2“ゲーム・オブ・ザ・イヤー”を始め、海外で多数のアワードを獲得したSF超大作『Mass Effect(マスエフェクト)』の続編がいよいよ発売される。あらゆる点でスケールアップした最新作の魅力に迫る。
作り込まれた世界観&壮大なスケールの物語は秀逸。キャラや部隊の育成も前作同様におもしろい。ただ、システム関連や専門用語などは難解で、シリーズ初体験の人には敷居が高めかも。それでも臨場感溢れる演出は見る価値あり。ゲームのボリュームも満点で、長く遊べる作品。
固有名詞が多かったり、わかりにくいスキルがあったりと、敷居の高さはありますが、SFファンはぜひ遊んでおきたい作品ですね。緻密に構築された世界には、説得力もあり、没入感を高めます。TPSとRPGの相性もよく、選択によって状況が変化していく会話システムもおもしろい。
壮大な世界観と重厚な設定は、まるでSF映画のよう。グラフィックは美麗だし、演出も臨場感たっぷり。個性的な異星人と人間が織り成すドラマチックな物語は、先が気になってのめり込める。主人公の選択で展開が変わったり、恋愛もできたりと、やり込み要素もボリュームがあります。
膨大な設定が紡ぐ世界観に、圧倒的なグラフィックがリアリティーを形作る。会話の度に表示される多くの選択肢も没入感に貢献。バトルの難度が高いわりにリトライポイントが少ないなど、遊びづらい部分は多いが、それ以上の独自の魅力を持っている。物語は前作を知っている前提の作り。
ここでは、『Mass Effect 2(マスエフェクト2)』の尽きることのない魅力を、シリーズをこよなく愛するライター戸塚伎一に語ってもらおう。
深夜。握りしめていたXbox 360コントローラをひとまず置き、部屋の照明を落とす。ベランダ窓の遮光ロールカーテンを上げると、ひときわ大きな満月が、郊外のマンション群を照らしている。それにかき消されてなるものかとばかりに、いくつかの星が、光の点として存在をことさらに主張する──そんな夜空をぼんやり眺めていると、自分の居場所の抽象度がグングン上がり、やがては"70億近くの人間がそれぞれの光を放つ惑星(ほし)"というところまでのぼり詰めます。これというのも、私の気持ちが『Mass Effect 2(マスエフェクト2)』のゲーム世界にガッチリ入り込んでいるからかにほかなりません。
多種多様な知的生命体が連合に所属する大宇宙。プレイヤーは、人類初のスペクター(超法規的エージェント)に任命された軍人、シェパード少佐の立場で、宇宙全域を覆う脅威の正体を調査する……という前作から2年後の世界が舞台となる本作。紆余曲折あって"宇宙の英雄"となったシェパードは、冒頭で瀕死の重傷を負い……というか、ほぼ死亡。人類至上主義を掲げる胡散くさい組織サーベラスによってかなり強引に蘇生され、組織のトップ・イルーシブマンの命じるミッションをこなしていくことになります。
本作で初めて『Mass Effect(マスエフェクト)』の世界にふれる人にとって、冒頭の流れは「そういうものか」と比較的すんなり受け入れられるかもしれませんが、前作をプレイしたユーザー──本シリーズの特徴的な機能"前作のクリアーデータ引き継ぎ"を利用できるほどやりこんでいる人にとっては、ちょっとした怒涛の展開です。
ゲーム世界での2年間の空白は、過去にシェパード少佐とかかわった人々との関係や心的距離に、大なり小なり変化を及ぼします。幾多の戦いをともにし、友情や男女の愛情をはぐくんだパーティーメンバーたちとの再開は時に感慨深く、時にほろ苦い感情を呼び起こします。
私が引き継いだデータは記念すべき初クリアー時のもので、シェパード少佐は女性。しかも、人間のエリート兵士、ケイダン・アレンコとは恋人関係です。私自身は男なので、親密になるなら女性キャラのほうがよかったのですが、その場その場に合わせた態度をとっていたら、いつの間にかオトナの男女関係になっていました。流れ的には"肉食系女性上官が生真面目な男性部下をたらしこんだ"というものだったので、それはそれでグッとくるシチュエーションではありますが (笑)。
