大塚角満の ゲームを“読む!”
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装備しているのがガンランスとはいえ、火山における対テオ戦の基本は変わらない。俺たちはいつも火山の"2"の地点で、できるだけ多くのダメージをテオに与えることにしている。2は火山の影響が少ないため、クーラードリンクを飲まなくても体力が減少しないのだ。くどいようだが4人ともガンランスなので、どれほどうまく戦闘が進行したところで長丁場になるのは明白。となるとクーラードリンクの節約は絶対で、飲まなくても戦える2地点で可能な限り多くのダメージを与える必要があるだろうと判断したわけだ。
テオが2にやってくるまでには数分の余裕があるので、まずは試し撃ちとばかりに仲間に向かってボンボコボンと砲撃。今回は全員がガンランスのため、あちこちでド派手な花火が撃ち上がる。この派手さを見ていると、「じつは4人ガンランスってものすごく強いのではなかろうか」という淡い妄想を抱いてしまうのだが、やはり白昼夢は白昼夢で現実ではないということを、このあとイヤというほど思い知ることになる。
さあてやって参りましたテオ・テスカトル。まずはご挨拶とばかりに、4人揃っての竜撃砲でお出迎えだ。巨大な4つの火炎に包まれる炎の古龍。みな口々に「すげえええ!」、「派手え!!」、「かっちょいい!!」、「ガンランス最強!!!」と自画自賛のコメントを発する。どうやらガンランスは、使う者をナルシストにするらしい。しかし戦いは始まったばかり。しかも相手は炎の王者だ。竜撃砲が何発か当たったくらいでは、ダメージなど微々たるものだろう。とにかく徹底的にガードを固めて、隙があったら砲撃と竜撃砲を連発するしかない。事前にそんな相談はまったくしなかったのだが、そこは長年ともに歩んできた旧友たち。言葉はなくとも気持ちは伝わり、みな自然と俺と同じように砲撃と竜撃砲をボカンボカンとぶっ放すのであった。……まあガンランスなので、イヤだろうが何だろうがこういう戦いかたになるのだがね……。
やってみてすぐに気づいたのだが、この4人ガンランスという編成、悪くない。"強い"とは口が裂けても言えないが、なんだか無性に"楽しい"のである。ガンランスはメインとなる攻撃が砲撃と竜撃砲になるわけだが、パーティーにガンランス以外の武器を持つ人がいると(たいていそうなるけど)、仲間も吹っ飛ばしてしまうこれらの攻撃をすることに戸惑いを覚えてしまう。しかし全員がガンランスだと「お互い様だし!」と強く思えて、何の気兼ねもなくボンボンボンと砲撃系の攻撃をくり出すことができるのであった。しかもテオのような大きなモンスターが相手だと、パーティーのメンバーがそれぞれ頭、尻尾、胴体の左右と攻撃する位置が分散して、竜撃砲をぶっ放しても意外なほど味方を巻き込まない。放ちたくても放てなかった砲撃系の攻撃を思う存分くり出すことができ、俺は有頂天になった。パーティーのメンバーも、「これ、最高に楽しい!」と浮かれ顔で元気に砲撃をくり返している。見た目的にも、これ以上はない! と断言できるくらいド派手で、アメリカンプロレスを見ているような錯覚を覚えるくらいだった。
しかし前述したとおり、俺たち4人は強くはなかった。ゴツさの極限にあるガンランスだが、武器として見たときのポテンシャルはお世辞にも優秀とは言えず、いくら砲撃と竜撃砲をくり返しても猛る上位テオ・テスカトルは元気に走り回っているのである。しかもいつまで経っても角を破壊することができず、角が壊れないっつーことはテオの周囲に吹き出している炎の鎧も消えないわけで、ジリジリと俺たちの体力を奪っていく。そのため、タックルで吹き飛ばされたのちに上にのしかかられ、SM真っ青の火あぶり状態にさらされたJさんが無念の昇天。じわりとした焦燥感が、俺たち4人の背後から忍び寄ってきた。
「うーん、角が壊れないな」
とMRさんが言った。そうなのだ。いくら砲撃や竜撃砲を食らわしても、角を壊すことができないのである。角さえ壊していれば、Jさんが昇天することもなかったのだ。
「角を壊さないと暑くてたまらん。しばらく集中して角に攻撃を加えよう」
とSちゃん。俺たちはうなづきあい、砲撃、竜撃砲はもとより、通常の突っつき攻撃もイヤというほどテオの顔面に降らせた。しかしいつまで経ってもテオの顔は、男性エステ帰りを思わせるほどキレイなままでなのである。おかしい……。これだけ攻撃して壊れないわけが……。そこで俺は「はっ!!」となった。もももも、もしかして……。
「あのぉ……」
俺はおずおずと切り出した。口に出すのも恐ろしいことを、これから言わねばならぬ。
「も、もしかしてテオの角って、龍属性武器じゃないと壊せないんじゃ……」
その瞬間、断末魔の叫びが火山のあちこちから噴煙のように吹き上がった。
「ああああああっ!!」
「そそそ、そうだった!!」
「なにぃ〜〜〜〜!」
確信が持てなかった、というより、信じたくなかったので、俺は河合リエから強奪したエンターブレイン刊『モンスターハンター2 公式ガイドブック』の394ページを紐解いた。テオの奥さん(?)であるナナ・テスカトリのページだが、そこにはじつにイヤな記述が……。
「えーっと……、やっぱりテオの角は龍属性武器じゃないと破壊できない模様です。ナナの角は龍属性の攻撃を加えて壊す、とあるので、おそらくテオも……」
驚愕の事実を突きつけられ、俺たちは出発まえの葬式気分に逆戻りした。いまの4人の中で、龍属性武器を持っている人間はひとりもいない。……ていうかそもそも、龍属性のガンランスなんて存在しないのだっ!! つまり4人ガンランスのパーティーでは、テオの角を破壊することなんてできないのであるっ!!
