大塚角満の ゲームを“読む!”
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先日、ヒマにまかせてアイテムボックスの中に入っている武器や防具をいじくっていたとき、無意識のうちにセレクトボタンを押してしまった。セレクトボタンには"アイテム整理"の機能がついていて、バラバラに収納していたものがボタン1発でキレイに整頓される。一見、非常に便利な機能で、僕も素材アイテムを整理するときはセレクトボタンを有効活用しているクチだ。『モンスターハンター』シリーズはアイテムが無数に出てくるので、自動で整理してくれることは非常にありがたかったりするのである。
しかし装備品を眺めているときに誤ってセレクトボタンを押してしまうと、非常にありがた迷惑な現象が起こってしまう。どういうことかというと、装備品はプレイヤーおのおのが自分が装備しやすいようにキチンと整理していることがほとんどだからだ。なので間違えてアイテム整理のボタンを押してしまうとエライことになる。それまでオノレのルール下でもっとも使いやすいように並べていた装備品が、コンピューターのルールによる勝手な並べ替えにさらされるのだから……。これはたとえて言えば、自分の机の上を母親に勝手に整理整頓されてしまったときと似ている。傍目には散らかって見える自分の机も、じつは自分ルールによる物の配置になっているものなのだ。なので第三者に勝手に並べ替えられてしまうと、大いに戸惑うことになる。装備品ボックスを眺めているときに押すセレクトボタンは、まさに自爆のボタンなのである。
まあそんなこんなで泣きながら装備品ボックスを再整理していたわけだが、そのときにふと思った。(装備品ボックスの中って、ほかのプレイヤーはどんなルールで整理しているんだろう?)と。一度気になってしまうといてもたってもいられない。さっそく、その場に居合わせた友だち3人に装備品ボックスの整理の仕方を聞いてみた。ちなみに全員が、アイテムボックスは5ページまで拡張してある(参考までに書くと、1ページはタテ10マス、ヨコ10マスの計100アイテムが収納できるようになっています)。まずは、俺の装備品収納状況を。
●大塚角満のクローゼットの中
・1ページ目 武器
・2ページ目 防具
ちなみに武器の並べかたは、
大剣 | 大剣 | 大剣 |
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太刀 | 太刀 |
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片手剣 | 片手剣 | 片手剣 | 片手剣 | 片手剣 |
ランス | ランス | ランス | ランス |
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ガンランス | ガンランス | ガンランス | ガンランス |
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という感じで、種類ごとにヨコ方向に並べてある。防具については、
頭防具 | 胴防具 | 腕防具 | 腰防具 | 足防具 |
頭防具 | 胴防具 | 腕防具 | 腰防具 | 足防具 |
頭防具 | 胴防具 | 腕防具 | 腰防具 | 足防具 |
こんな感じになっている。ちなみにシリーズ(レイアシリーズ、ザザミシリーズとか)ごとに並んでいるのとともに、スキルごと(運搬スキル発動セットとか)にも並んでいたりする。この、僕の並べかたとほとんど同じだったのが友だちのMRさん。彼はこれに加えて3ページ目に、シリーズで揃える途中の、バラバラの防具を入れているという。
●Wさんのクローゼットの中
友だちのWさんのクローゼットの中は僕とほとんど同じ。1ページ目に武器、2ページ目に防具が入っているとのこと。ただ、防具の並べかたがちょっと違った。
頭防具 | 頭防具 | 頭防具 |
胴防具 | 胴防具 | 胴防具 |
腕防具 | 腕防具 | 腕防具 |
腰防具 | 腰防具 | 腰防具 |
足防具 | 足防具 | 足防具 |
タテに防具を並べているのだ。これに賛同したのが友だちのBで、彼が言うには「上から順番に頭、胴、手……と並べるのがもっとも自然」とのこと。ただBの場合は根本的に、僕やWさんとは違うルールで武器と防具を分類していた。
●Bのクローゼットの中
Bは武器、防具という分類ではなく、"剣士用"、"ガンナー用"で整理しているという。つまり彼のクローゼットの1ページ目は、
片手剣 | 片手剣 | 片手剣 | 片手剣 |
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大剣 | 大剣 | 大剣 |
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ランス | ランス | ランス | ランス | ランス |
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頭防具(剣士) | 頭防具(剣士) | 頭防具(剣士) |
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胴防具(剣士) | 胴防具(剣士) | 胴防具(剣士) |
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腕防具(剣士) | 腕防具(剣士) | 腕防具(剣士) |
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腰防具(剣士) | 腰防具(剣士) | 腰防具(剣士) |
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足防具(剣士) | 足防具(剣士) | 足防具(剣士) |
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こんな感じになっている、というわけだ。具体的には、1ページ目が剣士用、2ページ目がガンナー用で、3、4ページが空っぽで5ページ目にネタ武具(見た目がおもしろかったりする武具のことですな)がしまってあるという。
●Wちゃんのクローゼットの中
さて最後はおなじみのWちゃん。相変わらずこの人は、我々の仲間うちではダントツの達人ハンターだ。ハンターランクはいまや、地球とアルファケンタウリの彼方くらい、僕とは開いてしまっている。そんな人なので、武器も防具もたくさんもっている。しかし聞いてみるとあまりにも武具の割合が極端なので驚いてしまった。
「私は……1ページ目から4ページ目までが全部武器^^; 5ページ目にだけ防具が入ってる」
うーん、なんていう攻撃一辺倒。詳しく書くと、1、2ページ目が剣士用、3ページ目が弓とボウガン、4ページ目が売ってしまってかまわないもの、となっているらしい。そして5ページ目の防具はシリーズごとに分類されているのだが、Wちゃん曰く「頭、胴、腕、腰は作れるけど、足だけは素材が足らなくて作れない……そんな場合は、全部作れるようになるまで何も製作しない」とのこと。いっぺんに全身をそのシリーズで覆えるようにならないと気が済まないというのだ。
皆さんはどんなポリシーで、装備の生産、整理をしていますか
"マカ漬けの壷"というアイテムがあるでしょう。『モンスターハンター2』から導入された新アイテムで、何らかのアイテムと合成して地面に埋めておくと、合成したアイテムが別のものに変化する、という一風変わったシステム。どうにも使いどころが難しく……というか、(えーっと、これと壷を合成して数分後に取り出して……)と考えるのが面倒くさく、いままでいっさい使ってこなかった。
この、面倒くさがりの俺に異論を唱えたのがおなじみのWちゃんだ。「壷は使いかたによっては非常に便利なアイテムだよ」とWちゃんは言い、「いっしょにラオに行って証明してあげる」と力説した。ラオというのは、先日、ドンドルマの砦を襲撃していた古龍"ラオシャンロン"のことだ。この巨大龍の迎撃イベントにいっしょに行って、マカ漬けの壷がいかに使えるか、実際に見せてくれるという。ラオの素材も欲しかったので、「いこういこう!」ということになった。
ラオシャンロンにはどんな攻撃が有効なのか、諸説入り交じるところだが、我々の仲間うちでは"双剣"がヨシとされている。双剣を使うときに欲しくなるのが"強走薬"(一定時間スタミナが減らなくなるアイテム)で、持続力が長い"強走薬グレート"があれば言うことはない。Wちゃんが言うには、マカ漬けの壷をうまく使えば、この強走薬グレートの使用を大幅に節約できるというのだ。俺はまったくわけのわからぬままマカ漬けの壷を購入し、ラオシャンロン迎撃クエストに出撃した。
クエストが始まるとすぐに、Wちゃんは拠点の中心付近に何かを埋める仕草をした。どうやらさっそく、マカ漬けの壷を埋めたらしい。思ったとおり、Wちゃんはこう言った。
「壷と回復薬グレートを合成してここに埋めると、数分後に強走薬グレートになるよ。立ち上ってる煙の色が変わったら取り出して」
おお! たったそれだけのことで強走薬グレートが手に入るのか!
