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AIはゲームシナリオ執筆の大きな助けになる。物語の矛盾検出やキャラの方言監修もできる、サイゲームスのシナリオ執筆支援ツール作成実例【CEDEC2026】

AIはゲームシナリオ執筆の大きな助けになる。物語の矛盾検出やキャラの方言監修もできる、サイゲームスのシナリオ執筆支援ツール作成実例【CEDEC2026】
 2026年7月22日から7月24日にかけて、パシフィコ横浜ノースならびにオンラインにて開催された“CEDEC2026(Computer Entertainment Developers Conference 2026)”。こちらはCESA(コンピュータエンターテインメント協会)主催による、日本最大のゲーム開発者向けカンファレンスだ。
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 当記事では同イベント2日目、2026年7月23日に行われたサイゲームス開発運営支援ゲームエンジニア・立福寛氏によるレギュラーセッション“ゲームシナリオライターを支援するAIツール開発の実践 - 設計とプロンプトの工夫 -”についてお伝えしていく。
AIはゲームシナリオ執筆の大きな助けになる。物語の矛盾検出やキャラの方言監修もできる、サイゲームスのシナリオ執筆支援ツール作成実例【CEDEC2026】AIはゲームシナリオ執筆の大きな助けになる。物語の矛盾検出やキャラの方言監修もできる、サイゲームスのシナリオ執筆支援ツール作成実例【CEDEC2026】
サイゲームスの立福寛氏。過去のCEDECでも氏は講演しているので、本講演をより深く理解したい人はぜひご視聴あれ。
 シナリオ作成などクリエイティビティーが強いジャンルでは、AIはそれらを打ち消しかねないと、いまなお考えられがちだ。実際筆者もインタビューのテープ起こしに一般的なAIツールをそのまま使ってみたが、ゲームの専門用語に対応しきれないので大幅な人力補完が毎回必須ということで、該当ツールを使わなくなりつつある。

 だが、AIツールは設計や開発手法しだいで、シナリオ作成の現場でもいまや大活躍しうる。今回の講演では立福氏が実際の現場でのテスト結果やフィードバックも交えつつ、どのようにツールを設計したか、そのときどのような問題に直面し解決したかを詳細に語ってくれた。
※当記事の画像はすべて、アーカイブ画面から切り出したものとなります。

最新AIは想像以上に文章を理解できる

 前提として、サイゲームスのように長年運営が続くタイトルを多く抱えるゲーム会社においては、キャラクター数やストーリーボリュームが膨大になり、把握すべき情報も多くなっていくことがシナリオライターへの大きな負担になる。相談を受けた立福氏は、この件には独立したAIツールでカバーできる部分があると考えた。

 なお、本講演中にはサイゲームスで開発され、同社のほとんどのプロジェクトで使用されているシナリオ執筆ツール“こえぼん”に言及する部分がある。詳細については下記動画をご参照いただきたい。また、今回紹介されるAIツールのプロトタイプ開発と一部の本番運用には、AI開発ツール“Dify”が使用されている。

シナリオがキャラ設定と矛盾しないか調べるツール

 講演ではまず、シナリオがキャラクター設定と矛盾していないか調べるツールを開発した際の事例が紹介された。明らかに人力で確認するのはたいへんだが、毎回ライターがAIツールを実行するのもまたたいへん。そこで目標として、シナリオIDを入力するだけで全確認が終わるツールを想定したという。
AIはゲームシナリオ執筆の大きな助けになる。物語の矛盾検出やキャラの方言監修もできる、サイゲームスのシナリオ執筆支援ツール作成実例【CEDEC2026】

 設計としてはまず、シナリオとキャラ設定をプロンプト化し、AIに矛盾点を指摘してもらう仕組みとした。

 ただ、キャラ設定はHTMLで1キャラ1ページ分という大量のものが保存されている。最新モデルではプロンプトに70万文字(文庫本7冊分)の情報が入れられるが、処理時間が長くなるほか、余計な情報がノイズとなって回答の精度も落ちる。プロンプトへは短く、なおかつテキスト形式にした情報を入力することがここでは重要となる。
AIはゲームシナリオ執筆の大きな助けになる。物語の矛盾検出やキャラの方言監修もできる、サイゲームスのシナリオ執筆支援ツール作成実例【CEDEC2026】
AIを含め、複数のツールを経由することでより精度を上げていく。
 こうした複数の過程を経てプロトタイプは完成し、シナリオライターからの評判もよかったが、AIの指摘はきびしいため言うとおりに直すとシナリオが成立しなくなる場面もあったという。まだライター側で結果を解釈し、うまく扱う必要があった。

