大塚角満の ゲームを“読む!”

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【MH3】第5回? 発売前夜のゆらめき (記事の最後にアンケート!)

 嗚呼……。ついにこの日がやってきてしまった……。大の大人がウルウルと涙目になり、まもなくやってくる”再会”の時を思って、恋するオトメのように胸からキュンキュンと音が出てしまう日。

「それ、胸ポケットにスズメでも入ってるんじゃないの?」

 ……ってそれは「チュンチュン」だろ!! と、ボケにもツッコミにもどうにもキレがありません。どっちかっつーと、頭が少々キレ気味です。いやあしかし、この揺れまくる気持ちをどうしたらいいんだ?(苦笑)

 現在、2009年7月31日の午後3時28分。『モンハン』シリーズの新時代の扉を開ける3年半ぶりのナンバリングタイトル『モンスターハンター3(トライ)』が発売されるまで、あと18時間ほどとなった(カウントダウンセレモニーが行われるヨドバシカメラマルチメディアAkibaの販売スタートが8月1日午前9時30分なので)。18時間後には最大100万人のハンターが『3(トライ)』を手に入れ、モガの村(シングルモードの拠点)やロックラック(オンラインモードの拠点)にくり出すのである。ああ……。なんて心落ち着かない……。この、なんとも言えないザワザワとした心の毛羽立ちはどうしたことだ? ヨロコビとは別のところにある、まったく違う感情。どちらかというといまの気持ちは、“焦り”や“不安”といった土の上にヒョロヒョロと芽を伸ばしている感じがする。俺は当然ながら『3(トライ)』の開発メンバーではないしカプコンの人でもないのだから、焦らずに堂々と構えてソフトが発売されるのを待っていればよさそうなものだ。そう思おうとするのだが、3年以上の長きにわたり“新しい『モンハン』世界”をイチから構築するために必死になって未開の地を歩んできたあんな人やこんな人の顔が頭に閃いてきて、どうにも胸が締め付けられるような思いに駆られてしまうのである。

 そういえばちょっとまえにも、いまと同じような気持ちになったことがあったなぁ……。……そうだ。1年半まえの『2nd G』の発売前日に、やっぱり言いようのないセンチな気持ちになって居ても立ってもいられなくなり、闇雲にキーボードを引っ叩いてブログに気持ちを吐き出したんだった。ちょっとその記事を引用してみよう。

“なんだか不思議なくらい心が落ち着かない。「うれしすぎて」という部分ももちろんある。しかし、どこかが違うものも含有されている。……はっきり書いてしまうと、じつはちょっと不安なんです。この微妙な男心、文字にして説明するのはかなり難しいのだが、あえて書いてみる。
 例えて言うならこれは、好きで好きでたまらなかった高嶺の花のような異性に告白したときに似ている。高嶺の花なので告白したところで、よくて「あんがと」と言われるくらいで、フラれるのは目に見えている。でも告白しないのも苦しいのでダメもとで気持ちを伝えたところ、衝撃的にあっさりと「いいわよ。付き合いましょ」と言われてしまい、「ちょっと! どうすんだ俺! 困った困った!!」となったときの気分に似ている。……自分で書いていて(こいつ、いま相当混乱してるナ)と客観視して見てしまうくらいどうしようもない例えだし、そんな経験をしたことはいっさいないのだが(苦笑)、本当にそう思っているのだから仕方がない−−”

 ハイ、この当時から俺がまったく成長していないことが判明いたしました。どうやら俺は『モンハン』の新作が発売されるたびに乙女になってしまうようです。そんな俺の様子をクスクスと笑って眺めながら、江野本ぎずもがこんなことを言った。

「大塚さんのソレ、マリッジブルーと同じなんじゃないですか?www」

 な、なるほど……。確かにそういうものなのかもしれない。でもね、しかたないのよコレばっかりは。今回の『3(トライ)』は、2006年2月に発売されたプレイステーション2用ソフト『モンスターハンター2(ドス)』以来となるナンバリングタイトルであり、土台から新たに創造された完全新作なのだ。初代『モンハン』に初めて触れた5年まえ、何を見ても、聞いても、触っても驚きと感動しか沸きあがってこなかったものだが、『3(トライ)』は俺を、あのときと同じ場所に連れ戻してくれるに違いないんだから。5年まえの自分に会いに行くかのような不思議な気持ち。どうやらこれが、このたびの情緒不安定っぷりの根底にあるもののようだ。

 あ。

 気がついたら、ダラダラとこの文章を書き始めてから1時間が経過してしまった。もう泣こうがわめこうが、あと17時間もしたら『3(トライ)』は発売されるんだよな。

 ヨシ! もう腹を括ってデンと構えていよう!

 この時代に生まれて、『モンスターハンター』の新世界に足を踏み入れられることを神様(開発チームの人たちね)に感謝しながら、ね。


◆◆『3(トライ)』の体験談を緊急募集!!◆◆

 単刀直入に書きます。

 現在絶賛編集中の新刊、『別冊『逆鱗日和』 角満式モンハン学〜ハンター編〜』に、2009年8月1日に発売されるWii用ソフト『モンスターハンター3(トライ)』について、ハンターの皆さんが遊んだ感想、ファーストインプレッションを載せてしまうことになりました!! 『モンハン』新世界に足を踏み入れ、全国のハンターは何を思い、そして何を見たのか? 下のリンクからアンケートページに飛んで、じゃんじゃん投稿しちゃってください! アンケートの期限は、2009年8月1日〜8月3日までです! めっちゃ短いので、うっかりしてると過ぎちゃいますよー! 送り忘れのないように! よろしくお願いします!

※『3(トライ)』ファーストインプレ投稿はこちら!

投稿者 大塚角満 : 16:45

【MHP 2nd G】第179回 武神の名のもとに、再び(その4)

 あまりにもバカバカしい話なので、今日は短めに……。

 屈強なモンスターが5頭も出てくる武神闘宴に挑むっつーのに、ライトボウガンを担いだ江野本ぎずもがなんと、撃てる弾をカラ骨【小】99個分とLV3 貫通弾60発しか持ってきていないことが判明。「どどど、どーすんだおまえ!!」、「どどど、どーしましょ!!」ってなやり取りを1分ほどしたのち、江野本が「そうだ!!」とナニかをひらめいたところまで昨日のブログで書いた。今日はその続きとなる。

 「そうだ!!」

 弾倉がからっぽになった金華朧銀の対弩を抱えてディアブロス亜種の突進からドタバタと逃げ回っていた江野本が、突然大声を上げた。「すばらしいことを思いつきましたよ!!」。

 ナンダナンダ。何を思いついたんだ? ディアブロス亜種に閃光玉を食らわせてちょっとだけホッとできる時間を作ってから、俺は江野本に言った。「なに? どうすんの?」と。すると江野本はデカい目をキラキラと輝かせながら、思いがけないことをのたまった。

支給品ボックスにボウガンの弾が入っているじゃないですか!! それを取ってくればいいんです!!」

 おお……。そんな手があったか!! 確かに支給品ボックスには、通常弾とか貫通弾とか、ボウガン用の弾が入っている。それを活用すれば、残るディアブロス亜種、激昂したラージャンが相手でも立派な戦力になってくれるだろう。俺も江野本に負けじと目を輝かせて元気に言った。

「すばらしい!! さっそくモドリ玉を使ってベースキャンプに戻り、支給品ボックスから弾丸を取ってきなさい!!」

 しかし、ここで再び江野本は、俺がまったく予期していなかった発言をする。

モドリ玉、持ってないッス」

 心からビックリして、俺はこう返した。

「ちょ……。じゃあなんで、そんな提案をしやがったんだ! ぬか喜びさせるんじゃねえ!! 言っとくけど、俺もモドリ玉なんて持ってないからな」

 ところが江野本はまったく落ち込んでるふうではなく、逆にニヤリと妖しく笑って、さらにさらに思いがけないセリフをぶっ放す。

モドリ玉がなくても、ベースキャンプに戻れる方法があるじゃないですかあ♪」

 「え?」と俺。なんだかイヤな予感がする。「ちょっと……。それってまさかおまえ……」と俺が言いかけたのを遮るように、江野本はトドメのひと言を発した。

「このクエスト、まだ1オチしかしてないでしょ? なのでウチはここでわざとディアにやられてキャンプに戻り、弾を取ってきます。じゃ、逝ってきまーす♪」

 そう言ったが早いか江野本は猛るディアブロス亜種に無防備に突っ込んでゆき、体当たりをモロに食らって瞬時に昇天した。完全なる自害だ。わざと1オチしてキャンプに戻るなんて、どんだけ余裕なんだこのクエスト。まったく、とんでもない方法を考えつく女がいたものである。

