NHK『ゲームゲノム』はアーカイブとしての価値を高めるフェーズへ。英語版の制作やNHKオンデマンドでの配信、さらに今後の展開などを番組総合演出・平元慎一郎氏にインタビュー

NHK『ゲームゲノム』はアーカイブとしての価値を高めるフェーズへ。英語版の制作やNHKオンデマンドでの配信、さらに今後の展開などを番組総合演出・平元慎一郎氏にインタビュー
 NHKで放送され、ゲームファンのあいだで大きな反響を呼んでいる教養番組『ゲームゲノム』。2026年9月13日に『MOTHER2』回の英語版が放送されるほか、9月1日よりNHKの有料配信サービス“NHKオンデマンド”に第1シーズンの全10回と『デス・ストランディング』(拡大版)が順次配信され、さらに3年連続となる東京ゲームショウへの出展(9月17日~21日に千葉県の幕張メッセで開催)など、さまざまな取り組みが行われる。
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 そこでファミ通.comでは、番組の総合演出を務める平元慎一郎氏にインタビューを実施し、これらの取り組みや『ゲームゲノム』の今後の展望などについて、たっぷりとお話を伺った。

(聞き手:ファミ通グループ代表/林克彦)

平元慎一郎氏(ヒラモトシンイチロウ)

NHKのディレクター。『あさイチ』や『みんなで筋肉体操』などの番組制作に携わり、『ゲームゲノム』では企画の立ち上げを行う。番組のレギュラー放送時には、総合演出を担当。文中は平元。

5年間の歩みを経て“資産をより多くの人に届ける”フェーズへ

――今回は地上波の新作ではなく、国際展開やNHKオンデマンドでの配信に力を入れるとお聞きしました。まず、そういった展開に注力することになった意図や経緯、全体の概要から教えていただけますか?

平元 
昨年(2025年)の『ゲームゲノム』の展開としては、ちょうど1年前くらいに3夜連続スペシャルを放送し、さまざまな反響をいただいたところです。その後、2026年はどういう展開にしていこうか、番組チームや編成、さまざまな部署と話し合ってきました。

 もちろん新作という話も議論には出たのですが、振り返るとこの5年間で『ゲームゲノム』自体は拡大版を除いても26本も制作してきたな、と。「もったいないことをしているかも」と思ったんです。というのも、それだけ積み上げてきたものを“資産”と捉えると、まだ番組を知らない方や取り上げたゲームを知らない方たちに届けることに大きな意味がある。

 そして、この5年でその土壌が出来上がってきたのではないかと考えたからです。そこで、新作を作りたい気持ちはもちろんあったのですが、一度立ち止まって“どういう届けかたがあるのか”についてさまざまな議論を重ねました。

――より多くの人に届けるにはどうしたらいいのか、ということですね。

平元 
そうですね。また、国内やテレビ放送だけでなく、多様なプラットフォームや形でコンテンツを見てもらいたいという思いがあります。そのひとつが国際展開です。NHKで作ったコンテンツを海外の人にも見てもらうという取り組みに『ゲームゲノム』も参加させていただきました。

 そして、もうひとつがインターネット配信の強化です。映像メディアとしてネット配信が拡大する中、NHKも“NHKオンデマンド”などを強化しており、『ゲームゲノム』も配信という分野にがっつり飛び込もうと決意しました。つまり、いままで届かなかった視聴者の皆さんに番組やゲームの魅力を知ってもらうため、一旦そこに集中するフェーズに入る、ということですね。

――これまで作ってきた番組資産やアーカイブをいつでも気軽に見られる状態にし、さらに海外の皆さんにも楽しんでもらえるようなチャレンジに注力しようと。

平元 
これまでパイロット版からシーズン1、シーズン2、各種特番や『NHKスペシャル』など、がむしゃらに作ってきましたが、一度立ち止まった形です。もともとシーズン1を作り始めたころから、総合演出として“いつかアーカイブとしての価値を提供できるんじゃないか”と強く思っていました。

