大塚角満の ゲームを“読む!”
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すんません……。アップが遅くなりまして……。こんな俺でも体調を崩すときがありまして、大阪が帰ってきてから50オチくらいしていました。
さて。
ではここからは大真面目に(これまでが不真面目だったわけではない)、モンハンフェスタ`09大阪の、狩王決定戦の模様をお届けしよう。大阪大会の衝撃はダラダラと長く書いても伝わらないと思うので、俺にしては珍しく、キッパリと短くまとめたい。
まず予選。いろいろなところから入ってくる情報によると、今年の狩王決定戦の地区大会で“最大の激戦区”になるのは間違いなく大阪だと思われた。大阪は言わずと知れたディフェンディングチャンピオン、モンハンフェスタ`08の覇者である“もうゲネポ”を筆頭に、全国的に名の知れたチームがいくつも存在する群雄割拠の地なのだ。蛇足ながら付け加えれば、東京大会で圧勝したartiesは大阪地区のハンターと東京地区のハンターが手を結んだチーム。ここも当初は大阪で予選に……というプランもあったというから、大阪のタレントの揃いっぷりはどエライことになっているのがわかると思う。
さて、そんな大阪大会の予選(クルペッコ討伐)では、上位に驚異的な記録が並ぶこととなった。
★大阪地区予選上位8チーム
1位 Raget 1分12秒
2位 こえび 1分13秒
3位 ラージャンどこ行ったの? 1分22秒
4位 もうゲネポ 1分23秒
5位 J.K 1分26秒
6位 華塾 1分28秒
7位 持ってる 1分29秒
8位 Juice 1分35秒
▲ハイレベルな大阪予選を勝ち抜いた8チーム。この精鋭たちで決勝だ!
1分12秒と1分13秒って!! いったいどうやればこんなタイムが出るんだ……。俺は親交の深いもうゲネポの予選が終わった直後、彼らが1分23秒を出したことを聞いて「これは予選トップを争うタイムか?」と思ったものだが、結果は彼らのタイムですら予選では4位……。9位も1分41秒というタイムなのに、それでも予選突破が叶わないとは……。東京大会から1週間が経過したことでさらに立ち回りが突き詰められてきたこともあるのだろうが、一気にここまでとは……。会場でカプコンの関係者とすれ違うたびに「大塚さん、見ました? あのタイム……。恐るべきものですよ……」と言われたが、関係各位も想定外の記録が刻まれているということだ。
そんな中で特筆すべきが、“西のモンハン虎の穴”と言うべき“アメ村のモンカフェ軍団”の存在である。じつは予選を突破したRaget、こえび、ラージャンどこ行ったの?、J.K、華塾の5チームは、同じグループで日々、『モンハン』のタイムアタックに切磋琢磨するハンターたちなのだ。伝説的な実力者の集まりとして全国のタイムアタッカーから羨望のまなざしを送られるこの軍団。ついにそのベールを脱いで公の場で実力の一端を垣間見せたわけだが、決勝のステージでさらに、彼らの驚異的なポテンシャルを我々は見せつけられることになるのだ。
そして、決勝のラギアクルス討伐。徐々にだがこのクエストも、立ち回りが先端に向かって洗練されてきているようだ。その証拠に、大阪の決勝ステージで選ばれた武器は太刀がほとんど。予選7位の“持ってる”と8位の“Juice”はランスをひとり絡ませて立ち回りをプランニングしていたが、ほかのチームはすべて、太刀・太刀のコンビとなった。戦略の大枠としては、まず手持ちの眠り投げナイフをラギアクルスに当てて眠らせ、ここで爆弾を使うか、それとも水底に眠る閃光玉を取りに行くかで道が分かれるが、その後は連続して2個のシビレ罠にハメて動きを拘束し、背中に集中して攻撃を当てての“背中ダウン”を奪ってさらに動きを封じる……という流れになるよう。もちろん、あくまでもこれは大枠であり、細かい部分はどのチームも違う動きをする。そしてこれこそ声を大にして言いたいのだが、簡単に書いているけどこれを自分で実践できるかというと決してそんなことはない、ということだ。ステージ上で藤岡ディレクターも「太刀は瞬発力にすぐれる武器なので、ラギアの動きをギリギリでかわし、背中に攻撃を集中させてダウンを奪い続ければこういうタイムが出るということは理屈としてはわかる。でも言ってる僕には絶対にマネできない立ち回り」と脱帽していた。そんな、開発陣すらが驚愕する大阪大会決勝の結果は以下のとおりだ!
★大阪地区大会決勝 結果
1位 ラージャンどこ行ったの? 2分50秒 太刀・太刀
2位 Raget 3分06秒 太刀・太刀
3位 華塾 3分40秒 太刀・太刀
3位 Juice 3分40秒 太刀・ランス
5位 J.K 3分45秒 太刀・太刀
6位 こえび 4分03秒 太刀・太刀
7位 持ってる 4分12秒 太刀・ランス
8位 もうゲネポ 4分38秒 太刀・太刀
あのラギアクルスを、3分かからずに料理してのけるとは……。そしてディフェンディングチャンピオンのもうゲネポは、序盤こそ「完璧だった」(もうゲネポ・唯君)と言える立ち回りでラギアクルスを圧倒するが、1個の閃光玉を外したことから歯車が狂い、2オチを計上。結果8位となって、大阪大会を勝ち抜くことは叶わなかった。彼らの巻き返しはあるのか!?
そして大会終了後、激戦区を制したラージャンどこ行ったの?のおふたり、hiroさんとyukieさんに直撃取材を行った。その模様をお届けしよう。
▲辻本プロデューサーから表彰されるラージャンどこ行ったの?のおふたり。
大塚 優勝おめでとうございます! さっそくですけど決勝のタイム、2分50秒というのはおふたりにしたらどんな位置づけのものなんですか?
hiro ちょっと遅い……ってところですね。
大塚 ホントに!?
hiro・yukie (声をそろえて)はいw
大塚 聞くの怖いんだけど、ベストっていくつが出ているの……?
yukie ベストは、2分04秒ですねー。
大塚 マジで!? それ、クルペッコじゃなく!?
hiro はいw ラギアのタイムです。
大塚 武器は太刀・太刀でしたね。
hiro そうです。東京大会の模様を見て、太刀・ランスで確実なタイムを狙ってくるチームが怖いな……って思ったんですけど、太刀・太刀で、けっこう博打的に攻めました。
大塚 ほほう……。力技的な?
hiro そうっすねー。まあ寝かせてからシビレ罠、シビレ罠でつなげて、あとは背中ひるみ狙いで。2回くらいこれが取れればいいかな、という作戦ですかね。
大塚 なるほどねぇ……。緊張は、してました?
hiro してました! さすがにあの舞台は……。
yukie しかも相手が、ゲネポだったので……。
hiro そう……。なんたって前回の優勝チームですからね。
大塚 そうかあ。でも、全国大会に行くことが決まりましたけど、感想は?
yukie そうなんですよー。……予定外でしたw
hiro じつは東京で優勝したartiesが最初、大阪で出ると聞いてて、“打倒arties”を掲げて参加したんですよ、今回は。でも彼ら、東京大会に出ちゃったんで……。
大塚 Mizunoe君(artiesのメンバーのひとり)たちと、直接対決したかった?
yukie はい! 阻止したかった!w
大塚 いまのところ、最大のライバルはarties?
hiro・yukie ……身内もすごいですからw
大塚 あー、そうか。恐るべき人たちがまわりにたくさんいるもんなー。本当に、身内で全国の決勝を争う可能性もあるわけですもんね。
yukie そうなんですよねー……w
hiro そのときは、店長にがんばってもらいますw 僕は初めてフェスタに参加したので、ステージに上がるくらいが目標だったんです。
大塚 無欲だったんだー。
hiro そうです。無欲の勝利ですw
大塚 でも、今回のフェスタでもっとも激戦だと言われた大阪をトップ抜けしたのはすごいですね。
hiro そうですねー。しかもけっこう、クルペッコ討伐の立ち回りも出回り始めていたので、予選突破のボーダーラインが上がっていたじゃないですか? だからますます激戦でしたよね……。
大塚 ちなみに、ペッコとラギアはどっちが緊張した?
hiro・yukie (間髪入れずに)ペッコです!!w
大塚 やっぱり予選なんだー。
yukie そこで狂ったら、おしまいですからねー。
hiro しかも、ちょっとグダったんですよ、ペッコのとき……。片手剣に最初コカされて、「ど、どうしよ!」って。
大塚 それでそのタイムを出せるんだ……。いやでも、女性ハンターが加わった強豪って滅多にいないから、全国大会でも注目されると思いますよ。
yukie えー、マジですかー。
hiro ……そもそもその格好、目立ち過ぎるんですよ……。
一同 (爆笑)
大塚 あーw もっとおとなしくしろと?w
hiro えー、いややw
江野本 決勝大会は、もっと髪を盛りたいとか?w
yukie ですねーw もっと盛っていきたいですw
大塚 あはは! まあこういうのは目立ったモン勝ちだから!w 全国でも期待しているので、がんばってください!
hiro・yukie はい! ありがとうございました!
というわけで、群雄割拠の大阪大会を制したのは男性・女性のコンビ!! こいつは全国大会がおもしろくなってきた。モンカフェ軍団は決勝大会へ向けて、さらに立ち回りを詰めてくるはず。そしてディフェンディングチャンピオンの動向も気になるところ。つぎの舞台は、9月6日の名古屋大会だ。ここではどんなドラマが展開されるのか? 乞うご期待!!
【MH3】第31回 プロデューサーとの約束・第二章 その1
土曜の朝、髪を切った。モンハンフェスタ`09大阪大会の前日、大阪に向かう当日の朝のことである。ちょっとまえに切りすぎ状態となって「こ、こんな男に誰がしたっ!」ってことで大騒ぎをし、「もう一生、帽子かぶって生きていく!」とまで言って、髪の毛を切ったことを大後悔していたというのに、それからひと月も経っていないというのに、また髪を切るハメになった。
ナゼ俺はこんな目にあっているのか?
いい加減、グジグジともったいつけてもしかたがないので、スパっとその理由を書いてしまおう。下手するとモンハンフェスタ`09の狩王決定戦の勢力図に影響を及ぼすかもしれないからナ。
以前ちょっとだけ書いたが、ファミ通.comに掲載したこちらのインタビューを行ったとき、話がモンハンフェスタ`09に及んで、そこで開催される狩王決定戦に俺と江野本ぎずものコンビが参戦する……ということを辻本良三プロデューサーに告げたのである。すると……。
「せっかく出るんやから、何か賭けません?」
と良三さん。明らかに俺を挑発しての発言である。でもこう言われて「自信がないからやめとくわ」なんて情けないことを言ったら、それこそ良三さんの思うつぼだ。なので俺はこう応えた。
「望むところ! もしも予選で20位以内に入れなかったら、罰ゲームを受け入れようじゃないか!」
すると良三さんは目をキラリと光らせて、思いもよらないことを爆笑しながら言った。
「じゃ、ダメだったらいまよりも髪を短くする、ってのはどうですか?ww」
え……?
……えーーーーーーっ!!
ただでさえ短くしたことを後悔しているっつーのに、そのうえさらに短くしろっつーのかこの男は!! ひ、ひどい! ひどすぎる! でも、こう言われて引いてしまうことは俺のプライドが許さなかったし、今回のクルペッコ討伐には自信もあったのでついつい俺は首を縦に振ってしまったのだ。
「いいい、いいでしょう! 20位以内だったら絶対に入れるはず! 受けようではないかこの勝負!!」
というわけで、このたびの”敗者髪切りデスマッチ”が行われることとなったのである。ちなみに俺が勝ったときは良三さんが髪を切るのではなく、カプコンの保養施設に取材も兼ねて招待してもらえる、というおいしい条件をつけてもらった。なのでこの勝負は両者合意のもと、フィフティーフィフティーの関係で成立したのである。でも、
「大塚さん、ふつうにインタビューに来ただけやのに、なんでそんな体を張るハメになってんのww」
と、大人げないふたりのやりとりを横で聞いていた藤岡要ディレクターには爆笑されるし、我が相棒の江野本ぎずもは「またそんな約束しちゃって……」と俺をにらんだのでした。でもこの話、どこからどう漏れ伝わったのか知らないが、会う人会う人に「大塚さん、いつ坊主頭になるの?(ニヤニヤ)」と言われて失禁しそうになったわい。はっきり言っとくけど、誰も坊主にするなんて言ってねえから!! ちょっと短くする、って言っただけだわい!! ところが最近では、約束の現場に立ち合っていた江野本までもが、「あれ? 大塚さん、坊主にするって言ってませんでした??」と言い出す始末。まったくこいつらは……。
で、けっきょく東京大会では緊張のあまり俺がとんでもない失敗をし、箸にも棒にもなタイムで順位表を見るまでもない結果に……。と言うわけで、話は冒頭に戻る。
俺は徹夜明けの身体を鼓舞しながらどうにか大阪出張の準備をし、重いカバンを引きずりながら家を出た。目指すは行きつけの美容室……としたかったのだが、残念ながら早朝営業をしておらず、”ある人”の予言に導かれるようにまったく知らない床屋に入るハメとなった。……じつはこの数日まえに次長課長の井上さん、麒麟の川島さんに今回の髪切りデスマッチのことを話したら、川島さんが「なにをやっとるんですかw」と苦笑したあとにこんなことを言ったのである。
「でもせっかくやからもしも負けたら、いままで一度も入ったことのない床屋さんで切ってもらってくださいよw」
それはあまりにも怖すぎるーーー!! と思ってその場では「そいつはカンベンして!!」と逃げたのだが、物理的に行きつけの美容室に行けなくなってしまった以上、知らない店舗で切るしかなくなってしまったのである。川島さん、お導き、ありがとうございました。
というわけで俺は、散髪した人の髪の毛が大量に付着したままという驚くべき前掛けを首につけられ、スプレーもかけない”生の”髪の毛をジョキジョキジョキジョキと豪快に切られた。この1カ月でどうにか盛り返してきてなんとか見られるようになった髪の毛は、再び失敗ヘアーへとリセット……。まあ東京大会の予選で緊張のあまり失敗しまくった俺がすべて悪いのだが……。
そんな頭を首の上に乗っけて、俺は大阪にやってきた。そこでさっそく、「あははは! さっぱりしましたね〜、大塚さん!!」と不遠慮に笑うプロデューサーに会い、ムカついてその足を踏んづけて「大阪で20位以内に入ったるど!!」と凄む。すると良三さんはニヤニヤと笑い、「ウチの近所の床屋、予約しときましたから」とボソリ。ちょっと! んなに切ってたら、髪の毛なくなってまうわ!! なんていう大騒ぎを深夜までしていたのでした。
で、すでに大阪大会は終わっているのですが、角満&ぎずもコンビがどうだったかについては、またそのうち番外編で書こうと思います……。
あああ……。しかしなんで俺がこんな目に……。もう腹立って仕方がないから、『モンハン』に関する極秘情報を書いてやる。
良三さんは、プリンが苦手です。
あー、ちょっとだけすっきりした(笑)。
【MH3】第30回 モンハンフェスタ`09大阪大会 序章編
やってきましたよ大阪に! ただでさえ短くしすぎで後悔していた髪の毛をさらに短くして、大阪にやって参りました!! 1年ぶりとなるモンスターハンターフェスタの大阪大会だーーーっ!! 今回、異常に長いリポートになる予感がしているので、恒例の(?)前フリはナシでいきなり切り込みたいと思います。まるでこのリポートの序文のような“フェスタ番外編”をすぐにアップするので、前フリ好きな人(いるのか知らんが)はそちらもご堪能くださいね。
▲早朝から、この大行列!! 大阪のハンターは、いつもアツいぜ! というわけで、最終的な入場者数は9000人に達した。ちなみに、モンハンフェスタは入場無料のイベントです。まだ地区大会も3会場あるので、名古屋、福岡、札幌地区の人は首を長くして待とう!
モンハンフェスタ`09大阪大会の会場は、大阪では随一の大きな箱、インテックス大阪だ。朝、9時半すぎに会場にやってくると……ぐはあ!! すでにすさまじい長さの行列ができているんですけど!! 昨年の大阪大会もとてつもなく長大な行列ができて入場規制が敷かれていたけど、いやはや、今年もすごいな大阪は……。この熱きファンの大集結もあって大阪大会は定刻よりも若干早めに開場。茨城県から夜行バスに乗ってわざわざやってきたという若者を先頭に、多くのモンハンフリークが会場に雪崩れ込んだ。ではでは本格的なリポートのまえに、熱気渦巻いた大阪会場の模様を写真で紹介しちゃおう。ちなみに、最終的な大阪大会の入場者数は9000人(東京大会と同じ!!)になったそうです。
▲看板娘ズは大阪でも超元気! 左右のシャーリーさん、パティちゃんはおもにセカンドステージ(『2nd G』のイベントなどがメインで行われている)のお手伝い、中央のアイシャちゃんはメインステージのお手伝いとして壇上にも登場しております。
▲これ、大阪会場だけのサプライズ展示! なんとすべてチョコレートでできたアイルーキッチンなのです! 大阪の有名パティシエさんが作った逸品で、ふだんは『モンハン』の開発部に置かれているとのこと。もちろん、食べられる。長距離輸送をすると溶けてしまう恐れがあるため、これはカプコンの地元である大阪だけの展示。見られた人は、超ラッキーですよ!
▲『3(トライ)』関連の資料などが充実しているのも今回のフェスタの特徴。これはラギアクルスの爪の標本です。
▲フェスタの会場の片隅(?)に、いかにも怪しい小屋が……。じつはこの中で、『モンスターハンター モンスター占い』という本を上梓したばかりの占い芸人、ゲッターズ飯田さんが占いをしているのです! ちなみに飯田さんは俺と江野本の飲み友だちですが(笑)、占い、マジで当たります。
▲『モンスターハンター ハンティングカード』の公式大会やイベントも行われております。
ここからは魅惑のステージイベントの詳細リポートだ。まずオープニングを飾るトークイベントに、モンハンクインテット(定着しなそう)と呼ばれる『モンハン』シリーズ開発陣が登場した。登壇したのは、『3(トライ)』の辻本良三プロデューサー、藤岡要ディレクター、小嶋慎太郎アシスタントプロデューサー、木下研人メインプランナー、『2nd G』の一瀬泰範ディレクターだ。さらに“特別ゲスト”としてリアル・ラギアクルス装備に身を包んだ“ハンターさん”も登場。会場に大歓声がこだました。このラギア装備を指して良三さんは、「えーと、前回のフェスタで公開したレウス装備と比べて、軽量化が図られたことが特徴です!」と、レウス装備もラギア装備も着たことがない来場者にはさっぱりわからないことを自信満々に発言。すかさず小嶋さんに「そこ、言わんでいいところだから(苦笑)」と思いっきり苦笑いされておりました(笑)。
▲いつものメンバーによる、いつもな感じのゆる〜いトーク&チャレンジクエスト。これを見るために来場している人も多いはずだ。今回も爆笑のステージとなりました。
そんな、いつもと同じゆる〜い感じで始まったステージイベント。まず最初に行われたのは開発者4人による“チャレンジクエスト”だ。『3(トライ)』のオンラインモードを使って、良三さん、藤岡さん、一瀬さん、研人さんの4人でクエストに挑戦するというこのコーナー。前回の東京会場ではギギネブラに挑んだものの、いつのまにか“ギギネブラ一派”と成り果てた良三さんの狼藉につぐ狼藉のおかげでものの見事にクエスト失敗となっている。しかしこの日、チームリーダーの研人さんは不思議と自信満々の表情をしている。そしてMC担当の小嶋さんに「チームリーダー、今回は何に挑むの?」と振られた研人さんは「今回は『3(トライ)』のメインモンスターであるラギアクルスに挑みます!」と驚きの発言。とたんに会場には「え〜^^; ダイジョブなの〜?? ^^;;;」という空気が充満する。それを察してか研人さんは、「今回は大丈夫です!! きちんとした作戦があるんです!!」とピシャリ。でもその元気が逆に、来場者に悲壮感を感じさせていたことは言うまでもない(笑)。でもまあ、お手並み拝見といかせてもらいますかねー。
まずはざっと、4人の装備紹介を。
一瀬さんは「本当は東京で狩って、そのときの素材で作りたかったんやけど……」と言いながらギギネブラの防具を公開した。どうやら一瀬さん、フェスタを通してストーリー仕立てで武器や防具を作る計画だったようで、さっそくそのプランが東京大会でブチ壊しになった模様(笑)。
おつぎ、研人さんは、アグナなんとか(まだ俺、会ったことがないので自主規制)と火竜のボウガンをカスタマイズして、ラギアクルスに有効な火炎弾を速射できるボウガンを装備。防具は一瀬さんと同じくギギネブラで、まるで良三さんに嫌味を言うように「東京で狩れませんでしたけど」とチクリと言ったのには笑ってしまった。
ランサー、藤岡さんは無印(初代『モンハン』のこと)のころからある伝統的なランス、バベルを装備。そして防具はディアブロス系でコーディネートしていた。武器も防具も昔から藤岡さんが「これ、好きなんスよねー」と言ってはばからないものばかり。完全に、趣味の世界ですよコレ!!(笑)
ここまで紹介して小嶋さんが「ハイ、今回はこの3人でお届けします」と発言。すぐに良三さんが「オイオイ! まだいるまだいる!」と言って割って入ってきた。このへんの流れ、さすが笑いの殿堂・大阪って感じがしてステキです。そんな良三さんが持ってきた……っていうか、取り憑かれたような状態になって背負っていたのは、なんと巨大なサメ!! なんじゃこりゃあああ!! メルヴィルの長編小説に出てきそうな異様なハンターが混じった軍団は、一路孤島を目指した。
クエストが始まるとチームリーダーの研人さんが「まずはプランAを実行します!!」と言って先頭を切ってラギアクルスのもとに向かって行った。プランAなんて……なんだかすごそう!! ワクワクしながらステージの下で解説を待っていると、研人さんはとうとうとしゃべりだした。
「ボクがボウガンで睡眠弾を打ち込みます! そしてラギアが寝たらそのまわりに、皆さんで爆弾を設置してください! そしたら起爆しますんで! これがプランAですっ!」
……。
な、なんかどっかで見たことがあるような……。そう思っていると、良三さんが「わりとふつうの作戦……っていうか、それ……」と何かを言いかけた。すると研人さんは「みなまで言うな!」とばかりに声を荒げ、つぎのように付け足した。
「……東京大会の決勝ステージで選手の皆さんがやってた立ち回りをパ……参考にしました! オマージュってやつです!!」
やっぱり決勝ステージで行われるラギアクルス討伐のパクリみたいです(キッパリ)。
それでもこのプランA、意外なほどキレイに決まった。なんでこんなにスムーズに……と思って良三さんの画面を見たら、このサメ……じゃなくて良三さん、海でただただ泳いでいるだけだし(苦笑)。この武器を背負って水面付近で泳いでいるとサメの頭部分だけが水から飛び出し、見た目は完全にジョーズに……。こうやって良三さんが子どものように遊んでいたおかげで、プランAが成功したのは疑いようのない事実であろう。
▲なんだこのサメは(笑)。ちなみに途中、このランスで水中突進を披露した良三さんだったが、サメがひっくり返った状態で水中を突き進んでおりました(苦笑)。
プランAの成功に気をよくした研人さんは続いて「プランB」を発動させた。
「ボクが減気弾(モンスターのスタミナを減らす弾丸)を撃ってラギアのスタミナを減らします! そしたら陸に上がると思うのでそこで攻撃を……ってウワ!! サメがきた!!」
と、意味なく水中を回遊している良三ザメにビビりながらも、プランBを実行しようとする研人さん。……でも先に書いちゃうけどこの作戦、あんま効果なかったみたいっすよ(苦笑)。陸に上がらなかったし^^;;
プランBはあまりにも地味でステージ向きではない……と判断したのか研人さんはシビレを切らして、「もうプランCを実行します!」とヤケクソ気味に発言。プランCは、ラギアクルスが逃げる経路にシビレ罠を設置し、そこで足止めをして総攻撃をかける、というものだそうだ。さっそく、迷いなくエリアの切れ目あたりにシビレ罠を設置する様子はさすが、モンスターの行動を知り尽くしているメインプランナーと言ったところか。しかもすぐに良三さんが、「シビレにかかった!!」と報告してきたではないか。おお、早ええ。さすが開発陣!! と思っていたらスクリーンのモニターが良三さんの画面に切り替わり、そこに映っていたのはシビレ罠の上で丸まるポーズをする良三ザメ……。
「いっそそのサメから討伐しちゃって」と小嶋さん。「ホントにシビレちゃえばいいのに」とMCのウサミス。でも、この良三ザメに引き寄せられるようにラギアクルスがシビレ罠に接近していくからおもしろい。おお! 今度こそ大物がかかるぞ!! と思って見ていたら、ラギアクルスはシビレ罠の上を余裕で通過して隣のエリアに行っちゃいました。
「あははは!! ラギア行っちゃった!!」
と良三ザメ。笑い事じゃないわい(苦笑)。
ところが驚いたことに、隣のエリアから再びエリアチェンジを敢行したラギアクルスが、まんまと先ほどのシビレ罠にかかるというミラクルが発動したではないか! これには誰よりもクエストに出ていた4人が驚いておりました。
でもけっきょく、研人さんのプランはこの3つしかなく、あとは力まかせの立ち回りに。それでも、ラギアクルスの弱点である背中を集中的に攻撃していた藤岡さん、一瀬さんの活躍もあって規定時間内に討伐を達成! 失敗した東京大会の雪辱を果たした(ちなみに良三さんが背負っていたサメは2009年8月27日〜9月2日まで開催されているイベントクエスト“古代鮫を狩りつくせ!”で手に入る素材“古の鮫チケット”で作れるランス“シャークキング”だそうです)。
大爆笑のチャレンジクエストのあとは、お勉強のお時間です。『モンハン』世界の守り人、藤岡要ディレクターが知られざるモンスターの生態を解説してくれる“教えて藤岡先生!”のコーナーの始まりだ。今回のテーマはフィールド“砂原”に棲息するモンスターということで“クルペッコ”と“ボルボロス”の生態が紹介。
●クルペッコの生態
藤岡先生 孤島でもよく見かけるモンスターであるクルペッコですが、最大の特徴は“声マネ”です。これは、胸の器官と頭についているラッパのような器官を使って音を出して行っています。まず袋状になっている胸の器官に大量の空気を吸い込み、この空気を使ってラッパを振動させることで音を出しているのです。また、もうひとつの特技である“踊り”ですが、これはクルペッコの求愛行動にも使われているんです。ハンターと対峙しているときは基本的に怒っているので“威嚇”の動作になりますが、オスがメスに対して行う求愛のダンスもあるんです。そして、忘れちゃいけないのが火による攻撃。これは、翼の先についた“火打ち石”をぶつけることで火花を出し、その火花に口から吐き出す可燃性の液体をかけることで引火させているんです。クルペッコは口から火を出すわけじゃなく、こういう仕組みで火による攻撃を行っているんです。
▲このほか、チャチャについても解説がなされた。それによるとチャチャは、奇面族の成人になるための儀式で自分だけのお面を捜す必要があり、旅に出たという。これが成功しないと族長に認められないというのだ。でも途中で迷ってしまい、モガの森に迷い込んだんだそうだ。
●ボルボロスの生態
藤岡先生 翼を持たず、発達した脚力で敵対する相手を追い込む“獣竜種”に属するモンスターです。特徴として最初にあげられるのが、身体に付着した泥。ボルボロスは頻繁に泥浴びをするのですが、これは砂原の暑さと、それによる皮膚の乾燥を防ぐための行動です。また吸血性の虫や寄生虫から身体を守るために泥を付着させる……という説もあります。なお泥に潜っているときは頭の先についている鼻腔を水面から出して呼吸しているので、窒息することはありません。それとときたま、ボルボロスが岩などに頭をこすりつけていることがあるのですが、これは岩でこすって頭を少々削り、身体の重心を整えるためだ、と言われています。像が牙をこすりつけて削るのと同様の行為ですね。ちなみにボルボロスの主食は虫です。砂原にはオルタロスが作るアリ塚のような塚があるんですが、これを壊してその中にいる虫をガブガブと食べています。虫は貴重な蛋白源なんですね。
たいへん勉強になったあとは、特別ゲストを招いてのトークイベント“オレたちモンハン部スペシャルステージ”だ。大阪大会のゲストは……なんと! 『3(トライ)』のテレビCMでもおなじみの、芸能界随一のハンター、次長課長の井上聡さん!! そして東京大会に引き続いてコンマニセンチの堀内貴司さん、井上さんの狩り仲間でもあるピン芸人のネゴシックスさんも登壇した。井上さんは出てくるなり、「じつは今日も朝まで『3(トライ)』をやってて、その足で新幹線に飛び乗って大阪にきました」と発言。すでに『3(トライ)』のプレイ時間は200時間を超え、ハンターランクは68になっているという(本人いわく「今回はめちゃめちゃゆっくりやっています」とのこと……)。
ステージではケータイサイト“モンハン部”で見ることができる“オレたちモンハン部”のコンテンツの中から、“部室トーク”と“トライ! モンハン3(トライ)”が行われた。部室トークでは『3(トライ)』をテーマに“お気に入りのモンスター”について語られ、井上さんは迷った挙句「ベリオロスですね」と回答。「動きがめちゃくちゃ速いモンスターですけど、これにランスで対抗する練習をしているんです。カウンター突きを吹雪に向かって打ち込むタイミングを覚えようと思って」と、ここでも人並み以上に『3(トライ)』にハマっているエピソードが披露されたのであった。
そしてお待ちかね、“トライ! 『モンハン3(トライ)』”のコーナーだ。対象となるクエストは闘技場を舞台にしたボルボロス討伐で、これは『3(トライ)』の完成披露会のときに井上さんとネゴさんが挑戦し、ものの見事に失敗したいわくつきのクエストである。しかも「ゲーム性を高めましょう」(良三さん)ってことで、なにやら怪しい箱がステージに運び込まれてくる。説明によると箱の中から紙を引き、そこに書かれている武器でボルボロスに挑まなければいけないらしい。さらに! クエストに参加するのは井上さんで、そのパートナーについては再び箱の中から紙を引いて、それに従わなければいけないとのこと。その結果……。
井上さんの武器:スラッシュアックス
パートナーとその武器:ネゴシックス・スラッシュアックス
ってなことに……(笑)。
「こいつ、超スカっすよ!!!」と半ば本気で憤る井上さん。堀内さんもネゴさんを指して、「いつもこのへんの人間で『3(トライ)』をいっしょに遊んでいるんですけど、ネゴちゃんはつねに、相手にされないんです(苦笑)」とポロリ。ネゴさんも最初こそ「スカってなんだや!!」と怒っていたが、「最近は一般の人に遊んでもらっています」と泣ける発言。でも決まっちまったものはしかたがないので、このふたりでボルボロス討伐に出向くことになってしまった。
クエストが始まってすぐに、井上さんは「あ! 逆や!!」と短い叫び声をあげた。そして、大タル爆弾の起爆に失敗……。ここ、会場で見ていた人も何が起こったのかわからないと思うので解説しておくと、井上さんはふだん、カメラ操作を“リバース”にして遊んでいるのです。これ、じつは俺もそうなのでよくわかるのだが、カメラの設定をデフォルトのものから変えておかないと刹那刹那で見たくない方向にカメラを振ってしまったり、見上げる視点にしようと思ったらいきなり真上からハンターを捕らえるような視点になったりするので注意が必要なのだ。それでもさすがは芸能界随一のハンター。武器が幸い、『3(トライ)』ではメインで使っていたスラッシュアックスになったことで、巧みに変形を使いながらコンボをブチ当ててゆく。そして、属性開放突き! よどみのない流れるようなステップでボルボロスを追い詰めていった。
そんなとき、パートナーのネゴさんが「爆弾やっていいですか!?」と進言してきた。これに「いいよ!!」と元気に答える井上さん。しかしあろうことかネゴさんは、井上さんがスラッシュアックスを振るっている鼻先に大タル爆弾をズズンと設置(笑)。もちろん、この爆弾に井上さんのスラッシュアックスが直撃し、哀れふたりは火ダルマに……。
「もうあっちいけ!!!」と呆れ怒りに燃える井上さん。ネゴさんのやることはかなり、良三さんに近いものがありました。
それでも、珍しくネゴさんがオチることもなく順調にクエストは進行する。この状態を見て井上さんは「助け合いがぜんぜんないクエストですけど(苦笑)、ネゴはオチてないから、180点の立ち回り!」とパートナーを絶賛する。そんなネゴさんの活躍(?)もあってか、見事ボルボロスの討伐を達成!! 井上さんは「初めてネゴと、何かを成し遂げることができました……」と感激の面持ちで、会場を笑わせた。
このあと、会場で配られたモンハン模試の答え合わせを行い、オレたちモンハン部のステージは終了に。去り際、井上さんは、「『3(トライ)』はものすごく楽しいゲームですけど、勉強とか仕事とか、ふつうの生活もしっかりやってください……って、自分に言い聞かせるために言ったようなもんですね(笑)」と言って笑った。
そしてステージではいよいよ、“最激戦区”と言われる大阪の、狩王決定戦大阪地区予選の結果が発表になった。その詳細は……のちほどここでアップします!!