 それでも、この文字通りの捨て身の戦法が功を奏したのか、俺たちは危なげなくディアブロス亜種を料理してのけた。閃光玉をひたすら放って、ディアブロス亜種の動きを完全に封じてから攻撃しまくったのである。残り時間は、時計を確認しなかったのではっきりしたことは言えないが、余裕で20分以上は残っていたかと思う。残るは、激昂したラージャン1頭のみ。コーヒーを1杯ゆっくり飲んでからでも、問題なく討伐してのけるだけの時間が残されているわけだ。

「いける!! 余裕すぎる!!」

 俺と江野本は同時に叫んだ。

 ところが、やはり激昂したラージャンは並大抵の相手ではなかった。回復系のアイテムもたくさん残っていたというのに、「あ!!」と声を発したときには激昂突進をまともに食らって壁際に吹っ飛ばされ、「い?」と言葉が漏れたときにはバックステップに巻き込まれて、なんと俺が息の根を止められてしまったのである……。これで、3オチ。完全に俺たちが主導権を握った状態で事を進めていたというのに、けっきょくクエスト失敗である。そのショックはあまりにも大きく、いつもだったらここで言い合いが始まるところなのだが、このときばかりはふたりとも言葉が出てこず、「……」と三点リーダーを頭の上から飛び出させるだけで静かにPSPの電源を落とした。

 そして、その日の帰り道。

 単行本の作業が深夜に及んだため、ふたりでタクシーに乗り込んだ。武神闘宴失敗以降、俺たちは仕事の話しかしておらず、武神闘宴の“ぶ”の字も会話には出てきていなかった。しかしタクシーが走り出してしばらくしたあと俺たちは急に睨み合って、完全に同時にお互いのことを罵ったのである。

「えのっちが弾を忘れて無駄に1オチを使うから失敗した!!」
「大塚さんが油断してナルガなんかで落ちるから失敗した!!」

 ふつう、どちらかがしゃべり出したら一方は聞き役に回るところだが、俺たちはまったく口を止めることをせず、最後まで罵倒のセリフを言い切った。エフォクリも真っ青のシンクロプレイ(なのか?)を炸裂させた俺たちの泣き笑いが、いつまでも狭いタクシーの中に響き渡っていましたとさ……。

 それでも俺たちはめげずに、武神闘宴に再チャレンジし続けている。無事にクリアーできたら、またここで報告しよっかな。

 ……って、ちっとも短くなかったな、今回の記事も……。


★★★『逆鱗日和』シリーズ新刊情報!!★★★

 全国370万のハンターの皆様、お待たせいたしました! 以前ここで告知した『逆鱗日和』シリーズの最新刊の詳細情報を、ついにお知らせできることになりましたーーーー!!! いやあ、ここまで長かった!!

 ではさっそく、書籍の概要を発表しますね。それは、以下のとおりだっっ!!

■書籍名 別冊『逆鱗日和』 角満式モンハン学〜ハンター編〜
■発売日 2009年9月3日(木)
■価格 1260円[税込]

 夏発売、とかほざいていたくせに9月になっちまってゴメンナサイ!!

 さて本書の根幹を成しているのは、以前ここで集めた読者の皆さんからの“『モンハン』プレイ時の体験談”です。寄せられた約2700ものエピソードの中から、とくに光っていた約200作品をピックアップ。それに俺が手を加えて文章に起こしました。このほか、上の文章にちょっとありますが、有名芸能人ハンターと俺の対談(巻頭のカラーページで!)、特徴的なハンターの皆さんに取材して書き下ろしたルポルタージュなどがギッシリと詰まった1冊になっております。そのボリュームは、『逆鱗日和』史上最大! 読み応えはかなりのものになっておりますよ!

 ちなみに、本書のカバーはかなーーーーり目立つものとなっています。まだ本チャンのものは公開できないんですが、そのヒントとなるものをティザーってことで掲載しますね。それがこれだ!!

monhangakuhunterhen1com.jpg

 なんだか事件でも起こりそうなシチュエーションだと思わない? 近々、完成品も公開できると思うので、お楽しみに!

 そして!! じつはこの『ハンター編』は、まだすべてのコンテンツが揃っていないのです。まもなく『モンハン』新世界の扉を開く大作『モンスターハンター3(トライ)』が発売されますが、せっかくだからこの作品を遊んだファーストインプレッションも本書に掲載したいなと思ってしまったのでえす!! 『3(トライ)』が発売になる8月1日から3日間だけ、このゲームを遊んだ感想とか驚いたシーンなどを投稿してもらおうと思っております。詳細は追って発表しますが、『3(トライ)』を遊ぼうと計画しているハンターさんは、心の片隅に留めておいてくださいね!

投稿者 大塚角満 : 14:06

【MHP 2nd G】第178回 武神の名のもとに、再び(その3)

 そして大闘技場には、柔道の団体戦で言うところの“中堅”、グラビモス亜種が登場した。コロッセオ風になっている大闘技場の外縁に姿を現し、エラそうに俺と江野本ぎずものことを睥睨している。相変わらずふてぶてしいモンスターだ。

 しかしこのグラビモス亜種、3番目に登場するから便宜上“中堅”を名乗っているが(俺が勝手にそう呼んでいるだけだが)、その実力は完全に武神闘宴における“大将”である。大相撲で言ったら、幕内前半の取り組みに何を間違ったのかいきなり横綱が登場するようなもの(意味不明)。外殻の堅さ、圧倒的な体力、火炎ガス噴射と尻尾振り回しを連発することによる近寄りにくさなど、一筋縄ではいかない……どころか、二筋縄も三筋縄にもいかない。書いてて自分でもますます意味がわからなくなってきたが、とにかく書き手にそれほどの混乱を引き起こすほど、武神闘宴におけるグラビモス亜種は強烈極まりない“ストッパー”なのである。

 ではこの横綱相手に、ハンターはどう立ち回ればいいのか? じつは俺と江野本にはキチンとした腹案があるのである。くり返された失敗を糧にし、悪魔の子たちの立ち回りを“見る”ことでたどり着いた対横綱用の立ち回り。それは……。

 罠と爆弾をすべてコイツで使いきる!

 というものだ。この作戦を見ただけでも、グラビモス亜種がこのあとに登場するディアブロス亜種、激昂したラージャンを上回る脅威であることがわかるというものでしょう。

 俺たちはアイコンタクトを軽く交わしただけで、それぞれの持ち場に散った。まずグラビモス亜種が飛来し、着地をする地点に俺が落とし穴を設置する。その上に、江野本が大タル爆弾Gを2個セット。俺も同じように、大タル爆弾Gを2個置く。グラビモス亜種がこの穴にハマったら俺がハンマーのタメ3で起爆し、しばしのあいだ一心不乱に攻撃。そしてグラビモス亜種が穴から飛び出したら、今度は江野本が落とし穴。爆弾を置いて起爆して、飛び出したら今度は俺が……という工程をくり返して、早々にこの横綱を屠り去ってやろうというわけだ。もう完璧である。

 そしてグラビモス亜種はまんまと、俺が作ったひとつ目の落とし穴にドボンと落ちた。よし! タメ3で起爆だ!! ……と思ったが、考えてみたら俺はこれまでに、ハンマー使いの人が簡単に行うタメ3での起爆を一度もやったことがなかった。要するに、距離感がまったくわからないのである。しかしそういうことをここで言うと目の前にいる女が「はああ!!??(激怒)」ととたんにグレムリン化するので、心の動揺を表に出さず「それー」と力なく声を上げて恐る恐るタメ3をくり出す。しかし、案の定爆弾はピクリとも動かず、もがくグラビモス亜種の腹の下で無表情に立ち尽くしたままだ。や、やべえ! ここで爆弾を起爆できないのは致命的だ!! 俺は「ななな、なにか投げるものはなかったか!?」と大慌てでアイテムカーソルを回し、「あ!! これなら投げられるぞ!!」と黄色く光る玉っころを袋から引っ張り出し、やおらグラビモス亜種目がけてそいつを放り投げた。

 ぴかーーーーん

 グラビモス亜種の身体を通り抜けて、遠くで炸裂した閃光玉。しかし悲しいかな、件の大タル爆弾Gは静まり返ったままである。

「な、なにいまの光……」

 グラビモス亜種の背中方面から毒弾を撃ち込んでいる江野本が、いぶかしげな表情で俺を見る。い、いかん。ミスを連発しているのがバレる!! 俺は大汗をかきながらも何とか「ままま、間違っちゃった! いいいま、爆弾起爆すっからね! 待ってろよ!!」と言い、(もうこれしかねえ!!)と心の内で叫んで大タル爆弾Gに愛と悲しみのローキックをお見舞いした。

 ボボボボボンッッ!!

