大塚角満の ゲームを“読む!”
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ゲームとはまったく関係ないけど、あまりにもおもしろかったので書かせてくれ。
とある日の午前10時ごろ、俺は会社に向かう通勤電車に揺られていた。座席は当然のようにすべて埋まっていたので、ドアにもたれかかって呆然と、窓の外を眺める。明け方まで音を立てて降っていた雨はいつの間にか上がっていたが、空を覆う梅雨色の雲はいまなお不安げで、自然と傘を持つ手に力が入った。
俺が乗った車両の乗車率は、150パーセントくらいだった。通勤電車にしては比較的余裕があるほうだ。座席争いに敗れた人たちは所在なげにたたずみ、新聞を広げたり、PSPを眺めたり、同行者とおしゃべりをしたりしている。車内に広がる喧騒はほとんどが日本語のはずなのに、どうしてガヤガヤザワザワという言語ならざる“音”にしか聴こえないのだろうか……? そんなことを考えていたら、ひと目で女子大生とわかる女の子ふたり組が俺の向かい側に立って、ドアにもたれかかった。これくらいの距離だったら、会話の内容もしっかりと聴き取ることができる。べつに盗み聴きをするつもりじゃなかったのだが、けっこう大きな声でギャゴーギャゴーとしゃべっていたので、イヤだろうがナンだろうが耳に飛び込んできてしまうのだ。なのでしかたないのだ。これでいいのだ。
女子大生Aと女子大生Bは、どうやら共通の友だちの噂話をしているようだった。彼女たちはしっかりと登場人物の性格付けやバックグラウンドストーリーを理解しているようで(当たり前だが)、ところどころで「マジウケるー!」と言っては腹を抱えている。しかし、物語の途中からいきなりこの話を聴かされている俺からすると(勝手に聴いているだけだが)、登場する“サトウなにがし”や“ヤマモト先生”(もちろん仮名)がどんな設定がされたキャラなのか皆目わからないので、戸惑うやらイラつくやらでたいへんである。でも、「ちょっと、最初から順を追ってストーリーを説明してよ」とお願いするわけにもいかず、俺は少々キョドりながらもおとなしく、彼女たちの話すサトウなにがしとヤマモト先生の物語に耳を傾け続けたのであった。
そして、聴衆からするとイマイチ盛り上がりに欠けるストーリーが終盤に差し掛かったころ(俺が乗り換える駅に近づいたので)、事件は起こった。そのときの女子大生A、Bの会話を再現する。
A 「なんかー、授業中にヤマモト先生がサトウを怒ったみたいでー」
B 「うんうん」
A 「すげえ怒ってぇ、ヤマモトさん」
B 「うん」
A 「なんかぁ、アレでサトウの机の上のものを叩き落したって!」
B 「アレって?」
A 「アレアレ。なんだっけ。棒みたいな……。サ、サ……」
B 「サ??」
A 「思い出した! サルマタだサルマタ! サルマタみたいな棒で落としたんだって!!」
俺、本気でずっこけて、肩にかけてたカバンを落としそうになる。しかし、恐怖の会話はまだ終わらなかった。
B 「あー、サルマタw 怒りすぎだよヤマモトさんww」
俺の心の声 (突っ込むところそこじゃないから!! サルマタじゃなくてサスマタだろ!!)
A 「らしいよーw マジウケるwww」
俺の心の声 (マジウケるのはこっちだ!!)
