Vol.Joker: 最終回だからINTERVIEW with Zenimax だぜ!!

 「世紀末博徒無情」の執筆を開始して2ヶ月半……早いもんだが、遂に最終回となる14回目を迎えてしまった。まだまだ紹介してないネタもあるし、新発見もある。やればやるほど底なし沼のようにハマっていく『FONV』の世界には、ひょっとしたら終わりなど無いのかもしれない……なんて錯覚にも陥るが、とにかくブログは今回が一応の最終回である。そこで、もはや恒例となった感のある開発者インタビューをお届けしよう。

 ゲストは、地獄のようなローカライズ作業を乗り越えて、もはや悟りを開いたような表情のプロデューサー、岩本けい氏と、いまや勢いに乗りまくる<洋ゲー界のドンキホーテ>(マスク・ド・UHによる愛称)であるゼニマックス・アジアのジェネラル・マネージャー、高橋徹氏がダブルで登場! ローカライズ秘話から来年の豊富までを混沌と語りまくる1万3000字超えのロングインタビューを、じっくり読みやがれ! もちろん、ここでしか読めませんから!!

 

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▲『Fallout 3』ブログのインタビューに続き……我々はふたたびベセスダ・ソフトワークス(ゼニマックス・アジア)にやってきた!

 

●ローカライズ地獄道:その1


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マスク・ド・UH(以下、UH) 『Fallout: New Vegas』(以下、『FONV』)のローカライズ作業及びリリース、お疲れ様でした!
岩本けい(以下、岩本) ありがとうございます!
UH 俺の個人的な意見としては、上半期が『Red Dead Redemption』(編注:海外での発売時期は上半期)で、下半期が『FONV』だったと思いますね。両作品ともに、プレイを始めたらクリアまでに数週間から数ヶ月を要するタイトルだと考えると、今年はこの2本に決まりですよ! 個人的には、そこに『コール オブ デューティ ブラックオプス』も加えたいですが、『RDR』や『FONV』とは遊びの質が少し違う。あくまでひとりでじっくりと世界観に浸るという意味では、やはり『FONV』でしょうね。
岩本 仮に1日2日でエンディングまで持っていったとしても、それは本当に一部で、もったいないですよというぐらいのボリュームです。
UH 今回は北米版の開発と並行で、かなり早い段階からローカライズ作業されていましたよね?
岩本 そうですね。前回の『Fallout 3』が(Xbox 360版は)海外と1ヵ月チョイぐらいの遅れで発売したんですけど、今回はサイズが2割増なのにローカライズ期間を短くしたので、単純にタイムラグを短くした以上のものがありましたね。
UH そこはユーザーにはなかなか伝わりにくい苦労だと思います。
岩本 そうですね。ここで声を大にして言っておきたいです(笑)。それに単純に2割増と言っても、『Fallout』の場合は元のテキスト量がハンパじゃないですから。この規模をやってると段々感覚が麻痺してくるんですよね。普通のゲームのテキスト量を見ても「桁少なくない? これでゲーム成り立ってるの?」って思っちゃうぐらい。
――今回はクエストが入り組んでいて、なおかつハードコアやチャレンジなど、要素が格段に増えていますね。デバッグはやっぱり大変でしたか?
岩本 大変でしたね。たとえばクエストで問題が起きたときに、どこに問題があるのか探しにくいんですよ。原因がこっちのクエストにあるのか、それとも同時進行でやっているあっちのクエストにあるのか、混じったからなのか、あるいは混じらなかったからなのか、ハードコアが関係あるのか、もしかしたら性別なのか。あらゆるパターンの検査が必要でしたね。あとは海外も開発中だったので、途中で「この要素なくなったよ」と言われることもあって、対応するのに苦労しました。

UH たとえばどんな変更がありましたか?

岩本 ごっそりキャラクターがいなくなったりとか。「これもう録ったじゃーん!」って。

UH ダハハハハハ! なかなか聞けない、いい話ですねぇ!