 爆風に包まれ、ヒラヒラと舞う俺の分身。それでも肉を斬った甲斐があって、ギリギリだったが落とし穴にハマっているあいだにグラビモス亜種に大タル爆弾Gをお見舞いすることができた。いやぁ、危なかった……。

 その後もぎこちないながらも、どうにかこうにか落とし穴と爆弾を駆使してグラビモス亜種にダメージを与えることができた。結果、俺がガンランスを持っていたときでは考えられない好タイムでグラビモス亜種を退けることに成功。俺は勝利を確信して、元気な声で江野本に言った。

「いけるぞえのっち! このペースだったら、余裕で武神闘宴をクリアーできるぞ!」

 しかし江野本、なぜか浮かぬ顔で俺をチラ見し、小さな声で「あの〜……」と言ってから衝撃の告白をした。

「弾が、もう、ないっス」

 彼女が言ってる意味がよくわからず、俺は思わず膝カックンをされたあとのヴォルガノスのような顔になって聞き返した。「へ?」と。すると江野本はなぜか少々怒ったような口調でこんなことを言った。

「いや、毒弾と麻痺弾、それとLV2 拡散弾があれば事足りるだろうなぁ〜と思って、カラ骨【小】を99個、竜の爪50個、ゲネポスの麻痺牙99個、イーオスの毒牙99個と、予備にとLV3 貫通弾を60発しか持ってきてないんす」

 ……。

 はあああああ!!??

 俺は砦の撃竜槍のように目玉を飛び出させながら怒鳴り声をあげた。

「お、おま、そんなんで足りるわけねえだろ!! そもそも、カラ骨【小】と調合素材の数が合ってねえし!!

 江野本、口を尖らせて言い訳(?)をする。

「だって、大丈夫だと思ったんだもの。麻痺牙と毒牙がたくさんあるから、もっとじゃんじゃん撃てると思った

 そんな、弾を撃ち尽くしてイタいことを言いまくるガンナーと、混乱の極みに達したにわかハンマー使いの前に、ズズズンと地響きを立てながら4頭目のモンスター、ディアブロス亜種が現れた。うーんしかし、このボウガンで殴ることとローキックしかできなくなったガンナーをどうすりゃいいんだ? 「…………」と頭から三点リーダーを飛び出させながら江野本を眺めていると、彼女は急に「そうだ!!」と言い、思いがけない発言をした。

 ……また長くなったので続きは次回。さすがにつぎで終わります……。もう少々、お付き合いを……。

投稿者 大塚角満 : 11:49

【MHP 2nd G】第177回 武神の名のもとに、再び(その2)

 というわけで、武神闘宴再挑戦記の2回目ですが、そのまえにちょっと書きたいことがあります。ハイ、『モンハン』とはまったく関係ございません! でもあまりにもショックなのと、誰かに指摘されるまえにさきにここで言っちまおうかなと思って……。

 土曜日、本当に久しぶりに休みを取ることができたので、「チャンスはいましかない!」と行きつけの美容室に行きました。

 そして、髪を伐られました

 切られました、じゃなくて、伐られました。

 いつも担当してくれる美容師さんに「暑いのでバッサリいっちまってください!」と元気よく宣言したものの、最近とみに自然破壊が進んでいる我が頭の原生林は“元気”に耐えうるほどのポテンシャルを持ち合わせていない。それでも担当美容師さんは「よーし!」と気合を入れてハサミを走らせ、伐るわ伐るわの大伐採を敢行。途中から(や、ヤバくね……?)、(だだだダイジョブかな……?)と急激に恐怖がこみ上げてくるも、走り出したハサミとブルファンゴはそうそう簡単には止まれない。結果、いつも整髪を担当してくれる女性美容師さんに「あら〜……。ずいぶん……スッキリしたのね……大塚さん……」と短いセリフのところどころに三点リーダーが飛び込む微妙な発言をされるほど、スッキリしまくりの頭となりました。って……。

 スッキリしすぎだからコレーーーーっ!! 痩せた土地になんてことをっ!!!

 翌日曜日、単行本の作業をするために江野本ぎずもと落ち合ったのだが、彼女は俺の頭を見るなり、

…………………あれ?(苦笑)」。

 くくく苦笑すんな!! 苦笑されんのがいちばんツライわーー!!

 というわけでエゾバフンウニのような凶悪な頭になってしまい、これからの人生をどう歩んでいけばいいのか真剣に悩んでおります。2日後に中学生からインタビューを受ける予定なのだが、俺を見て逃げ出さなければいいが……。

 なぜこんなことをいきなり書いたのかというと、8月1日に『3(トライ)』が発売されれば、きっと辻本良三プロデューサーにも会うと思うのよ。するとあの人は俺の頭を見るなり「いいネタ見つけた!!」とばかりに近寄ってきて、「あれあれ? なんや涼しそうな頭をしてる人がおるなあ(ニヤニヤ)」とか言ってくるに違いないのだ!! なので機先を制する意味でも、さきにここで表明したというわけです。

 さてと。なんか髪の毛同様スッキリしたので、武神闘宴再チャレンジの続きでも書くかな。

 武神闘宴はいまさら説明の必要もないかと思うが、ナルガクルガ、ティガレックス、グラビモス亜種、ディアブロス亜種、そして激昂したラージャンという5頭のツワモノどもを連続して討伐しなければならないという、アンタらちょっとエエかげんにしときんさいよ的な大連続狩猟だ。人呼んで“真・モンスターハンター”。村長上位のラストに控えるクエスト“モンスターハンター”(リオレウス、ティガレックス、ナルガクルガ、ラージャンの大連続狩猟)の上に存在するものとして、畏怖と羨望の思いを込めてこう呼ばれているのだ。

 今回、俺は武器に“ダイダラボラス”を選択した。『サヨナラ! 逆鱗日和』に収録されている“武神の名のもとに”という武神闘宴挑戦記ではガンランスを使用しているが、このときはまだガンランス縛りでのプレイを続けていたので、イヤだろうがナンだろうがガンランスを持つしかなかったのだ。でも今回は息抜き&ストレス発散の意味も込めての武神闘宴なので(かっこいいナ)、より華麗に、よりスピーディーに狩ることができるであろうハンマーを、迷わず選択したというわけだ。

 そして、クエストが始まった。まずは『2nd G』の象徴であるナルガクルガが相手だ。ぶっちゃけ、俺も江野本もナルガクルガとはイヤというほど渡り合ってきたので(大剣・大剣でシンクロプレイの練習したりしたからね)、その動きは知り尽くしている。最初の難関はナルガクルガではなく、つぎに登場するティガレックスなのだ。俺はティガレックス相手にハンマーを持ってどう立ち回っていいのかイマイチ理解していないので、そこでオチる可能性が高いのである。俺は江野本に言った。

「えのっち、いまから言っとくけどティガでは1オチを覚悟しといてよ! 正直、まだハンマーでは余裕の立ち回りは無理なので!」

 江野本もそれは重々承知しているので、にっこり笑いながらこう応えた。

「ハンマー角満がティガが苦手なことくらい織り込み済みですよ! その分、このナルガで稼いでくださいね!!」

 もちろん、俺もそのつもりだ。ナルガを簡単に葬り去って、アドバンテージを作ってやるぜ! しかし、そんなふうに油断しまくって不埒なことを考えながら立ち回っているから、つぎのような悲劇が起こるのである。

 開始2分、ナルガ相手に俺1オチ

「…………」(大塚)

「……………………」(江野本)

