オンラインRPG『ファイナルファンタジーXIV』(『FFXIV』)の大型アップデート、パッチ6.3が、2023年1月上旬に公開される。

 このパッチ6.3では、第十三世界であるヴォイドにまつわるメインストーリーが引き続き展開。ほかにも、24人向けコンテンツであるアライアンスレイド“ミソロジー・オブ・エオルゼア”の第2弾として“喜びの神域 エウプロシュネ”が登場し、パッチ6.35ではディープダンジョン第3弾となる“オルト・エウレカ”が実装されるなど、膨大なコンテンツが追加。さらにパッチ6.3の公開から2週間後には『FFXIV』の最難関コンテンツである“絶”シリーズ第5弾の実装も予定されている。

『FF14』パッチ6.3インタビュー。“喜びの神域 エウプロシュネ”、“絶”シリーズ第5弾、ナイトの調整など、気になる要素を吉田直樹P/Dに直撃!

 今回は、そんな気になるパッチ6.3の情報を吉田直樹プロデューサー兼ディレクターに直撃。パッチ6.3で実装予定のコンテンツを中心に注目ポイントをうかがった。

 なお、本インタビューはファミ通ドットコム、電撃オンライン合同で実施。今回の記事で触れられていない内容については電撃オンラインで掲載されているので、そちらもあわせてチェックしてほしい。

※本インタビューは2022年11月22日にリモートにて実施されたものです。

吉田 直樹(よしだ なおき)

スクウェア・エニックス 取締役執行役員 第三開発事業本部長。『ドラゴンクエスト』シリーズ初のアーケードタイトルである『ドラゴンクエスト モンスターバトルロード』シリーズのゲームデザインとディレクションを担当。2010年12月に『ファイナルファンタジーXIV』のプロデューサー兼ディレクターに就任。現在、『ファイナルファンタジーXVI』のプロデューサーも兼任している。文中は吉田。

パッチ6.3のメインストーリーは起承転結の“転”

――吉田さんは11月14日からパッチ6.3の全体チェックに着手されたとのことですが、現時点でどれくらいまで終えられているのでしょうか?

吉田まだ2割ぐらいですね。ユーザーインターフェース(UI)まわりはすべて見終わってフィードバックをし、その部分の修正の最終確認待ちという状態です。パーティリストへのバフ/デバフの残り秒数表示や、ポートレートの新機能といった部分ですね。あとは3つ目のUIタイプへの切り替えについても、データ確認を行っています。

 ほかにも、無人島開拓に対するプレイヤーの皆さんからのフィードバックの対応や、ギャザラー、クラフター系のアップデート、ハウジングの追加アイテムの確認などがひととおり終わっている感じです。またパッチ6.3のチェックとは関係ないのですが、開発名称で“ホワイトボード”(※)と呼ばれているものの中間確認もしています。こちらはまだリリース時期はお答えできませんが……。

※ゲーム内で絵が描ける機能のこと。第8回14時間生放送で検討中であることが語られていた。

――バトルコンテンツのチェックはこれからでしょうか?

吉田バトルコンテンツでは、“ミソロジー・オブ・エオルゼア”の第2弾である“喜びの神域 エウプロシュネ”の1回目の24人通しプレイ、開発内では「仮組チェック」と呼ばれるものが実施され、フィードバックを行ってその対応を待っている状態です。新たなインスタンスダンジョン(ID)の“雪山冥洞 ラピス・マナリス”のチェックは終わり、難易度もギミックもFIXした状態になりました。

 今日、このインタビューのあとに“絶”シリーズ第5弾の演出込みの全通しのチェックをひとりで行って、さらに“クリスタルコンフリクト”の新ステージ上での対戦をくり返してギミックの発生間隔や値を確認する予定です。あとはPvEの各ジョブの調整内容をひとつずつ机上で確認し、いったんこの時点で指摘がないかを確認する、というのが今日のスケジュールになっています。数値の調整は平行して走っていますので、僕の確認がないと進まない、ということはないので、ご安心ください(笑)。 その後も延々といろいろなもののチェックの予定が組まれており、スケジュール表がそれらで埋め尽くされていますね……。

――かなりヘビーなスケジュールですね……。パッチ6.3はかなり濃密なアップデートとなりそうですが、まずはメインストーリーに関してうかがいます。従来のX.3のタイミングですと、ちょうど中間地点としてそれまでの物語にひと区切りがつくケースが多かったのですが、今回は“新たなる冒険”ということで、前回から引き続き物語が展開して、6.4、6.5へと続いていくイメージでしょうか?