 この番組で扱うゲームは古今東西、国内・海外、メジャー・インディーを問わず多種多様で、あまり好きな言い回しじゃないですが、テレビ業界用語で言う“ネタが腐らない”番組構成やラインアップになっています。もともと、“その作品を好きな人には新しい見方やクリエイターの思想に触れる機会に”というゲーマー向けの視点と“作品を知らない、またはゲームでふだん遊ばない人を置いてきぼりにしない丁寧な作りを”というライト層へのやさしさを両立することをずっと大事にしてきました。

――プロモーションのための番組作りではありませんからね。

平元 
そうなんです。とくに、最新作に限らない番組作りができる中で、1本1本いつ見ても新しい発見があり、クリエイターの皆さんのクリエイティビティが伝わる番組を積み重ねていけば、アーカイブになっていくという考えは早い段階からありました。ただ、これまではどうしても制作と同時並行で進めるのは難しかった。実際、国際展開やネット配信の準備をしていたこの数ヵ月を振り返ると、内外の関係者とのコミュニケーションや膨大な量の権利の確認など、本当にたいへんでした(笑)。この実現のために、一度立ち止まったのは間違いではなかったですね。
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『MOTHER2』英語版制作の裏側――徹底された原作再現とこだわり

――その流れで、まずは英語版の新作について伺います。今回『MOTHER2』を英語版の題材に選ばれたとのことですが、その理由を教えていただけますか?

平元 
『ゲームゲノム』は国境を越えるゲームというものを扱っている番組です。だから、海外の方にもぜひ見ていただきたいとずっと思っていました。そこで、国際放送局などと協議を重ね、今年は1本作ってみようという運びになりました。国際放送局もゲームというジャンルに魅力を感じているようでしたね。そして、私から提案した3本ほどの候補の中から、最終的に『MOTHER2』が採択されました。

 選ばれた大きな理由は、近年の海外も含めたゲーム市場において、2DドットのJRPGの遺伝子を受け継いだゲームがひとつのジャンルとして定着している点です。その源流を辿った先にあるエポックメイキングな作品として『
MOTHER』シリーズがあると思います。さらに、『UNDERTALE』のトビー・フォックス氏が影響を受けていることも有名で、海外ユーザーが注目しやすい作品でもありますよね。

 もうひとつは、放送する“NHKワールド JAPAN”に“日本の文化や芸術、それらに関わる人々を知ってもらう”という使命があることです。糸井重里さんがどのように『MOTHER2』を作り上げたのかという濃密なインタビュー内容が、海外の方にもきっと強く響き、その目的に適うと考えました。
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――改めて、“NHKワールド JAPAN”がどういったサービスなのか、ご存じない方に向けてご説明いただけますか。

平元 
NHKワールドJAPANは、NHKの国際サービスです。24時間の英語テレビ放送に加え、ウェブやアプリでもニュースや番組を配信し、日本の文化・テクノロジー・エンターテインメントを世界中の視聴者に届けています。

 今回の目的としては純粋に海外のお客さんに見てもらうことと、日本在住の海外の方に向けた発信というふたつの意味合いがあります。その文脈で言いますと、NHKワールド JAPANで放送された後、公式サイトで1年間のVOD配信が行われ、こちらは地域制限なしで提供されるため、海外だけでなく日本国内からも無料でご覧いただけます。

――テロップやセリフの翻訳はどうされているのでしょうか?

平元 
テロップやセリフ、ゲーム画面はすべて英語表記にし、ナレーションも英語に吹き替えています。ただし、こだわりとしてスタジオでの糸井重里さんをはじめとする出演者によるクロストークは、ご本人たちの肉声を大事にしたかったため、吹き替えはせず、日本語音声+英語字幕という形にしています。
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――海外在住の日本人の方も、日本語の肉声でしっかり聴くことができるわけですね。海外に向けて発信する際、ゲーム特有の専門用語やコンテキストの翻訳でご苦労された点や意識された点はありますか?

