大塚角満の ゲームを“読む!”
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2006年11月11日、ついに次世代ゲーム機の台風の目、プレイステーション3が店頭に並んだ。発売前後の模様はエクスプレスブログや各記事にあるとおりだが、いやはや、行列取材をして"怖い"と思ったのは後にも先にもこの日だけなんじゃないだろうか。
プレイステーション3の初回出荷台数は約10万台。7年まえのプレイステーション2が発売3日間だけで100万台近い台数を揃えたことと比べると、圧倒的に少ない台数だ。100万台もあったプレイステーション2の発売日も都内の量販店のまわりにはゲームファンが殺到し、騒然とした雰囲気になったことは記憶に新しい。プレイステーション3は、その10分の1程度しか本体がない。となると……。ニュースチームの記者7名は口数も少なく、それぞれが担当する量販店に散っていった。"行列取材"のときは通常、記者は躁状態になる。お祭りや遠足のまえに気持ちが湧き立つのと同じだ。今回は"お祭り度"でいったら極めつけと思われる商品の発売日なのだが、記者たちは全員、緊張していた。彼らの頭の中に(今回の取材は一筋縄じゃいかない)という思いが渦巻いているのが手に取るようにわかる。なんたって、僕自身がそうなのだから。我々は一様にドキドキしながら、深夜タクシーに飛び乗った。11月11日、午前3時30分のことだ。
僕が担当したのは東京の有楽町。テレビのニュースで再三映像が流れている場所である。取材をさせてもらったビックカメラ有楽町店は都内のほかの量販店と違い、集まった購入希望者に対して独特な対応をとった。秋葉原や池袋にある量販店が10日の閉店時間を合図に"オフィシャルな"行列を作らせたのに対し、ビックカメラ有楽町店は11日午前5時まで行列を作らないように店のまわりに集まった人々にお願いしたのだ。じつは有楽町駅の周辺はコンビニエンスストアや公衆トイレなどが少ないため、ほかの地区と比べてお世辞にも行列向きの場所とは言えないのである。それを考慮して、始発電車が動き始める午前5時すぎまでは極力集まらないようにお願いしていた、というわけだ。
しかし午前4時30分、店のまわりにはいつのまにか1000人近い人々が集結。やはりプレイステーション3を求めるゲームファンの熱はものすごいものがある。群衆は歩道に納まりきらず、車道にもはみ出してしまい、行き交うクルマのクラクションが何度も響き渡る。店側はここで、いま集まっている人に行き渡るだけの台数は十分に確保してあること、案内は順番に行うこと、手に入れる時間に前後はあるが確実に手に入ることを丁寧にアナウンス。しかし、少しでも早く手に入れたいと思った人々がちょっとでも店に近い場所に陣取るために動いてしまったため、「行列開始か!?」と勘違いした人々が店舗のまえに殺到! 雪崩のように押し寄せた人波で店頭が埋まってしまう事態となってしまった。ここ10年くらい、ほぼすべてのハード、大作ソフトの発売日の風景を取材してきたが、初めて「怖い」と思ってしまった。
さて今回の行列、2000年3月のプレイステーション2発売日の行列と大きく違う点がひとつある。それは今回の行列には、圧倒的に外国人購入者が多かったこと。とくに中国からの購入者がものすごく目立っていたのだ。販売店も、いくら日本語で「押さないで!」、「あわてなくても買えますから!」とアナウンスしても混乱が収まらないため、途中から中国語でのアナウンスに切り替えていたほどである。ちなみに何人かの中国人購入者に「ご自分で使うのですか?」と聞いてみたが、「自分では使わない」という人ばかり。要するに"転売する"ということだ。もちろん、すべての中国人購入者がそうではないのだろうが、話を聞いた10人以上の人がすべて「転売する」と答えていたので、かなり複雑な心境になってしまった。インターネットのオークションで高値で取引されていることは多くのメディアが報じているが、香港などではすでに店頭で、十数万円の値段でプレイステーション3が売られている。品切れのために買いたくても買えなかったゲームファンが多数いることを思うと、非常に悲しくなってしまうのは僕だけじゃないはずだ。
ソニー・コンピュータエンタテインメントの関係者によると、11月中はどうしても品不足になってしまうと思われるが、12月に入ればかなり品薄感も解消されていく、とのこと。発売日に手に入れることができなかったゲームファンの皆さん、市場に潤沢にハードが並ぶ日までもうちょっと辛抱しましょう。……って、僕もだけど(苦笑)。
大塚角満

週刊ファミ通副編集長にして、ファミ通グループのニュース担当責任者。群馬県出身。現在、週刊ファミ通誌上で“大塚角満のモンハン研究所”というコラムを連載中。そこら中に書き散らした『モンハン』がらみのエッセイをまとめた単行本『本日も逆鱗日和』シリーズ(4巻)が発売中。また、そこからのスピンオフとして別の視点から『モンハン』の魅力に迫る書き下ろし作品『別冊『逆鱗日和』 角満式モンハン学』シリーズも。このブログではさまざまなゲーム関連の話題を扱うつもり。一応、そのつもり。
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