最近、“チャ”に取り憑かれております。
ここ何回かのブログで取り上げている“チャナガブル”も“チャ系”のモンスターですが(頭に付いているだけだけど)、こやつがリアル世界の俺にちょっかいを出してくるということはまずありません。しかし恐ろしいことに『3(トライ)』の世界には、現実世界の俺に甚大な被害を及ぼしているモンスターが存在するのです。そのものの名は……そう! あの“チャチャ”なのです!
では具体的に俺の身辺でどんな超常現象が起こっているのかというと、信じがたいことにある37歳の男性会社員がしゃべる言葉の端々に「チャ」が頻繁に付着してしまうことが多くなっチャったのよ!! 実際に先ほど、江野本ぎずもと話をしていたときも思わず、
「夕べも明け方まで狩王決定戦の練習していたから寝不足で、仕事中にねむチャくなりそ……」
と言ってしまったのである! これを聞き逃さなかった江野本は腹を抱えながら、「どんだけかわいさ演出しようとしてるんスか!!(爆笑)」とはしたなく大笑い。俺、大いに慌てて何とか取り繕うとしたものの、アセってしまってうまく口がまわらない。けっきょく、「追撃〜! 第二陣、いけぇ〜っ!!」ってな感じで、「いやいや!! ねむチャくなっチャらやべえなって言おうとしたんだよ!」と打ち消そうとしたくせにあろうことか“チャ”の絨毯爆撃を敢行……。
もう完全に、チャチャに取り憑かれている。いっそ頭に、袋でも被ったろか。もう開き直って、チャチャとして生きていくぞホントにもう……。さあさあ、コラムの本編を書くっチャ! がんばるっチャ!! ……って俺はギルドの看板娘かっ!!
さて冗談はこれくらいにして、ほいほいっ!! 今日のエッセイいきますよっ!!(今度は看板娘に取り憑かれたらしい)
チャナガブルが水中から伸ばした提灯に見惚れ、「わぁ〜♪ なんだこれ〜?」と近寄ったところで思いっきり閃光をぶちかまされた俺と目黒。完全なる不意打ちである。気分はすっかり、チョウチンアンコウに捕食される小動物だ。
それでも一応、無印(初代『モンハン』)から『モンハン』シリーズに触れているベテランハンター3人。「わあ! なんだなんだ!」とか「こっちくんな!!」とかなんとか大騒ぎしながらも、陸に打ち上げられた(?)チャナガブルに着実にダメージを与えてゆく。結果、クエストが始まって10分ほどが経過したころにバスンと一閃、尻尾の切断に成功。……まあ、斬ったのはKちゃんで、俺と目黒はいっこうにチャナガブルの背後に回りこむことができず(すごく背後が取りづらいんです……)、ドタバタと走り回っていただけなんだけどネ(苦笑)。しかし尻尾が斬れたとは言っても初めて対峙するチャナガブルが何をしてくるのかわからなかったので、鮮度が落ちるのを苦々しく思いながらも尻尾は放置。しばらく慎重に立ち回りを続けた。すると俺たちの猛攻に辟易としたのか、チャナガブルは脚を引きずるような仕草で隣のエリアへと消えていったではないか! 嬉々として、俺はKちゃんに言った。
「い、いまチャナガブル、脚を引きずってなかった!? もうちょっとで討伐できるんかな!?」
しかしKちゃんの返答はつれなかった。
「ちゃうよw あれはチャナが太りすぎなだけw ヒデ君(俺のこと)も気をつけてねwww」
俺、思わず絶句して、モニターの前でお地蔵さんのようにビキビキと固まってしまう。それでもなんとか眼球だけ動かすと、視界の端っこで目黒のキャラがパタパタと走って、チャナガブルが消えたエリアに突入していく姿が目に止まった。それを見て、俺は目黒に言った。
「あれ? 目黒、チャナの尻尾斬れてるよ? 剥がないと忘れるぞー」
すると目黒は「ぐふふ」と笑いながら信じられないことをのたまった。
「とっくに剥ぎ取りましたよw 大塚さんとKちゃんが必死にチャナの相手をしているときにww」
おまえ相変わらず尻尾から剥ぎ取るのは早ええな!! この男は、さんざんワガママ放題のプレイをするくせに尻尾には目ざとく、斬り落とされるとみるや信じがたいスピードでこれに取り付き、剥ぎ取りを行うのである。その神速はEffort Cristalやもうゲネポも真っ青といったレベルで、“尻尾剥ぎ取り王決定戦”なんてのが開催されたら世田谷区代表くらいには間違いなくなれると断言できるほどだ(すごいのかすごくないのかよくわからんが)。
でもまあ、目黒が抜け駆けして尻尾から剥ぎ取りをするのはいつものことなので、俺とKちゃんは休憩も兼ねてゆっくりと剥ぎ取りをし、武器を砥ぐなどしてこのあとのチャナガブル戦に備える。さあ、ボチボチいこうか。そう思った矢先に、画面に信じられないメッセージが表示された。
「目黒が力尽きました」
……は、はい?? な、なんだこのメッセージは……。ビックリして顔を上げて向かいの席を見ると、ちょうど目黒が「ぐはあっ!!」と言いながらのけ反ったところだった。
「なにを人知れずオチてんだ!!!」
と俺。おそらくKちゃんも石像のように硬直しているだろうと思い、口に出しながらチャットでも言葉を発した。するとKちゃんは「うはっ!!」と驚いたあと、「ちょっとww あんま笑かさないでwww」と大笑いした。
このあと、チャナガブルとの生存競争の舞台は水中へと移った。陸上ではどこか動きにぎこちなさがあったチャナガブルだが、水中になるとそれが一変。文字通り水を得た魚と化し、魚雷のような突進、水底に潜っての擬態とやりたい放題してくれちゃって我々3人を追い詰める。しかも、いきなりガバァっと口を開けたかと思ったら、風呂の栓を抜いたときのような猛烈な勢いで、ゴボゴボと水を吸い込みだしたではないか! この様子を見た俺と目黒はまたまた危機感なく、「おおおおお!! すげえなこいつ!!」と感心しながらその光景を見物。ところがまんまと目黒がこの吸い込みに巻き込まれ、「わあ! 吸い込まれた!」と言いながらチャナガブルの口の中に墜ちていった。そして、「うわああ!! く、食われた!!」と断末魔の悲鳴を上げたころにはプカプカと、目黒の亡骸は水中を漂ったのであった……。またまた制作者の術中にハマりまくった挙句の、教科書に載せていいくらい美しい昇天劇である。
それでも、どうにかこうにかチャナガブルを追い詰め、25分針くらいで討伐に成功。でも、けっきょく目黒の2オチで余裕がなくなり、ガムシャラに走り回っていたおかげで、チャナガブルとわかりあえないままクエストが終了してしまった気がする……。今度はひとりで、このモンスターに立ち向かってみよーっと。
いつぞやの続きです。
チャナガブル討伐クエストの舞台は“水没林”であった。高温多雨の熱帯雨林を思わせる鬱蒼とした木々に覆われたフィールドで、その名のとおりエリアの大部分が水没してしまっている。すでにこのフィールドでは何度かクエストをこなしているが、沼だか川のワンドだかわからないが、とにかく海とは明らかに違う淡水っぽい水中の風景に、俺はまた魅せられてしまっていた。ちょっと濁っていながらも、酸素が豊富で、水草や微生物も元気に繁栄している様子が手に取るようにわかる水中を駆け巡りながら、俺はいつも思うのだ。
「こいつは、アクアテラリウムだ……」と。
アクアテラリウムというのは、ひとつの水槽の中に水中部分と陸地部分を混在させてレイアウトし、その中で動植物を飼育する環境のこと。おもに淡水の水辺の風景を再現させたものが多いので、この水没林のたたずまいはまさしく、アクアテラリウムそのものという感じなのである。なんで俺がアクアテラリウムなんてものを知っているのかというと、かつて熱帯魚飼育に興味を持っていろいろと調べていたところ、原生林の水辺をそのまま切り取ってきたかのようなアクアテラリウムの存在を知って「いつかこいつを、我が部屋に!!」と思ったのだ。まあけっきょく、かなりの熟練と日々の手間がかかりそうなアクアテラリウムの環境をキープするのは難しいと判断して、いまではふつうに、無限に増えるグッピーを育てている(“ミリオンフィッシュ”の異名のとおり、グッピーはテキトーに飼っているだけでめったやたらと子供を産んで増えるのだ)。
……と、また脱線しちまった。とにかく俺は、アクアテラリウムの中に飛び込んだかのような水没林の風景がしみじみと大好きだ、と言いたかったのです。
さて。
初めてのチャナガブル討伐で何をどうしていいのかさっぱりわからない俺と目黒は、とりあえずいつものとおり、女子大生ハンターのKちゃんの後ろにくっついて走り出した。するとKちゃんは「こっちー」と言って、エリア2に我々をいざなう。そして、エリア4との連絡口付近にしゃがみこんでゴソゴソと何かを採取しながら、俺と目黒のふたりに向かってこう言った。
「チャナ、釣る?? だとしたらここで、釣りカエルを捕まえてね♪」
おお……。チャナガブルは『モンハン』シリーズの名物魚竜“ガノトトス”と同様に釣り上げることができるのか!! そういえばこのクエストのサブターゲット欄に“チャナガブルの一本釣り”なんて書いてあったっけ。そうと聞いたら、釣り上げないわけにはいかぬ! こう見えて俺も目黒もいち時期、ブラックバス釣りにハマっていたことがある釣り師なのだ!! さあさあ、まずは釣りカエルだ! エサがなければ話にならねえからな! どれどれ……。ゴソゴソゴソと、足元の泥を探る俺と目黒。しかし……。
「めめずばっかw」
と目黒が言った。“めめず”とはもちろん(?)、“ミミズ”のことである。じつは俺も先ほどから捕れるのは釣りミミズばっかりで、釣りカエルはいっこうに出てきていなかったい。おかげで俺のアイテムポーチはいまや、ぐねぐねうねうねと不気味に蠢く釣りミミズで飽和状態となっている。かつて作家の開高健が「最近は魚を釣るまえにエサを釣ることから始めないといけない」と、エサとなるミミズの減少をエッセイの中で嘆いていたが、それをそのまま実践してしまっている感じだ(ミミズは山ほど捕れたけどな)。
それでも、釣りミミズを持ちきれなくなってしまったころにようやく、1匹の釣りカエルをとっ捕まえることに成功した。よーし、釣るぞ釣るぞー。俺はさっそくKちゃんに「カエル、捕まえたよ!!」と元気に報告。これに応えてKちゃんは「じゃ、こっちに来てー」と言って、お隣のエリア4へと入っていった。そして「ここで釣れるよ♪」と言って、川岸に突き出た突端部分を指差す。俺は「了解!!」と言って頷きながら釣りカエルをボチョンと川に放り込み、にわか釣り師と成り果てた。すると、ユラリと水面が揺れたかと思ったら、あまりにも怪しすぎる黒い影がじんわりと足元に広がったではないか! な、なんかキタ!! デデデ、でっかい影が俺の下にぃ!! したにぃ〜! したぁにぃ〜〜!!
目黒とふたりで本気になって「なんかいるよ!!」、「やべえ!! おっかねえ!!」なんて言っていたら、我が愛しの釣りカエルがスッ……っと吸い込まれるように水面下に消えていった。すると……!!
バッシャーーーーンッ!!!
巨大なオタマジャクシというかチョウチンアンコウというか、とにかくいままでに見たことのない異形の存在が水の中から飛び出してきて、バウンバウンと地面でのたうちまわり始めたではないか! ななな、なんだコイツは……。いままでの『モンハン』シリーズにはまったく存在しなかった、太古の巨大魚を思わせるその風貌……。あまりにもナマナマしい存在感に圧倒されて、俺と目黒はしばしのあいだ言葉を失ってしまう。しかし3秒後には我に返り、俺たちは向かいの席で顔を合わせながら同時に叫んだ。
「か、かっこいーーーーー!!!」
と。
そのルックスだけで「このアクアテラリウムに根を下ろしてたくましく生きとるど!」ということを強烈に主張していることがわかり、さらにツルンとした背中に男の歴史すら感じて、無性にこのサカナ型のモンスターがかっこよく見えてしまったのだ。
「なんか、じつにいい味出してますねこのモンスター!」
と目黒。ホント、俺もそう思うわ……。これぞ、イチから構築し直された『3(トライ)』という新世界だからこそ生まれたモンスターなんだろうなと、バクバクと大きな口を開け閉めするチャナガブルの憎めない顔を眺めながら思ったりした。
そんなチャナガブルは、しばらくのあいだ陸上で暴れたあと、ジャブンともといた水中に戻っていった。どうやらチャナガブルとの生存競争は、陸地、水中の両方で展開されるようだ。さあ、大好きな水中での立ち回りだ。意気揚々と、水中に飛び込もうとする俺と目黒。すると突然、その目の前に、植物の茎と蕾を思わせる妙な物体がニョキニョキと芽を(?)出してきた。ん?? これはいったい、なんだ? 初めてみる植物だナ。っていうか、植物なのか?? 向かいの席から、目黒ののんびりした声が届く。
「なんか生えてきましたねぇ。いったいコレはなんスかねえ」
さっぱりわからず、俺も目黒と同様の危機感のない声で応える。
「なんだろうねぇ。でもよくわからないけど、おもしろいねぇ」
しかしこれは、リアルな会話でのやりとり。この間、ゲーム中の俺と目黒のキャラは謎の植物の前に佇んだまま、木偶のように呆然として動いていなかった。それを見たKちゃんはビックリ仰天とした様子で、「あ! あぶな……」と何かを言いかけた。しかしKちゃんが言い終わるのを待たずにいきなり、謎の植物の先端が「バチッ!!!」とじつに嫌な音とともに爆ぜやがったではないか! それを見て「え!!」と驚きの声を漏らす俺と目黒。しかし植物の先端のエクスプロージョンは止まらず、続けて「バチッッ!!」、「バチッッ!!」と強烈な電気音が……。そして……!
ピカーーーーーーーーーン!
げえええ!! 閃光だ!! ゲリョスと同じ、閃光じゃねえかあああ!! あまりにも突然な光に目をつぶされ、わけがわからずに「なんだなんだ!!」、「何が起こったんすか!!」と会社のデスクでドタバタと暴れまわる中年ハンターふたり。すると先ほどの植物に引っ張られるようにドバッシャアア!! と、水中からチャナガブルが飛び出してきたではないか! どうやらいまの発光は、チョウチンアンコウが頭の提灯を光らせて小魚を集めて捕食するのと同じく、チャナガブルが頭の提灯を光らせたもののようだ。その閃光を不用意に、俺たちふたりはジャストミートしてしまったわけである。
「おふたり、モロに食らいすぎ!!www」
とKちゃん。制作者の術中にハマり、あらゆる仕掛けにかかりまくっている俺と目黒の狩猟風景(なのか?)がおもしろくて仕方ないらしい。ぐぅぅぅ……。な、なんたる屈辱……。よよよよくも女子大生の前で恥をかかせてくれたなチャナガブル!! ここから逆鱗日和ファミリーの、怒涛の反撃が始まるど!!
長くなったので、以下次回〜。
昨日(2009年8月25日)のことになるが、2009年9月3日に発売される『逆鱗日和』シリーズの最新刊『別冊『逆鱗日和』 角満式モンハン学〜ハンター編〜』の見本誌が我が手元にやってきた!! わーいわーい! 新刊だ新刊だ! やっと完成したどーーーー!! というわけでうれしくて仕方がないので、本書の“前書き”のつもりでここに文章をしたためたいと思う。というのもこの『ハンター編』、304ページもある分厚い本のくせに限界までネタを詰め込みたいという思いから、著者の前書きすら削られているのですよ!!(苦笑)
もうそこらじゅうの書籍紹介で書かれてはいますが、軽く本書の説明をさせていただきますね。
『角満式モンハン学〜ハンター編〜』は、全国のハンターさんから寄せられた約2700もの“モンハンあるある体験”の中から184のエピソードをピックアップし、そのすべてにワタクシ、大塚角満が加筆・修正を加え、“逆鱗日和体”とも言うべき文章に起こし直している“体験談集”が核となっています。従来の『逆鱗日和』シリーズはあくまでも、僕とその周辺にある出来事をもとに綴ったエッセイで構成されてきました。が、いまや全国に350万人を超えるハンターがいるという現状を鑑みて、僕ひとりでは決して体験できない『モンハン』にまつわる笑える体験、感動秘話、怪しい都市伝説などなどを集めてみたいと思ったのです。でも、一般の人からの投稿を書籍の核にする……なんてことはやったことがなかったので正直、不安な部分もありました。でも完成した本書は“もうひとつの『逆鱗日和』”と胸を張って言える、著者の僕自身が「!!!!!」と驚くクオリティーとなったのです。何度も書きますが、僕ひとりでは絶対に到達できなかった笑いや驚き、感動体験の数々を、僕のフィルターを通した逆鱗日和体で書き起こしています。既存の『逆鱗日和』シリーズの読者の方も、新規に『モンハン』を始めた人たちにも存分に楽しめる体裁になったんじゃないかなぁ……と、自画自賛を承知で思っている次第です(笑)。ちょっと例を挙げてみましょうかね。
●『モンハン』を始めた当初、“生命の粉塵”を「せいめいのこなみじん」と読んでいた。
●「泊り込みで『2nd G』やろうぜ!」ってことになってメンバーを募集したら、クラスの半分以上の人が僕の家にゾロゾロとやってきた。
●ラオシャンロン討伐クエストにて。エリア2でラオシャンロンの背中に飛び乗った友だちは興奮し、思わず「おい! 早く対巨乳爆弾を置け!」と絶叫した。
どうです? ヤバくないですか? こんな話が200話近くも載っているんですねえ。
そしてこの『ハンター編』は、過去の『逆鱗日和』シリーズでは最大のボリュームになっていることもあって、読者投稿以外のコンテンツもドカドカと盛り込むことができました。
まずは、巻頭のカラーページ。ここは“ハンターたちの群像”と題した32ページに及ぶ対談コーナーとしました。いまや『モンハン』は一般ゲームファンのみならず、芸能界でも一大ブームのコンテンツになっています。そんな、多くの有名人ハンターの中から4組9名の方々にご登場いただき、僕とディープな“モンハン談義”をしてもらったのです。ざっとゲストの方々を紹介しますと、“アメザリ装備”でも知られる漫才コンビ、アメリカザリガニの平井善之さん・有未さんご夫婦、じつは大のゲームフリークだったモデル・タレントの椿姫彩菜さん、音楽業界からは元JUDY AND MARYのギタリストにして音楽プロデューサーのTAKUYAさん、そしておなじみ、次長課長の井上聡さん、麒麟の川島明さんを始めとする吉本興業のお笑い芸人の皆さん……と、超豪華な面々が僕の対談相手として登場してくれているのです。「『モンハン』がなかったら結婚してなかった!」、「いまや接待麻雀なんてやってる場合じゃない。“接待モンハン”の時代です!」なんていう、名言・珍言が随所に飛び出す爆笑の対談集となっておりますよ。
さらに、僕の書く文章を「大好き!」と言ってくださる方々に贈る書き下ろしエッセイも、大ボリュームで投下しています。ネット上の“ちょっと怪しい人々”との交流を描いたバカバカしいコラム“ある街の、ある酒場で”、特徴的な狩猟風景の中で狩りをする人々を追いかけた“ハンターズルポ”と題するルポルタージュも、気合を入れて書かせてもらいました。これは、おばちゃん4人でギャアギャア言いながら遊んでいる“おばちゃんハンターズ”を追跡した爆笑ルポや、いま話題のモンハンフェスタ`09でも大暴れしているタイムアタッカーたちの想いを文章にした“最速の称号に魅せられた狩人たち”というドキュメンタリーまで、硬軟織り交ぜたバラエティーに富んだ仕上がりとなりました。そのなかには、書いた本人が読み返して泣いてしまいそうになるものも……。多くの言葉と時間を尽くして書いたものばかりですので、深まる秋の夜にじっくりと読んでいただければなと思っています。
……こんな感じかな? って、出しゃばりすぎ?(苦笑) でも本当に、ベテランハンターにもルーキーハンターにも楽しめる書籍になったと自負しているので、いくらでも言葉を尽くして解説したくなっちゃうんだよねえ。あ、そうそう。巻末には『モンハン』シリーズ最新作、Wii用ソフト『モンスターハンター3(トライ)』を遊んだ人たちの“ファーストインプレッション”も大量に載せています。『3(トライ)』を遊ぼうかどうか悩んでいる人に捧げるステキなインプレッションになっていると思うので、“『3(トライ)』予備軍”の人たちもぜひ、読んでみてくださいね!
というわけで、宣伝でした(笑)。
▲せっかくなので、いくつか写真を追加。これは倉庫に積まれている『角満式モンハン学〜ハンター編〜』の山ですな。
▲そこから1冊、自分のデスクに持ってきました。しっかし汚ねぇ机……じゃなくて、この奇抜なカバーの本書、なんか存在感あるな……。
▲中身は、こんな感じです。わずか1、2行の一発ネタから、数ページにわたる感動話まで、じつにバラエティーに富んだエピソードが収録!
▲どんだけ『ハンター編』が厚いのか、4月に出た『モンスター編』と比べてみた。すると……こんなに違う! 『モンスター編』だって232ページもある単行本なのに……!
【MH3】第27回 チャナガブル・メモリーズ
チャナガブルを見るたびに、思うことがある。
なので今日は予定を少々変更して、昨日のエッセイの続きをすっ飛ばしてゲームとあまり関係のないことを書きたいと思います。「なんだ。プレイ日記じゃねえのか」と思われた方は、ざっと読み飛ばしたほうがいいかもしれません……。
俺の家の近所に、Uさん(もちろん仮名)というおばちゃんが住んでいる。このおばちゃん、ナゼか俺を不思議なほど目の敵にしていて、会うたびにチクチクと嫌味の速射を浴びせてくる。この攻撃、精神的なダメージが驚くほど甚大で、徹甲榴弾の速射を頭に食らい、たまらず気絶してしまうほどの衝撃を持っている。
今朝も、そうだった。
深夜まで仕事をして家に帰り、狩王決定戦用の練習を早朝4時まで行って、布団に入って寝付いたのが朝の5時過ぎ。それでもモゾモゾと9時くらいには起きて出社の準備をし、10時12分くらいには家の玄関を出たのである。俺は寝付きが非常に悪いので、睡眠時間は4時間弱といったところか。まあいつもこんな感じなので、それはどうでもいいんだけどね。問題はここからなのだ。
家を出て玄関に鍵をかけていると、幅4メートルほどの道路を挟んで建っているUさんの家のドアがガチャリと開いた音がした。その音を聞いて条件反射的に(また来た……)と思う俺。もう振り向くのも面倒だったので、何も入っていないことがわかっている郵便受けをわざとらしくチェックしたりなんかして、「Uさん家のドアが開いたことになど気づかなかった!!」という風を装った。涙ぐましい努力だった。しかし、そんな努力はロアルドロスの首にウィンザーノットでネクタイを結ぼうとするのと同じくらい無駄無駄無駄と言わんばかりの勢いで、Uさんは俺に声をかけてきた。
「あら〜、大塚さん。おはようございます」
その声に、色気や甘美な響などは1ミリグラムも混入していない。あるのは85パーセントほどの嫌味成分と15パーセントほどの蔑みの調味料だけである。Uさんの口から発せられた調べを聞いて、俺は彼女がつぎに何を言うのかを瞬時に予想した。そして思ったとおりUさんは俺の背中に向かって、向こう10軒くらいには聞こえるくらいの元気な声でこう言ったのだ。
「どこかにお出かけ〜? しかし今日ものんびりと、朝が遅くていいわねぇ〜〜〜( ´,_ゝ`)プププ」
ハイ、一言一句たがわず想像どおりでした。
なぜUさんがこう発言するのがわかったかと言うと、彼女はほぼ毎日、俺が家から出るのと同時に玄関から飛び出してきて、毎回毎回同じことを言うからだ。しかしこちとら、遊びに行くためにこんな時間に家を出るのではないし、朝が遅いかわりに夜遅くまで働いているのである。さすがに温厚な俺も「むぐぐぐぐ……!」と込み上げてくるものがあったが、今後の隣保班の付き合いを考えると「あああ、遊びに行くわけじゃないですからねっ!! ゆゆゆ夕べだって4時間足らずしか寝てませんからっ!!」とブチ切れて絶叫するわけにもいかぬ。なので俺はいつも、いかにも日本人的なあいまいな笑みを顔に浮かべて、「うごがぁ……」とか「あぐうう……」とかなんとか、聞くほうの感情でどうとでも取れるうめき声を上げるに止まっているのであった。
あ、なんでチャナガブルでこの話を思い出したのかと言うと、じつはこのUさん、どことなくチャナガブルを想起させる顔の作りをしているのです。これ、悪口とかじゃなく、真ん丸な目と大きな口が特徴の美人って世の中にたくさんいるではないですかあ? もうUさんは60がらみのおばちゃんだが、きっと若いころは目鼻立ちが整った、顔の部品がひとつひとつ大きい美人だったと思うのです。そんなことをフト、チクチクと嫌味を言われながら思ったのでした。
ついでに、もうひとつ思い出した。
俺がまだ小学生だったころ、近所の子供連中に“ベラおばさん”と呼ばれていたおばさんがいた。べつに、山崎ベラだとかナンシー・ベラマッチャとかいう名前だったからそう呼ばれていたわけではないよ(……もしかしたらそういう名前だったのかもしれんが、いまとなっては確認のしようがない)。なんでその人がベラおばさんなんて呼ばれていたのかと言うと、単純にアニメ『妖怪人間ベム』に出てきた女性妖怪“ベラ”に顔がよく似ていたからだ。このベラもチャナガブルと同様に大きな口とキリっとした目が特徴で、いかにも白人系の美人をそのまま形にしました的な容貌をしていた。ベラおばさんは子供の目から見ても日本人離れしたクッキリとした顔をしていて、逆にそれが怖く、なかなか近寄りがたい存在だったのである。
そして、前出のUさんと同様にこのベラおばさんも、じつにじつに口うるさかった。子供の姿を見かけようものならどこの坊ちゃん嬢ちゃんだろうがいっさい構わず追いかけてきて、「遊んでないで家に帰って勉強しなさい!」と一喝していたのである。なので余計に子供たちから恐れられ、その姿を見かけようものなら「ベラおばさんキター!!」と言っては脱兎の如く逃げ出していたのだ。
これらのことを考えると、Uさん、ベラおばさんによく似たチャナガブルも、非常に口うるさいおばちゃんに見えてくるからおもしろい。ついつい、ガァガァガァ! とデカい口を開けて迫り来るチャナガブルの口から、「ちょっと!! のん気でいいわねアンタ!!」とか、「狩りしてないで勉強しなさい!!」なんて言葉がポンポンと飛び出している姿を想像して、笑ってしまう今日この頃です。
※『角満式モンハン学〜ハンター編〜』の解説を書きました! ぜひ一読を!
とある昼下がり。
会社のデスクで何をするでもなくボケ〜ッとしていたら(仕事しろ、って話だが)、同じく昼飯上がりで眠そうな顔をした中目黒目黒が向かいの席から「なんかやりません?」と話しかけてきた。この“なんか”とは当然“『3(トライ)』のクエスト”のことで、我々はこうやって隙を見つけてはコソコソと、孤島や砂原に出かけて細々としたハンティングライフを送っているのである。帰宅してからは江野本ぎずもとモンハンフェスタ`09の狩王決定戦(タイムアタック大会ね)参加へ向けた秘密特訓を行っているので、ゲーム本編を遊べるのはいまのところ“就業時間内”に限られているのだ。……しかし、デカい声でこういうことを言ってしまうと、机の上の内線電話が鳴るたびに「しゃしゃしゃ、社長室から呼び出しだ!!」とビビりまくることが予想される。だったら書かなきゃいいのだが、昨日も明記したとおり根が正直なもので脳内に漂ったことをついつい文字化してしまうのである。……ってそこ! 佐治キクオとかブンブン丸! これを読んでおもしろがって、用もないのに俺に内線電話をかけてくるんじゃねえ!! ……以上、業務連絡でした。
まあとにかく、目黒とロックラックで落ち合ってクエストに行くことになった。ふたりともハンターランクが9になったばかりで、★2のクエストが開放されたところである。クエストカウンターのおねえさん話しかけると、提示されたクエストリストには見慣れない文字がズラズラと並んでいる。うーん、よりどりみどり! いやしかし、どれに行こうかなぁ……。これだけいろいろあると、さすがに迷うぜ。すると目黒が、並んでいる新鮮なクエストの中でも明らかに“群を抜いて怪しい!”と思えるものを指差して、のんびりした声でこう言った。
「大塚さん、この“ちゃながぶる”ってのはナニモノですかねぇ」
じつは俺も、綺羅星の如く並ぶ★2のクエストの中で、目黒の言う“灯魚竜・チャナガブル!”というクエスト名にもっとも惹かれていた。こいつは100パーセント以上の確率で、まだ見ぬ新モンスターが現れることが約束されているクエストだ。双眸に力を漲らせて、俺は言った。
「“ちゃながぶる”とやらがナニモノだかは知らないが、ぜひこいつを討伐に行こうではないか!!」
しかし、シレっと「知らない」と書いてはいるが、大塚角満として生きている以上、ゲームの序盤に出てくるチャナガブルについて、目黒のように本気で1ミリも知らずに生活できるわけもなかった。残念(?)なことに俺はこのモンスターについて、いくつか知ってしまったことがある。クエストに向けた準備をしている目黒に向かって、低い声で俺は言った。
「じつは俺、このチャナガブルってモンスターについて、いくつかの裏情報を持っているんだよ……。それによるとコイツ、見た目はチョウチンアンコウみたいな感じで、どうやら水陸両用らしい」
これを、珍しく「ふんふん!」とマジメに聞いていた目黒は、ナゼだか知らないがふだんはまったく気にしていないことを、このときに限って俺に質問してきた。
「なるほど〜。……で、どのへんが弱点で、どんな属性が有効なんですか?」
俺、頭の上から「…………」と三点リーダーを4つほど飛び出させて、急にふてくされた態度になってつぎのように吐き捨てた。
「知らん」
まあ知っていたところで、俺は水属性のスパイラルランス、目黒は無属性の荒くれの大剣しか持っていないんだからどうにもできないんだけどな! すると目黒はここぞとばかりにニヤニヤ笑いを浮かべて、「まあどっちでもいいんですけど、そんなサカナっぽいモンスターに大塚さんの水属性のランスはひとつも意味がなさそうですねw」とチクリ。自分自身が薄々思っていたことを目黒ごときに指摘されて、俺は「むぐぐ……」と言葉を飲み込むしかなかった。
そんなところに、先日のボルボロス討伐でもお世話になった女子大生ハンター、Kちゃんがやってきた。「またまたおふたりおそろいで♪」と言うKちゃんに向かってさっそく、「Kちゃん、チャナガブル〜><」と37歳のおっさんとは思えない甘えた声を投げかける。するとKちゃんは「チャナかぁ〜」と言ったあとに妖しく微笑み、「……でも、ふたりで出かけたほうがしっちゃかめっちゃかになって、ブログがおもしろくなりそうやけど?w」となかなかマニアックな(?)発言をするではないか。確かにKちゃんの言うことにも一理あるが、正直目黒とふたりだとクエスト成功への光の道がまったく見えず、逆に暗黒魔界の入り口がアガ〜ンとだらしなく口を開けているのがチラチラと視界の端に捉えられてしまう。間違いなく失敗するとわかっているクエストに出かけるのはなかなかパワーを使うのだ。だからなのか目黒も失礼なことに、「Kちゃん、大塚さんとふたりじゃ絶対に無理だから手伝ってw」などとほざいている。結果、俺たちはふたりがかりでKちゃんを口説き落とすことに成功し、けっきょくボルボロス討伐のときと同じメンバーでチャナガブルに挑むこととなったのでした。
……長くなりそうなので、以下次回〜……って、それほど引っ張る話じゃないんだけどな!!(苦笑)
お待たせしました。モンハンフェスタ`09東京大会の“ガチ”の部分を超私情含みでお伝えします。本当はこれのまえの記事をアップした直後から作業に入りたかったのですが、この間の寝不足と緊張感から開放された影響からか完全に力尽きてしまいました……。全国350万のタイムアタックフリークの皆様、ゴメンナサイ。
さて、とりあえずおさらいから。モンハンフェスタ`09東京大会、狩王決定戦地区予選(クルペッコ討伐)を勝ち抜いて決勝のステージに上がることになったのは以下の8チームだ!
