『コリン・マクレー: ダート2』は、ラリーを始めとしたオフロードモータースポーツ全般の競技が収録されたレースゲーム。世界各国の都市で行われるレースでトップを目指し、世界最高峰のダートドライバーとなることが目的だ。本作に収録されているレースモードには、一般的なラリーより過激なものが多数含まれており、最近欧米で流行しているエクストリーム(過激な)スポーツ“X-GAMES”のエッセンスもふんだんに取り込まれている。
 そもそもこのシリーズは、WRC(世界ラリーチャンピオンシップ)をモチーフにしたレースゲーム『コリン・マクレーラリー』シリーズの正統進化作である。本作を手掛けるコードマスターズは、前述のシリーズや『レースドライバー』シリーズなどで、レースゲームファンからは高い評価を受けている会社。そのコードマスターズ社が近年、独自に作り上げた最新のゲーム開発エンジン“EGOエンジン”を導入し、鳴り物入りで制作されたのが、この『コリン・マクレー: ダート2』なのである。同システムにより、現段階で世界最高水準と言ってもいいほどの、スピード感溢れるオフロードレースが堪能できる。
 ちなみに、本作のタイトルに名が冠されているコリン・マクレーとは、WRCで活躍したドライバーのことだ。WRCドライバーとしてつねにランキング上位に名を連ね、’95年にはWRCドライバーズチャンピオンを獲得。通算勝利数25勝という史上3位の成績を2007年のWRC開始時点で残しつつも、同年にヘリコプター事故で亡くなってしまった。
 そんなコリン・マクレーの最後の弟子とも言える、ケン・ブロックが本作を監修している。オフロード走行時の挙動やコース設計に対するアドバイスなど、彼の知識が本作には大きくフィードバックされており、そのリアリティーに関しては折り紙つきだ。
コリン・マクレーがX-GAMESに出場した際のチームメイト。現在はラリーアメリカのスバルラリーチームの一員として同レースに参加。X-GAMESに参加した際、ド派手な走行と刺激的なスタントを行ったことから、一躍有名となった。
 
 
本作に収録されているコースは、世界各国の都市や名所をモチーフにしたものばかり。風光明媚な大自然の中を走ることもあれば、市街地を駆け抜けることもある。きっちり“コース”として存在しているものばかりではない。オープンかつ広大なフィールドが用意され、現実のラリーのように独自にショートカットや最短ルートを捜し出し、ゴールへ向かって走るようなこともできるのだ。遊べるレースモードも多彩で、それぞれのモードによって走りかたを微妙に変えてレースに挑む必要があるだろう。ここでは、これらのコースやモードについて、その詳細を解説していく!
コースは渋谷駅周辺がモチーフになっているが、そのすべてが土まみれのオフロードコース。市街地ならではのテクニカルなレイアウトなので、ドライバーの力量が問われることになる。
アメリカ西部にあるユタでは、大峡谷の中を走ることになる。断崖絶壁も多く、ミスをしてコースアウトすれば、現実なら命を左右する大事故への発展は間違いない。それがゲーム中であっても大きなタイムロスとなるのは確実だ。 ロサンゼルスに実在する、世界最大級の人工ヨットハーバー。入り江独特の入り組んだ地形を駆け抜けるこのコースを走ると、まるでF1モナコグランプリを走っているような感覚にとらわれるだろう。鮮やかな光の中でのナイトレースも楽しめるぞ。
現在では休止している、バタシー発電所跡がモチーフ。この発電所跡の敷地もコースとして収録されている。巨大な煙突が立ち、工場然とした雰囲気は、刑事ドラマや特撮のロケ地として登場しそうなものだ。 バハ・カリフォルニア半島をモチーフとしたコース。半島で最大規模の観光都市である、エンセナダという港町をコースの中心に据えている。走行中には、美しい豪華客船が見えることもあるだろう。
国内最大級のベレビト山脈の南部に位置する、マリ・アラン周辺がモチーフになっている。山岳地帯なだけに、細い道やタイトなコーナー、急激なアップダウンなどいくつもの難所が点在するテクニカルなコースだ。 映画『グラディエーター』のロケ地でもある世界遺産、アイット・ベン・ハドゥを始めとした、伝統的な建築様式の集落の中を駆け抜けていくコース。降水量も少なく乾燥した気候であるため、砂塵の中を走ることになるだろう。
特徴的な熱帯雨林をベースに作られたコース。ここを走る際は、水たまりやぬかるみが大きな敵として立ちふさがる。泥などで視界が遮られやすいので、瞬時にコースを分析して走行することが重要になりそうだ。 うっすらとした霧に包まれたこのコースは、陽朔(ヤンシュオ)という観光地がモチーフ。人気観光スポットで国家重点風景名勝区にも指定されている漓江(リージャン)周辺とそこにかかる長い橋を爆走しよう。
 
大きく曲がったコーナー、ころころと変わる路面など、さまざまな地形を走る。タイトなコーナーも多数あり、高い技術が要求される。現実のラリーと同じく、1台ずつ時間差でスタート。前後をライバルに挟まれて走行することになる。   ラリー同様に1台ずつのスタートとなるレース。コースはオープンフィールドとなっており、レース距離も長距離となっている。最高速度が勝敗を決することが多いため、エアロパーツを装備したマシンが使われる。
 