吉田6.3で物語の大きな区切りがつくということはないです。むしろ起承転結の“転”に突入するというイメージだと思っていただければよいでしょうか。

――パッチ6.2で光の戦士たち一行はいったん原初世界へ帰還しましたが、今回も第十三世界(ヴォイド)が物語の中心になるということは変わらないのでしょうか?

吉田パッチ6.3で主軸となるのは、引き続き第十三世界のヴォイドを取り巻く物語です。巻き込まれる形で原初世界に連れてこられたゼロというキャラクターが、エーテルがたくさんある状態の世界や人々に触れて、自身の考えかたに影響を受けていく。逆に原初世界側にも、ゼロから気付きを得る人々がいるかもしれません。それとあわせて「第十三世界に消えてしまったアジュダヤを捜索していく」という目的は変わらず、そのために活動するストーリーになっています。

 そして、いよいよゴルベーザと名乗っている人物の目的は何なのか、それに合わせて四天王と呼ばれている者たちとの激闘も続いていきます。さらに注目なのは、『FFXIV』における“NPC側の主人公”とも言える、ルヴェユール兄妹です。これまで、アルフィノとアリゼーが2パッチ連続でメインストーリーに登場しないということはありませんでした。そんな彼らがいよいよメインストーリーに復帰するのか、あくまでゲストとして登場するのかという部分にも注目しながら、物語を楽しんでほしいと思います。

 そのうえで新キャラクターであるゼロについても、現在の性格がどのように形成されたのかなど、もう一歩踏み込んで描いていきますので、そのあたりが見どころになるでしょう。

『FF14』パッチ6.3インタビュー。“喜びの神域 エウプロシュネ”、“絶”シリーズ第5弾、ナイトの調整など、気になる要素を吉田直樹P/Dに直撃!
『FF14』パッチ6.3インタビュー。“喜びの神域 エウプロシュネ”、“絶”シリーズ第5弾、ナイトの調整など、気になる要素を吉田直樹P/Dに直撃!
『FF14』パッチ6.3インタビュー。“喜びの神域 エウプロシュネ”、“絶”シリーズ第5弾、ナイトの調整など、気になる要素を吉田直樹P/Dに直撃!

――今回のパッチタイトルは“天の祝祭、地の鳴動”ですが、イメージ的にはメインクエストとアライアンスレイドの両方を指しているのかなと想像しています。この名称をつけられた経緯を教えてください。

吉田先ほどもお話しましたが、今回はパッチ6.Xシリーズの物語における起承転結の“転”にあたる部分で、すごくタイトルを決めづらくて……。いままでのX.3ですと、物語がひと区切りするタイミングでしたので、“クリスタルの残光”などのようなタイトルがつけやすかったのですが、今回は非常に悩みました。エオルゼア十二神が突き抜けた明るさを持ったキャラクターたちなので、「天ではお祭りをやっている」ということはすぐ決まったのですが、地はどうしようかと……(苦笑)。ただ今回はメインストーリーだけではなく、ディープダンジョンの最新作もリリースされるので、最終的にはそれらもイメージして名付けました。

――つぎに、6.3のコンテンツの大きな要素からうかがいます。まず新たな討伐・討滅戦については実装まで名称を伏せられるとのことですが、こちらはメインストーリーの中で発生するものなのでしょうか?

吉田はい。ですので、大方の予想では「どっちなんだ」という感じだと思いますが、だからこそ言わないでおこうかなと。

――あっちなのか、こっちなのか、それとも2体同時にくるのか……。

吉田それとも、まったく違うひねりかたをしてくるのか……(笑)。ただ、今回のストーリー自体は、出し惜しみをしていく感じのものではありません。結末を引き延ばさずに、怒涛の展開がくり広げられると思ってください。

――バトルコンテンツとしては、前回の“極バルバリシア討滅戦”の戦闘のテンポがよく、プレイヤーの皆さんに好評だったと思いますが、今回の方向性はどのような感じのものになりそうですか?