1位 はらペッコ 1分21秒
2位 かりんちゅ 1分29秒
3位 SMART BRAIN 1分37秒
4位 アルテミス 1分42秒
5位 クック捜索隊 1分45秒
6位 arties 1分48秒
7位 NAMAZONE 1分55秒
8位 のーん 2分02秒(1チーム棄権のためくり上がり)
ちょっと……。皆さん速すぎるんですけど! ぶっちゃけて書くと、俺と江野本ぎずものコンビによる同種目の最速タイムは、8月22日の段階で1分45秒だった。これだけ書くと「おお。予選突破ラインにいるじゃん」と読めるが、このタイムはあくまでも一度だけ出せた最速のもので、平均クリアータイムになるともっとずっと遅いのである。そこから考えるに予選を突破した上位チームの面々は、練習時からコンスタントに2分を大幅に切るタイムを叩き出していたと思われる。これ、地区予選がいくつかこなされたあとの大会で出たタイムだったら、まだわかるのだ。最良と思える立ち回りに関する情報が広まり、それを基本に突き詰められることでタイムは自然と洗練されていくからね。でも上記のタイムは、『3(トライ)』が発売されてから3週間ほどしか経っていない中で開催されたモンハンフェスタ`09の最初の会場、東京大会で記録されたもの。しかも、やり直しが効かない一発勝負の舞台で……。今年で3回目となるモンハンフェスタだが、その蓄積もあってかタイムアタッカーたちの裾野と層の厚さは確実に成長しているようだ。
と書きつつも、予選を突破した8チームを見た俺の感想は「やっぱ強いヤツらは強いなあ!!」というものだった。ざっと紹介すると、3位のSMART BRAINは昨年の東京大会の優勝チームで、2位のかりんちゅは同大会で2位だったチームだ。「おじさんだけどがんばりますよ!(笑)」なんてSMART BRAINのふたりは笑いながら話してくれたが、最激戦区である東京で毎年コンスタントに予選を突破してのけるこの2チームのセンスには「脱帽!」と言わざるを得ない。本当にたいしたものだと思う。そして7位のNAMAZONEは、4月に行った『角満式モンハン学〜モンスター編〜』の発売記念タイムアタック大会で当日予選を勝ち抜いた精鋭だ。タイムアタッカー養成の“虎の穴”、NAMAZONE軍団の代表が、ついにその実力を公の場にさらしたという印象である。そして……!
「予選のクルペッコ、ぜんぜんダメでした……」
モンハンフェスタ`08準優勝チーム、Effort CristalのGod君(通称・ゴッディ)が苦笑いしながら俺と江野本のもとにやってきた。そしてその横では、同大会名古屋地区代表だった狩魂TのMizunoe君が「考えられないミスをしました。怪力の種と間違えて火消しの実を飲んじゃって(笑)」と言いながら頭をかいている。そんなふたりに向かって、俺は苦笑いを返しながら叫んだ。
「どこがダメじゃ! ミスりながらも予選突破してるくせに! もう、キミらがタッグ組むの反則だから(苦笑)」
そう……。予選6位の“arties”というチームはなんと、“タイムアタックの絶対神”と呼ばれるゴッディと、“天才”と称されるMizunoe君が組んだチームなのである! あえてたとえるならこのチームは、古い表現でまことに恐縮だが、往年の名レスラー、スタン・ハンセンとアンドレ・ザ・ジャイアントが手を組んだようなもの。ふつうに考えたら、そりゃあ間違いなく強い。ちなみに、彼らの元相棒であるEffort CristalのJack君(通称・ジャッ君)と狩魂Tのたけちよ(通称・たけちー)も、同じく東京地区予選に別のパートナーを率いて参加していた。しかし実力派の彼らをしても、惜しくも決勝の壁に阻まれている。東京地区予選はそれほど、レベルが高かったというわけだ。
どっからどう見ても強力なチームが勢ぞろいした東京地区大会の決勝ステージ。相手は『3(トライ)』を象徴するモンスター、“海竜”ことラギアクルスである。舞台は、『3(トライ)』から導入された“水中闘技場”。横軸だけでなく、縦軸の動きも加味しなければならない360度の世界で、この精鋭たちはどんな立ち回りを見せるのだろうか? 解説としてステージに上っていた『3(トライ)』のメインプランナー、木下研人さんは「4分30秒を切ることができたら“すごい!”という世界。でも、開発者の予測を超えた先にある“ミラクル”が見てみたいです」と語っていたが、結果は……! もったいつけたところで速報で結果をアップしてしまっているのでとっとと発表してしまおう。あ、新情報としてそれぞれのチームが使用した武器も明記します。
◆東京地区大会決勝戦 結果◆
1位 arties 3分02秒(太刀、ランス)
2位 NAMAZONE 3分17秒(太刀、太刀)
3位 クック捜索隊 3分36秒(ランス、ランス)
4位 はらペッコ 3分48秒(太刀、太刀)
5位 アルテミス 3分52秒(太刀、スラッシュアックス)
6位 かりんちゅ 4分05秒(太刀、スラッシュアックス)
7位 SMART BRAIN 4分40秒(ランス、ランス)
8位 のーん 7分05秒(太刀、太刀)
▲注目の決勝結果の発表! 優勝タイムは驚異の3分02秒。これでも優勝したチームは「納得のできない立ち回りだった……」とのこと。恐ろしい! ※順位は写真ではなく記事中のものが正しいです。
これ、当たり前だけどクルペッコ討伐のタイムじゃなくて、水中闘技場でラギアクスルを屠り去ったときの記録ですから(笑)。いったいどうすりゃ、縦横無尽に泳ぎまくるラギアクルスに、3分を切る勢いの攻撃を加えることができるんだ!! 正直、彼らの動きは高度すぎてまともに解説する自信がまるでありません(苦笑)。なので詳細は、近々アップされるであろう動画をご覧になってくださいネ……。
でもこの決勝ステージ、地区大会のしょっぱなということもあってか、チームごとに選ぶ武器、立ち回りが個性的でじつにおもしろかった。2位になったNAMAZONEのように最初に水中闘技場の底に沈んでいる閃光玉を取りに向かうチームもあれば、優勝したartiesのようにベースキャンプでお互いのアイテムをあれこれと交換した(彼らの操作が速すぎてよくわからなかったが……)チームも。拘束用のシビレ罠を使うタイミングもチームごとにバラバラだったので、本当に独自の詰めをした結果をここで披露しているんだな……ということがよくわかった。
ひとつ共通していたのは、彼らが集中して攻撃していたのがラギアクルスの背中だったこと。ここと頭を集中的に攻撃することでかなり長いダウンを奪うことができるので、彼らはピタリとラギアクルスの背中付近に張り付いて攻撃をくり返していた。それでもチームごとにタイムに開きが出るのは、運ももちろんあるのだが、細かな部分の段取りと瞬間的な動きに違いがあるからのよう。段取りの部分では1位のartiesのシビレ罠の使いかたが見事で、頭と尻尾側にふたりが分かれ、頭側のシビレ罠に最初にハメたかと思ったらその効果が切れる絶妙なタイミングで尻尾側のハンターがもうひとつのシビレ罠を設置し、まんまとこれにハメていた。そして動きの部分で「おお!」と唸らされたのが2位になったNAMAZONEの太刀での立ち回り。ガードができない太刀でラギアクルスの突進をギリギリまで引き付けてからかわし、攻撃の間合いに入ったところで集中的に斬りつけていたのだ。また、3位のクック捜索隊によるランス・ランスの立ち回りに驚いていたのが藤岡要ディレクター。「ランスは攻撃範囲が狭いうえに1発の攻撃力が低いので、攻撃を外さない立ち回りがタイムアタックに挑むときの大前提。それを、ガード前進などであえてブレスに突っ込んでいくなど熱い立ち回りでデメリットを克服していました。あれには驚いた」と脱帽した様子だった。
そして表彰式。激戦区東京を勝ち抜いて決勝大会に進む3チームに、辻本良三プロデューサーから表彰状と記念品が授与された。このときの3チームの談話が非常に印象的だったので紹介しよう。
●第3位 クック捜索隊
クック捜索隊・兄 僕らじつは兄弟で、モンハンフェスタに3年間挑戦し続けていたんです。そしてやっと今回、地区大会を突破できました。このまま狩王になっちゃおうかな、って思っています!
クック捜索隊・弟 すごく緊張して途中でミスしてしまったんです。ベストのタイムが出なかったことが悔しいですね(苦笑)。
●第2位 NAMAZONE
Namazo このタイムなら優勝できたかと思ったんですけど……。予想通りの強敵が奪っていっちゃいました(苦笑)。でもここまで来れたのはいっしょに練習してきた仲間たちのおかげです。感謝しています!
Shinya 予選のクルペッコのタイムがヒドく、ダメだと思ったんですけど、7位でステージに進出して準優勝できて、本当によかったです。ともにがんばってきた仲間たち、ありがとうございました!
※お名前、修正させていただきました。NAMAZONEのおふたり、申し訳ありません!
●優勝 arties
God ナマゾネさん(ウサミスがこう読み間違えていた)、優勝ありがとうございました(笑)。タイム的には2分40秒台が出たと思ったんですけど、3分2秒というのがちょっと納得できないです。(練習でのベストタイムは)2分26秒なので……。
Mizunoe こんな場で練習したことが出せてよかったです。……ナマゾネさん、ありがとうございました!
▲東京大会を制したartiesのふたり。下馬評で“最強”と言われたチームが、その実力を存分に発揮した。
最後に藤岡ディレクターが、モンハンフェスタ`09の最初の大会をつぎのように総括した。
藤岡 僕は『3(トライ)』を作っていたときからモンハンフェスタ`07、`08に出させてもらっていましたが、そのころからいつか『3(トライ)』でもこういうイベントができたらいいな、って思っていたんです。そして今回、初めての試みである水中をユーザーがどう料理してくるのかな、と楽しみにしていました。実際にステージで彼らの立ち回りを見て、戦略もテクニックも、本当に1秒でも速くクリアーするためにいろいろなことをやってくれているというのがわかって、それがすごくうれしかったです。ここに上がっていない人たちも、同じようにそこに向けて時間を割いてくれていたんでしょうね。広い会場にこんなにたくさんの人が来てくれましたし、僕自身、すごく感激しています。
そして−−。
大会が終了したあとの舞台裏で、優勝したartiesのふたり、ゴッディ&Mizunoeコンビにインタビューを行った。その模様をお伝えしたい。
大塚 おふたり、緊張とかしていたの?
ゴッディ めっちゃしてましたよ!
大塚 Mizunoe君は、緊張なんてしないんでしょ?w
Mizunoe いやいや、緊張しますって! ふつうに!w
大塚 ホントに? まあえのっちは「ゴッディ、超緊張してますよ!」って言ってたけど。
江野本 うん、角満カップ(前述の『角満式モンハン学〜モンスター編〜』発売記念で行ったタイムアタック大会のこと)のときとは顔つきが違った(ジロリ)。
大塚 角満カップとは、やっぱ違う?w
ゴッディ 違いますね!w
Mizunoe あはははは!
ゴッディ そもそも、人の数が違いすぎますもんw
大塚 まあそりゃそうだw では、ざっと予選から振り返ってほしいんだけど、クルペッコの討伐タイムって、ふたり的にはどうだったの?
Mizunoe 本当に納得いかなかったです……!
ゴッディ 予選落ちしたな……って思いましたからね。
大塚 でも、逆にそこで吹っ切れたんじゃないの? 一時はダメだと思っていながら先に進めて。
ゴッディ そう、それがすごく大きかったんです。
Mizunoe ですね。予選のことはバッサリと切り捨てて決勝に臨めましたもん。
ゴッディ クルペッコで悪い運は使い果たしたから、ラギアはいいはず! って思いました。
大塚 前向きだなあ! じゃあそのラギアクルスはどうだった?
Mizunoe ほぼ、理想の動きができたんじゃないかなと思います。ちょうどいいタイミングで背中ダウンを取ることができて、そこに閃光を合わせたりする立ち回りができましたから。練習どおりの動きだったかなと。
ゴッディ でも後半、攻撃するのが怖くなって8秒くらい僕が静止しちゃったんですよ(苦笑)。動画が公開されればわかります。
大塚 へぇ〜! あれで!? ちなみに武器は、どっちが何を?
Mizunoe 僕がランスで、God君が太刀ですね。
ゴッディ 太刀嫌いを、ここだけは曲げましたw
江野本 だよね! 絶対に逆だと思ってた!
大塚 でもさ、Mizunoe君、1回もダメージ食らってなくなかった?
Mizunoe いや、食らっていたんですけど、いいタイミングでGod君が生命の粉塵を飲んでくれていたんです。
大塚 なるほどー! いやあ、もっと詳しく聞きたいけど、細かい立ち回りについては全部の大会が終わってからかな。フェアになるように。
江野本 ちなみに、ほかのチームの立ち回りを見てどうだった?
Mizunoe いや、すごかったですよ。どのチームも極まってて。
ゴッディ 4分切れれば決勝大会に進出できるかな……って思っていたんですけど、蓋を開けてみたら3分半を切るくらいじゃないと無理でしたからね。驚きました。
大塚 武器の組み合わせは、どう読んでいたの?
Mizunoe 太刀・太刀の組み合わせが多いかな、って思っていたんですけど……。
ゴッディ ですよね。ランス・ランスも驚きましたけど、スラッシュアックスを絡めてくるチームが2チームあったのも意外でした。
大塚 でもこれで、キミらは大阪大会は出ないんだねw
ゴッディ そうなんです! もうゲネポ(モンハンフェスタ`08の優勝チーム)とは全国の決勝で当たりたいと思っていたので、ホッとしました!
Mizunoe うん。……イヤだなぁ、ゲネポ(苦笑)。
ゴッディ あそこは絶対に勝ち上がってくると思います。
大塚 でも激戦区東京を制したことで、自信になったんじゃないの?
ゴッディ そうですね。やっぱり東京で勝ったんですから決勝でもがんばらないと。
Mizunoe うん、「やれる!」って思ったよね。
ゴッディ はい。手応えが違います。
大塚 この、反則チームめーw デカいこと言いおってからに!w
Mizunoe あははは!
大塚 でもさ、今回ふたりは初めてチームを組んだわけじゃん? 実際のところ、どうなの?
ゴッディ やっぱりMizunoeさんはすごいですよ。立ち回りについても、僕じゃ思いつかないことを提案してくれるので発見がたくさんありますし。「任せられる!」って感じですね。
Mizunoe お互いに楽してるかもしれませんw
大塚 チームリーダーはどっちになるの?
ゴッディ 対等、というか、同じですね。
Mizunoe でも、やっぱりどちらかというとGod君ですよ。
江野本 まあ、タイプ的にそうなんやろうね。でも、来年もフェスタがあったらまたこのチームで出るの?
ゴッディ 今年だけなんですよ、このチームは。
Mizunoe そう。そういう契約でチームを結成しましたw
大塚 ああ、そうなんだ!!w でもこういう特徴のあるチームが出てくるとおもしろいなあ。全国大会、期待してます!
ゴッディ・Mizunoe はい、がんばります!!
モンハンフェスタ`09、つぎなる会場は大阪だ。事前情報を総合すると、どうやら東京以上の激戦区になることが予想される。ディフェンディングチャンピオンのもうゲネポも、ここに登場しそう。はたしてどのような激闘が待っているのか? 風雲急を告げる大阪大会は、2009年8月30日だ!
【MH3】第24回 モンハンフェスタ`09 東京大会・序章編
冒頭から私事で恐縮ですがネ。
夕べ、眠れませんでした!
でもね、そりゃそうですよ。ついに始まっちゃうんだから、モンスターハンターフェスタ`09が!! 狩人たちの祭典! アスリートたちの実力展覧会!! 1年以上の時を経て、モンハンブームにさらなるブーストがかかったいま開催される全国縦断イベント。その初日となる東京大会の前日に、この俺がそうそう寝られるわけもない。
しかもだね。
自業自得もいいところなのだが、大会の2週間ほどまえにしなくてもいいやっかいな約束をある人と交わしてしまい、精神的に追い詰められまくって悪夢にうなされて眠れなくなってしまったのだよ(苦笑)。
じつはモンハンフェスタ`09の概要が発表されるまえから、もしもタイムアタック大会があるなら我が相棒たる江野本ぎずもとともに「ぜひ参加したいね」と話していたのです。で、まんまと『3(トライ)』のタイムアタック最速チームを決める“狩王決定戦”が行われることになったので「出して出して!!」と運営チームにお願いしたわけ。このへん、去年のフェスタ以降、さまざまなモンハンアスリートたちと親交を深めた結果の当然の成り行きなわけですよ。でも問題はここからで、ある日ファミ通.com用のあるインタビューを行ったときに地区予選に参加する旨を某T氏に話したら、「だったら、大塚さんと江野本さんのコンビで予選20位以内に入るか入れないかで何かを賭けましょうよ!」なんて言われてしまったのよ!! でもこちとら、本気の本気でタイムアタックに臨んで、20位以内どころか8位以内に入ってステージでラギアクルスをシバいてやる気満々だったので「いいっすよ!! まったく問題ナシ!!」と怪気炎を上げて受諾したわけです。
そしてその日から、江野本とふたりで連日連夜明け方まで、地区予選のクルペッコ討伐と決勝の種目であるラギアクルス討伐の練習に没頭。しかし約束の内容が内容だったので、大会が近づくにつれてラギアクルスの背中に乗ったクルペッコに脳天をついばまれまくる悪夢を見るようになり、すっかり寝不足気味に(笑)。そのほかにもいろいろな心配事もあって、ほとんど寝ぬまま東京大会当日を迎えてしまった次第だ。ちなみに、某プロデューサーと交わした“約束”については追々(?)明らかにしたいと思う。書きたくないけど。
で、ようやく話は本題に入る。
ほとんど寝ぬまま身支度を整え、江野本と合流して、午前9時に幕張メッセの最寄駅である海浜幕張駅に着く予定の電車に乗る。ところが! 途中のターミナルステーションで事故があったらしく、電車が止まってしまっているとのこと。「こりゃやべえ!!」ってことになり大慌てでケータイの乗り換えサイトで電車を調べまくり、別路線で会場に向かうことになった。しかしどんなに急いでも会場に着くのは、午前9時半過ぎ……。俺たちふたりは、ただでさえタイムアタックのプレッシャーに押しつぶされそうだったのに加えて“遅刻の危機”にまで直面して、修復しようがないほど心がしっちゃかめっちゃかに。結果、俺たちのはやる気持ちも知らずにのんびり走る鈍行列車の中でバタバタと大暴れし、そのわりに緊張感なく「腹減ったナ」ってことになって乗換駅でパンとコーヒーを購入してもしゃもしゃとこれらを摂取。満腹になったところでようやく、午前9時30分を大きく過ぎたころに幕張メッセに到着した。
会場に着くとすでに、幕張メッセのホールから尻尾が生えたかのような長い長い人の列ができていた。しかも会場の外だけではなく、ホールのひとつを整列用に開放してあって、その中にも渦を巻くようにハンターの行列ができていたではないか!! それでもこの段階では、昨年のモンハンフェスタ`08東京大会のときよりも人数は少なく見え、「出だし、比較的ゆっくりだナ」と思ったのだが、『モンハン』人気がそれほど甘いものじゃないことを俺はあとで知ることになる。
▲気がつけば、ご覧の人出に……! 最終的な来場者数は9000人と、昨年の東京大会よりも1000人も多いという規模に!
東京大会の会場となる幕張メッセの5、6ホールに入ると、馴染み深い顔があれこれと作業している姿が目に飛び込んできた。過去2回の東京大会と比べても、圧倒的に会場が広い。しかし当たり前だが無意味に広いわけじゃなく、例年以上にたくさんの会場展示物とコンテンツがズラリとそこに並んでいた。まずは写真で、会場の様子をダイジェストでお届けしよう。
▲看板娘、そろい踏み〜! 左からパティちゃん、アイシャちゃん(『3(トライ)』の看板娘。名前、初めて知りました)、シャーリーさん。
▲会場ではなんと、さすらいのコックが作るおいしいご飯を食べることができた。一番人気はやはり、こんがり肉か?
▲物販コーナーは、今回も大人気だ。昨年のフェスタからさらにオリジナルグッズが増えたし、会場限定のグッズなどもあるので終日混雑しておりました。
▲“バリスタ”をモチーフにした射的コーナーも。こういうものがあると、一気にお祭り気分が高まりますなあ^^
▲『モンスターハンター ハンティングカード』のコーナー。公式大会のほか、ルールをやさしく教えてくれるティーチングなども行われている。こちらは、『2nd G』のリアル集会所の模様ですな。
▲会場では、モンハンおみくじを引いたり、絵馬を奉納することもできちゃう! 物欲退散を祈願するものが多かった気がします(笑)。
▲日ごろハンターがお世話になっているネコグルマも、実物大のものが展示されておりました。乗りたい……けど、乗りたくない!!
そんな会場で俺は、『3(トライ)』のディレクターである藤岡要さんと会った。軽く右手をあげていつものふんわりした口調で「おはよーございます〜」と言う『モンハン』世界の守り人に向かって、俺はさっそく質問した。
「いよいよですねー。緊張してませんか?」
海外から帰ってきたばかりで疲れが残る顔を柔和にほころばせ、藤岡さんはこんなことを言った。
「いやぁ〜、どうなんですかね。なんだかフワフワした気持ちで、自分でもよくわからんのです(笑)」
するとそこに、“緊張”という言葉がもっとも似合わない“ある人”が……。ニヤニヤ笑うその顔に向かって俺は言った。
「良三さん、相変わらず緊張してなさそうっすね……」
すると辻本プロデューサーはニヤリと笑い、「うん、ぜんぜん!」と即答。さらに返す刀で、「大塚さん、例の約束覚えているでしょうね(ニヤニヤ)。いやあ、さらに短髪になった大塚さんを見るのが楽しみだわ〜(笑)」とズバンと俺を斬り捨てた。このやりとりを聞いて、俺と良三さんがくだらない約束を交わした現場に居合わせていた藤岡さんと江野本は、腹を抱えてゲラゲラと笑い出す。ちょっと!! 笑い事じゃないんだよ!! タイムアタックで20位以内に入れなかったら、俺の滅び行く自然(髪の毛のことね)にさらなるエラいことが起こっちゃうんだから!! ……ま、詳細はそのうち書く(煮え切らない)。
午前10時に開場されると、無数のハンターがどっとホールに飛び込んできた。一目散に物販コーナーに向かう人(毎年、フェスタの物販コーナーは数時間待ちの行列ができる人気コーナーなのだ)、狩王決定戦の予選に向かう人、看板娘ズ(ステキな総称考え中)の撮影をする人、充実した展示物をさっそくチェックする人などなど、それぞれがそれぞれの目的に向かって笑顔を見せながら散ってゆく。ステージイベントが始まるまでのわずかな時間にだけ存在する、どこか浮世離れした不思議な空気。でもステージに“あの男たち”が登場したとたんにセピア色な雰囲気はとたんに吹き飛び、会場は原色に満たされた興奮の坩堝と化すのだ。
そして午前10時20分。ついにステージにハンターの誰もが憧れる『モンハン』世界の創り人たちが登場した。現れたのは、前出の辻本良三プロデューサー、藤岡要ディレクターと、『2nd G』の一瀬泰範ディレクター、『3(トライ)』の小嶋慎太郎アシスタントプロデューサー。この4人は昨年までのフェスタで“モンハン4人衆”として大活躍していたのでファンにはすっかりおなじみですな。しかも今回は4人衆に加えて、『3(トライ)』のメインプランナーである木下研人さん(以下、研人さん)も登壇。新たに“モンハンクインテット”(5人衆ってことですな)となって、モンハンフェスタ`09をステージの上から盛り上げていくというわけだ。
▲ステージに現れた『モンハン』開発部隊の中枢。木下研人メインプランナーは、フェスタのステージは初登場ですな!
ステージで最初に行われたのは、この5人による『3(トライ)』のチャレンジクエストだ。と言っても、『モンハン』シリーズでいっしょにクエストに出かけられるのは最大4人なので、ここでは小嶋さんがMCのウサミス(宇佐美友紀さん。モンハンイベントではおなじみの美人MCさん)とともに司会&解説に回ってクエストを盛り上げることになった。
さてここで注目なのが、4人でどのモンスターに挑むかである。小嶋さんから突如“チームリーダー”に指名され、「クエストも選ぶように」と言われた研人さんは悩んだ挙句、「……ギギネブラなんてどうでしょう?」とおずおずと提案。しかし言った尻から「いきなりこんなマニアックどころでいいんですかね!?」とフェスタのステージ初登場らしい初々しい発言で会場の爆笑を誘っておりました(笑)。
さて、研人さんが選んだギギネブラというモンスターですが、ここでひとつ問題が持ち上がりました。と言っても、俺の個人的な問題だけどね。それは何かと言うと、この角満ブログをお読みの方ならなんとなくピンときたかもしれませんが……そう! 俺はまだこのゲームをやり込めていなくて、ギギネブラとは1回しか渡り合ったことがないんだよおお!! なのでステージでのやり取りを見ながら人知れず、心臓をバインバインと跳ね上がらせていたんですボク。でもまあ、それはいいや。っていうか、わざわざ書かなければ読者にはわからないのにネ。根が正直でネ。
この“開発者チャレンジクエスト”では、ふだん彼らがプライベートで遊んでいる装備が公開されるのも見所のひとつだ。
まず一瀬さんは、全身チャナガブル装備で身を固めた上で、武器としてボルボロスの素材を中心に作るのスラッシュアックスを背負って登場。一瀬さんは相変わらずのひょうひょうとした物腰から「属性開放突きで麻痺を放てるのがいい」と言ってニヤリと笑った。
おつぎ、研人さんは、ロアルドロス装備で全身を覆い、武器は村の交易船“希少交易”から生産できる“海造砲【火刃】”だった模様。「Lv1徹甲榴弾の速射ができるので、これをギギネブラの頭に撃ち込んで気絶をとります!」とチームリーダーらしく気合のコメントをした。
続く藤岡さんは、「大好き」と公言して憚らないレイア装備のハンターを紹介。武器は“ミスターランス”と(俺に)言われるだけあって、チャナガブルの素材から作る麻痺属性のランス“チャクムルカ”を装備していた。
そして最後は良三さん。『2nd G』では弓一辺倒だったが、じつは『3(トライ)』ではハンマーオンリーの狩人となっている(理由は「ガード嫌いなんす」とのこと)。そんな良三さんは全身がクルペッコ装備で、武器はリオレウスの頭をかたどったハンマー、おそらく“レッドビート”だと思われる。この4人でフィールド“凍土”を舞台にしたギギネブラ討伐に出発した。
クエストが始まるとすぐに、“問題児”の良三さんがベースキャンプからエリア1に向かうまでの5歩くらいのわずかな距離につぎつぎと“生肉”をポトポトと置き始めた。そして「みなさーん、こっちですよー」とひと言。たまらず小嶋さんが「ヘンゼルとグレーテルかよ!!」と突っ込んでいたが、俺もステージの下でまったく同じことを叫んでいました(笑)。
▲ひとり、まったく戦力にならないので、ほかの3人はかなり本気です。これはもう、モンハンフェスタの風物詩的な風景だねえ。
でも良三さんの生肉作戦とは関係なく、ギギネブラはあっさりと藤岡さんに発見された。藤岡さんいわく「ポポがざわついていたので、近くにギギネブラがいるのがわかった」とのこと。『3(トライ)』ではハンター×モンスターという関わりだけではなく、モンスター×モンスターという関わりが非常に深くなっているので、草食種の微細な動きにも驚くほどの情報が含まれているという。このへんの詳細は、こちらのインタビューを読んでいただくのがいいかもしれない。まあそんなポポを良三さんは「こいつ、強いで!!」と言いながらギギネブラを無視して狩っていたけどね(苦笑)。
ギギネブラは、研人さんが「マニアックどころ」と言ったとおり非常に個性豊かな動きをするモンスターだ。いかにもブヨブヨ&ヌメヌメっぽい不気味な皮で身体を覆い、毒攻撃をしてきたり、いきなり狩場に卵を産んでヒルのような小型モンスター“ギィギ”を発生させたりする。このギィギ、カプっと吸いついてハンターの血を吸い、徐々に体力を減らすというじつにイヤらしい攻撃をしかけてくるのだが、ほかの3人が一生懸命立ち回っているところにケムリ玉をぼんぼん投げたり、小タル爆弾をガンナーの研人さんの足元に設置して吹っ飛ばしたりして遊んでいた良三さんにまんまと吸いついた。良三さんのキャラにぶら下がり、チューチューと血を吸う小さなギィギ。これを見た良三さんはたらまず肝をつぶして「研人!! 助けて!! なんかこいつ、デカなってきた!!」と絶叫(ギィギはハンターの血を吸うと大きくなるのだ)。でもこのときばかりは、俺はギィギを応援しちまったけどね(笑)。
こんな感じで良三さんが邪魔ばかりするもんだから、制限時間として設けられた15分はアッと言う間に過ぎ去ってしまう。そのあまりの傍若無人ぶりに解説の小嶋さんが「言いたかないけど、ひとりモンスター側の人間が混じってますね……」と苦笑する良三さんのワンマンショーのおかげで、クエストは見事に(?)失敗に……(笑)。この結果を受けても「おしかったですねー」と悪びれない良三さんに、ほかの3人は冷たい視線を送ったのでした。
開発者のゆるーいチャレンジクエストが終わったあとは、昨年のモンハンフェスタ`08で大好評だったコーナー“教えて藤岡先生!”が大復活! “帰ってきた! 教えて藤岡先生!”と題して『3(トライ)』に出てくるモンスターの生態講座が行われたのだ。今回のテーマとなったのは、ハンターが最初に行くことになるフィールド“孤島”に生息するモンスターだ。非常に興味深い話の連続だったので、ちょっと詳しくお伝えしよう。
◆ジャギィについて
藤岡先生 ジャギィは非常に縄張り意識の強いモンスターです。大型モンスターが群れの中に現れたりすると自分の縄張りに逃げ込み、そこで威嚇を始めます。そこに大型モンスターがやってくると「出て行け!」とばかりに攻撃をする。ハンターだけではなく、大型モンスターに対しても縄張りを侵すものは許さないということですね。とくにメスのジャギィノスは巣を守ろうとする習性があるのでこの傾向が強いです。ちなみにジャギィ一族のボスとなるのが“ドスジャギィ”ですが、これはどうやって生まれるのか? まずオスのジャギィはある時期になると群れを離れます。で、きびしい外の世界で生きていくわけですが、そこで生き残り、身体が大きく育ったものだけが群れに戻り、“ドス”という存在になれるのです。
▲トレードマークの白衣に、頭には『3(トライ)』の農場アイルーがかぶっている日笠を装備して現れた藤岡先生と小嶋助手。
◆ラギアクルスについて
藤岡先生 ラギアクルスの特徴として挙げられるのが“電気”による攻撃です。ではどうやって発電しているのかと言うと、ラギアは体表付近の筋肉を短時間に急激に収縮させることにより発電細胞を活発化させます。そこで発生した電気が、背中の突起に空いている穴に“蓄電”されるのです。これにより雷にも匹敵する電気が生まれます。でも発電すると疲れやすいので、そうなるとラギアは地上に上がって休んだりします。ちなみにラギアの食生活ですが、ふだんはエピオスなどの草食種を食べていますが、ときには群れている魚を獲ることもある。どうやって獲るのかというと、魚の群れを水面付近に追い込んでからグルグルと身体を回転させて渦を起こすんです。その渦に放電して、魚の群れを一網打尽にする。この様子を見た人々は、渦が光ったら「ラギアが近くにいる!」と思うわけです。ここから、“光る渦”という意味があるラギアクルスという名前が生まれました。
どうです? 勉強になったでしょう。このあとステージでは、来場者の中から選ばれた人がステージ上でクエストに挑戦する“チャレンジクエスト”、吉本興業のお笑い芸人11人からなる“オレたちモンハン部”の中からゲストを招いてのトークショウなどが開催。東京大会でゲストとして登場したのは、コンマニセンチの堀内貴司さん、パンクブーブーの佐藤哲夫さん、ピン芸人のアッハー小泉さんの3人。昨年の11月に行われた吉本芸人による『2nd G』の大会“井上CUP”の裏話や、ケータイサイト“モンハン部”で配信されているオレたちモンハン部のコンテンツの紹介などが行われた。お三方の巧みなトークで会場は爆笑の渦と化したのだが(誇張じゃなく)、俺的には3人が登場したときにMCのウサミスが「俺たちモンハン部の縁の下の力持ちの皆さんですね! あ、一般の方の写真撮影はご遠慮ください!」と言ったあと、哲夫さんが「この3人のブッキングはヤバいでしょ! 縁の下の力持ちすぎっすよ!!」と噛み付き、堀内さんが「撮影禁止って……誰も撮りたがってないよ!!」と自虐的に絶叫したのがツボすぎてプレス席でのた打ち回っておりました。
さて! ここまではモンハンフェスタの“愉”の部分です。ここからガチンコのタイムアタック大会・狩王決定戦の詳細リポートが始まるのですが……! 長くなりすぎたのでそちらの部分はのちほど、詳しいリポートとしてアップいたします。忘れずに読んでくださいね!!
