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【MHP 2nd G】第134回 あるハンターの栄光・挫折・再生 〜Jast25's物語〜 その2

 自分たちが福岡大会を勝ち抜けたのは、たまたまだ。もしも決勝ステージをまえに見知らぬふたりのハンターが声をかけてくれなかったら、自分たちが全国決勝大会に進出することはあり得なかっただろう。Jast25`sのふたりを強くしたのはある種の劣等感と、タイムアタックを詰め切れぬまま勝ち抜いてしまったことに対する負い目だったのかもしれない。だからこそ、ふたりは練習した。koheiをして「寝ているとき以外は、タイムアタックのことしか考えていなかった」と言わしめるほどに……。

 まずふたりはパソコンを立ち上げて、自分たちが知る限りのあらゆる攻略情報をデータとして打ち込んでいった。武器の攻撃力、防具の防御力、武具のモンスターに対する相性、スキル、与えるダメージ……。これをプリントアウトして、何時間もふたりでにらめっこ。そしてこのデータをもとに実戦をくり返した結果、ふたりは立ち回りにおけるさまざまな場面を”数字”で考えるようになる。単純なところでは、「このモンスターはハンマーで頭を●発殴るとめまいをおこす」といった感じで。ただがむしゃらに暴れていた”感覚プレイ”から脱却したことで、見えてきたものもたくさんあった。その中でもっとも大きかったのが「数字にして考えないと、タイムアタック勝負では勝てない」という思いだ。この瞬間に初めて、Jast25`sは”理詰め『モンハン』”に目覚めたのである。

 理詰めの青写真はおもに、理系出身のravenが作った。数字アレルギーの人ならばモンスターの動きやハンターの立ち回りを数字に置き換えることに顔をしかめるところだろうが(完全文系な筆者のように)、理系の頭脳を持っている人から見れば、これはごくごく自然な流れらしい。

 ふたりはravenが作った青写真をもとにディスカッションと実戦を重ね、タイムアタックを詰めていった。青写真どおりにいかないことも当然ながらたくさんあったが、これを叩き台にしてタイムを縮めていく作業は思っていた以上に楽しかった。

 理詰めのタイムアタックは、ふたりの性に合った。自分のことを「文系です」と評するkoheiが、「がむしゃらなプレイスタイルよりもはるかに、理詰めプレイのほうが楽しかった」と断言するほどに。もちろん、すべてが理論どおりに進むとは限らない。そもそも自分たちが使いやすい武器と、理論上では”最速”とされている武器が違うことがザラにあったし、それが合致していたとしても方程式どおりに立ち回れる保障はどこにもない。ひと口に”理詰めプレイ”と言っても、その道は決して平坦なものではないのだ。

 この”齟齬”を埋めるために、ふたりは徹底的に”個人練習”をした。「いくらすばらしい理論があっても、実践できる個人スキルがなければ文字通り机上の空論になる」を合言葉に、ソロでの練習をくり返したのである。これが自然と、「俺、このモンスターのこんな動きに気づいたんだけど」、「この隙に攻撃するのがよさそうだ」という有益な”情報”に変換され、情報は”理”となって、気がつくとふたりはがむしゃらに遊んでいたころでは到底たどりつけなかった”理詰めの境地”に到達していた。

 ふたりの理詰めプレイが極まったのが、モンハンフェスタ`07全国大会の決勝戦におけるラージャン討伐だ。狩猟笛を担いだふたりがシンクロしながら躍動し、あのラージャンを翻弄したシーンは、いまでも筆者の脳裏に刻み込まれている。なので筆者は尋ねた。「あのとき、シンクロするようにふたりは同じ動きをしていたけど、それは狙ってのことだったの?」と。この質問に”作戦参謀”のravenはニッコリと笑い、こんな言葉を返した。

 「シンクロすることを狙って練習したことは一度もありません。狩猟笛ソロでラージャンを相手に立ち回ることを突き詰めていくと、笛を吹くタイミング、回避の瞬間、攻撃のポイントなどが同じになって、シンクロしているように見えるんです。僕らはそれに加えて、ラージャンの動きを記号化して”このモーションをしたらここに一撃”といった具合にモンスターの動きと狩猟笛による攻撃をパターンにして当てはめたんです。そうするとおのずと、ふたりの動きは同じようになるわけです」