岩本 声優さんもスタジオもおさえた、さぁ録ろうか、ってところで3日前ぐらいに「いなくなりました」って言われて、「どうしよう?」と。もともとはコンパニオンがもっといたり、ロボットの"ジェーン"ているじゃないですか。あれ相棒がもう一体いたんですよ。これ表に出せるのかな、わからないけど。

UH ……マジですか!?

岩本 女性ロボットが2体いるはずだったんですよ。でもカットしちゃって。あとで「やっぱり復活しました!」って言われるのが怖いから一応きっちり録ったんですけど、「このキャラいなくなるんだよねぇ……」って。

UH ギャハハハ! そういう制作過程が実写映画とは大きく違いますよね。そういえば、予約特典のアメコミ『FONV All Roads』も日本語化されてましたけど、すごい良かったですね。限定なのがもったいないぐらい。普通に書籍として発売しても売れますよ!

岩本 ありがとうございます! 海外限定版で付属する特典のなかで、日本で一番喜ばれるのはなんだろうと考えてコレにしました。トランプとかも良かったんですけどね。コレ読んでおくといいのは、なんであそこに“チャンスの墓”があるかがわかるんですよ。

UH これはいままで日本で出た洋ゲーの特典のなかでもすごく良かったと思います。『グランド・セフト・オートIV』の特典だった設定資料本に匹敵するのではないかと。

岩本 「負けないぞ!」という思いでやりました。

UH アメコミ文化が浸透してきたところでコレっていうのも良かったですね。カバーアートをジェフ・ダローがやっていたり、スキモノにはマストですよ!

岩本 これの文章の翻訳は、僕が全部やりました。

UH ええ!そうなの? 色々やってますねぇ岩本さん! このコミックは、プレイする前に読んでもいいし、プレイしたあとに読んでもいいし、プレイしている最中に読んでもいい。とにかく読まないより読んだほうが絶対にゲームが面白くなる。すべての登場人物の関係性や、オープニングムービーまでの経緯が理解できるんですよね。

岩本 ヘタにストーリーを邪魔せずにちょうどいいですよね。


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●ファンが作った『Fallout』と、オリジネーターが作る『Fallout』


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UH 『Fallout 3』はシリアスで悲劇的な話も多かったんですけど、今回はブラックジョークと下ネタが多かったですね。
岩本 きっとあれがObsidianというか、Black Isle(『Fallout』、『Fallout 2』のデベロッパー)のテイストなんですよ。ファンだった人たち(ベセスダ・ソフトワークス)が作る『Fallout』(『Fallout 3』)と、オリジナルを作った人たち(Obsidian)がいま作る『Fallout』(『FONV』)というアプローチの違いはありますね。
―― 確かにObsidianの人たちが元いたBlack Isleの世紀末観とか比べたくなりますね。『Fallout 2』だと子供にすらわざわざ「臭い」とか言われまくるし、やっぱり主人公は基本的に嫌われているものなのかなとか。
UH 海外版をやってみると、こんなにNPCが「ファック! ファック!」と言ってるゲームは、なかなか無いでしょうね(笑)。本当にこの世界は腐っていると実感させられる。今回日本語版は、表面上は表現が違っていたりもするけど、そういうところまで計算されているのはちゃんと伝わってきます。いいローカライズですよ。
岩本 人間臭いんですけど、人間のある意味嫌な部分がよく出てる。
UH よく出てるというか、そればっかり(笑)。どいつもこいつも、どこかしら嫌な部分がある。まぁ細かい仕込みが多くて、この期に及んでまだ知らない場所があったりして、ブログもネタをまとめるのが大変でしたよ。
岩本 UHさんのブログのスクリーンショットは、いつもこだわりが感じられますね。こりゃ、ただ撮ってるんじゃないなと。
UH ダハハハハ、どうもです! 『Fallout』って独特の時間が流れているので、そこはやっぱり角度とかこだわってます! カギのかかったトイレのドアをLockpickで開けたら中から白骨死体がマグナムと弾丸と一緒に出てくる、あの世界観!(編注:恐らく絶望から自殺したのだと思わせる演出) 死体とか、手紙とか、喰い散らかされた食べ物とか、そういう細かいモノが置かれていることで「ここはなんかヤバいことがあったんだな」とか察せられる。某所の“湖底でトランプをやったまま死んでる白骨4人組”なんて、かなり水深の深いところにあって、とくに拾えるアイテムもない(笑)。それでもそこにネタが仕込んであるというスゴさには、本当に感服させられますね。
岩本 ありがとうございます! 「死体があるな」ってだけで通り過ぎるか、そこまで読み取るかは人によると思いますが、いろいろ深読みしていただけるとありがたいですね。
UH 手紙とかコンピューターのログのイカレた文章なんかも、「ローカライズ大変だったろうなぁ」と思いましたよ。遺書なんかは、読んでるこっちが気が滅入ってくるレベル。ヒドいことをそのまま見せるんじゃなくて、ヒドいことがあったらしいというので陰鬱な気分にさせる。そのものさえ見せなければ何やってもいいんだという。Vault 11とかショックでしたね。で、下ネタの内容もヒドい!(編注:褒めてます)