という会話が、混雑する都内の通勤電車の中で行われていたのであります。でももしかしたらヤマモト先生は、本当にサスマタじゃなくてサルマタで机の上のものを叩き落したのかもしれない。だとすると、彼女たちの会話に大きな問題はないので、俺が反省しておきます。
で、話を強引に『モンハン』に結びつけるが、こういう勘違いというか言い間違いは『モンハン』世界にもゴロゴロと転がっている。以前コラムでも書いたが、“紅玉”を“べにだま”、“逆鱗”を“さかりん”、“バサルモス”を“バルサモス”、“ガノトトス”を“ガトノノス”、“ラオシャンロン”を“ラオシェンロン”、“シェンガオレン”を“シェンガレオン”など、挙げ出したらキリがない。でもこれらはすべて既出のもので、じつは新ネタとしてWii版の『G』で出会ったおもしろい言い間違い、勘違いネタをたくさん仕入れてある。が、そういったものはすべて現在編集中の『逆鱗日和』新刊に盛り込むつもりなので、ぜひぜひそちらに期待していただければ! ……って、コレ、ただの宣伝コラムだな(苦笑)。
友だち3人が戦慄のイベントクエストに出かけていったのを見届け、イベントクエストを受注するにはハンターランクの足りない俺と江野本ぎずもはどのクエストに出かけるか相談を始めた。気分的には、重要な仕事に出かけて行くお父さんを見送ったあとの小学生のようなものである。俺は、恐るべきイベントクエストに物理的に参加できないことを知ってなぜかホッとした顔をしている江野本に向かってズバンと言った。
「森と丘に行って達人のドクロなどを採集したい。よって、受注するクエストはG級★6の“毒の怪鳥、ゲリョス現る!”とするが、よいか?」
江野本、目を輝かせてこう応えた。
「わし、むし!!」
翻訳すると、「あっしは森と丘で虫を捕りたい」となる。しかし、あまりにもあんまりな発言なので、俺は江野本を叱った。
「ワムシが湧きそうな言いかたをするんじゃありません!」
これを聞いた江野本、グレムリン化して食ってかかってきた。
「失礼な!!! 虫なんて湧きませんよ!!!」
こういうことを言い始めるといつまで経ってもクエストに出かけられなくなるので、俺は「わかったわかった。ホレ、行くぞ」と江野本を促し、毒怪鳥とドクロと虫が待つG級の森と丘へと出発した。
さあて、とりあえずは採集だ。俺は「じゃあ俺、最初にエリア12に行くから。ゲリョスはシカトね」と江野本に告げ、エリア12に向かって走り出した。江野本は再び「わし、むし!!」と虫が湧きそうなことを言って、虫がわんさか捕れるエリア9の穴ぐらに潜り込んだ様子。ふたりはしばらくのあいだおとなしく、それぞれの採集ポイントで思い思いの時間を過ごした。
エリア12、エリア11、エリア5で採集を終え、俺はゲリョス討伐に向かうことにした。しかし江野本はいっこうに、エリア9から動こうとしない。不審に思って、俺は彼女に声をかけた。
「えのっち、ぜんぜんそこから出てこないけど、そんなに虫が捕れるの?」
10秒ほどの沈黙のあと、江野本は「大塚さん」と言い、つぎのように言葉を継いだ。
「ネコがにゃあにゃあ言いながら入ってきて身ぐるみ剥がされました。しかも穴の出口でずーっとゲリョスが見張っていてどうにもなりません」
俺、大窃盗団に囲まれている江野本にかける言葉が思い浮かばず、ただ静かに「……ガンバレヨ」とキーボードを叩いた。しかし俺の激励のおかげかそのすぐあとに江野本は「あ!!」と言い、続けて「出られた!! 奇跡!!」と発言。どうやら長いこと閉じ込められていたエリア9の穴ぐらからの脱出に成功したようだった。でもとりあえずは、メラルーにかっぱらわれたものを取り戻さなければならない。江野本は元気に「エリア12にいってきやす!!」と宣言してメラルーの巣へと直行。なにやらゴソゴソと蠢いたあとに神妙な声で「大塚さん」と言った。ナンダナンダ。どうしたんだ? 俺が「どしたの?」と言うと、江野本は鎮痛な面持ちでこんなことを言った。
「メラルーに盗まれたもの、虫の死骸しか戻ってきません。あとの肉焼きセットとか回復薬グレートとかこんがり肉はどこに行っちゃったの??」
俺、ゲラゲラ笑いながらこう答えた。
「虫の死骸で打ち止めですwww ぷぷぷ!」
江野本、ショックのあまりしばしのあいだ「…………」と立ちすくんでいたがすぐに「ふん」と言って立ち直り、なぜか俺に向かってキレた発言をしてきた。
「ふーん。あーそうですかそうですか。じゃあ大塚さん、ゲリョスはひとりで討伐してくださいね」
俺、江野本の発言の意味がまったくわからず、怒りながらこう言った。
「ちょ……。なんでそうなるんだ!! 盗んだの、俺じゃねえだろ!!」
江野本、まったく悪びれずにこう応える。
「だって、こんがり肉も肉焼きセットも盗まれちゃったんだもの。もうすでに、走れない」
こいつ、走れないのをいいことにサボタージュを決め込むつもりだな……。しかたなく、俺は言った。
「ったく、しょうがねえなあ。肉あげるからエリア3に来なよ」
