱗日和のふたりは幕張メッセに向かったのである。

 続く。

投稿者 大塚角満 : 14:48

【MH3】第44回 タイムアタック挑戦記 その1  

 すっかりご無沙汰しております。大塚角満です。べつにサボりたくてサボっていたわけではありませんよ。俺はニュース担当記者なので毎年東京ゲームショウ近辺は1年でもっとも忙しくなってしまい、しかも今年は秋の大型連休も重なってスケジュールメチャクチャになり、ブログを書く時間が1秒たりともなかったのです。『3(トライ)』にもまったく触れなかったしなぁ……。

 というわけで本日から改めまして、『3(トライ)』プレイ日記のスタートです。ただ、ちょっと書きたいことが溜まってしまっているので1日に複数本のエッセイをアップする可能性があります。ていうか、確実にそういう日があると思います。なので読者の皆様、油断せぬようにひとつ……。

 まずひとつ、早いうちに書きたいと思っていたのが“タイムアタック挑戦記”だ。このブログや週刊ファミ通の連載でちょこちょこと書いてしまっているが、キチンとイチからしっかりと、時系列を追って顛末を記しておきたいのだ。

 この間、俺は相棒の江野本ぎずもと「モンハンフェスタ`09の決勝ステージに立つぞ!」と固く誓い合い、仕事を終えて深夜に帰宅してから明け方までの時間に、クルペッコ討伐の練習をしていた。昨年のモンハンフェスタでも予選に参加させてもらったが、そのときは酒に酔っ払った勢いで参加を決め、戦略を練るという思考も練習をする時間もないままに開催当日を迎えてしまって散々な目に会った(まあ自業自得なのだが。詳しくは拙著『本日もサヨナラ! 逆鱗日和』を読もう!)。しかしその後、全国の有名タイムアタッカーと公私共に親しくなり、彼らのタイムアタックにかける真摯なまでの情熱に触れて、俺も江野本も「キチンとした想いでタイムアタックに臨んでみたい」と思うようになったのである。そして今年の春に行った『角満式モンハン学〜モンスター編〜』の発売記念イベントで、『2nd G』のババコンガ討伐演習をガンランス&狩猟笛のコンビで挑戦することになり、日夜必死こいて練習を行った結果、作戦と立ち回りを“詰める”ことのおもしろさに心から開眼した(変な表現だナ)。そのころから、俺と江野本はこう言い合っていたのだ。「今年もモンハンフェスタでタイムアタック大会があるなら、本気で勝つつもりで挑戦したいね」と。

 そして。

 モンハンフェスタ`09で行われる“狩王決定戦”の概要が発表され、俺たちは練習を始めた。しかしそのころは9月3日に発売の『角満式モンハン学〜ハンター編〜』の編集作業が佳境となっていたため“発売されるやいなやすぐに!”というわけにもいかず、丸々1週間ほどはひたすら悶々としていたと記憶している。それでも、ゲーム本編を遊びたいのを我慢し、睡眠時間も削って時間を捻出して、どうにかこうにか練習時間を確保した。この記事にあるとおり辻本良三プロデューサーとおかしな賭けもしてしまったので、俺は本当に必死だったのである。

 さて、まず最初に決めなければいけないのは、お互いが使う武器だ。じつはこれについては事前に『モンスターハンター3(トライ) ルーキーズガイド』と首っ引きになって、武器の属性や防具のスキル、モンスターを拘束するためのアイテムの所持数などを鑑みて、「ハンマー×片手剣の組み合わせがよさそうだ」と、ふたりのあいだでコンセンサスが取れていたのである。もちろん(?)、ハンマーが俺、片手剣が江野本だ。

 とりあえずは作戦なしのガチンコで、クルペッコに挑んでみることにした。お互い、ハンマーと片手剣は『2nd G』でそれなりに使い込んではいたが、『3(トライ)』では新たなモーションや攻撃方法が追加されているので、(まずは武器に慣れなければ)という思いもあった。またクルペッコがどんな動きをするのかもよくわかっていなかったので、「とりあえず視察も兼ねていってみよう」ということになったのである。コロッセオのような闘技場の只中で、縦横無尽に暴れまくるクルペッコ。それをゼィゼィハァハァと言いながら追い回すふたりのハンター。その結果、叩き出されたクリアータイムは……。

 8分30秒

 くらいだったと思う。うん、想定どおり、ガチンコでは話にならないな。

 俺たちは納得顔を突き合わせて、作戦会議を始めた。とりあえずハンマーと片手剣が持っているアイテムを精査して、使えそうなものをピックアップする。タイムアタックを詰めるうえでの絶対的な基本は“いかに対象モンスターを拘束するか”だ。そこで、片手剣が持っている落とし穴とハンマーが持っている閃光玉の有効利用を考える。そしてもうひとつ、短期間に火力を集中させる意味から、互いがひとつずつ持つ支給用大タル爆弾は確実に当てたい。これを柱に作戦を練って何度かトライ&エラーをくり返し、俺たちは以下のような立ち回りにたどり着いた。

1:江野本がベースキャンプで大塚に支給用大タル爆弾を渡す(ハンマーの防具にはスキルとしてボマーと罠師がついているので)。
2:爆弾を渡したらすぐに怪力の種を飲む(片手剣の防具に広域化+1がついているので、攻撃力アップの恩恵はハンマーにも及ぶため)。
3:大塚は闘技場に入ったら一目散にクルペッコに接近し、その真正面に支給用大タル爆弾を設置、起爆。その間、江野本は闘技場の隅に走って閃光玉をふたつゲットする。
4:大塚、起爆したらすぐに閃光玉をひとつ投げてクルペッコの視界を奪う。そして、ハンマーのタメ3攻撃を2回敢行。
5:大塚の攻撃が終わったら江野本はクルペッコの足元に落とし穴を設置。
6:クルペッコが落とし穴に落ちたら、大塚はその頭目がけてタメ3を2回お見舞いする。うまく当たれば、穴に落ちた状態でクルペッコは気絶する。
7:クルペッコが穴から出たら、江野本が閃光玉を投げて視界を奪う。

 これが、俺と江野本が最初に導き出した作戦だ。何度かこの作戦で挑んだ結果、俺たちは2分53秒というタイムに到達したのである。

「なんか、いい感じじゃね?」と俺。

「しばらくこれで詰めてみましょ!」と江野本。いま考えるとじつに無駄の多い作戦ではあるが、こういうことをアレコレと相談して立ち回り方法を構築していく段階こそが、タイムアタックのもっとも楽しい部分なのかもしれない。

 しかし、タイムは伸び悩んだ。2分53秒を出した翌日に2分51秒に、翌日には2分30秒が出て最終的には2分15秒まで到達するのだが、どうしてもそこから先に進めないのである。しかもこういったタイムが出ることは稀で、頻繁に3分台、4分台というグダグダなタイムを出して、ふたりして「なんなのいまの……」と呆然となることが目立った。さらに恐ろしいことに2分15秒を出した翌日から俺の立ち回りがまるで安定しなくなり、がんばって練習してみたものの2分45秒が限界タイムとなってしまう。

「これじゃきっと、お話になりませんね……」

 チャットの向こう側にいる江野本の顔が、暗く沈んだのがわかった。どうやら俺たちは、最初の壁にぶつかったようだ。抜本的に立ち回りを見直し、革命的な“何か”を見つけ出せなければ、胸を張って人に言えるタイムには到達しないであろう。

「タイムアタックの道は、本当に険しい……」

 俺たちの、暗中模索が始まった。

投稿者 大塚角満 : 15:34

【MH3】第43回 『ハンター編』発売記念イベント その4 〜チケットは溢れんほどに〜 

 今回の『角満式モンハン学〜ハンター編〜』発売記念イベント in ロックラックでこなしたクエストは、リオレイア→ベリオロス(回線落ち)→ベリオロス(仕切り直しで)→ファミ通クエスト(ウラガンキン&ディアブロス)→チャナガブル→ギギネブラ捕獲(高難度)→ラギアクルス→リオレイア→ベリオロス→リオレウス→ボルボロス→ウラガンキン→ファミ通クエスト……だったと思う。“思う”というのがじつに微妙な表現だが、じつはクエストもチャットも楽しすぎたがために途中で「もうメモいいやwww」とペンを捨て、本当にふっつーーーーーーに遊んでいたのでもしかしたら間違えているかもしれないのです! 参加者の皆様、間違えてたらごめんなさい……。

 それにしてもこのイベントの、なんと楽しかったことか……。開催直前こそマイナス思考のドツボにハマって逃げ出したくなるような緊張感に包まれたものだが、集まってくれた人々はどなたもじつにやさしく、楽しい人ばかりで、前述のとおりふつうに友だちと遊んでいる感覚でチャットやクエストに精を出してしまった。イベントには合計で4時間使ったが、正直もっともっと遊びたかったです……。まあこういうものはきっちりと時間を区切ってこそのものだし、そもそも帰りの電車の時間が危うくなってきていたので(苦笑)、大幅に延長するわけにはいかなかったんだけどねえ。なので“イベントリポート”というよりも、ふだん書いているエッセイと同じ調子でベリオロスやウラガンキンとのファーストコンタクトの模様を書かせていただいたのでした。

 イベント中の出来事でとくに印象に残っているのは……モンスターそっちのけでやたらと走り回っている人が多かったことかな(笑)。あと、ケムリ玉、こやし玉、ペイントボールといった、とにかく投げられるものを片っ端からボンボン投げまくっている人を見たときには思わず「良三さんかよ!!w」と叫んでしまったよ。どの人もふだんはそんなことはしないんだろうけど、「お祭りだ!」ってことではしゃぎまくってくれていたみたい。そんなムードメーカー的な人がたくさんいてくれたので、酒場もクエストも終始笑いに満ちていたのである。

 ちなみに、今回のイベント中で俺がオチたのは1回だけだ。……まあ、かなーり積極的に逃げ惑っていたので、モンスターにも相手にされていない感じだったけどな!! 1回だけオチたのは最後に行ったファミ通クエストのときで、確かディアブロスに壁際に追い詰められて息の根を止められたんだと思う(テンパってたのでよく覚えていない)。

 このとき、俺はモニターを眺めながら「うわあああ!! やっちまった!! オチちまった!!」と大騒ぎをしていた。なんとかオチずにイベントを終えられると思っていた矢先だったので、俺が受けたショックは思いのほか大きかったのである。しまった……。やっちゃった……。なんて残念なんだ俺……。この様子を後ろで見ていた江野本ぎずもも「あー……。ついに……」と痛恨の表情をしている。しかし、そのときだった。

 ぴきゅーん! ぴきゅーん! ぴきゅーん!

 闘技場に横たわる俺の亡骸が、緑色の回復エフェクトに包まれた。その回数、じつに3回。背後から、江野本のふんわりとした声が聞こえた。

「あ……。みんな大塚さんを助けようとして、生命の粉塵を一生懸命飲んでくれていたんだぁ^^」

 そう、いっしょにクエストに来ていた3人は、俺の体力が急激に減ったのを察知して立て続けに生命の粉塵を飲んでくれていたのである。でも、あまりにも俺の装備がペラペラだったがために間に合わず……(苦笑)。闘技場に、3人の叫び声が轟いた。

「あー! 間に合わなかったー!!」

「残念! タッチの差だった!!」

「もうちょっと早く飲めばよかったー!!」

 いやいや、その気持ちだけで十分です。俺はオチてしまって申し訳ないという思いよりも、仲間のハンターに守られていたんだという安心感に包まれて、じつにじつにやさしい気持ちになったのだった。

 ちなみに今回のイベントで俺は2回、例のファミ通クエストをクリアーした。その結果、イベントクエスト限定素材“ファミ通チケット”を9枚手に入れることに成功する。なんとなく酒場で、このことをハンターの皆さんに報告した。
 
「2回クリアーして、ファミ通チケットっつーものを9枚もらいましたよー」

 ファミ通のコラボレーション武器“ブレインフォックス”を作るのに必要なファミ通チケットの枚数は5枚なので、必要十分な量が手に入ったわけだ。しかしこの報告に、酒場は騒然となった。

「ええええええ!! 信じられない!」

「マジっすか!! 出すぎなんですけど!」

「5回も6回もクリアーして、まだ1枚しかないですよ!!」

 聞くところによるとファミ通チケットは、クエストをクリアーしても必ず出るというわけではなく、ぶっちゃけかなーり手に入れにくいらしい。いつもいっしょに遊んでいる仲間にも「それ、奇跡的な枚数っすよ……」と言われたくらいなので、よっぽど俺は運がよかったのだろう。いやあ、まさか新刊の発売記念イベントで自分の名前を冠したクエスト(と、勝手に思っている)に行き、手に入れにくい素材をがっぽりと手に入れて、ずっと欲しかったファミ通ランスを作れるとはなあ^^ 俺は喜び勇んで、武具屋に飛び込んだ。しかし……。

