大塚角満の ゲームを“読む!”

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【モンハン2】第10回 インファイト

●ダイミョウザザミに挑んでみたが……

 更新をサボっているあいだも、着々と我が分身は成長している。じつはとっくの昔にオンラインデビューも果たしており、日々、『みんなのGOLF オンライン』時代からの仲間とともに狩りに明け暮れていたりするのだ。でもまだ、オンラインのことは書かない。

 ちょっとまえにヤオザミのことをここに書いたが、思った通り、多くのハンターの方々がコンニャロには苦労させられているようだ。このコラムの読者の皆様から「ヤオザミ強すぎ」、「あのカニ、何とかしてほしい」等々のお便りをいただくにつけ、じつは俺は内心(苦労しているのは俺だけじゃなかったんだ!)と、ホっと胸をなで下ろしたりもしているのである。

 このヤオザミには、恐ろしいことに何種類かの仲間がいる。その中のひとつが"ダイミョウザザミ"。ヤオザミの親玉である。この巨大ヤドカリを初めて見たときはビビった。開発チームの術中にハマりまくっているような気がして少々シャクに触るのだが、本当にビビったんだから仕方がない。

 ダイミョウザザミは、砂漠に現れた。本当に事前情報を何も入れないで、ワクワクとドキドキをないまぜにしながら砂漠に赴いたのだが、砂からザザーっと出てきたのはあろうことかモノブロス。なんでいきなりモノブロス? と思って、ドキドキワクワクの割合6:4くらいの心境になりながら、じっと画面を凝視する。よく見るとこのモノブロス、なんだかやたらと痩せている。ていうか、骨ばっている。というより、骨そのもの! そうこうしているうちに骨からにょきにょきと足が生えてきて、シャカシャカシャカとこちらに突進してくるではないか! 気が付くと、毎度おなじみモンハン隊長の河合リエが俺の背後でニヤニヤと笑いながら「うわー、なんか出てキターw」などとわざとらしく言っている。あんた何でも知ってるだろっ! なんて突っ込んでる余裕もなく、俺は慌てて逃走開始。そしてようやく気づいた。こいつはモノブロスの頭骨を宿にしているヤドカリの親玉なんだ、と。ドキワク割合10:0となった俺は叫んだ。

 「うおお! こいつはすげえ!」

 ヤドカリ型のモンスターを作ることが先だったのか、それともモンスターの頭骨を宿にするモンスターを考えたのが先だったのか、どっちが先に生まれたのか知らないが、こいつはすばらしいアイデアである。シリーズ最初の『モンスターハンター』から登場しているモノブロスの頭をかぶった怪物なんて、ファンにはたまらない設定だ。ビジュアル的なインパクトも申し分ない。

 しかし、これまでさんざんヤオザミにいじめられてきた俺はイヤな記憶ばかりがフラッシュバックしてきて、ダイミョウザザミとまともに戦えない。しかもこいつは巨体のくせにトリッキーな動きはヤオザミと同様で、横走りや突進など"ガンランスキラー"とも言うべき攻撃をくり返してくるのである。何の打開策も見いだせないまま、俺の分身はボコボコにされてしまった。俺は途端にいじけた。こんな怪物に勝てるわけがない。いいんだいいんだ俺なんか……。いじけ根性丸出しにしながらサブクエストだけを片づけて、俺はダイミョウザザミからオサラバしてしまった。完全なる敵前逃亡である。

 「あー、逃げた逃げた。逃げやがった」

 河合リエが軽蔑丸出しの声を俺にぶつけて、背後から去っていった。ぬぬぬ。なんたる屈辱……。俺はヤドカリごときで立ち止まっているヒマはないのだ!