▲会場の全景。幕張メッセのホールをふたつブチ抜いているだけあって、会場はじつに広々としていた。それでも、この人口密度!
ボルボロスは『3(トライ)』から新規に登場した“獣竜種”に属するモンスターだ。飛竜種のような翼は持たぬ代わりに、極限まで発達した“脚力”をもって強大な大型モンスターの派閥争い(?)の中で存在を元気に主張している。
でもこのボルボロスに挑むの、じつは俺は初めてではない。『3(トライ)』の発売まえに開催された先行体験会で相見えているし、製品版でも闘技場モードで何回か、このモンスターの前に立っていた。そういう意味では決して“知らぬ仲”ではない。「やあ、ドーモドーモ。よろしくお願いしまスー」とかなんとか言いながら、とりあえず名刺交換だけはしているS社のWさんと同じくらいの間柄……ってところか。……って、いま“S社のWさん”に該当するゲームメーカーの方々が「お、俺ってボルボロスなのか!!」とアゴを外されたかもしれませんが、S社のWさんは誰でもない架空の人物なのでどうかお気になさらずに……。
というわけで、砂原を舞台にしたボルボロス討伐の始まりだ! 俺、中目黒目黒、女子大生ハンターのKちゃんは、「とりあえず見つけたらペイントボールね!」と言い合いながらパタパタと走り出す。しかしなぜか俺と目黒のキャラはスピードが乗らず、女の子のKちゃんを先頭に立てて、その後ろをモタモタとくっついていくような形になった。この隊列を見て、Kちゃんが言った。
「……ちょっとw なんでふたりしてウチの後ろについてくるのよw」
言われた俺と目黒は向かいの席で顔を見合わせ、しかし無言のままキーボードに手を置いてそのときの気持ちを正直に文字にした。
「……だってぇ、ボルボロス怖いんだもの」(大塚)
狩場では、ジェントルマンシップほど邪魔になるものはない。女の子だろうが子供だろうが、「強い人の影に隠れる!」を実践できぬものは容赦ないガチンコの牙が襲い来るこの世界で生きていけぬのだよ。
しかしそういうときに限って、物事は悪いほうに悪いほうにと転がっていくもの。このときがまさにそうで、「なんとなくエリアが狭そうなこっちにはボルボロスは来なそうっすよw」とひとりホクホク顔でエリア2に乗り込んだ目黒が、まんまと猛る土砂竜と遭遇してしまった。
「うおおお!! ここにいましたよぼるぼろす!! はやくはやくぼるぼろす!!」
“電光石火の男”の異名を持つ目黒は、本気で電光石火のスピードでオチやがるので、俺とKちゃんは慌ててエリア2に駆けつけた。
そして俺は初めて、“自然の世界”でボルボロスと対峙した。前述のとおり、俺は何度かボルボロスを見たことはあったが、それはほとんどが闘技場の中での出来事だった。言ってみればここに現れるそれは、闘技場の関係者からエサを与えられ、寝床も用意された中でぬくぬくと育つ“飼育ボルボロス”といった類のものだ。やることをやってしまえば「あー、今日もいい汗かいた」とタオルで顔を拭う、時給生肉10個くらいで働く“勤労ボルボロス”とも言える(ような気がする)。
しかし、いま俺たち3人の目の前に現れたボルボロスは圧倒的に“野生”だった。ギラつく敵意、溢れる生命力、ビルドアップされた身体などなど、その存在から放たれるすべてから“野生の匂い”を嗅ぎ取れたのである。“生きるために外敵は問答無用で排除する”という揺ぎない決意が漲った小さな眼からは、悲しいまでの野生の光が照射されていた。
「こいつはまさに、野良ボルボロスだ!!」
と俺は叫んだ。
そして実際、ボルボロスは強かった。その動きに明らかな“意思”のようなものが見てとれて、どうにも一筋縄ではいかないのである。猛スピードで近寄ってきたかと思ったらこちらの気勢をそぐようにピタリと止まりワンクッション置いてから攻撃してきたり、円の動きで後ずさりしながらハンターをねめ回したり……。身体も堅く(とくに頭!)、怒り状態になったときのスピードもハンパじゃないので、狩場の天秤がちょっとでもボルボロスに傾いてしまったら、そうそう簡単にハンター側のターンにすることはできないだろう。その証拠に、怒り状態になったボルボロスになぜか付け狙われた目黒が、やめときゃいいのに立ち止まって「ひぃぃぃ!! なんで俺ばっか!!」とチャットで文字を打っている隙を突かれてボルボロスと正面衝突。当たり前のように一撃オチである。
「わあ! 一発でちんだ!!」
チャットなんかしているからだ(苦笑)。
しかし、こういうところにもボルボロスの知性を感じるのは穿ちすぎなのだろうか? 何が言いたいのかというと、「このメンバーの中でいちばんチョロそうなのはコイツだな」とボルボロスが見事に見切って、目黒に集中攻撃をしてきたとしか思えないのである。これを裏付ける論拠として、一時的に目黒がいなくなった狩場で、今度は俺ばかりが狙われだしたのです(苦笑)。円を描くような華麗なステップから猛スピードで突っ込んでくるボルボロスの動きに翻弄され、こちとら顔面蒼白である。思わず、俺は泣き声をあげた。
「目黒がいなくなったからってこっちに来るんじゃねえ! あああ、あっち行けコラ!!」
それでも、「かっこいいからやたらと使いたい」という理由だけで出しまくっているキャンセル突き、カウンター突きというランスの新しい立ち回りを駆使してなんとか抵抗。結果、ズバンと一閃、ボルボロスの尻尾にランスの切っ先が当たり、ウチワエビのような大きな尻尾がドスンと大地に落下した。これを見て、俺は狂喜しながらわめきまくった。
「ややや、やった!! 尻尾が斬れた!! 俺が斬った俺が斬った!!」
すると、いつの間にか狩場に戻ってきた目黒が厚顔はなはだしい口調で、「あれ? いま斬ったの、俺じゃなかったでした?w」とボソリ。おまえいまキャンプから戻ったばかりで、しかもボルボロスと100メートルくらい距離が離れていただろうが!! ところが目黒だけでなくKちゃんまでもが、「ウチ、草食種が斬ったように見えたけどw」などと発言。オレオレ! 尻尾斬ったの俺だからっ! 手柄を、アプケロス以上に腹黒いとウワサの草食種・リノプロスなんかに取られてたまるか!!
そんなことをギャースギャースとわめきながら立ち回っていたら、再びボルボロスのターゲットは目黒へと移行した。シメシメ……。これでしばらくは心穏やかに立ち回ることができるぞ。そう思いながらちょっと冷静になって狩場の様子を眺めていたら、いきなり目黒が「堅くてぜんぜん斬れねえ!」と叫ぶやいなや、ボルボロスの腹の下で孤軍奮闘していたKちゃんの真横に大タル爆弾を設置したではないか! ヌッと現れた危険な物体を見て「ちょ!!ww」とキモを潰すKちゃん。しかし彼女がくり出すランスの打突は止まらず、ものの見事に目黒が置いた大タル爆弾の中心を貫いた。
ボボボボボボンッ!!
巨大な爆風にもみくちゃにされるふたりのハンターとボルボロス。すると画面に、つぎのような意外すぎるメッセージが表示されたではないか。
「目黒が力尽きました」
……………。
「わあ! 1発でちんだ!!」
どっかで聞いたようなセリフを叫ぶ目黒に向かって、俺は腹を抱えながら怒鳴り声を浴びせた。
「自分で爆弾置いておいて、あっけなくちぬんじゃねえよ!!www」
その後もさんざんボルボロスに翻弄されながらも、Kちゃんの武力のおかげでどうにかこうにか討伐には成功。これでようやく、俺はハンターランクが9になった。
それにしても今回のボルボロス討伐、俺と目黒のふたりだけでは100回やっても成功しなかっただろうな(苦笑)。もうちょっと強くなれるようがんばって装備を整えないと、このモンスターには歯が立たないわ……。そんな、反省しきりの俺に向かって目黒は恐ろしいことをのたまった。
「あの……。僕の緊急ボルボロスが出そうなんですけど、ふたりで行きません?w」
もう、まっぴらゴメンです(苦笑)。
というわけで俺が知る限りもっとも頼りにならないハンター、中目黒目黒とボルボロス討伐に出向くことになった。『3(トライ)』のオンラインモードでは初めての緊急クエストである。記念すべきクエスト。アニバーサリークエスト。それに目黒とふたりで挑むってのは無謀……というかブラックジョークとしか思えない。しかもウワサによるとボルボロスはかなり手強いモンスターで、芸能界随一のハンター、次長課長の井上さんをして「ボルボロスだけは本当にわからない。動きが読めないんですよね……」と言わしめる存在だったりする。それを、新・へっぽこ3人組から選りすぐられたふたりでどうにかできるのだろうか……?
しかし俺の心配をよそに、問題の目黒はやる気まんまんでロックラックの酒場を行ったり来たりしている。どうやら武具屋と道具屋をチェックして、対ボルボロス用の準備をしているらしい。しかも珍しいことに、いままではモンスターに有効な属性や弱点なんてひとつも考えたことがなかったのに、俺にこんな質問をしてきた。
「大塚さん、ボルボロスに有効な属性ってなんですか?」
おおお……。ついにこの男も心を入れ替えて、キチンとモンスターに臨むつもりになったのか! いやあ、こいつは感動的な出来事だよ。男子三日会わざれば刮目して見よとはよく言ったものだなあ(毎日会ってるけど)。しかし残念ながら、俺も『3(トライ)』に出てくるモンスターに関してはまったくの知識不足。俺は大剣を背負って佇む目黒に言った。
「いや、申し訳ないがまるで知らないわ……」
続けて、俺はちょっとだけ気になったことを目黒に確認した。
「ていうか目黒、属性を選べるほどたくさん武器を持ってるんだ。そのハンターランク(5に上がったばかりだった)で、すげえなあ。たいしたもんだ!」
言われた目黒、就寝まえのオルタロスのような顔で(どんな顔だ)、のんびりとこう応えた。
「いえ、武器はいま持ってる無属性の大剣、“荒くれの大剣”が1本あるだけですww」
……だったら思わせぶりなことを聞くんじゃねえ!! 一瞬、見直しちまったじゃん!!
というわけでいつまで経っても不安は払拭されず、俺はクエスト出発のボタンを押すことに躊躇し続けた。
そんなとき、我々がいた場末の街にひとりの人物がやってきた。『みんGOLオンライン』時代からのネット友だちである女子大生ハンター、Kちゃんだ。彼女はこの夏までWiiは所有していなかったが、「『3(トライ)』でだったら、いっしょに遊べるかなあ?」と健気なことを言い、ソフトとハードをいっしょに購入してロックラックの住人になってくれた女の子である。このとき、ハンターランクは24で、不真面目極まりない不良おっさんハンターの俺や目黒とは違う、しっかりとした人生設計によるハンターライフを満喫している様子だった。
「こんにちは〜……って、アカさんもいるー! おひさしぶりー♪」
とKちゃん。“アカさん”というのは目黒のことだ。『みんGOLオンライン』の時代、俺はミドレンジャ、目黒はアカレンジャ……と言った具合に何人かのファミ通編集者が記号的なハンドルネームをつけて、オンラインで遊んでいたのである。その名残で俺はずっと『モンハン』でも“MIDO”というハンターネームを使用していたんだけどね(もう使っていないが)。って、これは思いっきり余談でした。
「おふたりで、なにしよるん?」
とKちゃんが言った。彼女は京都の人なので、チャットも基本的にふんわりとした京都弁である。でも俺は関西の言葉に詳しくないので、ところどころに“エセ”が混じるのはご容赦いただきたい。
俺は、いまからふたりで緊急クエストのボルボロス討伐に出向こうとしていたこと、そして自分たちの戦闘力に大いなる不安を抱えていることをKちゃんに説明した。すると、俺と目黒のテキトーハンティングの実態をよく知るKちゃんは「ああ、それは確かに不安やねえww」と笑い、続けて「ウチも手伝うよ〜♪」と天使のような発言をするではないか!! こいつは助かった。地獄に仏とはまさにこのことだ。
というわけで、へっぽこふたりと女子大生ハンターという異色トリオで出向くことになった★1の緊急クエスト、ボルボロス討伐。武器は、俺とKちゃんがランス、目黒は大剣である。
砂原のベースキャンプに降り立ち、いつものように支給品ボックスに群がる。とりあえず自分の取り分を確保し、流れる手つきで携帯食料をゴキュゴキュと摂取。見ると俺の真横で目黒のキャラが、なぜか虚空に向かって「うりゃ! うりゃ!」と2回、蹴りをくり出しているのが目に入った。それを見たKちゃんが吹き出す。
「アカさん、それ、蹴りのボタンww アイテム使用するの、yボタンやからねwww」
俺は目の前の席で「あ、しまったww」と素でテレている目黒に向かって、チャットではなく声に出して言った。
「どこまで頼りないんだおまえは!!www」
そんな、じつにゆる〜い空気の中で始まったボルボロス討伐。壮絶な(?)結末は次回ってことで!
◆『角満式モンハン学〜ハンター編〜』最新情報!◆
2009年9月3日に発売される『逆鱗日和』シリーズ最新作『別冊『逆鱗日和』 角満式モンハン学〜ハンター編〜』ですが、そこに採用が決まった投稿者の方々のお名前をこちらで発表しております! 採用されているかどうか、投稿者の方はぜひご確認を〜!
そしてもうひとつ!!
エンターブレインの通販サイト“ebten”で本書をご購入いただいた方を対象にしたキャンペーンを実施することになりました! まず、先着購入者100名様にオリジナル逆鱗日和グッズをプレゼント。これは、『逆鱗日和』シリーズの新刊発売イベントで配られた会場限定グッズ(缶バッジとか大塚がデザインした『モンスターハンター ハンティングカード』のカードとか)や、今回新規に作成した“逆鱗日和人物相関図&登場人物説明ファイル”などの中からランダムで2賞品が選ばれて贈られるものです。そして! これまで『逆鱗日和』シリーズの新作が発売されるたびに発売記念イベントを行ってきましたが、今回は開催しません……が! その代わりに『モンスターハンター3(トライ)』のネットワークモードの拠点“ロックラック”において“『角満式モンハン学〜ハンター編〜』発売記念イベントinロックラック”なるものを開催しちゃいますよ! ……まあ、僕が当選者の方といっしょにクエストに出かけて遊んだり、チャットでおしゃべりするってだけですけどね!!(笑) このイベントにはebtenで『ハンター編』を購入された人の中から抽選で選ばれた人のみが参加できます。詳細は、下のバナーから行けるキャンペーンサイトでご確認くださいね。では、どうぞよろしくお願いしますー!
↓↓『角満式モンハン学〜ハンター編〜』ebten購入キャンペーン実施中!↓↓
※このエッセイは2009年8月17日に書いたものです。
何度も何度もそこらじゅうで、今回と同じような書き出しのエッセイを書いてきましたが、「ハイハイ。恒例のアレね(冷笑)」と思いながら読んでください。
『3(トライ)』が発売されて16日が経過しましたが、皆さん、狩ってますかー!! おお、あなたはすでにオフラインをやり尽くしたとな。そちらのアナタはおおおお! もうそんなハンターランクに!! いやあ、『3(トライ)』の夏ですなあ^^ いいですなあ、狩りまくり^^ 腰をすえてじっくり遊びたくなりますものねえ、『3(トライ)』は^^^^ ……え? そういうおめえはどうなんだ、ですって? イヤだなあ^^ ボク、大塚角満ですよ? 世界一のガンランサー(笑)と呼ばれた(呼ばせた?)男ですよ?? そりゃあもう、目を覆いたくなるほどの仕事放棄っぷりの狩りしまくりで、我がモガの森には俺を恐れてモンスターたちがまったく近寄らなくなった……ってくらいのものですよぉ^^^^^^ ……え? は、ハンターランクはいくつか、ですと?? あ、あなた! いきなり年頃のおっさんにハンターランクを聞くなんて失礼ねっ!! ……って、まったく失礼じゃないって? そうですね。そのとおりですね。仕方ない。教えてやるか、8月17日現在の俺のハンターランクを。しっかり見とけよ!!
★大塚角満のハンターランク
8月17日午後4時16分現在……8
……え? 見えない? えーい、こうなったらヤケだ。ホラ、しっかり見てやって!
8月17日午後4時16分現在……8
って、デカすぎ(苦笑)。デカすぎてかえって見えないくらいだ(んなことはない)。ご覧のとおり、まだハンターランク8なんですボク。「ってことは、オフラインのシングルモードを進めているんだな」と思われそうですが、じつはシングルモードのほうもロアルドロスを討伐したところで止まっている。これ、江野本ぎずももほとんど同じ状態で、恥ずかしながら逆鱗日和ファミリーはふたり揃って進行が停滞しているのだ。でももちろん、これにはしっかりとした理由がある。あまりにも恐ろしい話でなかなか文字にする覚悟ができず、いまは伏せておくが、いつか詳しく書かないといけない日がくるだろう。なのでそのときをお楽しみに……っていうか、恐れながら待っていてください……。
さて。
最近の話だが、これまた逆鱗日和ファミリーのひとりである中目黒目黒とふたりでいつものように社員食堂で昼飯を食っていた。中目黒目黒は、この記事とかこの記事とかこの記事にあるとおり、逆鱗日和ファミリーきってのテキトープレイ男で、俺、江野本ぎずもとともに“新・へっぽこ3人組”の一員でもある。このとき、話題の中心にあったのは当然のように『3(トライ)』で、俺と目黒は非常にあいまいで心もとない知識だけを頼りに延々と、このゲームをサカナにしゃべり続けていた。そしてその流れの中で、俺はなかなか自分がゲーム本編を遊べていないジレンマを目黒に吐露したのである。
「しかしさあ、いろいろあって時間が取れず、ほとんど『3(トライ)』を遊べていないんだよ……。俺、まだハンターランク8だぜ? どうすんのコレ……」
すると目黒は、俺のことになどまったく興味がないということが丸わかりとなるのんびりした口調でこんなことを言った。
「大丈夫ですよ、大塚さん。僕はまだハンターランク3ですから、安心してください」
……おまえに「安心してください」と言われるほどに不安がこみ上げてくるわ!! んなことを言われたら逆に、目黒が暮らすテキトー世界の住人としてとりこまれそうな恐怖を覚えるわい……。
しかしこれは、本気でエラいことである。非常事態宣言発令!! って感じだ。時間を作ってゲーム本編を進めないと、仲間連中からつねに上から目線で見られちまう!! 目黒とふたりでロストワールドの住人になるのだけは絶対にイヤだあああ! というわけで俺たちふたりは昼飯を済ませてからどうにか時間を作り、ロックラックで落ち合うことにした。とりあえず逆鱗日和ファミリーの落ちこぼれどうしで手を携え、前に進むことにしたのである。
さあさあ、久しぶりのオンラインプレイだ。とりあえず、フレンド登録のやりかたも知らない目黒にロックラックのアレコレを教えて(って、言うほど俺もわかっていない)、ちょっと落ち着いたところでクエストに行くことに。俺と目黒は10年来の同僚で、『モンハン』も無印(初代『モンハン』)の時代からいっしょに遊んでいる仲間ではあるが、いざ協力プレイとなるとお互いの腕をまるで信用していないという“もうひとつの顔”が頭を持ち上げてくる。なのでどちらも「我々だったらドスジャギィからで大丈夫でしょう!」とか「いっそクルペッコをボコってやるか!」なんていう威勢のいいセリフは出てこない。このときも、向かいの席でチラチラとお互いを盗み見ながら牽制し合い、けっきょくふたりとも未クリアーだった★1クエスト“砂原のキモ納品依頼!”に出かけることになった。目黒いわく、「さっきひとりで行ってみたんですけど50分かけて9個しか集めることができず、クエスト失敗(モンスターのキモを10個納品するのが目的)となりました……。非常に難易度が高いクエストです」とのこと。うーむ……。いきなり★1で50分フルに使うクエストがあるのか……。俺は目黒の言葉に、戦々恐々とした気分になった。
このクエストではフィールド“砂原”を舞台に、“モンスターのキモ”という素材を10個集めて納品しなければならない。砂原においてモンスターのキモを隠し持っているのは“デルクス”という名の魚竜種のモンスターで、ものの本によると、“つねに5、6匹ほどの群れで行動し、砂中をイルカのように跳ねながら移動する”とある。俺は目黒に言った。
「これ、要するにデルクスを砂の中から引っ張り出して狩り、モンスターのキモを剥ぎ取ればいいんでしょ?」
すると目黒はうつろな目で俺を見返し、「そうなんですけど……。このサカナっぽいモンスターに攻撃が当たらないんすよ」とボソリと言った。目黒は『3(トライ)』では大剣を使っているのだが、攻撃範囲の広いこの武器でそれほど当たらないとは……。どうやらデルクスは、とてつもなくトリッキーな動きをするモンスターのようだ。
そして始まったモンスターのキモ狩り。砂の中にいるモンスターを狩ってキモを剥ぐというクエストは無印のころから慣れっこなので、俺と目黒は迷わず、エリア9、10に広がる広大な砂原地帯へと向かった。デルクスはこの、サハラ砂漠を思わせる砂の海で群れを成して泳いでいるのである。行くと……いましたいました、デルクスが!! 俺はスキューバダイビングにでも来たようなウキウキ気分で砂中を泳ぐ魚竜種の只中に飛び込み、作ったばかりでまったく試し斬りができていなかった水属性のランス“スパイラルランス”を群れの中心に突き立てた。とたんに、バチュンバチュンと活きよく……じゃなかった、勢いよく飛び出してくる数匹のデルクス。俺は、自分で言うのもナンだが巧みにWiiリモコンとヌンチャクを操ってこれらのモンスターを難なく狩ってくれた。そして目的のブツ、モンスターのキモを数個剥ぎ取ることに成功。目黒は“とても難度が高い”なんてしかめっ面で言っていたが、どこが難しいのかまるでわからん。少々拍子抜けしながら目黒を見ると、彼は彼で一生懸命大剣を振り回して、デルクスの群れの中心で暴れている。あの様子だと今回はさぞかしたくさんのデルクスを狩って、モンスターのキモを剥ぎ取っていることだろう。俺は向かいの席で神妙な顔をしている目黒に言った。
「その様子だと、もうかなり狩れたんじゃないの?」
しかし目黒は俺と目を合わせようとせず、画面を凝視したまま驚くべき告白をした。
「……こんなにたくさんいる中で大剣を振るっているので大漁かと思うでしょう? ところがナゼか、じつは1回も攻撃が当たっていないんですwww ……つーか、どうなってんだコレ!!!」
目を剥いて怒りながら俺は怒鳴った。
「……どうなってんのかわからねえのはおめえだよ!!w 群れのど真ん中にいながら攻撃を当てないようにするほうが難しいわ!!」
この発言ですっかり俺も調子を狂わせ、狩っても狩っても、剥いでも剥いでも、出てくる素材は“とがった牙”ばかりになる。デルクスに攻撃を当てることができない希代の大剣使いと、『3(トライ)』では初となる物欲センサーをモンスターのキモごときで発動させたランサーに明るい未来など待っているわけもなく、俺たちは30分近くも砂原を彷徨うハメに……。それでもなんとか目的の10個は集まったが、ロックラックに帰ってきたときは遭難一歩手前の疲労困憊ぶりであった。
しかし、苦労した甲斐があってかロックラックでギルドのお姉さんに声をかけると、緊急クエストが発令されたとの情報がもたらされたではないか!! 見ると討伐目標は……“土砂竜”ことボルボロスだって!!! いやあ、やっと出たかボルボロス。出たからにはすぐに討伐しちまいたいなあ! でも……。
俺は、何の目的もないままロックラックの酒場を走り回っていた目黒を呼びとめ、低い声でささやいた。
「あのさ……。俺に緊急クエストのボルボロス討伐が出てるんだけど、どうする……?」
すると目黒は目を輝かせて、ドンと胸を叩いて元気に言った。
「いいですね、ぼるぼろす!! 行きましょう! 狩ってやりましょう!! ……で、ぼるぼろすってナンですかい??」
これ以上はない! ってくらいの大きな不安要素を抱えたボルボロス討伐が、ついに幕を開ける!!
以下次回〜!
◆『角満式モンハン学〜ハンター編〜』最新情報!◆
2009年9月3日発売予定の『逆鱗日和』シリーズ最新作『別冊『逆鱗日和』 角満式モンハン学〜ハンター編〜』ですが、何度もあちこちで書いてきたとおり、この書籍は全国のハンターさんから寄せられたたくさんの“モンハンあるある体験”がもとになっております。で、今回ついに!! 投稿を採用させていただいた皆様のお名前を発表させていただきます! こちらに一覧を掲載させていただきました。採用者の中から抽選で20名様に『角満式モンハン学〜ハンター編〜』のサイン本をプレゼントいたしますので、ご自分が採用されているかどうか、ぜひぜひ確認してみてくださいね。
ではでは、投稿してくださったすべての皆様、本当にありがとうございました!!(大塚角満&江野本ぎずも)
【MH3】第20回 良三さん、藤岡さんと『3(トライ)』を語る その3
というわけで、全国の『モンハン』ファンに大好評となっている、辻本良三プロデューサー、藤岡要ディレクターをお迎えしての『モンスターハンター3(トライ)』の鼎談。今回、いよいよ最終回です。本当はもっともっと書きたいんですけど、それは僕が『3(トライ)』をやり込んで、改めてインタビューしたときのお楽しみということで……。でも、この最終回も非常に濃くておもしろい話になっておりますよ!
手伝って♪
辻本 『3(トライ)』は、オフラインとオンラインの切り分けがとてもうまくいったんじゃないかなって思いますね。両方おもしろい、って言えるので。オンはオンでおもしろいし。
藤岡 人との付き合いが楽しい場所ですからね。
辻本 久しぶりに、藤岡とオンラインで遊んだんですよ。3日間連続で。そこで、チャットのおもしろさにハマってねぇ〜。
大塚 何をいまさらなことを言ってんすか!(笑)
辻本 でもね、プライベートでいっしょに遊ぶのって3年ぶりくらいなんです。だからすごくハマっちゃって。チャットの読み合いがおもしろいんですよコレが(笑)。相手が求めていることをキチンと返せるかな……? とか考えたり。アドリブコントみたいな部分があっていいんですよー。
大塚 うん、わかるわかる。
藤岡 いい大人が、腕相撲ひとつでムキになったりね。
大塚 そうそう……。このあいだコミさん(『3(トライ)』の音楽担当、小見山優子さん)に負けたのが大ショックで……。
藤岡 あははは!
辻本 ちなみに腕相撲は、いま僕が最強ですから。
大塚 ホントですか!? ……でもね、俺は腕相撲のときはWiiリモコンを振るなんて知らなかったんですよ。
藤岡 わざわざマニュアルに書いていないですからね(ニヤニヤ)。
辻本 このあいだ、ほかの人にも言われましたよ。「どうやんの!?」って。……でも、教えんかった(笑)。
大塚 ひでえな!!
辻本 でも、まだオンラインで遊んでいない人もたくさんいると思うので、気軽につないでみてほしいですね。シングルモードにはないおもしろさがありますから。20日間ネットワークモード無料お試しキャンペーンもやっていますし。
藤岡 シングルはシングルで遊んでほしいし、オンラインにもつないでほしいし……。まあ、贅沢な悩みなんですけどね。
辻本 時間を分けて、遊んでください(笑)。
大塚 でも夏休み期間中に発売されたので、学生にはちょうどいいですよね。
辻本 ですね! まあ僕は、『3(トライ)』が出てから明らかに寝る時間が遅くなりましたけど。
藤岡 家に帰る時間も早くなったよね?
辻本 そうそう(笑)。このあいだも藤岡と飲みにいって、夜の11時くらいに1軒目を出たんですけど、以前だったら絶対に「もう1軒いこか!」ってなっていたんです。でもこのあいだは、「じゃ、ロックラックいこか」(笑)。
大塚 あははは! わかるわかる! だってWiiの『G』のときですら、ウチらそうでしたもん。江野本とふたりで打ち合わせを兼ねて飲むことが多いんですけど、そのたびに途中から「ミナガルデ行きたいミナガルデ行きたい!!」って一生言ってるんですよ、こやつ!!(と、江野本を睨む)
一同 (爆笑)
江野本 これからは「ロックラック行きたい!」ですね(笑)。
大塚 だな(笑)。でも良三さん、今度いっしょにオンラインで遊びましょうよ。
辻本 (間髪いれずに)イヤです。
一同 (爆笑)
大塚 絶対そう言うと思ったわ!!
辻本 ハンターランクが8以上になったら、いっしょに遊んであげますよ
大塚 だって、俺まだ3すよ……(インタビューは8月6日に実施)。上げてくださいよぉ(懇願)。
辻本 僕に腕相撲で勝ったら手伝ってあげるわ(笑)。
大塚 そこまでイヤか!(笑)
“ほんのちょっと”のサジ加減
大塚 しかし『3(トライ)』って、シングルモードだけでも相当長く遊べますよね。
辻本 そうですね。なのでさっき言った細かい部分、アプトノスの反応とか、気づかないままシングルモードで遊んでいる人も大勢いると思うんです。なのでこのインタビューを読まれて「え! アプトノスってそうなんや!」と思って見に行ってもらえるといいなあ。
藤岡 大塚さんの質問状に“採集素材が出やすくなっている”という一文があるんですけど、実際にそうなんですよ。これは、「わー! たくさんある!」という見た目的な喜びをまず感じてほしいな、というのがあって。それと今回はポップ式(『3(トライ)』では採集できるものはエリア内に固定されているのではなく、そのたびごとにランダムで配置される)であったりなかったりするので、捜す楽しさも出ればいいな、って思っています。
大塚 うんうん。
藤岡 とくに孤島は、いろいろと出ると思いますよ。
大塚 ですね! ハチミツがうじゃうじゃ出て、孤島は宝の山ですよ!