 ファミ通チケットは余裕なのに、紅蓮石と火竜の骨髄がひとつもないんですけど……。

「素材の順番がぜんぜん違いますよ!ww」

 酒場の仲間からあがる声に、俺は苦笑いしながらひたすら頭を掻くのだった。

投稿者 大塚角満 : 17:50

【MH3】第42回 『ハンター編』発売記念イベント その3 〜魅せられてウラガンキン〜

 ベリオロスと並んで、今回のイベント中にぜひとも会いに行きたいと思っていたモンスターがいる。それが“爆鎚竜”と呼ばれる“ウラガンキン”だ。

 ウラガンキンは、『3(トライ)』に関する情報がちらほらと出始めたころから、ファミ通誌面や『3(トライ)』の公式サイトなどで紹介されていたモンスターである。そういう意味では、新モンスターの中では非常に露出が早かった部類に入るわけだが、俺はこの日まで一度も、ウラガンキンが登場するクエストには出向いたことがなかった。

 しかしだからと言って、俺がウラガンキンに興味がなかったのかと言えばそんなことはない。それどころか、じつは『3(トライ)』に出てくる新モンスターの中でもっとも「会いたい!」と思っていたのが、何を隠そうウラガンキンだったのである。そう、ラギアクルスやベリオロス以上に、俺はこのモンスターに恋焦がれていたのだ。……まあ俺は『3(トライ)』が発売される直前まで新情報はシャットアウトしていたし、現時点でも知っているモンスターなんて氷山の一角にすぎないんだけどネ。それでも、俺がウラガンキンに密かな恋心を抱いていたのは厳然たる事実なので、実際に会う準備が整った(ハンターランクが上がっただけだが)と知ったときの興奮はヒドいものがあった。「ついに四天王の一角とあいまみえるときがきたっ!!」と、俺は芝居がかった叫び声をあげた。

 俺がウラガンキンを好きになった理由は3つある。

 まずは、その名前。“ウラガンキン”という、いかにも堅い大地をガキンガキンと力強く闊歩していそうな響きと、これまでの『モンスターハンター』シリーズにはなかった字面の雰囲気に、思わず目を見張ってしまったのだ。“口に出して言いたい日本語”というものがあるが、俺はこの“ウラガンキン”という固有名詞を“口に出して言いたいモンハン用語”のひとつとして強烈に推挙しておきたい。あまりにも口の端に乗せて気持ちいいので、俺などはしゃべる言葉の語尾すべてに“がんきん”とつけたいくらいだ。

「最近すっかり秋めいてきたがんきん。いい天気なので公園で日向ぼっこしたいがんきん。でも仕事がいそがんきん。投資は元金保障がいいがんきん」

 って、ちっとも気持ちよくないのでもうやめた。

 理由のふたつめは、以前週刊ファミ通のインタビューで『3(トライ)』の辻本良三プロデューサーが「開発スタッフの中では四天王の一角を占める存在として恐れられている」とウラガンキンの強さを評していたのを読んだから。俺は昔から“四天王”とか“双璧”とか“三銃士”とか“十二神”とか、とにかく数字とからめて強さを主張する手法が大好きで(十二神はちょっと違うが)、そこに選ばれているウラガンキンの存在に強く惹かれてしまったのである。

 最後の理由はやはり、そのルックスにある。巨大な黄鉄鉱の結晶の中に漲る筋肉を封じ込めたような身体はいかにも堅そうで、そこから生えたたくましい後ろ脚は驚くべきパワーを秘めていることを強烈に自己主張している。
 
 そして、顔……。

 意外なほどつぶらな瞳の下にある口は口角が不気味に吊り上り、その下にぶら下がる顎は“爆鎚”の異名のとおり巨大なハンマーを髣髴とさせる。この、あまりにも特異な姿を写真で見たときに俺は確信したのだ。「間違いなくこのモンスターは、規格外のパワーと意思でハンターに襲い掛かってくる」と……。

 そんなウラガンキンとついに、雌雄を決する(大げさだな)時がきた。ベリオロス討伐を終えてロックラックの酒場に戻ると、すでにつぎにチームの3人がクエストを貼り終えていて、「つぎはガンキンですよね! クエスト貼っておきましたので、行きましょう!」と言ってくれたではないか。な、なんて頼もしい仲間たちだろう……。あのウラガンキンを前にしてまったく臆せず、自信満々の表情で俺を待ってくれている……。俺は感激しながら酒場で食事を済ませ、「火山だから、クーラー持っていこう」とつぶやきながらアイテムポーチにクーラードリンクをしこたま詰め込んだ。

「さあ行こう! 初ガンキンだ!!」

 はやる気持ちを抑えきれず、連打でクエストを受注して出発ゲートに駆けつける。俺が準備を終えたのを合図に受注者が決定ボタンを押し、我々は火山へと向かった。俺はウラガンキンに会えるのがうれしくて、ローディング画面中に後ろでイベントの様子を眺めていた江野本ぎずもに振り返り、「えのっち! ついにガンキンだよガンキン! やっとウラガンキンに会えるんだよ!!」とわめき続けた。

 気がつくとロードが終わり、我々4人のハンターは火山に立って……いなかった。あ、あれ?? こ、ここ、火山のベースキャンプじゃないっぽいんですが……。なんだか、クルペッコ討伐訓練ですっかり見慣れた闘技場の入り口に見えるんですけど……。本気で戸惑いながら、俺は3人のハンターさんにたずねた。

「あ、あの……。このクエスト、ウラガンキン討伐じゃないっぽいんですが……。いったいなんですか? これは……」

 ハンターさんのひとりが、笑い含みの言葉を俺に返す。

このクエストでもウラガンキンは出るから大丈夫ですよ!! ちょっと別なのも混じってますけど!!www」

 え……。それってまさか……。

 条件反射的にメニュー画面を出し、クエストの詳細情報を開く。するとそこには……!!

 クエスト名:ファミ通・大角と巨鎚の激突!

「わはははははははは!!!」

 俺は狂ったように笑いだした。これ、ディアブロスとウラガンキンの同時討伐クエストじゃん……。こんなの、いきなりできわけねえだろーーーーーっ!!!!!

 それでも、俺ひとりが戦力にならなかったところで、屈強な上位ハンターが3人もいればどんなクエストでもたいがいどうにかなってしまうもの。実際にこのときもベテランハンター3人が巧みに立ち回り、「あ」と思ったときにはディアブロスが捕獲され、「い?」と言ったころにはウラガンキンが屠り去られていた。俺から見たら阿鼻叫喚の地獄絵図でしかなかったディアブロスとウラガンキンの共演も、熟練者にかかったらこうもあっさりと決着がついてしまうものなんだねぇ……。

 ちなみに俺は本気で逃げ惑っていただけなので、ウラガンキンがどんな動きをしていたのか、さっぱりわかりませんでした(苦笑)。
 

投稿者 大塚角満 : 14:38

【MH3】第41回 『ハンター編』発売記念イベント その2 〜凍土の白刃・ベリオロス〜 

 “『別冊『逆鱗日和』 角満式モンハン学〜ハンター編〜』発売記念イベント in ロックラック”リポートの続きです。……っていうか、ここからが本編のスタートです。

 前回のブログでも書いたが、今回のイベントはエンターブレインの通販サイト“ebten”で『ハンター編』を購入してくれた人を対象に行ったものだ。厳正なる抽選で選ばせてもらった18名のハンターさんたちとチャットやクエストで遊んじゃう……という主旨で、要するに行き当たりばったりのネットイベントというわけですね。「それ、野良で遊んでんのと同じじゃん!!」なんて言わないで。

 イベント開始時間が近づくにつれて、俺が抱いた不安と焦燥は急激に大きくなっていった。緊張という名の風船を胃に詰め込まれ、問答無用で空気を送り込まれているような感じ……と言えば、このときの俺の情緒不安定っぷりが少しは伝わるだろうか? 開始1時間まえには呼吸をするのが辛くなり、30分まえには腹が痛くなってトイレに駆け込み、10分まえには意味もなくゲハゲハと笑いだして止まらなくなってしまった。「何もそこまで……」とお思いかもしれませんが、参加者の表情が見えず、声も聞こえないネットのイベントというものは一種独特な雰囲気があるのだよ。

 俺もこういう仕事をしているのでイベントでステージに上ったり、映像メディアに出させてもらうこともわりとよくあるのだが、何気にそういうときってまったく緊張していないのです。それがネットイベントになった瞬間に「みみみ皆さんに楽しんでもらうことできるかな……」、「粗相がないようにしないと……」、「かかか活躍せねば!!」なんていう思いで心が満たされてしまって、胃が口から出てきてしまうほど余裕がなくなってしまうんですねえ。昨年の秋にプレイステーション3のアドホックパーティーを使ったイベントをしたのだが、そのときもまったく同じ状態だった。

「ああああ!! もうどうすりゃいいんだ俺は!!」

 居ても立ってもいられなくなり、俺はトイレの個室にこもってヒンズースクワットを37回した。でもそんなことで、緊張が中和されるわけもなかった。

 仕方ないので俺は、ロックラックの酒場に入ってすぐにステップのボディーアクションを始めた。緊張していることをごまかすための、緊急回避的な手段である。そして、ステップの周回数が12周を数えたころ、キャラクターにかけておいた隠密の設定を解く。するとその瞬間に、9名のハンターが我が酒場に現れた。

「はじめましてー!」

「こんにちはー!」

「うれしーー!!」

「おどってるーーーwww」

 挨拶の言葉と感嘆のセリフで、小気味よくスクロールしていくチャットウインド。それを見た瞬間にあれほど巨大だった緊張はどこかに消し飛び、俺は一気にフィーバー状態となってイベント参加者に挨拶を行った。

「このたびは『ハンター編』をご購入いただき、本当にありがとうございました! 今日はいっしょに楽しみましょーーー!!」

 というわけでようやく、イベントが始まりました。今回は参加者のハンターランクに準じて3人1組のチームを3つ作り、そこに俺が加わってクエストに行く……という段取りとした。前述のとおり今回の試みは“大塚角満が読者の皆さんとふつうに遊ぶ”というものなので、チーム分け以外はなーんにも決めていない。本当に野良で遊ぶのと同じように、その場でチームの人と相談して出撃するクエストも選ぼうと思ったのだ。

 なんて言いつつ、けっきょくは俺が行きたいクエストに参加者の皆さんを連れまわしていた……って感じがしなくもない。いや、確実にそうでした! 参加者の皆様、その節はありがとうございました。リオレイアもチャナガブルもラギアクルスも、俺が「欲しい!」と思っていた素材はことごとく出ませんでしたが、本当に楽しかったです。参加者の中には「雌火竜の逆鱗が出た!!」、「ラギアの逆鱗が出ました!!」と大喜びしていた方もいらっしゃいましたが、ボクはそのような素材は『3(トライ)』を始めて以来一度としてお目にかかっていないので、きっと見間違いなのでしょう。レイアの逆鱗もラギアの逆鱗も、都市伝説に違いないのですから(半泣き)。

 さて今回のイベントで特筆すべきは、俺がまだお目にかかったことのない逆鱗……じゃなかった、数々のモンスターが出現するクエストに連れて行ってもらえたことだ。この日のためにあえて行かなかったのでは……と自分で勘ぐってしまうくらい、俺は『3(トライ)』のモンスターは手付かず状態なのである。

 最初に俺の前に立ち塞がったのは、凍土に棲まう白銀の牙・ベリオロスだった。『3(トライ)』の先行体験イベントで流れたプロモーション映像で躍動する姿を見て以来、俺はこのモンスターのことが気になって気になって仕方がなかったのである。いよいよ、噂に聞く“超っぱやモンスター”と渡り合える……。コントローラーを持つ手に、じっとりと汗が滲むのがわかった。

 ベリオロスは、凍土のエリア6にあるステージ(高台ね)の上でハンターたちがくるのを待っていた。恐る恐る遠くから眺めると、冷たい氷河に溶け込むような、純白の衣に身を包んでいる。本当に、ベリオロスは真っ白だ。穢れない白いタキシードを纏って、結婚式に臨もうとしている新郎のようにも見える。これほどまでにキレイな白い鎧に身を包んだモンスター、俺はフルフルとウカムルバス、あとチョメチョメ(自主規制)くらいしか知らない。ドドブランゴやキリンも白が基調のモンスターだが、ところどころに別の原色や特徴的な模様が入っているので、ベリオロスの白とはちょっと雰囲気が違う。ベリオロスはその白さに加えて頭が小さく、スタイリッシュなボディーデザインも相俟って、なんとなくだが“悲壮な天才”という言葉が似合う気がした。