 しかし最終的には狩猟笛・狩猟笛による立ち回りに到達したが、そこにたどり着くまでにはもちろん、膨大な時間と試行錯誤を要した。とくに、この決勝戦で選べる武器の中にはスキル”火事場力”が発動した弓があり、ravenもkoheiも「火事場を完璧に使いこなせる弓使いが現れたら、優勝はそのチームが持っていく」と確信していたという。となれば、Jast25`sのふたりも弓を選べばよさそうなものだが、ふたりの内には福岡大会の決勝ステージで覚えた”負い目”が反芻してきて、弓を持たせることを拒ませたそうだ。koheiが言う。

 「弓が圧倒的に強いだろうな、とは思いました。でも僕らはふたりとも、遠距離武器をほとんど使ったことがなかったので、キチンと弓を扱って立ち回る自信がありませんでした。僕らが弓を選んで付け焼刃の練習をしたとしても、もしも決勝で対峙するハンターが弓使いだったら……。彼らが僕らよりもヘタな弓使いだとは到底思えなかった。だからふたりで決めたんです。”もしも全国決勝大会の最終ステージに残ったら、自分たちがみんなに見せたいプレイをしよう”って」

 使用武器に狩猟笛を選んだのは、自分たちの持つスキルでもっとも”魅せるプレイ”ができるのがこれだったからだ。まずハンターの立ち回りが有利になる要素として、狩猟笛の旋律に”耳栓”があったし、防具のスキルには”耐震”がついていた。そして所持アイテムとして落とし穴がひとつずつと、閃光玉が2個ずつ。闘技場の隅からは携帯用シビレ罠も取れる。これらのアイテムを駆使すれば、ハンマーですらめまいが取りにくいラージャンを、狩猟笛で圧倒することができるかもしれない。もしも決勝ステージでそれを披露したら観客が沸くのは間違いないぞ……! この作戦の青写真を作ったとき、ravenは興奮した。「もう、これしかない!」と。すぐさま相棒のkoheiにこの作戦を報告。ravenと同じように魅せるプレイに目覚めていたkoheiもすぐに「いいね!」と同意し、狩猟笛・狩猟笛による突き詰めが始まった。

 ふたりが時間の許す限り練習をくり返して、全国決勝大会が始まるまえに到達した対ラージャン用の”詰め将棋”の解答は、以下のようなものだ。

・徹底的に頭を攻撃する
・最初の怒り状態になるまえに頭へのダメージを蓄積できれば、落とし穴に落として頭を殴った瞬間にめまいになる
・ここで狩猟笛の”攻撃力UP[大]”の効果が消えるのでひとりが演奏
・2回目のめまいは取りにくいので、シビレ罠をふたつ使ってこれを狙う
・このへんで笛の効果が軒並み消えるので、閃光玉を当てて笛を演奏し、武器も砥ぐ。砥ぎ終わる瞬間にラージャンから閃光玉の効果が消える
・残りの3つの閃光玉をつぎつぎと当てる。ラージャンは閃光玉を浴びると大暴れするが、耐震、耳栓が発動していれば左右の後ろ脚に張り付いてスタンプ→離脱をくり返していれば攻撃を食らうことはほとんどない
・7分もあれば討伐完了……

 あのラージャンを相手に、Jast25`sの立ち回りはここまで極まった。この戦法だったら牙獣の王に一度も主導権を渡さぬまま、遅くとも8分もあれば討伐することができるのだ。ここにたどり着いたとき、ふたりは声を上げて叫んだという。「ついに、ほかの人に見せられるプレイが完成したぞ!」と。

 そしてふたりはこのフローチャートにあることを、ほぼ完璧に全国大会の決勝という檜の舞台で実践してみせた。めまいを取る回数が1回少なかったことと1オチを計上したことを除けば、「これはデモ映像なのでは……?」と勘ぐってしまいたくなるほど、本当に美しい”詰め将棋”である。もちろん、理詰めプレイはJast25`sの専売特許ではないし、いまほど理詰めプレイが浸透していなかった昨年のフェスタ当時も、全国大会に進出してくるようなチームであれば方法論は違うだろうがモンスターの動きとハンターの動きを研究し尽くして”詰めて”きていただろう。しかしあの緊張する大舞台の上で、自分たちが導き出した方程式どおりに立ち回れるかどうかとなると話はまったく違ってくる。Jast25`sのもっとも偉大なところは、”全国決勝大会の決勝戦で己の導き出したフローのとおりに演じきることができた”という、この一点にある。刃のような緊張感に満ちた頂点の戦いで”究極の理詰めプレイ”を披露した幼馴染コンビに、勝利の女神が最高の笑顔を贈らぬわけがなかった。結果、Jast25`sのふたりは”モンハンフェスタ初代チャンピオン”の栄誉とともに、”理詰めプレイの先駆者”という称号も手にしたのである。