吉田まだノーマルしか実際にテストプレイを行っていないため、「極コンテンツの感触はこれで決まり!」とは言いにくいのですが……8人全員が個々のダンスを踊るようなイメージの “極バルバリシア討滅戦”とはちょっと違って、脳トレ要素あり、個人ギミックあり、各種タイプのギミックが入り乱れる、わりと正統派のバトルになるかと思います。

 もちろん、テンポのよさも前回の“(極)バルバリシア討滅戦の”評判の要因だったと把握していますので、そのあたりは担当者も気を付けて調整しています。ですので、急にスローテンポのバトルが展開するということはないのでご安心ください。ただ、“バルバリシア討滅戦”ほど“矢継ぎ早に攻撃をかわして戦う”ものではありません。もちろんこれから“極”のチェックで調整をしていくので、実装されたものを見たら「ハチャメチャなバトル」となっている可能性もありますが……(笑)。

――1戦あたりのトーテム数は、ここのところ2個のケースが多かったですが、こちらはいかがでしょうか?

吉田現段階ではまだ決定していません。難易度とクリアーまでの時間バランスしだいでは1個になる可能性もありますし、歯応えや演出も含めて時間がかかるなら2個にしますし、そこは調整を見ながら決めていきます。今後もこれは同じで、今後も常に2個になる、ということはなく、コンテンツの仕上がりや、周回しやすさなど、毎回それらを見極めて報酬数を決めていくつもりです。

“ミソロジー・オブ・エオルゼア”第2弾でも“神々たちのお祭り感”はそのままに

――つぎに“ミソロジー・オブ・エオルゼア”の新たなアライアンスレイドについておうかがいしていきます。前回の“輝ける神域 アグライア”は、これまでとはまた違った新たな雰囲気で好評だったかと思いますが、第2弾となる“喜びの神域 エウプロシュネ”はどのような方向性になるのでしょうか?

吉田前回の“輝ける神域 アグライア”については、僕たちが思っていた以上に好評の声をいただいており、とくにキャラクター人気の部分が強くて、すごく多くのファンアートも作成していただきました。神々どうしの掛け合いを4コマ風に書いてもらったりして、僕ら自身も楽しませていただきました。

 エオルゼア十二神というのは「エオルゼアに住まう人々のことが大好きでしかたがない」という存在なので、そのテンションは今回も維持しています。ただ、彼らが楽しくなるにつれて攻撃が激しくなるのが困りものですね……(笑)。ですから今回も前回と同様に、“お祭り騒ぎ”という感じでしょうか。その神々の中には“美しい、かわいいキャラクター”もいれば、“カッコイイけれど攻撃が苛烈なキャラクター”もいます。それぞれの戦う相手ごとにコンセプトを明確に分けていますので、バラエティーに富んだ戦いが楽しめるかと思います。また、それらの神々が、なぜそういった性格やスタイルになっていったのかなど、ストーリー面でもお楽しみいただけると思います。

『FF14』パッチ6.3インタビュー。“喜びの神域 エウプロシュネ”、“絶”シリーズ第5弾、ナイトの調整など、気になる要素を吉田直樹P/Dに直撃!

――前回は十二神が何を目的にして戦いを挑んでくるのかが謎のままでしたが、そのあたりは今回、多少なりとも見えてくるのでしょうか?

吉田メインストーリーと同じく、起承転結の“転”にあたる部分ではあるので、多少は見え隠れしてくるのではと思います。もちろん全容がわかるというわけではありませんが、プレイした方々のあいだで「こういうことなのかな?」とお話できるぐらいの情報量にはなるかと思います。

――1回目のテストプレイをされたということですが、バトルコンテンツとしての感触はいかがでしたか?