「うーん、じつにかっちょいいモンスターではないか……」

 4人のハンターを高台からねめつける神々しいまでのたたずまいにホレボレとしていると、いきなりベリオロスは静かに空中に飛び上がり、ヒュンという効果音を残して俺の前から消え失せた。

「え……? べ、ベリオはいったいどこに……」

 ファーストコンタクトのモンスターが、いきなり視界から消えてしまうことほど怖いことはない。思わず、条件反射的にランスの盾に身を隠す俺。しかしまったく予期していなかった側面から強烈な打撃を受けて、哀れ我が分身は高台から叩き落されてしまった。「貴様はまだ、我の前に立つ器ではない」と言わんばかりの、問答無用の手荒い洗礼である。落下した我が分身に餓鬼のように群がり、カプカプと甘噛みをしてくるバギィたち。それを必死になって振り払いながら、悠々と空中を泳いで3人のハンターを相手にしているベリオロスの躍動を眺めた。凍土に充満する刺すような空気を切り裂き、空を翔る純白のモンスター。そのスピード、その斬れ味は、刃物を連想させてやまない。俺は会社の自席で呆然とモニターを眺めながら、小さな声でつぶやいた。

「白刃……」

 ベリオロスの躍動は、凍った大地を切り刻む抜き身の刀そのものだった。生半可な気持ちでは、一度もまともにその姿を確認できないまま屠り去られてしまうに違いない。

 でもこれこそが、新しいモンハン世界の最大の魅力なのだ。まったく知らない未知のモンスターと実力の探り合いをする瞬間の高揚感が得たくて、俺はこのロックラックにやってきたのである。さあ、ここからだぞベリオロス。いまの俺の持てるものを、すべておまえにぶつけてくれるわ!! そう気合を入れて美しい氷牙竜に挑みかかろうとした瞬間、画面に信じられないメッセージが表示された。

「通信エラーとなったので回線を切断します」(うろ覚え)

 なんでいつもステキな場面でこういうことが起こるねん!!!! ……まあ、俺らしいっちゃ俺らしいけどな……。

 ロックラックに戻ると、イベント参加者にやいのやいのと言われること言われること……(苦笑)。「なんでいなくなるんすか!!w」、「敵前逃亡したなー!w」、「ベリオにビビって逃げましたね!!w」などなどなど……。まあビビっていたのは事実なので、あんま否定できませんでしたけどね(笑)。

 このあと、「仕切り直しを!!」ってことで、同じメンバーで再度ベリオロス討伐に。俺はやたらと逃げ惑うばかりで何もできなかったのだが、屈強な3人のハンターの手にかかって、生ける白刃は凍土の氷河に突き刺さるように息絶えた−−。

 このあと、さらに俺は驚くべきクエストと、チビリそうになるほど物騒なモンスターに会いにフィールドに出向くのだが……。

 続きは次回!

投稿者 大塚角満 : 20:04

【MH3】第40回 『ハンター編』発売記念イベント in ロックラック! その1

 2009年9月12日の夕方から夜にかけて、“『別冊『逆鱗日和』 角満式モンハン学〜ハンター編』発売記念イベント in ロックラック”という、もう二度と書かねえぞ的に長いタイトルのイベントを開催した。これは、エンターブレインの通販サイト“ebten”において同書を予約・購入してくれた人を対象に行ったもの。抽選で18名のハンターを選ばせていただいたのだが、ちょっと信じがたいほどの倍率になってしまい、ありがたいやら申し訳ないやらで心が忙しくてしかたなかったです。

 さてこの間、俺はイベントに備えて、「もうひとり、自分のキャラを作っちゃおう!」ってことで新たなキャラクターを育てていた。せっかくなので、初代『モンハン』のころから使っている愛着のあるハンターネーム“MIDO”でイベントに参加してくれる方々に会いたかったので、このキャラにその名前を冠した。そして、「目標はハンターランク18!」を合言葉に育て始めたのである。このハンターランクになっていればクエストの幅も広がるし、ご迷惑をかけないだけの装備になっているのでは……という考えによる育成計画である。

 しかし俺ひとりの力で、約1週間という時間でハンターランクを1から18まで育てるのは無理があるだろう。最初に作ったキャラのハンターランクが12で止まっていることを見ても、それは明らかだ。なので俺は、仲間に助けを求めた。

「誰か〜! キャラ育てるの手伝ってくれええええ!!」

 俺の切迫した叫び声を聞きつけて、「そりゃちょっとやりすぎだ(苦笑)」と苦笑いしたくなるくらいのすさまじい猛者たちがゾロゾロと集まってくれた。ふだんからいっしょに遊んでいるEffort Cristalのゴッディ&ジャッ君(ていうか、モンハンフェスタ`09東京代表artiesのGod君と名古屋代表の捨てられた狩人の反撃のJack君、なのか)、モンハンフェスタ`09で2回も決勝ステージに上っているはらぺっこのヒロ君、ハルス君、そして超絶テキトーハンターのゴメさんと我が相棒の江野本ぎずも……。さらに「ナンダナンダ、このぶっそうな集まりは」といった感じで、モンハンフェスタ`09で決勝大会進出を決めているあんな人やこんな人もお祭り騒ぎを覗きにきた。そんな、あり得ないくらい豪華なメンバーに守られて、俺の新たな分身はすくすくと成長していったのである。

 しかしやはり、時間はなかった。フルに1週間使えるならハンターランク18くらいは余裕で到達できるのだが、目いっぱい仕事をして帰宅し、フラフラの状態でロックラックにたどり着くころにはたいてい深夜1時とか2時になっている。タイムアタックの練習もしなくちゃいけないのでわずかな時間をどうにかやりくりし、搾り出されたほんの少しの時をキャラ育てに割り当てた。昼間も、業務の合間を縫ってロックラックに行き、「ちょっとでも足しになれば!」とひとりでクルペッコ、ロアルドロスあたりを追い回す。それでも、イベント当日の午後1時の段階でハンターランク13にするのが精一杯だった。

 イベントの開始時刻は、午後6時……。

 このままの状態でイベントを始めて参加者の皆さんにキャラ育てを手伝ってもらう……というのも考えたのだが、ハンターランクの高い方も多く参加されるので、やはりそういう人には俺がまだ見たことのないモンスターが出るクエストに連れて行ってもらいたい(超自分本位)。となるとやはり、ハンターランク18は譲れないところだ。俺は携帯電話を取り出し、ある男にメールを打った。

「たけちー、今日仕事??」

 たけちーとはそう、俺のエッセイではすっかりおなじみの狩魂Tのたけちよのことである。この男はリアルでもロックラックでもいじられキャラなのだが、一応、昨年のモンハンフェスタで決勝大会に進出した腕を持っている。しかも呼び出すことに不思議と何の抵抗も覚えない稀有な人格者なので、こういうときに大活躍してくれるはずなのだ。するとたけちーから思ったとおり、「今日は休みで家にいますよー。どうかされました?」とじつに都合のいい返事が。俺は簡単に事情を説明し、「1時間後にロックラックに来てくれ!」と書いて電車に飛び乗った。

 会社に到着して急いでロックラックに出向くと、すでにたけちーがスタンバってくれていた。さあ、キャラ育てのラストスパートだ。どうにかしてハンターランク18まで育てるぞ。でもせっかく狩りに行くのだから、少しでも魅力的な素材が手に入りそうなクエストに行きたいではないか。俺はたけちーに言った。

「たけちー、レイア狩れる?」

 俺のセカンドキャラはハンターランクを育てることにだけ注力してきたのでろくな装備をしていない。なのでモンスターを狩れるかどうかはたけちーしだいになるのである。俺の質問に、たけちーはこう答えた。

「いけますよー! じゃあレイアにしますか!」

 というわけでふたりでリオレイア討伐に出撃したわけだが、俺がまったく戦力にならないのでなんだかんだで15分ほども時間を使ってしまった。手に入れた素材も「……」なものばかりで、もらえるハンターランクポイントも740どまりである。俺とたけちーはお地蔵さんのような無表情を向き合わせて同時に言った。

「効率悪すぎwww」

 そこで俺たちはたけちーの提案により、ロアルドロスの捕獲クエストに向かうことにした。ロアルドロスは水中戦がメインとなる水没林だと面倒な相手だが、捕獲クエストはフィールドが孤島で、最初に出会うのがエリア9なので陸上で相手をすることができる(加えて、エリア9はベースキャンプから直で行けるしな)。しかもたけちーがスキル“捕獲の見極め”が発動した装備を身につけてきたので、準備は万全だ。俺たちはいそいそとロアルドロスが待つ孤島へと出かけていった。

 たけちーの狙いどおり、このクエストはハンターランクポイントを稼ぐには最適だった。クエスト遂行にかかる時間は3分程度で、しかもクエスト終了からロックラックに帰還するまでの時間が20秒と短い(討伐クエストだと1分かかるからね)。ポイントも500と、テンポよく回すことができればキャラが育つのはあっと言う間だろうなと確信できた。そして実際、たけちーとふたりで5回、10回とロアルドロスをとっ捕まえ続け、我が分身は順調に成長してゆく。自然とゼニーも潤沢になり、俺はいつの間にか全身をクルペッコの装備でかためることができ、武器もフリントペッコ(火属性のハンマー)、スパイラルランス(水属性のランス)を作成することに成功。さらに途中から「助っ人をひとり呼びましょう!」ってことで、たまに遊んでもらうツワモノハンターのこーへーさんを招聘。事情を説明するとこーへーさんは「了解しました!ww」ってことでロアルドロス捕獲に加わってくれて、“角満セカンドキャラ育成計画”はさらなる効率とスピードを手に入れることとなった。

 そして気がつくと、俺のセカンドキャラはハンターランク17にまで成長していた。わずか2時間程度の、急激過ぎる成長劇である。こんなに一気に大きくなってしまったら、服は着れなくなるわ骨はきしんで痛くなるわでたいへんに違いない(意味不明)。しかしこれだけ連続してロアルドロスを相手にしていると、いい加減こやつの顔を見るのがイヤになってくる。共有した時間の長さに比例して相手のことを好きになってしまうことはママあるが、どうがんばっても俺がロアルドロスに恋をすることはなさそうだ。我々ロアルドロス捕獲部隊は口々にこんなことを言い合った。

「ちょっとロアルドロスには食傷気味っすね……w」

「うん、バナナが嫌いになりそう……」

「こんなにロアルドロスが市場に流れたら、ひどい値崩れになるに違いない……」

 でも、俺はハンターランク17になった。もうロアルドロスに行かなくとも、“あのクエスト”が出ているはず……! 俺が勢い込んでたけちーとこーへーさんに向かって「あ! あのさー!」と“例のクエスト”を提案しようとすると、いきなり編集部に飛び込んできた江野本が俺の画面を見るなり、やかましい声でわめきだした。

「ちょっと!!! ラギアの緊急クエストが出てるじゃないッスか!! おいどんも行きたいっす!! すぐにロックラックに行くから、待っててくださいね!!!」

 2時間も遅刻して出社した江野本は、お詫びのつもりか「はい♪」と言ってスタバのコーヒーを俺に手渡し、ギャーギャーと大暴れしながらWiiをモニターに接続。そしてロックラックに来るなり「ラギアラギア!!」と騒ぎ立て、唖然とする3人の男を伴って孤島でラギアクルスを屠り去った。……って、なんだか急に主人公視点が江野本になっちまったが、まあそんなこんなであっさりとラギアクルスを討伐し、俺のセカンドキャラは無事にハンターランク18になったのでした。

 このあと、イベントまで残り30分ってところになってゴッディが冷やかし半分で登場。すると江野本が「大塚さん、イベントできちんと活躍できるように麻痺武器を作っておきなさい! ホラホラ、ゴッディにも手伝ってもらって早く早く!」とおまえは俺のお袋か的なことを言って、我がセカンドキャラをチャナガブル討伐に連れ出す。でもこの1回で見事に必要素材が手に入って麻痺属性のランス“チャク・ムルカ”が完成。防具も武器も、この3時間ほどで目を見張るほど充実してしまったのである。

「これで、準備万端ですね!」と江野本。

「がんばってくださいね!!」とこーへーさん。

「どうか角満さんが緊張しますように!!www」とゴッディ。

 ゴッディに言われるまでもなく、俺は胃が痛くなるほどの緊張感に包まれていたが、それ以上に、急激に成長した我が二代目となる分身の姿を複雑な心境で眺めていた。

(お、俺の最初のキャラ、まだハンターランク12で、武器はスパイラルランスしか持っていないのに……)

 モニターに映る充実装備の二代目を眺めながら、「いーんだいーんだ……」と悲しいエレジーを口ずさんでいると、ふたつ隣の席から江野本が「さあ! イベント始まりますよ!! 大塚さん、準備はいいですか!?」と元気な声を上げた。いじけている場合ではない。これから楽しい『ハンター編』発売記念イベントなのだ!!

 緊張のまま、次回へ続く〜!