すっかり意気消沈した我々だったが、「もともとテオの角はどんな武器でも破壊不可能だった」と無理矢理思いこんで、討伐に集中することにした。しかしいくら討伐しようとしてもテオはなかなか弱ってくれず、いたずらに時間は流れていくばかり。気がつくとすべてのクーラードリンクを使い果たし、火山の熱気がじわじわと体力を削っていくという状態になってしまった。
がしかし、さすがの炎の古龍も30分におよぶ砲撃の雨に辟易したのか、足を引きずりながら6の地点に逃げていった。火山におけるテオとの最終決戦場が、この6の地点なのだ。
「いける!」
俺たちは徐々に減少していく体力になど目もくれず、矢のように6の地点に飛んでいった。そして全員で、最後の力を振り絞って向かってくる炎の王者に向けて龍撃砲。ついに、火山の奥地にテオ・テスカトルの断末魔の叫びが響き渡った−−。
時間こそかかったものの、今回の戦闘では回復薬をほとんど使わなかった。こっそり太陽草とアオキノコまで持ち込んでいたというのに、これにはちょっと拍子抜けしてしまったほどである。聞くと、パーティーのほかのメンバーも「回復薬がたくさん残った」といって驚いている。ガードを固めて攻撃を凌ぎきり、敵が攻め疲れたところに竜撃砲をぶっ放す……。ガンランスの基本的な戦いかたがテオには見事にハマり、ほとんど攻撃を食らわずに攻めることができたようなのだ。
それにしても、こんなに充実感に満ちたクエストは久しぶりだ。ちょっと視点を変えて戦場に行くだけで、初心者だったころと同じような緊張感と、試行錯誤の楽しさを思い出させてくれる。しばらく4人ガンランスクエストにどっぷりと浸ってしまいそうだ。
しかしやっぱりガンランス。
強くは、ない……。
先週、丸々1週間海外へ取材に行っていた。そのため、書きたいことが山ほどあった我がブログを更新することができなかったのである。……しかしよく見ると、前回のブログがアップされたのは8月11日となっている。俺が海外に旅立ったのが8月22日なので、いつの間にか不可思議な"空白の10日間"ができてしまっているではないか。まるで俺がブログを更新するのをサボっていたかのように見えるナゾの10日間……。俺はびっくりして、空白の日々を埋めるために用意していたネタを貯蔵庫から引っ張り出そうとするも、やっぱりネタは鮮度がイノチってことでそれらはすべて焼却処分してしまった。なので気を取り直して、また今日からコツコツと、ひとつひとつ記事を作っていこうと思う。
……と、324文字も使ってくどくどと書き連ねてみたが、スンマセン、全部言い訳です;; 今後はキチンと更新していくのでどうか見捨てずに……。
さて。
俺が海外出張に行っているあいだも、ドンドルマの時間は絶え間なく流れていた(当たり前だが)。いつも俺は7、8人の仲間と同じ街に集ってチャットしたりチャットしたりチャットしたりしているわけだが、ナゼか知らぬが俺がいないうちに、我が街にガンランスブームが到来したらしい。それまでガンランスになどまったく見向きもせず、たまに俺がガンランスをやっこらせと担いでいようものなら「なにその武器(冷笑)」といわんばかりの氷の視線を投げかけてきていた我が友たちが、こぞってホワイトキャノンだのガンチャリオットだの、なかなか立派なガンランスを背負っているのである。
「いやあ最近、ガンランスが楽しくてさあ」
とMRさんが言った。彼は苦労して作ったガンチャリオットが愛おしくてタマラナイらしい。
「せっかくだから、ガンランス4人で何かいこうか」
とJさんが言った。彼はブーム便乗型ではなく、『モンハン2』のスタート当初からガンランスを使っていた数少ない奇特なお方である。それにしても、ガンランス4人でどんなクエストに行けばいいのであろうか。正直、俺はここ数ヵ月、テオ・テスカトルの激レアアイテム"炎龍の塵粉"にしか興味がないので、当然のことながらテオ討伐に行きたい。しかしガンランス4人でテオに挑むなんて、ダイコン片手にアフリカ象にケンカを売るのと同じくらい、壮絶な悪夢の所業である。俺は言った。
「あ、あの俺、テオに行きたいんだけど……。なのでガンランス4人てのはまた今度ってことにしてチャチャッとテオに行ってその……」
これを受けて悪のり大好きなSちゃんが、「んじゃ、テオに行くってことでw」と発言。いつのまにか、俺、MRさん、Jさん、Sちゃんの4人で、ガンランス片手にテオ・テスカトルに挑むことになってしまった。うーむ、こうなったら後には退けぬ。行くしかなかろう。しかしどんなに楽観視してみても、苦戦することは明白。なので俺は万全を期して、以下のような装備で炎の古龍に挑むことにした。ちなみにもちろん、相手は上位のテオ・テスカトルである。
武器……ナナ=フレア
防具……全身エンプレスシリーズ
アイテム
回復薬グレート(10個)
回復薬(10個)
クーラードリンク(5個)
力の護符
力の爪
守りの護符
守りの爪
こんがり肉(3個)
ペイントボール(33個)
砥石(20個)
大タル爆弾(3個)
小タル爆弾(10個)
打ち上げタル爆弾(10個)
太陽草(10個)
アオキノコ(10個)