吉田初見24人でテストプレイをしたのですが、事前イメージより全滅回数が少なかったです。この難易度調整は難しいところでして……参加した開発チームのメンバーは、意図的に比較的カジュアルなプレイヤーを多くしたとはいえ、すごく気合いが入った状態でテストプレイに挑むわけです。それを基準としていいのかが悩ましくて……。最終的な調整の落としどころは、「実装初週にわちゃわちゃとしたプレイが楽しめて、だんだん慣れていくと落ち着いてまわりも見えてくる」というところです。今回もテスト回数を繰り返しながら、初見スタッフがいなくなる前に、うまく着地させたいと思います。

――アライアンスレイドは、とくに初回挑戦時に阿鼻叫喚になるのが楽しみだったりします。

吉田とはいえ、それを狙いすぎると今度は難しくなってしまいがちなので、従来のアライアンスレイドのような調整になるように気を配っています。前回の“輝ける神域 アグライア”はギミックの驚き、キャラクター性、マップの美麗さも含めて評判がよかったので、そこに近づけるようにうまく調整していきたいです。

『FF14』パッチ6.3インタビュー。“喜びの神域 エウプロシュネ”、“絶”シリーズ第5弾、ナイトの調整など、気になる要素を吉田直樹P/Dに直撃!

“絶”シリーズ第5弾は安易に難易度を下げず、かつ達成感を味わえるものに

――絶シリーズ第5弾がパッチ6.3から2週間後に実装されます。具体的なテーマの発表は12月に放送されるプロデューサーレターLIVE(PLL)の“パッチ6.3特集 Part2”で行われるとのことですが、現時点で何かヒント的なものをいただけないでしょうか?

吉田そんなには捻ってはいないので、多くの方が「これだよね」と予想しているものだと思っていただいて大丈夫かなと思います。「だったら、それをなぜ早く言わないんだ」とおっしゃる方もいるとは思うのですが、テーマを発表してから実装されるまでの期間が長すぎると、プレイヤーの皆さんの予想や期待感が拡散されるときに、それが確定事項のような形で広まってしまうことが多いと思っているためです。

 僕は企画と事前の仕様チェックはしているものの、実機で組みあがったものは今日、初めて通しで確認することになります。そのため、どういった形でギミックが構築され、どのタイミングで演出が入って、どんなゲーム体験をプレイヤーの皆さんにお届けできるか。そこのイメージが僕の中に明確にできあがっていないままテーマだけ話してしまうと、“皆さんの期待と実際にできあがったもののズレ”が生じてしまう可能性があります。ですから前回のPLLではあえて言わないようにしていました。

 おそらくこのインタビューが公開される翌日がPLLの“パッチ6.3特集 Part2”の放送になりますので、そこでテーマやどのようなゲーム体験ができるかを説明させていていただくと思います。テーマ自体は、先ほどもお話ししたように「あれかな」と予想しやすいかもしれませんが……(苦笑)。

――前回テーマを公開しなかったのには、そのような理由があったのですね。

吉田はい。決してもったいぶっているわけではないのです、ごめんなさい。ゲームに限らず、いまはマーケティングやPRにおいてお客様と情報のキャッチボールをするうえで、期待値やイメージのズレに敏感にならなければいけない時代だと思っています。それがテーマを発表しなかった理由だと思っていただければ。

――ちなみに“絶竜詩戦争”のときはどのような流れでテーマを公開されたのでしょうか。

吉田“絶竜詩戦争”に関しては、もともと5.Xシリーズで出すべく作っており、僕のチェックも進んでいたので発表が早かったという経緯があります。ただしその後、コロナ禍の影響で作業に遅れが生じてしまい、拡張パッケージ(『暁月のフィナーレ』)の制作を優先するか、“絶竜詩戦争”の制作を優先するかの瀬戸際となったため、“絶竜詩戦争”を延期させていただきました。そのぶん、どのような内容で、どこまでできあがっていて……というところをしっかりとお伝えしないと延期の納得性がないため、説明させていただきました。

――今回の“絶”の報酬ですが、やはり称号と武器、アドベンチャラープレートの装飾になるのでしょうか?

吉田はい。報酬の方向性は以前と同様になります。

――武器に関しては今回も派手なものに?