ヨタヨタと酔っ払いのような足取りでエリア3に現れた江野本に向かって、俺は「ホレ」と言いながらアイテムを差し出す。これに「わーい」と言いながら飛びつく江野本。しかしすぐに彼女は本日2回目のグレムリンと化し、烈火のごとく怒りだした。
「ちょっと!! 生肉じゃないすかコレ!! いらねえ!!!」
討伐目標のゲリョスをほったらかしにして、いつまでもこんなくだらないやり取りを続ける逆鱗日和ファミリーだった。
昨夜、久しぶりにミナガルデに足を伸ばした。まともにオンラインしたのは、おそらく2週間ぶり。友人から「いま出ているイベントクエストを手伝ってほしい」と連絡をもらい、「ぶへえ!! い、いつのまにそんなクエストが!! 行きます行きます!!」と大興奮状態でピョンピョンと飛び跳ねながら、震える手でWiiの電源を入れたのだ。さあさあ、イベントクエストだ! こいつを成敗してあんな武器やこんな防具を作っちゃうぞ!! いやあ、コーフンするなあ!! でも俺ひとりじゃ何の戦力にもならないから、江野本ぎずもとEffort Cristalのゴッディに連絡。「すぐにオンします!!」と快諾をいただき、俺たちは友人が待機する街で待ち合わせすることになった。
しかし、この日の俺はついていなかった。
まずミナガルデに行こうと思ってボタンをポンポンと押していると、画面に見慣れぬメッセージが表示された。そこに書いてあった文字を翻訳すると、どうやら、
ハンティングポイントが切れたからオンできんヨ
と書いてあるっぽい。ぬおお……。よりによってこんなときにポイントが切れるとは!! みんなを待たせてるのにぃー! でも、払うものはキチンと払わんといかん。俺はすぐにWiiショッピングチャンネルを起動してWiiポイントを1000円分購入。流れる手つきで『G』を起動し、ハンティングポイントを買う画面にたどり着いた。とりあえず1000円分しかWiiポイントを買っていないので、ハンティングポイントは30日券(800Wiiポイント)にしておこう。これなら1000円で間に合うからね。えーっと、これで俺のWiiポイントの残額は200ポイントに……って、ア、アレ!? なんでこんな数字が……? 俺のWiiポイントの残額はつぎのようなものだった。
Wiiポイント残額 4200Wiiポイント
な、なんで俺、こんなにWiiポイントセレブなんだ……? ……ってそうだ!! 思い出した!! 10日ほどまえに急に「昔のゲームで遊びたいなあ」と思い立ち、その勢いで大量のWiiポイントを購入。バーチャルコンソールから『フォゴットンワールド』とか『ゴールデンアックス』とかとか、少年時代(?)に夢中になって遊んでいたゲームをドカドカとダウンロードしまくったんだった!! くぅぅ……。キチンと残額確認していれば追加購入する必要なんてまったくなかったのに……。
でもいいや。Wiiポイントなんてどうせすぐに足りなくなるんだから、ちょっとでも多めにストックされてるほうが便利でいいんだ。そうだそうだ。これは先行投資なのだ。いいんだいいんだ。
俺はあっさりと納得して、今度こそキチンとログイン。3人の仲間が待つ場末の酒場に急いで駆け込んだ。さあさあ、ようやくクエストに行けるぞ。イベントクエだイベントクエ!! 俺は3人に向かって宣言した。
「さあ狩ってくれようじゃないか!! このクエストは強大だが、我々4人だったらいけるはず!!」
ゴッディが元気に「はい!!」と応じ、すぐにクエストを貼る。しかしここで、冷静な彼にしては珍しく「あ!!」と声を上げ、俺と江野本に向かって申し訳なさそうにこう言った。
「あの……。まことに申し上げにくいのですが、角満さんとぎずもさんはこのクエストに行くには少々ハンターランクが足りないようです……w」
な、なにぃ! 俺を見くびるんじゃねえ!! こう見えてオイラも、G級ハンターになったんだぞ!! その俺に行けないクエストなんてあるわけがっ!! 俺はゴッディに言った。
「少々足らない……って、どんくらい足らないの?」
悲しそうな口調で、ゴッディが答える。
「このクエストへの参加条件、ハンターランク27以上なんです」
えー? しばらくオンラインしていなかったから忘れているけど、俺もボチボチそのくらいのランクになってるんじゃないかなあ? 俺は再度、ゴッディに言った。
「27ね。なるほどね。でも俺も、そろそろそのくらいのランクになるでしょう?」
江野本も同調して「うんうん。ウチもそう思う」と言っている。しかしゴッディはこの世の終わりを告げる預言者のような口ぶりで、ピシャリと冷たく言い放った。
「ぎずもさんはハンターランク23、角満さんに至ってはG級になったばかりの、ハンターランク21じゃないですか!!www」
ハイ、スンマセン。
けっきょく俺たちふたりがまるで役に立たないことが判明したので、急いでイベントクエストの戦力にと超絶テキトーハンター・ゴメさんを招集。そちらには屈強な3人で行ってもらい、意気消沈した俺と江野本はいじけながら「んじゃ、ゲリョスにでも行きますかね……」と言い、森と丘へと旅立った。
しかし、この日俺に取り憑いた死神は、これくらいの不幸じゃ許してはくれなかったのである。
以下次回?