藤岡 終盤のフィールドにいくと、そういうものがなかなか出なくなるんです。そうなると「ちょっと孤島に行くか」っていうサイクルが生まれますよね。“フィールドで集めたものを使っていく楽しさ”というものを追求しようと開発していたのが初代『モンスターハンター』です。そういう楽しさを『3(トライ)』にもキチンと入れ込みたいと思ったんですよね。
辻本 そこで問題になるのが“バランス”なんですけどね。
藤岡 携帯機と据え置き機で時間の流れが若干違うんですよね。据え置き機のほうがちょっとゆったり遊べるので、その“ちょっと”の部分を採取に割り振ってくれるだけで、採取というものがもっと楽しくなるはずなんです。携帯ゲーム機の場合はテンポが速いのでなかなかそうはいかないので別の方法を考えるわけですけど。
辻本 “ちょっと”の部分が1.2倍なのか2倍なのかでぜんぜん違ってきますけどね。まあ、バランス、というか、サジ加減の世界ですが。
藤岡 長い時間を割り振りすぎると面倒くさくなって、『ポータブル』シリーズくらいの割り振りにしちゃうと、据え置き機の場合だと慌しくなっちゃう。サイクルが早すぎて。
大塚 微妙な世界だなー!
藤岡 本当に“ちょっと”なんです。少しだけ余裕のある空間を作ってあげるだけでいいんですよ。
フェスタに向けて
大塚 しかし『3(トライ)』のNPC(ノンプレイヤーキャラ)って、なんか人間臭いですよね。……言ってることに、まったく意味がなかったり。
藤岡 ですね。看板娘とか(ニヤリ)。でもね、たまーにですけど、彼女のセリフの中に攻略のヒント……というか、ちょっと役に立ちそうなことも入っていたりするんですよ。……まあ基本、ゲームの進行には関係ないことばかり言いますよ。「水没林の湿気が〜」とか。どうでもええっちゅうねん(笑)。
大塚 あはははは! 言う言う! でもふつうの人としゃべってるみたいですよ。
藤岡 ゲームが進行するごとにいろいろ言うので、話しかけてあげてください(にっこり)。
大塚 そういえば、さっきも話した一般の人からの『3(トライ)』のファーストインプレッションに50歳の男性からの投稿があったんです。そこに、“モガの村の武具屋のおねえさんは、ワシに絶対ホレてる”って書いてあって(笑)。
辻本・藤岡 あははははは!!!(大爆笑)
大塚 “ワシにだけはにかんでいる。ワシの仕草にやられたようだ。ほかのハンターにはもっと冷たく当たっているに違いない”ってありましたよ(笑)。
藤岡 イケてる、そのおじさん!!(爆笑) それ、めちゃめちゃおもしろいっすね!!
辻本 新しい都市伝説ですわそれは(笑)。
大塚 そのくらい感情移入している、ってことですよ(笑)。
藤岡 全員同じ文章を見ているはずなのに、違うふうに読んでいるんですねー!
江野本 あと、「最近、ギルドのお姉さんが気になってしかたがない……」っていう高校生男子からの投稿もありましたよ(笑)。
藤岡 あははははは!!
大塚 プレイヤーそれぞれの感じかたが、『3(トライ)』は過去作品と比べても飛び抜けて違うかもしれませんね。
藤岡 ああ、それはそうかもしれませんね。その進行度でしか話さないこととかもあるので、プレイヤーごとにいろいろな関わりかたができると思います。ギルドの看板娘が気に入った人は、あの子にばかり話しかけたりすると思うし。また村長が好きな人は、村長ばかり追いかけると思うし。それぞれの思い入れが強くなってくれるといいなあ。
辻本 村長、後半になるとすごくいいことを言いますよ。
大塚 マジっすか? ……うーん、やっぱりシングルモードからやるべきか……。
江野本 困りますね。どこから遊んでいいか。
大塚 いろんな欲求が生まれますよ。モンスターもことごとく新しくなってるから、早く見たいわけじゃないですか? となると、ロックラックに行って友だちに連れてってもらうか、シングルモードを進めちゃう、っていう選択肢もある。でも、モガの森にしばらく浸っていたいっていう思いもあるし……。……あーもう、俺はどうすりゃいいんだ(苦笑)。
藤岡 ぜひ、いろいろな関わりかたをしてあげてください。
大塚 わかりました!! ……って、まだぜんぜん聞けてないのに時間がなくなっちまった!! でもひとつだけ! まもなく始まるモンハンフェスタ`09への意気込みを聞かせてください!
藤岡 楽しんでもらいたいので、やれるだけやります! 今回は場所も広いし。
辻本 今回は『3(トライ)』を使ったタイムアタック大会をやります。この『3(トライ)』で一応、ハンターたちが同じスタートラインに立ったわけじゃないですか? その状況でどれだけうまい人が現れるのか、本当に楽しみなんです。
藤岡 すごく水中での立ち回りに興味がありますよ。
大塚 そう! まさにそれ、昨日江野本と話していたんですよ。すげー楽しみで!
藤岡 ですよね! どうやって水中を舞台にしてラギアクルスと渡り合うのか、早く見てみたいですよ。新しく仕込んだものに対してハンターたちがどうアプローチしてくるのか、じつに興味深いです。
辻本 今回、モンスターにスタミナっていう要素も入っているので、それを削ってくるのか、それともゴリ押しで来るのか……。大会だけでも、見所はたくさんありますよ。また今回はイベント全体のお祭り色がさらに濃くなっています。『モンスターハンター』のお祭り。来ただけでおもしろさを感じてもらえるものをいろいろと仕込んでいます。
藤岡 大会は『3(トライ)』を軸でやりますけど、『3(トライ)』オンリーじゃないですからね。
辻本 そう、“『モンスターハンター』”ということで行うイベントですから。
大塚 『2nd G』のリアル集会所もありますもんね。
藤岡 はい。『モンスターハンター』ファン全員に楽しんでもらえるような空間作りをしています。
大塚 シリーズ5周年ですもんね。
辻本 そうですね。5周年記念ってのもありますから。
藤岡 “映像”も楽しみにしていてください(ニヤリ)。
大塚 映像?
辻本 フェスタ用に作った映像があるんです。特別映像。
藤岡 ぜひ観てほしいです。急遽作ったのでたいへんだったんですけど、おもしろいですよ。
大塚 楽しみにしておきます。……ちなみに、教えて藤岡先生! は?
辻本・藤岡 ……どうでしょうねえ(笑)。
大塚 むむ……。
藤岡 でも、モンスターの生態とかに触れられるものは何かしら用意したいと思っているので、楽しみにしていてください。フラっと来るだけで楽しいものになると思います。
大塚 わかりました! 楽しみにしております!
短期集中連載として昨日から始まった、『モンスターハンター3(トライ)』の中枢、辻本良三プロデューサーと藤岡要ディレクターをお招きしての鼎談“良三さん、藤岡さんと『3(トライ)』を語る”の第2回目です。ワタクシ、大塚角満を交えて、奥深き『3(トライ)』の世界をさらに掘り下げていきます。
モンスターの世界
辻本 しかし大塚さん、もらった質問状とまったく違う話にばかりなってますよ。
大塚 ホントですねえ。
辻本 もう明らかに、時間的に全部答えるのは無理です(笑)。
大塚 それは、つぎの機会でいいや(笑)。なので細かいことじゃなく、ホントにいま聞きたいことだけピンポイントで。たとえば、オープニングムービーのこと。
藤岡 ああ、はいはい。
大塚 今回のオープニングムービー、めちゃめちゃ評判がいいですね! 実際、すばらしい出来だと思うし。
藤岡 ありがとうございます! よかったです(にっこり)。
大塚 すごくモンスターにフィーチャーした映像なんですね。
藤岡 はい。思い切って、ああいうの作りたいなって思ったんですよね。ハンターが絡めばそれはそれでおもしろいものにはなるとは思うんですけど、そういうものじゃなく、本当にモンスターどうしの関わりを描ききってみたらどうなるか? って思いまして。あくまでも、この世界のシチュエーションのひとつでしかない映像なんですよ、今回のオープニングって。ああいうことばかりが起こっている世界というわけではなく、そういうシチュエーションもありうる世界なんだよ、と言えばいいでしょうか。おそらくね、あのシーンのやりとりが終わったあとって、彼らはわりと平然と、パーっとそれぞれの行きたい方向に散っていくんです。アプトノスも、ジャギィたちも。そういう世界のほんの一部を切り取れたらおもしろいだろうなぁ……ってずっと考えていたんですけど、でも作るとなるとたいへんだろうな……とも思っていて(苦笑)。群れを描こうとすると、イチからアニメーションをつけなきゃだし、ディティールもしっかりしていないとすごさが伝わってこない。なので今回は全体的に、ディティール、アニメーション、質感、それと空気感もそうなんですけど、いままで作ってきた経験プラスもうひとつ上の映像表現までやってみよう、ってことで作業に入りました。たいへんだろうと思ったんですけど、映像を作ってくれるスタジオの人たちもしっかりと前を向いて受け止めてくれたので、頼もしかったですね。
大塚 同じ思いを共有できたんですね。
藤岡 はい。なので、どこまでできるかわからないけど、とにかく構想だけは膨らませてみようってことで。でも蓋を開けてみたら、やっぱりとてつもない物量になったんですよ。それでもスタジオの方々は「やってみたい!」と言ってくれたし、僕のほうも生態というものに踏み込んだ『3(トライ)』のときでなければこういう映像は作れないと思っていたので、腹を括りました。なのでできあがったとき、大塚さんに早く見せたいと思ったんですよ。
大塚 うん、そう言ってくれましたよね。
藤岡 去年かな? 東京ゲームショウのときには一部ができてて、11月か12月には完成していたんです。音楽もオーケストラで収録して当てたらすごくマッチして、壮大な雰囲気も展開の速さもさらに気持ちよくなったので、「早く見せたいなあ」と思えるムービーになりました。
大塚 そっかあ(にっこり)。
藤岡 あの映像をきっかけにして、「『3(トライ)』やってみたいなあ」って思ってもらえたらうれしいなあ。
大塚 『野生の王国』というか『ディスカバリーチャンネル』を髣髴とさせるものがありますね。
藤岡 そうですね。シリーズの最初からムービーに関しては、テーマとして『ディスカバリーチャンネル』的な生態表現をしていきたい、というものがあったんですよ。無印(初代『モンハン』のこと)のときがとくにそれが強くて、実際にモンスターを見てきたかのように描いたらおもしろいんじゃないか、って思って作ってみたんですよね。でも、無印のときに『3(トライ)』のオープニングみたいにモンスターにフィーチャーしすぎたものを作ったら、ハンターを見たときに「この人たち誰?」ってなっちゃったと思うんです。それはダメだと思ったので、無印のときは『3(トライ)』のときほど踏み込めなかった。やっぱり最後にモンスターとハンターのやりとりをしっかりと描いて、「あなたたちは強大なモンスターに立ち向かっていくんですよ」ということを啓蒙しないといけないと思って、無印のオープニングはああなったんです。
大塚 でも、『3(トライ)』のタイミングだったら……。
藤岡 ハンターはほんのちょっと出てくるだけでもいけるんちゃうかな? と思ったんですよね。なので“最後にハンターが出てくるまでにモンスターを描ききる”ということをテーマに制作していました。たいへんでしたけど、やってよかったですよ。
辻本 それに今回は水中のモンスターもいるので、ストーリーの展開にも幅が出せたんですよね。
藤岡 二元的に描けたんですよね。水と陸の両方から展開させることができたので、スピードも迫力も出せましたし。
辻本 そうそう、こんな裏話がありますよ。去年の東京ゲームショウのときにこのオープニングの最後、ハンターが4人並んでいるシーンをプロモーションビデオ(PV)に組み込んで流したじゃないですか?
大塚 はいはい。
辻本 このPVができあがったときに見てみたら、いちばん左のハンターがスラッシュアックスを背負っていたんですよ(笑)。
一同 (爆笑)
辻本 もう「やばい!!」ってなって……。
藤岡 急遽ハンマーに差し替え(笑)。
大塚 僕の友だちが気づいて、うわごとのように言ってましたよ。「東京ゲームショウのときはハンマーだったのに!!」って。誰も気づかなかったから、「何を寝言言ってんだ」って相手にされてなかったですけど(笑)。
辻本 差し替えたんです(笑)。「まだスラッシュアックスは発表してないやん!!」って。
藤岡 「なんやこの武器は!!」って絶対になりますからねえ。
辻本 「こんな初出しはないやろ!!」って大騒ぎでした(苦笑)。
気づきましたか?
大塚 あの、『3(トライ)』を実際に遊んでみると、そこかしこに“ハンターとモンスター”っていう関わりじゃなく、“モンスターとモンスター”という関わりが見えるじゃないですか?
藤岡 ああ、そうですね。
大塚 なので実際に『3(トライ)』を遊んだあとにあのオープニングを観ると、さらに「キタ!」ってなるんですよね。自分たちが遊んでいるあの世界を切り取ってきたものがコレなんだな、って思えるので。
藤岡 モンスターがらみのことを設計するときに、“モンスターどうしが意識しあう”っていうのがテーマのひとつだったんですよ。「モンスターの設計はこれを目指そう!」って感じで。モンスターとモンスターが無関係に動きすぎるととたんにゲームっぽくなるし、ふと見たときにその様子が目に入るととたんに覚めちゃうんですよね。なのでゲーム中でも、モンスターはハンターに向かってきてはいるんだけど、なんとなくモンスターどうしが意識し合っている……というのが描けたらもっと感情移入できるかな、って思って。そのへんも、改めて土台から作る『3(トライ)』だったら掘り下げられるかなと思い、小型から大型まで関係性を持たせていこうということになりました。最初にジャギィとレイアを作ったとき、ジャギィの群れの中にレイアが降り立ったらジャギィたちが反応する……っていうのを作ったんですけど、これが、見ているだけで楽しかったんですよね。“ゲームとして楽しい”っていうのはその先にあるんですけど、まずは“見て楽しい”ってのは大事なことちゃうんかなって。
大塚 わかる! だってオルタロスですら、見ていて楽しいですもん。
藤岡 あははは。あいつら、いいですよね。さりげなくハンターに絡んでくるし(笑)。
大塚 昔からそうなんですけど、『モンハン』って“捨てモンスター”ってのがいないじゃないですか? どれもこれも、しっかりと世界観の中で立っているというか。それが『3(トライ)』は、さらに強くなっているんですよ。
藤岡 うん、そうですね。
大塚 シングルモードを始めてモガの森に行ったら、そこにケルビの群れがいたんです。ああ、なんだか安心できる風景だなぁって思っていたら、何かの間違いみたいなデカいケルビが1頭いて、そいつが突っ込んできたんですよ!
藤岡 あはは! あいつはかなり“オラオラ系”ですからねえ(ニヤリ)。
大塚 でもね、そこでいろいろ考えるんです。こいつは闖入者(ちんにゅうしゃ)に怒っているのかな? 群れを守ろうとしているのかな? とかね。随所にそういうシーンがあるんだよなあ。
藤岡 ケルビにしても、もっとプレイヤーからアプローチできたらいいな、って思っていたんですよね。ふつうに狩って剥いだら皮が剥げるけど、気絶状態で剥ぎ取りしたら角が出やすい、とか。ああいう、草食のモンスターにしてもアプローチの仕方がいろいろあったらいいかな、ってアイデアを出し合ったんです。随所にありますよ、そういうの。アプトノスひとつとっても、いろいろ動いてきます。
大塚 ほうほう。
藤岡 隣のエリアに大型モンスターが来たとき、アプトノスがそわそわしだすんです。
大塚 あ、そうなんですか!?
藤岡 はい。僕ね、あのシーンはけっこう好きなんです。隣接しているエリアに大型モンスターがくるとそわそわするアプトノス……。ザワザワザワ……って感じ。こういった、モンスターのちょっとした仕草が見切れるようになってくると、プレイヤーの立ち回りも変わってくると思います。細かいところですけど、そういうことができるようにしておく、ってのは大事なのかなって。遊びの幅が増えるじゃないですか。
大塚 隣のエリアにいる大型モンスターの声が、かすかに聞こえますしね。
藤岡 はい……って、よく気づきましたね、大塚さん。
大塚 あ、いや〜……。
(取材に同行していた)江野本ぎずも 大塚さん、気づいてなかったんですよ!!
一同 (爆笑)
大塚 ………………。
江野本 いま新しい単行本『角満式モンハン学〜ハンター編〜』を作っていて、そこに読者の皆さんから『3(トライ)』を遊んだファーストインプレッションを投稿してもらっているんです。その中に「隣にいる大型モンスターの声が聞こえた!」というのがあって。でも、ウチは気づいたんですよ、それを読むまえに。
藤岡 ああ、そうなんですか。一部の鳴き声だけではありますが、うっすら聞こえるんですよ。
大塚 それに気づいている人って、さらに世界観の奥行きを感じられるわけですね。……まあ俺は気づいていなかったけど(苦笑)。
一同 (爆笑)
大塚 ……でも言われなくても、そのうち気づいたのは間違いないんですけどね!
辻本 あはははは!!
藤岡 大塚さん、そこで踏ん張らなくていいですよ(笑)。でもこういうのって、知った人が喜べるっていうのがいいじゃないですか。そうすると、本当に何でもないことでも「これには意味があるんじゃないか?」って見られるようになってくるし。なので都市伝説が生まれるくらい、じっくりと見てほしいですよ。
大塚 本当に細かいところで世界観を感じられるから、この世界に深く関わっている感がすごく強いんだろうなあ。
藤岡 モガの森だと、とくにそうでしょうね。ゆっくりと、何もないところを眺めていられるので。
大塚 モガの森がいいんだわ、これが……(シミジミ)。悠久の時の流れが……。
辻本 厚くネットワークモードを遊んでいても、ときたまちょっとシングルモードに戻りたくなるんですよね。だからいまのライフサイクルは、ネットワークで遊んで切断したあと、寝るまえの1時間だけシングルをやることですもん。
大塚 わかるわあ……。今回、シングルモードの充実度がハンパないですね。いつまでもいたくなるもん。
藤岡 そうですね。それが強くなっていると思います。なんだかんだ言って、据え置き機ではシングルモードを厚く遊ぶってことが自然に起こるので、シングルで遊んでいるのが心地いいって……ユーザーに思ってもらえることが重要なんです。ゲームの設計としてそれは外せなかったので、『ポータブル』シリーズよりもシングルモードを意識して作っていると思います。『ポータブル』って、絶対的に人と遊ぶことが多いじゃないですか? 遊べば遊ぶほど、つねに携帯しているということもあってどんどんそういう機会が増えていくと思うんです。でも据え置き機の場合は、「遊ぼう」って思ったときのスタート地点は、“ひとり”からなんです。なので、“ひとりで遊んでいても楽しい”ってことが最低限保障されていないとゲームとしてよくないな、って思っています。
大塚 村とか村人がすごくそれっぽいから、シングルプレイでの寂しさみたいなのをあまり感じないですしね。
藤岡 村人として子供を描けたことが、じつはすごくよかったんだろうな、って思っているんです。いままでのシリーズはどうしても子供まで手を出せなかったので、いつも村にはおじいちゃんと若者しかいなかった。でもここに子供が加わると、グっと生活感が出てくるんですよ。村の中を子供たちが「わー!」って闇雲に走り回ったりしている姿も、ゲームの進行には関係ない部分なんですけど、けっこう好きだったりします。
辻本 子供たち、勝手に部屋に上がり込んだりしているよね(笑)。
大塚 そう!! すげえ侵入してくるんすよあのガキども!!
藤岡 しかも勝手に部屋の中をゴソゴソして何かを拾い上げたと思ったら、ポイって捨てたりして。「おまえ捨てんのかよ!!」みたいなね(笑)。
一同 (爆笑)
藤岡 そこにいるだけで癒されるような空間を作りたかったんですよね。プーギーもそうですけど、関わっているだけで気持ちいいじゃないですか。
大塚 モガの森とかクエストから帰ってくると、村長の居場所が毎回変わっているじゃないですか?
藤岡 はいはい(にっこり)。
大塚 あれだけで人間臭さを感じちゃうんです。
藤岡 村長、やたらとウロウロしてるんです(笑)。ひとりで海を見ていたり。僕は今回、村長がイチ押しですよ。いままで設計した村長の中で、いちばん好きかもしれません。
大塚 へぇ〜! そうなんだ! 村長と看板娘はいいですよ。
辻本 あの軽〜い看板娘ね!!
藤岡 軽いよね〜(笑)。
大塚 軽いんですけど、クエストに出発するときに手を振ってくれるじゃないですか? あのときの手の振りかたが微妙にかわいくて好きだ俺(笑)。
藤岡 手を振ってくれるだけで、なんかうれしいんですよね。
大塚 そうそう。
藤岡 そういう部分があるだけで、クエストへのモチベーションが上がったりしますよね。私利私欲だけじゃなく、関わっているだけで楽しい、って思えるほうが広がりがあっていいし。ゲームそのものに向き合うと、『モンハン』って数値が多くてシビアじゃないですか? だったらそれを取り巻くものについては、ゆるくてゆったりしたものを用意してあげたいんですよ。
次回に続く!
さてさて突然ですが、2009年8月6日に僕と江野本ぎずもは、都内にあるカプコンに赴きました。なんと『モンスターハンター3(トライ)』の開発、プロモーションの中枢である辻本良三プロデューサー、藤岡要ディレクターの両氏にインタビューさせていただくことになったのです。とは言っても、僕はまだこの時点ではハンターランクが“3”で、シングルモードも遊びこめていない……。しかし! 『3(トライ)』が発売されて間もないこの時期だからこそ、そして僕だからこそ聞けることがあるはずだっ!! ってことで、「わーいわーいインタビューだー♪」とハミングしながら指定の場所に向かったんですねえ。
というわけで、『3(トライ)』開発者インタビュー……というか、僕も含めた鼎談(ていだん)ですな。めっちゃ長い記事になったので、何回かに分けて掲載したいと思います。では、じっくりと読んでくださいな〜!
●“水中”の試行錯誤
大塚 えー、本日は僕がブログを連載しているファミ通.com用のインタビューってことになっています。……でもですね、藤岡さんと良三さんには打ち明けていますけど、本当に深いインタビューは僕がもっと『3(トライ)』をやり込んでから×××(自主規制)でやる、ってことになっていますので。
藤岡 ああ、そうですよね。
辻本 ……いやちょっと待って。じゃあ今日のインタビューはどうなんのよ(苦笑)。
大塚 今日はね……世間話しようと思って(笑)。
一同 (爆笑)
藤岡 『3(トライ)』を題材にした世間話をするのね(苦笑)。
辻本 あはは! そうなんや(笑)。
大塚 いやでもね、まだ僕は本当にやり込めていないんですよ。ハンターランクは3だし、シングルモードもやっとロアルドロスを討伐したところだし(インタビューは2009年8月6日に行われた)。……と言いつつ、まだそれくらいしかやれていない僕でも、この『3(トライ)』のすばらしさはひしひしと感じているんです。その範囲内になってしまいますけど、ちょっといろいろお聞きできればなと。
藤岡 はい、いいですよ。興味込みで質問しちゃってください。
大塚 やっぱり最初は、『3(トライ)』の開発経緯を聞かせてくださいな。『3(トライ)』って、3年以上まえから制作されているんですよね?
藤岡 3年半……くらいになりますねえ。
辻本 『2(ドス)』の制作が終わってちょっと休憩したら、って感じでしたからね。
藤岡 『ポータブル』シリーズも込みで『モンハン』の外の展開が増えてきたじゃないですか? それもやりつつだったので、ちょっと間を空けたんですよね。「もうちょっとゆったり考えようぜ」ってことになって。とにかく『2(ドス)』まで走りっぱなしで頭がパンパンになってしまっていたので1回リセットして、『モンスターハンター』ってものを改めて自分たちで客観的に感じれるくらいのんびりしようか、って……。そのあいだ、『ポータブル』チームが一生懸命がんばって『モンハン』ブランドを守ってくれていたので、僕らのほうは客観的に見る余裕が生まれたんです。
大塚 へぇ〜。
藤岡 そのころから“ナンバリングタイトルを作っておきたい”という思いは強くありました。
辻本 “据え置き機の続編でナンバリングタイトルを”という思いは『2(ドス)』が終わった直後からありましたよね。でも『2(ドス)』の時点で、現場の人間が真っ白になってしまうくらいやり尽くした……というか“詰め込んだ”と思っていたので、ちょっとリセットする時間を設けたんです。と言っても、1ヵ月くらいですけど。
大塚 で、リフレッシュ休暇を終えて開発チームで集合して……。
辻本 いろいろなアイデアを出し合いました。あれやりたい、これやりたい、というふうにね。その中にすでに、“水中”っていうキーワードがあったんです。
大塚 え? そんなに早くから?
藤岡 はい、最初からありましたね。ただ、水中は本気で導入しようと思ったらかなりたいへんだというのが感覚的にわかっていたので、早い段階で“水中ありき”で設計しないと作れないなって話になったんです。どうせやるなら、陸上と水中の行き来もシームレスにしたいじゃないですか?
大塚 ああ、画面切り替えじゃなく?
藤岡 そうです。水中に入ったらステージが切り替わる……ってのは興ざめだと思ったので。でも、なるべくシームレスに……って思うとふだん見えないところや行けないところも作る必要があったし、加えてつねに陸上と水中のことも意識しないといけなかったので、もう“やる”って決めたら早い段階から検証も始めてしまおうってことになりました。
大塚 そんなに早い段階からあったとは……。
藤岡 やっぱり、“何か”がないと発想がマンネリ化するなぁ……って思っていたんですよね。水中ができる、となるとそこを込みでいろいろ考えられるようになって、実際に海、水というものから船を導入するアイデアが出てきたりしました。発想の幅が広がるのを実感しましたよ。
大塚 ああ、わかる気がする。
藤岡 大塚さんはまだやられていないと思いますけど、『3(トライ)』のプロモーションビデオの最後に、デカい口を開けて襲ってくるモンスターの映像があったでしょう?
大塚 はいはい! ハンターが船に乗ってるやつ!
藤岡 そうです。あの発想も、「水中やろうぜ」ってことになってそこから“船”というものが出てこなかったら、生まれていなかったかもしれません。
大塚 アイデアを生み出す土壌が広がった、って感じなんですね。
藤岡 はい。やりたいことが増えた、チャレンジしがいのあることが増えた、って感じです。じゃあそれをやるならどうすればいいか? ということを考えて進められたんですよね。
大塚 なるほどねー。
藤岡 時間はかかりましたけどね。でも、やってみてよかったな、って思います。モンスターの種も増えますしね、水中が導入されたことで。
辻本 こういうタイミングでしか、大きなものは入れられないですからね。大きなものを入れるときの拠りどころって、「みんなワクワクしてくれるかな?」になるんですけど、『3(トライ)』の場合は「水中に入れたらワクワクしてくれるよな」だったわけです。……まあ同時に、「でもたいへんやろなあ」って思いましたけど(笑)。
大塚 そんな、人ごとみたいに(笑)。
藤岡 あとはゲーム的に見て、最終的におもしろくなければ意味がない。もっと言えば、“ゲーム的に『モンスターハンター』っぽくなってくるかどうか”がもうひとつの判断なんです。それを念頭に世界を設定し、モンスターも設計して……。
大塚 だんだん『モンハン』になっていったんですね?
藤岡 でも作り始めた当初の水中はもっと荒いもので、プレイにものすごく“慣れ”を要求する作りだったんです。それでも担当は「このまま作り込んでいけば遊べるようになると思いますよ」って言っていたので、じゃあやってみるか! となりました。で、2008年の東京ゲームショウのまえに、操作回りとかを全部整理しないといけない、ってことになって、いまの形に落ち着いたんです。
大塚 僕ずっと、「『3(トライ)』でイチから『モンハン』を作り直す」って聞いていたじゃないですか?
藤岡 ああ、そうですね。
大塚 でも、僕はゲームの作り手ではないので、たぶん藤岡さんたちが言っている意味をキチンと理解できていなかったと思うんです。でもね、実際に水中という新しい世界に触れて「あ、これなのか」って思ったんですよ。
藤岡 新しいモノが生まれそうな気配が出るんですよね。それが今回は、ステージ的にもモンスター的にも3分の1くらいは水中が絡んでくるんですけど、これがさらに発展性を持つのであれば、それに特化したゲームが作れるかもしれないじゃないですか? 『モンスターハンター』じゃなくてもね。そういったものに自分たちが挑戦してみるのはいいことだなって感じましたよ。
大塚 でも本当に水中って、いままでの『モンハン』にはない新しいプレイ感覚を提供してくれるじゃないですか? だからこそ逆に、既存の『モンハン』ファンに受け入れられるかどうかという心配はなかったですか?
藤岡 ありましたよー。だからこそ、すごく長い時間をかけて考えたんです。構想の期間を入れたら、丸々2年くらいはそのことばっかりでした(苦笑)。「これがおもしろくならなければダメだ!!」っていう考えだったので、必死だったというか……。でもさすがに慣れが必要なので、すべてが水中ってのはナシだろうなとも思っていたんです。でも、それがひとつのおもしろさになってくれるなら入れる価値はあるだろうなと。できあがったものは、なんとか満足のいくものにまで持ってこれたかなと感じています。気持ちいいし、操作的にもそれほど違和感なく遊べるし。モンスターとの立ち回りも、陸上とはどこか雰囲気が違う。そういうものになったなって思っています。
大塚 僕はまだロアルドロスとしか立ち回っていないのでデカいことを言えないんですけど(笑)、水中ってもっとね、モンスターとの軸がズレて、やり辛いだろうな、って思っていたんです。それが、高低の軸が思った以上にズレなくて、攻撃も当てにくさをさほど感じないんですよね。
藤岡 そうなってくれるように、ずっと調整していましたからね。画面の中にモンスターを捕らえることさえできれば、基本的にはモンスター側もそこにアプローチできるという設計に。水中でどんな体勢になったとしても、モンスターを捕らえていればなんとかなる、という感じがいいんじゃないかな、と考えて。でもコレになったのって、東京ゲームショウ2008の直前くらいだったんですよ。それまでは自分で軸も合わせる必要があるという、もっとマニアックなものだったんです。いまの形になったのは、“もっと遊び心地よく、もっと遊びやすく”という原点に立ち返って詰めをした結果なんです。
大塚 そのサジ加減ひとつで、『3(トライ)』はめちゃくちゃハードルが上がったと思いますよ。
藤岡 ああ、そうですね。本当にそう思います。慣れている自分らでも、そのマニアック仕様は難しかったですもん。でも一瞬だけ、すごくおもしろい瞬間もあったんです。ただ、おもしろくなる瞬間に達するまでのハードルがめちゃくちゃ高かったので、こりゃ根本的に何かを変えなけりゃ無理だな……ってなったんですよね。そこからいろいろと詰めていった結果が、製品版の仕様なんです。でも、だいぶギリギリでしたよ。
辻本 ものすごくギリギリでしたよ(苦笑)。だって、1ヵ月まえですよ、東京ゲームショウの。チェックもしなきゃいけなかったので、それ以上は待てなかったんですよ。
大塚 プロデューサー的には、気が気じゃなかった?
辻本 「まあなんとかしてくれるでしょ」って思ってた(笑)。
大塚 あはは! 信頼関係のタマモノですね(ニヤリ)。
辻本 そうですそうです! 僕はただ「ここ(東京ゲームショウ)には出すよ」って言うだけで(笑)。
大塚 あははは!
藤岡 でもね、辻本はテストプレイヤーとしてはすごくよかったんですよ。つねづねディープに触っていたわけじゃなかったので。僕らはずっと作って、触っているから、それがおもしろいのかどうかがわからなくなってくるんです。
大塚 ああ、それはわかる!!
藤岡 で、そのうち辻本は「やらせてやらせて」ってしょっちゅう見に来るようになって、気がついたら違和感なく水中でも遊んでいたので、「これならいけるかな」って思ったんですよ。
大塚 良三さん、初めて水中で遊んだとき、どう思ったんですか?