投稿者 大塚角満 : 15:15

【MH3】第39回 ロックラックで誕生会

 8月下旬のある日、ロックラックで仲間数人と遊んでいると、江野本ぎずもが突然こんなことを言った。

「そういえば9月の頭に、こんぺいさんが誕生日を迎えるらしいですよ」

 “こんぺいさん”というのは、モンスターハンターフェスタ初代チャンピオン、Jast25`sのこんぺい君のことだ。長崎県在住のタイムアタッカーで、“反骨の涙腺クラッシャー”の異名を持つ(って、俺が勝手につけたのだが)熱き男である。『逆鱗日和』の新刊が出るたびに行っている出版記念イベントに来てもらったりしているうちに、俺と江野本はすっかり、Jast25`sのふたりと仲良くなったのだ。なのでロックラックでもときたま、いっしょにクエストに出かけたり、いつまでもチャットをしたりして遊んでいるのである。

「せっかくロックラックという場所があるんですから、何かお祝いみたいなことができませんかねえ?」

 と江野本が続けた。前述のとおりこんぺい君は長崎県に住んでいるので、そうそう簡単に関東地方にいる俺たちとリアルに会ってお祝いを……というわけにはいかない。でもロックラックだったら、バーチャルな空間ではあるが気の置けない仲間で集まって何かしてやれるのではないか……? 江野本はそう言っているわけである。

「いいね!! ぜひ何かやろうよ!」

 と俺。ふいに、『みんGOLオンライン』にハマっていた5年ほどまえ、「ロビーで結婚式を行うのでゲストとして来てくれませんか?」と一般の人に誘われ、バーチャルなものながら厳かで立派な結婚披露宴を目の当たりにしたときのことを思い出す。あのとき、俺は会社の自席にいながら、感動のあまり泣きそうになっちゃったんだよな……。ロックラックの酒場でどこまでできるかわからなかったが、ぜひまたあのときと同じような気持ちになりたいものだ、と俺は思った。

 そして、“こんぺい誕生会 in ロックラック”へ向けた準備が始まった。でもロックラックでできることと言ったら、ボディーアクションとチャットくらいのもの。でもそこをなんとか工夫して、ちょっとは「おお!」と驚いてもらえるものにしたい。小首をかしげながら、江野本が言う。

「やっぱり参加者が揃ってボディーアクションをする、っていうのがいちばん見栄えがすると思うんです。体育祭の、組体操みたいな」

 これを受けて、俺が言った。

「皆が揃っておもしろいものと言ったら、やっぱり“ステップ”のボディーアクションだろうな。ちょっと練習してみようか」

 急遽、その場にいた7人ほどのハンターで酒場の中心にV字型に並び、「はい! ステップ!」の掛け声とともにボディーアクションのステップを踏んだ。しかし……。

「うは!! 猛烈にバラバラなんですけど!!www」

 とたけちー(モンハンフェスタ`08名古屋地区代表“狩魂T”のひとり)。俺の画面で見る7人のハンターも、おまえわざとズラしてんじゃねえのか的にヒドく乱れたステップを踏んでいる。やはりその場にいる全員で一糸乱れぬ動きをするのは難しいようだ。うーん、残念。ロックラックのEXILEになろうと思っていたのに……。

 けっきょく俺たちは数時間にも及ぶ検証作業を行った結果、「複雑なことをここで行うのは不可能!!」という結論に至る。そして最終的にたけちーのアイデアでチャットウィンドを使った“1文字メッセージ”を流すことにした。参加者が1文字ずつ言葉を発して、チャットウィンドに縦書きのメッセージを残そう、というものですな。

「当日の参加者は、こんぺいさんを除いて9人。なので“お 誕 生 日 お め で と う”にしませんか?」

 とたけちーが言った。もちろん、俺たちに異論はない。さっそく、リハーサルということで練習することにした。言葉を発する順番は、俺・江野本・青森在住のRさん・たけちー……てな感じである。さあ練習だ!

角満   「
ぎずも  「
Rさん 「!!? ……ん?」
たけちー 「じょ……って、先生ーーっ!! ぎずもさんがさっそく間違ってまーーす!!

「あ……w すません、まちがっちったww」と江野本。まったく、先が思いやられるわ……。呆れながら俺は言った。

「各自、キチっとセリフを覚えるよーに!!w って、1文字だけだろが!! 間違えるんじゃねえ!! さあさあ、もう1回やるぞ! “お”」

ぎずも  「誕」
Rさん  「生」
たけちー 「日」
カプコン:カプコンからのお知らせ
カプコン:改造したデータでのプレイは利用
カプコン:規約違反です。接続禁止対象と
カプコン:なりますので、ご注意ください。

 ………………………。

 いい感じでメッセージが作れると思った矢先の、テロリスト的な乱入劇である。

「KYキターーーーーッ!!!」とたけちー。

「どういうタイミングやねん!!」と江野本。

「狙っていたとしか思えない!!www」とRさん。いつになったらまともに練習できるんだしかし……(苦笑)。

 まあこんな感じでほとんど練習ができぬまま、イベント当日がやってきてしまいました。こんぺい君には、「9月2日(この日が誕生日なのだ)に日付が変わったら、俺たちがいる酒場に来てね!」と伝えてある。でも我々は大いなる不安を抱えていたので、イベント開始30分まえに集合してゲネプロ(最後の通しリハーサル)を行うことに(笑)。各自がセリフを確認しあい、立つポジションを最終チェックする。でもこれが思った以上に手間取り、気がつくと日付が変わってしまったではないか! すると……。

「こんばんは〜^^」

 と言いながら、こんぺい君がやってきた。ままま、まだ準備ができてないよ!! ダメだよいま来ちゃ!! 俺たちはこの日の主役に向かってギャンギャンと吠えまくった。

「ちょっと!! まだ来ちゃダメえ!!

リハ中ですよリハ中!!!

関係者以外立ち入り禁止だよ!!!」

 主役に向かって関係者も部外者もあったもんじゃないが、ささやかなメッセージとはいえ、キチンとした雰囲気の中で贈ってあげたいではないか。俺たちの剣幕に肝をつぶしたこんぺい君はそそくさと街を後にし、それを確認した俺たちは最後の舞台稽古を行った。

 そして−−。

 改めてこんぺい君を酒場に迎え、俺たちは心を込めて練習どおりに言葉を発した。

 そして、いっせいに拍手。いろいろとアイデアを出し合い、検証したけど、けっきょく俺たちにできることはこれが精一杯だった。たったひとつのメッセージと、拍手のボディーアクションだけ。こんなことしかできなかったけど、全員が心だけは込めまくった。

「ありがとうございます……>< これまでの誕生日で、いちばんうれしい……。泣いちゃいそうです^^;」

 とこんぺい君。よかった……。ちゃんと気持ちは伝わってくれたんだなあ。

 このあと、もう出し物は何もなかったので(笑)、「踊れ踊れーーっ!!」ってことで、こんぺい君も交えて全員でステップをした。でも、思ったとおりてんでんバラバラもいいところで、ロックラックのEXILEと呼ぶにはほど遠いカオスなダンスパーティーに……。それでも無性に楽しくて、俺たちは時間が経つのも忘れて明け方まで踊り続けた。

◆『角満式モンハン学〜ハンター編〜』情報!◆

★こちらで本書の著者解説を行っております!★

★『ハンター編』投稿採用者発表!
 『角満式モンハン学〜ハンター編〜』に採用が決まった投稿者の方々のお名前をこちらで発表しております! 採用されているかどうか、投稿者の方はぜひご確認を〜!


投稿者 大塚角満 : 15:26

【MH3】第38回 光る渦の向こう その2

 俺がラギアクルスに対抗すべく持っていった武器は、水属性のスパイラルランスだった。

 なぜこの武器にしたのか?

 ぶっちゃけ、ラギアクルスに水属性が有効なのかどうかと聞かれたら、いくら知識に乏しい俺でも「うーん……」と首を捻らざるを得ない。ラギアクルスはどっからどう見ても水の中が大好きそうだし、そもそも“海洋の王”なんていう異名まで持っている。これでもしも「……じ、じつは俺カナヅチで、水が大の苦手なんだよね……」なんてことをラギアクルスが生放送でカミングアウトしようものなら、即座に「しばらくそのままでお待ちください」というテロップが画面に表示され、舞台裏では「ちょっと!! いきなり何言ってんだ! 生放送だぞ! ナマナマナマ!! あああ……。編集長に大目玉だ……。俺の出世が……」なんていう悲喜こもごも(喜、の部分がないがね)を生み出すに違いない。まあそのくらい(どのくらいだ)、ラギアクルスに“水が苦手”というイメージはない、ということですな。

 ではなぜ、俺はわざわざ水属性のスパイラルランスを得物として持っていったのか? その答えはじつに単純にして明確だ。それは……。

 スパイラルランスしか持ってないから。

 これに尽きる。

「ラギアの水が強いのか、それとも俺の水が強いのか。雌雄を決する時が来た!!」

 自分を鼓舞するために、俺は無理矢理わめいた。しかしそう叫びながらも腹の内では、(……このランスのもとになったやわらかライオン(ロアルドロスのことね)の水の力で、海洋の王者に対抗できるとはとても思えぬ)なんてことも考える。こういう思考を突き詰めていくと最終的には、「生存競争に決着をつける最大の要因は、オノレの腕なんだよナ」ってことになって、それがもっとも欠如していることがわかっているから、「実力不足を補うには、やっぱり弱点属性だよナ」という考えに行き着く。ところがどっこい、いまの自分は水属性のランスしか持っていないから、無理矢理「どっちの水が強いのか勝負だ!!」という言葉をみずからに叩きつけるのだが、しかし……って一生ループが続くヘタレハンターの螺旋階段から降りられなくなるのでこのへんで止めますね。

 まあそういう理由からしかたなく、俺はスパイラルランスを持って出かけたわけですね。でも弱点属性こそ合ってはいないが、このランスは手ごろな素材で作れるわりには斬れ味が優秀で、攻撃力もそこそこある。序盤はこれ1本あればなんとか生きていけるんじゃないか……と思えるくらいの性能を備えているので、「ランス、使ってみたいな」と思っておられるルーキーハンターの皆様にオススメしておきます。

 そして俺は初めて、ラギアクルスの視線を真正面から受け止める場所に立った。降り注ぐ陽光を浴び、鮮やかなオリオンブルーの表皮をキラキラと輝かせながら、海洋の王者は堂々と陸地を闊歩している。大きい……。ラギアクルスって、こんなに大きかったっけ……? ……いや、大きいよりも何よりも、このモンスター、こんなにも神々しかったか……? 俺は、まわりの空間が歪んで見えるほどの瘴気を纏わせて歩くラギアクルスを呆然と眺めながら、かつて立ち塞がった幾多のライバルたちの顔を思い浮かべた。

 リオレウス、クシャルダオラ、ティガレックス、そしてナルガクルガ……。

 ゲームを象徴する存在として息を吹き込まれたモンスターの、なんて威厳に満ちていることか……。こいつらと初めてやりあったときも、俺はその圧倒的な存在感にすっかり魅了されちまったんだよな……。しかし、相手はモンスターだ。出会ってしまった以上、両雄並び立たずということでどちらかはその場から消えなければならない。そんなことは、重々承知していた。でも俺はどうしても彼らに対して憎しみや敵愾心といった感情を抱くことができず、逆に尊敬の念が湧き上がってくるのを感じて大いに戸惑ったものだ。

 そして、ラギアクルス−−。

 こいつも、圧倒的に“本物”だった。かつての象徴たちが持っていたのと同じ誇りと威厳を身にまとわせ、俺の前に立ち塞がらんとしている……。

「バオオオォォォォォォォオ!!!」

 ラギアクルスの海鳴りのような咆哮が、孤島全体を揺るがした。開戦の合図だ。Wiiリモコンとヌンチャクを握り締める手に、自然と力がこもる。とてつもない緊張感……。本当にこんなモンスターの、上を行くことができるのか……? でも陸地は、ハンターの土俵のはずだ。ビビってないでいまのうちに、徹底的にダメージを与えないと!!