Wちゃん曰く、砦の2の地点で戦闘し、戻ってくるころには強走薬グレートが出来上がっているという。実際にやっってみたがそのとおり、回復薬グレートは強走薬グレートに変化していた。
「くり返し、同じことができるよ」
とWちゃん。確かに、3での戦闘を終えて掘り出すと、またまた回復薬グレートは強走薬グレートに変化しているのであった。
なんて便利なんだマカ漬けの壷! 俺はまたまた安っぽく感動した。
そして翌日、別のメンバーとラオシャンロン迎撃クエストに出かけることになった。俺はさっそく、Wちゃんに教わったマカ漬けの壷の有効活用を自慢しようと思い立つ。それも自分で発見した技のように……。俺はいっしょにクエストに行くことになった女尻笠井、Kちゃんに向かってエラそうに言った。
「マカ漬けの壷ってあるじゃん? アレを有効活用すっと強走薬グレートを節約できるって知ってるかい?」
すると思ったとおり、『モンハン』の知識が極端に少ない笠井が飛びついてきた。「え! 知らないっす! どうやるんですか!?」。俺はますます得意になって言った。「んじゃ、クエストに行ったら教えてやっからさ。ま、俺のマネしなよフフン」。
そしてクエストがスタートしてすぐに、俺はWちゃんがやってみせてくれたのと同じように壷と回復薬グレートを合成し、地面に埋めた。
「ここに合成した壷を埋めて、2での戦闘が終わったころに掘り出すと、強走薬グレートになってんだよ」
笠井が「おお〜」と感心している。俺はまるで自分がこの技を発見したかのように得意となって、「つぎからキミもやるといいヨ、ウン」と言った。
戦闘がスタートすると、俺はラオを攻撃することに夢中となった。基本的にひたすら斬っているだけなので、楽といえば楽である。すぐに2の地点での戦闘を終え、戦場は3に移動。そこでも同じように、双剣を振り回してザクザクと斬りまくる。ここでの戦闘も大過なく終わり、俺たちはすぐに4の地点への移動を試みる。そのとき、俺は強走効果が切れたので、持参した強走薬グレートを口にしようとした。そしてその瞬間、猛烈に、何かを忘れているのでは、という気分に苛まれたのである。何を忘れてるんだろう……。俺は何を忘れたのかを思い出せないまま、パタパタとキャンプに駆けていった。するとキャンプのある地点から、変な色の煙がモクモクと立ち上っているのが目に入ってくるではないか。そして俺は思いだした。壷埋めたの忘れてた!! 無遠慮に立ち上るその煙は、Wちゃんに教えてもらったときに見たそれとは違うように見える。マカ漬けの壷って、掘り出すの忘れるとどうなるんだ……?
恐る恐る掘り出すと、強走薬グレートをゲットする目論見はまんまと外れて、壷の中から"秘薬"が出てきた。秘薬は体力をマックスまで回復できる便利なアイテムなので、どっちかというと強走薬グレートよりも使用頻度は高いし、重宝もされる。しかし自慢たらたらで「強走薬グレートの節約術を伝授しよう」なんて言ってたくせに、いきなり失敗とは……。
後日、己の知ったかぶりによるミスをWちゃんに話して聞かせた。するとWちゃんは笑いながらこんなことを言った。
「へぇ〜。漬けすぎると秘薬になるのか。初めて知った。いいこと聞いたなw」
知ったかぶりも、たまには役に立つ……のか?
ここ2日ほどで、かねてからずっと作りたかった武器がふたつほど完成した。入手困難な素材を使用する武器で、なかなか制作に着手することができなかったのだ。それがようやく出来上がった。ちなみに、どちらも毒属性の武器である。完成したことが嬉しくて、その武器をとっかえひっかえしながら、意味なくクエストを受注していた。
そんな俺の様子を眺めていた『みんGOLオンライン』時代からの友人、Kちゃんが、しみじみとこんなことを言った。
「まえから思っていたことやけど、ミドさんてホント、毒武器が好きやねぇ……」
げげ! バ、バレてた!
そう、Kちゃんが言うように、じつは俺は毒属性の武器が大好きなのだ。そんなことはこれまでにひと言も言ったことはなかったので誰にも気づかれていないと思っていたのだが(べつに気づかれてもいいんだけど)、どうやらバレバレだったらしい。Kちゃんが言うには、「バレてないって思っていることにビックリしたわw」ということらしいので、よほどはしゃいでいつも毒武器を振り回していたのだろう。
毒属性は麻痺属性と比べると、明らかに日陰の存在だ。モンスターとギリギリの削りあいをする戦場において、"モンスターの動きを止める"という麻痺効果は非常に有効である。
一方の毒はどうかというと、これがイマイチ、効果のほどがわからない。モンスターにはプレイヤーキャラのような体力ゲージがないので、毒によってどれほどヒットポイントを削っているのかということがパっと見ではわからないのだ。なのでこれまでの『モンスターハンター』シリーズにおいて、毒属性の武器はそれほど優遇されてこなかった(ような気がする)。
しかし『モンスターハンター2』ではかなり、毒効果の地位が向上したようだ。毒ってしまうと、特殊な攻撃ができなくなってしまう古龍すら存在する。毒武器人気ストップ高! ってところまでは行っていないだろうが、にわかに注目を集めていることは間違いないところだろう。
俺は毒武器が好きなゆえに、"毒の効果"についても研究を重ねている。とはいっても、"毒の効果をつければ、モンスターの体力を○パーセント減らすことができるようだ"みたいな、攻略的な見地からの研究ではない。俺が考えるのは"毒状態になったモンスターはどんな気分なのかなぁ〜"ということだ。
正直、モンスターならぬ我が身ではあまり核心に迫ったことは言えないかもしれないが、ある程度想像することはできる。
社会人になってすぐのころ、ちょっとお酒を飲み過ぎて二日酔いならぬ"二泊三日酔い"をしたことがある。もう思い出しただけでもおぞましいのだが、1日経っても気分の悪さがまったく抜けず、(このまま俺は気分の悪いまま人生を過ごすのかも……)と真剣に悩んだほどであった。そしてそのときに誓ったものである。"もう酒は一生飲まねぇぞ"と……。
まあそんな話はどうでもいいのだが、毒を食らって紫の泡をコポコポと発生させているモンスターを見ると、若かりしころの自分が脳裏に甦ってならない。二日酔いの気持ち悪さは、まさに紫泡コポコポな感じなのだ。
いま目の前にいるクシャルダオラも、紫泡コポコポ状態である。心なしか、顔色も悪いようだ。彼(彼女かもしれんが……)はきっと、
「うっわ、なんかいま突然、めっちゃ気分悪くなったんですけど……」
と思っているに違いない。さらに踏み込んで「きのう、ちょっと飲み過ぎたかな……」なんて思っているかもしれない。その証拠に、クシャルダオラの象徴ともいえる"風の鎧"が消えてしまっている。虚勢を張って「がおー……」なんて力なく吠えているが、明らかにいつもの迫力がない。これは間違いなく、
「いま力んだら絶対吐くし……」
と思って力をセーブしているためだ。間違いない。
そう思ってクシャルダオラを見ていると、何となく彼に親近感が湧いてくるから不思議なものだ。
「若いからって、あんま無茶すんなよ」
と言って、優しく背中をさすってあげたくなる。
……あ、でも、クシャルダオラは"古"龍だった。若くないじゃん!