まず防具のエンプレス(ナナ・テスカトリね)シリーズだが、これはレベルアップするのに非常に骨が折れるシリーズのため、恐ろしいことにレベル1のまま成長が止まっていたりする。ナナの素材でできているので炎の攻撃にはそれなりに強いのだが、なんせレベル1のために防御力がてんで大したことなく、テオのタックルを食らおうものなら体力の半分以上を余裕で持っていかれてしまうという、画用紙顔負けのペラペラ度を誇っている。俺は普段はエンプレスシリーズよりも格段に強い"暁丸・覇"シリーズで全身を覆っているのだが、情けないことにこちらも成長が途中で止まっているため、恐怖のスキル"地形ダメージ増【大】"が付いたままになっている。こいつは本当に悪霊のようにタチの悪いスキルで、火山の溶岩の上に立っていると、たとえ体力がマックスの150あっても、わずか10秒程度で命を落とすハメになる。悪いことにこのスキルはテオやナナが吹き出す炎の鎧(でいいのかな)にも適用されやがるため、両者が怒って炎の鎧を噴出しているときは溶岩に足を突っ込んでいるのと同じだけのダメージを受けることになるのだ。つまりテオのそばにいるだけで、10秒程度で絶命させられることになるというわけ。こんなマゾな装備で、しかもガンランスなんかでテオ討伐に臨んだ日には、アッと言う間にこちらが討伐されてしまう。なので俺は防御力を捨てて、女性陣に何かと評判の悪い真っ青なエンプレスシリーズで身を固めて、テオに立ち向かうことになった。あ、それとアイテムに入っている"太陽草"と"アオキノコ"は、合成すると"回復薬"になるので持っていった。ふだんはまず持っていかないアイテムだが、どう考えても回復系のアイテムが足らなくなると思って、ほかの3人には告げず、こっそり持ち込んだのだ。
さあ出発だ。「今回は長い旅になるぞ〜」と出発口でつぶやく俺。それを見た留守番のHさんがひと言、「ものすごく早く帰ってくるかもねw」と不吉な発言をボソリ。4人、自分の葬式に出向くような気分になって、一路、炎の古龍が待つ火山へ出撃した。
長くなったので、クエストの模様は次回のコラムで^^;
我が家にはメラルーとアイルーが住んでいる。棲んでいる、と書くべきか。もちろん似てるってだけで、人からこんがり肉を盗んだり爆弾を持って追いかけてきたりはしない。以前、初代『モンスターハンター』のプレイ日記を書いていたときに親バカ丸出しで紹介したネコなのだが、毛並みや存在感そのものがあまりにもメラルー、アイルーに似ているので「さすが我が飼いネコ」と感心したものである。
この2匹のネコはものすごく仲がよく、ときにじゃれ合い、ときに折り重なるように寄り添って幸せそうに寝息を立てていたのであった。
……なんて書くと、まるでどちらかが天に召されてしまったかのようだがまったくそんなことはなく、2匹とも過剰なくらいに元気でギャアギャアわめきながら日夜、一生懸命暴れ回っている。築30数年のボロ家は、にゃんにゃん棒とメラルーガジェットの攻撃にさらされまくって見るも無惨な状態となり、それらの傷を見るたびに、これが新築だったらキサマらただじゃおかねえぞ的な怨嗟の感情を俺に抱かせるのであった。
さて、そんな仲のいいメラルーとアイルーの関係に、ある日突然、ヒビが入った。いや、ヒビなんて生やさしいものじゃなく、亀裂というか地割れというかモーゼの十戒というかこの世の終わりというか、とにかくある日、この2匹は終末的な大ゲンカをおっぱじめて、"家庭内別居"の状態になってしまったのだ。何たってチラリと顔を見ただけで両ネコともとてつもないうなり声をあげ始めて、全身の毛を総毛立たせる。同時に、まわりに人間がいようがいまいがお構いなしに突進していって、「ンギャ〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!」、「ギャワワワワワ〜〜〜〜!!!」とか何とか、この世のものとは思えぬ大絶叫を発しながら殴る蹴るの暴行を加え始めるのである。この、阿鼻叫喚の地獄絵図にキモをつぶした俺はすぐに2匹を引き離し(人間なんか眼中になくひっかき合いを続けるので、引き離そうとした俺の手はズタズタになったがな)、以来メラルーとアイルーは悲しき別居状態となったのだ。
これが、今年の5月のこと。その日から、メラルーは1階、アイルーは2階の獣人となり、同じ家に棲んでいながら完全にもう1匹のネコの存在は無視するという異様な同居生活が始まった。
しかし7月の頭ごろだろうか、2階に棲んでいるアイルーが、閉め忘れた1階と2階を隔てる扉からスルリと1階に侵入し、メラルーの食べ残しのご飯をガツガツと食べているではないか。すぐそばにメラルーがいたのに、である。5月の惨劇が、俺の脳裏でフラッシュバックする。ああ……また血を見るのか、と俺は心の中で泣け叫んでいたのだが、当のメラルーとアイルーはお互いの匂いを軽く嗅いだだけで「何をこのおっさんはビビっておるのだ」的な視線を俺に送って寄越し、退屈そうにあくびまでして見せるのである。俺は拍子抜けした。どうやら2匹のあいだにあったナゾのわだかまりはいつの間にやら消え失せて、すっかり仲直りしてしまったようなのだ。「ホントにネコって気まぐれだなぁ……」と俺は呆れ声を出しながらも、また昔のように2匹で遊ぶ姿や眠りこける姿を見ることができるんだなあと涙が出るほど嬉しくなったものだ。
これが一昨日の朝までの話。2匹はこの1ヵ月のあいだ、本当に仲良く、お互いの身体を毛繕いしてあげたり、頭を並べてご飯を食べたりしていたのであった。
しかし昨夜。
再びメラルーとアイルーは怪獣大戦争もかくやと言うくらい超絶的な大立ち回りを演じ、家庭内別居に突入してしまった。いったいこの2匹のあいだに、何があるというのだろうか……?