辻本 僕にとっては“違和感なく遊べるかどうか”ってことがいちばん重要だったんです。だから触らせてもらったときも、何の先入観も持たずに、ふつうに遊んだんですね。そしたら、「いい」とか「悪い」とか考えることもなく、本当にナチュラルに遊ぶことができたので、その時点で“いける!”って思いましたよ。
大塚 へぇ〜。
辻本 つぎのステップは、そういうふうにニュートラルに考えている僕がモンスターに攻撃を当てられるかどうか、なんですよね。ここで問題になるのが距離感とカメラ操作。距離感に関しては操作してみて、(もうちょっと近づけば当たるな)ってのが頭に入ってきて、(いまの届かんかったから、もう1歩くらい近づいてみよう)というのが感覚的にわかった。カメラ操作に関しては、ヌンチャクでやってたからリモコンのほうにカメラ操作がある(十字キー)じゃないですか? それがすごくフィットして、ああやりやすいな、って思ったんですよね。
大塚 フリースタイル操作(Wiiリモコンとヌンチャクを使った操作のこと)のときって、水中の操作がすごくやりやすいですよね。
藤岡 むしろ水中操作は、「クラシックコントローラはどうしよう?」ってのが課題になっていたくらいですからね。ずっとWiiリモコンとヌンチャクで作っていたので、水中での動きはこっちに特化したものだったんです。クラコンを対応させることは決まっていたんですけど、いざ操作を当てる段階になって「どうしよ?」ってなったんです。……まあなんとか、最低限は同じように遊べるようになりましたけどね。
辻本 Wiiリモコンとヌンチャクで問題だったのは、「Cボタンって、どこ?」って、ユーザーがボタンの位置と名前を意識していないことだったんですよね。
藤岡 そう。ボタン配置に慣れていないんですよね。+(プラス)ボタンって言われても「ど、どれ?」ってなりますし。コントローラが変わると部位の名称も変わりますから、トリガー部分のことをBボタンってなかなか意識していないんです。でもこれは、慣れてもらうしかないんですよね。PSPのときも、□とか△ってどれ? ってなりましたから。なので、生理的に押しやすい場所にボタンがあり、それを押すことで反応してくれることだけを考えて、制作チームで、こっちじゃない、あっちでもない、って試行錯誤をしていました。
●新たなインターフェース
大塚 このWiiならではの操作系、インターフェースって、水中を導入するのと同じくらい、大きな課題だったんでしょうね。
藤岡 でもね、おもしろかったんですよ。意外に思われるかもしれませんけど、「まあなんとかなるかな」って思っていたんで。
大塚 ああ、そうなんですか。
藤岡 まあ、頭が痛かった部分もありますけど。ボタンは少ないし、アクションゲームなんで遠いボタンにはアサイン(割り当て)し辛いし。遠いボタンにアサインしちゃうと、咄嗟に反応させるのがきびしくなるので。となると、瞬時に押せるAボタンにどれだけ動作を集約されるか、ってことになるんですよ。少ないボタンで全部の動作をやらせたい、って思ったときに、Wiiリモコンの場合はそれこそAボタンがあればいろいろとできたので、「これはいいかもな」って思ったんですよね。「なんとかなるもんやな」って(笑)。
大塚 ずっと気を揉んでいたんですよ。プレイステーション2版もPSP版も、あれだけたくさんあるボタンをすべて使って操作させているじゃないですか? それをどうやって、ボタンの少ないWiiリモコンに落とし込むのかな? って。
辻本 僕もね、あるとき藤岡に「操作ってどうする?」って聞いたんですよ。そしたら「ひねりを使う」って言うんです。それを聞いたときに、「あ、いけるかも」って思ったんですよね。
大塚 ああ、そうなんですか。
辻本 「その発想でいくんや!!」って。みんなあまりなかったと思うんですよ。ひねりを使うという発想が。これだったら動作も少なくて済むし、疲れも少ない。「おもしろくなるかも!」ですよ。
藤岡 研究段階で、プログラマーやプランナーらといっしょにWiiのいろいろなソフトを遊んでみたんです。どういう検知ができるのか、ってことがわかっていなかったのでね。で、ひねりを使った検知のしかたがいちばん信号もとりやすく、しかもアナログ感があって疲れにくかったので、「いいなあ……」って思って。
大塚 もっと激しくWiiリモコンを振るっていう選択肢は?
藤岡 そういう使いかたにしちゃうと、長時間遊びにくいと感じていたのと、基本的な姿勢にすごく依存することになっちゃうので難しいなと。ただ、“振る”という動きは気持ちよかったので、どこかで使いたいとは思ったんです。自分の気持ちが入っているときにエイって振って剣がズバンて出たりすると気持ちいいじゃないですか? そういうところだけは残したいなと。
大塚 それが、武器出し攻撃とかになっているんですね。
藤岡 そうですそうです。片手剣だと、ジャンプ斬りとかに入れてありますね。何回もやることじゃないんですけどたまに使う行動に入れ込んであるので、なんか気持ちいいんですよね。でもけっこう気も遣っていて、振らなければ出ないという動きは存在しません。振らなくても、ボタンとの組み合わせですべての動きを行うことができる。二重に操作アサインを置いているんです。そこはユーザーが「こっちがいい」と選択してもらえればいいなと。
大塚 本当に、幅が広いですね。
藤岡 どれかに傾倒してしまうことはやめよう、ってことで作っていましたからね。クラコンを導入したのもそうですよ。“Wiiリモコンとヌンチャクでなければ遊べない”という状況は避けたかったので。
辻本 究極のことを言ってしまえば、機能があるからってそれをすべて使う必要はないんですよ。もしもこれで、振る操作が気持ちのいいものじゃなければ、使わなければいいんです。コントローラありきじゃなく、あくまでも出発点はプレイヤー側にあるべきなので。
藤岡 振りは、入れてみてよかったですよ。家族で『3(トライ)』を遊んでいる風景を見ていると、子供が楽しそうにWiiリモコンを振っていますから。そのときの子供の声が、楽しそうなんですよね。画面でどんなことが起こっているのかなんて二の次で、ただ振ってるだけで楽しいという感じで。
大塚 僕、いまランスを使っているんですけど、1回Wiiリモコンを振ると武器出し攻撃をするじゃないですか? ここからさらにWiiリモコンをブンブンって振ると中段突きをしますよね?
藤岡 はい、そうなってますね。
大塚 これ、べつにWiiリモコンを振らなくてもAボタンを押せば同じことをしてくれるので振る必要ないんですけど、「コンニャロ!」って気合が乗っているとついボタンじゃなくてWiiリモコンを振っちゃうんですよ(笑)。
一同 (爆笑)
大塚 自分のテンションとWiiリモコンの操作が、すごくリンクするんだよなー。
藤岡 そう、自分の気持ち次第なんですよね。そのときに「いい!」と思える操作で攻撃なりをしてもらえればいいんです。なので思いますよ。「Wiiリモコンとヌンチャクって、いいコントローラなんだなあ」って。
大塚 でも具体的な操作方法が発表されるまえは、双剣だったら両手を上に上げて鬼人化して、ブンブンと振り回すんじゃね? とか、さんざん言われていましたよね(笑)。
辻本 言われてた言われてた!!(笑) 肉を焼くときは、Wiiリモコンをグルグルと回すんじゃないか? とかね!
大塚 そうそう(笑)。でも対応ハードがWiiになったってだけで、ユーザーにいろいろな想像をさせましたよね。
藤岡 そうなんです。でもそれって、いいことなんだなと思いますよ。そういう意味でもWiiリモコンは、インターフェースとして優れているのかもしれませんね。発想力がバーっと広がって、そこから取捨選択することができるので。
大塚 初めて大阪の開発部に行って藤岡さんがWiiリモコンをひねって操作している姿を見たとき、ぶったまげましたもん。
辻本 『モンスターハンター』を初めて遊ぶ人は、Wiiリモコンとヌンチャクのほうがとっつきやすいかもしれませんね。また、昔からのハンターでクラコンで遊んでいる人たちも、気が向いたらWiiリモコンも持ってみてほしいなと。すごく新鮮な気持ちで遊べると思うので。
藤岡 採取とか気持ちいいんですよ。ヌンチャクをプルプル振るだけで掘ったりしてくれるので。
大塚 そう!! 以前良三さんと話をしたときに、「俺、採取のときヌンチャクを振ってるだけっすよ」って言ってたのを思い出して、俺もやってみたんですよ。そしたら本当にハンターが一生懸命掘ってくれたので、最近はそればっか(笑)。
藤岡 酒飲みながらでも採取くらいならできますよ(ニヤリ)。
大塚 あははは! 好きな体勢で遊べますよね。最近会社で遊ぶときは、椅子の背に腕を引っ掛けた超ダラけ姿勢でやってますもん。
辻本 あー、そうなりますよね。
藤岡 慣れてくると、体勢に緊張感がなくなってくるんですよね。
大塚 でも大型モンスターが出てきたときだけ、ピシっと姿勢を正してます(笑)。
藤岡 ちゃんとせなアカン! ってなるのね(笑)。まあインターフェース側の楽しさですけど、『3(トライ)』はそれができたかな、って。
辻本 それは大きいですよね。Wiiで、操作として新しいものが入れられたのは。『モンスターハンター』として、大きな出来事ですよ。いままでの安心感にプラスして、操作でも新鮮さも導入できたので。
次回に続く!
【MH3】第17回 少年の夏のラギア
先日(と言ってもけっこうまえだが)、まもなく発売を迎える『角満式モンハン学〜ハンター編〜』(9月3日発売!)の追い込み作業の合間を縫ってシングルモードの拠点、モガの村に降り立った。満足いくプレイ時間を確保できずに焦りまくっている俺だが、モガの村にやってくると不思議と焦燥感が消え、急に牧歌的な心持になって「齷齪せず、のんびり狩っていればいいやぁ〜」というモードになるからおもしろい。モガの村には独特な“南の島時間”が流れていて、俺のようなベテランハンターをしても狩猟クエストよりも採集クエストやモガの森にピクニックに行くことに心奪われるのだから、この世界観の懐深さには驚かされるというものだ。
その日俺は、基本中の基本となる★1のクエスト“美味なるキモを求めて”を受注した。孤島の海に潜って、そこで泳いでいる草食種“エピオス”から“モンスターのキモ”という素材を持ち帰るクエストだ。以前書いたが、俺は『3(トライ)』の水中で泳ぐことが大好きなので、気分は完全にバカンスである。
「イャッホーイ!!!」
俺は海水浴に向かう少年のようにはしゃぎながら、大自然の懐であるフィールド・孤島に飛び出した。すぐに海に飛び込んでモンスターのキモ集めをしてもいいのだが、自然の恵み豊かな孤島において慌ててクエストだけをこなして村にとんぼ返りする……というのもつれない話である。俺は、エリア2→1→3→7→8をスキップしながら巡り、ハチミツ、アオキノコ、薬草、鉄鉱石、マカライト鉱石といった、序盤を駆け抜ける上で重要な素材たちをヨダレを垂らしながら集めまくった。
孤島は、エリア10、11、12がいわゆる“海水浴ポイント”で、マリンブルーの海の中でお魚さんたちと戯れることができる。ぶっそうなサメやら“ルドロス”という肉食の海竜種が泳いでいることもあるが、本当に泳いでいるかのような開放感と気持ちよさは、いままでの『モンハン』にはまったくなかったものだ。
俺は海ナシ県として知られる群馬の西の外れで少年時代を過ごしたので、海に関する思い出がじつに希薄だ。でも『3(トライ)』の海中で泳いでいると、いつも脳裏に鮮明に蘇るシーンがある。
俺が生まれ育った場所は、少年角満が子供だった昭和50年代から平成の始めのころまではそれはそれは自然が豊かで、水量が豊富で流れも穏やかな川が何本も町を縦断していた。川はどれもとてつもなく水がキレイで、夏になると流れの緩やかなポイントは子供の野外プールと化して賑わっていたものである。
そんな少年時代のある日、俺は仲間とともに穏やかなワンドになっているポイントで素潜りをしていた。空洞状に大きな隙間が開いた巨大な岩が転がっている場所で、そこが格好の魚の棲家になっていたのである。
そして、俺はそこで無数の“眼”を見た。水深3メートル以上もある場所だったが澄んだ水は真夏の陽光を抵抗なく深場まで届かせ、巨大岩の隙間が思いのほか明るかったのをよく覚えている。その隙間には何百、何千という数のウグイ(土地の言葉で“ハヨ”と呼んでいた)とオイカワ(同じく“アイキョウ”と呼んでいた)がいて、彼らの眼が降り注ぐ太陽の光にキラキラと乱反射して、じつに神々しい光景を俺に見せてくれたのだ。子供心に思ったものだよ。「夜空の星を見てるみたいだ……」ってね。
『3(トライ)』の海にザブンと飛び込み、たくさんの魚を追いかけたり水の中から海面を見上げるたびに、俺はこのときのことを思い出す。このゲームで泳がなければ、少年時代に見た神秘の光景はいつまでも思い出の引き出しから出てこなかったに違いない。
と、美しい(?)思い出を語ったところで本題に入りたい。俺は孤島のエリアを2→1→3→7→8と回ったわけだが、これにはキチンとした理由がある。エリア8からは崖を飛び降りてエリア11の海に直接飛び込むことができるのだが、これがサイコーに気持ちよくて、俺は孤島で海に行くときは必ず、わざわざエリア8に行ってからエリア10の海に飛び込むことにしているのである。
そして俺はいつものとおり、エリア8からエリア11の海にザブンと飛び込んだ。いやぁ〜、やっぱり気持ちいいな。この泡立つ白い気泡がなんともリアルで……って、アレ? 画面が止まって、いきなりギルドの看板娘のカットインが入ったんですけど……。なにやらやたらと慌てたふうなんだけど、いったいどうしたの……? ドキドキしながら看板娘のセリフを読むと……え? あ、あんた何言ってんの……!? 看板娘はいつもの元気な口調のまま、信じられないことをのたまった。
「ラギアクルスがいるから気をつけて!!!!!」
ちょ……。そういうことはクエストに出るまえに言って!!! 何の危機感も持たず、能天気に「わっほーい♪」とか言いながら海中に飛び込んじまったじゃんよーーー!! で、でもラギアクルス、俺が飛び込んだエリア11にいるとは限らないよな……。なんとなく、本来の海の入り口となるエリア10か、最奥部のエリア12にいる気がする。ていうか、そう思いたい。中途半端なエリア11とかにいないよナ。そうだそうだ。そうに違いない。
しかし、俺は見てしまった……。
我が分身の斜め下にあたるエリア11の海底付近に、“忌まわしい”としか形容のしようがない青くて巨大な生き物がグネグネととぐろを巻いているのを……! ら、ラギアだ……! ラギアクルスだっ!!! インナーにアイアンランスという初期装備の俺と同じエリアで、『3(トライ)』の象徴たるラギアクルスがとぐろ巻いてるよおおお!!! 俺は37歳の健康な男子とは思えない情けない悲鳴を上げた。
「きぃやぁあああ!! ラ、ラギアクスルがイルーーー!!」
思わず言い間違えてしまうほどの恐怖が、俺の五体を貫いた。このとき、俺は情けないことに本気でうろたえてしまい、一瞬でWiiリモコンとヌンチャクでの操作が頭からブッ飛んでしまった。錯乱してガチャガチャとボタンを押すだけになってしまい、画面上の分身は手と足をバタバタと動かすだけで一向に前に進んでくれない。そうこうしているうちに、ゆっくりとラギアクルスがこちらを向いて……!!!
「バォォォオオオオオ!!!!!」
海底地震を思わせるラギアクルスの怒りの咆哮に、金縛りに合ったように動けなくなる我が分身。あわわわ……。ど、どうしよう!! いままさに、ラギアクルスはその巨体を青き魚雷と化してこっちに突っ込んでこようとしている。も、もうダメだ!! そう思ったとき、俺はある光景を思い出していた。
いまから15年ほどまえ、俺は伊豆七島に行くことを毎年夏の楽しみにしていた。なかでも八丈島が大好きで、美しい海で潜り、おいしい島寿司やクサヤに舌鼓を打つことに至上のヨロコビを感じていたのである。
その年も、八丈の海はじつにキレイだった。海水浴場でもけっこう深い場所があり、俺と仲間たちはそこで水中眼鏡を装着して、水の中を覗いたり、泳いだりして遊んでいたのである。
そんなあるとき、いっしょにいた仲間が顔を青くして、「いいいいま、下を見ないほうがいいよ……」と震える声で俺に言った。そこは水深5メートルくらいある場所で、ちょっと覗くと美しいサンゴやたくさんの熱帯魚がゆらゆらと泳いでいる姿を眺められる格好のポイント。俺は憤慨しながら友だちに言った。
「なんで見ちゃダメなんだよ。ずるいぞ、おまえばっかり」
そう言って俺は友だちが静止するのも聞かず、ザブンと海中に顔を沈めた。やはり、ここは格別なポイントだ。ゴロゴロ転がる岩とサンゴの世界で、チョウチョのようにかわいらしい熱帯魚と、グネグネと蠢く巨大なウツボが獰猛そうな顔を覗かせているよ^^ ……って、ウツボが俺の鼻先にいるーーー!!!! しかも、超でっかいんですけどーーーー!!! 俺はとたんにキモを潰して海面に浮上し、すでにクロールで逃走していた友だちに「ききききったねえ!! ひとりで逃げて汚ねえぞおおお!!」と毒づきながら手足をバシャバシャと醜くバタつかせ、なんとか海岸まで戻ったのだった(いま思うとそんなに慌てる必要もなかったのだが、なにぶん、海に慣れていないもので……)。
という10年以上まえに起こったウツボショックを、ラギアクルスと遭遇したわずかな瞬間に鮮明に思い出した俺。そして、「ああ。これがピンチのときに見るというフラッシュバックってやつなのか」とちょっと冷静になった刹那、青き魚雷となった海洋の王にタックルされ、我が分身は海の藻屑となったのでした。
※今日、もう1本ブログアップするので、読み逃さないように!!
『3(トライ)』に出てくるモンスターについて詳しく述べられたありがたい資料(週刊ファミ通って名前だ)を紐解くと、クルペッコは見た目どおり“鳥竜種”に属するモンスターで、その美しい体色から“彩鳥”という異名を持っているという。さらに資料を読み込んでいくと、クルペッコはモンスターの鳴きマネをしたり、両翼に備わった火打石を打ち合わせたりと、なかなかにして賑やかな行動を取るらしい。夏祭りのこの時期にはピッタリのモンスターではないか。
それにしても、である。
所詮こやつは、最初に登場する大型モンスターだ。ウルトラマンで言えばベムラー、『スラムダンク』で言えば三浦台高校みたいなものである。要するに、さほど気に病まなくても余裕で突破できる相手、ということだ。このへんのことは、昨日のエッセイでもさんざん触れましたね。
孤島にやってきた俺たち4人は、「ま、とりあえず……」と居酒屋に入って真っ先にビールと枝豆を注文するかのような当然の流れでハチミツやアオキノコを採集し、鉱脈にピッケルを打ち込んでゴロゴロ出てくる石ころやマカライト鉱石に一喜一憂した。気分は完全に美しい自然を満喫するピクニックで、このへんにも俺たちの心の余裕が見て取れる。これまでの『モンハン』シリーズをやり込んできたという自負から生まれた、絶対的な自信のなせる業であった。
しかし、俺は忘れていた−−。
初めて『モンハン』に触れた5年まえ、最初に現れた大型モンスター、イャンクックに、「こんなやつ、ぜっっっったいにひとりじゃ狩れねえ!!」と絶望のどん底に叩き落され、「もういいっ! あきらめた!!」と本当に半べそかきながら絶叫し、引退直前まで追い詰められたあの日のことを……。その後、自分が成長してからのフィルターを通してモンスターを見るようになってしまったがために、「最初の相手は弱い」、「余裕で狩れる」という“勘違い”が刷り込まれてしまっているのだ。
4人揃って仲良く孤島のエリア5に行くと、遠くで1頭の鳥がクイックイッと頭を前後に揺らしながらのんびりと歩いている姿が目に飛び込んできた。その歩きっぷりは、酔っ払いが「ダチョウのマネ!」とか言って右手を口の前に、左手をお尻の後ろに構えてクイックイッと身体を揺らしながら歩く姿によく似ていた。
「さあさあ、クルペッコがいましたよ〜!! こうなったら、ペッコペコにしてやるしかないですよ大塚さあん!!」
とゴメさん。彼のキャラクターは肌の色が限界まで黒く、しかも防具をつけていないインナー姿でランスを手にしているので、どっからどう見ても槍を携えた精悍なマサイの戦士である。俺たちは先頭を切って走るマサイの戦士に負けじと「よぉぉぉおおし!! ペッコペコだペッコペコ!!」と何日もモノを食っていないんじゃないかと勘違いされるような鬨の声を上げ、グンカンドリを思わせるユニークで緊張感のないルックスをしたクルペッコに襲い掛かった。しかし……。
がきーんがきーんがきーん……
か、堅てえ!! く、クルペッコ、堅てえええ!! ……ていうか、アイアンランスもハンターナイフも斬れ味壊滅でまったく斬れないんですけど!! 俺はとたんに悲鳴を上げた。
「ちょっと!! ペッコペコどころか、ガッキガキで刺さらないんですけど!!」
ゴメさんも江野本も「うは!!」とか「ぎゃあ!!」とか短い悲鳴を発しながら、ガキンガキンと攻撃を跳ね返されている。うーん、こいつはどうしたもんだか……。
それでもちょっと冷静になってクルペッコの行動を観察し、動きを止める瞬間や隙を見せるタイミングを見計らって、肉質が柔らかいと思われる頭部や胸のあたりを攻撃した。うん、このへんならどうにか攻撃も刺さるぞ。俺たちは1回でも攻撃を食らうと半分近く体力が減ってしまう裸の身体をいたわりながら、どうにかこうにかクルペッコに攻撃を当て続けた。よし! この調子だったらなんとかなりそうだぞ!!
しかしあるとき、クルペッコが胸の袋を大きく膨らませて「アォアォーーー!」と鳴き始めた。どうやらこれが、ウワサの“鳴きマネ”のようだ。『G』についてた体験版ではときたまリオレイアの鳴きマネをして度肝を抜いてくれたものだが、でもそれはごくたまにで、クルペッコが呼び寄せるモンスターはジャギィやドスジャギィが関の山だろう……と思っていた。このときも、上空からバサリバサリとリオレイアがやってくる気配はなく、俺たち4人のあいだにそこはかとない安堵の空気が充満した。
ところが……。
最初にその異変に気づいたのは、江野本ぎずもだった。孤島フィールドのエリア9でクルペッコを追い詰め、さあいよいよフィニッシュか……というタイミングで、江野本が本気の怯えを含んだ震える声で、こう言ったのだ。
「あ、あれ何…………!?」
そう言ったが早いか江野本のキャラは急に方向転換し、一心不乱にエリアチェンジをするべくクルペッコに背を向けて走り出したではないか。好奇心旺盛で、こう見えてなかなか勇猛な江野本にしては珍しい行動である。な、なんだなんだ?? どうしたんだ!? 俺は、瞳孔が開いてしまうほどの恐怖の色を貼り付けた江野本の顔を見て、恐る恐る声をかけた。
「ど、どうしたの? えのっち……」
すると江野本はカタカタと歯を鳴らしながら青白い顔を俺に振り向け、かすれた声をどうにかこうにか絞り出し、あえぎあえぎこう言った。
「か、壁……!!」
え? か、カベ? 壁に何があるんだ……? 俺はどうにも気になってクルペッコと立ち回りながら強引にカメラを操作し、灰色の壁を視界に捉えた。すると、壁……と言うか、切り立った岸壁に口を開けた小さな穴から、信じられないモノがニョッキリと生えているのが目に飛び込んできて…………!! 俺は声にならない悲鳴を上げた。
「$Ωβ△×θγ!!!!」
そして、俺と同じタイミングでゴメさんとジャッ君も、壁から生えてる“忌まわしき存在”に気づいたらしい。会議室に飛び散った、言葉にならない無数のビックリマーク。このときの室内の雰囲気を強引に文字にするなら、
!!!!!!!!!!!!!!!!!!
!!!!!!!!!!!!!!!!!!
!俺!!!江野本!!ゴメ!!ジャッ君!
!!!!!!!!!!!!!!!!!!
!!!!!!!!!!!!!!!!!!
ってところだろうか。俺たち4人は一瞬だけ止まってしまった時の中で顔を見合わせ、同時に同じセリフを叫んだ!
「や、やわらかライオンがいるーーーーー!!!」
“やわらかライオン”とは、初めてその姿がプロモーションビデオで公開された日から俺たちのあいだで流布する、とあるモンスターのニックネームである。その正体は……そう!! ロアルドロス!!! く、クルペッコって、こんなヤツも呼び寄せるんかい!! どんだけ他力本願なんだおめえはよおぉぉおお!!!
この、ロアルドロスが岸壁の穴から顔を覗かせているのを見てしまったときの恐怖は、筆舌に尽くしがたいものがあった。でも本当に筆舌に尽くしてしまうとコラムが成立しなくなるので強引に表現してみるが“まったく予期せぬ場所で幽霊に遭遇してしまったときの驚き”と言えば伝わるであろうか? たとえば、何ヵ月もまえから楽しみにしていた南の島へのバカンスに向かうとき、飛行機の下に広がるトロピカルブルーの水面をウキウキしながら眺めていたら、マッハの勢いでクロールをしながら死んだじいちゃんの幽霊が空を飛んでいた……なんてのを見てしまったら肝を潰しまくると思うのだ(もしくは、恐怖を通り越して爆笑する)。そのときと同じくらいの恐怖を、壁から顔を覗かせたロアルドロスに感じてしまったのである。
そして、楽しいはずの孤島のピクニックは、突如現れた水獣のせいで地獄の世界と化した。ロアルドロスがどんな動きをするモンスターなのか、1ミリたりとも知識のない4人はネロンネロンと柔軟すぎる動きをする巨体に翻弄されて、1オチ、また1オチと屍の山を築いてゆく……。そして気がついたころには、クルペッコをペッコペコにするどころかロアルドロスにドロンドロンにされて(意味不明)、呆然としたままロックラックに強制送還されてしまったのだった……。
やっぱり『3(トライ)』は、いままでの『モンハン』とはひと味もふた味も違うぞ……。
失敗することでしか成長できないテキトー軍団は砂嵐吹きすさぶロックラックで、明日のリベンジを誓うのだった。
いまだソフト発売初日(2009年8月1日)の開封式から脱出できません。でも、書くことがいろいろあるからこれでいいのだ。ホント、『3(トライ)』はネタの宝庫でありますよ。
俺、江野本ぎずも、ゴメさん、Effort Cristalのジャッ君はわいわいぎゃあぎゃあと騒ぎながら、“ケルビの角の納品”、“ジャギィたちを狩れ”、“孤島の海中探索”といった★1のクエストを順調に消化していった。序盤もいいところのクエストなので当然のように派手さはないが、たとえば海中探索では海に潜って魚たちと戯れながら宝探しをしている気分になるし、ジャギィを相手にしているときは昨日のエッセイに書いたとおり新たな思考回路を持ったモンスターの一挙手一投足に目を奪われた。どのエリアに行っても驚きや感動が転がっている気がして、俺たち4人は有頂天になりながらクエスト遂行には関係のないエリアにも足を伸ばして、わいのわいのと大騒ぎした。気分は完全に冒険家。孤島の爽やかな風に吹かれた俺は、とたんに少年時代に憧れたリビングストンやインディー・ジョーンズになった。
そしてこういったクエストをいくつかこなしていると自動的に、「ぼちぼちデッカイのに行っちゃいますか!!」という話になる。このときがまさにそうで、我々は裸同然の格好をしているくせに「いこういこう!」、「なんでも狩ってやりましょう!」、「余裕余裕!!」と身の程知らずもほどがあるセリフを連発したのである。でもね、これがハンターっちゅうものなのヨ。狩りが順調に進むほどもっともっと高く跳べる気になってしまって、順番的にはキチンと装備が整ってから挑んだほうがいいクエストなのはわかっているくせに、「よし! 狩ってやる!!」と怪気炎を上げて“まだ早い1歩”を踏み出してしまうのだ。とくに、気の置けない仲間といっしょに遊んでいるときにこの傾向が強く出て、「俺ひとりじゃ及ばないかもしれないけど、こいつらといっしょだったら大丈夫!!」って気になってしまうんだよねえ。まあそれが“対戦”ではなく“協力”の思想のもとに作られている『モンスターハンター』ならではの気持ちの動きなんだけどな。
我々4人はクエストカウンターのおねえさんに話しかけ、「こやつこそイャンクック的な“先生モンスター”に違いない!!」と勝手に決めつけた“クルペッコ”という名の鳥竜種のモンスターを討伐するクエストを受注した。“という名の”なんて書くと、まるで俺が初めてクルペッコの存在を知ったかのように読めてしまうがもちろんそんなことはない。『3(トライ)』の体験イベントやWii版の『G』についてきた体験版でもクルペッコとは遊んでいたので、どちらかと言うと“かなり深い仲”だったりする。いつも酒の誘いを断る若手記者のキモ次郎と比べてプライベートでどちらと仲がいいかと問われたら迷うことなく「クルペッコッ!!」と即答できるくらいの間柄だ。ま、そんなことはどうでもいいや。
クルペッコに往年のイャンクックの面影を重ね合わせている俺たちのスタンスは、完全に“上から目線”ってやつである。しかし自分で言うのもナンだが、ある程度装備が整ってきた段階でそうなるのならいいんだけど、まだ数クエストをこなしただけの俺、江野本、ゴメさんの格好は目を覆いたくなるような惨状であった。武器は、俺とゴメさんがアイアンランス、江野本に至ってはハンターナイフ……(苦笑)。しかも3人とも防具はひとつも着けていないという、新宿の街を歩いたら一発で「ちょっとちょっと……」と声をかけられてしまうような出で立ちなのだ。この有様で「余裕で狩れる!」なんてわめいているんだから厚顔無恥もはなはだしいではないか(自分で言うな)。それでもちょっとくらいは良心も残っていて、「……せめて回復系くらいは奮発しよう」ってことになり、ナケナシのゼニーを叩いて回復薬を10個購入。拾い集めておいた薬草10個も懐に忍ばせて、俺たち4人は『3(トライ)』では初となる大型モンスター打倒を夢見て、一路、孤島へと向かったのであった−−。
さてここから、神秘と驚きと爆笑に満ちたクルペッコとの生存競争が始まる。が、ちょっと短いけどキリがいいので、続きは明日としておきますか。お楽しみに〜!