 また、プロトタイピングから先にも難しい課題がある。シナリオ執筆ツールから呼び出すうえで、プロジェクトごとにキャラクター設定の管理方法がバラバラなのだ。これらにも対応できる、別ツールで同様のチェックができないかを目下検討中とのこと。

セリフ作成支援ツール

 続いて講演では、一部のキャラクターの特殊な口調や語彙を含むセリフの作成支援ができないかと相談されたケースについて紹介された。メインライターは慣れていても、これらのキャラクターはサブキャラクターとしても登場するため、ほかのライターがセリフを執筆するときに時間がかかってしまうのだ。

 実際のところ、これらの特殊なセリフをしゃべるキャラクターは一見よく分からない言い回しをするが、じつは独自の単語リストの中から単語を選択しているという。
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「あのキャラかな?」とこの事例だけでキャラが思い浮かぶ人も多いだろう。
 シナリオライターが求めたのは、この“独自の単語”の選択支援。語尾やしゃべりかたはライター側で再現できるが、その単語リストは1キャラクターあたり1000単語にもおよぶ。検索をかけるとしても完全一致のものしか見つからないため、単語探しに時間がかかってしまうのだ。

 そこでツールの目標としては、セリフをまるごと変換するのではなく、単語候補をピックアップするものを設定。入力したセリフの作成に使える単語候補を、文節ごとに表示する形式となった。
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 Difyアプリとしてプロトタイピングしたものを本番運用した結果は好評。残っている改善点としては、セリフをコピペするのがたいへんとのことで、シナリオ執筆ツールからまとめて読みこめるようにしてほしいとの要望があり、これは次回のバージョンアップで対応予定だという。

方言監修ツール

 セリフ作成支援ツールの応用として、方言監修ツールも開発。実験してみたところ、GPT-4oを使用すると関西弁などのメジャーな方言だけでなく、すべての都道府県の方言までカバーできていたという。

 ここで立福氏はもう一段よい結果を得るため、キャラクター性も考慮した監修機能を目指した。実際には元気なキャラと上品なキャラでは方言の使いかたが異なり、方言の強度もさまざまな層で異なるからだ。
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 方言自体はAIが理解しているので、キャラクターの方言情報をプロンプトに入れれば実現はできる。そこでさらに利用できるデータとして、リリース済みのシナリオ、すなわちネイティブスタッフによる方言監修済みのデータを活用。さらにキャラクター設定をプロンプトに追加することで、ツールユーザーに「なぜこのような方言の使いかたを選択したか」も説明できるようになる。
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 実際のツールは、プロンプト内に過去のセリフを200行追加した形で作成。方言だけでなく、キャラの個性も反映された提案が出力されるようになった。改善点としては敬語で入力しても砕けた言葉で出力されることがあったため、モード切替機能の実装や、過去に使用例がある場合は変換しなくても大丈夫と指摘してくれる機能も求められているという。

誤字検出の対処実例、やはり日本語は手ごわい

誤字検出ツール

 AIツールの最後の実例として紹介されたのは、誤字を検出するツールの作成について。CEDEC2022で発表した誤字検索ツールは昔の“BERT”をベースに作成していたため検出機能が古くなっており、2025年に新たなAIで作り直したという。

