一人称視点と豊かな世界へのこだわり

 Arkane Studiosは、過去に『アークス・ファタリス』や、『ダークメサイア オブ マイト・アンド・マジック』といったタイトルを手掛けている。これらはいずれも本作同様、世界観にこだわった一人称視点のアクションゲームだ。その源流を辿ると、『ウルティマ アンダーワールド』や『システムショック』といった、このジャンルを確立したタイトルからの影響を見ることができる。本作は、これらの名作の遺伝子を受け継ぎ、近年では『バイオショック』などを産んだ本ジャンルの最新型のひとつと言うこともできるだろう。

 興味深いことに、本作のクリエイティブディレクターを共同で務めるラファエル・コラントニオとハーベイ・スミスが出会ったのは、奇しくもコラントニオがArkaneで「『ウルティマ アンダーワールド』の非公式続編」とも称される『アークス・ファタリス』を、スミスが現在もオールタイムベストに挙げられることの多い大傑作『デウスエクス』を手掛けていた時だったという。
 それぞれのタイトルのリードデザイナーとして、RPG要素を持ち、没入感のある世界でくり広げられる一人称視点アクションを同時に手掛けていたふたりは意気投合し、やがて「ひとりで考えるよりもふたり分のアイデアのほうが優れている」とタッグ結成を決意。こうして生まれたのが本作なのだ。

 開発にあたっては、フランスのリヨンとアメリカのテキサス州オースチンのスタジオで頻繁にテレビ会議を行い、コミュニケーションを深めながら作業を進めているそう。もっとも、同じジャンルを愛し、同じ情熱を持っているから、国境も言語も問題ではないと考えているとのこと。

 では、なぜ彼らは緻密に構築された世界や、一人称視点アクションにこだわるのか? それは、グラフィックや技術面の向上に努めてきたゲーム業界で、次に必要とされるのは“ゲームの深み”だと考えているからだ。
 関係者の発言からも、「開発陣が予測した以上のインタラクティブが起こるゲームシステムが目標」(ジェフ・レイク、ゲームプレイプログラマー)とか、「シーンのすべてが意味を持って存在し、実際そこにいるかのような感覚を持たせたい」(ジュリアン・ロビー、エグゼクティブ・プロデューサー)とか、「自分がその地にインパクトを与えるために存在する感じを出したい」(リカルド・ベア、リードテクニカルデザイナー)といったように、ゲームをプレイする感覚をさらに深めようとしていることがわかる。
 そのためにこそ、ヴィクトル・アントノフによる魅力的な世界や、没入感を高める一人称アクションへの追求が欠かせないのだ。そのうえ、あなたには超常能力という無限の可能性を秘めたオモチャも用意されている。ダンウォールであなたは何をなすのか? 思いっきりこの世界にダイブしてみてほしい。