とまあ、日々、そんなバカなことを考えているのであった。
『モンスターハンター2』をプレイし始めてからこんにちまでで、もっとも驚いたこと。それはこの日記でも書いた"ダイミョウザザミ"の登場シーンだったりするのだが、それとはちょっと違った意味で「!!!!」と思ったことがある。それが"小さな狂気"、チャチャブーとの出会いだ。
オフラインでマップ"古塔"の9の地点に行くと、小さい人型の物体がちょこまかと動いている。それを見て俺は「あ、山菜ジジイだ」と思い、なれなれしく接近していった。山菜ジジイというのは戦場にいる唯一の味方キャラクターで、おいしいアイテムをプレゼントしてくれたりするうれしい存在である。古塔に行くのはそのときが初めてだった俺は、見知らぬ土地で不安いっぱいの旅行者よろしく、いそいそとジジイと思しきその人物に話しかけようとした。ところが、いくら○ボタンを押してもチャットウインドが開かず、話しかけることができない。それどころか、ふと気がつくと俺の分身の体力が激減しているではないか! 何が気にくわなかったのか、そのジジイモドキが刃物を振り回して、俺の分身を攻撃しているようなのである。根っからの善人の俺は、山菜ジジイと思っていたその人物に攻撃されるなんて夢にも思っていなかった。しかし体力の減り具合が尋常ではない。もしかすると、飛竜に攻撃されているときよりもダメージを受けているかもしれない。そのときになってようやく、俺はこの小さな人物が山菜ジジイではないことを確信した。こいつは敵だったのだ!
俺は慌ててガンランスを構えて、その小さな敵に攻撃を始めた。しかしあまりにも小さくて攻撃が当たらない。ランスとガンランスは非常に直線的な武器なので、ちょこまかと動く小さな敵は"天敵"なのだ。そして前述したとおり、この小さな戦士の攻撃力は尋常ではなかった。振り回す刃物が俺の分身に当たるたびに、ちょっと信じられないくらい体力が減っていく。
「やばい! やられる!!」
と思ったときはもう遅かった。奇声を発しながら振り回される刃物の乱舞にさらされて、俺の分身はあっけなく昇天してしまったのだ。俺は震え上がった。そして己の分身が倒れる姿を見た瞬間、少年時代に観たあるホラー映画の映像が鮮明にフラッシュバックした。
もう映画のタイトルなんてすっかり忘れてしまったのだが、映像だけはものすごく鮮明に覚えている。その映画は、小さな木製の民族人形に悪霊が取り憑き、奇声をあげながらナイフを振り回して人を襲う、という内容だった。どこに隠れても人形は嗅ぎつけてきて、鋭い刃物で襲いかかってくる……。子供心に、非常に恐ろしい映画だった。そしてその人形は、古塔で刃物を振り回すチャチャブーにそっくりだった。……そういえば当時、いっしょにこの映画を観ていた実兄が人形の奇声をマネして俺を追い回していたな……ということまで思い出して、すっかり気分が悪くなってしまった。
それにしてもあの映画、なんてタイトルだったっけなぁ……。チャチャブーを見るたびに、いつもそんなことを思う。
前回のコラムを読んだ河合リエが、「言い訳コラムだ言い訳コラムだ」と非難してきた。ふつうだったら、「言い訳なんかじゃねえ! 俺は生粋のガンランサーだ! ガンランス最強!!」と鼻息荒く反論したいところなのだが、じつはそうできない理由がある。
この際だから白状してしまうと、じつはオフラインモードを進めるにあたって、ガンランスで戦うことを避けたモンスターがいるのである。それも複数……。これが負い目となり、ついつい小声で「使ってますヨ、がんらんす。ええ、使ってます使ってます。がんらんすがんらんす……」とうわ言のように言うに止まり、編集部の隅っこでいじける日々が続いているのだ。これはエライことである。早いところ、これらのトラウマモンスターをガンランスで叩きのめし、ガンランサーの誇りを取り戻さなければならぬ! そこで決意が揺らがぬうちに、さっそくハンティングに出かけることにした。最初の相手はいきなりの大物"グラビモス亜種"である。
グラビモス亜種との戦いを避けてきた理由はただひとつ。"堅いから"である。そう言ってしまうと身も蓋もないのだが、どう考えてもコイツはガンランスとの相性が悪い。逆にグラビモス亜種から見たら、ガンランスを抱えたハンターはネギを背負ったカモも同然。ヤツらはガンランサーを見て「またチョロいヤツがやってきた」と言ってニヤニヤ笑っているに決まっているのである。どのくらい堅いのか、ということを文字にするのは難しいのだが、とにかく徹底的に堅い。顔面、足、翼、尻尾、そして腹部と、どこをどう突っついてもガンランスは弾かれてしまうのだ。もしかすると、もっと斬れ味がいいガンランスなら突き刺さるのかもしれないが、あいにく俺は、そんなすばらしいものは持っていない。ついでに書くと、切れ味に影響を及ぼすようなスキルも持ってない。しかし、俺も成長した。武器も防具もそれなりのものが揃い、いろんなモンスターと戦って経験値を得ている。もしかすると意外なほど簡単に、グラビモス亜種ごときはノせるかもしれない。そうだそうだ、そうに違いない! と単純に納得して、俺はクエストに出発した。今回の討伐戦に持っていったものは以下のとおり。
ガンランスvsグラビモス亜種 | |
クエスト詳細 | マップ……沼地 |
武器 | ホワイトキャノン(放射型ガンランス) |
防具 | なんか青い装備 |
持参アイテム | 回復薬(10個) |
閃光玉や落とし穴といった、非常に有効な戦術アイテムを持っていかなかったのは、(そういうものを使わなくても勝てるだろう)という、まったく根拠のない自信のためである。クーラードリンクが入っているのは、単純にマップを火山と勘違いしていたから……。まあこれらの持参品に加えて支給品の応急薬も手にして、俺は沼地マップの"8"の地点までダッシュしていった。
8に行くと、いましたいましたグラビモス亜種。それといっしょに忌々しいファンゴがウロついている。ファンゴは初代『モンスターハンター』からいる嫌われモンスターで、その嫌われ度は大相撲に例えると堂々の"大関"クラスである。むやみやたらとハンターに突っ込んで来る様は哀れみすら覚えるほど偏執的で、ついつい(誰かこの人を止めてあげてよ……)と思ってしまう。この頭のおかしいイノシシに加えて、この時期の8の地点にはメラルーまで生息している。メラルーは、以前ここで書いていた"モンスターハンタープレイ日記"でも紹介したことのあるネコ型モンスターで、簡単に言ってしまえば泥棒ネコである。しかし幸いなことに俺が装備している青い武具には"盗み無効"のスキルが付いている。なので俺は真っ先にファンゴを倒し、メラルーはシカトしてグラビモス亜種に襲いかかった。
しかし、まったく歯が立たない。いやこの場合は"刃が立たない"と言うべきか。想像通りすぎて悔しくもなんともないくらい、思いっきり通用しないのである。
しばらくのあいだ、むなしい突っつきをくり返した。そのたびにガキーンと跳ね返され、返す刀でタックルや熱線ビーム(でいいのか?)を食らう。ダメージを与えている気がまったくしない。そうこうするうちにグラビモス亜種は、スタコラサッサとマップ4の地点にエリアチェンジしてしまった。その姿からは「なんかうっさい蚊がいるから、べつのところに移動すべ」というオーラが出まくりであった。
それでも俺はめげずに、グラビモス亜種を追いかけた。たとえ切っ先が刺さらなくても、ガンランスにはほかの攻撃方法があるのだ。そう、砲撃と竜撃砲である!