ネコ研究家の方、もしくはメラルーとアイルーの生態に詳しい方、どうかわたくしに助言を……。
先日、全ハンターの頂点とも言うべき、ハンターランク999の強者といっしょに遊ぶ機会を得た。この達人・Sくんがどういった人物かはファミ通コネクト!オンのブログに詳しいのでそちらを読んでいただきたい。ぶっちぎりに高い999というハンターランクもさることながら、炎の古龍、テオ・テスカトルを約1500匹、氷の古龍、クシャルダオラを960匹も屠り去っているという事実は、"究極のハンター"と呼ぶにふさわしい偉業と言える。
正直、俺は実際に彼に会うまで(といってもオンライン上でのことだが)、その究極のハンターランクに気後れしていた。"ビビっていた"と言ってしまっていいだろう。俺のようなヘボい腕ではいっしょにクエストに行っても迷惑をかけるだけではないだろうか……なんて考えて、ひとりで心臓の鼓動を速めていたのである。しかし実際に会ってみるとSくんは「こんにちはー^^」と優しくあいさつする好青年で、俺はすっかりくだけた気分になり、ふつうの友だちとしていっしょに遊ぶようになった。
さて、ハンターランク999の人を実際に目の前にしたときに誰もが抱く疑問は「いったいどれだけの時間を費やしたら999になれるのか?」ということだろう。俺もそうだ。すごく気になった。なので俺はすっかり友だち気分になったのをいいことに、単刀直入にSくんに聞いてみた。「総プレイ時間はどれくらいになるの?」と。するとSくんは「プレイ時間のところはいつも気にせずにすっ飛ばしちゃうのでよくわかりませんが、2000時間は超えていると思います^^;」と爽やかに言った。2000時間か……。うん、それくらいは余裕で行ってるだろうナ。なんたってハンターランク90の俺のプレイ時間が、現時点で991時間なのだ。俺ほどのハンターが約1000時間を費やしても、ハンターランクは90程度なのである。999まで育てるには、そりゃあ膨大な時間が必要だろう。……というようなことを後日、仲のいい友だちに力説したら「ミドさんの場合は1000時間あっても半分はチャット、残りの半分も街にいるだけで放置している時間に使われている。なので純粋にクエストに使った時間は、250時間にも満たない」とピシャリと言われてしまった。俺は心当たりがアリアリだったのでひと言も反論せず、「うう」とか「ああ」とか呻いてその場から立ち去った。
まあ俺のことはどうでもいいのだが、Sくんがそれほど膨大な時間を費やさずに(と言っても並みの時間ではないが)999になったとしたら、その秘密はクエストそのものにあるはずだ。きっと達人ならではのクエスト遂行方法があるに違いない。そこで俺はファミ通編集者2名を伴って、Sくんといっしょにクエストに出かけることにした。相手はSくんがもっともたくさん倒している古龍、テオ・テスカトル(もちろん上位)である。
クエストが始まると、俺の分身は見慣れぬ場所で呆然と佇んでいた。どこだココ……。そしてすぐに俺は気づいた。「うお! 隠しマップに飛ばされてる!」。めったに行くことのできない隠しマップでは珍しい鉱石や植物を採集できるので普段だったら嬉しいことこのうえないのだが、今回はSくんとのお試しクエストだ。当然ながら鉱石採集用のピッケルなんて持ってないし、とっとと戦場に駆けつけてSくんの戦いっぷりを見届けなくてはならない。俺は泣きながら隠しマップを飛び出し、戦場へひた走った。
そして実際にSくんとともにテオと戦ったわけだが、戦い始めてからほんの数分で、彼が短時間で999までキャラクターを育てられた理由がわかった気がした。とにかく、彼の戦いっぷりは徹底的に効率がいいのである。テオがつぎにとる行動をすべて読み切って攻撃しやすい位置にまわりこみ、まずは角を折るために顔面を徹底的に攻撃(武器は双剣だった)。テオが逃げようとして上空に飛び上がった瞬間にドヒュンと閃光玉を放り投げて、哀れな炎龍はドスンと落下。しかも彼はいっしょにパーティーを組んだ仲間のヒットポイントをつねにチェックしており、傷ついた人がいるとL3ボタンを押し込んでピコンピコンと合図をし、"生命の粉塵"をゴクンと飲み干す。生命の粉塵というアイテムは仲間全員のヒットポイントを回復するというセレブ御用達の逸品だが、使うタイミングがなかなか難しかったりする。というのも、モンスターから攻撃を食らったハンターは矢も楯もたまらずに急いで回復薬を飲みたがるものなので、せっかく仲間の窮地を救おうと生命の粉塵を飲んでも、回復薬と重ね掛けになって"使い損"となってしまうことがよくあるのだ。Sくんが生命の粉塵を飲むまえにL3ボタンを押して仲間に知らせるのは、この使い損を防ぐためと思われる。おかげで俺はこのクエストで、ほとんど回復薬を使わなかった。上位のテオを相手に、これは驚異的なことだ。