 俺はもう、顔面蒼白である。ティガで使うはずの1オチを、ナルガで、しかも開始2分で使っちまった……。俺は泣きそうな声で江野本に言った。

し、しぃましぇん……。ティガでオチるはずだったのにぃ!!!」

 呆れ顔で江野本が返す。

「まったくもー。でも、ティガでオチなきゃチャラっすよ! まだ始まったばっかですよ!!」 

 こんな感じで開幕早々にケチはついてしまったが、その後は驚いたことに戦前の予想どおりクエストは順調に回った。予想どおりだったら驚く必要などないのだが、驚いてしまったんだからしかたがない。「とりあえず、麻痺弾と毒弾だけ撃ちますね!」と宣言し、金華朧銀の対弩でもってLV2 麻痺弾をぶっ放す江野本の攻撃に、ナルガもティガもやたらと痺れまくる。おかげで俺は必殺のダイダラボラスでモンスターの頭ばかりを攻撃することができ、“めまい”を連発! なんと両モンスターを屠り去ったときには時計の針は10分を回っていなかった。俺がガンランスを持っていたときとは大違いの超速タイムである。

「ちょっぱええよオイ!!」と俺。

「大塚さんのガンランスは何だったんスか!!」と江野本。武神闘宴をクリアーするために、アイルーキッチンでネコの火薬術が発動するまで何度も何度もリセットをくり返していた、10ヵ月まえの自分たちが白亜紀の恐竜のように思えてならなかった。

 そしてここから、3頭の超ド級モンスターが登場するわけだが……長くなったので続きは次回!! ……って、前置きが長すぎるからだろ!! と、自分に突っ込んでおきます。スンマセン^^;

投稿者 大塚角満 : 19:06

【MHP 2nd G】第176回 武神の名のもとに、再び(その1)

 すさまじく久しぶりの更新になってしまったのには理由があります。いま、俺も江野本ぎずもも単行本の製作にかかりっきりになっていて(このエッセイのいちばん下に最新情報アリ!)、ちょっとエラいことになっているのです。好きでやっていることなので「たいへんだ」とか「つらい」とか言ってる場合じゃないのだが、それにしたってなかなかどうして、体力的にも精神的にも限界を超えた感じがしております。いやぁ〜、ホントにまいったなこりゃ……。

 しかし、本気で著者もディレクターもヘロヘロのボロボロでは前に進めないので、俺たちは強引にでも時間を作って息抜きをすることにしている。まあ息抜きの方法なんてかわいいもので、コンビニまで買い出しに行ったり、軽く酒を飲んだりする程度なんだけど。

 そんなある日、俺はとある有名ミュージシャンと対談をさせてもらった(その模様はもちろん、件の新刊に掲載!)。とても気さくな楽しい方で、対談の途中で「せっかくだから何かやりましょうよ」と提案してくれたのである。で、「やりましょやりましょ!」ってことになって、その方と俺、江野本の3人で究極の大連続狩猟“武神闘宴”に出向くことになった。そのときの詳細は割愛させてもらうが、クエストは緊張感に満ちた非常におもしろいものとなり、俺も江野本も大興奮。対談を終えて編集部に戻ってきてからも余韻は冷めず、我々はひと仕事終えて「ふぁぁああ〜〜……」と伸びをしながら同時にこう言ったのだ。

息抜きに、ふたりで武神闘宴なんてどう?」

 と……。

 かつて俺たちは、ガンランス、ライトボウガンを得物にふたりで武神闘宴に挑戦し、ひどい目にあったことがある。30回以上も失敗を重ね、「これはもう、俺たちには無理だ……」と思ったころにようやく、残り時間36秒というところでなんとかクリアーしたのだ。そのときの模様は“武神の名のもとに”というタイトルでコラム化し、拙著『本日もサヨナラ! 逆鱗日和』に収録してある。

 いまだから書くが、じつは武神闘宴への挑戦記をどうしても単行本に収録したいがために、当時俺たちは無理矢理時間を作ってこのクエストに挑戦していた、という裏話がある。でもいくら収録しようと思っても、“なんだかんだで最後はクリアーした”という結果がなければドキュメントとして締まらないし、書籍に収録するのはかっこ悪いと思っていた。なので原稿の締切ギリギリまで粘ってみて、もしもクリアーできなかったら「武神闘宴のことは忘れよう」とふたりで悲壮な決意を共有し、背水の陣を敷いてチャレンジしていたのである。結果、原稿のデッドラインが数時間後に迫ったとある日の深夜3時に奇跡的にクリアー。無事にエッセイ“武神の名のもとに”の3話は書籍に収録されることとなったのだ。

 あれから10ヵ月−−。

 俺たちは確実に、ハンターとして成長した。我々を慕ってくれている悪魔の子たち(もうゲネポ、Effort Cristal、Jast25`s、狩魂Tのことね)や、芸能界一のハンターである次長課長の井上聡さんのプレイを何度も間近で見、極まりまくるプレイヤーの息吹を肌で感じることで、俺も江野本も立ち回り時の心構えに大きな変化が起きたのである。

 いまなら絶対に、ふたりでも余裕でクリアーできるはずだ!!

 俺と江野本は無言で頷きあい、PSPの電源を入れた。武器は迷わず、ダイダラボラスを選択する。武神闘宴にもっとも向いていると言われる、毒属性のハンマーだ。そして江野本は、前回クリアーしたときと同じライトボウガン、金華朧銀の対弩を持った。

「麻痺と毒を中心に撃ちますね。ハンマーでガンガン攻めてください」

 と江野本。そのデカい目は、確実なる勝利の予感でメラメラと燃えている。

「よーし、任せろ! 悪魔の子たちの遺伝子を受け継ぐハンターとして、5頭のモンスターどもを圧倒してやろうではないか!!」

 と俺。いつ悪魔の子たちの遺伝子を受け継いだのか言った本人もさっぱり知らないのだが、こういうときは勢いが大事なのだ。

 準備を終えた俺たちは一瞬も躊躇することなく、大闘技場へ向かった。はたしてどんなドラマが待ち構えているのだろうか!?

 以下次回!

投稿者 大塚角満 : 23:54

【MH3】第4回!? 『モンハン3(トライ)』のランス、触りました。 その2

 昨日の続きです。

 とりあえず練習しなきゃと草食種を相手にランスを振り回していたら、スラッシュアックスを持ったハンターがやたらと俺のことを蹴飛ばしてきた。良三さんだっ!! 俺、怒り心頭に発して「このっ!!」と言いながら良三さんを追い回す。すると驚いたことに、自然とWiiリモコンとヌンチャクによるフリー操作の感覚に慣れてきて、カメラ操作や武器の出し入れがスムーズになってきたではないか。もしかしたら良三さんは、俺を挑発して動き回らせることで、フリー操作の機微を教えようとしたのではあるまいか。さ、さすが敏腕!! 良三さんの狙いどおり俺はすっかり操作に慣れ、ボルボロスに挑む準備が完全に整った。ヨシ! いこう、ボルボロスのもとへ!! そんな俺に、良三さんはしつこく蹴りを入れ続けた。俺は言った。

 「……もういいわい!! やっぱただ蹴りたいだけか!!」

 そんなバカなことをして遊んでいたら、俺の真横から「ぎゃあああ!! なんかいるー!! ……ていうか、何をもたもたしてんスか!! 早く来てくださいよ!!」という悲鳴が轟いた。マップを見ると、ひとりのハンターがボルボロスと遭遇してタイマンをしているのが見て取れた。どうやらこの勇者は、あろうことか江野本ぎずもらしい。男3人は肝を潰して「えらいこっちゃえらいこっちゃ」と踊りながら、江野本がひとりでボルボロスと渡り合っているエリアへと急行した。

 今回のターゲットであるボルボロスは、『3(トライ)』から新規に登場する“獣竜種”に属するモンスターだ。リオレウスのような飛竜とは違って翼を持たず、飛ぶことはできないが、その代わり……と言っちゃナンだが脚が異様に発達しているらしい。その走力、脚力は目を見張るものがあり、堅い頭を前方に構えての“猪突猛進”攻撃は必殺のパワーを秘めるという。うーむ。なんて恐ろしいモンスターなんだ。でも恐ろしさ以上に、まったく新規のモンスターを相手に立ち回れる高揚感に心を満たされ、俺はウキウキしながらランスの切っ先をボルボロスに向けた。

 とりあえずガチャプレイになってもいいから、テキトーにWiiリモコンとヌンチャクを振り回してボルボロスを突っつきまくる。武器出し攻撃から中段突き、上段突きをお見舞いしてから、バックステップを1回、2回、3回……。おお、『3(トライ)』でもランスは3回までステップが踏めるようだぞ。こりゃあ快適だ。さらに俺は調子に乗って、攻撃範囲の広そうななぎ払いを、まわりの迷惑も考えずにくり出してみる。案の定、ランスの切っ先がスラッシュアックスを持ったハンターに命中して躓かせることに成功した。それを見て「うけけけけ」と笑うと、遠くから「ちょっと!」と言う声が聞こえた。でも、気のせいかもしれない。