鼻息荒く4の地点に行くと、あろうことかグラビモス亜種のほかに、イーオスとゲネポスがうじゃうじゃいるではないか。手強い飛竜と戦っているときに、彼らほど邪魔な存在はなかなかいない。……まあファンゴのところでも同じように書いたがね。とにかく俺は、嬉しそうにビョンビョンと飛び跳ねているイーオスとゲネポスを見て涙が出るほどげんなりしてしまったのだ。
そして思った通り、4の地点での戦闘は苦戦を極めた。苦戦どころか、戦いにならないのである。俺は砲撃にすべてを賭けてグラビモス亜種に接近しようとするのだが、イーオスとゲネポスがニコニコしながらドロップキックをかましてきて邪魔をする。なんとか砲撃をグラビモス亜種の顔面にぶっ放しても、効果があるのかどうかもよくわからない。いたずらに体力ばかり削られ、グラビモス亜種が再びエリアチェンジしたころには、俺は回復薬グレートを5個、回復薬を3個、応急薬を2個も消費していた。
完全に俺は後手にまわった。最後の切り札である竜撃砲は、使うタイミングがまったくつかめずに不発(炎の煙を頻繁に吐き出すため、なかなか懐に入れないのだ)。それでもけなげにエリアチェンジをくり返す巨体を追いかけてみるも、じりじりと体力を削られるばかりである。そのうちこっちの集中力が切れてきて、開始23分で1回死亡。ファンゴに転ばされたところに熱線ビームを食らい、なんとか耐えたものの見事にピヨって、2発目の熱線ビームで壮絶に散ってしまったのである。復帰後、すぐに戦場に駆けつけたが再びファンゴに吹っ飛ばされて、我が分身は毒沼にドボン。「コノヤロウ!!」とキレてファンゴを追いかけていたら、背後からまたまた熱線ビーム。瀕死状態で立ち上がったが、やたらと怒れる動く活火山に追撃ビームを放たれて2度目の戦死と相成った。
もうここまでくると、すっかりいじけモードである。「ったく、大人げねえなぁ……」と、自身のふがいなさを棚に上げてグラビモス亜種を逆恨み。よたよたと戦場に行ってボコンボコンとグラビモス亜種の顔面に砲撃するも、逆に彼を怒らせて猛攻撃にさらされるきっかけを作っただけ。結局、クエスト開始から32分、またまた熱線ビームをまともに食らいジ・エンド。3回目の死亡となって、クエストは終了となった。残されたのは我が分身の亡骸と、熱線にさらされて黒こげになった、無数のブタの丸焼き(繁殖期はモスがたくさんいるからね……)だけだった……。
でもまあ、負け惜しみを言うわけじゃないけど、ガンランスでもグラビモス亜種に勝てることはよくわかった。「どのへんを読めばそれがわかるのか?」という懐疑の熱線ビームが飛んできそうだが、わかったものはわかった。
「うんまあ、けっこうヤツも強いけど、勝てる勝てる……」
俺は寂しく呟いて、戦場を後にした。もうしばらく、グラビモス亜種はいいや……。
昨日の日記でちょっと触れたマイハウスでは、自分がこれまでにどんな武器、防具を作ってきたのかがひと目でわかるようになっている。ここに、己のハンターとしての傾向が凝縮されている気がして、眺めているだけで楽しくなる。
今日も自分のハント歴を眺めるついでに、自分が過去にどんな武器を生産してきたのかを覗いてみた。何度もここで書いたとおり、僕は自分のことを生粋のガンランス使いだと思っている。となると自然と、生産する武器もガンランスが多くなるはず。自信をもってリストを眺めていたのだが、結果は以下のような感じだった。
大塚角満の生産武器(2006年4月18日現在) | |
武器カテゴリー | 生産数 |
大剣 | 9 |
太刀 | 0 |
片手剣 | 23 |
双剣 | 3 |
ハンマー | 5 |
狩猟笛 | 0 |
ランス | 14 |
ガンランス | 11 |
ライトボウガン | 2 |
ヘビィボウガン | 2 |
弓 | 2 |
こ、これを見る限りだと、まるで片手剣使いのような……。あ、でもこれって、成長過程で作った武器もすべてカウントされているんだった。もしかすると片手剣は、1種類を最終形態にするまでに10回くらい派生させないといけなかったかもしれない。よく覚えてない。つまりこんな数字だけで自分のメイン武器が何かなんて、判断できるものでもないのだ。問題は現在のアイテムボックスに入っている"現役の武器"の数だ。それを表に加えてみよう。
大塚角満の生産武器と現役武器 | ||
武器カテゴリー | 生産数 | 現役武器 |
大剣 | 9 | 4 |
太刀 | 0 | 0 |
片手剣 | 23 | 8 |
双剣 | 3 | 1 |
ハンマー | 5 | 3 |
狩猟笛 | 0 | 0 |
ランス | 14 | 7 |
ガンランス | 11 | 4 |
ライトボウガン | 2 | 1 |
ヘビィボウガン | 2 | 1 |
弓 | 2 | 1 |
これはどう見たらいいのだろうか……。もともとガンランスはランスからの派生武器なので、種類自体が少ない。圧倒的に数が多い片手剣のほうが多くなるのは、当然と言えば当然のような気がする。現役のガンランスを4つも持っていれば、堂々と「俺はガンランス使いだ!」と言えるんじゃないだろうか。いや言える。むしろ、言う!
はあはあはあと荒い息をつきながら、俺はガンランサーだガンランサーだとつぶやいていると、背後からまたまた例の声が聞こえてきた。おなじみ、ファミ通のモンハン隊長、河合リエである。この人にはたびたび、俺がこっそり片手剣を使ってモンスターと戦っているところを目撃されている。イヤな予感……。思った通り河合リエは、宝塚な鋭い目をギラリと光らせてこう言った。
「大塚さんがガンランスを捨てて片手剣に乗り換えたこと、ディレクターにチクっておきましたから。うふふ」
がーん! なんつーことを! ディレクターとはもちろん、『モンスターハンター2』のディレクター、カプコンの藤岡要さんのことだ。じつは先日、河合リエとともに『モンハン』制作チームのインタビューに行ったとき、取材そっちのけで藤岡さんとガンランス談義で大いに盛り上がったのである。藤岡さんは生粋のランス使いで、ガンランスは彼の"夢の武器"として導入されたようなものなのだ。そのとき藤岡さんは、「ランスから火が出るんですよ? スゴイでしょ」と、本当に嬉しそうに語ってくれた。俺もまったく同感だった。そして俺たちは「ガンランス使いとして、ともに歩んでいきましょう!」と堅く約束しあったのである。ガンランスの話ばかりする俺たちを、河合リエや他の制作スタッフの皆さんはあきれて眺めていたのだが、でもそれでいいのだ。
この場を借りて藤岡さん! 僕は乗り換えてませんよ! いまでもガンランス使いですよ!
信じてくれええ!!