※お知らせ※
すっかり遅くなってしまいましたが、改めまして『逆鱗日和』シリーズ新刊の企画にご投稿くださった皆様、ありがとうございました! じつにじつにたくさんの体験談が集まり、僕も江野本も涙を流さんばかりに喜んでおります!! 本来、もっと早く採用候補者の皆様にはご連絡する予定だったのですが、遅くなってしまいました……。採用候補者の皆様にはメールか電話をさせていただくと思いますので、よろしくお願いいたします!
ブログをまったく更新していなかったこの10日間、俺はいったい何をしていたのでしょうか? じつはこの間の記憶、あまり定かではありません。6月のアタマにE3の取材でアメリカのロサンゼルスに行ってたところまではおぼろげながらも覚えているのですが、その後の足取りがさっぱり……。そもそもE3って何の略だったっけな? “enomoto endless eraikocha!”だっけ? まあそんなことはどうでもいいや。
ここ2週間ほど、とてつもなくドタバタと右往左往しておりました。制作が始まった新単行本関連の取材やら原稿書きやらで昼も夜もなくなってしまい、連日連夜の深夜帰宅……。深夜っちゅーか、早朝帰宅の連続。身体の疲れ、ストレス、眠気との戦いで、気がつくとコンビニで買ってきたストレス発散商品(まあ煎餅なんだが)をバリバリガリガリと必要以上の爆音を立てて噛み砕いている。ふたつ隣の席で作業をしている江野本ぎずももまったく同じことをしているので、深夜の煎餅二重奏はそれはそれはダイナミックに、静まり返った編集部に鳴り響くのでありました。でも、冗談抜きで眠気&ストレスと戦うために食ってばかりいたので、E3から帰ってきてからしっかりと2キロほど太りましたヨ。……たったの2週間で2キロですよ2キロ!!!! もうホント、水風船か俺は……。
こんな感じなので、『G』も『2nd G』もまったく遊べていません。あんなに夢中になって遊んでいた『G』も、ここ2週間でオンできたのはたったの2回。その2回も腰を据えてしっかりと遊び込めたわけではなく、仲間にチョロっと挨拶していくつかのクエストをこなせた程度だ。毎日のように届いていた仲間たちからのお誘いメールも、パッタリと来なくなってしまった。たまーにケータイがブルルッ! と震えるので「お誘いメールだ!」と思って飛びつくと、出てくるのは「寝坊しました。遅刻します」という部下からの遅刻宣言メールか、「うっふん。連絡待っているわ♪」という必殺モノの別のお誘いダイレクトメールくらいである。しかたなくダイレクトメールはスルーし、遅刻宣言メールには怒りを込めて「ごめ……。俺も寝坊しました……」と書いて返信。まあお誘いメールが来たところで物理的にミナガルデに行く時間がないんだけどねぇ……。お誘いメールの代わりに、俺と江野本が多忙を極めてオンラインできないことを知っている芸能事務所所属の超絶テキトーハンター、ゴメさんからは、「大塚さん、今日はハチミツを売っている日ですよ♪」、「今日、ブラックテンペストが作れました〜♪♪」という、こめかみピキキもののメールはよく届くけどなー(笑)。
あ、でもそうそう。ヤバいヤバいと言いながらも、6月7日の夜だけは「絶対にミナガルデに行くぞ!」と気合を入れてオンラインしたのである。街に集まったのは、俺、江野本、Effort CristalのGod君(ゴッディ)、Effort CristalのJack君(ジャッ君)の4人。エフォクリのふたりには事前に「6月8日になるまえにミナガルデに来てくれ〜!」と連絡していて、彼らは「ナンダナンダ!」と言いながら駆けつけてくれたというわけだ。
そして無事、時計の針は0時を過ぎて、日付は6月8日に切り替わった。「6月8日になったぞ、えのっち!」と俺。「なりましたね!!!」と江野本。興奮する俺たちを見て、エフォクリのふたりは再び「ナンダナンダ」状態である。ポカンとするゴッディとジャッ君に向かって、江野本が言った。
「さてエフォクリのおふたり、今日はいったい何の日でしょーか?」
いきなりこう問われて、ズバンと答えを出すのはかなりむずかしい。数字に強いゴッディも「ええ? なんだろう……」と首をひねっている。当然、ジャッ君も「???」だ。まあ、わからなくて当たり前。俺と江野本はじらすことはせず、単刀直入に答えを言った。
「今日は、俺らふたりとエフォクリが初めて会った日なのでえす!」
