HOME> アニメ・声優> 伊藤静:自分の壁を突き抜けて、演技の幅を広げたい
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360(毎月30日発売)の人気連載“エンジェル・ボイス アゲイン”とファミ通.comがコラボレート。誌面の都合などから、本誌では泣く泣くカットせざるを得なかった声優さんの貴重なお話の数々を完全収録。声優さんの“声のお仕事”に対するこだわりぶりを明らかに! 本日のゲストは、伊藤静さんです(不定期連載第23回)。
【本日のゲスト・伊藤静さん】 |
最近では『バスカッシュ!』のセラ・D・ミランダ役や『咲‐Saki‐』の竹井久などでおなじみ。『ハヤテのごとく!!』では、人気キャラの桂ヒナギク役を務める。もとゲームショップでバイトをしていたこともあり、もちろんゲームはお好き。ただいまは『モンスターハンターポータブル 2nd G』で狩りをする日々。生涯でもっともお気に入りのソフトはセガサターンの『組み立てバトル くっつけっと』とか。 |
●ファンレターを見ると、「これでがんばっていけるな」と思える――まずは、声優を目指すようになったきっかけを教えてください。
伊藤 本当にぜんぜん大したことないんです(笑)。私は高校のころからゲームショップでアルバイトをしていたのですが、高校卒業後は「何かをやりたい」という明確な目標もなくて、そのゲームショップでずっと働いていたんですね。ゲームなどを遊びながら、毎日を何となく楽しく過ごしたりして……。もちろん週刊ファミ通も読んでいましたよ。
――ありがとうございます(笑)。
伊藤 けっきょくそのお店には、声優をはじめてからもしばらくいて、7年くらいバイトしていました。で、そのバイト先のオーナーがアニメ好きで、いっしょにアニメを観たりしていたんです。あのころはゲームでもすでに声優さんの存在感が高まっていて、「このキャラの声優さんは誰それで……」という話題で盛り上がっていたんです。それで、もともとお芝居が好きだったこともあり「そういうお仕事があるんなら、やってみようかな」という、ごく軽い気持ちで養成所の門を叩きました。
――お芝居が好きだったということは、学生時代に演劇などを?
伊藤 いえいえ。単にマンガを読んで共感したシーンがあったら、セリフを口に出してみたり……とかそんな感じです。演劇部には行っていなかったのですが、友だちと学園祭でしょっぱい芝居をしていたりしましたね(笑)。
――養成所での日々はどうでした?
伊藤 それまでにちゃんとしたお芝居の勉強をしてきたわけではなかったので、すごくたいへんでした。とくに苦手だったのがアドリブ。稽古のときにアドリブ合戦みたいなものをやらされて、「私には才能がないんだわ!」って思いました。
――そんなにアドリブが苦手だったのですか?
伊藤 現役で劇団に所属している役者の方に講師に来ていただいて、エチュードをやったりしました。台本も何もなくて、「橋の両端から人が来る。道が狭くてすれ違うこともできないけれど、さあどうする?」みたいなシチュエーションがあって、好き勝手に演じさせられるわけです。私はそれがすごい苦手で(笑)。ぜんぜんダメダメで「私には無理だ」って思っていました。
――(笑)。声優としてのデビューはどのような感じだったのですか?
伊藤 養成所に通いはじめて3年目にオーディションでレギュラーをいただきました。アニメ『TEXHNOLYZE』(2003年)の蘭役だったのですが、オーディションのときは緊張して手が震えていましたね。それで、しばらく経って「受かりました」という連絡が事務所から来たときは、あまりのうれしさに小踊りしました(笑)。
――ついに声優としての道が開けたわけですものね。いざ臨んだ収録はどうだったのですか?