 ボルボロスは、なかなか奇抜な動きをするおもしろいモンスターだ。怒ると頭のてっぺんから湯気を出し(……って、じつは鼻孔が頭のてっぺんについているので、これは鼻息らしい。泥に潜ったとき、鼻孔だけを突き出して呼吸するようだ)、身体についた泥を撒き散らしてハンターに命中させ、動きを封じてきたりもする。そして、攻撃面での最大の必殺技は前述の猪突猛進だ。堅い頭を低く構えて、有り余る脚力を爆発させて猛烈な突進攻撃をくり出してくる。思わず何度か食らってしまったが攻撃力が非常に高く、満タン近くあった体力が余裕で半分以下になってしまった。こいつは恐ろしい。比較的頻繁にくり出してくるので、ボルボロスが頭を低く構えたらハンターは最大限の注意を払う必要がある。その証拠に、スラッシュアックスを持ったハンターがモロに猪突猛進を食らって三途の川を渡ってしまった。こいつはとんだ、青天の霹靂である。

 「えええ?」と徳田プランナー。心底驚いて、ジロリと良三さんを見つめる。

 「なんかオチてる人がいるんですけど」と俺。まさかここで、俺でも江野本でもないハンターがオチるとは思わなかった。

 「ぎゃーーーっ!! ボウガンがうまく扱えない!!」と江野本。彼女は自分のことで手一杯で、ほかの人がオチようがナンだろうがどうでもいいらしい。

 そして件の良三さんはすっとぼけた声で、しゃあしゃあとこう言ってのけた。

 「オチたの誰や? 徳田??」

 俺と徳田さんにいっせいに「あんただあんた!!」と突っ込まれながらも良三さんは素知らぬふうで、スキップせんばかりの勢いで再び狩場に現れた。この人はいつも、こういう感じなのである。

 それでもクエストは、非常にいい感じに回ったのではなかろうか。心配のタネだった江野本も『3(トライ)』のメインプランナーである木下さんのアドバイスを得て、なかなかスムーズにボウガンを扱っているようだ。俺も、カウンター突きこそ当てることはできなかったが、これまでのシリーズから大きく進化したランスを存分に振り回せてご機嫌&ご満悦。俺たちふたりがまともに立ち回れたならクエストに失敗するわけもなく、まもなくボルボロスは沼の上にドゥと倒れた。そう、討伐できたのである!! とたんに湧き上がってくるとてつもない高揚感。いやあやっぱり、たまらなく楽しいなこのゲームは!!

 クエストを終えて、俺たちはしばらくのあいだ反省会(?)を開いた。江野本はやたらと「ゲンキ弾がステキ!! ボルボロスがヨダレ垂らしたんスよヨダレを!! ゲンキ弾最高!!」と“ゲンキ弾”を連発してわめき散らしている。江野本が言うゲンキ弾は、どうやらモンスターのスタミナを奪って疲れさせることができる弾丸のようだ。スタミナがなくなると突進したモンスターは踏ん張りがきかなくなって倒れたりするなど、さまざまな恩恵を受けられるらしい。それにしても、ゲンキ弾か。俺は言った。

 「へぇ〜。そりゃいいね。でも元気弾って、どういうことだろうね。元気に影響するから、元気弾なのかな??」

 しばらくのあいだ俺の発言をポカンとしながら聞いていた江野本は「はっ!!」と我に返り、グレムリン化して声を荒げた。

 「いま大塚さん“元気弾”って言ったの!? ちゃいますよ!! 元気を減らす“減気弾”に決まってるでしょう!! 何言うてるんですかっ!!」

 あ、なるほど……。言われてみりゃそうだよな……。俺たちのやりとりを聞いていた良三さんは自分がオチたことなどとっくの昔に忘れ、「あはははは!」と腹を抱えるのであった。

投稿者 大塚角満 : 14:43

【MH3】第3回!? 『モンハン3(トライ)』のランス、触りました。 その1

 2009年7月4日からスタートした、『モンスターハンター3(トライ)』プレミアム先行体験会。朝まで週刊ファミ通の記事を作っていたとてつもない寝不足頭で、体験会初日の東京会場に足を運んだ。イベントの様子は、こちらの記事を参照くださいね。

 会場に着くとさっそく、いつもの顔が俺と江野本ぎずもを出迎えてくれた。辻本良三プロデューサーである。良三さんは「おつかれーっす」と手を振りながら俺たちの脇までやってきて、挨拶もそこそこに「昨日の完成披露会、どうやった?」と質問してきた。目の肥えたメディアの人間にどう映ったのか、やはり気になるようだ。この問いに対し、俺は正直に答えた。

 「めっちゃよかった!! もう、オープニングムービーとかたまらなかったし!!」

 すると良三さんは心からうれしそうに破顔して「よかった〜〜!!」と言ったあと、「でもちょっと、ステージが長すぎませんでした?」と質問を畳み掛けてきた。俺は再度、心から正直に答えた。

 「いやいや!! ぜんぜん長くない!! もっと延々とやってくれてよかったのに!!」

 良三さんは顔を青くしながら眼前で手をブンブンと振り、「無理無理! 死んでまう!!ww」と言って思いっきり苦笑いをした。でもその苦笑いにも、ひと仕事やり遂げたあとの充実感が見え隠れする。ソフトが発売されたらすぐにモンハンフェスタ`09が始まって再び忙しい時間が始まるので、いまはもしかしたら、ホッとできる貴重なひとときなのかもしれないな、と思った。

 そんな良三さんと、会場のメインスクリーンに映し出されていた一般ユーザーが体験プレイしているリアルタイムの映像を鑑賞した。そこでは、蒼い海の中で太刀を持ったハンターが、『3(トライ)』の象徴である海竜・ラギアクルスを相手に奮闘している。『3(トライ)』から新たに導入された海の中での狩猟シーンは、これまでの地上での生き物の動きが水平世界のものとするなら、完全に“全方位世界”のそれとなる。この中でうまく立ち回るには当然ながら“慣れ”が必要になるところだが、スクリーンに映し出されたハンターの動きは非常にこなれたスムーズなものだった。それを見て俺は思わず、「このハンターの立ち回り、めっちゃ滑らかだな……」とつぶやく。するとそれを聞いていた良三さんは確信に満ちた口調で「間違いなく、『G』についてた『3(トライ)』の体験版で練習を積んだ動きですね」とうれしそうに言った。『3(トライ)』を遊びたくて遊びたくてしかたのなかった人々の想いが、このハンターの動きに凝縮されている気がした。

 しかしこういう映像を観ていると、やっぱりどうしても自分でプレイしたくなってしまう。そこで俺は良三さんに、「体験会で空き時間があったら、いっしょにクエストできませんかねえ?」と水を向けてみた。すると敏腕プロデューサーは一瞬も躊躇もなく「お! やりましょやりましょ!」と言って、本当に空き時間に4人協力プレイ用の試遊台に近づき、俺と江野本を手招きしたではないか。予期しなかった、辻本プロデューサーとの協力プレイの始まりだ。クエストに行くメンバーは、俺、良三さん、江野本に加え、アテンドのひとりとしてそこにいた『モンハン』シリーズのプランナー“ミスター爬虫類”こと徳田さんだ。武器は、良三さんがスラッシュアックス、徳田さんがハンマー、俺がランス(使ってみたくてしかたなかった!)、そして江野本は迷いに迷った挙句にボウガンを選択。どうやらミドルボウガンらしい。しかし慣れないWiiリモコンによるフリースタイル操作でどのようにボウガンを扱っていいのかサッパリわからないらしく、「ちょっと! どうすりゃいいんですかこれー!!」と、自分でボウガンを選んでおきながら静かな会場でギャーギャーとわめきたてている。しかし俺も、初めて手にした『3(トライ)』のランスに恍惚となっていたので江野本の相手などしていられない。すると、この騒ぎを聞きつけたのかなんと『3(トライ)』のメインプランナーである木下研人さんが現れ、江野本にボウガンの扱いかたを逐一伝授してくれることに!! どんだけ贅沢なんだ的な環境の中で、我々は獣竜種・ボルボロスを討伐するために新フィールド“砂原”へと出向いた。

 さて、とりあえずはランスである。関係各位から「ランスはかなり熱い武器になっている!!」という噂とも確信ともわからぬ情報を得ていたので、元ランサーにして現ガンランサーである我が血は沸騰しまくりだ。さっそく操作説明パネルを眺めて、だいたいの立ち回り方法を頭に入れる。これまでのシリーズ作品のランスは、攻撃面でできることと言えば上段突き、中段突き、ガード突き、突進という4パターンくらいだった。ある意味、“もっとも動きがシンプルだった武器”と言えるかもしれない。そんなランスが、『3(トライ)』ではガラリと変わった。前述の攻撃方法に加えて、新たに“盾殴り”、“なぎ払い”、そして“カウンター突き”という攻撃ができるようになったのである!! もう、これを聞いただけで血沸き肉踊るってもんだ。これらの新モーションを加えて、いったいどんな立ち回りができるのであろうか!?