そしてSくんは、テオがキャンプ近くのマップ4の地点に逃げていったのを見てすかさずモドリ玉を使い、アッというまに炎の古龍を葬り去ってしまった。「1ヵ月ぶりのクエストだったので手こずっちゃいました^^;」と彼は謙遜していたが、俺から見たら信じられないくらい効率的なハンティングで感動すら覚えるほどだった。
Sくんが用いたテクニックはほかにも使っている人はたくさんいるかと思うが、いっつもテキトーにピクニック気分でクエストに出かけている俺には学ぶべきことがたくさんあった。早くモンスターを倒せれば、それだけ仲間がやられる確率も低くなる。好き放題やるのも楽しいが、これからはSくんのように視野を広くもってクエストに臨んでみよう。頂点のハンターから学んだいちばん大きなことは、テクニックよりもクエストに出かけるときの"心がけ"だった気がする。
先日、3人の友だちとともに上位のテオ・テスカトルハンティングに出かけた。炎の古龍というだけあってこいつはなかなかの強敵で、油断しているとあっというまに3回屠り去られてクエスト失敗となる、なんて悲劇は珍しくもない。しかもそのときのテオはいつも以上に猛り狂っており、我々は死なないのが不思議なくらいの猛攻にさらされ、息も絶え絶えとなりながらパタパタと飛び去っていく炎の龍を呆然と眺めていたのであった。俺たちはオノレのふがいなさを棚に上げて、怒れる炎龍に罵声を浴びせた。
「あのネコ(テオのこと)、きっとナナにふられたんだ」
「背中に鉄板貼り付けて焼き肉屋に売り飛ばしてやる!」
そして誰かが、半ばヤケクソになってこんなことを言った。「いっそ、ペットにしてやる!」。
なるほど、ペットか。『モンスターハンター』に登場するモンスターどもをペットにしたら、さぞかし立派な番犬(?)になることだろう。試しに、このテオ・テスカトルを家で飼うとしたらどうなるのか、ちょっと真剣に考えてみた。
◆◆◆
●テオをペットにするとどうなるか
愛玩動物として近所のペット屋からテオ・テスカトルを購入してきた。最近やたらと泥棒メラルーが家のまわりをうろうろしているので、番犬代わりに買ってきたのだ。ペット用として店で売られているテオは、ほとんどが角を折られている。こうしないと、興奮したときや喜んだときにやたらと身体から炎を吹き出して、危なくてしかたがないのだ。最近も、角が折られていない野生のテオをとっ捕まえてきてペットにしていた近所のオッサンが、ひょいと抱っこしようとした瞬間に炎を吹き出されて大やけどをした。角さえ折ってしまえばめったやたらと炎を吹き出すことはなくなるので安心である。ただなかには、景観的に角の折られたテオは格好悪いということで、角の代わりに尻尾を短くする飼い主もいる。これでも確かに炎は吹き出さなくなるのだが、尻尾の短いテオはやたらと方向音痴になり、飼い主のもとに帰って来なくなるケースが多いという。そうなるとこのモンスターはすぐに"野良テオ"となってしまい、あちこちで粉塵爆発をかましまくるので危なっかしくて仕方がない。
そうそう、粉塵爆発で思い出したが、ペットショップでテオを買うときに"最初のしつけ"として店員に教えてもらったのが"テオにくしゃみをさせない"方法だった。なぜこんなことを教わるのかと言うと、精神や体調をコントロールできない幼いテオは、クシャミをした勢いで粉塵爆発を起こしてしまうことがあるからだ。先日も、飼いテオがくしゃみといっしょに粉塵爆発を起こしてしまい大惨事になった、というニュースが流れた。この飼いテオは3歳のオスで体調が4メートルもあり、くしゃみの勢いとはいえ粉塵爆発の威力は凄まじく、テオを中心とした10メートル四方が焼け野原になったという。これくらいの大きさになると、もはやじゃらしているのか食われそうになっているのか飼い主にもよくわからなくなって来て、火山や沼地で"捨てテオ"が激増。いまや社会問題になっている……。
◆◆◆
うーん……。どうやらテオをペットにしてもロクなことがなさそうだ。見た目的には、いささかデカくなりすぎたネコ、って感じなので、ネコ好きの俺ならばなんとか飼うことができると思ったのだが……。しかし、そもそも最初から古龍を飼おうってのが間違っていたのかもしれない。最初はやはり、目覚まし代わりにイャンクックをペットにすることでも考えればよかったのだ。
えーと、イャンクックをペットにすると……と考え始めたのだが、あまりにもバカバカしいのでこのへんでやめとこ。
しかしこれのどこが"『モンスターハンター2』プレイ日記"なんだろね……。
ついにコイツのことを書く日が来たか……。