 

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岩本 フィスト(編注:オトナのサービスをしてくれるロボット)とかですね。

UH 「変態の顧客の注文にこたえなきゃいけない」とか言ってた依頼主が、用意すると「これが欲しかったんだ! 可能性は無限大だぁ!」って大喜び。「おめーが使うのかよ!」と久々にゲーム画面に向かってツッコミ入れましたね(笑)。

――女性キャラでプレイしていたんですが、自分でサービスを試してみると、ウィーン、ガッシャンガッシャンガッシャンって音がして、終わると痺れちゃって「足の感覚がない」って出るのとか、ヒドかったですねぇ。

UH グールの女用心棒も、性格は思いっきりサディストだったりして、いちいち歪んでる! ちなみに、規制にひっかからないように一番気を使ったのはどこですか?

岩本 それもフィストのところですね。

UH “セックスマシーン”(編注:あくまでジェームス・ブラウンの名曲ということにしたい)ですからね。

岩本 最初翻訳用のテキストだけ届いたときには「どんな奴が出てきちゃうんだよ……」と思ったんですが……。

UH あの形で出てきてくれて、良かったですねぇ。

――あの3人スカウトするクエストは、本当に最悪なネタですからね。SMグール女、セックスマシーン、エロオヤジ。

岩本 あれ(エロオヤジ)は通るかスレスレだったので、ちょっとだけマイルドにしました。ローカライズのスタッフも、どこがひっかかりそうかわかってきましたから。

UH そう! 海外版だと直球もいいとこですからね。それ見て、岩本さんが本当に大変だったのがわかりましたよ。

岩本 あと気をつけたのは、ゴモラの前で踊っている……なんて言ったらいいかな、商●女の……。

UH ダハハハハハ! マイルドになってないですよ。

岩本 まぁその、ゴモラの前にいる水商売の人々が、英文だと直球の表現だったので、訳をセクシーガールにして怒られないようにしたり。

UH フリーサイドなんかにも裸一貫で頑張っているおねえちゃんたちいますけど、彼女らがお仕事するお部屋に行くと、ちゃんとアノ声が聞こえてきますからね! あんまり女の子向きじゃない(笑)。

岩本 でも意外と女性のプレイヤー多いんですよ?

UH 実際そうなのは知ってますけど、ネタとしてエロ&バイオレンスですから(笑)。レッド・ルーシーみたいな美人作るの大変だしね。

――レッド・ルーシーかわいかったですね。

UH もう毎晩お情けにあずかりに行ってるよ!

岩本 レッド・ルーシーですか。僕はモハビ前線基地のゴーストが『ポリスアカデミー』のキャラハンに似ていて好きなんですよ。

――美人で発言もキツいけど、地元民を心配していたりして、結構優しい。ツンデレですね。

UH ツンデレって言ったら俺はDr.ウサナギですね。初めて会ったとき「この声か!」と。でも声が超かわいいのにセリフの最後が「じゃあな」(笑)


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●訛りローカライズという挑戦


UH ところで、どの勢力が好きですか?