 とりあえずボルボロスに挑むまえに、フィールドをうろうろしていた名も知らぬ草食種っぽいモンスターを突っつきまわしてみる。いつものように武器出し攻撃から中段突き。そしてWiiリモコンを左にひねってAボタンで上段突き、さらに右にひねってAボタンで新モーションのなぎ払いをくり出した。そして、Bボタンを押してステップ。うん、じつにスムーズで気持ちがいい。おつぎはガード状態からAボタンを押して盾殴り! うーん、豪快で男らしい攻撃ではないか。さあ最後は、新生ランスの象徴的な攻撃になるであろうカウンター突きだ。こいつはモンスターの突進などの攻撃に合わせてくり出す捨て身の攻撃らしく、操作方法も“Wiiリモコンを立てた状態でAボタン長押し”という特殊なものになっていた。カウンターってことなので、おとなしい草食種にお見舞いするのは少々気が引ける。でもそのモーションを確認しないことには実戦で使えないので、誰もいないところで“空突き”をしてみた。えーっと、Wiiリモコンを立ててAボタンを長押し……って、おおお!? なんかハンターの身体から黄色いエフェクトがシュワワと出てきて、力が漲っているのがひと目でわかる!! そして、満身の力を込めて上段突きぃぃいい!!! うおおおお!! か、かっちょいーーーっ!!! これ、モンスターの攻撃を見切って本当にカウンターで当てることができたらチビっちまうかも!! そんくらい、浪漫に満ちたモーションだわこれ!! よーし、さっそくボルボロスにお見舞いしてやるぞ! 必殺のカウンター突きを!!

 ……って、長くなったので次回に続きます。

投稿者 大塚角満 : 13:33

【MH3】第2回!? 泣きたくなるほど、すばらしい作品があった

 俺は今日、何度会場で鳥肌を立てたであろうか。そして何度、心が奮えたのか……。心臓を鷲づかみにされて、ブンブンと揺すられたような衝撃。その衝撃の向こうにあった、とてつもない感動。『モンスターハンター3(トライ)』完成披露会で観た数々の映像とプレイ体験、そしてこのソフトの開発に力を尽くした関係者の言葉を聞き、俺は心から「このシリーズを追いかけ続けてきて本当によかった!」と思った。完成披露会の詳細はリポート記事に譲り、ここでは俺の主観で大作『モンスターハンター3(トライ)』を綴りたい。

 ……しかしそのまえに告白するが、じつは俺と江野本ぎずもはこの間、『3(トライ)』の登場が楽しみなあまり、「できるだけ何も知らない赤ん坊のような状態で発売日を迎えよう!!」と言い合い、「どっちが『3(トライ)』の情報を仕入れないでいられるか、競争しよう!!」という、ゲーム雑誌の編集者にはあるまじき競い合いを展開していたのである。これにより完成披露会直前までの最新情報は、俺が“ウラガンキンは四天王”、江野本に至っては“ボルボロス”止まりであった。この事実を完成披露会の会場で“ミスターモンハン”こと『3(トライ)』の藤岡要ディレクターに話したら、「その健気な情報規制のダムは、本日あえなく決壊します(笑)」と爆笑されてしまった。そして藤岡さんの言葉どおり、俺と江野本は完成披露会が終わるとすぐに、「いままで無駄な努力をしていたアホな記者はトリになって飛んでいきました!!」と叫び、「へへへ、編集部に帰ったらバックナンバー読み漁るぞっっっ!!!!」と恥も外聞もなくわめき散らしたのでありました……。

 さて。

 この日、まず最初に衝撃を受けたのは、初公開された『3(トライ)』のオープニングムービーだ。映像の詳細はネタバレになってしまうので書かないが、これを観て俺は瞬時に「ああ……。藤岡さんたちはずっと、こういう世界を描きたかったんだな……」と得心したのである。『3(トライ)』のオープニングムービーに描かれているものは、胸が締め付けられるほど圧倒的な“命の力”だ。力溢れる生物が跋扈する荒野の中で紡がれる命と、“生きるために”奪おうとする荒ぶる生命力。それが、このオープニングムービーの中に息づいているのである。俺はこのムービーを観て、改めてモンスターたちを「怖い」と思った。そしてそれ以上に「綺麗だ」と思った。生きるために行われるフィールド上のフェアなやりとりが鮮烈な映像と相俟って、ハンターたるプレイヤーを感動させるのである。抽象的な表現の連続ではなはだ恐縮だが、この文章の意味は8月1日になれば必ずわかると思う。なのでぜひ、ソフトを手に入れてオープニングムービーをご覧になったら、もう一度この文章を読み返してみてください(笑)。

 オープニングムービーの上映が終わったあと、ステージ上では辻本良三プロデューサーと藤岡ディレクターによる『3(トライ)』のデモプレイが行われた。なんと今回は“オンラインデモ”ということで、ステージ上のWiiをネットに接続し、東京の会場と大阪の『モンハン3(トライ)』開発部をつないで待望のネットワークモードの一端が紹介されたのである。

 藤岡さんの操るキャラは、“街門”(がいもん)と呼ばれる街の玄関口に佇んでいた。プレイするサーバーを選択したあとは、まずこの街門にハンターはやってくるのだ。この街門でハンターが集う“街”を選択。このへんの流れは、プレイステーション2の『モンハン2(ドス)』とほぼいっしょである。藤岡さんは良三さんと大阪の開発スタッフが待つ街を選び、その中へ飛び込んでいった。

 街の施設で真っ先に紹介されたのが、『3(トライ)』で新たに導入された“アイテム交換所”だ。読んで字の如く、手持ちのアイテムを別のアイテムと物々交換することができるという新機軸の施設である。このアイテム交換所、おもしろいことに1日ごとにリストに現れるアイテムが変化するとのこと。こういった“ゆらぎ”の要素は前作『2(ドス)』でもいくつか導入されていたが、懐が寂しいときでも余り気味のアイテムを放出することで、欲しかった素材が手に入るかもしれない……というアプローチは、非常にわかりやすくておもしろい。「もしかしたら、何か掘り出し物が手に入るかも!?」と、近所のリサイクルショップを覗くときのようなワクワク感を感じられそうだと思った。

 アイテム交換所のつぎは“ゲストハウス”が紹介された。いわゆる宿屋で、システム的には『G』や『2(ドス)』と大きな差はなさそうに見えたが、なんと『3(トライ)』では部屋に好みのインテリアを飾れるようになっていた。インテリアを作ってもらえる“インテリア工房”もあるとかで、キャラクターだけでなく部屋も自分好みにカスタマイズすることが可能になったようだ。

 そして、ほかのプレイヤーとの“コミュニケーション”の部分でクローズアップしたいのが、クエストに行っているハンターにチャットを送ることができるようになったこと!! じつは5年まえに初代『モンハン』を遊んでいたとき、クエストに行っているハンターともチャットができると思い込んでいて、しきりに「おーい。街に戻ってこいよー!」なんていう発言を恥ずかしげもなくしていたことがあったのだが、そのときの夢(?)がついに『3(トライ)』で実現されたわけである。実際にステージでは、ひとりでクエストに行っていた開発スタッフに向かって「もどってこいよー」っとチャットでメッセージを送り、受け取った側が「オッケー」と応えて街に戻ってくる……というデモが披露された。これ、何気にものすごく便利な機能追加である。

 街の解説がひととおり行われたあと、4人のハンターは新フィールド“砂原”を舞台にしたボルボロス(もちろん新モンスター!)討伐のクエストに出発した。注目は『3(トライ)』で新たに導入された武器“スラッシュアックス”。藤岡ディレクターが操るハンターが、これを装備しているようだ。“斧と剣の要素を併せ持った変形する武器”という触れ込みだが、さて、実際に振り回すとどうなるんだ……?