再会したケイダンは、死んだと思っていた恋人が生きていたことを一応喜ぶものの、かつてともに戦った敵対組織の一員となったシェパードをあからさまに非難。少なくとも本作中ではヨリが戻ることはないなと諦めがつく、イヤーな空気を味わいました。そんなイベントがあった後に、前作からの腐れ縁の宇宙船パイロット、ジョーカーに話しかけると、「クルーに手を出すからこうなるんだ」的なセリフでたしなめられ、踏んだり蹴ったりです。宇宙に名をとどろかせる英雄のあまりに冴えないエピソードの伏線が、クリアーデータの一部としてしっかりリレーされていたのかと思うと、胸が熱くなります。
これはほんの一例で、もしシェパード少佐を男にしていたら、あるいはケイダンが前作の戦いで命を落としていたら(!!)、事情はまったく違ったものになります。宇宙の大局的な出来事に関しては完全な一本道シナリオですが、個人的な思惑絡みの枝葉のバリエーションに関しては、とくにコレという正解が強調されていません。それが『Mass Effect(マスエフェクト)』のスタイルであり、プレイヤーひとりひとりの、一回一回のプレイが"かけがえのない経験"になる秘密なのだと思います。
こんな風に書いてしまうと、いきなり『2』から始める人はそういう醍醐味を味わえないような誤解を与えてしまいそうですが、さにあらず。ふつうにひと通りプレイしただけでは気づきにくいサブシナリオの多様性も、行動の傾向をある程度意識しながら二度三度プレイすることで実感できるハズです。前作に比べて実利面に直結した選択を迫られるケースが多かったりと、ゲーム展開のカオス(混沌化)に向かうエントロピー増大量は、クリアーデータ引き継ぎで遊ぶ場合よりもぐっと抑えられるのは確かですが、すでに開発進行中の続編『3』に影響を及ぼしそうな行動選択シーンもかなりあるので、「未来に可能性をつなぐ思い」を持ってプレイできる点に関しては、何ら変わりありません。
過去の出来事の影響を強く受けたエピソードが展開し、それにどのように対処するかによって未来像が幾重にも変化する──データ引き継ぎ要素がある三部作の中間、という位置づけゆえ、そうしたゲーム的特徴が色濃く反映される『Mass Effect 2(マスエフェクト2)』ですが、それをもっともストレートに体現しているのが、パーティーメンバーたちひとりひとりの信頼を得るための特殊ミッションです。
パーティーメンバーの個人的懸案に介入し、一定の解決を得ることで、そのキャラが本来持つ強力な戦闘用アビリティーをアンロックできる……ということで、ゲーム攻略面でも大きな意義があるイベントですが、注目すべきは具体的なミッション内容。そのひとつひとつに対し、私なりの解釈をまじえながら延々と語りたい気持ちをこらえてザックリ説明すると、共通のテーマは"家族"です。
疎遠な肉親との心的距離をうまくとれない者、自分がいなくなった後の子供の行く末が気掛かりな者、自身の種族的アイデンティティーに揺らいでいる者……など、その中身や深刻さはメンバーによってバラバラですが、宇宙規模の大義を成し遂げる一員として最高のパフォーマンスを発揮するためにクリアーにしておくべき問題がいずれも"家族絡み"であることは、何とも象徴的。「人は何のためにがんばれるのか?」、「本当の幸せとは何か?」といった人間の根源的な問題について深い洞察を得られる意味でも、『Mass Effect 2(マスエフェクト2)』はプレイする価値がある作品だと思います。アクションRPGとしてどうとか、スペースオペラ的世界観がこう、とかはこの際いいじゃないですか(笑)。
ライター・戸塚伎一