 そこで俺は考えた。ガンランスでダイミョウザザミに勝つ方法を。ダイミョウザザミはトリッキーではあるが、基本の攻撃は1ヵ所に止まって巨大なハサミパンチを前方にくり出してくること。しかも1発放つごとに、いくばくかの隙が生まれる。ガンランスはランスの一種だから、防御性能だけは優れている。となると……。

 「ダイミョウザザミにガンランスで勝つには、インファイトに持ち込むしかない!」

 インファイトとはボクシング用語で、いわゆる接近戦のことだ。背の低い選手が背の高い選手に挑むときに有利と言われる。俺が考えた戦法は、とにかく防御ボタンを押しっぱなしにしてダイミョウザザミにパンチを出させ、攻め疲れたところを突っつく、というものである。しかもその突っつきも、ランス特有の防御突き(R1ボタンを押しながら攻撃すると、攻めと守りを兼ね備えた防御上突きを出すことができる)。あまりにもチキンじゃ……なんて言ってはいけない。これは考え抜いた末に導き出された勝利への方程式なのである。

 そしてダイミョウザザミとの再戦が始まった。俺の思ったとおり、試合は完全なインファイトである。ダイミョウザザミが1発放ち、俺はそれを防御。返す刀で1発お見舞いし、再び防御姿勢。またまた上から大名パンチが飛んでくるも、見事にそれをブロックした俺の分身が、チクリと1発カウンター。砂漠の激闘は、延々とこの作業がくり返される地味この上ない世紀の凡戦となった。

 試合はこのままなんの波乱もなく、地味〜に終わってしまった。一応、俺の勝利である。しかしあまりヒヤっとする場面もなく、ダラダラと時間をかけてリングアウト勝ちをしたような気分だ。負けたら負けたで悔しいが、こういった勝ち方もイマイチ、釈然としない。もっと圧倒的な武力で倒せたらなぁ……。それにはまだまだ、修行が必要のようだ。

投稿者 大塚角満 : 15:39
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【モンハン2】第9回 虫さされ

●またランゴスタの話……

 『2』になって、ランゴスタの数が増えた。とくに温暖期はひどいもので、気が付けばまわり360度すべて巨大昆虫でイモ洗い状態になっている……なんてことはザラにある。コイツが何もしないチョウチョのようなかわいらしい虫ならよかったのだが、ランゴスタはハンターを刺したくて刺したくて仕方ないらしい。はあはあはあと、荒い息をつきながら迫り来るランゴスタに、今日も俺は追い回されている。

 しかしまあ、平坦な土地で刺されるのならまだマシなのだ。ある程度装備が整ってくればダメージそのものはたかが知れているから。本当に頭に来るのが、たとえば雪山マップ2にあるロッククライミング地点(と俺は呼んでいる)。ここにあるツタをせっせせっせと上っている最中にランゴに刺されようものなら、それはもうコントローラーをバキバキと噛み砕いて、隣でいつもカップラーメンを食っている百人乗っても稲葉(ファミ通の編集者)に吹きかけてやりたくなるくらい、猛烈に激怒する。今日も同じ場所で、ランゴスタにプスリと刺された。哀れな俺の分身は、高度15メートルの地点からあえなく地上に落下した。

 「うがああ!! なんだこのムシケラは!!」

 と俺は怒鳴った。どうもランゴスタの野郎は、ハンターがある程度の高さまで上るのを待ってから、ウヒヒとほくそ笑みながら刺している気がしてならないのである。しかし俺は健気に、再びツタを手に握ってヨチヨチと上り始める。すると俺の背後から「ホレ、ランゴ刺せ刺せ!」と、なんとランゴスタを応援する女性の声が聞こえるではないか! 目を血走らせながら振り向くと、そこにいたのは河合リエ。ご存じ、ファミ通のモンハン隊長である。

 「虫を応援するとは何事だ!」

 と俺は河合リエに言った。この人はときたまフラリと俺の背後に現れて、集中力を乱すようなことを言い放って去っていくのである。彼女は俺の抗議などまったく聞いておらず、再びランゴスタに刺された俺のキャラクターを指さしながら言った。

 「さっきから見てますけど、大塚さんのキャラ、やたらと虫に刺されて痺れてますねぇ」

 そう、俺のキャラはどう考えても、ほかの人のキャラよりも虫さされがヒドイのだ。オンラインプレイで俺ばっかりランゴスタに刺されて痺れているので、よく友だちに呆れられる。

 「やっぱそう思います? 俺もうすうすそう思っていたんですよねぇ……」

 と俺は言った。

 すると河合リエは神妙な顔つきで「大塚さん、血液型は何型ですか?」と聞いてきた。はて? 血液型とランゴスタにどんな関係が……? いぶかしく思いながらも俺は素直に「O型ですよ」と彼女に伝える。すると彼女は我が意を得たりとばかりに目を光らせ、こんなことを言った。

 「あーやっぱり! O型の人は虫に刺されやすいんですよ! それじゃあランゴに刺されても仕方ないですね!」

 あーなるほどなるほど……って、そんなわけないだろ!!