岩本 僕はイエスマンですね。どこにも属さないで、Mr.ハウスもブッ殺してやると。

UH イエスマンいいですねぇ、あのバカバカしい感じ。ちなみに僕は最初シーザー側でクリアーしました。

岩本 予想通りですねぇ(笑)。

UH まぁネタバレになるので詳しくは語りませんが、キツかったですねぇ……。シーザーの吹き替えは、とても良かったですね。

岩本 初めてやらせていただいた演者さんだったんですけど、ハマりましたねぇ。シーザーの連中は「ベイル!」をどう訳すか悩みましたね。結局そのままにしたんですけど、あれラテン語なのでどうしたものかと。原語なら「ワーレ!」だったりして。

UH いまのでいいですよ。シーザーリージョンは「シーザーに忠誠を!」とか、うまく雰囲気残したなと思ってました。ちなみにシーザーは海外だとカイザーになってますね。

岩本 そこも悩んだところです。カイザーリージョンとかカイザーレギオンにしようか、とか。最終的に英語読みにしましたね。それと、これは書けるかわからないですけど、じつは●●●●にも●●●●●●がいたんですよ(編注:さすがに書けません)。そいつがすごいいい味出してたんですけどねぇ……残念ながらボツに。

UH 『FONV』はネバダ州が舞台ということもあって、いろんなカルチャーが盛り込まれているのがいいですね。ラジオもそうだし、会う爺さんが片っ端から訛っているという。話が長いし訛りで聞いてられない(笑)。

岩本 ありがとうございます! あれはチャレンジだったんですよ。前からクイーンズイングリッシュだったり、南部英語なんかのテイストをどうにかして入れられないかと思っていたんですよ。ただ訳すと全部標準語になっちゃうじゃないですか。そこで方言かなと。本当はもうちょっとどっぷりやって、たとえば南部だったらたとえば大阪弁で統一して、ブリティッシュは東北弁で……とやりたかったんですけど、方言の声優を集めるのが大変だというのがわかりました(笑)。基本的に演者さんは標準語を喋るようにトレーニングしているじゃないですか。そこで「訛ってください」と伝えると戸惑われるんですよ。今回学んだことは今後に活かしたいですね。

UH イージー・ピートとか話がなげえんだ。あとはフェスタスおじさんも良かったですね。「こんぬつわ〜!」って。

岩本 あれは録音ブースに入る直前に「訛ってください」って言ったんですよ。そうしたら「えぇ? 事前に言ってくれないと」と驚かれまして。

UH 訛ってる連中がいるおかげで、ウルトラ・ラグジュの連中に妙な気品があるのも際立ちますね。NCRもレンジャーとかと一般兵で喋る言葉が違いますし。

――キングスの親分が結構好きでした。任侠って感じがしてよかったですね。

岩本 あれは富田耕生さんにお願いしました。「渋い感じで、エルビスみたいにやってください!」と、ちょっとキャラじゃないものをやってもらったんですよ。

UH まぁキングは本当は30代の年齢という設定なので、実は若者なんだけど、聞いてると親分のあの声が良くなってくる(笑)。気風が良いんだよね!

岩本 吹き替えは結構意図があって、ああいう配役を選んでるんです。ヴィクターはなんで緒方賢一さんなのかとか、気づいた人がいたらうれしいですね。今回のローカライズのこだわりはいろいろあったんですよ。もっとやりたかったですね……まぁ、やりたいことを全部やれることなんて、ローカライズでほとんどないですけど。

UH 突然深いことを言いますね!

岩本 10年ぐらいやってますけど、「これ会心のローカライズ!」っていうのは多分1本ぐらいしかないんで。

UH 魯山人みたいですね。「納得いかねぇ!」ってディスク割っちゃうような(笑)。

岩本 割った途端に自分の頭割られますけど(笑)。やりたりないことは毎回あるんですけど、ちょっとずつ入れていこうかなと思っています。

UH 職人魂ですね〜。このインタビューを読んだユーザーからは、拍手喝采だと思いますよ!