ステージに設置されたポイント間を複数のクルマで競いながら走る。ポイント間のルートはどのように走行しても問題ないため、ショートカットなどに挑戦することで有利なレース展開を作り出せる。   ダートサーキットでのレースではあるが、コースには難易度の高いコーナーやジャンプ台などが複数設置されるテクニカルなレース。スタートは全参加車が同時の発走となるため、スタートダッシュとミスのない走りが勝利のカギを握る。
 
ラリーに比べると比較的平坦な路面で行われる。舗装路が混ざったコースが中心になっており、スピードがほかのレースよりも高くなりやすく、展開も速い、短期決戦のイメージが強いレースだ。   タイムオーバーにならないように走行するレース。コースの各地に配置されたゲートに接触することでタイムボーナスを獲得できるので、これを的確に稼ぐことがレースの勝敗を分ける。
 
コースを周回していくのだが、走行区間ごとに順位に応じたポイントを獲得できる。これを累計していき、ゴール時にもっとも多いポイントを獲得していたドライバーが勝者となる。つねに上位を走ることが重要になるレースだ。   一定時間が経過するごとに最下位が失格になっていく勝ち抜き戦。これもドミネーションと同様に、なるべく上位を走ることで突然の失格を回避することができる。レース序盤の混戦をいかに抜け出すかが重要になる。
   
多数のレースで経験を積み、評価が上がると参加できる大会。各種のレースでもレベルの高いものが用意されているため、持てる技術のすべてを投入しないと勝利を収めることは難しい。    
 
  本作を制作したコードマスターズ社の別シリーズのレースゲーム『RACE DRIVER GRID』で初お目見えし、本シリーズには初めて搭載されることになった“フラッシュバック”機能。これは、機能を発動させると時間を数秒間巻き戻せるというもの。クラッシュやコースアウトなどをしてしまった際に使用することで、前述の失敗をなかったことにできる非常に便利なものだ。使用回数に制限はあるものの、コースを走りきるには十分な回数が用意されているため、初心者でも遊びやすくなるというメリットを持つ。コードマスターズ社の影響か、この手の機能は最近の欧米発のレースゲームに収録されていることが増えており、『コリン・マクレー: ダート2』もその流行をしっかりとフォローしている。 ↑→大きくコースアウトしてしまった! このままではマシンに大きなダメージを受けてしまう……。しかし、フラッシュバック機能を使えば、ダメージなしでレースを続行できるぞ。  
 
本作に収録されているマシンは、基本的に実在のクルマをオフロードレース用にチューニングしたものとなっている。Subaru Imprezaや Mitsubishi Lancer Evolution IXなど、ラリーなどではおなじみの車種はもちろん、オフロードレースに特化したバギー、Dodge Ramのようなピックアップトラック(開放型の荷台を持つクルマ)なども収録している。下記では、本作で駆ることのできるマシンを紹介していく!
レースによって出場できるマシンは異なる。いくつかのマシンには、複数のレースカテゴリーに出場することができるものもあるが、同じマシンを選択しても、出場するレースによってクルマの性能や形状が変化する。たとえば、ラリーに出場するマシンよりトレイルブレイザーに出場するマシンのほうがエアロパーツが豊富に装備され、トップスピードもグンと上がる……などの違いがあるのだ。形状の変化については、写真をクリックしてその違いを確認してほしい!
●車種リスト
社名 車種名 社名 車種名
SUBARU Subaru Impreza STI Group N MITSUBISHI Mitsubishi SHI Racing Lancer
NISSAN Nissan 350Z VOLKSWAGEN VW Race Touareg 2
PONTIAC Pontiac Solstice GXP BOWLER Bowler Nemesis
BMW BMW Z4M Coupe Motorsport HUMMER Hummer H3
MITSUBISHI Mitsubishi Eclipse GT FORD Kincaide Ford F-150 Trophy Truck
MITSUBISHI Mitsubishi Lancer Evolution IX CHEVROLET Chevrolet Silverado CK-1500
MCRAE Colin McRae R4 STUKA TT West Coast Choppers Stuka TT
MITSUBISHI Mitsubishi Lancer Evolution X DODGE Dodge Ram Trophy Truck
SUBARU Subaru Impreza WRX STI HERBST Herbst Smithbuilt Buggy
DODGE Dodge Power Wagon PORTER PRC-1 Buggy
HUMMER Hummer HX DEJONG Dejong MXR
TOYOTA Toyota FJ Cruiser ICKLER Brian Ickler Buggy
HONDA Honda Ridgeline    
 
 

 レースゲーム『コリン・マクレー』シリーズはプレイステーション2時代に大いに遊び、ラリーを取り扱ったレースゲームとして個人的にかなり高い評価をしていた。乗り物に強い筆者だが、前述の作品ではラリーらしい細かい振動をドライバーズビューでしっかり再現していることに舌を巻き、ついでにクルマのゲームで初めて酔ったことを覚えている。コリンの事故死以降は、喪に服したわけではないものの、なんだかしばらく遊ばなくなってしまっていた同シリーズだった。しかし、本作はXbox 360で体験版のダウンロードが100万アクセスを超え、非常に評判がいいというエピソードを聞き「ああ、相変わらずいいものを作っているんだな」と感じていたところで、奇遇にもいち早くプレイできることになった次第だ。