 俺はがむしゃらに、ランスを振り続けた。いま使える技術を総動員し、突進やキャンセル突き、カウンター突きもくり出して、ラギアクルスに食らいつく。完全に、この場の主導権は俺が握っている。しかし不思議と、ラギアクルスは自分のテリトリーである水中に帰ろうとはしなかった。……なぜだ? 俺を値踏みしているのか? 好敵手となりうる存在なのかどうか、この張り詰めたガチンコの舞台でテストしているとでもいうのか!? 俺は、その実力を隠しているとしか思えないラギアクルスにイラ立った声をぶつけた。

「本気出せよラギア!!」

 しかし、開始から10分も経たぬうちに尻尾を切断したところで、俺とラギアクルスの初対決は“水入り”となった。“撃退した”ということで、クエストが終了になったのである。

 単純に見たら、今回は俺の圧勝だろう。あれだけ入念に準備した回復薬をほとんど使用せず、わずかな時間で撃退を果たしたのだから。でも、このときの俺に去来したのは安心感や優越感ではなく、やってきたのは一抹の不安と恐怖だけだった。俺は海に帰っていくラギアクルスの背中を眺めながら震える声でつぶやいた。

「今回、ラギアクルスが真の実力を発揮する水中で、勝負をしていない……」

 この間、俺はモンスターハンターフェスタ`09を追跡取材している中でイヤと言うほど、日本を代表する強者ハンターたちが水中闘技場で猛り狂うラギアクルスに屠り去られる映像を観てきた。自分の土俵に立ち、すべての力が解き放たれたラギアクルスは、それほどまでに強いのだ。それを知っているからこそ、実力を隠したまま去っていった海洋の王に、俺は言い知れぬ恐怖を感じたのである。

 俺とラギアクルスの生存競争は、まだ始まったばかり−−。

 余裕の凱旋は逆に俺の気を引き締め直してくれたが、このときに抱いた恐怖はすぐに、現実のものとなって俺を覆い尽くすのである−−。

 次回に続く……?

投稿者 大塚角満 : 15:50

【MH3】第37回 光る渦の向こう その1

 ここ最近、狩王決定戦の予選に向けた練習でひたすらクルペッコを追い回していたことが影響してか、プライベートのフリーハンティング(でいいのか?)ではすっかり牙を失った“菜食ハンター”になっている。家庭に戻るといっさい包丁を持たなくなる料理人がいるのと同じように、俺は心休まるモガの村に帰ると愛用のランス(いまだ、スパイラルランス)を脇に置いて、村長と世間話をしたり、看板娘のアイシャちゃんにちょっかいを出したりという牧歌的なモガ村ライフを堪能していたりするのだ。たまに村を出たとしても、行く先は決まってモガの森。時の流れすら吸収してしまうかのようなやさしいモガの原生林の空気に身をゆだねて、キノコやハチミツを採ったり、気が向いたら水に飛び込んでいつまでも泳いでいたりと、本当に自由気ままな時間を謳歌していたのである。

 そう、あのときまでは……。

 いくら菜食主義になったとは言っても村の発展に貢献したいという想いも強いので、看板娘が吐き出してくれるクエストも定期的にこなしていた。チャナガブル、ボルボロス、リオレイア……。遅きに失した感はありながらも、「まぁ、なんとかなるサァ!」と努めて明るく振舞いながら、これらのモンスターと戯れていたのである。

 気がつくと、俺は村★4までのクエストをほぼすべて終わらせていた。菜食主義だあ牧歌的だあと、じつにいい人ぶったことを書いていながら、やることはしっかりやっていたのである。そんな、手強いクエストもさりげなく終わらせてしまうというかっこいい俺に向かって、ギルドの看板娘はポーっと赤面しながらつぎのようなことを言った。

「ついにあのラギアクルスに挑むときが来ましたね!(うろ覚え)」

 そうか……。いよいよ『3(トライ)』の象徴たる海竜に、ガチンコで立ち向かうときがきたのか……。

 かつて、村★1のクエスト“孤島の海中探索”に何の危機感もなくのこのこと出かけていってエリア11の水中に飛び込んだ瞬間、俺の前にユラリと現れた海洋の王。本能的に「いまは絶対に挑んではいけないモンスターだ……」ということがわかりながらも恐怖のあまりWiiリモコンでの操作がぶっ飛んでしまい、やたらとグルグルとカメラを回すだけでラギアクルスから逃げることができない。けっきょく魚雷のような電撃タックルをモロに食らって昇天させられ、「『3(トライ)』で新規導入された海の中にはとんでもねえヤツがいるだ……」という恐怖だけを植えつけられたのであった。

 そんなラギアクルスに、本気で立ち向かわないといけなくなってしまった。

 でも思い起こせば、そもそも俺がこの村に呼ばれたのは頻発する地震の原因であるラギアクルスを討伐することだったので、ここで断りでもしたら「……アンタ、なにしにこの村にきたの……??」と怪訝な顔をされるに違いない。「我がモノ顔で暮らしていた分際で、土壇場で尻尾を巻くとはナニゴトやねん」とエセ関西弁で詰め寄られるかもしれぬ(誰にだ)。そうなったら、エライことだ。俺はラギアクルス撃退に出向く決心をした。

 さあいよいよ、初めてのラギアクルス討伐だ。「よし! いこう!」と決意した瞬間、俺の脳裏に初代『モンハン』で初めてソロでリオレウスに挑んだときの記憶が鮮明にフラッシュバックする。『逆鱗日和』シリーズを紐解いてもそのときの詳細な記録は出てこないのだが(いま思うとなぜ書かなかったのだろう……)、あんときゃ本当にたいへんだったのよ……。ガンナーだった俺は持参した弾丸をすべて撃ち尽くしてしまい、残るダメージソースはペイントボールをめったやたらと投げつけるかローキックの嵐を降らせるくらいしかない……って状況に追い詰められてしまった。そんなとき、アイテムポーチの底に1個だけ転がっていた小タル爆弾を「どうせ無駄だけど……」という捨て鉢な気持ちでレウスの足元で爆発させ、なんとその一撃で討伐を果たしたのである−−。

 このときの記憶が鮮明であるがゆえに、俺は立ち塞がらんとする『3(トライ)』の象徴に恐怖した。またあのときと同じような消耗と絶望が待っているのかと思うと、自然と準備にも力が入ってしまう。回復系のアイテムは、持てるだけ持とう。この時期の俺にとってはハチミツも薬草もアオキノコも貴重品であったが、なけなしの素材をはたいて回復薬グレートを10個生産した。さらに、通常の回復薬と薬草も懐に忍ばせる。本当は秘薬も持ちたかったのだが、原材料がひとつもなかったので(苦笑)あきらめた。秘薬がない以上、さすらいのコックの食事パワーが効いているあいだに(要するに1オチするまでに)大勢を決してしまいたい。よし、今回のテーマは“短期決戦”だっ!!

 俺は「タンキタンキ! タンキで勝負!」と、まるで麻雀でもしているかのような鬨の声をあげながら一路、ラギアクルスが待つ孤島へと向かった。さあ決戦の行方は……?

 以下次回!

投稿者 大塚角満 : 18:14

【MH3】第36回 モンハンフェスタ`09 名古屋大会・狩王決定戦編

 モンハンフェスタ`09名古屋大会の狩王決定戦の詳報です。

 まずは予選のクルペッコ討伐。結果は以下のようになりました!

1位 こえび 1分15秒
2位 捨てられた狩人の反撃 1分17秒
3位 L.O.L 1分26秒
4位 もうゲネポ 1分28秒
5位 PhalaenoちYUKI 1分29秒
6位 はらぺっこ 1分29秒
7位 銀杏 1分30秒
8位 きもおたち 1分34秒

 ……ってどこが詳報やねん!! って感じですね。スンマセン。でも正直、地区大会も3会場めとなり、練習時間が十分取れているツワモノたちの立ち回りについて俺ごときがどうこう言えるものでもないんだよね……。というのも、俺も今回、江野本ぎずもとふたりで真剣に「オリジナルの立ち回りを考えて狩王決定戦に臨む!!」と気合を入れて練習していて、何十、何百というトライアンドエラーをくり返した結果、「……けっきょく答えはシンプルで、いかにハンマーが的確に頭にダメージを入れ、片手剣が麻痺属性の攻撃を当てるかに尽きる」という境地に達したのだ(最初からハンマー×片手剣で練習しているので)。でもそう考えたところで俺のハンマー使いとしての腕にムラがありすぎ、タイムが安定しないんだけどな(最速で1分18秒が出ているが、毎回会場の本番ではひでえことになっている)。この激戦の名古屋地区で予選を突破したチームは、日々の自分たちの努力を信じ、本番に臨んで、これだけのタイムを叩き出すんだから、本当にたいしたもんだと思うよ……。


▲ラギアクルスに挑む、予選1位のこえびと同2位の捨てられた狩人の反撃。

 そんな8チームにおける決勝ステージ、ラギアクルス討伐が行われたわけだが、すでに速報でアップしているとおりとんでもなくハイレベルな激闘となった。結果は……。

1位 こえび 2分45秒 太刀・太刀

1位 捨てられた狩人の反撃 2分45秒 太刀・太刀

3位 L.O.L 2分58秒 太刀・太刀

4位 きもおたち 3分01秒 太刀・太刀

5位 銀杏 3分08秒 太刀・太刀

6位 もうゲネポ 3分23秒 太刀・太刀

7位 はらぺっこ 3分41秒 太刀・ランス

8位 PhalaenoちYUKI 3分44秒 太刀・ランス

 なんと上位3チームが3分を切ったうえに、1位は同タイムという大激戦!! しかも優勝タイムの2分45秒は、大阪大会の1位が叩き出した2分50秒を上回る今大会最速記録となった。


▲激闘の結果は……なんと1位が同タイム!!

 それにしても、このモンハンアスリートたちの極まりっぷりは目を見張るものがある。ステージ下で8チームの立ち回りを目が痛くなるほどじっくりと鑑賞させてもらったが、大きなミスを犯したチームはなく(もちろん俺程度のレベルだからそう見えるのであって、彼らからしたら「ぐだぐだでした……」ってことになるんだけど……)、そうなってくるとタイムに影響を及ぼすのは本当に細かい部分での齟齬と、残る要素は気まぐれなラギアクルス君の動きしだい……って感じがしてしまったよ。小さなミスが連鎖的につながり、気がつくとタイムに大きな開きができている……。改めて『モンハン』のタイムアタックがスポーツと変わらぬ“競技”なんだと実感させられた。


▲表彰される捨てられた狩人の反撃のJack君。彼は2大会連続で名古屋大会を制したことになる。

 そんな激闘を制して優勝した2チーム、こえびと捨てられた狩人の反撃に勝利者インタビューを試みたのでお伝えしよう。まずはこえびのおふたり、kobiyanさんとkakuさんだ!

大塚 優勝、おめでとうございます! 決勝のタイム、2分45秒ですけど、おふたり的にはどうなんですか?
kobiyan 練習ではもっと速いタイムは出ていたんですけどね。
kaku でも、大会での一発勝負ってことを考えるといい感じだったかなと。
kobiyan 結果が優勝ですからね。
大塚 緊張はしてました?
kobiyan ぜんぜんしてなかったんですよ、それがw
kaku そう、まったくw
大塚 ホントに!? 大阪でもステージに上られましたけど、そのときはどうだったんです?
kobiyan 大阪のときは、緊張していたんです。
kaku それで自滅した感じだったので……。
kobiyan 今回は“遊びに来た”ってくらいの気持ちで臨めたんですよ。決勝ステージでもピョンピョン跳びはねてましたからね、僕w
kaku そう! 途中でコントローラーを勝手に離したりしてるんでビックリしたんですよ僕は。「ええ!?」って(苦笑)。
kobiyan コントローラー離した瞬間に「いける!!」って思ったので。
大塚 へぇ〜w でも大阪で一度ステージを体験しているってのが、いい方向に働いたんじゃないですか?
kobiyankaku そうですね!!
kobiyan かなりプラスになりましたね、その経験は。
kaku 緊張がなくなったのも大きかったですし。
大塚 あのステージの上で緊張しなかった、ってのが信じられん……。
kaku しなかったですねぇ〜w 大阪のときは、予選のクルペッコのときもすごく緊張していたんです。でも今回はその予選も、ぜんぜん平気でした。
kobiyan おかげで僕ら、予選も決勝も制したダブル1位ですから!
kaku 心の余裕のなせる業ですw
大塚 でもこれで、決勝大会はモンカフェ軍団が勢ぞろいって感じになりましたね。
kobiyan はい! 本当にみんな一丸となって努力していたのでうれしいです!
kaku 努力したからこその結果なので、それがいちばんですね。
大塚 決勝のクエストが発表されたら、またみんなで詰めて……。
kobiyankaku はい! そうですね!
大塚 でも最終的には、仲間たちが最大のライバルになるかもよ?
kaku ライバルが身内になる可能性は、確かに高いですねえ。
kobiyan ですね。でも、ウチらは強いですよ。
大塚 じゃあ現時点で、いちばんのライバルと思えるチームは?
kobiyan 僕的には、全部ですね。大阪大会を制した“ラージャンどこ行ったの?”も強いですし、東京のartiesも。あそこは神と神が手を組んでいるチームなので、本気でヤバいと思います。
kaku そうそう。でも、そのときのコンディションとか運とかで、どこが優勝してもおかしくないと思いますよ。でも、彼らに負けないくらい練習して、がんばりたいですね。
大塚 わかりました! 全国でも期待しているので、がんばってください!
kobiyankaku はい! ありがとうございました!