岩本 ありがとうございます! ちょっと天狗になりましたよ。

UH まぁ多分ボスに折られると思いますけど(笑)。

岩本 ボキッとね。

 

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●Born to be Wild&Hardcore!

 

UH 今回一番大変だったと俺が思うローカライズがあるんですよ。“Wild Wasteland”なんですけど、元ネタがわからないマニアックなネタ連発でしょう?

岩本 (あっさりと)わからなかったです。長年の勘と資料でなんとかしました。

UH 前半に起こるWild Wastelandはグラフィック上のものですけど、後半がほとんどセリフなんですよね。俺が最後の決戦で戦っている最中にNCRのラジオから聞こえるセリフが『エイリアン』のパロディだったりとか。もう注意しないと、どれが“Wild Wasteland”効果だったのか、わからないぐらいのレベルですが(笑)。

岩本 あのTraitsを取って、すべて理解できる人がどれぐらいいるか知りたいですね。

UH 俺が一番おもしろかったのは、ニプトンの死体に『スターウォーズ』の登場人物の名前が付けられていたことと、犬のレックスがしゃべり出すシークエンスですね。あと、最初の“Wild Wasteland”現象として登場する、グッドスプリングスの“冷蔵庫の死体”もウケた。『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』のオチがブッこまれているワケです。ラジー賞まで受賞したダメ映画のシークエンスを抜き取るって、普通の神経じゃないですね。いや、誉めてるんですよ!

岩本 Wild Wastelandの元ネタを80%ぐらい理解できる人はUHさんぐらいじゃないですか?

UH いや全部は無理です。ものすごいニッチなネタも入っているので。いまはWild Wastelandを取らないでやってみてるんですが、一回アレを体験すると、やっぱないと締まらないですね! 洋ゲーのなかでしばらくなかった、それこそInterplayとかBlack Isle流のおふざけ。Interplayとかホント変なゲームばっかり出してるじゃないですか。僕は中でも『クレイファイター』が大好きでね〜。粘土が戦うんだけど、最後に“クレイタリティ”っていう『モータルコンバット』のフェイタリティの粘土版があるの(以下、Interplay話が続く)。

――(話をさえぎって)オールドPC洋ゲーの、イースターエッグをどうしても仕込みたくなるスピリッツを感じましたね。パイソンズネタを唐突に入れたり。

UH ホーリーグレネードな。グレネードに十字架が描いてあるんだけど、それが『モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル』に出てくる騎士のルックスにそっくりなんですよ。なるほどね、と。もちろん、同じObsidianの過去の作品からのパロディも見受けられるので映画やゲーム、シリーズの歴史など様々な要素が詰め込まれているワケです。すごく伝わりにくいけど(笑)。

岩本 細かいところまで見てますね!

UH そういう細かい遊びがいいですよ!

岩本 いまはハードコアで遊んでいるんですか?

UH かなりしゃぶりましたね。一通りのクエストは終わったんで、現在は海外版をノーマルで遊んでいます。スティムパックですぐ回復するのとか、懐かしいですよ! でも、コアゲーマーならば、一度はハードコアやってみるべきだと思うんです。食料アイテムの重要性や往来するNPCのセリフは、ハードコアじゃないと意味がわからない。最初に“非推奨”って出ますけど、俺は推奨ですね(キッパリと)。

岩本 ハードコアは、確か一番最初のビルドではハードコアにするかしないかの選択肢が存在しなかったんですよ。想像するに、恐らくObsidianが本来やりたかったのはハードコアなんですけど、ウチの本社の上層部がノーって言ったんだと思うんです。

――“ハードコアモード”ではなくて、あれこそが本来の姿だった可能性があると!