伊藤 やっぱり緊張していました(笑)。けっこうベテランの方も多かったし。でも、逆にベテランの方が多くて、「緊張しなくていいよ」とフォローしていただいていたので、少しずつ現場にも慣れていきましたね。ただ、その蘭というのが本当にしゃべらない役だったんです。台本に“蘭「…………」”ってあって、アドリブなのかなって思ったら、当日いきなり「あ、そこカットね!」とか言われて、そのまま見学して帰ったりしました(笑)。
――(笑)。そんなにセリフがなかったのですか!?
伊藤 本当にすごいんですよ! 『TEXHNOLYZE』は全22話だったのですが、つぎに担当させていただいた役では、第1話だけで蘭の22話分相当のセリフをしゃべったくらい(笑)。なにしろしばらくは、蘭がしゃべったセリフは全部言えましたから。いちおう蘭はヒロインだったんですけどね(笑)。
――そんなこんなで役柄をこなすうちに、声優としてのたしかな手応えも掴み始めた?
伊藤 うーん、正直たしかな手応えはいまでもないです(笑)。本当に不安になりながらやっています。たとえば収録のときはやりきった感があっても、あとでいざオンエアされた作品を見てみると、伝えたつもりでいたことが画面をとおすとぜんぜん伝わっていなかったり。「もっとおもしろくなったんじゃないのかな」と反省ばかりしています。
――満足されることがあまりないのですね? それは向上心のなせる技かしら?
伊藤 どうでしょうね。もっといろんな現場に行って、いろんな人に接したいとは思っています。自分が出ていないアニメ番組を積極的に観たりとか。自分にないものを持っている声優さんがたくさんいて、見ていると本当に勉強になります。「こういう技がほしいな」とか(笑)。
――で、それをつぎの収録で取り入れてみたりする?
伊藤 そういうときもありますね。でも取り入れても自分のものではないので、うまくいかなかったりします(笑)。まあ、声優というお仕事はそういうことのくり返しかもしれませんね。
――そうやって自分の進むべき道を模索していく?
伊藤 そうですね。声優さんは、ふだんはみんなけっこう余裕のある表情をしていても、いざ詳しく話を聞いてみると、「本当は不安でたまらない」という人もけっこう多いです。
――声優業というのは、そういった不安と隣合わせなのですね。
伊藤 はい。そんなときに心の支えになるのが、ファンの方からのお手紙ですね。声優というお仕事は、ライバルとの競争という一面もあり、毎回いつも不安で「これではだめかも……」ということもあるのですが、「○○役のファンです」というお手紙をいただいたりすると、「これでがんばっていけるな」と思えるんです。
――やはりファンレターはうれしいものなのですね。
伊藤 はい。力になるというか。初めてファンレターをいただいたときは、「私ごときにこんなことがあっていいのだろうか?」と思いました(笑)。やっぱり、自分を見てくれている人がいるんだなというのがうれしかったですし、「この役は静さんしかいない」とか書いてくれていたりすると、「こんな私ですみません!」とか思ったりするのですが(笑)、こうして見てくれている方のためにもがんばりたいです。
●歌うことは大好き! 歌はお芝居の延長線上にある――4月から第2期シリーズがスタートした『ハヤテのごとく!!』では、人気キャラの桂ヒナギクを演じていますね。
伊藤 そうなんです。ヒナギクは週刊少年サンデーで行われたキャラクターランキング投票でも、1位2位を競う人気キャラなんです。彼女は生徒会長で、第一印象は「凛としたしっかりとした女の子」というイメージが強かったのですが、第1期シリーズ(2007年)の1年間が終わったあとは、「本当はかわいい子なんだな」というのがわかってきました。それからは、ヒナギクは「私の中にはもうなくなってしまった乙女心をもったかわいい子」という位置付けになっています。自分だと照れくさくて言えないようなことでも、彼女なら平気で口にしてくれる、みたいな(笑)。
――第1期が終わってから、演じるのは1年ぶりになりますが……。
伊藤 というわけでもないんですよ。テレビの第1期が終わってからも、ドラマCDやゲームなどがあったので、ずっとヒナギクとは関わっていたんです。むしろテレビシリーズをやっていたときよりも、ヒナギクだけを見ていられたような気がします。テレビの収録のときは、どうしても『ハヤテのごとく!!』の中のヒナギクという目線で見てしまうのですが、テレビシリーズがないときは、ヒナギクだけを純粋に見ることができる。だから、テレビシリーズが継続しているときよりも、深くヒナギクと向き合うことができたように思います。ヒナギクのことをもっともっと好きになりました。
――よりヒナギクに近づけた?
