大塚角満の ゲームを“読む!”

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【MHP 2nd G】第5回 ひと狩りいこうぜ!

 2008年3月27日深夜1時。都内各所の量販店を巡ってみた。新ハードや大作ソフトの発売前日には必ず行う”深夜の巡回”だが、『2nd G』の発売日につながっているこの日の夜の空気は、いつものそれとはまったく違う匂いがした。なんと言うか、張り詰めているというか、緊張しているというか……。とにかく、俺の心を落ち着かなくさせる何らかの因子が含まれているとしか思えないほど、この夜の空気は俺を震わせた。ライダースの革ジャンの隙間から入ってくる冷気に顔をしかめながら、俺は心の中で(どうやら俺は、ワクワク感の向こう側の世界に足を突っ込んだらしい)と確信した。

 深夜の都内量販店の前にできた行列は、深夜1時〜2時くらいで新宿が約15人、池袋が約20人、秋葉原が約20人、渋谷が15人といったところ。ただ、警備の関係などで行列を作ることを遠慮してもらう店舗もあり、店の近くには明らかに『2nd G』の購入を目的としていると思われる人が各地とも何人も見られた。この時間帯に行列に並んでいるハンターはまさに氷山の一角。潜在的な購入目的者は、現在の何倍もいることだろう。早朝5時30分のSHIBUYA TSUTAYAで、それは証明された。

 5時30分。取材担当となったSHIBUYA TSUTAYAに到着。カウントダウンイベントが行われる店舗だ。イベントのリハーサルが行われている店内を覗き見ながら、SHIBUYA TSUTAYAの行列形成地点である店舗の階段を見上げる。すると、ほんの2時間ほどまえまでは15人だった行列が、いつの間にか70人を超える規模に膨れ上がっているではないか! しかもこの行列、電車が活発に動き始めるとともにさらに規模を拡大して行き、ついに午前6時20分の段階で200名オーバー。カウントダウンイベントに参加できる先着100名が店内に案内され、SHIBUYA TSUTAYAの1階フロアはハンターの熱気でむせんばかりの状況となった。

 SHIBUYA TSUTAYAの店内は、『2nd G』一色だった。カウントダウンイベントが行われる特設ステージはもちろん、店内のあらゆる箇所にポスターが張り巡らされ、『2nd G』関連商品も数多く展示されている。それらをぼんやりと眺めながら、俺は頭の中で初代『モンスターハンター』が発売された4年まえの3月11日の風景を思い出そうとした。しかし、いくら頭を回転させてもその日の景色は思い浮かんでこない。まあそれもそのはずで、初代『モンハン』の発売日はふつうにソフトを買いに行っただけで、発売時の店頭風景の取材など行わなかったのである。発売日の風景を取材するのは、”確実に行列ができる、ニュースになる”と確信を持てたハードやソフトに限られる。つまり4年まえの初代『モンハン』は、発売日に行列ができるタイトルではなかったのだ。オリジナルタイトルがなかなか日の目を見ないこのご時世、それは致し方ないことなのだが、逆に言えばこの4年で『モンハン』というブランドは、新聞、雑誌はもとより、テレビクルーが何チームも発売日取材に訪れるタイトルに成長してしまったのである。

 「すごいシリーズになっちゃったんだなぁ……」

 多くのハンターと取材陣でごった返す店内の様子を眺めながら、まるで老兵のような気分になってそんなことをシミジミと思う。”なっちゃった”ってのもヘンな言い草だが、なんとなく、いままで自分の手のひらにすっぽりと納まっていた小さくていとおしい生き物が、巨大な翼を広げて雄々しく飛び立って行く姿を目の当たりにしたような、そんな気分にさせられてしまった。ものすごくうれしいんだけど、心のどこかでちょっと寂しい。複雑な男心。こんなことを書いていると「恋する女学生かおまえは」と言われちゃいそうだが、いまの俺の心理は、やっぱりどれだけ文字数を使っても表現しきれるものではないんだよな。でも何となくハンターの皆さんなら、このフクザツな男心、わかってくれるんじゃないかなと思っている。

 SHIBUYA TSUTAYA内の特設ステージでは、『2nd G』の辻本良三プロデューサー、テレビCMに出演している次長課長の井上聡さん、麒麟の川島明さんが登壇して軽妙なトークショーを展開していた。このイベントの詳しい模様は、まもなくアップされるニュース記事に詳しいので割愛させていただく。でもひと言だけ書くと、”人気有名人だから”ではなく、”一般ユーザーと変わらない純粋無垢のハンターだから”ということに重きを置かれて起用されたと思われる井上さん、川島さんというキャスティングの妙は、今回のイベントでも大いに活きた。ふたりが展開する非常にマニアックなモンハントークは、全国のどんなハンターが聞いても爆笑し、「納得!」と思えるものだったと断言しておく。とくに「CM収録時は643時間だった『2nd』のプレイ時間が、最近、800時間を超えてしまいました」という井上さんの突っ走り気味のトークを、川島さんが「ちょっと井上さん、何ひとりでしゃべってるんですか」と冷静に突っ込むシーンなど笑って笑って仕方がなかった。来場した人たちはおしなべて、「この人たち、”素”でモンハンが好きなんだなあ(笑)」と納得したことだろう。