週末、家で『モンスターハンター2』をプレイしまくった。先日コラムで書いた"ファミ通クエスト"が終了し、この週末から新イベントがスタート。やり込んでいる人たちが待ちに待っていたイベントだったので、ドンドルマはハンターたちで埋め尽くされていた。ものすごい混雑だった。
僕がいたとある街も、すぐに10人になってしまった。ひとつの街には10人しか入れないから、恐ろしいほどの人口密度である。全員、ネット友だち。つまり全人口とお知り合い、ってことだ。考えてみると、これは恐ろしいことである。飽和状態になっている街の住民全員がお友だちなのだ。つまり、僕がリアルで住んでいるさいたま市の人口は約115万人なんだが、そのすべての人と知り合いってことに……なりませんね。そうですね。
バカなことを考えていると話が先に進まない。
とにかく僕のいる街が友だちで埋め尽くされた。その様子を眺めながら(今日は賑やかだなあ)なんてことを考えていると、『みんGOLオンライン』時代からの友だちであるSちゃんが、ふいにこんなことを言った。
「みんなでミドさん(俺のハンドルネーム)家に行って、メシをおごってもらおう」
『モンスターハンター』シリーズには"マイハウス"という自分専用の部屋があり、ここで装備を変えたり、食事をしたりすることができる。『2』ではなんと、ここに友だちを招待することが可能なのだ(もちろん、オンラインに限る)。招待すると自分のハント歴(どのモンスターをどれくらい倒したか、など)を人に見せることができる(ていうか、人に覗かれる)ほか、いっしょに食事をすることが可能。何人かの友だちと食卓を共にすることは、リアルのそれと同じように、なかなか楽しいことだったりする。
さてここで問題となるのが、"その食事代を誰が負担するのか"ということだ。『モンスターハンター』シリーズでは、食事をするのにお金がかかる。まあそのおかげで体力やスタミナが増えたりするのだから当然なのだが、1食にかかるお金はそれほど安くない。友だちをマイハウスに招待した場合、なんと食事は"振る舞う"ことになる。つまり、Sちゃんが言ったとおり"おごる"ハメになるのだ!
「ちょっと待て」
と、俺はSちゃんに言った。いまこの街には、限界人数の10人が入っているのである。自分を除いた9人にそれなりの飯を食わせるとなると、その食事代は……!
「いいねそれw」
とHさんが言った。それに続くようにあちこちから「やったーおごりだー」、「ミドんところでパーティーだってー」、「ごちになります〜」という声が挙がる。俺は彼らに食事を与えることで浮上するエンゲル係数の増加に思いを巡らせて震え上がった。ただでさえ、ここのところいろんな武器を作りまくったおかげで家計が逼迫しているのである。
「おい! 絶対に家には入れないぞおまえら!」
と俺は言った。餓鬼と化した彼らを家に入れたら、ドエライことになる。しかし、「ミドさん、もう家の前に9人がひしめいてるよw」というMRさんのひと言で、すでに引っ込みがつかないところまで話が進んでしまったことを俺は知った。「はらへったーはらへったー」とBがわめく。しかたない、あきらめるか……。
観念してマイハウスのカギを開けると、ひと呼吸のあとに飢えた一団がどやどやと部屋になだれ込んできた。「ミドさんがエ○本をベッドの下に隠す時間を与えてみたw」とSちゃんが言う。余計なお世話だ! しかしタダ飯を食わせるのは何となく釈然としない。こうなったら……。
「メニューはなんでもいいよね」
と俺は言った。食事の内容は、招待した人が決めることができるのだ。ちなみに全員が同じものを食べることになる。
「なんでもOK!」
とSちゃん。ほかの8人からも「おいしければ何でも〜」、「早く食わせろー」、「おまかせ〜」という声があがる。そうかそうか。何でもいいのか。
「よし、じゃあせっかくだから豪華なものを食べようか。ケケケ」
と俺は言った。すかさず9人の招待客から「おお〜」という歓声があがる。俺はざっと食材を見渡して、数がダブついていたスパイスワームとドライマーガリンを鍋にぶちこんだ。季節は繁殖期である。すぐに給仕のアイルー軍団が"ランランサラダ"を運んでくる。何も知らぬ来訪者たちは嬉しそうに「いただきまーす」の掛け声のあと、いっせいにランランサラダをがっつき始めた。効果はすぐに現れる。食事をした8人全員が、お腹を押さえてうずくまったのだ。
「!!!!!」
「ぐわ!!」
「盛られた!!」
「なんだなんだ!」
「ミド〜!!」
怨嗟の声がつぎつぎと、招待客からわき出してくる。じつは繁殖期のスパイスワームとドライマーガリンは"食い合わせの悪い"食材で、食べるとハラを壊すのである。食事の効果は、体力マイナス10。俺は以前、てきとーにこれを食って後悔したことがあるのだ。
「ケケケケ。うまかったろう」
悪魔と化した俺は、モニターを見ながら笑いが止まらなくなっていた。もちろん、これは全員が友だちだからできることである。彼らもモニターの向こうで、ゲラゲラと笑っていたことだろう(たぶん)。「吉本新喜劇かよ!!w」とMRさんが叫んでいたが、なかなか見応えのある食事会であった。
ちなみに今回の食事は8人で食した。おなじみのWちゃんと仲良しのJさんは食べていない。腹を押さえてのたうち回る食中毒の8人を見て、Wちゃんはボソっと言った。
「そんなことだろうと思った……。ていうか、みどさん、あなたも食中毒になってるよ」
そうなのだ……。友だちに毒を盛るには、自分も同じものを食べなければいけないのだ……。
命がけの食事会は、こうして幕を閉じた。
※10人も集まった風景がおもしろかったので、手元にあったデジカメで撮影してみました……。ホントに汚い画像で申し訳ないのですが、雰囲気だけでも……。
▲我が家にやってきた9人の友だち。これだけたくさんいると壮観である。さあ楽しいお食事会の始まりだ!
▲主催者(今回は僕)が料理を注文すると、アイルーが運んでくる。こんなにたくさんのアイルー、どこにいたのだろう……。ネコ好きの俺としては、この映像だけでも大満足だったりする。さあメシだメシだ。
▲いっせいにぶっ倒れる8人。手前のコックとホステスはあきれ顔……。
4月14日から公式イベント"ファミ通・桃毛獣連続狩猟!"が始まった。ターゲットはババコンガ。なんとコイツを3頭も倒さなければいけない。誰が考えたんだこのクエスト! って感じでしょうか。
ちょっとまえから思っていたことだが、このゲームをプレイしている女性ユーザーに"『モンスターハンター2』でいちばん嫌いなモンスターは?"というアンケートを取ったら、間違いなく"コンガ一族"がダントツの1位になることだろう。それくらい、このピンクのサルどもは下品である。もともと俺はかなり上品なので、彼らの下品極まりない攻撃にはいつも辟易している。肉を見たらわき目もふらず突進していってむさぼり食い、ところかまわず放屁する。親玉のババコンガに至っては、ハンターに向かってウ○コを投げつけてくるからたまらない! これを見ると、保育園時代に訪れた長野県の某動物園で、チンパンジーにウ○コを投げつけられたことを思い出してしまう。これは俺の中でかなり大きなトラウマになり、以来すっかりサルが苦手になってしまった。
このいわく付きの(俺だけか)ババコンガを3頭も倒す……。もう俺は、自分の分身がウンコまみれになっている姿しか想像できない。しかも、俺が恐れおののいている姿を見て「ケケケ」と笑っている河合リエの姿も脳裏をよぎる。よくもこんなイベントを作ってくれたなファミ通!! 俺は大いに憤って、己のトラウマを打破するために立ち上がった。いまサルどもに目にものを見せてやろう!