伊藤 はい。キャラを演じるときは、日常生活でも「この子だったらこう考えるんだろうなあ」と、自分とは違った目線でものを考えたりするのですが、ヒナギクの場合はとくにそれが頻繁ですね。「ヒナギクだったらこうするだろうな……」といったように。
――ヒナギクの視点になり切るんですね(笑)。
伊藤 で、ヒナギクをフィーチャーしたアルバム『HiNA』を作ったときに、1曲自分で作詞をしたんですよ。でも、素の自分のままで、そのときに自分の中にある恋に対する気持ちを書き綴ってみると、ものすごいやさぐれた感じになってしまったんです(笑)。
――あはは(爆笑)。
伊藤 それで、「ヒナギク、ヒナギク、私はヒナギク」と思い込んで、ちょっとかわいらしいワードとかをヒナギクのイメージで書き出してみては、歌詞を作りました。自分の気持ちをストレートに書いてもつまらないし、いろいろ考えると泥沼みたいなことしか書けなくなってしまう。でも、「ヒナギクだったらこういうシチュエーションでもOK!」みたいな(笑)。
▲魅力的なキャラが織りなす学園ドラマ。伊藤静さん演じるヒナギク(写真中央)は生徒会長さん! |
――そんな『ハヤテのごとく!!』第2期では、エンディングテーマも担当していますね。
伊藤 はい。今回の楽曲『本日、満開ワタシ色!』は、アップテンポでノリのいい曲です。すごく明るくて前向きな曲調なので、とにかく元気に歌いました。それで、曲では矢作紗友里ちゃん(瀬川泉役)と、中尾衣里ちゃん(花菱美希役)、浅野真澄ちゃん(朝風理沙役)が合いの手を入れてくれているのですが、収録は3人とは別々だったんですね。それで作詞家の方が「歌いやすいように」ということで、仮歌のときにひとりで3人分になり切って合いの手を入れてくださったのですが、それがみんなの役柄になり切っていて、とても楽しかったです(笑)。
――歌を歌うのは?
伊藤 好きです! ふだん私はあまりカラオケには行かないのですが、家ではめっちゃ歌うんですよ。大きな声で(笑)。すごいご近所迷惑なのですが、お風呂の中やお皿を洗いながら、そのとき気になっている歌をひたすら歌ったりしています。声優を目指した理由のひとつに“歌を歌える”ということが重要なポイントとしてあったくらいだったくらいですから。まさかこんなに歌わせていただけるとは思わなかったです(笑)。
――“歌う”ということは伊藤さんにとってはどのようなことなのですか?
伊藤 基本、歌うこととお芝居は同じです。歌というのは芝居の延長線上だと思っているので、私にとってはセリフを音に乗せて届けているという感じですね。
――最後に今後の抱負をお願いします。
伊藤 いまの私のテーマは、どんどん自分の壁を壊すこと。やっぱり“伊藤静”という声優が演じる役って、どうしても決まってきてしまうじゃないですか。いろいろな可能性があるにも関わらず。
――やっぱり得意分野というのはありますからね。
伊藤 そういう“枠”みたいなものを、どんどんぶち破っていきたいです。たとえば私はバカなキャラが好きなのですが、いざ自分がやってみようとすると弾け切れないところがあるんです。別に理性が働いているわけでもないのに、10のうちの8くらいで収まってしまう。それをうまく突き抜けていきたいと思っています。そうして、自分の演じる役の可能性をどんどん広げていきたいです。
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※伊藤静さんの公式ブログはこちら
photograh:Daisuke Komori
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