"ラージャン"と言われて、ピンと来ない方も多いと思う。このモンスターは『モンスターハンター2』の上位クエスト(ハンターランク31以上の人が行けるクエストね)でしか出会えないし、現在までのところイベントクエストとしても配信されていないはず。そもそも上位クエストでも、クックやゲリョスのように毎回のようにリストに入っているモンスターではないので、なかなか出会うことが難しい存在だったりするのである。
ラージャンをひとことで表す言葉として、ある人は「最凶」と言い、ある人は「最悪」と言ったりする。またある人は「マフィア」、「ヨメ並み」と言ったりして、表現の差こそあれとにかく考え得る限りもっとも凶悪な存在であることを懸命に説明しようとする。そう、はっきり言ってラージャンは、『モンスターハンター』史上、最強最悪の"金色(こんじき)の悪魔"なのだ。
ラージャンの特徴はとにかく、攻撃力がべらぼうに高いこと。その巨体からは想像がつかないほど俊敏な動作からくり出される攻撃の数々は、絶望的なほど力強く、どれを食らっても瀕死の重傷を負ってしまうほど。ラージャンとは上位ハンターしか戦えず、上位ハンターともなれば防御力400オーバーの装備を装着していることも多いわけだが、それでもコイツの攻撃を食らえば体力の半分以上を余裕で持っていかれてしまう。食らうとほぼ即死する攻撃も複数備え、あくまでも俺の主観だが、その強さは"動く活火山"グラビモス亜種、"砂漠のプロレスラー"ディアブロス亜種をも凌駕すると思われる。
その圧倒的な攻撃力を証明するかのように、ハンターリストのラージャンの覧にはひと言、つぎのような記述がある。
"超攻撃的生物"
この形容どおり、ラージャンは本当に攻撃一辺倒の怪物だ。それはたとえて言うなら、キャラクター育成ゲームで攻撃力にばかりポイントを振ってしまい、ちょっとでも殴られると瀕死になってしまうバランスを間違えて作ったいびつなキャラクターにも似ている。実際、ラージャンの体力はそれほど高くない。なのでどちらがやられるにしろ、クエストは20分もあれば終了してしまうだろう(2〜4人で挑んだ場合ね)。『モンスターハンター』流に言えばラージャンは、防具は初期装備のくせに、武器はまがまがしい黒滅龍槍を装備しているハンターのようなもの。こんなハンター、龍属性武器に弱い飛竜が見たらいまいましくて仕方がないだろう。動いているものを見たら、とにかく何が何でも襲いかかる。防御などはいっさい考えず、自分が狩られるよりも先に相手を屠り去ることしか頭にない。これぞ、野生に生きる強者の思想。まさに金色のマフィアだ。
先日、無謀にもこのラージャンにたったひとりで立ち向かってみた。聞いたところによると、弓を片手にたったひとりで、この悪魔を屠り去るツワモノもいるという。ラージャンをひとりで倒すことは不可能ではないのだ。だったら俺も倒したい! そう思って、俺は鼻息も荒く単独でのラージャン討伐に赴いたというわけだ。武器は、最強クラスの氷の大剣・ダオラ=デグニダル。「なんだオイ、ガンランスじゃねえのか」と思われるかもしれないが、正直、ガンランスを5本抱えていったところでラージャンとは勝負になる気がしなかった。まあ、あんな重い武器を5本も抱えていたらドスランポスにすら勝てないけどナ。とにかく俺は、ダオラ=デグニダルを両手に持ち、斬れ味+1の装備に身を包んで、満タンの回復薬(回復薬グレート、回復薬)に加えて秘薬と薬草までバッグに詰め込んで、目を血走らせながら、金色の悪魔が待つ火山へと降り立った。
ラージャンに対抗するための最低条件は、とにかく"攻撃を食らわない"ことだ。「そんなことはラージャンに限らず、『モンスターハンター』シリーズをプレイするうえでの約束事だ」と思うかもしれないが、動きの速さも、攻撃力の高さも最高クラスのラージャンが相手のときは、とくに重く、回避、防御の重要さがのしかかってくるのだ。つねにオノレの体力は満タンをキープしつつ、無理せず逃げ回って隙があったときだけ攻撃する。もう、これしかない。
上記のようなことを頭の中で反芻しながらラージャンと対峙したわけだが、やっぱりひとりで戦うのって無謀ダネ。なぜか知らないがラージャンはやたらと激怒して俺にばかり攻撃してきて(当たり前)、ほとんど回復薬を使う間もなく、1回目の昇天を迎えてしまった。
「俺だけじゃなく、ランゴスタもぶんぶん飛んでるんだからそっち攻撃しろよ!!」
と、俺はムチャな要求をラージャンに突きつけるも、所詮はケモノの悲しさかまるで通じている気配はなく、俺は2度目の対決でも絶望的な攻撃力の波に飲まれ三途の川を渡ることとなった。しかも必要以上にラージャンの攻撃力を恐れるあまり、ランゴスタに刺された程度の傷でも「たたた、体力はつねにマックスにっ!!」と鼻血が吹き出すほど興奮して回復薬グレートから使っていくものだから燃費が悪いことはなはだしい。