 そんな楽しいカウントダウンイベントが終わったあと、楽屋から出てきた井上さんと立ち話をした。にこやかに笑いながら「また今回もガンランスですか?(笑)」と言う井上さんに「当たり前です! ガンランス一筋です!」と返し、ついでに聞きたかったことも聞いてみた。俺がこの達人に聞きたかったこと。それは『2nd G』のデータを引き継ぐかどうか……(苦笑)。井上さんは俺の質問を受けて「そう! 問題はそれなんですよ!」と言ったあと、いかにもストイックな彼らしい答えを返してくれた。井上さんは笑いながら、こんなことを言った。

 「僕もすごく悩んでいるんです。確かに800時間やりつくしたデータはありますけど、やっぱりまたイチから、バキバキに遊び倒したいやないですか! なのでデータ引き継ぎはしないで最初からやるかもしれませんね。……でも、まだ悩んでますけど(笑)」

 自分と同じようなことをこの達人さんも考えていたことを知り、いいようのない安堵感を抱いて俺は井上さんと別れた。

 そして最後に、俺は辻本良三プロデューサーと向き合った。いつものおバカなやり取りではなく、マジメな取材として(笑)。ちょっとそのやりとりをここに再現しよう。

大塚 『2nd G』、ついに発売されましたね。どうですか? この日を迎えた心境は。
辻本 いままでこういったカウントダウンイベントってやったことがなかったので、今回はやっぱり、ちょっと特別な印象を受けましたねえ……。いちばん先頭の方なんて、夜の12時から並んでくれていたって言うし。今日、かなり寒かったんですけど……ホント、ありがたいです。
大塚 イベントの開始時点で200人並んでましたよ。
辻本 ホントですか!? ……うれしいなぁ。
大塚 プロデューサー的には、感無量?
辻本 いやあ……まだまだ、かな。僕的にはやることがいろいろ残ってますから。モンスターハンターフェスタもこれからですしね。”スタート”って言ってもいいんじゃないですかね。
大塚 発売前日の昨夜って、どんな感じでした? やっぱり緊張してました?
辻本 昨日はねえ……。このカウントダウンイベントが控えていたので夜の10時にはホテルの部屋に戻ったんですよ。寝ようと思って。でも、まったく眠れず(苦笑)。
大塚 あはは。そっかぁ〜。
辻本 緊張してる、っていうよりも、気持ちが昂ぶっちゃって眠れないんですよ。
大塚 うん、じつは僕もそうでした(苦笑)。
辻本 あははは! そうだったんや〜。
大塚 なんかね、我が子の旅立ちを見守るときのような不安な気持ちに苛まれて……。
辻本 と言いつつ、ホントはメチャメチャ寝てたんやないすか?(笑)
大塚 んなことないっすよ!!(笑)
辻本 ウソウソ(ニヤリ)。だっていま、お互い目が真っ赤やもんね(笑)。
大塚 ホントにね(苦笑)。でも、ここからですね。
辻本 そうですね。発売したあとも、いろいろやりたいと思ってますから。フェスタもあるし、夏にも何かやりたいね、なんて思ってますし。これからですね、本当に。
大塚 本数はどれくらいいくんですかね。
辻本 やっぱり、前作以上を狙いたいな、って個人的には思っています。
大塚 うん! 期待してますよ!
辻本 がんばります! ありがとうございました!

 ……なんか途中、いつもの調子のやりとりが混入していますがね(苦笑)。でも本当に自信を持ってこの作品を世に放ったんだなぁ……ということが、彼の表情や口調から強く伝わってきました。

 人気シリーズになればなるほど、ユーザーが求めるレベルは高くなる。爆発するように『2nd』が大ブレイクした『モンハン』も、その例外ではない。4年まえに初代が作った強固な土台の上に、丹念に積み上げられてきたシリーズの結晶。それが今回の『2nd G』だ。”ミリオンタイトル”という看板は、制作チームにとってはそれはそれはプレッシャーだったろう。でも彼らは、ゲーム制作にかける情熱と、何よりも熱い”モンハン愛”でそれを乗り越え、集大成とも言うべき作品を作り上げた。そんな作品にいま出会えていることに、俺は心から感謝したい。

 さあ、狩りにいこう。オトモアイルーや、狩り仲間とともに。また今年も、”眠れない春”になりそうだよ(苦笑)。

 では皆さん、ご唱和を。そう、あのセリフです。

 「ひと狩りいこうぜ!」

投稿者 大塚角満 : 11:04
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大塚角満

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週刊ファミ通副編集長にして、ファミ通グループのニュース担当責任者。群馬県出身。現在、週刊ファミ通誌上で“大塚角満のモンハン研究所”というコラムを連載中。そこら中に書き散らした『モンハン』がらみのエッセイをまとめた単行本『本日も逆鱗日和』シリーズ(4巻)が発売中。また、そこからのスピンオフとして別の視点から『モンハン』の魅力に迫る書き下ろし作品『別冊『逆鱗日和』 角満式モンハン学』シリーズも。このブログではさまざまなゲーム関連の話題を扱うつもり。一応、そのつもり。


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