そう、2008年6月8日に俺と江野本は初めてエフォクリのふたりに会い、ロングインタビューを行ったのだ(インタビューの中身は『本日もニャンと! 逆鱗日和』に収録)。以来俺たちはプライベートでもいっしょに遊ぶ友だちとなり、こうして『G』でも行動をともにしているのである。
「そっかあ。あれからもう1年なんですね」
とゴッディが感慨深そうに言った。
「遠い昔のことのような……。でもこの1年、いろいろありましたねー」
とジャッ君。実際、エフォクリのふたりに会ったことは、俺と江野本の中に「もっとこういう人たちに会いたい!」という想いを芽生えさせ、これが生来の好奇心に火をつけて、全国のいろいろなハンターのところに飛んでいって話を聞いたり、遊んだりする原動力になった。そういった意味でもこの6月8日は、俺たち『逆鱗日和』ファミリーにとっては記念すべき日なのである。
でもしみじみ思ったよ。このタイミングでWiiの『G』が目の前にあって本当によかったなって。遠くにいる友だちでも、こうして同じ場所に立って喜んだり、笑いあえたりするのは据え置き機の、そしてネットワークゲームならではのものだ(アドパもあるけどさ)。文字によるチャットはともすると無機質なものに見られがちだが、文字だからこそ笑えること、文字だからこそ伝えられることは絶対に存在する。気の置けない仲間だからこそ面と向かって「ありがとう」と言うのはテレ臭いが、文字だったらキチンと心を込めたうえで「この1年、ありがとうございました!」と言えるんだと思う。少なくともこのとき、俺はそうだった。そして思わず、「この据え置き機の『モンハン』のチャット、やっぱ好きだー」と独り言を言った。
1周年をチャットとボディーアクションで祝ったあと、俺たちは「記念クエストに行こう!」と話し合って、迷わず森と丘を舞台にしたリオレウス、リオレイア討伐クエストを受注した。やっぱり、『モンハン』がらみで何かを記念したり、祝ったりするときに会いたくなるのはレウスとレイアだ。この、ベテランと行こうがルーキーと行こうが絶対にクエストが楽しくなる稀有なモンスターは、記念日にとてもふさわしい。
大騒ぎしながらレウスとレイアと戯れ、街に帰ってきた俺たちは口々に「来年のこの日もお祝いしよう!」と言い合った。そして俺が発した「来年の記念クエストは『3(トライ)』のラギアクルスになってるんじゃね?w」のひと言をきっかけに、夜が更けるまで『3(トライ)』の話で盛り上がった。
E3取材のために、丸々1週間もアメリカに行っていた。E3期間中は本気でメシを食う時間がないほど取材と記事製作に奔走することになるので、その間は当然ながら『モンハン』は封印。まあ、E3会場のカプコンブースに行って『2nd G』の海外版『MONSTER HUNTER FREEDOM UNITE』を、江野本ぎずも、カプコン広報の“ミスターガードマン”こと神田さんといっしょに遊んだけどな! まあこの話も、そのうちどこかで書きましょう。
で、1週間ぶりに日本に帰ってきたわけだが、週刊ファミ通に載せるE3関連の記事をすぐに作らないといけないので、帰国したその足で会社に直行。深夜までヘロヘロの状態で作業をして、帰宅したのはもう明け方……。それでも「い、いくんだ、ミナガルデに……。友だちに帰国の挨拶をするんだぁぁぁ……zzz」とゾンビのような状態ながらもなんとかミナガルデにたどり着き、しかし本当に挨拶くらいしかできずそのまま意識を失ってしまった。
そして土曜日。
一応この日だけ仕事は休みってことにしていたので、ひたすら家でボーっとする。時差ぼけのせいか何もやる気が起きず、気がついたら夜になっていた。窓の外を見たらいつの間にか真っ暗になっていたので、こちとらビックリ仰天である。砂漠の昼間のクエストだと思って出撃したらまんまと夜で、「!!! 夜じゃねえか! クーラー持ってきちまったよ!!」と跳び上がってしまったときの衝撃と似ている(そうか?)。あーしかし、久しぶりの休日だっていうのに何もせずに終わってしまったなぁ……。ムナシイなぁ……。寂しいなあ……。と、いつになくネガティブモードで「ムナシイヨー、ムナシイヨー」と歌を歌っていたら、携帯に1本のメールが届いた。見ると、差出人は江野本ぎずもである。開けると……。
「たけちーいる!! 早く来てーーー!!」
おお……。そいつは一大事だ!!