西暦2185年――。時間と空間を支配する技術“マスエフェクト”の発見により、遠宇宙に進出することになった人類の運命を描く、壮大なスケールのRPG。主人公は、宇宙連合軍の勇者シェパード少佐。シェパード少佐は、宇宙船を駆使して、あまたある惑星を探索し、銀河系全体を巻き込む秘密を暴いていくことになる。戦闘は、部隊メンバーを率いて戦うリアルタイムTPS(三人称視点シューティング)により行われる。クエストをクリアーすることで主人公はレベルアップし、さらなる能力を獲得していくことに。プレイヤーの選択によってストーリーが変化する、インタラクティブな会話システムは前作に比べてさらに進化。状況によっては、会話の途中でアクションを起こすことも可能に。広大な銀河を自由に旅する冒険心を堪能できる、SF超大作だ。
シリーズ1作目にあたる『Mass Effect(マスエフェクト)』は、ただいまXbox 360 プラチナコレクションで発売中。クリアーしたセーブデータの引き継ぎもあり(詳細は後の記事を参照のこと)、1作目をプレイするとストーリーの楽しさは倍増すること請け合いだ。『2』がリリースされるまでに遊んでおくのもいいかも。もちろん、『2』をプレイした後で『1』を遊んでみるのもあり。「あのシーンはここにつながっていたんだ!」などの発見もあって楽しい。 価格は2940円[税込]だ。
宇宙連合軍の英雄、シェパード少佐が有機生命体の殲滅を目論む機械種族“リーパー”の襲撃を打ち破ってから2年。宇宙の至るところで、人類のコロニーが丸ごと消失するという事件が発生する。そんな中、シェパードは謎の勢力による襲撃を受け、消息を絶ってしまう。“死亡した”と伝えられていたシェパードだったが、高度な生物テクノロジーを有する秘密組織“サーベラス”の手により蘇ることに。人類の存続と繁栄のためには手段を選ばないサーベラスの目的とは? そして、新たな脅威にさらされる人類の運命は? シェパード少佐の新たなる冒険が始まる――。
昨今のゲームでは、珍しくないキャラクターのカスタマイズ要素だが、『Mass Effect 2(マスエフェクト2)』ではさらに多岐にわたってのこと細かな選択が可能。ファーストネームの決定に始まり、容姿や性別、出身地や経歴、戦闘スタイルなど、主人公のシェパードを自分好みのキャラにできる。驚くべきは、性別や経歴の選択などは後のストーリー展開に大きな影響を及ぼすということ。キャラクターのカスタマイズ時から物語は始まっているのだ。
人類滅亡を企む脅威の正体を突き止めるために、ノルマンディー SR-2号で宇宙を冒険していくことになる本作。主人公のシェパードは、広大な銀河を航行&探索しながら、ときに戦闘に身を投じ、ときに会話により情報を収集しながら、謎に満ち溢れた敵の核心に迫っていくことになる。ここでは、そんな『Mass Effect 2(マスエフェクト2)』の物語の流れを追っていこう。
『Mass Effect 2(マスエフェクト2)』の重要なシステムとして“会話”がある。本作では、主人公のシェパード少佐は登場キャラクターたちと多岐にわたる会話をこなすことができる。上陸先で話を聞くことで、新たな手掛かりを得たり、ノルマンディーのクルーと会話を重ねて信頼関係を築く……といったことが可能だ。会話は、選択形式で進んでいく。会話リングに表示された問いかけや受け答えのなかから、プレイヤーが言葉を選ぶことになる。そして、会話での選択は、主人公のモラルにも影響を及ぼすことに。会話には、言葉の選びかたや態度ひとつで、その後の展開さえ変えてしまうほどの影響力がある。宇宙ではコミュニケーション能力も問われるというわけだ。
会話をしていると、ときに「話していても埒があかない……」という状況が訪れることがある。本作から新たに採用された“介入システム”はまさにこんな場合にうってつけだ。画面に介入マークが表示され、トリガー操作により、状況に介入することができるようになるのだ。画面の左側にマークが表示された場合は道徳的な選択を、右側に表示された場合は若干暴力的な手段を取ることになる。シェパードの行動がその後の物語を動かす。