 そして、こえびと同タイム1位だった捨てられた狩人の反撃のおふたり。Jack君とワクワク君だ。

大塚 まずは……名古屋大会V2、おめでとうございます(ニヤニヤ)。
Jack ありがとうございます(笑)。

※角満注 捨てられた狩人の反撃のJack君は、昨年の名古屋大会を超絶シンクロプレイで制し、その後全国2位となった“Effort Cristal”のジャッ君なのだ!

大塚 タイムはどう? 「ベストに近いものが出た」って言ってたけど。
ワクワク 太刀・太刀なので安定しないんですけど、太刀・ランスよりは火力があると思って、それで挑んでみました。いいタイムでしたねー!
Jack 大阪大会に行ったとき、(水底にある)閃光玉を取りに行かないほうが速いんじゃないかというアドバイスを仲間からもらって、そっちでやってみたんです。でもこれだとほぼガチになるので、ラギアの動きにタイムが左右されちゃうんですよ。すごく安定感が悪いので正直、いいほうに傾くか、悪いほうに傾くかは賭けでした。
大塚 0か100か、みたいな?
Jack そうですそうです。しかも、この作戦に変えてから練習があまりできなかったんです。ずっと閃光玉を取りに行く立ち回りを詰めていたので……。なので僕は不安だったんですけど、相方が「いけるいける!」ってずっと言ってて。
ワクワク なぜか、ラギアまでいければ「勝てる!」って思っていたんです。
Jack 今回は僕がラギアの攻撃を食らいすぎちゃって何もできなかったんですけど彼が攻撃しまくっててくれて、気がついたらラギアが討伐されていましたw
大塚 でも閃光玉を取りに行く立ち回りだと、どれくらいのタイムだったの?
Jack 正直そんなには変わらないんですけど、安定感があるんです。
大塚 でも、100に転ぶ可能性があるほうを取ったんだ。
ワクワク そうですねw
大塚 ギャンブラーだなあ!! でもそれは、ワクワク君の「勝てる!」っていう予感と、去年名古屋で優勝しているジャッ君の「ホームの戦い」っていう思いがいいほうに転ばしてくれたんじゃないの?(ニヤリ)
Jack (テレ臭そうに)わかんないですけどねw
江野本 予選のクルペッコはどうだったの?
Jack ペッコは、ハンマーを使う相方しだいなんです。きちんとハンマーが攻撃を入れられないと、片手剣の僕がいくらやってもタイムは縮まらないんですけど、今回はすごくうまくいきました。なので僕も、全力が出せたと思っています。
大塚 完璧だったもんね、ペッコの立ち回り。
Jack 今日はワクワク様様ですよ。
ワクワク いやいや(笑)。
江野本 何がいままでと違ったの?※このチームは東京大会、大阪大会では予選で敗れているのだ。
Jack 自信アリアリだったんですよ、彼は。
ワクワク やっぱり優勝を狙っていかないと、強豪たちには勝てないと思ったんです。だから、優勝を狙うつもりでがんばってみました。
Jack 横で「今回もダメじゃないの……」って言ってた僕に、ずっと「いけるいける!」って声をかけてくれていたんです。
江野本 じゃあ、チームリーダーはワクワクさん?
Jackワクワク ……どっち?w
大塚 ヘンなふたりだなあ!w でもこれで全国大会への進出が決まったけど、勝てる予感はしてるかい?
ワクワク もう、絶対に勝てます!!
大塚 かっこいいなオイ!! ……だってよ、ジャッ君w
Jack ……いつもこんな感じなんです、彼(苦笑)。
大塚 でもさ、ゴッディ(Effort CristalでのJack君の相棒のGod君のこと。東京1位のartiesの一員)だってこういう感じだったでしょ? いいじゃんいいじゃん。がんばってよ。
Jack あー、そう言われると……。いやでも、彼ほど敵にしたら怖い男はいないですよ。それにGodだけじゃなく、強豪ばっかりじゃないですか、まわりが。だから「とにかくがんばります!」としか言えないですね。……相方とは温度差が(苦笑)。
江野本 でもさ、捨てられた狩人が、ゴッディと同じ舞台に立つことが決まったね。
Jack いやぁ……ホントにビックリしてます。僕は地区大会のステージに上がれればいいや、くらいの意気込みだったんですけど。……相方には悪いんですけどねw
大塚 あはは! でも全国大会、期待しているのでがんばってね!
Jackワクワク はい! がんばります!

 というわけで、つぎの地区大会は10月4日の福岡だ。モンハンフェスタ初代チャンピオンがいる九州地区は、全国大会に進出できる枠がたったの“2”となっている。しかも、ここから約1ヵ月の期間が開くことから、予選、決勝ともにさらにタイムが縮まってくる可能性が高い。空前のハイレベルバトルが待つ福岡大会まで、しばし待たれよ!


▲ハイレベルな名古屋大会を突破した精鋭の活躍に期待!


 
 

投稿者 大塚角満 : 14:33

【MH3】第35回 モンハンフェスタ`09名古屋大会 序章編

 モンスターハンターフェスタ`09は、早くも折り返し地点。地区大会3会場めとなる名古屋大会が開催されました! なんだかもう、いろいろあっていっぱいいっぱいなので、前フリもなくいきなりリポートを始めちゃいましょう〜! ……って、それがふつうですね。そうですね。


▲名古屋も早朝からこの行列に!! 最終的な来場者は7000人となった。モンハン熱、名古屋も高いっす!!

 今回、俺と江野本ぎずもは前日入りはせず、朝イチの新幹線に乗って名古屋に乗り込んだ。午前9時、会場の吹上ホールに到着するとそこにはすでに……2500人にも及ぶ大行列が!! 行列の先頭には、わざわざ茨城から足を伸ばしたという青年が陣取っている。名古屋大会も東京、大阪に負けぬ熱気に包まれる気満々のようだ(よくわからぬ表現だがね)。では、まずはいつもどおり会場の模様をダイジェストでお伝えしましょー。


▲看板娘は、名古屋でもかわいいです。左からアイシャちゃん、シャーリーさん、パティちゃん。ちなみに俺は、まだアイシャちゃんとは1回もしゃべれていません。2年まえのフェスタで、最後までテレくさくてパティちゃんと写真を撮れなかったことを思い出しますなぁ……(しみじみ)。


▲今回のフェスタでは、ステージがふたつ用意されている。ここセカンドステージでは一瀬ディレクターが中心となって、『2nd G』や『モンハン』のカードゲーム“ハンティングカード”のイベントが行われているのだ。これは『2nd G』の女子ハンターチャレンジクエストの優秀チーム発表の模様ですな。まるで自分の家にいるかのようなリラックスした格好をしている一瀬さんが印象的です。


▲会場のフードコーナーで食べられるメニューをちょっとだけ紹介。これは各会場でダントツのいちばん人気となっているこんがり肉。『モンハン』フードと言えば、やっぱりこれですな。


▲これはたこ焼き。大阪限定かと思っていたけど、名古屋でも食べられました。


▲名古屋大会の全景。東京、大阪よりも小さな箱(と言っても、十分広い施設だったけど)だったので、ギッシリ感はかなりのものがあった。

 そしてお待ちかねのステージイベント。壇上にはおなじみ、『3(トライ)』の辻本良三プロデューサー、藤岡要ディレクター、小嶋慎太郎アシスタントプロデューサー、木下研人メインプランナー、『2nd G』の一瀬泰範ディレクターが登場。いつものとおり、ゆる〜い雰囲気の中で自己紹介が行われたあと、さっそく“開発者チャレンジクエスト”が行われることとなった。そう、良三さん、藤岡さん、一瀬さん、研人さんの4人で『3(トライ)』のクエストに挑戦するという“例の”コーナーですね。

 さて問題は、何のクエストに挑戦するかである。「今回は何にするの? チームリーダー」とMCを担当する小嶋さんに振られた研人さんは、「ちょうどいい具合に、いまロックラックには砂嵐が吹き荒れています」という前置きのあと、ザワめく会場の雰囲気を楽しむような笑顔の中でつぎのように言い放った。

「今回は、ジエン・モーランの撃退に挑戦します!!」

 うおおお……。そうきたか!! いやまさか、ここでジエン・モーランを持ってくるとは夢にも思っていなかったよ。なんとなく、このモンスターについて書くことは遠い先のことだと思っていたしね(ニヤリ)。というわけで、砂漠を泳ぐ巨大鉱山、ジエン・モーランに挑戦である。

 そのまえに、まずは4人の装備紹介だ。とは言っても、藤岡さん、一瀬さん、研人さんはキチンとジエン・モーランの弱点を考え、氷属性の武器を持ってきていたんだけどね。で、いつも多大な問題をはらんでいる自由奔放プレイヤー、良三さんはと言うと……。

 サメ。

 はい、以上です(笑)。

 ジエン・モーラン撃退クエストの最初の見せ場は、なんと言ってもオープニングのムービーである。「モーランを見たことがない人も多いと思いますので、ぜひこの映像からご覧ください」という良三さんの言葉に導かれるように始まったムービーは、雄大な砂の海を泳ぐ規格外に大きなモンスターと、龍撃船に乗ってそれを追いかける勇敢なハンターたちの物語を描いたものだ。観たことがある人も初めて観る人も、思わず息を飲んでしまう大迫力の映像。でもいつまでも見惚れているわけにはいかない。いまからこの巨大な龍を、4人(いや3人か)で撃退しなきゃいけないんだから!! ……しかしどっからどう見ても「絶対的不利」という感は拭えなかったけどね(苦笑)。

 それでもチームリーダーの研人さんは元気に、テキパキと指示の声を飛ばした。

「一瀬さん、撃龍船にあるバリスタと大砲を使ってください!」

 誰もが考える常套手段を役割分担された一瀬さん、思わず「だ、だいぶザックリした作戦やな(苦笑)」とため息を漏らす。続けて研人さんは藤岡さんに向かって、「藤岡さんは対巨龍爆弾を準備してください!」と鋭い声を飛ばす。これに「ハイ」と素直に応じる藤岡さん。こうして、作戦分担は終了した。

 しかし撃龍船の上にはどう見ても、ハンターがもうひとりいる。これに気づいた小嶋さんがたまらず「チームリーダー、もうひとりいますけど……」と言うと、研人さんは嫌々「……良三さんは船の先頭に行って、『タイタニック』のマネゴトでもしていてください」と完全なる戦力外通告。しかし当の良三さんは「うん、わかった!!」とはしゃいで撃龍船の船首に走り、カメラ視点を回して「ホラホラ! サメとモーランの並走!!」と大喜びしているではないか(苦笑)。でもこれがけっこうなファインプレーで、じっくりとジエン・モーランの巨大さを確認することができたのである。


▲ジエン・モーランと並んで走る様子にご満悦の辻本良三プロデューサー。でもおかげで、このモンスターの巨大さがよくわかった。

ジエン・モーランは、あのラオシャンロンよりも大きいと思います」

 と藤岡さん。会場にいる誰もが知っているラオシャンロンとの比較に、来場者から「おお〜!」という感嘆の声が漏れた。

 ジエン・モーランはその巨大さゆえに、撃龍船と最接近したときに身体に飛び移ることができる。すると、各所にある弱点部位をピンポイントで攻撃できるようになるのだ。時間が限られているステージ上でのクエストなので、みんなで飛び乗ってピンポイント攻撃を加えたい。というわけでチームリーダーの研人さんが、メンバーに飛び移るタイミングを大声で指示した。「いまです!! 乗ってください!!」と。「よっしゃあ!!」とばかりに撃龍船からジャンプする良三さん、藤岡さん、一瀬さんの3人。ところが……。

 ゴロゴロゴロゴロ……

 3人とも砂漠に落下して転がってるんですけど(笑)。「リーダーにウソつかれた」と一瀬さん。「すんませんw タイミング間違えたw」と研人さん。「見て見て! 砂漠のサメ!!」と良三さん。アナタほんとに自由だな!!


▲ジエン・モーランは“動く鉱山”と言われるとおり、その身体から希少な鉱石を採掘することができる。……まあ、ステージ上のエキシビションで悠然と掘っていたのは良三さんだけだけどネ。
 
 それでもなんとかつぎの機会で、3人はジエン・モーランの巨体に飛び移ることに成功した(研人さんはガンナーなので、船の上から攻撃していたのだ)。さあさあ、弱点部位にピンポイント攻撃だ! 藤岡さんと一瀬さんはそれぞれが氷属性の武器を持って(モーランの最大の弱点は氷属性らしい)、弱点部位に集中攻撃を加えている。おお、なんかすごくいい感じだ。すると良三さんもここぞとばかりに「俺も攻撃してるよ!」と自己アピールをしてくる。ついにモンスター側のプロデューサーも改心して、マジメに攻撃するようになったんだ!! と思っているとスクリーンが良三さんのモニターに切り替わった。すると……!