 操作感はそれなりにリアルでありつつもゲーム寄り。だからと言って爽快感だけを重視した作りではなく、爽快感とリアリティーを見事に両立させている恰好だ。これは近年のコードマスターズ社特有のバランス感覚であり、同社名義による日本初のタイトル『RACE DRIVER GRID(レースドライバー グリッド)』をプレイした感覚に非常に似通っている。コントローラーでプレイするとハンドルが非常に敏感に反応するため、慣れるまではコーナリングに少々悩まされる。しばらく走ることで十分アジャストできるレベルではあるのだが、正直言ってステアリング型コントローラーでのプレイをお勧めしたい。オフロードでドリフトをバンバン決めながら走るゲームであるがゆえに、微調整が効くステアリング型コントローラーで遊んだほうが確実に楽しくなるからだ。

 路面の勾配が露骨にマシンの挙動を乱してくる点やライバルカーによるプッシュには苛立ちを感じることもあるが、本作に採用されたフラッシュバック機能でミスを帳消しにできることを考えると、なかなかいいハードルの高さであると感じる。このハードルがあまりにも低すぎると、レースとしての緊張感がまったくなくなってしまうからだ。とは言え、フラッシュバックの使用回数とライバルの強さなども難易度によって大きく変化するため、身の丈に合った難易度を選択していれば、初心者から上級者まで楽しむことができる。難易度を下げるデメリットはレース後に獲得できる賞金や経験値が若干低下する程度なので、難しいと感じたら、ガンガン難易度を下げてしまって問題ない。ちなみに、デフォルトとなっている難易度“カジュアル”でプレイする場合、それなりにレースゲームに自信があるプレイヤーなら、コースを覚えた瞬間に1位を連発できる程度の感覚だ。

 肝心のレースだが、種類が豊富で非常に楽しめる。“ラリー”は非常にストイックなモードで、筆者の記憶にある『コリン・マクレー』シリーズの感覚を思い出させてくれるような仕様だ。そうかと思えば、ライバルカーとバトルをしなければならないレースに関しては、相手にクルマをぶつけてでも前に出るという、闘争心むき出しのバトルが楽しめる。オプションでダメージ設定も選択できるので、「派手にぶつけまくっても1位を取りたい」という人は、ダメージをオフにしてしまえばいいだけだ。ボディーは破壊されるが、性能の劣化はないというモードも存在するので、パーツを飛び散らかすクラッシュも楽しみたいという人は、このモードを選択するといい。

 本作でとくに注目していただきたいのは、水の表現だ。本作ではコースのあちこちに水たまりがあるのだが、これが非常にヤバイ。うかつに突っ込むと減速してしまう……というのは、ある程度レースゲームをプレイしている人なら想像できると思うのだが、その際にタイヤの向きがまっすぐでないと、激しい水の抵抗でこれまでのレースゲームでは考えられないほどの減速となる。さらに、ドライバーズビューでプレイしていると、水たまりはより凶悪なトラップに変化する。水たまりに突っ込むことでフロントガラスが泥水で完全に遮られてしまい、コースアウトやクラッシュを“激しく”誘発する。実際にドライバーズビューで走っていると、この泥水が本当にストレスで「多少走行ラインを変えても、絶対に水たまりには入ってやるもんか!」と思わせる。これは、ストレスでありつつもラリーの過酷さを見事に表現しており、すばらしくリアリティーのあるグラフィックが生み出した産物だ。

 ゲーム中のアナウンスを、表示される文字ではなくほとんどを音声で行うシステムも『RACE DRIVER GRID(レースドライバー グリッド)』から踏襲されている。実際にプレイしてみると、これが驚くほどモチベーションが上がる要素だったりするので、これはぜひとも体験していただきたい。

 レースゲームと一概に言っても、特定のレースカテゴリーだけを遊べるものであったり、リアルなシミュレーターであったり、対戦に特化していたりと、いろいろなものが存在する。そのなかでも本作は、オフロードレースに特化した、かなりクオリティーの高いレースゲームであることは間違いない。たくさんのレースゲームを仕事兼趣味でプレイする筆者が言うのだから、間違いない(はず)! まずは、ちょっと騙されたと思って遊んでみていただけると幸いだ。体験版をダウンロードできる環境なら、タダだしね!

著者紹介
齋藤モゲ
元週刊ファミ通編集者で現フリーライター。ファミ通.comにおいては、クルマ系ゲームの記事を多く担当させていただいています。アザース! どちらかというと、ゲームゲームした感じのレースゲームより、シミュレーター寄りのレースゲームが好き。だけど、基本的にはファミ通本誌でRPGの記事に首を突っ込むくらい、ゲームに関しては雑食。でも肉食系男子。どうでもいいですね。
 
   
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