しかしただでさえ耐久力のあるババコンガを3頭も倒すのは骨が折れる。ひとりで挑んだらどれほど時間がかかるかわからない。そこで俺は例のごとく、編集部でウロウロしていた女尻笠井をとっつかまえてファミ通クエストにいざなった。
実際にプレイしてみると、なかなかこのイベントはテンポよくこなせることがわかった。俺がやった限りでは、ババコンガが3頭いっしょに同じ場所に出現してウンコを投げまくる、ってことはなかったので、サルが嫌いな人でもひと安心。コンガ一族は火が苦手なので(しょせんサル)、しっかり火属性の武器で武装していけばかなり爽快に攻撃することができるはずだ。
しかし泣けることに、コンガの屁に取り憑かれた男が出てしまった。笠井である。ババコンガはもとより、ちっこいコンガが放つ放屁にまで蝕まれ、いつまでも身体から黄色い煙を噴出させているのである。そのたびに消臭玉で屁の効果を消すのだが、消したとたんに新鮮な毒ガスを顔面に浴びせられてモクモクと黄色い狼煙を上げる始末。屁を浴びせられるとかなりの長時間、回復薬などのアイテムが使用できなくなるので、笠井が貯め込んだストレスは計り知れないものがあったようだ。
まあそんなファミ通クエストだが、クリアーするとステキなアイテムがもらえる。ぜひ挑戦して、ファミ通特製の武器、防具を作ってみてくださいな。
『モンスターハンター2』で新たに登場したモンスターに"ガブラス"がいる。火山の最深部である"8"の地点とかでフラフラと飛んでいるアイツである。「あーハイハイ、アレね……」と、深い嘆息と嫌悪感をない交ぜにして"ガブラス"という単語を蔑み見た読者の方も多いことだろう。そう、こやつはランゴスタに続く"空飛ぶイマイマモンスター(忌々しい、の意)NO.2"なのである。
ガブラスを初めて見たときは驚いた(いつも同じようなこと書いてるけど)。ようやく火山に行けるようになり、喜び勇んで火山の8の地点に行くと、数匹の有翼種(とでも言うのだろうか)が空を飛んでいる。リオレウスやイャンクックなどボスクラスのモンスターで空を飛ぶものは多いが、ザコと思しき敵で空を飛んでいたのは、これまでランゴスタくらいだった。「ザコにおいても、上空からの縦軸の攻撃が加わるのか!」と、俺はじつに安っぽく感動した。
一見、翼の生えたヘビのようなこのモンスターは、いったいどんな攻撃を仕掛けてくるのだろう。そして、強さはどのくらいなんだろう。好奇心を噴出させながら、パタパタと飛んでいるモンスターに接近していくと、そいつはいきなり「ペッペ」と唾を吐きかけてきた。油断していたので、当然ながら直撃である。
「男子の面体にいきなり唾を吐きかけるとは何事だ!!」
と俺は激怒した。しかもこの唾、あろうことか紫色である。ムラサキっつーことは当然ながら、毒の効果つきである。いきなり唾を吐きかけられただけでも激怒ものなのに、毒までついてるとあっては黙っていられない。俺は装備していたガンランスで懲らしめてやることに決めて、上空に向かってめったやたらに武器を振り回した。
しかし、攻撃が当たらない。
正直、ガンランスはまだマシなほうなのだ。切り上げ攻撃で銃口が上に向いた瞬間に砲撃すればそれなりに攻撃が当たるから。それでもやはり、格闘マンガで語られる"上空から攻撃してくる敵は手強い"を証明するかのように、思ったようにこちらの攻撃が当たってくれないのである。しかもこいつ、耐久力が非常に高くて、2、3回攻撃したくらいではビクともしない。これはイラつく。本当に泣けるほどイライラする。しかもガブラスは攻撃がなかなか多彩で、上空に向かってプイーンと上昇していったかと思うと急降下してきて、強烈なラリアットをかましてきたりするのだ。ムカついて斬り込んでいくと、
「オラ、寄ってくんなペッペ!」
と言いながら毒唾をまき散らす。もう最悪である。しかもこいつ、ツタなどを上っているときに限って唾を吐きかけてくる。そうすると当然ながらツタから落下するうえに、毒の効果まで付けられてしまう。そうされたときの凹み具合は、下手するとランゴスタに刺されたときよりも大きいかもしれない。
そういえばこういうの、どっかで見たなあと考えていたらハタと気づいた。酔っぱらいに似てるのだ。俺は仕事がら深夜の電車に乗ることが多いのだが、この時期の駅のホームにはフラフラと飛ぶように歩きながら、所かまわず唾をまき散らしている酔っぱらいがたくさんいる。さすがに酔っぱらいはラリアットしてこないが、羽目を外しすぎると周囲に多大な迷惑をかける。考えてみると、俺も笠井も目黒もお酒大好き人間だ。ときに飲み過ぎて、ガブラス化していることがあるような気がしてならない。ネット友だちのKちゃんが言っておったよ。「酔っぱらいサイテー」と。これから外で酒を飲むときは、ガブラスを思い出そう。そして深夜のペッペ鳥にならないように注意しよう。春の宵にゲームをしながら、そんなことを思う34歳だった。
オンラインで『モンハン2』をプレイしている人はご存じかと思うが、4月9日から11日のあいだ、ドンドルマの街に古龍が襲来した。やってきたのは"クシャルダオラ"で、『モンスターハンター2』の新しい象徴的なモンスターである。
古龍が街に襲来すると、ドンドルマの街は非常に物々しい雰囲気に包まれる。街中を重装備の守備兵団がかけずり回り、住人のNPCがしゃべる内容も古龍襲来のことばかり。なんとか撃退しないとドンドルマが崩壊してしまう! という緊張感に満ちている。
古龍がやってくると、我々ハンターは"迎撃戦"に出撃できるようになる。特殊マップ"戦闘街"で、襲い来る古龍とガチンコ勝負をするのだ。戦闘街は、通常の街の広場からつながっているレイアウトになっていて、本当に街を守るために出撃するような、ある種の高揚感をハンターに植え付けてくれる。俺たちがやらなければ街がメチャメチャにされる! そんな責任感を背負わせてくれるのだ。
さっそく、この迎撃戦に出向くことになった。メンバーは俺、女尻笠井、そしてアカレンジャこと中目黒目黒の3名である。3人ともファミ通のニュース班に所属するチームメイトである。仕事におけるチームワークはバツグンであると自負している。しかし『モンスターハンター』シリーズをいっしょにプレイすることにおいては、はっきり言ってこれほど不安なメンバー構成はない。どう贔屓目に想像しても、俺たちがクシャルダオラ相手に勝利の雄叫びをあげている姿が見えてこないのだ。俺は言った。
「ハンターランクが低くても迎撃戦に行けるみたいだけど、3人で行ってみる……?」
俺の向かいの席で目黒は喜々として「行きましょう行きましょう! 迎撃してやりましょう!」と言った。そして「まあ3人なら余裕っすよね」と付け加えた。そういう目黒が、じつはいちばん危ないのだ。この3人の中で彼だけが唯一、クシャルダオラと戦ったことがないのである。その証拠に「くしゃるだおらって、どんなヤツでしたっけ?」なんて言っている。「なんか風がビュービュー吹いてて空飛んでるヤツ」と教えてあげても「……ふうん」と曖昧に頷くばかり。(……こりゃエライことになりそうだ)と思いながらも、俺たち3人はダオラ撃退を夢見て元気よく戦闘街に出かけていった。
戦闘街に降り立つと、いましたいましたクシャルダオラ。猛烈な風を纏って、バサリバサリと空を飛んでいる。戦闘街は広いグラウンドと城塞で構成された特殊なマップで、基本的にはグラウンドのほうでモンスターと戦うことになる。見るとクシャルダオラのほかにも、空には忌々しいガブラス(上空から毒をペッペと吐きかけてくる酔っぱらい顔負けのムカつくモンスター)が、地上にはイーオス(びょんびょん飛び跳ねながら毒を吐きかけてくるドクガエル真っ青のイラつくモンスター)がたくさんいて、我々ハンターが来るのを待ちかまえている。目黒はガブラスを見るのも初めてなので「なんか空にいっぱいいる!」と言って驚いている。しかし、ガブラスごときに驚いている場合ではないのだ。我々はクシャルダオラを撃退しなければいけないのである。
地上に降りてきたクシャルダオラに、猛然と斬りかかる俺と笠井。ダオラのまわりに風が吹いているときは攻撃が跳ね返されてしまうので、なかなか思うようにダメージが与えられない。そのうち、いつのまにかノコノコと戦場に降りてきた目黒がダオラのブレス攻撃をまともに食らい、一撃で死亡した。「わあ!! 一発でちんだ!!」と目黒が叫んだ。彼の装備は初期中の初期のものなので、古龍の攻撃にさらされれば、それはひとたまりもないだろう。俺と笠井はゲラゲラと笑いながら、「どんまいw」と言った。この迎撃戦は例の1死クエではないので、まだまだ余裕だ。
しかしこれで、目黒がまったく戦力にならないことが判明した。こうなったら俺と笠井のふたりでなんとかするしかない。そこで俺は、拾い集めた支給用大タル爆弾を設置して、ダオラに大ダメージを与えることを思いついた。ちょうどいい具合に、笠井が閃光玉でダオラをピヨらせる。さっそく支給用大タル爆弾を……。
ボボボボボンッ!!