 ピッケルで石掘ってる人がいるんですけど……。

 ピッケルじゃダメージ与えられねえから!! と、見ていた人の誰もが思ったことでしょう。ちなみに良三さん、ジエン・モーランの身体にある採掘場所を片っ端から攻めたらしく、最終的にアイテムが持ちきれなくなっていました。この緊張感あるステージ上のエキシビションクエストで、そこまで本気で掘るかアナタは!!

 そんな調子だったが不思議と、クエストは順調に進んだ。途中、藤岡さんが腕の部位破壊を達成。するとジエン・モーランはその巨体を躍らせて、撃龍船を飛び越す大ジャンプを敢行!! 「うおおおお!!」という怒号が渦巻く会場。モーランの最大の見せ場は、しっかりと観衆の心に刻み込まれたようだ。

 このあと、珍しく良三さんが働いて撃龍槍をモーランの身体に直撃させることに成功(「フェスタでいちばん緊張した!!」と良三さん)。これに気をよくした良三さんは「うりゃああ!!」という気合のもとランス(サメはランスなんです)の突進を敢行し、藤岡さんを砂漠に突き落とした

「……なんか小さなモーランに吹っ飛ばされたんですけど」と藤岡さん。

クエストでは油断したらアカン、っちゅーことですよ」と良三さん。やっぱりこの人はモンスター側の人間のようです。

 そして、土壇場でこんなことをやっているようでは撃退が果たせるわけもなく、無念のタイムアップ。これで、開発者チャレンジクエストは1勝2敗となりました……(苦笑)。

 さて気を取り直して、『3(トライ)』に出てくるモンスターについて藤岡さんが詳しく解説してくれる人気コーナー、“教えて藤岡先生!”のリポートと参りましょう。名古屋大会で取り上げられたのは“水没林に棲むモンスター”でした。

●ロアルドロスの生態

藤岡先生 ロアルドロスの外見で最大の特徴となるのが、首のまわりにあるたてがみ状の器官。これは鱗がこのような形態に変化したもので、スポンジ状になっています。ロアルドロスは乾燥に弱いんですが、ここに水分をたくさん溜め込むことができるので陸で暮らすことが可能になります。ときたまロアルドロスが水を撒き散らしますけど、これを浴びられるのでメスのルドロスも同じように陸上生活ができるんです。ちなみに彼らは、1頭のロアルドロスに対して複数のルドロスが集まってハーレムを形成して生活していますが、彼らにはジャギィほどの社会性はありません。ロアルドロスには10〜20頭のルドロスが付き従っているんですけど、縄張り争いが激しいため、ハーレムは1ヵ月と持たないんです。

●チャナガブルの生態


▲チャナガブルはうまそうです。

藤岡先生 一度見たら忘れられないほど特徴的な外見をしているモンスターですが、生態も非常に個性的です。まず彼らの捕食手段。チャナガブルは身体に色素胞というものを持っており、これをコントロールして地面と同じ色にし、擬態を行います。さらにヒゲのような器官を水底から突き出してユラユラと揺らし、水草のマネをして魚を集めます。そして、大きな口を開けてすべてを吸い込む! これがチャナガブルの捕食方法です。なんでもかんでも吸い込むので、水の中にあるガラクタも口にしてるでしょうね(笑)。 また、頭から突き出ている提灯ですが、これは疑似餌にして魚を集める……というよりも、光らせて外敵の目を眩ませ、その場から逃げたりするときに使うことが多いようです。その発光ですが、これは提灯の中に入っている発光バクテリアを刺激することで光らせています。

 ちなみにこのあと、来場者やケータイサイト“モンハン部”に寄せられた質問を藤岡先生にぶつけるQ&Aコーナーになるのだが、名古屋会場で選ばれた質問は「チャナガブルはおいしい?」、「チャナガブルを鍋の具に使っても大丈夫?」とかとか、チャナガブルを食べたいと思う人が多いことを裏付けるものばかりになりました(笑)。ちなみに“うまいかどうか”については、「……アンコウ鍋はうまいスからね(笑)」(藤岡先生)とのことです(笑)。

 続いては、もうすっかりおなじみとなった“オレたちモンハン部”のコーナーだ。名古屋大会のゲストは“よしもとモンハン部”の中から、ハローバイバイの金成公信さん、ニブンノゴ!の森本英樹さん、ネゴシックスさん、コンマニセンチの堀内貴司さんの4人。さらによしもとモンハン部の部長である次長課長の井上聡さんからのビデオメッセージも紹介された。それによると井上さんは、「会場にいる人たちに負けないくらいやり込んでいます。おかげで痩せました!!」と告白。さらに、狩王決定戦に参加するハンターたちに向けて「磨いてきた努力の結果を出せるようにがんばってください!」と熱いエール。井上さん自身も大会に参加するモンハンアスリートに匹敵する実力者ゆえに、この言葉は参加者に響いたのではなかろうか。


▲ネゴさんが意外なほど冷静に立ち回って、ボルボロスに有効打を当てていたことにビックリしました。

 そしてステージ上では、ケータイサイト“モンハン部”で展開されているよしもとモンハン部のコンテンツの中から、実際に『3(トライ)』を遊んでいる様子を流している“トライ!モンハントライ!”の実演が行われた。厳正なる抽選の結果、クエストに挑むのは『3(トライ)』のハンターランクが46の森本さんと、同じく33のネゴさんに決定。ふたりとも武器は太刀を選び、ボルボロスが待つ闘技場に降り立った。

 クエストは意外なことに、実力者と見られていた森本さんが早々に2オチするという波乱含みの展開に。たまらず、見守っていた金成さん、堀内さんが「声を出して意思の疎通を!!」とアドバイスするも、何を勘違いしたのかネゴさんが「こんにちは!!」と突如発言し、ステージ上はますますカオスな空気に(苦笑)。それでも、どうにかこうにか7分ほどでボルボロスの討伐を果たし、最低限の面目は保てる結果となった。

 このあとにステージでは、会場で配られているモンハン模試の答え合せ、来場者をステージに招いてのチャレンジクエストなどが開催。そしていよいよ、狩王決定戦名古屋地区大会の予選結果発表と、決勝ステージの火蓋が切って落とされる!!

 狩王決定戦名古屋地区大会の詳細は、別記事でお伝えしましょう!

投稿者 大塚角満 : 15:56

【MH3】第34回 ハチミツ狂想曲

 出社するなり、中目黒目黒に思いもよらない言葉を突きつけられた。

「大塚さん、ハチミツ調達しました?

 え……? ハ、ハチミツ? なんのことだ? 確かに俺はハチミツが大好きで、家にはつねに原産地や花の品種が違うハチミツが数種類常備されている。こいつを夜な夜な皿に取って、スプーンですくってペチャペチャ舐めるのが我が至福の時だったりするのだ。……って俺は行灯の油を舐めるバケネコかっ!! と、わけのわからぬみずからツッコミをしてしまうくらい、ハチミツが大好きなんです。

 しかしこのときの目黒の言葉は、そういう類のものじゃないらしい。俺は言われた意味がわからず、スタミナ切れのクルペッコのように「ぐるるるる?」とヨダレを垂らしながらポカンとしていると(大丈夫か俺)、目黒は急にニヤけた顔になって衝撃のひと言を発した。

「夕べ、ロックラックの交換所でハチミツがリストに並んでいたんですよ。けっこうチョロい素材と交換できたんですけど……って、その顔じゃ、知らなかったみたいですね」

 え。

 え……。

 ええええええ!!!???

 みみみ魅惑のハチミツデーは昨日だったのかーーーーーーっ!!! ああああ……気づかなかった……。

 目黒が言うハチミツの日、俺はしっかりと明け方までロックラックに滞在していたのだが、友だち連中とクエストにも行かず、酒場に置かれたタルを囲んで踊りほうけていたんです(笑)。でもまさかそのときに、密かに(?)交換所にハチミツが入荷されているなんて思いもせず、「踊れ踊れーーっ!!」、「飲め飲めーーーっ!!」と大騒ぎしていたのだ(このときのこと、いつかどこかで書くと思います)。嗚呼……。なんたる失態……。『3(トライ)』はこれまでのシリーズ作品と比べてハチミツはかなーり集まりやすくなっているが、それでも採集ではなく、購入や物々交換で手に入るなら「ここぞ!」とばかりに大量入手したくなるのが人の子というもの。これが俺だけでなく、目黒もハチミツの日に気づかずに「しまったー!!」と慟哭しているのならあきらめもつくのだが、目の前にいる男は「ザマミロ」と言わんばかりの勢いでニヤついているのである。そんな目黒が、茫然自失となっている俺に向かってトドメとばかりにこんなことを言った。

「大塚さんがロックラックにいるのは知っていたので、電話して教えてあげようかと思ったんですけどねぇ……。まあでも、僕はありったけの素材をつぎ込んでハチミツを400個手に入れておきましたよ^^」

 するとそこに、逆鱗日和ファミリーのひとりである女尻笠井がやってきて「あ、僕も300個ほどハチミツ確保しておきました^^」とシレっと発言。さらにふたりは勝ち誇った顔で「もしもハチミツにお困りになったら言ってください。ハチミツ、あげなくもないですよwww」と声を揃えた。

 ところがその翌日、暇にまかせてロックラックに出向いていた目黒が痛恨の表情を浮かべながら、部下の原稿チェックをしていた俺に低い声でささやいた。

「今日もロックラックの交換所でハチミツが手に入るんですね。大塚さん、もう手に入れちゃいました?」

 え。

 え……。

 ええええええ!!!???

 ハチミツの日は継続していたのかーーーーっ!! 天は我を見放さなかったっ!!

 俺はすぐさま原稿を脇に押しやり、「マママ、マジか!! いますぐ行くぞロックラックにっ!!」と悲鳴にも似た大声をあげる。それを聞いた目黒は「あ、しまった……。余計なこと教えちまった!!」と部下とは思えない失礼なことをぬかしていたが、ハチミツに取り憑かれた俺の耳にはまったく入ってこない。俺はクマのように鼻を鳴らしてネットワークに接続し、震える手を必死に押さえながらロックラックに進入。勢い込んで、交換所のおばちゃんに話しかけた。今日ばかりはこの太ったおばちゃんが、絶世の美女に見える。嗚呼……アナタは砂漠の街に咲いた一輪のドクゼリモドキ……。

 褒め言葉もそこそこに、さっそくアイテム交換リストを眺める。すると……おおお!! 目黒が言ったとおり、ハチミツが入荷しているではないか!! しかも……。

「あれ……? このハチミツ、“彩鳥のコイン”と物々交換できるぞ。しかもコイン1枚につき、ハチミツ5個という交換レートだ……。ってことは……!!」

 俺はこの間、江野本ぎずもとふたりで闘技場に入り浸り、クルペッコ討伐ばかりしていた。狩王決定戦に備えたタイムアタックの特訓だったわけだが、これをクリアーするといくばくかの報酬がもらえるのである。そのひとつにあるのが、件の彩鳥のコイン。もらえる個数は毎回違うが、たいてい1枚か2枚は報酬リストに入っている。しかしこのコイン、あまり使い道がなく、アイテムBOXにいたずらに積み上がっていく様子を眺めながら俺たちは、「このコイン、べつのものに換えられればいいのにね」と苦笑いをしながら話していたのだ。俺と江野本がクルペッコ討伐に費やした時間は、余裕で『3(トライ)』の総プレイ時間の半分は超えている。結果、このとき俺のアイテムBOXに入っていた彩鳥のコインの数は……!