たけちーとはもちろん、最近すっかりこのコラムではおなじみとなった狩魂Tのたけちよのことである。俺や江野本がE3取材で日本を離れる直前から、たけちーは仕事やら私用やらで忙しく、ミナガルデにまったく来れずにいたのだ。
じつはいつもいっしょに遊んでいる江野本、Effort Cristalのふたり、そして芸能事務所所属の超テキトーハンター・ゴメさんは、すでにG級に昇格していた。上位で止まっているのは、俺とたけちーだけ。俺は、前述の4人とちょっと差がついてしまったのと、なかなかログインできないたけちーを「待っていてあげよう」と思ったこともあって、G級に上がる直前に出た緊急クエスト“巨大龍の侵攻”をやらずにいた。でも、たけちーがミナガルデに来れるようになったのなら、いよいよ俺もラオシャンロンを撃破してG級に足を踏み入れてもよかろう。俺は「すぐいく!!」と江野本に返事を返し、Wiiの電源を入れた。
ミナガルデの待ち合わせ場所に行くと、すでにいつものメンバーが集まってワイワイと騒いでいた。見ると……おお! 確かにたけちーがいる!! 俺は言った。
「たけちー、久しぶり!! というわけで、ラオいくぞラオラオラオ!」
たけちー、苦笑いしながらもうれしそうに、「ちょwww いきなりっすね!! でも、行きましょ行きましょ!」と言った。
というわけでさっそく、ラオシャンロン撃退クエストに赴くことになった。メンバーは、俺、たけちー、エフォクリのジャッ君(Jack君のこと)、ゴメさんである。ちなみに、ジャッ君とゴメさんは問答無用の戦慄兵器・封龍剣【超絶一門】(双剣)を持っているし、たけちーはこう見えてモンハンフェスタの全国大会進出者である。はっきり言って俺ごときがウロチョロしなくとも、クエストはクリアーできてしまうであろう。なので俺は言った。
「こりゃ、俺はなんもしなくても大丈夫そうだなあw」
これを聞いて、今回はひとりでお留守番することになった江野本が、出発間際のパーティーに向かってこんなことを言った。
「そうっすねw 大塚さんにできることは、ラオに踏み潰されてオチることくらいっす」
俺、あまりにも鋭い江野本の指摘に驚愕し、「確かに、それはもっともだ!!」とひとり納得して、俺を踏み潰さんと目論む巨大龍が待つ砦へと旅立った。
それにしても、これだけ屈強な仲間がいるとさしものラオシャンロン撃退クエストも牧歌的なものになるネ。俺たちはラオシャンロンがやって来るのを待つあいだ、肉を焼いたり、肉を焼いている人の目の前に大タル爆弾を置いて起爆したり、焼くのに失敗した肉を「アメリカ土産のWell-Done Steak!!」と言って無理やり人に押し付けたりして楽しんだ。そして、俺は江野本の呪いどおりまんまと1回ラオシャンロンに踏み潰されて1オチ……。すっかり巨大龍に近づくのが怖くなって、「あ、あとたのんます^^;」と言ってエリア6のイーオスと戯れることに力を注いだ。その甲斐あってか、ラオシャンロンはエリア5の決戦場に到達するなり昇天。ついに俺は、G級になるための約束手形を手に入れた(ポイントが足らなくて、これをクリアーしただけではG級になれなかったのだ)。
そして翌日、俺はついにG級に上り詰めるのだが、そのときの出来事はまた今度(……って、明日書く気がするけど)。
今年も来ましたE3!! 今回で俺、何度目のE3になるのかなぁ……。最近、週刊ファミ通のE3関連記事で、ニュース担当記者が過去に何度E3取材に出向いたのかを数える機会があったのでバックナンバーをひっくり返して調べてみたんだけど……これがさっぱりわからねえ!! いちばん最初は1998年、まだE3がアトランタで開催されていたときなんだけど、その後1回か2回は取材に行かなかった年があるので総計がよくわからないんだよねぇ……。しかし、1998年かあ……。当時はまだ、ピチピチの26歳だったんだよな、俺。いまじゃあ体のフシブシがビキビキの老ハンターに過ぎないけどね……。ま、そんな話はどうでもいいや。
さて、PSPの新型や『ファイナルファンタジーXIV』、さらには『スーパーマリオブラザーズ』の新作や自分の身体をコントローラーにしちゃおう! なんていうたまげた施策も発表された今回のE3だが、“あのソフト”もカプコンブースとSCEブースに出展されていたんですねぇ。そう、『2nd G』の海外版、その名も『MONSTER HUNTER FREEDOM UNITE』だっ!!