というわけで、久しぶりの“正調”『3(トライ)』プレイ日記です。ネタはいっぱいあるのにアウトプットが追いつかず、書く側の俺も悶々としておりましたよ。
さて、オルタロスのオナラにいつまでもたまげているわけにもいかないので、俺たちはつぎなるターゲットを求めてクエストカウンターに取り付いた。ズラリと並ぶ基本中の基本となるクエストたち。その中から俺、江野本、ゴメさん、ジャッ君の4人は★1のクエスト“牙むく群れの長を狩れ!”を受注した。肉食モンスター、ジャギィ一族のドンであるドスジャギィを討伐するクエストである。「何をいまさら!!」なんて言わないで。
でもまあ、我ながらいまさら感アリアリの内容になりそうなので、具体的なドスジャギィ討伐時のアレコレは封印することにします。じゃあ何を書くつもりなんだ! ってことになりますが、俺がここで取り上げたいのはドスジャギィではなく、そのまわりでピョンピョンと跳ね回っているジャギィどもなのである。
ジャギィはこれまでの『モンハン』シリーズで言えば、ランポス的な位置づけのモンスターということになろうか。ハンターの前に最初に現れる肉食モンスターにして、優秀な頭脳を以って小ズルく立ち回る油断ならない相手……。そんな位置づけにあるモンスターだと思う。
しかしベテランハンターはここで、「なんだ。ランポスに近いモンスターなのか」と急激に上から目線になるに違いない。そして「その程度の存在ならば、防具をひとつも着けていない裸同然の格好でも遅れをとることはあり得ぬ」と、赤ん坊相手に凄む範馬勇次郎のような心境になろう。だって、俺がそうだったから。「ドスジャギィがビックリするほど手強い」というウワサはどこからともなく流れてきていたが、ドスジャギィと比べて遥かに体格が小さく、それに比例して体力も少ないジャギィにどうにかされる俺ではない。そう確信していたのである。
ところが。
このジャギィというモンスター、なかなかどうしてひと筋縄ではいかない。これまでのシリーズに出てきたランポスやゲネポスといった同じ鳥竜種の小型モンスターと比べても、その頭脳と、そこから生まれた“組織力”がとてつもなく秀でているのである。
思い起こせばランポスらも、オウオウオウと呼び声をあげて仲間を招集する行動をとることがあった。しかし呼ばれてやってきた仲間たちはとくに連係することもなく、言ってしまえばバラバラに直線的に動いてハンターに襲い掛かってきていたものだ。ところが、このジャギィは違う。動くハンターを中心にして円を描くように連なって走り、横から、そして正面からカプカプと噛みついてくるのだ。これ、とてつもなく鬱陶しい。とくに俺などは、点で攻撃することがメインのランスを使っているので、円軌道のジャギィの動きになかなか攻撃を合わせることができず、辟易させられることがしばしばなのである。こういった動きに対してランスにも“なぎ払い”という攻撃が追加されてはいる。が、いまだうまい具合に使いこなせていないのでついつい「うがあああ!!!」とキレてやたらとWiiリモコンを振り回し、俺の攻撃から軸をズラしてほくそ笑んでいるジャギィを横目に誰もいない虚空に向かって「うりゃうりゃ」と空突きをお見舞いしている有様だ。思わず、俺は悲鳴をあげた。
「こ、このジャギィども、俺より頭いいよ!!」
新たに構築された『3(トライ)』という新しい世界観の中でしっかりと立つために、こういった小型肉食モンスターも生きるための知恵、術を身につけているのであろう。
それにしても、ジャギィどもの姑息で確実なヒットアンドアウェイには手を焼く。あまりにも絶妙なタイミングで「カプ♪」っと噛んできやがるものだから、思わず全身に鳥肌を立てて「むつつつつ!」と言いながら身もだえさせられてしまう。
今日もジャギィは、俺が回復薬を飲もうとしたり、砥石で武器を研ごうとするそのタイミングで円軌道の接近を図り、カプカプと甘噛みをしてくる。
カプ♪
「はう!」
カプカプ♪
「はうう!!」
カプカプカプ♪♪
「はうううう!!!」
思わず別の意味で昇天しそうになりながらも俺は思った。
「こいつらとは、長い付き合いになるんだろうなぁ」
と……。
【MH3】第13回 福島酔いどれ弾丸ツアー その3
今回の福島ツアーはわずか1泊2日の旅程だが、俺と萩原さんの荷物はなぜかやたらと大きく、そして重かった。これくらいの年齢になると身体のケア用品がかさ張って自動的に荷物が多くなる……というわけでもなく、お互いカバンに入っていた衣食住関係の必需品は、1泊分の着替えと歯ブラシ程度のものである。
ではなぜ、揃いも揃ってでっかい荷物を抱えていたのか? あぶくま洞見学を終え、今回のツアーの宿泊先となる老舗旅館・吉川屋に向かう道すがら、俺はキラリと目を光らせながらヒソヒソ声で萩原さんに言った。
「萩原さん、“例のブツ”は持ってきましたか?」
言われた萩原さん、わざとらしく周囲を気にするそぶりを見せたあとに「しぃ!」と言いながら人差し指を口に当て、暗黒街のマフィアを思わせる不敵な笑みの中でこうささやいた。
「ええ、持ってきましたとも。へっへっへ」
このやりとりを、クルマの運転をしながら聞いていた吉川屋の若旦那。あまりに大人気ないおっさんふたりのやり口にビックリ仰天して素っ頓狂な声をあげた。
「え! ホントにおふたりとも、Wiiを持ってこられたんですか!!?」
そう……。
アホな37歳コンビは1日でも『3(トライ)』を遊ばない日ができてしまうことが耐えられず、わざわざ福島までWii本体と各種コード類、コントローラー、そして萩原さんに至ってはネット接続セットまで持参してきていたのである! もしもここが福島県ではなく、たとえばアメリカでもギアナ高地でも、俺たちふたりはWiiを持参したに違いない。俺は高校のときの修学旅行に、わざわざファミコンとディスクシステムを持ち込んだ同級生のTの顔をぼんやりと思い浮かべながら萩原さんに言った。
「温泉に入って食事をして、福島県旅館組合青年部の方々と『2nd G』で遊んだあとは、部屋に引きこもって『3(トライ)』ですな!!」
ウキウキ声で萩原さんも応えた。
「ですな! いやあ、今回はステキなツアーでんなぁ^^」
その夜−−。
俺と萩原さんは、吉川屋自慢のすばらしい料理と温泉を堪能しまくったあと、福島県旅館組合青年部のお三方と『2nd G』の協力プレイに興じた。吉川屋の若旦那に呼ばれて参上した青年部のおふたりも福島県にある旅館の若旦那で、何かしらの集まりで顔を合わせるたびに「ひと狩りいきますか!」ってことで『2nd G』の協力プレイに精を出しているという。うちひとりはまだルーキーハンターで、ランクは上位に上がったばかり。ということで集まった5人のハンターはローテーションを組んで、ルーキー若旦那のハンターランク上げを行うことになった。
最初に選ばれたクエストは集会所★7の緊急クエスト“接近!ラオシャンロン”だ。これに、「はいはーい!! 俺いく俺いく!!」と元気に名乗りを上げた萩原さんと、吉川屋の若旦那が参加。俺は別のクエストを遊びつつ、萩原さんたちの様子を見守った。しかし……。
「うわ!! なんだこいつの尻尾は!! 長すぎる!!」
まるで初めてラオシャンロンに出会ったかのような悲鳴を上げて、ハンターランク9の萩原さんがパコーンと尻尾に引っ叩かれてあっけなく1オチ。続けて、「あれ?」と言いながらルーキー若旦那が1オチ。さらに、
「ぎゃーーー!! ま、また尻尾に!! スンマセン!!」
という断末魔の悲鳴を残して萩原さんが2オチ目を計上した(苦笑)。『モンスターハンター』を輩出したメーカーの宣伝トップが思いっきり足を引っ張り、この日最初のクエストはあえなく失敗に終わってしまったのである。
「ちょっと大塚さん……、東京代表なのにヤバいよ……。このクエスト、手伝ってよ……」
一瞬で酔いがさめてしまった顔をして、萩原さんが俺に耳打ちをする。まったく、しょうがねえなあ。俺は東京代表の威厳を守るために「ラオ! 俺もいく!!」と立候補し、今度は4人のフルメンバーでラオシャンロン亜種に挑むことになった。上位のラオシャンロン相手にハンターランク9のG級ハンターが3人という、必勝&ビビり度MAXもいいところの布陣である。
しかし余裕ができたらできたで、とたんに遊び出すのが37歳酔いどれコンビの悪いところである。生粋の大剣使いである萩原さんはやたらと「カブレラ、いきまーすっ!!」と意味のわからない叫び声とともに斬り上げ攻撃をくり出してほかの3人を吹き飛ばしまくるし、俺は俺でベースキャンプから大砲の弾を運んでラオ相手に奮闘する3人の足元で爆発させるという、アイルー真っ青の狼藉を敢行した。結果、このラオシャンロンはなんとか討伐できるも、その後のクエストも同じ調子でゲラゲラ笑いながらの「エンジョイハンティング!!」(by角満)となったため、まあ萩原さんがオチることオチること(苦笑)。ルーキー若旦那の上位クエストばかりだったのでそんな調子でもクエスト遂行はなんとか死守できたが、これがG級のそれだったら間違いなく、1回もクエストは成功しなかったと思うわ(笑)。
こんな調子で4時間以上も『2nd G』の協力プレイを行い、俺たちは「もうお腹いっぱい……。温泉に入って寝ますわ……」と言いながらそれぞれの部屋に引き上げた。久しぶりに童心に戻って協力プレイを堪能できて、俺も萩原さんも大満足であった。
そして翌日。
俺は朝風呂に入るために午前7時に起床し、部屋のカーテンを開けながら「くぅぅぅ〜!!」と思いっきり伸びをした。そのとき、ふと目に飛び込んできたのがやたらと大きく膨らんだ自分のカバン。それを見て俺は思った。「何かを忘れている……」と。恐る恐るカバンに近づき、ぽっかりと開いた奈落の底を思わせる口の中を覗き込む。奈落の底に光るのは、見覚えのある白い物体。それをそっとつまみ上げて、俺は失意のため息をついた。
「俺は何のために、福島くんだりまでWiiを持ってきたんだ……」
ガックリと肩を落としていると、部屋の扉がコンコンとノックされた。萩原さんが朝風呂に誘いにきたのだ。ドアを開けるとそこには、青白い色をした同級生の顔。萩原さんは俺を見るなり、開口一番こう言ってため息をついた。
「大塚さん……、なんか俺のカバンに、Wiiが入ってるんだけど……」
そういえば修学旅行にファミコンとディスクシステムを持ってきたTも、けっきょく一度もゲームはしなかったっけな……。
そんなことを考えながらも俺と萩原さんは弾けたように笑い、「よし! 東京に戻ったらロックラックで会いましょうよ!!」と声を揃え、露天風呂に向かって元気に歩き出した。
酔いどれ同級生コンビを乗せたスーパーひたち11号は、最初の目的地であるJR湯本駅に到着した。ここで今回の旅のアテンドをしてくれる、福島県旅館組合青年部の畠さんと合流することになっている。畠さんは福島市にある老舗旅館・吉川屋の七代目となる若旦那で、今回の『3(トライ)』と福島県のコラボ企画の発起人でもある。
湯本駅で若旦那と合流し、簡単な挨拶を済ませて、我々は今回のコラボ企画の指定宿のひとつ、いわき湯本温泉旅館“こいと”のご主人が運転するクルマに乗り込んだ。JR湯本駅のある福島県いわき市は、畠さんの吉川屋がある福島市とは遠く離れている(高速道路を使ってもクルマで1時間はかかる)。さすが全国で3番目に広い面積を誇る福島県って感じだが、これだけ距離が離れている場所なので畠さんにはいわき市の土地勘がない。しかしいわき市にはコラボ企画に関連した施設や仕込みがたくさんある……ってことで、こいとのご主人に案内を頼んだというわけだ。……って、じつはこのこいとにもビックリする仕込みがあったのだが、それはあとで触れよう。
我々が最初に訪れたのは福島随一の港、小名浜港にある集合施設“いわき・ら・ら・ミュウ”だ。魚市場、お土産屋、飲食店、観光遊覧船の発着所などがある施設で、ここの2階にある展示コーナー“ライブいわきミュウじあむ”内に『3(トライ)』関連の資料や映像が出展されているのである。
我々がここを訪れた8月10日はお盆期間の最初の日曜日ということもあってか、駐車場が満車になるほどの盛況ぶり。遊覧船でのんびりとしたひと時を過ごし、おいしい魚介類に舌鼓を打った観光客の多くが、2階に設えられた『3(トライ)』のビジュアル展示コーナーに足を伸ばしていた。ここには、『3(トライ)』に登場するモンスターを大きく描いた何枚ものタペストリー、さまざまな『モンハン』グッズ、そしてリクライニングチェアーに寝転がって『3(トライ)』の映像が観られる映像コーナーなどがある。スタンプラリーのポイントのひとつにもなっているので、展示物を堪能した人たちはこぞって、ペタペタと台紙にスタンプを押してもらっておりました。当然、俺と萩原さんも我さきにとスタンプをペタリ。これで、1ヵ所クリアーだ(スタンプラリーのポイントは3ヵ所ある)。
いわき・ら・ら・ミュウを堪能した俺たち一行は続いて、クルマの運転を担当してくれているご主人が切り盛りする旅館“こいと”に向かった。吉川屋の若旦那いわく、ここで昼飯として“こんがり肉”を食べるのだという。行ってみると……!
デター!! リアルこんがり肉!! 巨大な骨のまわりにハンバーグ状の肉と豚バラ肉がたっぷりと巻かれた、立派な立派なこんがり肉である。今回のコラボイベント用の宿泊プランでこいとに泊まると、コース料理のひとつとしてリアルこんがり肉が提供されるという。こいとのご主人によるとこのリアルこんがり肉は、あらかじめ味をつけて形を形成したあとにオーブンにぶち込み、じつに3時間ほどもじっくりと焼いて作るそうだ。非常に大きいため、しっかりと火を通すにはそれくらいの時間がかかるのだろう。で、実際にこれをいただいたわけだが……。
う、うまーーーー!!
見た目どおり、しっかりとワイルドに味つけられたハンバーグ状の肉は白いご飯によく合い、濃い目の味ながらバクバクといくらでも食べられちゃう感じ。俺も萩原さんも「うめえうめえ!」と言いながらナイフとフォークを振り回し、15分ほどでほとんど食べ尽くしてしまった。俺たちの食いっぷりを見てこいとのご主人は「あんたらよく食うねぇ〜」とビックリしていたが、じつにおいしかったので仕方がないのである。
満腹になったところで俺たちは再びクルマに乗り込んで、いわき市石炭化石館、いわき市考古資料館を巡る。今回のコラボイベントでは、いわき市にある8ヵ所の施設が“いわきリアル体感スポット”として企画に参画。『モンスターハンター』の世界観と紐づけてそれらを楽しむことができる。たとえば、いわき市石炭化石館では、展示されているフタバスズキリュウの骨格標本を『3(トライ)』に登場する海のモンスターたちと重ね合わせたり……。見物者の想像力にゆだねる部分も大きいが、生来ハンターというものは“妄想力”に長けているもの。これらの施設でもアレコレと想像をめぐらすことができたので、俺はじつに楽しかった。
そして! いよいよ今回の旅の“表”のメインイベント“あぶくま洞”に我々はやってきた。あぶくま洞は、“およそ8000万年という歳月をかけて創られたアジア随一の鍾乳洞で、全長約620メートルの洞内は千変万化の神秘の世界が続いている”という。……コレ、パンフレットにある文章をそのままリライトしたものだが、実際に行って見てみて「広告に偽りナシ!」と俺は叫んでしまったね。そのスケールの大きさは圧倒的で、見るものを悠久の時の旅路にいざなう神秘と奇跡に彩られた、怖さすら感じさせる威容となっていたのである。……このへん、言葉がかなり乱れておりますが、あぶくま洞の巨大さと懐深さをなんとか表現しようと思って必死になっていることをわかっていただければと……(苦笑)。
▲あぶくま洞もスタンプラリーのポイントとなっている。
あぶくま洞では今回のコラボ期間中、石灰岩の巨大な壁面にプロジェクターで『3(トライ)』の映像を流すという前代未聞の試みに挑戦している。正直、どれくらいキレイな映像が流されているのか少々心配していたのだが、ギギネブラが出てきそうな石灰岩のトンネルを抜けて、最初のホールとなっている場所にたどり着いてそんな心配は取り越し苦労だったんだなと気づかされた。ポカンと口を開いた空間の壁面で、しっかりと『3(トライ)』のオープニングムービーが上映されていたのである!!
俺のへっぽこデジカメではどうにもうまく写真が撮れなかったのだが、なんとなく雰囲気は伝わるかな? 真っ白な石灰岩の壁で躍動するリオレウスとラギアクルス、洞窟独特の音響環境に響き渡る荘厳な音楽……。いやあ、まさかこれほど“洞窟上映”と『3(トライ)』がマッチするとは思わなかったわ……。
洞窟上映を堪能した俺たちは、せっかくなのでとあぶくま洞の遊歩道をポクポクと歩いてみた。しっかし、今回の旅の“裏目的”に「温泉でヒザの静養をする」が入っている37歳コンビに急な階段と前傾姿勢になる細くて狭い通路は思いのほかキツく、途中から「は、ハギワラさん、お、俺、ヒザがもげそう……」、「お、オオツカさん、肺が口から飛び出そうだわ……」と情けなさすぎる発言のオンパレード(苦笑)。あ、でも言っとくけど、歌舞伎町やら新橋ガード下で飲んだくれてばかりいる俺と萩原さんだったから「ヒィヒィ!! ハアハア!!」となっちまっただけで、一般の健全な人々だったら非常に涼しい空間(あぶくま洞の中の温度は1年中15度らしい! つまり夏だと寒いくらい!)での爽快なトレッキングが堪能できるのは間違いない! と書いておきます(笑)。
あぶくま洞で運動不足の身体を酷使した俺たちは、いよいよ今回の旅の終着点、若旦那が切り盛りする老舗旅館・吉川屋へと向かった。
以下次回〜!
……って、明日は酔いどれ紀行の最終回と、『3(トライ)』のプレイ日記を2本アップします! ……と、自分を追い詰めてみる。
7月30日、『モンスターハンター』とカラオケチェーンのパセラがコラボレーションして行うイベント“狩人達の宴Final”のマスコミ向け発表会が行われた。江野本ぎずもを伴って予定の時間よりもかなり早めに会場に到着すると、「あ! 大塚さん、ちょっといい!?」と言いながら疾風のようにある人物が現れて、俺を会場の外に連れ出した。カプコンパブリシティーチームのボス、“ほろ酔いのハギー”こと萩原さんだ。呆気にとられる江野本を残して会場の外に出ると、萩原さんは神妙な表情で「あのね、大塚さん……」ともったいつけた声を出した。
ナンダナンダ。何を言われるんだ? いつも好き勝手に記事を書いていることを咎められるのか? 去年、タイムアタック勝負で負けたのに飯を奢っていないことを責められるのか……? ドキドキしながらつぎの言葉を待っていると、萩原さんは歌舞伎町的に引き締まった顔をほころばせて思いもよらないことをのたまった。
「大塚さん、福島県に行きません?」
え? いま、フクシマケンっつった? 何をいきなり突然……。俺は、背後から羽交い締めにされたボルボロスのようなポカンとした顔になったらしく、萩原さんはすぐに詳しい説明をしてくれた。そしてそれは、最近お疲れ気味だった俺には、じつに魅力にあふれた楽しい楽しい提案だったのである。
8月1日から福島県全域で、福島県旅館組合青年部 観光政策委員会企画によるイベント“『モンスターハンター3(トライ)』×福島県 スタンプラリー in FUKUSHIMA”が行われている(8月31日まで)。大鍾乳洞“あぶくま洞”の壁面をスクリーンにして『3(トライ)』の映像の上映、港にある複合施設“いわき・ら・ら・ミュウ”で『3(トライ)』の関連商品・資料の展示、さらにコラボイベント提携宿泊施設に泊まると記念品がもらえたり、それぞれのポイントをスタンプラリーで巡ると賞品がもらえたりと、ゲームと観光スポットががっちりとタッグを組んでの異色コラボが展開されているのである。萩原さんによると、今回の企画の発起人となった福島県旅館組合青年部の人たちが『逆鱗日和』シリーズや俺の書くコラムの熱心な読者ということで、「ぜひ福島に遊びに来てください!」とラブコールを送ってくれたと言うのだ。いやあ、なんてありがたい申し出だろう。うれしくなって、俺は萩原さんに言った。
「じつに魅力的な話だねえ。あ、せっかくだから萩原さんもいっしょに行こうよ」
すると萩原さんは、音爆弾を食らったクルペッコのようにピンと背筋を伸ばして「おお!!」と叫び、「それ、いいね! ちょっと調整してみるわ!! 同級生コンビで福島に乗り込みますか!!」と言ってバンバンと俺の肩を叩いた。
そして翌日、電光石火の早業で萩原さんから電話がかかってきて、「大塚さん、急で申し訳ないんだけど、8月9日、10日の1泊でホントにふたりで福島に行こうよ! スケジュール、大丈夫?」と具体的な提案が投げかけられたではないか。俺はすぐに江野本に「萩原さんがこう提案してくれたんだけど、単行本の作業、大丈夫かな?」とお伺いを立て、「そこだったら何とかなると思いますよ」との回答をいただき、晴れて37歳の同級生コンビによる福島コンバットツアーが決定したのである。
「大塚さんと萩原さんがふたりで行動したら間違いなく酔いどれツアーになるので、ウコンを山盛り持っていってくださいねw」
と江野本。この言葉に俺はマジメに頷き、萩原さんに「オッケーオッケー! 行こう行こう!」と返事をしたついでに、「ウコンとか、肝臓によさそうなものを大量に持ち込もうね」と提案した。するとさすがほろ酔いのハギー、みなまで言うなとばかりに俺の言葉を遮り、「大丈夫! もう旅行カバンの中にどっさりとウコンが入ってるからw」と言って豪快に笑った。
そして8月9日の午前9時。俺と萩原さんはJR上野駅で落ち合った。この手の出張ではたいがい、どちらかが部下や同僚を連れているのがふつうなのだが、今回は本気で、37歳コンビのふたりだけである。でも、かれこれ10年以上に及ぶ長いつき合いのふたり。会社は違えど気兼ねすることのない、じつにフランクな関係なので、完全に友だちと旅行に行く気分である。萩原さんは会うなり、新宿ゴールデン街からはい出てきたばかりのような顔に笑顔を浮かべ、「おはよっす! いやあ、朝の5時まで飲んでたんでこの時間はキツいわ!!」と笑って右手を差し出してきた。俺も笑顔を返して、「こっちは朝まで『3(トライ)』やりながら焼酎飲みすぎて頭痛いよw ま、よろしくお願いしますね!」と言ってがっちりと握手をした。
この間、俺も萩原さんも『3(トライ)』がらみでいろいろと動いていて、まったく休みが取れずにいた。まだまだ若造と言える歳ではあるが蓄積された疲労は正直なもので、身体のあちこちにピンポイント爆撃を敢行してきている。なので我々は特急で福島に向かう道すがら、「最近、ヒザが痛くて……」、「肩が上がらなくなってきてさ……」と、突発的なフシブシの痛みコンテストを開催(苦笑)。結果、『モンハン』と福島県のコラボレーションを取材に行くというメイン目的とは別に、「蓄積された疲労を温泉で抜こう!!」と季節の変わり目にシクシクと痛み出すヒザをさすりながら話し合ったのでした(笑)。
こうして、愛と感動(?)の福島コンバットツアーが始まった。
次回に続く〜。
……ってこれ、ひとつもプレイ日記じゃないな(苦笑)。
9月3日に発売予定の新刊『別冊『逆鱗日和』 角満式モンハン学〜ハンター編〜』の編集作業がいままさに佳境を迎えており、毎日毎日深夜まで校正を見たり、追加で入れる原稿を書いたりしている。この『ハンター編』は『逆鱗日和』シリーズの中ではもっともページ数が多い大ボリュームとなっていて、当然のことながら校正紙の量もハンパなものではない。校正は集中力を要するので作業の合間に「じゃ、1クエに……」という流れになかなかならず、よって俺は『3(トライ)』が発売されてから5日が経った8月6日の段階で、オンラインでのハンターランクはたったの“3”。「ってことはオフラインを徹底的に進めているんだろう」と思わせておいてこちらもなかなかまともにプレイすることができず、ようやく★3になったところである……。こ、こいつはヤベぇ……。なんとか時間を捻出して遊ばないと!!!
これだけ遊べていないとさぞエッセイのネタにも困るだろう……と思う向きがあるかもしれないが、じつはまったくそんなことはない。ネタ帳にはすでに、コラムの10本や20本くらいだったら楽に書いてしまえるくらいの、たくさんのメモが残されているのである。ほんのわずかなプレイで、新鮮で楽しいネタがこれほど集まるとは……。これはひとえに、『3(トライ)』が土台の部分から新しく作り直された新世界だったおかげだ。何度も書いているが、見るもの、聞くもの、触るものがすべて新しい空間なので、そこらじゅうに発見が落ちているのである。それこそ1歩歩くごとに「あ! これはなんだ!?」と驚き、「こんなこともできるんだ!」と感激するのだ。忙しいったらありゃしない。
そんな、数々の驚き、発見の中から、今回は虫型モンスター“オルタロス”について書く。
「なんであえてそんなにシブいところから書くんすか!!www」
と、辻本良三プロデューサーや藤岡要ディレクターに突っ込まれそうだが、前回書いた海水浴クエ……じゃなかった、孤島のキノコ集めのときにこいつらに出会い、さっそく感動してしまったんだからしかたがない。『3(トライ)』に出てくる生き物の中で最初に俺を驚かせてくれたのは、ラギアクルスでもウラガンキンでもない、小さな小さなオルタロスだったのである。
孤島は非常に豊かな土地らしく、いたるところで植物が芽を出し、虫が飛び交い、鉱石が顔を覗かせている。採集ポイントはなんとランダムでエリア内に出現し(固定で設置されているものもある)、採集しつくしても再びオブジェクト(採集ポイントのことね)がヌッと現れることすらある。体感的に、『ポータブル』シリーズと比べてフィールド内にゆったりとした時間が流れている『3(トライ)』では、クエスト中にのんびりと採集したり、生き物観察をすることがじつに楽しい。フィールド内の空気にただ身をゆだねているだけで幸せな気分になり、「無理にでも連休取って、ここまで足をのばしてよかったよ〜^^」と思いたくなる(意味わからん)。
そんな採集ポイントの近くにときたま、アリのようなクワガタのようなハチのようなクモのようなハサミムシのようなカミキリムシのような……っていくらでも虫の名前が出てきてしまうのでぼちぼちやめるが、要するにこれまでの『モンハン』シリーズに出てきた名物虫型モンスター“カンタロス”を髣髴とさせる巨大な虫(最初からそう言え)が現れることがある。そう、こいつが本日のテーマの“オルタロス”だ。
オルタロスは複数の個体が集まってコロニーを形成しており、巣からゾロゾロと出てきては列を成してキノコやハチミツがあるところに集まり、腹部に養分を溜め込んでそれを巣まで運ぶ……という作業をしている。これはもう、働き蜂とか働きアリとまったく同じ行動で、少年時代に虫が大好きだった俺にとっては大好物の光景である。
なので俺はしばらくのあいだ、彼らの働きっぷりをジーっと眺めていた。オルタロスは、お互いが仲間かどうかを確認するためなのか、向き合って巨大なアゴをクワっと開き、威嚇するようなポーズで挨拶(?)を交わしている。そして、行儀よく一列になって、キノコが自生しているところまでチョコチョコチョコ……。かつて、土を入れた空き瓶の中にアリを入れて巣を作らせたことがあったが、そのときのことを瞬時に思い出してしまった。
このオルタロスの行動は、誤解を恐れずに言ってしまえばハンターの生活にまったく関係がない。カンタロスのようにナワバリに入ったら攻撃してくる……というルーチンで動くのならハンターの狩りに支障が出てくるものだが、オルタロスたちはハンターがいようがいまいがお構いなしに、せっせせっせと物資を巣に運ぶ作業をしているのである。
こいつは、なにげに凄いことだ。
オルタロスは“ハンターに影響を及ぼす”というミクロな時限で動いているのではなく、“リアルな地球を作る”というマクロな意思のもとに動いているようなものなのだ。言ってしまえば彼らは、ハンターがそのエリアにいなくても、いや、ハンターの視界に入っていないところでも、同じように働いているのだろう。
俺は、こちらが襲いかからない限り攻撃してこないオルタロスがとても愛おしく思えてきて、彼らが作った行列の最後尾にしゃがんで取り付き、同じようにヨチヨチと歩いてキノコ場までやってきた。キノコから養分を摂って腹を膨らませたオルタロスを横目で見ながら、「わー! 俺も俺も!」と言いながらキノコを採取する。これで俺は、オルタロスと同じ釜の飯を食った仲になったわけだ。仲間だ仲間だ。俺とオルタロスは、親友になったのだ。よかったよかった。
ところが。
ブシュッ!!!!
いきなり1匹のオルタロスが尻の先からヘンな液体をピュッと漏らしたかと思ったら、なんとそれが我が分身の顔面にひっかかったではないか!! びっくりして俺は叫んだ。
「ちょっとちょっと! お尻から何か漏れてますよー! こっちにひっかかりましたよっ!!」
しかしどうやらオルタロスは、俺が彼らのエサ場であるキノコの山から特産キノコを1本もいだのが気に障ったらしく、迷いなく“窃盗”と判断したらしい。最初にそれに気がついた1匹が「ドロボー!!」とわめいて思わずケツから液体を漏らしてしまったのを合図に、「盗みだ盗みだ!」、「かっぱらいだかっぱらい!」と蜂の巣……じゃなくて、オルタロスの巣をつついたかのような大騒ぎに……。思わず、俺は毒づいた。
「キノコ1本失敬しただけじゃないか!! そんなに怒ることないだろ!!」
しかし、1分まえまでのやさしく、愛らしかった隣人はもういない。オルタロスの群れはガチガチと巨大なアゴをかち合わせながら俺を威嚇し、猛然と襲い掛かってきたのである。こうなったら、もうやるしかない。俺は真新しいクラシックコントローラPROを握り締め(いまではすっかりWiiリモコン派の俺だが、このときは試しにクラコンPROで遊んでいた)、俺に牙を剥いたオルタロスに攻撃した。そのときだった!
ブー! ブーッ!!
いきなり画面から、オナラと思われる大きな音が轟いた。どうやらオルタロスは、怒ると屁をこくらしい。
ブー! ブーッ!!
やはりそうだ。俺が攻撃をくり出すたびに、オルタロスはブーブーと屁をこいている。
オルタロスの豪快なオナラを聞き、俺は友だちと言い争いになって興奮し、声を出すたびにブーブーと屁を漏らしてしまった小学校時代の友人Y君のことをしみじみと思い出していた。あーおもしろい。俺は笑いながら、隣に座っていたEffort Cristalのチームリーダー、ゴッディに“オルタロスの屁”(小説のタイトルみたいだな)のことを教えてあげた。
「ゴッディゴッディ!! オルタロス、攻撃されて怒ると屁をこくんだよ!! ブーブーってw 屁こき虫だよ屁こき虫!!ww」
ゴッディは「マジっすか!!」と仰天し、俺の画面を覗き込んだ。俺はオルタロスの屁をゴッディに聴かせてあげようと思い、「ほら!」と言ってランスでツンツンとオルタロスを突っつく。するとやはり、オルタロスは「ブーッ!」と大きなオナラをした。これを聴いたゴッディ、最初こそ「うおおお!」と驚いたもののすぐに表情を変え、腹を抱えて笑い出す。うんうん、おもしろいよね屁こき虫。もしかしたらオルタロスのモデルは、激臭を発するカメムシかもしれないよな。
ところがゴッディは不思議なことに、画面の中のオルタロスではなく俺のほうを向いて笑っている。ナンダナンダ。どうしたんだ? ゴッディはしばらく笑い続けたあとに俺に向き直り、衝撃的なひと言を発した。
「角満さん、違いますよ!!ww オルタロスの屁じゃないですよ、この音はwww」
え。どういうこと? じゃあ何の音なの??
「いま角満さんのWiiリモコン、机の上に置かれていますけど、攻撃するたびにそれが震えて、ブーブーって音を出しているんですよ!!www」
!!!? そ、そんなバカな……。いくらなんでも、ゲーム内の音とリアルの音を聴き間違えるなんて……。俺は半信半疑ながら心配になって、机の上に置かれたWiiリモコンを見ながらランスを振るってみた。すると……。
ブー! ブー! ブーッ!!
