大塚角満の ゲームを“読む!”
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発売日に購入していながら、ほとんどプレイできないでいたゲームがある。それがプレイステーション2用ソフト『ワンダと巨像』。"ものすごくキレイなゲーム"ということはデモなどを観て知っていたのだが、やっぱりリアルタイムでプレイしているものを見ないとなかなかそれも伝わりにくいものだ。
先日、この『ワンダと巨像』を人がプレイしているところをずっと眺める機会があった。自分でプレイしろって感じだが、なかなか操作に慣れなくてずっとゲーム棚に飾られていたのである。情けない話だがネ。
それにしてもこの『ワンダと巨像』の、なんて美しいことか。これはもう、絵画だ。動く絵画。ゲーム中のシーンのどこを切り取っても、額に入れて飾れるくらい美しい。淡くて切なく、それでいて雄大な風景は、洋画よりも水墨画のそれを思わせる。『ワンダ』は完全なファンタジーだが、"ファンタジーな水墨画"という、ジャンルを超越した新しい美しさを確立してしまっている。
なんでこんなことを書き始めたのかというと、じつは先日、取材でロンドンに行って、そこにある有名な美術館"ロンドンナショナルギャラリー"に初めて入ったのだ。そこはもう、ある意味宝の山で、ダビンチ、モネ、ピカソ、レンブラント、ルノアール、ドガ、ゴーギャン、ラファエロ、セザンヌ、ロートレック、スーラといった、時代もジャンルも問わないヨーロッパのありとあらゆる有名画家の名画が、あまりにも無防備に、大量に展示されているのだ。俺はそこでルーベンスの絵画(宗教画だけじゃなく、風景画もたくさんあった)に大いに感動し、その感動っぷりはネロもパトラッシュもかくやというくらい激しいもので、「今度ここに来るときは絶対にセントバーナードを連れてこよう」と思うくらい苛烈なものだったりした。
……で、何が言いたいのかというと、俺はこのナショナルギャラリーで世界の名画を眺めているとき、ふいに『ワンダと巨像』の景色を思い出してしまったのである。
「『ワンダ』の名シーンを切り取って展示したら、立派な絵画展になるだろうなあ……」
ルーベンスの緻密な風景画を見ながら、そんなことを思った。
ゲームは基本的に"プレイする"ものだが、『ワンダと巨像』のように見ているだけで激しく感動できる"見るゲー"ってのがあっていいんじゃないかな。プレイしても当然おもしろいけど、ただ眺めているだけでも心から満足してしまうゲーム……。次世代機の登場でハードの性能が格段にあがり、より絵画的な表現ができるようになれば、こんな"見るゲー"が増えていくのかなあ……と思った秋の午後。
ザクザクボコボコザクザクザクザク……。タイトーのPSP(プレイステーション・ポータブル)用ソフト『クロニクル オブ ダンジョンメーカー』が地味にアツい。なんなんだこの熱いのか熱くないのかわからないアツさは(意味不明)。最近、気がつくとPSPを握ってダンジョンを掘り進んでいる自分がいる。俺の心はすっかり、この"究極の自己満足ゲーム"に絡め取られてしまったようだ。
この『クロニクル オブ ダンジョンメーカー』(以下『ダンジョンメーカー』)、口コミでおもしろさが伝播し、品切れのショップが出るほどの隠れたヒット作になっている。俺は週刊ファミ通に第一報が載ったときからこのタイトルには注目していて、「発売されたら絶対にやり込む!」と固く決意し、発売される日をいまかいまかと待ち構えていたのであった。しかしソフトを手に入れたのは、発売日から2週間以上も経過した10月17日。……って昨日じゃん! まだ1日程度しかプレイしていないのにエラそうにインプレッションのようなものをこれから書こうとしているのだが、すっかり『ダンジョンメーカー』の魅力のトリコになってしまっているので、これはしょうがないことなのである。
知らない人もいると思うので簡単に説明すると、『ダンジョンメーカー』はPSP用のRPGである。しかし主人公の目的は"モンスターを倒してレベルを上げてアイテムなんかもたくさん集めて最後に待ち受けるラスボスを撃破する……"なんていうオーソドックスなものではない。このゲームの主人公の主たる目的は"穴を掘る"ことなのだ! ホリススムも真っ青な穴掘り男は、街のそばにできた穴ぽこをダンジョンにすべく、日夜ザクザクザクザクと穴を掘り続ける。本当にめったやたらと穴を堀る。掘って掘って掘りまくる。堀北真希という名前を見ただけでPSPを握りたくなるくらい掘り倒す(シツコイな)。一時期、PCの『ダンジョンキーパー』(魔物の総大将になってダンジョンを作り、勇者をおびき寄せて倒すという斬新なゲーム)というゲームにハマっていたのだが、あの突拍子もないゲームの香りがプンプンただよってきて「こいつはタマラン」とヨダレが出てきてしまった。
さて『ダンジョンメーカー』だが、もちろん、掘っただけでは終わらない(当たり前だが)。穴を掘る真の目的は、ダンジョンと化した我が穴にやってくるモンスターを倒すことにあるのだ。オーソドックスなRPGだと、ダンジョンはもとからあるもので作るものではない。モンスターも、物語を進めていけば年功序列(?)で強いものが襲い掛かってくる。ところが『ダンジョンメーカー』は、こっちから攻めて行くんじゃなくて我が家におびき寄せてやっつけようヒヒヒ的なゲームなのである。つまり自分でダンジョンを作ってモンスターを住まわせてから倒す、ってわけだ。しかも単純に、平安京のような碁盤目のわかりやすい通路を作っただけでは大したモンスターはやってこない。いかにもモンスターが好みそうな、曲がりくねってて迷いやすく、怪しい部屋や大広間があり、噴水やら寝室などところどころにアクセントのある迷宮が望ましいようだ。……ようだ、というのは俺もまだこのゲームをやり始めて時間が浅いため、どんなダンジョンだとお客様が暮らしやすいのかよくわからないのである。強くてレアなモンスターは魅力的なダンジョンにしかやってこないという。モンスターならぬ我が身では魔物的優良物件を作るには時間がかかることだろうが、コツコツやっていきたいと思う。
この『クロニクル オブ ダンジョンメーカー』、週刊ファミ通のクロスレビューでもかなり高い点を獲得した。ひとりのレビュアーなど、満点の10点をつけたほどである。当たり前のことだが、こういった高得点を取るゲームには必ず何か光る部分がある。あるゲームは涙が出るほど綺麗なグラフィックが評価されるだろうし、すばらしいストーリーもゲームファンの心をうつ。ゲームによっては耳に残る音楽が絶賛されることもあるだろう。そういう観点で見れば、この『ダンジョンメーカー』はズバ抜けて突出したタイトルとは言えないかもしれない。
ではこのゲームは、いったいどこが光っていたのか。
『クロニクル オブ ダンジョンメーカー』は。
"アイデア"が光っていたのだ。
アイデアが光っているゲーム……。最高に魅力的だと思いませんか?
大塚角満

週刊ファミ通副編集長にして、ファミ通グループのニュース担当責任者。群馬県出身。現在、週刊ファミ通誌上で“大塚角満のモンハン研究所”というコラムを連載中。そこら中に書き散らした『モンハン』がらみのエッセイをまとめた単行本『本日も逆鱗日和』シリーズ(4巻)が発売中。また、そこからのスピンオフとして別の視点から『モンハン』の魅力に迫る書き下ろし作品『別冊『逆鱗日和』 角満式モンハン学』シリーズも。このブログではさまざまなゲーム関連の話題を扱うつもり。一応、そのつもり。
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