 さてここからは、『3(トライ)』の体験リポートとなる。じつは完成披露会終了後に会場に設置された試遊台がオープンになって、我々報道陣も自由に遊ぶことができたのだ。情報規制のダムが決壊した俺と江野本ぎずももこれに取り付き、会場が閉まる直前にプレイさせてもらった。

 クエストは、ラギアクルス討伐、ボルボロス討伐、クルペッコ討伐の3つから選ぶことができたのだが、ラギアクルスは昨年の東京ゲームショウなどで顔を合わせているし、クルペッコは『3(トライ)』の体験版でさんざん遊んでいるので、ここはやはり初顔合わせとなるボルボロスを選択するしかない。武器はすべてのカテゴリーから選ぶことができたので、俺は迷わず、新武器のスラッシュアックスを選択。ちなみに堅実派(?)の江野本は、片手剣を手にしたようだ。さあさあ、ついに夢にまで見たスラッシュアックスを持っての“初トライ”(シャレじゃないヨ)である!!

 我が分身がキャンプに降り立ったのを確認し、とりあえずWiiリモコンとヌンチャクをガチャガチャと振り回して操作方法を確かめる。すると俺の後ろに開発スタッフの若い男性がやってきて「Wiiリモコンでの操作、大丈夫ですか?」と親切に声をかけてくれた。最近、『G』でばかり遊んでいてしばらく『3(トライ)』の体験版をWiiリモコンで遊んでいなかったので「いやぁ……ちょっと危ういかも……」と言って助けてもらおうと思ったら、俺の真横に現れた開発スタッフのTさん(顔見知り)が「おいおい! この人は世界一のガンランサー(笑)と言われた、あの大塚角満さんだぞ! 平気に決まっているでしょう!ww」と笑いながら突然の断言。俺はぶったまげて、「ちょっとTさん!! 変なプレッシャーかけないでよ!!」と言ったが時すでに遅く、若き男性スタッフは「失礼しました! あの大塚さんでしたか! いつも読んでますよ!(ニヤニヤ)」と言ってニヤリと笑う。それでもスラッシュアックスを選んだ俺を見て「さすがにスラッシュは初めてですよね。使いこなせるとメチャクチャかっこいいですから、操作方法を解説しましょう」と助け舟を出してくれた。これで怖いものナシだ。

 スラッシュアックスは、斧と剣というふたつの顔を持った特殊な武器だ。カシャカシャと瞬時に形態を変化させることで、斧と剣のふたつの特徴をモンスターにぶつけることができるらしい。解説によると、斧モードのときは基本の攻撃力が高く、通常攻撃で大ダメージが見込めるようだが、攻撃がガキンと弾かれることがある。逆に剣モードのときは斧よりも攻撃力は低いが攻撃が弾かれることがなくなり、何より属性攻撃をすることができるようになる。斧から剣、剣から斧へと瞬時に形状を変化させることが可能で、たとえば剣で突きのモーションを出したときにヌンチャクのZボタンを押すと、一瞬で斧に切り替わった。当然、この流れの中で斧から剣に変えることも可能。形状の変化を攻撃の流れに組み込むことで、延々とコンボを続けることができるようだ。

 そして、スラッシュアックスの真骨頂となるのが“属性開放”という攻撃だ。スラッシュアックスを剣モードにしたときに発動する特殊な攻撃方法で、ガンランスの竜撃砲のようにしばしのタメ時間のあと、一気に属性のカタマリ(としか言いようがない)を剣の切っ先から放出する。コンボの流れの中から発動させることもできるし、足止めをしたモンスターを狙い、いきなりお見舞いすることも可能だった。でも、タメ時間がわりと長かったので「俺にできるかな……?」と少々心配だったのだが、江野本の攻撃で転倒したボルボロスを見て後ろにいた開発スタッフの方が「属性開放のチャンスですよ!!」と叫んだのをきっかけに、俺は「チャチャチャ、チャーンス!!!」と絶叫。のた打ち回るボルボロスに接近し、「うおおおおっ!!!」とツバを撒き散らしながらマイナスボタンを連打。徐々にスラッシュアックスの切っ先に属性の力が溜まっていって……!

 ボワンッ!!!

 吐き出された属性のカタマリが、ものの見事にボルボロスに直撃した。

 「ややや、やった!!! 当たった!!」と俺。

 「当たりましたね!!!」とまわりにいた開発スタッフの方々。な、なんて気持ちいいんだ、スラッシュアックス……。

 そして俺はこのとき、『2(ドス)』で初めてガンランスを持ち、初めて竜撃砲をブチかましたときのことを鮮明に思い出していた。あのときも、いまとまったく同じように“初めての出来事”に感動して居ても立ってもいられなくなっちゃったんだよな……。このスラッシュアックス、姿、形はぜんぜん違うし使い勝手もガンランスとはかけ離れている。でも、その佇まいとスピリッツの中に、俺は確かに、ガンランスの姿を見た気がした。

 しかし残念ながら、俺が属性開放をぶっ放したところで閉館の時間となり、クエストは終了となってしまった。プレイできた時間は、10分弱といったところだろう。それでも、俺と江野本は興奮の極みにいた。個人的情報規制なんてやってる場合ではない。このすばらしい作品の魅力を、もっともっといろんな人に伝えて歩かなきゃ!!

 帰り際、俺はたくさんの開発スタッフの方々に声をかけてもらった。数年に及ぶ開発が終わったばかりでその顔には疲れの色も残っていたが、それ以上に彼らは、充実感に満ちたステキな笑顔を見せてくれた。

 「大塚さん、やっと完成しましたよ!」

 開発スタッフのHさんは弾けるような笑顔でそう言った。重要なポジションにいる彼の苦労とプレッシャーは、並々ならぬものがあったに違いない。それでもHさんは別れ際に、決意に満ちた口調でこう続けてくれた。

 「本当にみんなで、魂を込めて作りました」

 ひとつの仕事をやり遂げた男の、これ以上はないってくらい気持ちの詰まった言葉を聞いて、なんだか無性に、泣きたくなった。


投稿者 大塚角満 : 22:54

【MHG】第23回 死神に取り憑かれた日 その2

「6月22日にアップした”死神に取り憑かれた日 その1”の続きはどうなったんスか!! きしゃーーーっ!」

 と、ある人が突然グレムリン化して襲いかかってこようとしたので、件のコラムをアップしてから1週間以上が経過したいまになって、その続きを書こうと思います。「ネタ、忘れちゃった」なんて口が裂けても……いや、指の股が避けても書けません。

 その日、俺と江野本ぎずもは、ハンターランク27以上の高級ハンター(?)だけが行けるクエストに出発した友だち3人に怨嗟の熱視線を照射しながら、半ばいじけてG級のゲリョス討伐クエストに出発したのである。で、とりあえずゲリョスは無視して採取に走り江野本がメラルー軍団に身ぐるみ剥がされた……ってところまでは”虫が湧く森と丘”というコラムで書いた。今回はその続きとなる。

 メラルーに盗まれた物品の奪還をあきらめ、「肉がなくて走れん」とブーたれている江野本に「しょうがねえなあ」と言いながら肉を分け与えてから、俺は「よし! こっからはマジメにゲリョス討伐に精を出すぞ!」と元気に宣言したのだ。ゲリョスとはいえ、相手は百戦錬磨のG級モンスターだ。ちょっとでも油断したら、あっと言う間にこちらが三途の川を渡るハメになる。

 しかしさすがは逆鱗日和ファミリー。『モンハン』のプレイ時間の長さだけは自慢できるものがある。ゲリョスなんてこれまでに、何百頭狩ってきたことか。俺たちは”対ゲリョス”のセオリーに則って、頭側に陣取ったランスの俺がトサカを破壊。片手剣の江野本は伸縮するゴム質の尻尾の長さを見切って距離を取り、軽いフットワークを駆使して巧みに斬り込んでいた。もう、カンペキ。この美しいチームワークと立ち回りを見て、俺たちがオチる様を想像できるヤツがこの世にいるわけがない

 そして、ゲリョスのヤツもセオリーどおりに地面に倒れ伏し、ピクリとも動かなくなった。

「ハイ、ルーキーハンターの皆さーん。ここで油断しちゃダメですよぉ。このゲリョスというモンスターはですね、自分の体力が減ってくると”死んだフリ”をするんです! そう、自然界の動物もよく見せる”擬態”というものですね。これを見た捕食者が「あ、死んでもうた」とびっくりして去っていくのを狙っているわけです。ホラ、「死に勝る護身なし!」って郭海皇も言ってるでしょう。 『バキ』の27巻に出てますよー。ココ、テストに出ますからねー。まあとにかく、ゲリョスはまさにこれを実践しているわけでえす」

 てな感じでゲリョスの死に真似は、テストに出てしまうくらい(?)、『モンハン』世界の常識なわけです。ゲリョスは死に真似から起きあがるとき、イタチの最期っ屁を彷彿とさせる強力な攻撃をしてくるが、距離さえキチンと保てていればそうそうこれを食らうことはない。ましてや俺は、『モンハン』歴5年、ゲリョスと付き合いだしてからも5年の”ゲリョスのベテラン”である。こんな、1発逆転を狙った大振りのパンチが当たるわけがない! 俺はゲリョスが死に真似から復帰したらすぐに攻撃を加えられるよう、ランスの切っ先が当たるギリギリの位置に身体を置いた。ベテランハンターの血だけが知る、究極のベストポジション。さあ、ゲリョスが起きるぞ。数秒後に追撃だ!!