 875枚(笑)

「わああああああああああっ!!!!」

 俺ははしたなく絶叫した。本気でチビってしまうところだった。えええ、えーっと、コイン1枚がハチミツ5個だから、どういうことになるんだっけ? えっとえっと……ハチミツは何個になるんだ……!!! 難しくて計算できねえ!! 目から血が出るほど画面を凝視したまま、「ひぃぃぃ!!」とか「きゃあああ!!」とか悲鳴を上げている上司をいぶかしみ、目黒と笠井が「どうしたんですか?」と言いながら俺の画面を覗き込んでくる。そして……。

「わああああああああああっ!!!!」

 肝を潰してその場にへたり込む逆鱗日和ファミリー。ロト6で3億円が的中している投票シートを見せられたときのような反応である。

「えーっと、彩鳥のコインが900枚あるとすると……よ、4500個ものハチミツが手に入ることになりますよ!!」

 と笠井。あまりの衝撃に身動きが取れなくなり、いまや信楽焼きのようになっている。つい数時間まえまで「ハチミツに困ったときはいつでも言ってくださいウヒヒヒヒ」とニヤニヤしていた無礼な部下は地底人に連れ去られたようだ。

 けっきょく俺は、「ま、何個でもいいんだけどネ、フフン!」とふんぞり返りながら、所持できる限界個数と思われる999個のハチミツと、「ま、あんま使わないかもしれんけどネ、フフフン!!」と腹を叩きながら300個ほどの回復薬グレートを調合してアイテムBOXにぶち込んだ。気分は完全にゴールドラッシュ。『モンハン』を遊び始めてから5年になるが、かつてこれほどセレブな状態になったことがあっただろうか? いや決してない。

 でも。

 無尽蔵と言えるほどのハチミツがアイテムBOXの中にあるというのに、俺はモガの森やクエストに出向いて虫の巣を見かけるたびに、その下で腹這いになっている。口から出る言葉は、昔と変わらぬ「ハチミツくれハチミツくれ!」というもの……。「あさましい……」と思わなくもないが、染み付いてしまった清貧時代の想いは消えることがなく、俺は虫の巣を見かけると条件反射でクマになってしまうらしい。でも、莫大な貯金があるのに1円たりとも無駄にしないという現在の境遇を省みて、俺は初めてこう思ったのだ。

「金持ちって、こういうものなのかもしれないなぁ……」

 と……。

投稿者 大塚角満 : 15:19

【MH】 『角満式モンハン学〜ハンター編〜』発売日に想う

 全国のハンターさんから募った“モンハンあるある体験”を1冊にまとめた『逆鱗日和』シリーズ最新作『別冊『逆鱗日和』 角満式モンハン学〜ハンター編〜』が本日(2009年9月3日)、発売となった。企画が動き出したのが5月の中旬くらいだったので、じつに4ヵ月近くもこの本の制作に没頭していたことになる。

 その間には、海外出張や『3(トライ)』の発売もあったりして、まあバタバタするのなんの……(苦笑)。しかも今回の本は俺ひとりの体験談で構成するのではなく、多くの人からいただいた投稿を吟味し、追加取材もし、『逆鱗日和』ふうの加筆・修正も行うというこれまでにやったことのない作業の連続だったので、俺は作業開始当初はハラハラの連続だった。ちょっと隙を見せると「おもしろくまとめることができるだろうか……?」、「無事に発売日を迎えることができるだろうか……?」という不安&焦燥が脳内を駆け巡り、夜も眠れなくなり、ビールはおいしい季節になり、結果3キロ太りました(関係ねえだろ)。

 とは言いつつも、じょじょに揃っていく『ハンター編』のカケラはじつにキラキラしていて、それらがヨイショヨイショと手を携えて組みあがっていく様子はなんともワクワクさせられる光景であった。自分では決して体験できないような笑えるエピソード、眉唾モノの都市伝説、ホロリとさせられる感動体験もたくさんあって、もしかしたら俺こそが、この『ハンター編』をもっとも楽しく読む人間なんじゃなかろうか……と思ったりもした。これら全国のハンターさんから寄せられた体験談を骨子に、芸能界の『モンハン』フリークとの対談、一風変わったハンターさんたちへの取材をもとにしたルポルタージュなどなど、書き下ろしのコンテンツを肉付けしていく。俺の書く『逆鱗日和』というものを知っていようが知らなかろうが、とにかくハンターだったら楽しんで読めるものを作りたいとの思いで、編集、執筆作業にのめり込んだ。結果、『ハンター編』が形になっていくにつれて当初抱いていた不安や焦燥はウソのように消えうせ、それどころか「ははは、早く全国のハンターに読ませたいっ!!!」という“逆焦燥”に襲われる日々が始まる(笑)。作っている最中には本当にいろいろなことがあったが、俺もプロデューサー&ディレクターの江野本ぎずもも、心から納得できる作品に仕上がりました。

 そして、今日。

 俺たちふたりは、明け方までクルペッコを追い掛け回していたためにすっかり寝不足になりながらも元気に早朝(って午前11時だが)に集合し、都内の大型書店へとくり出した。恒例の、書店視察である。集合時間がこんな有様なので複数の店舗を回ることなどできるわけもなく、見てきたのは1店舗だけです(苦笑)。それでもやはり、緊張する……。あるかなぁ、『ハンター編』……。なかったらどうしよう……。若干無口になりながら、ゲーム関連書籍が並んでいるコーナーに行くと……!!


▲携帯電話で撮影したのでちょっと画像乱れておりますが、こんな感じでかわら版を置いてくれている書店さんもあります。けっこうな読みでがある冊子なので、お茶のオトモとかにいいかもー。

 あったー!! って、ホントになかったら困るんだけど、実際にこうして平積みになっているのを見ると感激するわ毎度毎度……。しかも写真にあるとおり、今回は書店によっては、急遽作った“逆鱗日和かわら版”なる小冊子を手に入れることができる。前述のとおり今回の『ハンター編』は、『逆鱗日和』を知らない人にも手にとってほしいという思いが強く、そのくせ『ハンター編』が気に入ったらぜひ本編も……とも思ったので、『逆鱗日和』がどういう書籍なのかがわかるかわら版を作ったというわけだ。『本日も逆鱗日和』、『もっと! 逆鱗日和』、『ニャンと! 逆鱗日和』、『サヨナラ! 逆鱗日和』、『角満式モンハン学〜モンスター編〜』からそれぞれ1編ずつエッセイを選り抜き、このかわら版に収録してあります。もちろん無料なので、見かけたらぜひぜひもらっちゃってくださいね。

 というわけで無事、『ハンター編』が店頭に並びました。改めましてここで、投稿いただいたすべてのハンターの皆様に御礼申し上げます。

 本当に、ありがとうございました!

 『ハンター編』は、皆さんが作られた単行本です。僕も江野本も、じっくりと楽しませてもらいますね!

投稿者 大塚角満 : 16:34

【MH3】第33回 いいオンナの条件

 『3(トライ)』のプレイ時間が140時間を超えた。発売から1ヵ月で140時間。計算するとだいたい、1日に4.5時間ほどこのゲームで遊んでいることになる。とは言っても、140時間のうち100時間以上は闘技場のクルペッコと戯れていると思われる。おかげさまで毎晩のように、クエストカウンターにいるギルドマスターのおっさんに「みょーーーーーっ!!」と凄まれながら焼けすぎの焼き鳥を口の中に詰め込まれるという悪夢を見ています。クルペッコさん、毎夜毎夜お付き合いいただき本当にありがとうございます。

 さて。

 140時間ほど遊んでみたうえでのいまの感想は、「『3(トライ)』って、おもしれえなぁ(しみじみ)」というものだ。「おまえそれでもモノ書きか!! みょーーーっ!!」と怒られてしまいそうなほどシンプルな感想ではありますが、本気で言葉を捧げようと思った瞬間に、このコラムの1回や2回では収まりきらないほどの想いが溢れだしてきてしまうので、あえてすっきりと、いまの感想を「おもしろい」のひと言にまとめてみたわけです。

 では何がおもしろいかって(けっきょく語り出す俺)、6000時間以上もこの世界観の中で遊んでいる俺のような人間をしても新鮮な驚きがあちこちに転がっている点。これは本当にすごいと思う。それどころか逆に、いままでの流れを踏襲しているものをたまに見つけて「あ! これ懐かしい!」と感激するありさまだ。でももっと驚くのが、それほど新しいものになっているというのに、ちょっと遊んだだけで「これはまぎれもなく『モンハン』だ……」と思えてしまうところだったりする。矛盾したことを言っているのは重々承知しているが、このような安心感と先進さを同居させるために開発チームの人たちがどれほど苦労されたのかを考えると、この薄いDVD-ROMが宝物のように思えてくるのです。

 そんな、心地よい矛盾の中で漂っている俺が出会ったものの中で、現時点(村の★4、オンラインのハンターランク11程度)でもっとも「!!!」となったのは何を隠そう、雌火竜・リオレイアの挙動だったりする。「ちょっと見ないうちに、どうしちゃったのあの娘は!!」と、見たことのない動きを展開するリオレイアの躍動を目の当たりにして、俺は驚きを通り越して笑い出してしまったのです。

 無印(初代『モンハン』のこと)の時代からリオレイアは、“狩っててもっとも楽しいモンスター”と言われていた。いかにもワイバーン然とした目を引くルックス、多彩な攻撃方法、その素材から作れる魅惑の武具の数々と、彼女がハンターを引きつける理由は枚挙にいとまがないほどだ。そんなリオレイアが『3(トライ)』にも登場すると聞いたときの感激は、いまでもはっきりと覚えている。

 そんなある日、ついに俺は『3(トライ)』で初めてリオレイアと対峙した。Wii版の『G』についてた『3(トライ)』の体験版でときたまクルペッコの野郎(なぜか憎しみを込めて)が苦し紛れに呼び寄せることはあったが、あれはリハーサルみたいなもので本番はここからなのである。

 そのとき、俺は毎度おなじみの中目黒目黒、女子大生ハンターのKちゃんと3人でリオレイア討伐に出向いていた。目黒もこのときが『3(トライ)』のリオレイアに挑むのは初めてだったのだが、「まぁ、ナンダカンダ言ってもレイアはレイアだよナ。余裕余裕」なんて言いながら、久々に同級生の女の子と会うくらいの軽〜い気持ちで水没林でリオレイアと対峙したのである。

 パッと見、リオレイアはリオレイアだった。顔は当時(いつのことだ)の面影を残したままで、若干ながら身体の模様が派手になっている感じがしないでもない。まあ、女はしばらく見ないうちに急に垢抜けて服装が派手になったり、化粧が上手になっていたりするものだから、レイアもそんな感じなのだろう。なのでこの期に及んでも、俺と目黒は余裕しゃくしゃくだった。

「レイアはレイアだからナ」

 いっしょに野山を駆け巡っていた少年少女時代の思い出を頭にひらめかせながら、俺と目黒は垢抜けたリオレイアに危機感もなく接近していった。「おーい、レイア〜! ひさしぶり〜!」。そんな言葉が口から出ても、おかしくない勢いであった。

 しかし件のリオレイア、ノスタルジックな思いに囚われている俺と目黒の眼前でいきなりバサリと上空に飛び上がったと思ったらそのまま中空に留まり、まるで値踏みをするように俺たちをねめつけるではないか! な、なんだこの雰囲気……。昔のレイアちゃんと、なんだか違う気がするんですけど……。俺たちの知ってるレイアちゃん、こんなことしなかったよな……。

 そこまできてようやく、俺と目黒は危険を察した。こ、こいつ、俺たちが知ってるリオレイアじゃねえぞ……。昔の女と同じだと思っていたら、とんでもない目に遭うに違いない!! のんびり屋の目黒も目の前にいる女から危険すぎる匂いを感じ取ったらしく、向かいの席で青い顔をしながら叫んだ。

「お、大塚さん! なんかこのレイア、やば……!!!

 言い終わらぬうちに、同窓会の席でデレデレと同級生の女の子に接近していったスケベ男ふたりは、壮絶なサマーソルトでゴミ屑のように吹っ飛ばされた。ちゅ、中空姿勢からほぼノーモーションでサマーソルトをくり出すのかこのオンナは!!

 もうそこからは、阿鼻叫喚の地獄絵図である。中空姿勢からの滑空、高出力火炎放射など“ネオ・リオレイア”の新たな攻撃をことごとく食らって、アッと言う間に目黒が2オチしてしまった。……まあ新攻撃うんぬんがなくとも、目黒はすぐに2オチするけどナ。

 けっきょくボロボロになりながらもKちゃんが何とかまとめてくれてクエストは成功に終わる。しかし俺と目黒が受けた衝撃の度合いは、クエスト成功という薬などまったく効果がないほど大きかった。あのレイアちゃんが、こんなオンナに成長していたなんて……。

 純朴で田舎娘丸出しながらじつに魅力的だった初恋の女の子は、都会の風を浴びてすっかり大人になり、キレイな服と、上手な化粧で身体を彩って、颯爽と俺の前に現れた。

「もう、昔のあたしじゃないのよ♪」

 くり出される中空サマーソルトが、彼女が一筋縄ではいかない手強いオンナに成長したことを告げていた。

 うん、そうこなくちゃな。

 こいつは今回も、口説きがいがあるぜ。


投稿者 大塚角満 : 17:32

大塚角満

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週刊ファミ通副編集長にして、ファミ通グループのニュース担当責任者。群馬県出身。現在、週刊ファミ通誌上で“大塚角満のモンハン研究所”というコラムを連載中。そこら中に書き散らした『モンハン』がらみのエッセイをまとめた単行本『本日も逆鱗日和』シリーズ(4巻)が発売中。また、そこからのスピンオフとして別の視点から『モンハン』の魅力に迫る書き下ろし作品『別冊『逆鱗日和』 角満式モンハン学』シリーズも。このブログではさまざまなゲーム関連の話題を扱うつもり。一応、そのつもり。


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