平元 
まず、原作を知らない方が観ても理解できる構成になっているという前提は、言語に関わらずこの番組の魅力として感じていただけるはずです。その上で、専門用語やテキストの翻訳については“原作に徹底的に忠実に再現する”ことを決めました。今回、45分の拡大版を英語化するにあたり、ゲーム内のテキストを洗い出したわけですが、これが相当の量ありました。

 もっといえば、キャラクターたちのセリフはもちろんなんですが、それ以外……たとえば、アイテム名もですね。主人公がバトルで使うバットの種類ひとつをとっても英語表記はどうなっているのかなど、確認事項があまりに多く、英語化を担当するプロダクション側からは「膨大な量があるので、文脈に合わせた意訳をあててもいいですか?」という相談もありました。

 しかし検討していた時期に、当時『MOTHER2』のローカライズ(
『EarthBound』)を担当されたマーカス・リンドブルムさんと糸井重里さんの対談記事を拝見したんです。糸井さんの言葉のマジックやウィットに富んだ世界観が英語圏の方々に可能な限りそのまま伝わるよう、非常に苦心して落とし込まれた話を知り、我々の勝手で行う意訳という手法はやめようと決断しました。

 そこからセリフやウィンドウ内のアイテム、固有名詞をすべてリストアップし、担当ディレクターと私で海外の実況者さんの『EarthBound』プレイ動画を全編確認しました。ワンカットずつ照らし合わせて文字起こしを行い、「これが原作通りです」とプロダクションにお渡しして対応してもらいました。本当にたいへんな作業でしたが、僕たちもゲーマーなので、“もうひとつの原作”である『EarthBound』を再現する今回の形を取らなかったら、あとで後悔していたと思いますね。
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――原作を知らない人はもちろん、熱心な海外ファンが見ても「セリフが違う」とならない丁寧な翻訳が行われたのですね。『MOTHER2』英語版の放送・配信予定はいつごろですか?

平元 
国際放送は9月13日を予定しています。放送後は1年間、NHKワールド JAPANの公式サイトでVOD配信されます。こちらは海外の方はもちろん、国内からも視聴可能です。翻訳での表現の違いなどにも注目してぜひ見ていただきたいと思います。

――9月13日に先駆け、9月6日には以前放送された『DEATH STRANDING』(デス・ストランディング)の英語版も再放送・配信されるとのことですが、こちらの意図も教えていただけますか?

平元 
これにもきちんとした目的があります。今回、一度立ち止まってでも掲げている“国際展開”には、やはり一定のコンテンツ数が必要だと考えています。その上で必要なのがデータです。視聴数はもちろん、どの地域の方に多く見てもらえたのか、など今後の展開案を考えるためにマーケティングもしなければいけません。そういった意味では、『MOTHER2』だけでなく、近年のAAAタイトルとして小島秀夫監督の作品は海外でも高い関心が期待できます。

 同時期に毛色の異なる作品・テーマを世界中に発信することで、『ゲームゲノム』が海外の皆さんからどう受け止めてもらえるかを知りたい、ということですね。一度制作した番組を、権利関係などをクリアして再度お届けできるのはテレビ局の強みです。そして、両作品ともVOD配信は無料ですので、どちらかからでも入っていただいて、世界中の方に番組を楽しんでいただきたいです。

――NHKワールド JAPANで『DEATH STRANDING』の英語版が初回放送されたのは、約3年前(2023年)ですよね。当時の反響はいかがでしたか?

平元 
手応え自体は悪くなかったのですが、飛び抜けた反響に繋げるための施策には課題が残りました。これは僕らの大きな反省点ですね。今回は『DEATH STRANDING』と『MOTHER2』の2本があり、後述するTGSなどの展開も含めて各部局が連携を取ってPRできる環境が整っているので、前回以上に多くの方に見ていただきたいと思っています。

――今後、ほかの過去回も翻訳して海外展開していきたいという構想はありますか?

平元 
個人的には強く思っています。現時点で確定していることはありませんが、番組のストックはまだまだあるわけで。海外のユーザーに新しい発見を提供するため、英語化の取り組みは今後も積み重ねていきたいです。

――ほかの回の英語版制作が実現するかどうかは、今回のVOD配信の数字や反響が影響してきますか?