という大音響とともに、俺と笠井のキャラが爆風で吹っ飛んだ。そしてあえなく、笠井のキャラが死亡した。
「なんだなんだ! 爆風で昇天したんですけど!」
と笠井が絶叫した。どうやら俺が爆弾を設置したことを知らずに(何も言わずに置いたのであたりまえ)、太刀の気刃斬りで誤爆してしまったらしい。支給用大タル爆弾の破壊力は凄まじいので、ちょっと体力が減っていた彼のキャラはひとたまりもなかったようだ。「テロだテロだ!」と笠井はわめいた。「ごめんごめんw 爆弾おいちゃった♪」と俺は言った。
けっきょく、復帰した目黒が再びダオラに殺されて、そのクエストは失敗となった。うーん、やっぱり勝てる気がしない。でもおもしろいので、再度チャレンジすることになった。目黒は何を勘違いしたのか「どうやら武器が悪かったらしい」とか言って、片手剣から狩猟笛に武器をチェンジしている。いまや希少と言っても過言ではない狩猟笛だが、俺と笠井は何も言わず、再び戦闘街へ降り立った。
今回は事前から"ダメージを与えられることはなんでもしよう"という、作戦というにはあまりにも脆弱な作戦を立てた。「隙があったら爆弾置きますから」と笠井。どうやら俺の置いた爆弾で死亡したことを根に持っているらしい。「おっけーおっけー。俺もそうするよ」と言って、俺は笠井をにらみ返す。やるかやられるかだ! と、いったい何を迎撃にいくのかわからなくなりながらも、俺たちはクシャルダオラと相まみえた。
戦場につくと、目黒がフルフルホルン(狩猟笛のひとつ)の不気味な音色を奏で始めた。この男は何事もテキトーなので、いったいどんな効果がある音色なのかわからないままに吹いているから恐ろしい。画面に音色の効果が表示された。
雷耐性アップ
クシャルダオラは、氷系のモンスターである。再びフルフルホルンの、やる気を削ぐメロディーが響き渡る。
火耐性アップ
何度も言うが、クシャルダオラは氷系のモンスターである。そしてやめときゃいいのに、みたび、フルフルホルンが絶望的な声をあげた。
水耐性アップ……。
「ダオラは氷のモンスターだよ!!」
と俺は叫んだ。目黒は「おっかしいなあ」と首を傾げている。そのうち、適当に笛を吹いている隙を突いてクシャルダオラが目黒に突進。またまた彼は一撃のもとに屠り去られてしまった。それを見て笠井は、
「あー腹いてえ」
と言って笑い転げている。しかし笑ってばかりもいられない。なんとか迎撃しなければ!
もう目黒の笛には期待しないことにして、俺たちは闇雲にダオラを斬りつけていった。なかなか順調に攻撃が当たる。おお、これは撃退できるかも! そこで俺たちはダメ押しとばかりに、笠井の閃光玉でピヨったダオラの周囲に爆弾を設置していった。再び爆風に巻き込まれてはかわいそうなので、起爆は笠井にまかせよう。そう思って、俺と目黒が爆弾から離れた瞬間に、近くにいたイーオスが大ジャンプ! 起爆のために爆弾の近くにいた笠井もろとも吹っ飛んでしまった。当然、笠井は即死である。
「わー! また爆弾だ!!」
と、笠井は泣きわめいた。でも今回は俺じゃなく、悪いのはイーオスである。俺と目黒は「あーハラいてえ」と大笑いした。
あまりにも呼吸があわない俺たち3人はけっきょく、そのクエストも失敗した。思ったとおりである。俺たちはお互いに言いしれぬ不信感を抱きながら、静かに街を出た。
あまりにも更新しないので読者の方々に見捨てられてしまうのではないかと内心ビビってる大塚角満です。じつは更新する間も惜しんで『モンハン2』をプレイしていたりするんですが、その甲斐もあってかとっくにオフラインモードはやり尽くして(と思ってる)、オンラインで仲間たちと毎日のように冒険に精を出している次第であります。なのでこのコラムは、オフラインモードにおける過去の出来事と、オンラインモードにおけるリアルタイムな出来事がごちゃ混ぜになる恐れがありますので、少々読みづらくなることはご容赦いただけたらとクドクドクド……。
さっそく今回は、オンラインでの出来事を綴ります。
●闘技演習
ある日、いつものようにオンラインにつないで仲間たちとのたまり場に行くと、友だちのWちゃん、B、そしてキレンジャこと女尻笠井がなにやら話し込んでいる。聞くと、これから"闘技演習"に遊びに行くところだという。闘技演習は街にある"アリーナ"で遊べるもので、決められた装備に身を包んで規定のモンスターを倒す、というもの。クエストは4つ用意されていて、そのすべてをクリアーするとモンスターを飼育することができるようになる。
クエストには4人まで参加できるので、僕もいっしょに行くことになった。このメンバーとは、本当に毎日のように遊んでいるので気楽なものである。しかしここで、ふたつ隣の席に座っている女尻笠井が気になることを言った。チャットではなく、リアルな会話で、である。
「じつはこの闘技演習、数日まえに別の友だちと行ったんスよ。ところが最後の演習の対リオレイア戦で2回も失敗して、友だちに怒られたんですよね……」
そう言う笠井の表情は、ちょっと青ざめて見えた。詳しく聞くとこの闘技演習、1回でも誰かが倒されると強制的にクエスト終了となってしまうらしいのだ。いわゆる"1死クエ"である。笠井は友だちとふたりでこれに臨み、2回連続でレイアに惨殺されて友だちに怒られたらしい。自分の些細なミスでそれまで築き上げてきたものが消滅してしまう1死クエの緊張感は、なにげに凄まじいものがある。僕も1死クエに行くときは、相棒がどれほど仲のいい友だちでも極度の緊張感を覚える。しかも闘技演習は、装備する武器と防具が決められているのだ。さあ困った。これはエラいときに街に来てしまったものだ。しかし「やべえやべえ」とふたりで言っているうちに俺たちはいつのまにか闘技演習に臨み、アレヨアレヨと言う間に3つのクエストをクリアーしてしまった。残るは恐怖のリオレイア。笠井から見ればトラウマとも言える相手である。見ると笠井は、手のひらにかいた汗を必死の形相でぬぐっている。相当緊張しているらしい。俺は彼に言った。
「そんな緊張しなくても大丈夫だろ。そうそうやられないだろうし、倒されたところで笑って許してもらえるよ」
笠井は青い顔に引きつった笑みを浮かべて「そっすね……」と言ったあと、「……死ねねえ」と呟いた。俺の言葉は何の慰めにもならなかったようだ。
なんでこんなに笠井が緊張するのかというと、それはWちゃんが俺たちの仲間内ではズバ抜けて、このゲームの達人だからである。ハンターランクが"5"ほど離れている場合は、新幹線で言うところの東京−熱海間くらいの差しかないものだが、俺たちとWちゃんの差は新幹線の東京−博多間を突き破って、東京から鈍行に乗って南極の昭和基地に行くくらい大きな差になっているのである(まわりくどい表現だナ)。スポーツでも遊びでも、達人といっしょに何かをやるときって、緊張するでしょう。達人サイドが何も思っていなくても、「怒られるかも」、
