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バイオハザード5 BSAA監視日記

BSAAは、『バイオハザード5』に登場するバイオテロ対策組織である。このブログは、その組織の情報分析官であるライアンなる人物の、日々更新されるデスクトップを監視し、現在のBSAAの動向をお伝えするものである。

キジュジュブログ全訳・後編(2月13日〜2月27日)

 以下は、昨日に引き続き、アダムのブログを和訳したものだ。そもそもなぜ自分が彼のブログを取り上げたかと言うと、キジュジュの惨状、そしてアダムの悲痛な叫びをここをご覧の皆さんにも知っていただきたかったからだ。何かを感じてくれたなら、思い思いに行動を起こしてほしい。彼のブログにコメントを寄せるのも、彼を救い出す力のあるものに働きかけるのも、もちろん彼を助けにキジュジュへと乗り込むことだってできるだろう。

 


2009年2月13日(金)

 

タイトル:世界が音を立てて壊れていく

 

 

 

これまでブログを見てくれている人はご存じのとおり、アリソンはこの数週間、僕と暮らしている。喜びに通りで跳ね回るべきところだけど、実際には悪夢のようなできごとがつぎつぎと起こっていた。身の毛がよだつようなことだけど、これから読んでもらう事はすべて事実だ。そう、このコメントをアップしようとしているのが13日の金曜日という事はわかっているよ。

 

あの拡声器を持ったグラサン男が連日のように憎悪に満ちた演説をしている集会場に、人々はやぐらのようなものを組み立てていた。奴らが僕らの仲間のひとりをその上に引きずり上げるまでは、それが何のためのものなのか見当もつかなかった。(僕が「奴ら」と言うときは、狂犬病にかかった小動物のような狂気の表情を目に宿したキジュジュの住民のことを指し、「仲間」と言うときは、僕と同じように、きちんと考え、見て、行動するまともな人間で、キジュジュを支配している狂気にただただ困惑している人々のことを言う。) その気の毒な男は、やぐらの上に引きずり上げられているあいだも、どうにか群衆から逃れようともがいていた。ふたりの男が彼を頂上で押さえつけると、僕がこれまでに見た中でもっとも大きく、山のような男が、小さなクルマほどにも思えるサイズの斧を持って、どこからともなく歩み寄った! その男は頭を黒い袋というかフードで覆っていて、僕は彼をただ見ているだけで恐怖の念で満たされた。恐怖で膝の力が抜けるような思いだった。その斧が何のためのものなのか、なんとなくピンときた。これは処刑だったのだ。その巨漢が斧を振り上げ始めるのと同時に、僕は目を背けた。一瞬の静寂があり(もしかするとそう感じただけなのかも)、それから鈍いドスンという衝撃音。群衆の荒れ狂った歓声が沸きあがるのを聞いたとき、すべてが終わったと悟った。視線を戻すと、刎ねられた首が、やぐらの下に転がっているのが見えた。その時点で、僕は脚が立たなくなり、床にへなへなと座り込んだ。アリソンが駆け寄ってきた。何が僕にそれほどの恐怖を与えたのかを確認するために、彼女は窓の外を見ようとしたが、僕は彼女を窓から引き離した。彼女が見るものではない。

 

意を決して外出すると(たいていは広場の群集が散ったあとに)、会うのは狂った奴らばかりだ。奴らはあまり生気がなく、だるそうに歩いているが、奴らの目といったら……その目は憤怒としか言い表せないようなもので満ちていた。僕と行き違うたびに、奴らは威圧するような鋭い視線を僕に向けた。僕は奴らが僕の後頭部にドリルで穴を開けているかのように感じた。どこに行っても、彼らの目に見張られている。アリソンにできる限り部屋の中にいるようにと言ったのはそのためだ。彼女にとって外は危険すぎる。

 

もはやここでは、異常なのは人だけではない。町の壁の至るところは、落書きで埋められていた。たいていは同じような単語がくり返し書きなぐられていた。残忍に引き裂かれた動物の死骸は、あまりにもありふれていて、腐敗した残骸につまずくことなしに歩くことが不可能なぐらいだ。僕が見た死骸の一部は人間のものであるに違いないと思ったが、近づいて確認する気にはなれなかった。

 

ある日、誰かが建物の裏側に引きずり込まれるのを見た。彼はなんとか逃れようとしていたが、彼を引きずっている男はあまりにも頑強だった。何が起きているのか知りたい気持ち半分、見過ごしたい気持ち半分だった。あいにく、そのまま立ち去ることはできず、ふたりが消えた通路に向かって注意深く進んでいった。いつになったら僕は好奇心に負けないようにする術を学ぶのだろうか? 壁中に血が飛び散り、頑強な男が弱い男を食べているように見えた。本当に僕の見たものがそうだったのかはわからないが、男の頭部がもう一方のそれを包み込んでいるように見えた。僕はその場から全速力で逃げ去った。

 

人々が大きな麻袋に入った何かを蹴りまわしているのを見かけた。数週間まえに奴らが火を放ったものとそっくりの麻袋だ。近くを通り過ぎると、奴らは蹴るのを止め、僕を威圧するかのように睨んだ。確かに麻袋が動いたのを見た。その中に何がしかの動物でもいたのだろうか……もしくはそれは人間だったのだろうか?