 シナリオライターチームと協議して、新たに設定したという検出対象は以下の通り。
  • 一般的な誤字
  • ら抜き、い抜き、さ入れ言葉
  • 補助動詞の漢字表記
  • 常用漢字表にない読みかたの検出
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これは筆者もライターとして、非常に興味があるAIツールだ。
 一般的な誤字検出についてはAIの精度は高いものの、シナリオにおいてはキャラクター性も考慮してほしいため、過去のセリフをデータとして使用。ら抜き、い抜き、さ入れについては完全NGというわけではないとのことで、使用されている箇所を検出する機能を備えた。
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プロンプトで詳しく説明を入れることで、より検出精度が高まる。
 補助動詞が漢字の場合の検出については、漢字にすべきかひらがなにすべきか文脈によって変化したりと難しいケースも多く、今回のテストケースでは詳しい調査はできなかったという。ただしシナリオ全体を参照する形式のため、文脈から判断する機能は十分に実現可能とのこと。
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文脈によるケースは、筆者にも仕事上ものすごく心当たりがある。日本語を勉強する外国の皆さんが、そろって首をかしげる部分だ。
 常用外漢字については、最新のAIで文章内のすべての漢字にフリガナを正しく付けられるかを検証。複数の例文を用意してもらったところ、GPT-5が出たばかりだった2025年当時の最新AIでは、複数の読みかたができる漢字で異なるフリガナが選択されてしまったという。対処法として、AIモデルが持つ知識をすべて引き出し、選択させる形式が選ばれた。
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読みかたを知っているのか、文脈を理解できるのかとふたつのタスクに分割したことで、モデルの性能評価がしやすくなった。
 以上を踏まえてDifyでプロトタイプを作成したところ、一般的な誤字、ら抜き、い抜き、さ入れ言葉、補助動詞の漢字表記についてはフローで作成できたが、常用漢字表にない読みかたの検出については、Difyのワークフローでは複雑で対応できなかったという。
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こちらが検索を実行した結果。
 フィードバックでのシナリオライターからの指摘事項も、大量にあったという。ライターが意図した装飾的表現への対応など、AIの機能が発達した昨今でもまだまだ課題は残っているようだ。
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改めて日本語は難しすぎると感じたのは、筆者だけではないと信じたい。

Dify環境での問題と対策について

 続いて講演では、Difyでのツール開発で直面した制約と、その回避方法について解説された。

 まずはテキストを参照したいケース。方言監修ツールの例でテキストを参照しているフローがあったが、じつはDifyでは難しいとのこと。本来Difyでテキストを参照するにはさきにテキストを登録しておく“ナレッジ機能”を使用するが、APIの不具合やナレッジ機能のほか環境への移動の問題から、他機能を使用することに決めたという。

 複数の方法を模索したところ、Dify内で完結する方法として、参照したい文章をPythonのコードに埋め込む形式が選択された。今回紹介されたAIの事例でも、すべてこの方法が使用されている。
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 つぎに解説されたのは、Difyのアプリにアクセス制限をかけたいという相談について。アクセス制限をかける方法は複数あるが、社内のインフラ側で制限をかける方法を選択したとのこと。

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Microsoft Entra IDの、アプリケーションプロキシを活用。

講演総括「AI利用の実践はもはや身近な時代」

AIはゲームシナリオ執筆の大きな助けになる。物語の矛盾検出やキャラの方言監修もできる、サイゲームスのシナリオ執筆支援ツール作成実例【CEDEC2026】

 立福氏の講演内容は以上となる。プロンプトの軽量化、よりよいデータの準備など、比較的簡単ながら実用性が高いテクニックがいくつも紹介されており、すぐにでも実際に試せそうなケースが多い、実践的な講演内容となっていた。講演終了後の質疑応答でも絶えずさまざまな質問が投げかけられており、講演内容に興味を持った人が多かった証左となっていた。
AIはゲームシナリオ執筆の大きな助けになる。物語の矛盾検出やキャラの方言監修もできる、サイゲームスのシナリオ執筆支援ツール作成実例【CEDEC2026】

 AIやDify、Pythonなどの単語から、今回の話もゲーム開発者などの専門家の世界の話と考える読者諸兄も多いかとは思うが、これらのツールは利便性が高まり、専門知識がなくても使用できる時代になりつつある。この講演を機に、これらのツールの使いかたを少し調べてみてもらえれば、AIツールの作成と自分の仕事での活用が夢物語ではないことを知ってもらえるかと思う。筆者も時間ができたら誤字検出ツールについて、真面目に勉強してみようと考えた。

担当者プロフィール

  • カイゼルちくわ

    カイゼルちくわ

    フリーライター。MMORPGとブラウザゲームを黎明期から遊び続け、ゲームセンターに『ストII』の数年前から通いつつPCゲームで夜を明かしていたおじさん。アーケードゲーム雑誌のライター業を経て以来、ほぼ全ジャンルのゲーム記事を受け持っている。

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