「粗相はできぬ」、「迷惑をかけるわけにはいかない」という気持ちが心に満ちてしまい、まったく余裕がなくなってしまうのだ。クエストに失敗したところでWちゃんは怒ったりする人ではないのだが、笠井の気持ちは痛いほどよくわかった。少しずつ、俺も緊張していった。
そして緊張のクエストスタート。全員、麻痺属性のハンマーを振り回してレイアを追いつめていく。クエストが始まってしまえば緊張感も吹き飛ぶのか、笠井も調子に乗ってレイアの懐に飛び込んで行っている。しかし好事魔多し。レイアの怒りのサマーソルトキックを食らった笠井の分身はヒラヒラと宙を舞い、あっけなく昇天してしまったのだ! 1死クエなので当然、それだけでクエスト終了である。サマーソルトキックを食らった瞬間、笠井は俺のふたつ隣の席で「ぐはっ!!!」と絶叫。まるで自分自身がサマーソルトを食らったかのように悶絶し、「やっちまった……」と言って血を吐くように嘆息した。それを見て、俺はゲラゲラと笑った。そして(死んだのが俺でなくて本当によかった!!)と心の中で声を張り上げた。
「どんまいww」
とBが言った。Bは基本的に脳天気なので、まったく緊張しているフシはない。
「気にせず、もう1回いこう^^」
とWちゃんが言った。それを見て笠井は「そのニコニコマークが怖い……」と呟いていたが、チャットでは「ごめーん。もう1回よろしく!」なんて言っていた。
さあ気を取り直して、2回目のリオレイア討伐スタートだ。もう死ぬわけにはいかないと言うわけで、笠井は慎重に慎重を重ねてレイアに攻撃をしている。「死ぬくらいなら役立たずでいい!」なんて口走りながら、必要以上にレイアと距離をとって逃げ回っている。しかしそういうときに限ってモンスターの攻撃が集中するもので、逃げまどう笠井のキャラにレイアが猛烈な火の玉を吐いて、あえなくそれが直撃。なんとか一命を取り留めたもののそれは一瞬にすぎず、レイアは笠井向かって猛烈なダッシュアタックをくり出して彼の命を奪った。クエストがスタートしてから、ほんの数分後の出来事である。
「やっべええええ!! またやっちゃった! もうヤだ俺……」
真っ白な顔に脂汗を浮かべて、笠井は慟哭する。俺はそれを見て腹を抱えて笑っていたが、内心は(やべえ……。これでつぎに俺が死んだらエライことになるぞ……)と思い、胃のあたりがチリチリと痛み始めていた。そんな俺を見て、死神に取り憑かれた笠井がポツリと言った。
「つぎに死んだら、Wちゃんに殺される……」
ゴクリ、と俺は唾を飲み込んだ。もうイヤだ……。このクエに行きたくない……。俺は笠井に「もう今日はこれくらいにしておいて、続きは明日にしようかね」なんて言っていたのだが、くだんのWちゃんは「さあもう1回いこう」と言っている。それを見て笠井は「もうやるしかないっすよ、大塚さん」と声を絞り出した。俺は覚悟を決めた。
じつはこのあたりから、俺と笠井のふたりは爆笑が止まらなくなっていた。極限の緊張が笑いに変換されて、表面に噴出してきてしまったのである。一種のパニックだ。こういうことって、たまにありませんか? ないですか。とにかく俺と笠井のふたりは、「やべえ、はじまっちゃうよワハハハハ!」、「いけね、地図取り忘れちゃいましたよウヒヒヒヒィ!」、「逃げろ逃げろぎゃはははは!!」ってな具合に、何かひとつ行動するたびに腹を抱えて笑っていたのである。深夜の編集部において、それはそれは不気味な光景だったことだろう。
そして3回目。俺たちは恥も外聞も捨てて「なるべくレイアには近づくな!」、「落とし穴に落ちたとき以外接近しないように!」、「麻痺るまでシカトしよう!」なんて言い合いながら、ニワトリが見たら裸足で逃げ出すくらいのチキン度でクエストに臨んだ。とにかく生きてさえすれば面目は保てる! そう信じて、俺たちは逃げに逃げた。
しかし、悲劇は突然やってきた。十分な距離をとっていたはずなのに、いつの間にか俺の背後に忍び寄っていたリオレイアが突然咆哮! 防御ができないハンマーを持っていた俺のキャラは為す術もなく硬直し、猛烈な怒りタックルを食らってしまったのだ! それだけで、満タンだった体力のほとんどを削られてしまう。俺は大慌てで距離をとろうとしたのだが、運悪く壁際まで吹き飛んでしまってどっちに逃げたらいいかわからない。「大塚さん、逃げて逃げて!」というリアルな笠井の絶叫も虚しく、クルクルと回るレイアの尻尾に直撃し、なんと俺のキャラが昇天してしまった……。なんと俺たちのせいで3回もクエストに失敗したのである。
「どんまいw」
とWちゃんは言った。もう俺と笠井は顔面蒼白である。こ、こ、これ以上の粗相は許してもらえない! 「と、とにかく生きて還ってこよう!」と、俺たちは萎えてしまいそうなこころを奮い立たせて、4回目のクエストに臨んだ。当然、これまで以上のチキンプレイである。「もういっさい、レイアには近づくな!」、「落とし穴に落ちても接近すんな!」、「距離とって距離とって!!」と、口から出る言葉は情けないものばかり。それでも時たま隙を見て、殴っては逃げをくり返した。すると本当にたまたまなのだが、笠井が放った一撃で、レイアがビリビリと麻痺った。すかさずWちゃんが「ナイス♪」と発言。その言葉を見て笠井は涙を流さんばかりに喜んで「Wちゃんにホメられましたよっ!!」と絶叫した。俺も感激して「よかったなあオイ!」と笠井に返す。しかし調子に乗ってるとすぐに間隙を突かれるもので、不用意に接近してしまった俺はレイアに転ばされて片膝立ちに。するとレイアはそのままサマーソルトキックを放った!! 「うわああああああっ!!」と俺は泣き叫んで目を瞑る。しかし奇跡的にキックの軌道がズレていて、俺のキャラはよろめいただけで一命を取り留めているではないか! 「大塚さん、死んだと思った!! ぎゃはははは!」と笠井。俺は必死の形相で必要以上にレイアと距離をとり、それ以降、二度と彼女に近づかなかった。
俺たちの必死の逃亡の甲斐あって、見事、WちゃんとBのふたりがレイアを撃退してくれた。無事に街に戻ってきて、心も身体も疲れ果てた俺たちは息も絶え絶えになりながら、口々に「死んだら殺されるからがんばった……」と言った。
それを見たWちゃんはひと言、「誰に殺されんのよ!!」と言って激怒した。
大塚角満

週刊ファミ通副編集長にして、ファミ通グループのニュース担当責任者。群馬県出身。現在、週刊ファミ通誌上で“大塚角満のモンハン研究所”というコラムを連載中。そこら中に書き散らした『モンハン』がらみのエッセイをまとめた単行本『本日も逆鱗日和』シリーズ(4巻)が発売中。また、そこからのスピンオフとして別の視点から『モンハン』の魅力に迫る書き下ろし作品『別冊『逆鱗日和』 角満式モンハン学』シリーズも。このブログではさまざまなゲーム関連の話題を扱うつもり。一応、そのつもり。
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