 それにしても、と思う。

 全国決勝大会のステージは、1回戦(ティガレックス)、準決勝(テオ・テスカトル)、決勝(ラージャン)と、最後まで勝ち残れば3試合もこなさなければいけない。常識的に練習の配分を考えたら、ティガ、テオ、ラージャンの順になろう。1回戦、準決勝を勝ち抜かないことには、決勝にたどり着けないのだから。Jast25`sも当然のように「練習量は多いほうから、ティガ、テオ、ラージャンだった」と語るが、ここまで立ち回りを極められたことを考えると、ほかのチームに比べてラージャンに割いた時間は圧倒的に多かったんだろうなと推測できる。でもなぜ、決勝まで残らなければ披露することができないラージャン討伐の立ち回りを、これほどまで時間を割いて練習することができたのだろうか? この疑問をそのままふたりにぶつけると、ravenはちょっと照れくさそうに笑ったあと弾けるようにこんなことを言った。

 「最終的に僕らは”タイムを詰めるって、楽しいな”という境地に到達したんだと思います。決勝に残る、残らないではなくて、単純に自分たちの動きを極めていくことが楽しかったんです」

 koheiが言葉を継ぐ。

 「準決勝のテオに対する立ち回りが煮詰まったとき、ちょうどラージャン攻略法の糸口が見えたんですね。それからはもう、ラージャンと対峙するのが楽しくて楽しくて(笑)。ずっと、”魅せるプレイをしたい”って思っていましたけど、最後には”『モンハン』を極めるって、楽しいな!”って言い合いながら、純粋に遊んでいました」

 理詰めプレイを極めた先にあった、純粋なゲームのおもしろさ。そしてその先にあった”最速ハンター”の称号……。自分たちよりも優れたハンターがいることはわかっていた。そして自分たちよりも立ち回りを極めているハンターがいることも知っていた。それでもいまは、全国の頂点に立った美酒に酔いしれたい……。

次回に続く

※モンスターハンターフェスタ`07福岡大会の模様、動画はこちらから!

※『サヨナラ! 逆鱗日和』最新情報※

■本邦初公開! 11月20日発売予定の『モンスターハンタープレイ日記 本日もサヨナラ! 逆鱗日和』のカバーがコレだーーーーっ!!

いままでの『逆鱗日和』シリーズのカバーイラストは全体的にホンワカとした雰囲気に満たされておりましたが、今回はかなり凛々しい感じ! かっこいいすなー(自画自賛)。

■11月20日に発売される拙著『モンスターハンタープレイ日記 本日もサヨナラ! 逆鱗日和』の発売を記念して、11月23日(日)にイベントを行います! 詳細は追って発表しますが、今回のイベントに参加したいと思ってくれた皆様は、本日よりアップする”Jast25's物語”と、 ”もうゲネポ”インタビュー、そして『ニャンと! 逆鱗日和』に収録されている”Effort Cristal”インタビューを熟読すると吉! っていうか、そのほうが絶対に楽しめます!! なんか謎めいていますが、ホントにそうなのでぜひぜひ読んでおいてください。ちなみに『サヨナラ! 逆鱗日和』イベントは招待制で、応募方法については11月7日発売の週刊ファミ通(大塚角満のモンハン研究所のコーナー)と、同日アップ予定の本ブログでご確認ください!

投稿者 大塚角満 : 23:49

大塚角満

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週刊ファミ通副編集長にして、ファミ通グループのニュース担当責任者。群馬県出身。現在、週刊ファミ通誌上で“大塚角満のモンハン研究所”というコラムを連載中。そこら中に書き散らした『モンハン』がらみのエッセイをまとめた単行本『本日も逆鱗日和』シリーズ(4巻)が発売中。また、そこからのスピンオフとして別の視点から『モンハン』の魅力に迫る書き下ろし作品『別冊『逆鱗日和』 角満式モンハン学』シリーズも。このブログではさまざまなゲーム関連の話題を扱うつもり。一応、そのつもり。


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