そしてこうなってしまうと、当然のようにやる気が喪失してしまう。俺は(どうせまた殺されるんだから……)といじけ根性を丸出しにして2個目の秘薬を口にすることを拒否(秘薬を飲むと体力がMAXになる)。なんとノーマルの体力のままで怒れるラージャンの前に立った。さきほど"無理せず逃げ回って隙があったときだけ攻撃する"と書いたがこれは大きな間違いで、隙があっても攻撃なんかできるもんじゃない。「じゃあどうやって倒すんだ」ということになるが、しょせん俺程度の腕ではラージャンになんか勝てるわけがないんですよー……と完全にのび太化して俺は野蛮な金髪野郎から逃げ回った。しかし何度も書くけどラージャンは動きが速いのでそうそう簡単に逃がしてくれるわけもなく、俺は大量の回復薬といくつかの戦術アイテムを無駄に消費しただけで、10分足らずのうちに3度目の死を迎えてしまった。要するに、クエスト失敗である。『モンスターハンター2』をプレイし始めてから半年が経つが、これほどオノレの無力さを感じたことはなかった。たったひとりの力ではどうにもならない相手がいる。いっしょに冒険に行ってくれる仲間の重要さを、ただただ痛感させられるばかりだった。
俺はボロボロにされながらも、"攻撃しか考えない"というラージャンのある種の男らしさ(メスかもしれんけど)には畏怖の念すら覚える。いまはまだ仲間に協力してもらわないとまるで歯が立たない相手だが、いつの日か1対1のタイマン勝負で、この誇り高き金色の牙獣を倒してのけたい。
『モンスターハンター2』。
俺にはまだ、やることがたくさん残されている。
※なんとこのコラム、出だしを書き始めたのは7月17日。どうにもこうにもラージャンの強さ、偉大さを表現しきれなくて、ようやくいまになって(8月3日)完成した次第です。しかし何度読み返しても、これで自分の思っていることがすべて表現されているとは思えず……。ラージャンについては、また別の機会でも書くかもしれません^^;
突然だが、俺はかなりの相撲マニアである。相撲好きだったババ様の影響で観戦を始めたのが小学校低学年のころ。当時は現・大相撲協会理事長の北の湖親方の全盛時で、その圧倒的な強さはガキだった俺から見たら弱いものいじめ以外の何ものでもなく、北の湖がひょいひょいと勝つたびに、少年・大塚角満はちびりそうになるほどの怒りに奮えてババ様に八つ当たりしていたものである。懐かしいなあ。
当然、先日まで行われていた大相撲名古屋場所も自分のデスクで毎日観戦していた(仕事もしていた)。俺と同様に相撲大好き男の女尻笠井とともに観戦していたわけだが、「白鵬は腰が重いっすね」、「普天王が把瑠都の怪力を封じ込めた相撲は日本相撲界にとって一筋の光明だ」とかなんとか、知ったかぶって大騒ぎしているからまわりの人はたまったものではない。とくに、横綱・朝青龍が琴光喜をぶん投げたときはうるさかった。勝負が決まった瞬間、俺は「すげえ! 網打ち(相撲の珍しい決まり手)やりやがった!」と絶叫。これを受けて女尻笠井が「そんな技あるんすか! いやあしかしそもそも朝青龍は……」なんて言い出して、それから小一時間ほど朝青龍談義に花が咲いてしまったのだ。相撲用語を共通言語とする俺と笠井の会話の内容がまったくわからないまわりの同僚たちは、ただただ口をポカンと開けるばかり。どうやら多くの同僚が相撲の季節が近づいてくると「また大塚と笠井がうるさくなるな……」と思っているフシが見られる。ま、いいけどな^^
相撲の話を書き出すと止まらなくなる。
なんでこんなことを書き始めたのかというと、『モンハン2』の大衆酒場の一角に、腕相撲マシンが置いてあるでしょう。最近にわかに、俺のまわりでこの腕相撲が流行っているのだ。何をいまさらって感もあるが、つい先日、街に6人ほどの友だちが集まったとき、いつのまにやら腕相撲大会が始まってしまい、いい歳こいたオトナたちが「うおらあ!」、「チックショー!!」、「もう俺やんね!!!」等々、大人げない声を張り上げてガチンコバトルを展開したのである。俺はオフラインプレイで対戦できる船大工の親方に泣かされるくらい、腕相撲には自信がなかった。なので友だちと対戦したところで、のび太のようにボコられるのがオチだろうと思っていたのだが、やってみたら意外なことに、友だちのSちゃん、Hさん、MRさんに快勝。調子に乗って「俺がこの街の横綱だ!」とジャイアン声を張り上げた。
すると、腕相撲マシンの横のテーブルで酒をあおっていた友だちのJさんが、ユラリと席を立った。そして、ツバを撒き散らしながら勝利の雄叫びをあげる俺に向かって静かに手を差し出すではないか。「横綱、相手になってもらいましょうか」とJさんは言った。望むところだっ! 俺はオッホオッホと胸を叩きながら、乱暴にJさんの手を握った。簡単に負けないから横綱なのだっ! 俺は興奮の極みに達して、やおら、Jさんの腕を叩きつけようとした。
しかし。
2秒で負けたーーーーーっ!!