会話の詳細を公式サイトでチェック!>>宇宙を航行していくノルマンディー SR-2号。銀河のどこを探索していくかは、コンバットブリッジにある銀河の地図“ギャラクシーマップ”を広げて、目的地を決めることになる。どこから、どのような順序で探索していくのかはプレイヤーの自由に任せられている。ギャラクシーマップでは、移動の指示を出すだけでなく、惑星や施設の情報やデータを閲覧することができる。その情報によって、上陸できる惑星かどうかが判明する。上陸が可能な場合、上陸部隊を編成して探査することに。惑星では、未知の文明や異星人との出会い、そして脅威の手掛かりが待ち受けている。ときには戦闘が発生する可能性も……。ちなみに、惑星で希少な資源を見つけた場合は、発掘することもできる。採取した資源は、武器やノルマンディー SR-2号などのアップグレードに利用できる。
航行と探索を公式サイトでチェック!>>キモとなる戦闘は、TPS(三人称視点シューティング)でリアルタイムに進行する。敵と遭遇すると、シームレスに戦闘が始まり、プレイヤーは、武器や特殊能力を使って敵を倒すことになる。銃器は、アサルトライフル、ピストル、サブマシンガン、ショットガン、スナイパーライフルといったバラエティーに富んだ 5 系統が用意されており、“アビリティ”と呼ばれる特殊能力では、さまざまな能力を駆使できる。さらには、ともに戦う部隊メンバーに指示を出すことも可能に。自分はどの武器を使って、仲間にはどのように指示をだして……と、戦略性に富んだ幅広い戦いかたができるのだ。
使用する武器はアップグレードが可能。調査で上陸する惑星のショップに行くと、高性能な武器が売っているケースが多い。武器の性能を高めるパーツが売られていることも。さらに、ノルマンディー SR-2号の研究室で、強力な武器やアップグレードパーツを開発することも可能だ。
戦闘は、部隊単位での行動が基本となる。メンバーはそれぞれの判断のもとに行動することになるが、プレイヤーが指示を出すこともできる。メンバーには、それぞれ異なる戦闘スタイルを設定することができ、効率のよい戦いかたを仕掛けることも可能に。
戦闘の詳細を公式サイトでチェック!>>本作の大きな目的のひとつは、ノルマンディー SR-2号に搭乗する優秀な人材を集めること。銀河中からさまざまな分野のエキスパートを探し、仲間にすることで、部隊をより強力にしていくことになる。とくに、クルーとの交流を図ることは、リーダーであるシェパード少佐の大切な仕事のひとつだ。そのためのもっとも有効な手段が“会話”だ。シェパードは、クルーたちとの会話を重ねていくことで、少しずつ信頼関係が築かれていくことになる。クルーとの“絆”が、未知の世界への冒険では必須になるのだ。そして、クルーとの“絆”を深めることで、その相手が異性だったら、さらに深い関係になることも……。クルーと素敵な関係を築くことも、本作の大きな楽しみのひとつだ。
前作の『Mass Effect(マスエフェクト)』をクリアーしたプレイヤーは、そのセーブデータを『2』に引き継ぐことができる。主人公であるシェパードの外見や経歴といった基本データはもとより、前作で築いた各キャラクターとの関係も継続される。前作のミッションやサブクエストで、主人公がどのような行動を選択したのかもしっかりと引き継がれるので、前作のプレイヤーからしてみれば、よりダイレクトに前作の“続き”として楽しめることに! さらには、データの引き継ぎを行うと、前作をクリアーした時点でのレベルに応じて、『2』でのゲームスタート時に、経験値(XP)お金(クレジット)が付与されるなどのボーナスも。本作で初めて遊ぶという方でも心ゆくまで楽しめる『Mass Effect 2(マスエフェクト2)』だが、前作をプレイしておくと、さらにストーリーは深みのあるものになるのは間違いない。