平元 
大きな指標になることは間違いありません。今回のVOD配信の再生数が大きく伸びたり反響が大きくなったりすれば、ほかの回の海外展開にも繋がっていくと思いますので、継続的なPRに力を入れたいと思います。
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“NHKオンデマンド”でシーズン1と『DEATH STRANDING』の計11本が順次配信!

――続いて“NHKオンデマンド(NOD)”での配信について伺います。NHKの配信サービスとしては、“NHK ONE”と“NHKオンデマンド”がありますが、それぞれの違いや位置付けについて、改めて教えていただけますか?

平元 
“NHK ONE”は受信契約のある世帯の方は追加負担なくご覧いただけるもので、総合テレビとEテレの番組を放送と同時に視聴できる“同時配信”と、放送終了後1週間視聴できる“見逃し配信”をご利用いただけます。一方、“NHKオンデマンド”は、放送の1週間後から配信が開始され、レギュラー番組を中心に約22000本の過去の番組をご覧いただくことができます。こちらは受信料とは別の費用で運用されている有料のサービスになります。

 “NHKオンデマンド”の特徴は、BS番組の配信に加え、過去に放送したアーカイブから選りすぐった番組の配信も行っていることです。今回の『ゲームゲノム』のシーズン1全10回とパイロット版である『DEATH STRANDING』拡大版の計11本は、このアーカイブ番組からセレクトして配信を始めます。

 これまで「録画し忘れた」、「あのゲームの回を見逃した」というSNSの声をよくお聞きしていました。今回初期の11本をいつでも見られる環境が整ったことは本当にうれしいです。

――配信は一度にまとめて行われるのでしょうか?

平元 
9月1日に『DEATH STRANDING』拡大版が配信され、そこから約2週間かけて順次10本が追加されていきます。それぞれ配信開始日から1年間、ご覧いただけます。
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――ここで改めて、『ゲームゲノム』をまだ観たことがない方に向けて、番組の立ち上げ経緯やコンセプトをお聞かせいただけますか?

平元 
立ち上げは5年前のパイロット版に遡ります。もともとゲーム番組を作りたいと何十枚も企画書を書いていた中で生まれたのが『ゲームゲノム』で、コンセプトは“ゲーム教養番組”です。ゲームを文化・作品として扱い、なぜその名作が愛され語り継がれているのかを、ゲームシステムや物語などの要素から丁寧に紐解く文化教養番組としてスタートしました。

 初回であるパイロット版では小島秀夫監督をお呼びし、『DEATH STRANDING』をテーマにしました。単なる内容説明ではなく、“人との繋がり”というテーマに対し、ゲームシステムやストーリー、小島監督の思想・哲学がどう結びついているのかをご本人に伺っているのが、この番組ならではの見どころですね。また、ユーザーがプレイしたときの感情や価値観とできるだけリンクするような構成や演出も心掛けています。

――当時、小島監督も「NHKがこういう番組を作ってくれるんだ」と感銘を受けられていましたね。シーズン1のラインアップの中で、平元さんご自身がとくに記憶に残っている回はありますか?

平元 
どれも懐かしく、思い入れが強いですが、あえて挙げるならシーズン1の第1回である『ワンダと巨像』、『人喰いの大鷲トリコ』の回ですね。私自身がディレクターを担当し、レギュラー放送の1本目ということでプレッシャーも大きかったです。なにより、30分番組の中に上田文人さんの作品の2タイトルを詰め込み、“孤独と生命”という独自の副題を立てて共通するテーマを炙り出すというアプローチは、いま振り返るとかなり挑戦的だったな、と(笑)。一方で、スタジオ収録での上田さんの言葉を聞いた際、巨像を倒す背徳感や、言葉の通じないトリコとの絆といった“プレイ体験を通じた心の動き”を突き詰める狙いは間違っていなかったと強く実感しました。