オナラのような音を発するWiiリモコンと、「あはははは!」とのた打ち回るゴッディを呆然と眺めながら、俺は「……屁こき虫呼ばわりして悪かった><」と、画面の中のオルタロスに向かって頭を下げた。
突如現れたHUNTERさんには早々にお引取り願い、コソコソと新しいキャラを作り直してようやく、俺はオンラインの街門に降り立った。
ちなみに、これまでずーっと愛着を持って“MIDO”という名前をハンターネームとして使ってきたが、『3(トライ)』ではこれを封印することにした。先日、次長課長の井上さんと『3(トライ)』の話をしたときに「大塚さんは今回も“まいど”でやるんですか?」と訊かれ、「“まいど”じゃなくて“ミド”ですよ!!」というやりとりがあったことがきっかけになったわけではない(当たり前だ)。すべてが新しくなった『3(トライ)』では初代『モンハン』のころのように、一般の人にも混じって野良でも遊びまくりたいと思っている。そのほうがいろいろな刺激があるし、遊びの幅も広がると思うのだ。なので5年(『みんGOLオンライン』の時代も含めると、もっと長いな)に及ぶ長きにわたってともに歩んできた“MIDO”はこれにて封印。じつにテキトーに名づけた新しい我が分身と、新しいモンハンライフを満喫していこうと思う。
とりあえず、俺、江野本、ゴメさんの3人は、エフォクリのジャッ君が入った街に集まった。ついでとばかりに、Wiiの『G』でいっしょに遊んでいた狩魂Tのたけちよ(通称・たけちー。モンハンフェスタ`08名古屋地区代表チームのひとり)に、「いまロックラックに入ったぞ!」とメールをする。するとすぐに、「おおおお!! ちょっとしたら飛んで行きますので待っててください!!」という返事が。俺はそれに「応!!」と返し、彼がやってくるまで見るもの触るものすべてが新しいロックラック見物と洒落込むことにした。
初めて見るロックラックは、風と砂と野心に満ちた、砂漠に浮かぶ巨大な船のようだった。街の人々はみなギラギラと元気がよく、豊かなオアシスらしい前向きな空気が充満している。俺は、そこで暮らす人間臭いロックラックの住人たちに話しかけるたびに、自分がこの世界観の歯車のひとつになったことを実感したのだった。
さあさあ、ロックラックの各施設はとりあえず満喫した。となると、つぎにやることは……! 俺、江野本、ゴメさん、ジャッ君は声を揃えて絶叫した。
「クエストにいこーーーーーーっ!!!」
ちなみにこのときゴッディは、「僕はやることがあるのです」と言って別の街にしけこんでいた。あ、怪しい……。でも、いまや日本でもっとも腕の立つハンターと言われるこの男は、放っておいても問題ない。なので俺たちは残る4人でクエストに行こうとしたわけである。
さあて、記念すべき『3(トライ)』での初協力プレイだ。ずっと記憶の保管庫に大切にしまわれるであろう、大事な大事なクエストである。でもそのわりに熟考することもなく、俺たちはゴメさんが発した「やっぱり『モンハン』と言えば、最初はキノコ集めでしょう!!」という言葉に「ほいほい!」と乗っかり、★1の“孤島のキノコ集め”に出かけることにした。わーいわーい。キノコだキノコだ。
ジャッ君を除いた3人はこれが本当に最初のクエストとなるので、装備はインナーにハンターナイフという“『モンハン』における最初の正装”とも言うべき、うれし恥ずかしな格好をしている。でもこれが、南の島のリゾート地を思わせる孤島の雰囲気によく馴染み、俺たちはとたんにバカンス気分である。ウキウキしながら、俺は仲間の3人に向かって言った。
「もうさ、キノコはどうでもいいから、海に泳ぎに行こうぜ!!」
大声でゴメさんが応じる。
「そうこなくっちゃ!! 泳ぎましょう泳ぎましょう!!! いや〜、いいですなあ夏休み!!」
そして俺とゴメさんは恋人どうしのように手を携えてエリア10に突入し、「うみだあああぁぁぁぁ!!!」と叫びながらドボンと海中に飛び込んだ。
「わっほーーーい!!」と俺。
「ィヤッホーーーーーゥ!!」とゴメさん。
いい歳してハシャギまくるおっさんふたりを眺めながら、呆れ顔で江野本が言う。
「バカみたいこのふたり^^; どんだけテンション高いんすかw」
マジメにキノコ狩りをしていた江野本とジャッ君に向かって、ブクブクと潜水しながら俺は言った。
「まあそう言うなって! ホントに気持ちいいぞ水の中!! えのっちとジャッ君も早くこいよ!! ホラホラホラ!」
そう、まったく誇張ではなく、この水の中での行動がとてつもなく気持ちいいのである。
正直言って、俺は『3(トライ)』で導入された水中での行動を少々心配(?)していた。平面から立体に、円から球に動きの幅が広がる水の中の世界がどう転ぶのか、まったく読めなかったからだ。実際、体験版や体験会で水中での操作を何度か経験したが、縦軸の動きが加わるだけでこれほど自由度が開放されてしまうのかと本気でビックリしてしまったくらい、そこにはいままでの『モンハン』とは違う世界が広がっていたのである。「ここで自由に動くためには、かなりの慣れが必要なのではあるまいか?」。そんなことも考えていた。
しかし、いま改めて自分のキャラで海に飛び込んでみて、そんな心配は杞憂……っていうか、取り越し苦労だったことに気がついた。個人差はあるだろうが、少なくとも俺はほとんど何の違和感も感じることなく、自由自在に水の中を動き回って魚と戯れ、素材を採取し、「うりゃうりゃ」と攻撃することもできてしまっている。上下の視点変更……というか泳ぎ分けでギクシャクすることはさすがにあるが、そのちょっとした歯がゆさが返って“新しいことをやってる感”につながり、結果、「たのしーーーーー!!」となるのである。水中での酸素ゲージの減り具合については事前に辻本良三プロデューサーから「ほとんど気にせずに済むと思いますよ。酸素の減り具合が足かせになることはないでしょう」と言われていたのだが本当にそのとおりで、逆に「気泡が出ているところでピキューンってなりたいから、早く酸素ゲージ減ってくれや」と思ってしまったくらいです(ちとオーバーか)。
「きゃーーー! 水の中きれーーーい!!」
江野本がドボンと海中に飛び込んできた。彼女が言うように孤島の海の中は、ニューカレドニアやモルジブのそれを思い出させるほど幻想的で美しい。……って、ニューカレドニアもモルジブも行ったことないけどな!! しばしのあいだ江野本は透きとおったマリンブルーの世界にみとれてからパシャパシャと泳ぎだし、「うわ〜……。なんでこんなに気持ちいいんだろう……」とうっとり。そして俺やゴメさんと同じように突然「わひょーーーい!!」と叫んで、海中を縦横無尽に泳ぎ始めた。
「たのしーーーーー!!」
俺たち4人は口々にそう言い、キノコ集めをほったらかしていつまでも海の中ではしゃぎ続けた。齷齪した日常のアレコレを忘れさせる、南の海独特のゆっくりした時間が、俺たちのまわりでたゆたっていた。
見ると、クエスト時間を示す時計の針が35分を指していた(笑)。くどいようだがこれは、ただのキノコ狩りのクエストである。ホントに俺たちは初めて海に連れてきてもらった子供のように時間が経つのを忘れ、海水浴に興じていたらしい。いかんいかん。ぼちぼちマジメにキノコを集めて、ロックラックに帰らないと。俺は仲間3人に「そろそろ海からあがろー。ふやけちゃうぞー」と呼びかけ、泳ぎすぎでダルくなった身体を引きずりながらキノコ集めをし、なんとかロックラックに帰還した。クエストに出かけてから、40分以上が経過していた。
ロックラックに到着すると、見慣れた名前が俺たちを待っていた。たけちーだ。彼は俺を見るなりため息をつき、疲れた声でこう言った。
「角満さん、待ちくたびれましたよ。メールもらってすぐに飛んできたのに、街には誰もいないし……。すごく時間かかってましたけど、何のクエストに行っていたんですか??」
しばし考えたのち、俺は正直に答えた。
「……孤島のキノコ集めw」
たけちーはぶったまげて大きな声を出した。
「うは!!! まじっすか!!! ハンター4人で30分以上かかるキノコ集めって、何百本集めるんすか!! いやでも、僕もケルビの角を集めるクエストで29匹狩ってやっと2本手に入れたってことがあったばかりなので、よくわかりますよ。意外なクエストが手強くなってますよね、『3(トライ)』は!!」
妙に納得するたけちーに、「ごめんw ホントは4人でずっと海で泳いでてキミのこと放置してたwww」とは口が裂けても言えず、俺は「う、うん、ダヨネーダヨネー」と力なくつぶやいたのであった……。
8月1日午後3時、逆鱗式『3(トライ)』開封式に参加するEffort Cristalのふたりがやってきた。この暑い中、わざわざ茨城からご苦労様……。すっかり恐縮してねぎらいの言葉をかけようとすると、俺の頭を見るなりエフォクリのチームリーダーであるGod君(通称・ゴッディ)は「あ、どうもはじめましてw」とふざけたことをぬかす。俺はとたんに、エサ場を荒らされたオルタロスのように赫怒して、「テメこの、いきなり何をぬかしやがる!!」と笑いながら返す。もうすぐ『モンハン』の新しい大地に立てるという確信が、俺たちをやさしい気持ちにさせていた。
そして5分後、芸能事務所所属の超絶テキトーハンター、ゴメさんがやってきた。この人は超売れっ子タレントのマネージャーをしているくせに、どういう魔法を使っているのか知らないがしょっちゅう俺と江野本のところにやってきて長々と世間話をしたり、居酒屋で合流して携帯ゲームで遊んでいたりするのである。しかも、居酒屋で別れたあとも「どうも! さっきぶりです!!」とか言ってミナガルデ(『モンハンG』のオンライン集会所)で再会して夜中までチャットやクエストをしていたり……。お互い、いい歳したオトナのくせによく遊ぶなぁ……と思わなくもないが、そういう時間があるからこそ日々の仕事をがんばれるんだよなあ^^ ……と、思うことにしている。じゃないととたんに、「お、俺、ダメ人間かも……」と自己嫌悪に陥るからな。
「いやあ〜、ついにこの日が来ましたね! 伝説の1日なりますよこりゃあ!! どうしたらいいんでしょうね〜、大塚さん!!」
まったく心がこもっていないテキトーなことを言いながら、ゴメさんが自分のWiiをセッティングしている。今日はソフトを開封するだけでなく、そのまま『3(トライ)』のオンライン集会所である”ロックラック”にくり出し、終電ギリギリまで協力プレイをしちまおう! という算段なので、全員が自分のWii本体を持参してきているのだ。……いま全国で50万人くらいのハンターが「よくまあそこまでやるわ……」とため息をついたのが聞こえた気がしたが、”リアルでお祭り気分を共有したい”がこの企画の出発点なので、多少の苦労は厭わないのである。……まあこれは、本体が小さくて軽いWiiだからこそ実現した企画だ、という点に関しては首の関節が外れるほど全力で頷いておきます。
さあさあ、そんなこんなで準備は整った。みんなで一斉に『3(トライ)』を開封しちゃおうじゃありませんか!!
ドキドキしながらクラコンPRO同梱版の、がっちりとした箱を持ち上げる。この箱の中に、ずっとずっと待っていた『モンハン』世界の新しい大地が入っているのか……。どうやったらこんな小さなものの中に、あんなに大きな世界観を封入することができるんだ……? たった1枚の円盤の中に、でっかい地球が丸ごと入っているんだよ? どうなってるんだいったい……。しばらくのあいだ、いくら考えても答えなんて出てこないほど混沌とした、それでいて心地いい脳ミソの浮遊に身をゆだねる。こういう刹那も、なかなか悪くない。俺はボーイスカウトの隊長のようなサワヤカ極まりない顔を集まった連中に振り向け、
「サアみんな! いっしょに封を切ろうではないか! そして新しい世界にともに踏み出そう!」
と言おうとした。ところが。
デデーン!!
ゴッディとジャッ君(エフォクリのJack君のこと)のモニターに、思いっきり『3(トライ)』のタイトル画面が表示されたではないか! 俺はとたんにサワヤカフェイスを引きつらせ、みっともない声でわめき散らした。
「おおお、おまいら、もう開封してんのか!!」
するとゴッディとジャッ君は頭を掻きながらニヤリと笑い、「朝イチで手に入れて、速攻で封を切って遊んじゃいましたw ちゃっかりキャラも成長しています。スンマセンww」などと言う。俺はうんうんと頷きながらふたりの顔を交互に眺め、心からの声でこう言った。「うん、俺でもそうする。それでよろしい」と。
というわけで開封式は驚くほどあっさりと終わった。これからいよいよキャラ作成&初オンラインプレイだ!!
ドキドキしながら『3(トライ)』のパッケージを開け、震える手つきでROMを取り出す。この中に、これから何百時間、何千時間という長きにわたり俺をとりこにする世界が詰まっているのだ。これが震えずにいられるものか。
産まれたばかりの小鳥を包み込むようなやさしい手つきでROMを持ち上げ、母鳥に返してやるようなつもりでWiiのスリットにそっと添える。すると『3(トライ)』は「ただいま」と言わんばかりのスムーズさでWiiに吸い込まれてゆき、その中から「早くボタン押して! 始めて始めて!」と元気な声を出した(ような気がした)。
そして始まったオープニングムービー。これまでに何度となく観てきた映像だが、そこで描かれている真摯なほどフェアな生き物たちの奪い合いと彼らが抱いている覚悟に、思いっきり胸が締め付けられる。見ると、江野本、エフォクリのふたり、ゴメさんも、同じように黙ってオープニング映像に見入っていた。やっぱりハンターは、この映像から発せられる言葉なき言葉に叩き伏せられるのだ。
オープニングで感動したあとは、お楽しみのキャラ作成だ。顔の種類、顔パーツ、髪型、肌の色など、かなり細かく設定ができるので、じっくりと時間をかけて、これから長い付き合いになる自分の分身を作り上げる。江野本を見ると、やはり同じように真剣な表情で、「ウチは黒い肌が好きなんですけど、単純に黒けりゃいいってもんじゃありません! 会心の色を作るには微妙なサジ加減が必要なんす!」とか言いながら、時を忘れてキャラ作りに没頭している。それでもなんとか、ふたりともほぼ同時に分身を作成し終え、シングルモードのムービーを堪能してから拠点“モガの村”に降り立った。
おお……。ここが新しい俺の住処か……。
じっくりと村を見物して歩いて、悠久の時が流れているとウワサの“モガの森”に行ってみたかったが、今日はオンラインの拠点“ロックラック”に行って友だちと協力プレイすることが企画のメインに据えられている。なので俺と江野本はメニューから“拠点を選ぶ”を選択し、オンラインに接続することにした。
そして俺たちはついに、『3(トライ)』のオンライン世界の玄関となる“街門”に降り立った。ああ……。ついに、ついに本格的な『3(トライ)』ライフがスタートするんだ!! やったやった!! 新しい地球にやってきたぞーー!! しかしここで、感動的な空気を吹き飛ばす悲鳴が俺のナナメ後ろ3メートルのあたりから響き渡った。
「ぎゃーーーーーっ!!! 誰だこの“HUNTER”って名前の女はーーーっ!!」
ナンダナンダ。なにごとだ? 騒ぎの元凶はもちろん江野本ぎずも。その場にいた全員が、彼女のまわりに集まって画面を覗き込んむ。すると江野本はプリプリしながら、衝撃的なことをのたまった。
「この“HUNTER”って名前の人、もしかしてウチなの!?」
街門に立つ女性キャラを指差して当惑する江野本を見て、ゴッディが指摘する。
「ぎずもさん、キャラ作成のときに、最初に入力されている“HUNTER”って名前を消さずに登録しちゃいましたねwww」
これを聞いた江野本、ビックリ仰天して断末魔の悲鳴をあげた。
「えええええ!? そんな設定やったのーー!? ちょっとー! またイチから作り直さなきゃいけないのー!?」
ゴメさんとジャッ君が、「おっちょこちょいだなあww」、「さすがぎずもさん!!ww」と言って笑っている。ゴッディも腹を抱えて「あはははは!」と大笑いだ。
しかし、俺は何も言わなかった。いや、言えなかった……。
俺は無言のまま席に戻り、街門に佇む男性キャラをじっと眺めた。けっこうな時間をかけて、一生懸命作った我が分身である。本来ならば、愛おしくてたまらないはずの存在だ。しかしなぜか、このキャラには何の感情も抱くことができない。ていうか、見たくない……。産まれたばかりなのに、親の俺に見ることを拒まれるこの子の頭の上にあった名前は……!
“HUNTER”……。
俺は4人に悟られぬようにタイトル画面に戻り、またイチからキャラクターを作り始めた……。
『モンスターハンター3(トライ)』が発売された記念すべき8月1日、俺と江野本ぎずもは一心不乱にファミ通.comの行列リポートや、週刊ファミ通巻頭のニュースページに入れる『3(トライ)』の発売日風景の取材記事を製作していた。恐ろしいことにこの週は週刊ファミ通の締切日が前倒しになっていて、俺は何日もまえから「オウオウ! 8月1日午後1時までに印刷所に誌面データを入稿しろやオッサン」と方々の怖い人たちにプレッシャーをかけられていたのである。そのため、俺はカウントダウンセレモニーを見届けたあとすぐに会社に戻らなければならず、あろうことかソフトは買えずじまい……。しかも、都内各所に散った江野本を始めとする記者軍団にも「今週の入稿、マジでヤバいから、“行列がひと段落したところで『3(トライ)』を買おーっと”などという不埒な気持ちを抱かず、火急すみやかに会社に戻ってくるように!!」とキツく厳命しており、これにより我がファミ通ニュースチームは誰ひとりとして『3(トライ)』を持ち帰ることが叶わなかった。その結果、俺は自分で命令しておきながら内心(か、かっこつけねえで、誰かに「俺のスペシャルパック買ってきて!!」って言っときゃよかった!!)と激しく後悔したのである。
しかしストイックに仕事の鬼に徹した甲斐もあって、どうにかこうにか本気で締切のヤバかった誌面記事を製作することに成功する。これでなんとか、印刷所のブラックリストに載ってしまう事態を回避できそうだぞ。あーよかったよかった……。こう見えて、俺はやればデキる子なのだ。見くびってはイカンのだ。
会社の自席でゴキゲンの体で「ナノダナノダ♪」と口笛を吹いていると、ふたつ隣の席でファミ通.com用のリポート記事を書いていた江野本が徹夜明けで充血したデカい目をギョロリと振り向け、「大塚さん、そろそろ印刷所に原稿を持っていかないとマズくないですか?」と疲れの残るかすれ声で静かに言った。へーへー。わかってますよわかってますよ。俺以外の記者諸君は全員、ファミ通.comの記事にかかりっきりだもんね。知ってますって。持っていきゃいいんでしょ、持っていきゃ……。俺はのそのそと立ち上がって、印刷所に行く準備を始める。すると江野本はいきなりデカい声で「にゃー!!」と言い、徹夜明けで痛む膝をさすりながら(徹夜と膝、関係ないけど)出かけようとする俺に向かってこんなことを言った。
「大塚さん、せっかくだから帰りに秋葉原を回って『3(トライ)』を買ってきたら? ……で、ついでにウチの分のクラコンPRO同梱版も買ってきてください♪」
な、なんだとぉ……!? テメこの、さらに俺を買い物に行かせる気か!!
でもしかし、これは渡りに船のナイスな提案であった。じつはある事情から俺と江野本はどうしても、この日の午後3時までに自分のソフトを手に入れておく必要があったのである。俺は瞬時に相好を崩し、「おお。そいつはなかなかいいアイデアではないか」と江野本を褒めた。すると江野本はニコニコしながら「でしょー?」と言い、さらに勢い込んで「あ、ウチはクラコンPROのシロですからね。持ってるWiiがシロなので、クラコンもシロシロシロ♪」と付け加えた。俺は「調子に乗んじゃねえ!!」と江野本を一喝し、でもそのわりにはルンルン気分で「いってきまーす♪」と元気に言い、印刷所に向かうタクシーに乗り込んだ。わーい! やっと『3(トライ)』が手に入るぞー!! やったやったー!!
というわけでついに、俺は『3(トライ)』を手に入れた。買ったのは江野本と同じく、クラコンPROとソフトがセットになった商品だ。俺が秋葉原のヨドバシカメラマルチメディアAkibaに到着したときには、すでにWii本体とソフトがセットになったスペシャルパックは売り切れ。もしもコイツが売っていたら、アプトノスから生肉が剥げるよりも高い確率で、後先考えずに購入していたと思われる。俺、Wii本体2台持っているのに(苦笑)。とりあえずこのタイミングでスペシャルパックが売り切れになっていたことを、俺は神に感謝した。堪え性のないダメなオトナには、「売り切れ!」と強く言うのがもっとも効果的なのである。
そして俺は『3(トライ)』だけでは飽き足らず、ドーナツ、おにぎり、スナック菓子、天津甘栗といった食材を大量に買い込み、再びタクシーに乗り込んだ。するとすぐに江野本から「テレビが重くて1台たりとも動かせません……」というメールが届く。それに対し「戻ったら俺が運ぶから、ほかの準備よろしく」と簡潔に返し、「あ、スタバのコーヒー買おうと思っていたのに忘れちゃった……」と独り言を言いながらタクシーのシートに身をゆだねた。会社まで10分程度の短い距離だが、少しでも身体を休めておこうと思ったのだ。
会社に戻った俺は江野本と合流し、大量の食材と『3(トライ)』を持って1階にある会議室に向かった。もっとも広い第一会議室に入ると、そこはまだ机も椅子もテレビも動かされておらず、いつもと同じ風景が広がっている。時間がない。早いところテーブルの配置を変えて、ここにあと4台、テレビを持ってこなければいけないのだ。俺は江野本に言った。
「もう時間がない! 俺がテレビを運んでくるから、えのっちは机、椅子のレイアウト変更と、配線をよろしく!」
江野本は目を輝かせて、徹夜明けとは思えない元気な声で返事をした。
「はい! 了解です!! 早くしないと、開封式に間に合わなくなっちゃう!」
……そう。
俺たちはこれからここで、『3(トライ)』の開封式を行う計画を立てていたのである!! いつもいっしょに遊んでいる何人かで集まり、みんなでいっせいに『3(トライ)』のソフトを開封して、発売日のヨロコビを共有しようと思ったのだ。もちろん、ケータイで連絡を取り合えるので自宅にいてもロックラックで出会うことはできる。でも、『3(トライ)』の発売日という唯一無二の日をそれだけで終わりにするのは余りにも惜しかったので、せっかくだから仲のいい連中で集まり、リアルにお祭り気分を満喫しちゃおうと思ったのだ。ふたりで酒を飲みながら打ち合わせをしていて“『3(トライ)』の発売日をどう過ごすか”という話題になったとき、江野本がふいに「見るもの、聞くものに感動しまくるに決まっているんですから、いつものメンバーでリアルに集まって、その思いを共有しませんか?」と言ったことが、この企画の発端だ。すぐにEffort Cristal(エフォクリ)のふたりと、芸能事務所所属の超絶テキトーハンター、ゴメさんに連絡を取り、開封式に出席する5名が決定したのである。
「さあ、早く準備してしまおう! エフォクリのふたりはタイムアタックと同じく、早く来るぜー(笑)」
俺の言葉に江野本は笑って頷きながら、「はい(笑)。バッチリ準備して、楽しい開封式にしましょう!」と言った。
そして、爆笑の渦となった“逆鱗式『モンスターハンター3(トライ)』開封式”が始まった。以下次回〜!
えーっと……。
すんません、遅きに失した感がアリアリですが、いまさら『モンスターハンター3(トライ)』の発売日の模様をお届けします。じつは原稿は書いてあったんですけど、発売日取材を終えてすぐに江野本ぎずも会心の企画“開封式”なるものを行って、そのままずーっと『3(トライ)』で遊んでしまったためアップすることができませんでした!! でも、すごく読んでほしいモノが書けたので読んでやってくださいな。そして、開封式の模様はこれからじゃんじゃんアップしていきます。
『3(トライ)』のプレイ日記も、どうぞよろしくお願いします!!
◆◆◆
2009年8月1日−−。ついにこの日がやってきた! カプコンのWii用ハンティングアクション『モンスターハンター3(トライ)』が店頭に並んだのだ。どれほどこの日が来るのを待ち焦がれていたことか……。『2nd G』の発売から1年数ヵ月、そして前ナンバリングタイトルの『2(ドス)』から数えたらじつに3年半ぶりの『モンハン』の新作……。初代『モンハン』が作り、『2nd G』で結晶した“第1次モンハン世界”とは別に立つ、イチから作られたまったく新しい地球−−それが『モンスターハンター3(トライ)』だ。この作品をいち早く手に入れるべく、都内の量販店には早朝から行列ができた。
俺はファミ通ニュースチームの記者としてこの日、秋葉原のヨドバシカメラマルチメディアAkibaに足を運んだ。午前9時からカウントダウンセレモニーが始まり、9時30分から販売がスタートするという。カウントダウンイベントは、いまや大作ソフトの発売日の定番だ。『3(トライ)』のCMキャラクターを務める次長課長の井上さんらも登場するとあって、セレモニーが行われるイベント会場には多くのマスコミ陣が殺到していた。
なので俺がこの場にいるのも、あくまでもイチ記者としてだ。記者としてセレモニーの様子を見届け、関係者の声を拾い、ユーザーに取材をする……。ここは、15年の長きにわたって身を置いているじつに“通常の”仕事現場なのである。冷静でいよう。心涼しくして、ありのままをメモろう! そう心に決めてしばらくのあいだ呆然と、増え続ける行列の様子を眺めていた。すると……。
「お疲れ様です〜。……あれ? どうしたんですかその頭は(笑)」
明らかに寝不足な顔に笑みを浮かべながら、“ミスターモンハン”こと『3(トライ)』のディレクター、藤岡要さんが現れた。彼の顔を見て、俺は瞬時に“イチ記者”という名の仮面を“イチハンター”のそれに付け替えた。それはもう、いろいろと仮面を付け替えられる『3(トライ)』のマスコット的な仲間キャラ、チャチャ並みのす速さであった。俺は、まぶしそうに目を細める『3(トライ)』の生みの親に笑顔を返しながら、プリプリした口調でこう言った。
「ちょっと。会っていきなりのセリフがそれっすか(苦笑)。いやあしかし、ついにこの日が来ちゃいましたね」
俺の言葉を聞いて藤岡さんは「そうですね」と軽く言ったあと、ちょっと苦笑いをしながらこんなことを言う。
「なんかもう、感情があっちこっちに飛び散っちゃって、自分がいまどんな気持ちなのかがよくわからんのです(苦笑)。妙に冷静だと思ったら、すごく緊張していたり……。販売が始まったら、また違う状態になるんですかね?」
ああ……。そういうものなのか……。
彼らはもう3年半以上も、“新しい『モンハン』の土台”を作るために『3(トライ)』の制作作業に心血を注いでいた。とくにここ数ヵ月は、たまにしか会わない俺にも(『モンハン』開発部隊は大阪にいるのだ)彼らの消耗ぶりがわかるくらい、全身全霊の力を『3(トライ)』に注いでいたのである。
それにしても、3年も4年も作り続けたものがようやく完成してついにユーザーの手に届けられるとなったとき、作り手たちはどんな気持ちになるのだろうか? 前出の藤岡さんの言葉を噛み締めながら、俺も一応表現者のハシクレとして、どうにかして『3(トライ)』制作陣の気持ちを想像してみようと試みた。しかし、週刊誌や単行本を作っている期間と大作ゲームソフトを作っている期間の長さにあまりにも開きがあるので、どうあがいてもいまの彼らの気持ちに到達することができないのである。俺はその率直な気持ちを、「アレ? その頭、どうしたんですか?(ニヤニヤ)」と2日まえに会ったばかりだというのにシレっとそういうことを言ってのける小嶋慎太郎アシスタントプロデューサー(肩書きがプランナーから変わった!)にぶつけてみた。「3年以上も関わってきたものが旅立つときの皆さんの気持ちが、なかなか想像できないっすよ」と。俺の言葉を受けて小嶋さんはちょっと笑い、長くなり続ける行列の風景を眺めながらこんなことを言った。
「指折り待っていた発売日であることは間違いないんですけど、今日で終わりじゃないので気持ちはすごく複雑ですね。開発チームの人間はずっと全力でマラソンを走っていて、フッと横を向いたら“発売日”って看板があった……って感じかもしれません(笑)。ネットワークゲームだし、モンハンフェスタを始めとするイベントもこれからなので、気を抜いている場合じゃない、というのもありますからね」
行列に並ぶハンターの数は、時間を追うごとに増え続けた。昨今、ゲームソフトはネット通販や事前予約で買うことがすっかり“ふつう”のことになったので、よほどの大作ソフトでも発売初日に行列が作られることは難しくなった。ましてや『3(トライ)』は、どちらかというとライトユーザーが多いと言われるWii対応ソフトである。行列を形成する核となるのは“コアな”ゲームファンであることが多いから、『3(トライ)』の発売初日にどれだけの人が店頭にやってくるのか、15年もこの業界にいる俺でも読めないことおびただしかった。でも蓋を開けてみたら、ヨドバシカメラマルチメディアAkibaにはカウントダウンセレモニーが始まる直前で300人ほどが、そのほか都内量販店の前にも100人、200人という数のハンターたちが並び、彼らが『3(トライ)』をいかに待ち望んでいたのかを証明する形となったのである。
2009年8月1日午前9時。カウントダウンセレモニーが始まった。登壇したのは、『3(トライ)』の辻本良三プロデューサーと、同ソフトのCMキャラを務める次長課長の井上聡さん、そのハンター仲間であるハローバイバイの金成公信さん、コンマニセンチの堀内貴司さんだ。集まったハンターに向かって良三さんは、「いよいよ『3(トライ)』を、皆さんにお届けできます。ゆっくり、じっくり味わいながら、ぜひやり込んでください」と挨拶。また、発売に備えて「夕べは夜の11時に寝ました!」と気合入りまくりの井上さんは、『3(トライ)』で新たに導入された水中での立ち回りについて、「水の中は、慣れないうちは距離感がつかみにくくて難しいと思います。でも、水に飛び込むときに“ヤッホー!!”って言うと調子がよくなるので、ぜひ試してください!」と、発売当日に早くも怪しげな都市伝説を披露!! これは間違いなく、『3(トライ)』発としては日本最速の都市伝説ではなかろうか(笑)。
そして午前9時30分。会場のハンターが大きな声でカウントダウンをし、ゼロになったところで元気に「狩猟解禁!!」と叫んだのを合図に、『モンハン』シリーズ3年半ぶりのナンバリングタイトル『モンスターハンター3(トライ)』の販売がスタートした。ああ……。ついに始まるんだな、新しい狩猟ライフが……。ふと、近くにいた藤岡さん、小嶋さんのほうを見ると、ふたりは両腕を抱え込む仕草をしてしきりに腕をさすりながら、口々に「さ、さぶいぼが止まらない!!」と言っている。俺はそんな藤岡さんに近づき、震える声で「第一声を、くださいな」と声をかけた。すると藤岡さんはなんとも表現できない笑みを浮かべて、『3(トライ)』を買い求めるファンを見ながら、じつにじつに印象的な言葉を残した。
「なんだか我が子の旅立ちを見ているような気分ですねぇ……。作っているときは、そりゃあヤンチャなヤツでしたけど(苦笑)、皆さんにかわいがってもらえるといいなぁ……。でもここからはもう、『3(トライ)』はユーザーのものですので、自由に楽しんでいただければな、と(にっこり)。期待と不安は半々ですけど、少しでも多くの人に楽しんでほしいですね」
さらに藤岡さんは俺のほうを向いて、「大塚さん、これが新しい『モンハン』の土台です」と言った。
そして小嶋さんは感慨深そうな表情を俺に向けながら、熱のこもった口調でこう言った。
「大塚さんが『3(トライ)』に入ると、きっと「おかえり!」って声が聴こえると思います。そしたら元気に「ただいま!」って言ってやってくださいね」
そっか……。「ただいま」なんだよな。家や会社にいながら、会ったこともない不特定多数のハンターとクエストをともにし、この類稀なる世界観を共有できる場所に、俺はまた帰ってきたんだ……。
さあ行こう、ロックラックへ。まだ見ぬモンスターとフィールド、そして多くの仲間が待っているその場所へ−−。
「また長い付き合いになりますね。これからもよろしくお願いします!」
俺は、差し出された藤岡さんの右手を握り返して「こちらこそ!」と言い、この日いちばんの元気な声でこう言った。
「ロックラックで、会いましょう!!」
新しい大地での、新しいハンティング生活が幕を開けた−−。
◆◆『3(トライ)』ファーストインプレッション締切近し!!◆◆
絶賛編集中の『逆鱗日和』シリーズの新刊『別冊『逆鱗日和』 角満式モンハン学〜ハンター編〜』に、『3(トライ)』を遊ばれたハンターさんたちの体験談、ファーストインプレッションを掲載させていただくことになりました!! 現在、こちらでアンケートを受け付けておりますが、締切は本日の午後23時59分となっております。『3(トライ)』を遊ばれている皆様、どんなことでもけっこうですので、感想をお送りください! お待ちしております!
大塚角満

週刊ファミ通副編集長にして、ファミ通グループのニュース担当責任者。群馬県出身。現在、週刊ファミ通誌上で“大塚角満のモンハン研究所”というコラムを連載中。そこら中に書き散らした『モンハン』がらみのエッセイをまとめた単行本『本日も逆鱗日和』シリーズ(4巻)が発売中。また、そこからのスピンオフとして別の視点から『モンハン』の魅力に迫る書き下ろし作品『別冊『逆鱗日和』 角満式モンハン学』シリーズも。このブログではさまざまなゲーム関連の話題を扱うつもり。一応、そのつもり。
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