投稿者 大塚角満 : 13:58
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【モンハン2】第8回 ハンターがひとり増えました

●インテリハンター誕生

 いま、僕が所属しているファミ通ニュースチームで『モンスターハンター2(ドス)』が大流行している。以前、ファミ通.comで『みんGOL オンライン』プレイ日記を書いていたアカレンジャ(中目黒目黒)、キレンジャ(女尻笠井)のふたりは『モンスターハンター』、『モンスターハンターG』も遊んだうえで『2』に流れてきたシリーズ経験組。アカは新武器の弓を、キはこれまた新武器の太刀を使って、日夜大騒ぎしながら狩りに勤しんでいる。たまーに3人で街でパーティープレイをすることもあるが、現時点では全員が、オフラインを中心にこのゲームに向き合っている感じ。前作までは3人ともオンライン一辺倒だったのだが、「とりあえずオフラインで大満足」という感じで、せっせと村で武器や防具に磨きをかけているのである。そんな点からも、いかに『2』のオフラインモードが充実しているかがわかるというものだ。

 さて我々3人はシリーズ経験者として、ある程度の知識を持って『2』に挑むことができた。この"前作までの知識"というものは意外なほどありがたいもので、たとえばモンスターの行動パターンや調合レシピなど、事前に知識があることでとくに序盤のクエストは非常に楽に進めることができるのである。

 そんな我々のプレイを眺めていた別の同僚が「俺もやってみようかなぁ……」と言い始めた。Tというニュース担当記者で、東大卒の超インテリである。あらゆるゲームに手をつけるゲームマニアなのだが、『モンスターハンター』シリーズは未体験だという。

 「やろうやろう!」

 と経験者3人は口を揃えた。Tが参戦すれば、ニュースチームの4人パーティーで狩りに行くことができるのだ。

 「そうですね。買ってきます」

 翌日、Tは本当にソフトを購入してきて、自分の席でプレイを始めた。彼は以前から集中力が人並み外れていて、ひとつのことに没頭するとまわりの音がまったく聞こえなくなる。そのせいなのか、独り言もハンパがない。とくにおもしろいゲームをプレイしているときほど顕著で、『モンスターハンター2』をプレイしているときは過去最高ってくらい独り言を連発しているのである。「ちっくしょー!」、「なんだこいつ!」、「でかい!!」等々。今日も彼はハンマーを振り回しながら、大きな独り言を発している。

 そしてもうひとつ、Tのプレイで注目に値するのが研究熱心さ。東大出身の優秀な脳みその中では、モンスターの攻撃パターンやダメージの大小、攻撃角度によるクリティカル値の計算までが瞬時に行われているようなのだ。ゲームの攻略もすべて独自の方程式に当てはめて計算する。理論と計算によって導き出される絶対的な彼の攻略方法に、つけいる隙はない。

 その卓越した頭脳が攻略に使われているとき、彼の独り言は小さくなる。ブツブツブツ……。いまもまた、彼はぶち当たった難問を解くために偏差値80の脳みそをフル回転させている。彼は何を解こうとしているのだろうか……。我々3人はちょっと緊張しながら、いま導き出されようとしている答えを知るために、静かに彼の姿を見つめる。そしてTは言った。

 「わかった!!」

 彼の大きな独り言が、フロアに響き渡った。何がわかったんだ!? 難敵の攻略法か? それともゲームに潜んでいる隠しパラメーターでも突き止めたのか!!?