岩本 Obsidianが作ると、とことんマニアックになっちゃうので、一般人にもプレイしてもらうためには歯止めをかけなきゃいかんと。

UH あれがデフォルトだったら一般ユーザーは振り落とされますね(笑)。一見さんお断りの世界、でも、やりだすと止まらない。水と食料のありがたみをあれほど思い知らされるゲームはないですね。

――ノーマルなら“汚れた水”とかスルーですからね。

UH そう。俺は汚れた水から飲んで、きれいな水は溜めてた。RADを溜めて浄化するチャレンジがあるから、RADは上がってもいいんですよ。あとは薬を使い過ぎると中毒になっちゃうから、できるだけ天然のものに頼るようになって。バラモンステーキとか調理するようになりましたから。

――ノーマルなら、まず調理はしないでしょうね。

UH しないでしょ? 面倒臭いからね。『FONV』は、全体的にブラックな世界なのに、なぜか生活は健康的になるんですよ。フィクサーを飲むときは副作用がキツいから“寝る前に一錠"と決めて生活習慣にしたり、睡眠で時間を飛ばすためだけに3日連続で寝たりすると、起きた瞬間に餓死寸前だったりするじゃないですか。あのゲーム的ご都合主義の撤廃はスゴいですよ。

岩本 僕はデバッグ中は3日で投げましたね。(ノーマルと両方自分でやるのは)リリースまで間に合わねぇと。

UH ハードコアにすると、NPCに「水をくれ」とか「腹が減って死にそうだから、助けてくれ」とか言われると、乞われる実感が沸くんですよ。なんで水ビジネスや水利権があるのか、ノーマルモードでは、なかなか伝わらない。まぁ、アノ世界は相変わらず水の問題が深刻なんだと思いましたね。

 

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●DLC第1弾『Dead Money』はホラー?


――今回は広告もかなり攻めた感じでしたね。

岩本 本来原案は『Fallout 3』のときにあったんですよ。でも当時はベセスダなんて会社誰も知らないのにアレをやったらどんなバッシングを受けるかわからないし、時間的な問題もあってできなかったんです。そういうわけで、今回はアレをやろうと。ただちょっと勘違いされることがありますけど、どこかに対して攻撃的なメッセージを出しているわけじゃないですよ(笑)。

UH まぁうがった見方をするユーザーもいますから。それだけ目立ってたってことじゃないですか?

岩本 あれを使って、『エルシャダイ』と組み合わせたりして加工して遊んでくれたのはうれしかったですね。それはやっぱりある程度どういうものか知られてるということでもあって。

UH 確かに前作の『Fallout 3』が登場する以前であれば、これほど受け入れられると思ってなかったですよ。ものすごいディープで、下手すりゃ『グランド・セフト・オート』よりも受け入れられにくい部分がある。でも今回は前作よりも話題性が高く、さらに新規のユーザーも増えているわけで、よかったじゃないですか。もっと売れてほしいと思います。ものすごいポテンシャルを秘めたタイトルなんですから!

岩本 本来は1年ぐらいかけて売れるタイトルだと思っているんですが、会社としては「さっさと3ヵ月ぐらいで結果を出しやがれ」ということなので(笑)。

一同 ダハハハハハハ!!

岩本 まぁそれは抜きにしても、たくさんの人にプレイしてもらいたいと思います。これからDLC(ダウンロードコンテンツ)で増えるネタもあるので期待してください。

UH DLC! 海外ではXbox 360向けとして、第1弾の『Dead Money』が発表されてますね。今日はこの件について色々聞きたいことがありますが、日本国内配信の予定は?

岩本 まだ未発表ではありますが、来年の早い段階でなんとかしたいですね。ちょっとホラーっぽいテイストが入っていて、『FONV』の場合は、空が青くて開放感がありますけど、『Dead Money』は『Point Lookout』みたいな感じ。霧がかかっている中に洋館があって……というのをイメージしてもらえればいいと思います。

――そこに秘宝を探しに行くと。

岩本 フフフ……まぁ最終的な目的は秘宝かどうかはわからないですけどね(不敵な笑い)。

UH やっぱり新しい武器とか出ますか?

岩本 まだ詳しくは言えませんが、武器以外も、前作のDLCであったようなことは期待していただいていいのではないかと。

UH 期待してます!