これほど簡単にぶん投げられるとは夢にも思っていなかった俺は、画面上で勝利のダンスを踊るJさんのキャラを呆然と眺め続けた。おっかしいな……。なんで負けたんだ……。
「横綱がこんな簡単に負けるわけがないのだが……」
茫然自失としながら、俺はボソリと呟いた。
「じゃあ、横綱じゃなかったんじゃないのw」
と、Jさんがしごくまっとうなことを言った。な、なるほど。それじゃ仕方ないな……。聞くとJさんは船大工の親方を子供扱いする腕相撲の達人(ちなみに腕相撲は、○ボタンと×ボタンを交互に連打する)だという。そんな人に、俺などが勝てるわけもなかったのだ。俺は言った。
「じゃ、Jさんが横綱で、俺は大関ね。そのほかの人は、みんな前頭ってことで^^」
しかしそのとき、ひとりのキャラクターがスタスタと腕相撲マシンに近寄っていった。Tくんと言う、まだ10代の若手プレイヤーだ。『モンスターハンター2』をやり始めてから日が浅く、キャラクターのハンターランクは俺の友だち連中の中ではいちばん低い。すぐに、我が街でいちばん弱いHさんが、Tくんの相手に名乗り出た。どうやら、ハンターランクの低い彼になら勝てると思ったらしい。しかし大方の予想通り、Hさんは1秒で叩きのめされた。
続いて、SちゃんがTくんの前に立った。腕相撲はひたすらボタンを連打するゲームなので、連戦はかなりきつい。なので俺はSちゃんが勝つかと思っていたのだが、予想に反してあっさりと、Tくんが勝ってしまった。続いてMRさんも挑んだが、こちらも当然のようにあっさりと屠りさられた。
何かが起ころうとしている……。俺は快進撃を続けるTくんに、あらゆる最年少記録を塗り替えた若き日の貴花田の姿を重ね合わせた。どこまで駆け上がってくるんだ? もうその街でTくんに食われていない力士は、大関の俺と、横綱のJさんしかいない。
「大関の俺が行くしかないか……」
俺はゆっくりと腕相撲マシンに近寄っていった。目の前には、野心に満ちた双眸(そうぼう)をギラギラと光らせる、若き虎がいる。少し緊張しながら腕相撲マシンの前に立つと、そばにいた横綱のJさんが静かに俺を制し、「俺が相手になろう」と言った。Jさんの真剣な眼差しは(ミドさん、この男、ハンパじゃないぜ……)と俺に語りかけているようだった。
そして、行司が軍配を返した。若き虎と、最強の横綱の対戦だ。俺はJさんの強さを痛感していたので、さすがのTくんの快進撃もここで止まると確信していた。しかし……。
Jさんは3秒と持たず、Tくんに叩きのめされた。最強の横綱が、新鋭にあっさりと負けてしまった! 俺は雄々しいTくんの姿に、貴花田どころか播磨灘の姿を重ね合わせた。「つ、強ええ……」とJさんが声を絞り出した。こうなると俺などまったく勝ち目があるとは思えなかったのだが、一応、大関を襲名(って、俺が決めただけだが)している身としては挑戦を受けるしかあるまい。俺は手の平にイヤな汗を滲ませながら、腕相撲マシンの前に立った。しかしさすがの若虎も、連戦につぐ連戦で指が限界に近づいているはずだ。俺にもチャンスがあるかもしれない。俺は練習にと、バシバシバシバシとボタンを連打した。バシバシバシバシバシバシバシバシバシ……。そのたびにNPCに話しかけながら(○ボタンは会話ボタンだからね^^;)、俺とTくんは腕を組んだ。さあ決戦だ!!
俺は「うおおおおおおおっ!!」と本気で叫びながら、○ボタンと×ボタンを連打した。うおおおおお……。
しかし練習のしすぎが災いしてか、俺の身にとんでもないアクシデントが起こってしまった。
ゆ、指がつった!!!!
勝負のほうは当然ながら。
1秒で屠り去られました。
こうして、腕相撲・モデスト場所は幕を閉じた。この日以降もJさん、Tくんに勝負を挑んでいるがまったく歯が立たない。Tくんはいまだ不敗で、当然のごとく横綱に君臨。Jさんは大関に格下げとなったが、Tくん以外には負ける気がしないようだ。ちなみに俺は、控えめに"関脇"を名乗らせてもらっている。
井の中の蛙、大海を知らずと言うが、我がモデスト軍団の実力は全国的に見たらどれくらいなんだろうか? ちょっと気になる、今日このごろです。
※モデストとは、『モンスターハンター2』内にある街のひとつです。
大塚角満

週刊ファミ通副編集長にして、ファミ通グループのニュース担当責任者。群馬県出身。現在、週刊ファミ通誌上で“大塚角満のモンハン研究所”というコラムを連載中。そこら中に書き散らした『モンハン』がらみのエッセイをまとめた単行本『本日も逆鱗日和』シリーズ(4巻)が発売中。また、そこからのスピンオフとして別の視点から『モンハン』の魅力に迫る書き下ろし作品『別冊『逆鱗日和』 角満式モンハン学』シリーズも。このブログではさまざまなゲーム関連の話題を扱うつもり。一応、そのつもり。
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