 

また誰かが人間の死体を井戸に投げ入れるのを見た。それから肉切り包丁を激しく振り回し続ける狂った屋台の主人もいた。腸もしくはペースト状の物体を売っているようだった。それを見たとき、危うく吐いてしまうかと思った。

 

最近見かけたものでもっとも不気味なものと言えば、顔からヒルや触手のようなものが伸びているイヌだろう。病気なのか寄生虫に感染しているのかはわからないが、これまで見た中でもっとも奇妙なものだった。そのイヌは、僕を見ると唸り声を上げ、すべての触手を逆立て、走り去った。それが何だったのか聞かないでくれよ。それが何だったのか本当にわからないのだから。

 

これを書いているあいだも、奴らは仲間のひとりをやぐらに引きずり上げている。いったい、ここはどうなってしまったんだ!? いったい何が起こっているのか!? 僕たちを助けられる人がいれば、どうか助けてくれ。頼む! 早く助けてくれ!

 

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2月20日(金)

 

(タイトルなし)

 

軍隊が来た。ついに助けが来たと思ったが、奴らがやったことと言えば、この地獄のような場所に我々を閉じ込めておく壁を、あわただしく組み立てるだけだった。奴らは自動小銃を手に、堀の周囲を巡回している。我々を外に出す気はないのだろう。キジュジュに入る人間には寛容だが、その壁を越えて外に出ようなどと考える者には……・、その人々の冥福を祈る。奴らは我々を助けに来たのではない。封じ込めるために来たのだ。ただ我々を中に閉じ込められればよく、自滅するのを見ているだけだ。

 

もはや窓の外を見ることさえできないし、ましてや外に出るなんて考えられない。それでも外で何が起こっているかわかる。なぜなら毎日のように犠牲者たちが殺害されるときの、血も凍るような悲鳴が耳に響き渡るからだ。それから暴徒の歓声が聞こえ、仲間(人間)のひとりが死んでしまったことを知る。僕は肉が引き裂かれ骨が砕かれるような音を遮断しようと試みる。その音は体の芯まで凍えさせる!

 

そして軍隊は何もしようとしない。奴らはただ中の人間が、外に対し問題を起こさなくなるのを願いつつ、壁の外を見張っているだけだ。

 

もしこれを読んでくれている人がいたら、もうアドバイスはいいから、お願いだから、僕を助けてくれ! マスコミにこの惨状を報道するように伝えて欲しい。どうかみんなに知らせてくれ! 政府系機関で働く知り合いがいたら、ぜひ知らせて欲しい! キジュジュにはまだまともな人間──助けを必要とする人間がいるのだと伝えてくれ! いますぐ助けが必要だ! 陸軍、空軍、NASAでもいいから送ってくれ! もし同胞に対し少しでも同情の念を抱いてくれるのであれば、いまこそが行動を起こすときだ! お願いだ!

 

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2月27日(金)

 

タイトル:バーがあれば……

 

今朝起きると、アリソンは僕の隣りにいなかった。

 

僕は彼女は食べ物か何か見つけられないか外に行ったのだろうと思った。外に出るなんて馬鹿げたことをする彼女に腹を立てていた。やがて僕は、僕宛のメモが僕のキーボードの上にあるのに気がついた。彼女からだ。彼女は、パソコンの前に座っているだけの私にうんざりしたと言っていた。彼女は、何もせずに部屋の中に閉じ込められているのに耐えられず、もはや僕が僕らの脱出を試みていない事実に我慢できずにいた。けれどもそれは事実じゃない! 僕は重要な情報を調べ、僕らを助けられる誰かを見つけようとしていたんだ。セレブのゴシップを読んで、一日中座っていたんじゃない! そう彼女に話したい。そうすれば彼女もわかってくれるだろう。

 

僕は彼女にそう言うべきだった。

 

後悔するには遅すぎる。彼女は去り、キジュジュから抜け出す方法を見つけるために、おそらく発ってしまった。彼女が、鉱山とその地下道のことを、僕に尋ね続けていたことを思い出す。どうして彼女がそんなことを知りたいと僕にせがんだのか。僕は疑問を持たずに、彼女が知りたいことをすべて話したんだ。最近は張り詰めっぱなしだったので、たくさん僕らは口論していた。だからケンカなしで過ごせる夜を僕は幸せに思っていたんだ。彼女がそんなことをするつもりだったなんて、見当もついてなかった……。

 

なぜ彼女は去ってしまったんだ? ここなら安全だったのに。僕はここにいたのに。彼女は僕とここにいて幸せだった。だけどいまや彼女はひとりで向こうに行ってしまった。僕も外に出て行って彼女を見つけ出し、連れて帰りたい。胸が苦しい。けれども、外に踏み出る気が持てなかった。そうすれば殺されるってことを僕は知っているからだ。恐怖に屈した自分に自己嫌悪を感じている。だが、どんな悲しみよりもこの恐怖は強い。彼女が無事僕のもとへ戻ってくることを祈る。それが僕にできるすべてだ。

 

もし外に出られて彼女を助けられる人がいるなら、ぜひそうしてほしい! そして彼女に僕のもとへ帰ってくるように伝えてほしい! そしたら僕が守るから。

 


 

 明日からはまた、BSAAサイトの監視に戻るとしよう。

プロフィール

サンフランシス小山

週刊ファミ通で『バイオハザード』シリーズの記事を担当する編集者。プレイの腕前はおぼつかないが、設定や作品の背景に関しては、10年書き続けているだけの蘊蓄アリ。