 

●ローカライズ地獄道:その2

 

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(ここで高橋徹ジェネラルマネージャーが登場)
UH ボスが到着されました! それでは高橋徹ジェネラルマネージャーに、さっそく来年の話でも伺いたいですね。
高橋徹氏(以下、高橋) 来年ですか……いろいろありますよ。まず、日本でも『Brink』と『Hunted: The Demon's Forge』は発表してますし、予定より遅れましたけど出します。時期は確定していませんが、ウチの方針として、なるべく海外と同発と思っているので、そう離れないところで(出したい)。あとは『Rage』。正式には決定していませんが、当然やりたいですね。あとは本社が12月にもう1本発表します。それは海外の発売が来年の11月なので、これも同発でやっていければいいですね。(編注:恐らく米時間の12月11日に発表された『The Elder Scrolls V: Skyrim』のこと)
UH (ニヤリと笑って)岩本さん、頑張ってください。
高橋 (楽しそうに、わざとまじめな声で)頑張らなくていいので、実現してください。
岩本 (虚空を見つめながら)あははははははは……。
UH いまからカツカツっすね!
岩本 カツカツですね……。

高橋 あとは(『Fallout: New Vegas』の)DLCの話もしてないか。それも来年前半に当然あると思いますので、結構ありますね。でも『Brink』と『Hunted』はローカライズの規模で言ったら大したことないですから。

UH 『Fallout』とかに比べると、確かに一般的なアクションとか対戦型FPSの量ですね。

高橋 そう。僕らが普段やっているものから考えると、0.2本とか0.3本なものですから。だから岩本の作業量は実質2本! 1年間で2本って楽だと思うんですけどね。

UH ダハハハハ!! 社長、最高!

岩本 (高橋氏は)『Rage』とこれから発表される“なにか”しか数に入れてないですから。

高橋 『Brink』とか数に入れたいの? それでもたった4本ですよ。行けるでしょ? スパイクのときもカプコンのときもそれ以上やってましたから。こんなに楽して給料もらっちゃっていいのって感じですよ。

岩本 (絶句)……。タイトルの規模が年々でかくなっていくんですよ。

高橋 それは考慮しない(笑)。昔は対応プラットフォームも多かったけど、いまはふたつ(プレイステーション3とXbox 360)だけだから、0.5かけてもいいぐらいだよ。

UH スゴイ! ナニワローカライズ道ですね。『FONV』はどれぐらい出たんですか?

高橋 もう数字は出ていますけど、初週は『Fallout 3』を上回ってますね。でも僕の読みよりは低い。目標はつねにえらいところにあるので。

岩本 読みの数字聞いたらびっくりしますよ。

UH わかってます! 前の対談のときにも言われてたので(笑)。

高橋 基本的にいつも前作の2倍が僕の目標なので。さすがに2倍は行ってないですけど、まぁまぁ。

UH でもそれだけのものはあるゲームですよ!

高橋 『Red Dead Redemption』からZ指定の売れるゲームがドドッと出る流れも良かったし、発売日は結果的に(対抗馬がなく)がら空きだったので。結果的にね、車のゲームが……。

――ノーーー!! そこらで止めてください(笑)

UH もっと売れてもいいというのはよくわかりますよ。

高橋 それに、今回は両プラットフォームで海外とほぼ同時発売にできたというのもありますね。

UH 早かったですね。

岩本 地獄を見ました……。

高橋 (さえぎって)あんまり褒めないでください。褒めるとこれが限界だとか言い始めるから(笑)。

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――じゃあ来年もガシガシ出されるということで。
高橋 『Brink』と『Hunted』は(発売が)延びた分ガッチリやりますし、後半に予定しているものは、むしろ外せない。『Rage』もすごいし、もうひとつの……当然これ(あるポスターを指して)ですけど、こちらもすごいですから。
UH そりゃ外せないですね!
――そして岩本さんの顔からどんどん血の気が引いていくと……。
UH 岩本さんこんな白かったっけ、と。今日の高橋さんは結構黒いけど。
岩本 (作業が続いて)日に当たらなくなりますからね。
高橋 先週グアム行ってきたんで(笑)。
UH ダハハハハハ! 最高だ。岩本さんは行く予定がないんですね?
岩本 ないですね。このまま次のタイトルのサイクルが……。
高橋 早く終わらせれば行っていいんだよ? だらだらいつまでもやっているから(以下略)
UH 恐ろしい……。
高橋 まぁ頑張っていますよ(と、フォロー)。

――グループとしてはTango Gameworksも傘下に加わったわけで。

高橋 パブリッシングの仕事としては絡むことはあまりないんですけど、(岩本氏のほうを見て)管理者の仕事としては僕の仕事も3倍とか4倍に増えてるんだよ?