 「音爆弾は、鳴き袋と爆薬で作るんだ!!!!」

 ……そのくらい、俺たちに聞いてくれ。

投稿者 大塚角満 : 14:57
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【モンハン2】第7回 イャンクック

●誇り高き飛竜

 イャンクックを初めて見たときの衝撃が、いまだに忘れられない。シリーズ1作目での話だが、裸同然で街に行き、仲のいい友だちに連れていってもらったクエストで、初めて俺はクックに遭遇した。雑誌で読んだ情報で、草食竜やランポスなどの小型モンスターとは別に、なにやらでっかい怪物がいるということだけは知っていた。しかしあくまでもゲームの中のことなので、どれほど強烈なキャラクターに出会っても本気でビビったりはするまいと、俺は密かな確信を持っていたのである。

 マップ"森と丘"の3の地点でウロウロしていたとき、そいつはやってきた。何の前触れもなく、いきなり俺のキャラクターがビクっと肩をすくめる。「え!?」とコントローラーを握る手に力を入れる俺。ナンダナンダ。何が起こるんだ? グルリとカメラを回して付近を眺めると、彼方から翼を広げた巨大なモンスターがバサバサと飛んでくるではないか! なんだコイツ! でかいよ! いっしょにクエストに来ていた友だちが「逃げろ逃げろ!」とチャットで助言する。それを見て、(逃げなきゃヤバいような強大な相手なんだ!)と逆にビビりまくる俺。そうこうしているうちに着地したモンスターは、俺のキャラクター目がけて猛然とダッシュ! わけのわからぬまま凄まじい体当たりを食らい、我が分身はあえなく昇天したのであった……。これが、俺とイャンクックの邂逅の瞬間である。

 あれからずいぶんと時が経ち、俺とクックの立場はすっかり逆転した。ある程度このゲームをプレイした人から見たクックは、完全に"お金儲け用のキャラ"である。俺もご多分に漏れずそれなりに武器を使いこなせるようになり、最初に出会ったころに抱いていた"畏怖"の気持ちなどすっかり忘れて、クックを狩りまくるようになった。クックは、勇猛果敢だけどどこか愛嬌があり、体力もそれほど多くなく、毒や麻痺などのイヤラシ系の攻撃をしてこないことから、格好の"スパーリングパートナー"でもあるのだ。「新しい武器を作ったから試し斬りに」とか言って、せっせとクック狩りに行くこともしばしば。そんなクックと、『モンスターハンター2(ドス)』の世界で初めて相まみえる。このときの理由も(新しいガンランスができたから試しに)という、相手をナメきったうえでの選択だった。

 結論から言うと、『2』になってもクックはやはり、クックだった。新しい攻撃パターンもそこかしこに見られるが、大きな変更はない。エリアチェンジをくり返しながら逃げまくる点は前作より多くなったような気がするが(まあこれはモンスター全般に言えることではある)、戦闘時のアクションはシリーズを通して変わらないのでそれほど警戒する相手ではなかった。ガンランスならば踏み込み突きから上突き、砲撃と繋げて、倒れたら竜撃砲で追い打ちをかける。攻撃がさらに見えてくれば、足を目がけて竜撃砲をぶっ放して転倒させることも余裕でできるだろう。与し易し。『2』でも"もっとも多く狩る飛竜"になりそうだ。

 しかしいくら弱っちい存在になってしまっても、俺の中のナンバーワン飛竜はいつまで経っても"イャンクック"なのだ。シリーズのどの作品でも、最初にプレイヤーの前に立ちふさがる誇り高きモンスター。無駄なこと、そして矛盾していることだとはわかりつつ、俺は今日も言いたい。

 「クック、がんばれヨ」

 と。

投稿者 大塚角満 : 18:55
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大塚角満

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週刊ファミ通副編集長にして、ファミ通グループのニュース担当責任者。群馬県出身。現在、週刊ファミ通誌上で“大塚角満のモンハン研究所”というコラムを連載中。そこら中に書き散らした『モンハン』がらみのエッセイをまとめた単行本『本日も逆鱗日和』シリーズ(4巻)が発売中。また、そこからのスピンオフとして別の視点から『モンハン』の魅力に迫る書き下ろし作品『別冊『逆鱗日和』 角満式モンハン学』シリーズも。このブログではさまざまなゲーム関連の話題を扱うつもり。一応、そのつもり。


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