 ガウーン!!!

 MIDOは力尽きた

 あっそ。

 ……とまあ、ここまではよくある話です(そんなことない)。問題は、このあとなのだ!

 さてここから、またまた『モンハン』とはまったく関係のないことを書きます。極めつけに関係ないうえに、とてつもなくおぞましい話です。ぶっちゃけ、ショックに弱い方、お食事中の方、そして虫が嫌いな方は読まないほうがよろしいかと。覚悟ができた方だけ、ここから先にお進みください……。

 同じ日。

 ちょっと時間が取れたので、その日の晩酌のつまみを自分で作ることにした。こう見えて俺は料理が好きなので、酒のツマミはもとより、お客さんが来たときに振る舞う料理なんかも自分で作ったりする。まあでも、それはどうでもいい話だ。

 俺は築35年ほどの古い一戸建て住宅に住んでいる。当然ながらリフォームしてから暮らし始めたのだが、これだけ使い込まれていると多少の手直しくらいじゃ追いつかず、壁にいかにも虫が自由に出入りしてますよ的な穴が空いていたりする。まあどこの家も、似たようなものだろう(そうだと言ってくれ)。

 で、そんな古いキッチンで料理を作っていたわけです。季節は梅雨真っ盛りでその日の湿度は70パーセントオーバー(たぶん)。我が家にはネコが2匹もいるので、エサの皿にはつねに栄養価の高いカリカリエサがコロコロと転がり、燃えないゴミを入れる袋にはネコのウェットフードが入っていた空き缶が詰め込まれている。当然、缶も洗ってから捨てているが多少のネコエサの名残は残っているものです。そんな環境にありますからこの時期になると必ず、激昂ラージャンよそこにひれ伏せと言わんばかりの貫禄をまとって”ヤツ”が現れるのだ。『英雄の証』がいくら流れようが、”ヤツ”への嫌悪感と恐怖心はいっこうに消えてくれない。”ヤツ”とはそう、ゴキブリだっっ!!

 ヤツはその日、俺がすばらしいスピードで長ネギをスパパパパと切っている最中に現れた。ホントにいきなり、現れた。その神出鬼没っぷりはたとえるなら、渋谷駅前のスクランブル交差点を「ケッ! ペッ!」と意味もなく粋がりながら横断しているときに、いきなり目の前にオオナズチがぼわわんと現れたときに似ている。そんな経験はいまのところしていないけど(当たり前だ)、それくらい突然、俺の眼前に茶色の裸体(でいいのか?)をさらしたのだ。

 体長は目測で、約2センチといったところか。このまま無事に成長すれば、立派なチャバネゴキブリになると思われる。っていやいや、無事に成長されちゃ困るんだよ!! クイーンランゴ……じゃなくてクイーンチャバネゴキブリになられるまえに討伐しなければ!!

 俺はいまや、イャンクックが見たら裸足で逃げ出すくらいの鳥肌をまといながらも努めて冷静を装い、「はいはい、逃げちゃダメでちゅよー……。ちょっとそこでおとなしくしていてくだちゃいねー……」とネコ撫で声を発しながら、ダイニングテーブルの下に設置されている殺虫剤を手に取った。ぐへへへへ。これで俺の勝ちだ。覚悟しろよコンニャロ。俺はヒュンヒュンと触覚を蠢かせている若きチャバネゴキブリに向かって叫んだ。「毒ケムリ玉を食らえええ!!」と。

 そして、間髪入れずに殺虫液を大噴射。近代兵器の煙は見事、憎きランゴ……じゃなくってチャバネゴキブリを直撃した。しかし量が足りなかったのか致命傷を与えることは叶わず、ゴキブリは台所のシンクの上を右往左往している。でも、こやつを討伐するのは時間の問題だ。もうひと噴射、殺虫剤の煙を直撃させれば三途の川を渡らすことができよう。俺はガンランスの切っ先のつもりで殺虫剤の噴射口をチャバネゴキブリに向け、いままさに竜撃砲を発射せんと身構えた。さあこれで終わりだ! さらばチャバネゴキブリ! 食らええええ!!

 ……しかしそのとき、不思議なことが起こった。

 本当に突然、目の前にいたチャバネゴキブリが消えたのである。ほんの1秒前までガンランスの切っ先の先にいたのに、俺が瞬きでもした瞬間にパっと消えてしまったのだ。これ、誇張でもなんでもなく、ワープでもしたかのようにいなくなってしまったのよ。俺は思わずゾッとした。こいつはもう丸っきり、心霊現象の世界である。でも「ゴキブリの幽霊が出た!」と言ったところで誰も驚かないどころか笑われるだけなので、俺は無理矢理納得しようとした。前述のとおり俺の家にはそこらじゅうに隙間があるから、きっとそこに滑り込んだのであろう、と。なーんだそうか。そうだよな。ゴキブリなんて神出鬼没なんだから、消えるときも一瞬なんだよ。俺は簡単に自己暗示にかかり、「驚いて損した」とため息をついた。

 そして、俺は料理を再開した。料理を始めてしまえば一瞬まえのイヤなことなんて簡単に忘れてしまう。まもなくやってくるステキな晩酌のときを思って、俺は思わず舌なめずりした。しかし、そのときだった。

 ガサガサガサ!!!

 いきなり首筋を、37年の人生で一度も感じたことのないおぞましい痒みと微かな痛みが這いまわった。うわあああ!! なんだなんだ!! 俺のうなじのあたりになんかいるよ!! 俺はオカマのような声で「ひゃーーーー!!」と悲鳴を上げて、「やめろやめろ!!」と言いながらバシバシと首筋を叩いた。すると「べしゃ」というイヤな音を立ててながら、キッチンの床にナニモノかが着地したのが目に入った。恐る恐るそいつを見ると……!!

 うわ。チャバネゴキブリ!!!!

 そいつは明らかに、数分まえに俺の眼前から消え失せた、あのチャバネゴキブリだった。いったいどうやって俺の背後に回り込んだのか見当もつかないが、俺がひっかけた殺虫剤と思われる液体にまみれていたので、こいつが先ほどのヤツと同一ゴキブリであることは間違いなかろう……。

 俺は料理をすることを止め、ゴキブリに這い回れた我が身体を呪い、すぐにシャワーを浴びて布団に潜り込んだ。そして、今日あった出来事を震えながら反芻した。

「行けると思っていたクエストに行けなくて1オチ、ゲリョスの死に真似ごときにやられて素で2オチ、そしてゴキブリアタックに当たって3オチ……」

 こんな日は、もうこりごりです……。

投稿者 大塚角満 : 11:45

大塚角満

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週刊ファミ通副編集長にして、ファミ通グループのニュース担当責任者。群馬県出身。現在、週刊ファミ通誌上で“大塚角満のモンハン研究所”というコラムを連載中。そこら中に書き散らした『モンハン』がらみのエッセイをまとめた単行本『本日も逆鱗日和』シリーズ(4巻)が発売中。また、そこからのスピンオフとして別の視点から『モンハン』の魅力に迫る書き下ろし作品『別冊『逆鱗日和』 角満式モンハン学』シリーズも。このブログではさまざまなゲーム関連の話題を扱うつもり。一応、そのつもり。


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