ではではさっそく、実際に遊んでプレイリポートを……と思ったが、『FREEDOM UNITE』は言語が英語にローカライズされている部分以外は、基本『2nd G』がそのまま入っている。単純なプレイリポートを書いたところで意味はないだろう。さあて、どうしたものかな……と考えながら、試遊台に取りついて狩猟笛をブン回していた江野本ぎずもを観察していた。見ると討伐目標はヒプノックで、意外なほどキレイな立ち回りでコレを翻弄しているではないか。(へぇ〜。うまくなったもんだなぁ)と感心していると、江野本の隣にもう1台あった『FREEDOM UNITE』の試遊台に、30代くらいの太った外国人記者が食いついた。どうやら体験プレイをしてみるらしい。俺の興味は俄然、外国人記者へと移った。
この試遊台では、ヒプノック討伐、ダイミョウザザミ亜種討伐のどちらかを選んでクエストに出向くことができた(じつは大連続狩猟もあったのだが、選択するとエラーになってしまった)。武器は、11種の武器カテゴリーから選ぶことができ、もちろん、オトモアイルーも連れていける。さあて、この人はどの武器を選ぶんだろう。まさか“アレ”を選ぶなんてことが……あるわけないよなあ^^;; この人デカいから、迫力ある大剣やハンマーあたりを選択するんだろうね^^;;; でも、もしも“アレ”が選ばれた日にはテンションあがっちゃうなオジサン^^^^
なーんてことを考えながら大きな外国人記者の肩越しに画面をギロギロと眺めてると、俺の呪いが通じたのか彼はなんとガンランスを使用武器に選んだではないかっ!! しかしどうしてガンランス!? ああああ! 理由を聞きたい! と思ったが、俺が操れる異国語は群馬弁だけなのでおとなしく画面だけを眺め続けることにした。ちなみにクエストは江野本と同じヒプノック討伐だ。
樹海に降り立った異国のガンランサーは、カプコンUSAの人と思われる係りの人に簡単なレクチャーを受けながらボタンをガチャガチャといじくりだした。見ると、アイテムカーソルに“Well Done Steak”とある。なるほど。よく焼いた肉ってことで、こんがり肉はWell Done Steakなのか。へぇ〜! おもしろいおもしろい! と感心して眺めていたら、異国のガンランサーはいきなり、2個持ってたWell Done Steakをムシャムシャとむさぼり食ってしまったではないか! あああ! まだダメですよもったいない!! って、もう時すでに遅しか!!
完全にこんがり肉1個を無駄にしてしまったのだが、異国のガンランサーは大いに満足したようでパタパタとダッシュで走り出した。そのままの勢いでエリア1を颯爽と駆け抜ける。簡単なレクチャーを受けただけなのに、なかなかこの異国ガンランサーは飲み込みが早いようだ。そして、エリア2もダッシュのままで走り続ける。……っておいおい、がんばるねアナタ。スパルタだね。で、でもそろそろ走るのをやめないと疲れてハアハアしちゃうのでは……。いやいや、絶対にハアハアしちゃうぞ! 危ないですよ!! ぼちぼち歩きなさいなあーー!!