――『DEATH STRANDING』回や『ワンダ』、『トリコ』回を通じて、『ゲームゲノム』の型やアイデンティティが固まったわけですね。

平元 
そうかもしれません。トーンとしては比較的シリアスな2本でしたが、『ゲームゲノム』がやりたいことの軸が提示でき、制作チームや視聴者の皆さんにも共有できた感覚がありました。だからこそ、その後の『ペルソナ5』や『逆転裁判』のようなスタイリッシュだったり、ポップな回だったり、作品ごとにさまざまな演出・表現方法にシーズン1から挑戦できたのだと思います。

――個人的には『This War of Mine』を扱った回など、NHKだからこそできる深い切り込みが非常に記憶に残っています。

平元 
ありがとうございます。単に銃を撃ち合う戦争ゲームではなく、戦時下の市民として生き延びる選択を突きつけられる作品でした。取材を通じて、歴史的事実に基づいたクリエイターの強い思いやディテールが詰まっているからこそのプレイ体験だと感じました。

――今回はシーズン1+『DEATH STRANDING』の11本ですが、今後はシーズン2などの追加配信の構想もありますか?

平元 
現時点で予定はありませんが、個人的にはシーズン2以降もぜひ配信したいと思っています。今回の11本の反響や視聴実績が今後の判断材料になりますので、PRに力を入れていきたいです。間違いなくおもしろい11本ですので、ぜひ多くの方に観ていただきたいですね。

――1年間の配信期間終了後も、反響次第では常設で残り続ける可能性があるのでしょうか?

平元 
反響次第では配信期間が延長され、継続の可能性もあります。
NHK『ゲームゲノム』はアーカイブとしての価値を高めるフェーズへ。英語版の制作やNHKオンデマンドでの配信、さらに今後の展開などを番組総合演出・平元慎一郎氏にインタビュー

東京ゲームショウ2026への出展――全方位展開で“番組を知るきっかけ”を作る


――続いて東京ゲームショウ2026(TGS2026)への出展について伺います。今年で3年連続のブース出展となりますが、TGS出展は費用対効果やKPIの計測が難しい側面もあるかと思います。そういった中、3年連続で出展を続ける理由や手応えについて教えてください。

平元 
昨年まではメインステージでの公開収録を行い、最新トピックやゲームタイトルを客席の皆さんと共有しながら番組化していました。また、大型メーカーの最新作やインディー作品、海外メーカーなどを直接取材できる、TGSならではの場としても非常に魅力的でした。しかし今年は、これまでお話しした通り“番組の配信や展開を通じて、『ゲームゲノム』をより広く深く視聴していただく”というフェーズに注力するため、TGSでの位置付けを少し変えました。

 今年は公開収録を行わない代わりに“NHK×ゲーム”をテーマとしたブースを展開し、PRに全力投球します。NHKワールド JAPANでの国際放送、VOD配信、NHKオンデマンドでの配信、そしてTGS会期に合わせて直前に地上波での再放送も実施します。地上波放送分は“NHK ONE”で1週間見逃し配信も行われます。

――TGSの会期中に、ありとあらゆるプラットフォームで『ゲームゲノム』に触れられる環境を全方位的に構築するわけですね。

平元 
はい。ブースでは“あなたにはこの視聴スタイルがベストです”というご提案を丁寧に行えればな、と。来場者ひとりひとりとコミュニケーションを取り、NHKワールド JAPAN やNHKオンデマンドでの視聴方法をしっかりご説明し、実際に観ていただくところまで繋げる機会にしたいと考えています。

――ゲーマーが集まるTGSの場で、改めて深く届けていく狙いですね。

平元 
1年目、2年目の出展を通じても、“まだまだ番組が知られていない”という肌感覚があります。『ゲームゲノム』はゲーマー以外の方にも観てほしい番組ですが、まずはゲームを愛するゲーマーの方々と“ゲームってすごいエンターテインメントだよね”という価値観を共有したいので、多くのゲームファンが集まるTGSの場は、その第一歩として非常に重要な機会だと思っています。

――今年はビジネスデイからパブリックデイまでの5日間開催ですが、平元さんも5日間ずっとブースにいらっしゃるのですか?