岩本 はい……。(UHを見て――いまの、「はい」以外の返事はできないですね)。

一同 ダハハハハハ!

――デベロッパーのキーマン50人を選ぶという海外メディアの記事でゼニマックス・メディアのアルトマンCEOが選ばれていましたが、その選考理由のひとつに「日本でよくやっている」というのが挙げられてましたね。

高橋 僕があの記事を書いた記者のインタビューを受けたことがあるので、多分その関係もあると思うんですが、日本に支社がある海外メーカーってほかにもありますけど、基本自社タイトルを出すだけ。他社のタイトルをちゃんと権利とってきてリリースしたり、ちゃんとした開発会社を買収したりというのはあまりないと思うので、そういう意味ではよくやっているのかなと思いますね。

UH じゃあ来年も期待ですね!

高橋 まぁ来年が本番であって、これまでは来年に向けての準備期間だった感じなので。

UH そのスタートで『FONV』があったわけで。DLCもあり。

岩本 パッチもあり。

UH みんな待ってますよ!

高橋 もちろん出します! 海外で直ったものは全部直しますし、可能な限り急いでいます。ごめんなさい。申し訳ない!

UH ではそちらも期待するとして。本当にいいゲームですよ。ちょっとブログと矛盾するけど、人の感想を読んでやった気になって「そんな感じなんだ」と避ける人もいるかもしれないけど、やった人にしかわからないこと、やる人それぞれにしか起こらないことがこのゲームは絶対ありますから。じゃあ今回はここらへんで。ありがとうございました!

 

 以上で2時間近くに及んだインタビューは終わる。願わくばObsidianの開発者にもインタビューしたかったのだが、なにせ先方は海外の方なのでスケジュールとか色々難しい問題もある。しかし、これほどのタイトルを作り上げたスタッフたちに、惜しみない拍手と賛辞を送ることに異論の余地は無いだろう。『FONV』は、オープンワールドとRPG、FPSと戦争、ドラマ性とメッセージ、そのどれもが洋ゲーとして究極の形に昇華している。洋ゲーでしか表現できない世界、センス、そしてポリシーが詰め込まれている。それは全てオトナ向けの世界だが、だからこそ自分のような<おっさんゲーマー>がドップリとハマれる要素が満載なのだ。そして早くも追加シナリオのDLCが発表(編注:まだ海外のみ)され、来年とて終わりなき戦いに身を投じることが決定している。その時には、かならずこのブログも再開するだろう。人はまた、過ちを繰り返すのだから……。

 その時まで、しばしの間だがお別れだ。次は地獄で会おう!

 SEE YOU IN HELL !!!!!!!!!!


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マスク・ド・UH

国籍、年齢、職業すべて不詳という設定の自称・洋ゲー冒険家。週刊ファミ通において、ゲームクリエイター須田剛一氏と共に“洋ゲー発着便AIRPORT 51”を連載中。ファミ通wave DVDでは最新洋ゲーレビュー“THE NEW 洋ゲー TIMS”を連載中の他、ファミ通wave DVD公式サイトにて“動く!! 洋ゲー TIMES”の動画も配信中。某大手海外ゲームデベロッパーの元社員という噂もあるが、本人曰く「オマエの過去は聞かない。だからオレの過去も聞くな」とのこと。座右の銘は「毒蛇は急がない」。Twitterでは<MASKDEUHBADASS>の名義で小ネタ&コボレ情報も投下中。SEE YOU IN HELL !!!