しかし俺の願いは届かず、異国ガンランサーの分身はエリア2と3の入り口近くで立ち往生。ハアハアと肩で息をしている。なんとなく自分が失敗したのがわかったのか、異国ガンランサーは静かに渋面を作っていた。それを見た俺は小声で「どんまい」と発言。耳がいい江野本にはこれが聞こえたらしく、素っ頓狂な声で「はい??」と言った。
ところが運が悪いことに、この体験版ではエリア2にブルファンゴが棲息している。このイカれた暴走特急が肩で息をする異国ガンランサーを見逃すわけもなく、ズドドドドと突っ走ってきたと思ったら遠く遠くに彼の分身を吹っ飛ばしてしまった。異国ガンランサーは明らかな驚愕の表情を作り、頭の上に「!!!!」と、ビックリマークを4個ほど飛び出させる。それを見て俺は思わず江野本のほうに振り返り、「ファンゴに吹っ飛ばされちゃった!」と報告した。
異国ガンランサーはそれでもなんとか、ヒプノックがいるエリア4にたどり着いた。やはりこの人はなかなか、ゲーム勘がいいようだ。さあさあ、ガンランサーの腕の見せどころですよ! しっかりと狩っちゃってね!!
しかし、これだけたくさんのボタンを使うゲームを、簡単な説明だけで遊びこなすのは難しいのだろう。ヒプノックがどんな特徴を持っているかも知らないから、異国ガンランサーはかなりの頻度で睡眠状態にさせられてしまう。ああ……。だ、ダイジョブかなあ……。これが協力プレイだったら、すぐに駆け寄っていって蹴っ飛ばしてやるのに……! 俺は何もできない自分が歯がゆくて歯がゆくてしかたなくなり、再び江野本に向かって叫んだ。
「この人、また寝ちゃった!!」
江野本は狩猟笛を振り回しながら俺のほうを向き、「はいはいw おとなしく観させてもらいなさいww」と思いっきり苦笑い。いやでも、せっかく異国に生まれたガンランサーがピンチだっつーのに、俺、何もできんのだもの……。
それでもなんとか劣勢を挽回しようと、異国ガンランサーは敢然と立ち上がってガンランスの切っ先でヒプノックを突っつき始めた。おお! いいぞいいぞ! その調子その調子!! 夢中になって、俺は叫んだ。
「ハイ! そこで1発砲撃を!!」
しかし異国ガンランサーは砲撃を知らぬようで、ひたすらツンツクツンとガンランスで突っついている。でもいい感じで攻撃が脚に当たっていたようで、なんとヒプノックがドデーンと転倒したではないか!! ちゃちゃちゃ、チャーンス!! さあいっちゃってくれ、あの必殺技を!! 俺は大声でわめいた。
「ハイッ!! そこで竜撃砲だ竜撃砲!! いまっきゃない!!」
ところが、砲撃を知らぬ異国ガンランサーが竜撃砲なんてものを知っているわけもなく、ヒプノックはスクっと立ち上がってしまった。俺は江野本に言った。
「りゅ、竜撃砲のチャンスがっ!!」
狩猟笛で見事ヒプノックを打ち倒した彼女はなぜか腹を抱えて笑い、「まったくうるさい人だなー!!ww」と呆れ顔。いやでも、なんかほっとけなくて……。
けっきょく健闘むなしく、異国ガンランサーは3オチを計上してしまった。やっぱり初めてのクエストでヒプノックとガンランスってのは敷居が高かったのかな……。そう思いながら彼の顔を見ると、意外なほど晴れ晴れとした様子で係りの人と話をしている。いったい、何を話しているんだろう? まわりがうるさかったし、そもそも英語なのでよくわからなかったのだが、このひと言だけは間違いなく聞き取れることができた。異国ガンランサーは係りの人に向かって、元気な声でこう言ったのだ。
「Very Exciting!!」
『MONSTER HUNTER FREEDOM UNITE』は、北米で2009年6月23日に発売される。アメリカの地に、ガンランサーがひとり生まれるのは間違いなさそうだな、うんうん。
大塚角満

週刊ファミ通副編集長にして、ファミ通グループのニュース担当責任者。群馬県出身。現在、週刊ファミ通誌上で“大塚角満のモンハン研究所”というコラムを連載中。そこら中に書き散らした『モンハン』がらみのエッセイをまとめた単行本『本日も逆鱗日和』シリーズ(4巻)が発売中。また、そこからのスピンオフとして別の視点から『モンハン』の魅力に迫る書き下ろし作品『別冊『逆鱗日和』 角満式モンハン学』シリーズも。このブログではさまざまなゲーム関連の話題を扱うつもり。一応、そのつもり。
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