平元 
時間の許す限り皆様にご説明させていただきます! 毎年ヘロヘロになりますが、声が枯れるまでがんばるつもりです(笑)。これまでも『ゲームゲノム』をご覧いただいた方がたくさんブースに来てくれて、感想を直接聞けたことがとてもうれしくて。僕以外にも、番組を担当したディレクターやプロデューサーがブースにいるので、ぜひ気軽に声をかけてもらえたらと思います。
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『ゲームゲノム』が目指す、これからのテレビ番組とゲームの循環構造

――5年間『ゲームゲノム』を続けてこられて、局内での評価や番組への理解について手応えはいかがですか?

平元 
今年度新作を出せていない中、配信や展開で成果を上げ、それをつぎの地上波放送(新作)へと繋げていく必要があります。そのためには視聴者の皆様からの評価や成果をもう一段階上げていかなければならない状況です。ですが、この5年間で作ってきた『ゲームゲノム』は唯一無二のコンテンツであると確信しています。局内を歩いていても「つぎの『ゲームゲノム』はいつやるの?」と声をかけてもらえることも増えました。楽しみにしてくださる視聴者がいる限り、展開・配信、そして将来的な放送の可能性を探り続けていきます。

――配信や国際放送でファン層を広げ、最終的に新作へ繋げていくという循環ですね。

平元 
それがこれからのテレビ放送局や番組の理想的なサイクルになるのではないかと個人的に思っています。放送があり、国内配信・国際展開で認知が広がり、イベント(TGSなど)で熱量が高まる。そして「新作が見たい」という声を受けて新作制作へと循環していく。ゲームを取り扱う番組において『ゲームゲノム』がその循環モデルのパイオニアになれれば理想的です。

――まさにいまのゲーム業界でもゲームの発売後、イベントなどでファンの熱量がさらに高まったところで、新作やDLCに繋げるという流れになってきていますよね。テレビ番組も放送して終わりではない時代だと実感します。

平元 
一度の放送で終わってしまうのはすごくもったいないですよね。『ゲームゲノム』はいつ観ても楽しめる作りになっていますし、10年後に観てもまた違う発見があるはずです。リメイクやリマスター版が出た際に“原作の思想はどうだったのか”を調べるツールとしても役立つはずですので、つねにアーカイブの棚に並び続けてほしいですね。

――仮に今後シーズン3の制作が決まったとして、平元さんが個人的に扱いたいタイトルはありますか?

平元 
なにも決まっていないのに具体的な発言をすると、プロデューサーに怒られそうですが(笑)、ずっと言い続けているのはラブデリックの『moon』です。あとは『大神』や『アンチャーテッド』シリーズ、『塊魂』シリーズなどですね。このあたりは自分の中で30分の構成案がすでに完成しているくらい思い入れがあります。インディー関連では、『NHKスペシャル』でも一部取り上げた『Coffee Talk』(コーヒートーク)ですね。現地取材の素材で『NHKスペシャル』では出し切れなかった映像がたくさんありますので、単独回として深掘りしてみたいです。

――どれも観てみたいラインアップです。最後に、読者や視聴者の皆様へメッセージをお願いします。

平元 
NHKオンデマンドでは『ゲームゲノム』以外にも、NHKが真剣にゲームに向き合って制作した番組が多数配信されています。
 これらもぜひあわせてご覧いただき、NHKのゲームへの本気度を感じていただければ幸いです。私自身、テレビ制作者として『ゲームゲノム』を多くの方に観ていただきたいという思いはもちろんですが、その根底には“ひとつひとつのゲーム作品は本当におもしろく、心を動かす文化・エンターテインメントである”という情熱があります。

 配信や国際放送、TGSなど、さまざまな入口を用意しましたので、どこからでも入っていただき、ゲームの魅力を分かち合っていただけたらうれしいです。そして、その反響をぜひつぎの展開や新作へと、皆さんといっしょに繋げていけたらうれしいです。よろしくお願いいたします。
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