吉田じつは武器については、すでに“絶竜詩戦争”を作っている段階で「つぎの絶もあるから、ふたつの違いを踏まえてビジュアルエフェクトやデザイン、輝きかたを考えて」と言って作ってもらっています。今回も自慢しがいのあるグラフィックになっています。僕は元となる武器のデザインがかなり気に入っていたこともあり、今回挑戦し、武器を手にするであろう方がうらやましいです(笑)。

『FF14』パッチ6.3インタビュー。“喜びの神域 エウプロシュネ”、“絶”シリーズ第5弾、ナイトの調整など、気になる要素を吉田直樹P/Dに直撃!

――前回の“絶竜詩戦争”はこれまでの絶コンテンツの中でもっとも難しいと評判でしたが、今回の難易度はそれ以上になるのでしょうか?

吉田うーん、悩ましいですね……。正直、“絶竜詩戦争”のときはワールドファーストの方々がクリアーするまで、個人的にはあと1-2日ぐらいはかかるかなと思っていました。あれだけのギミックボリュームと戦闘時間、全体に対しての仕掛けを考えたときに、「グローバル全体で見たトップ層のプレイスキルは飛び抜けているな」と改めて感じています。

 “絶竜詩戦争”の調整時は、かなりギミック猶予がキツく、数値も厳しく設定されていたのですが、調整時に少しずつそれらを下げながらテストを繰り返しました。バランスとしてはとても良かったのですが、特定フェーズで我々の想定よりも効率的なギミック解法が発見されたことで、僕たちが想定していた難易度よりは少し下がったと思います。今回、どこまで踏み込むかは、今日以降に開始される8人でのテストプレイ次第です。

――これからの調整次第ということですね。

吉田ひたすら難易度を上げ続けるのもどうかという思いもありますが、“『FFXIV』史上最難関コンテンツシリーズ”という位置づけでもあるので、あまり安易に難易度を下げるつもりはありません。とはいえ、現状では”絶竜詩戦争”を最上位と考えており、「それを超えよう!」とは考えていません。あとはゲーム体験がすべてですので、実際にテストプレイを行って決めていくと思います。

――戦闘時間は従来の絶シリーズのコンテンツと同様に、20分前後ぐらいになるのでしょうか?

吉田それも最終調整中なので明言はできません。ただ極端に短くなるということはないでしょう。戦闘時間を長くするほどクリアーは難しくなります。たとえば数学の方程式ですと、その問題に必要な公式が多くなるほど難しくなりますし、そういった難しい問題を作ること自体は簡単です。ですが、それが“楽しいか”は別問題です。プレイしていて理不尽さを感じたり、人間の集中力の限界となるような難易度になったりすると、ゲーム体験としてはよくありません。戦闘時間に関しては、ゲーム体験としてクリアーしたときに、限界のギリギリ先にある歓喜、大声で「うおおおおおおお!」と声を出して達成感を味わえるものを目指していこうと思っています。

――つぎに、ディープダンジョン第3弾“オルト・エウレカ”についてお聞かせください。基本的なルールはこれまでのディープダンジョンと同様とのことですが、コンテンツ内で武器を強化する要素や、ランキング発表などの要素もこれまでと同様でしょうか?

吉田はい。基本的なディープダンジョンシリーズのシステムとしては“アメノミハシラ”でいったん完成していますので、ベースは同じだと思っていただいて大丈夫です。ただ、プレイヤーができる行動が増えていたり、フロアギミックが増えていたりと、ゲーム体験としてはさらにアップグレードされています。いっぽう8人で遊べるようになる、ソロのときのみ出現するフロアがあるといったような大きなシステムの変更はありませんので、あくまで純粋な正統進化だと思っていただければ。

――名称については“禁断の地 エウレカ“の名称の由来となった、古代アラグ帝国の迷宮のことと思われますが、どのようなものが待っているのかが非常に気になります。

吉田すでに『FFXIV』に存在している“禁断の地 エウレカ”以外で、「“エウレカ”でもうひとつ連想するとしたら……」という素直な想像をしていただいたものが、おそらくそのものズバリのイメージだと思います。実際にその中にどんなものが眠っているのか、なぜそこに訪れることになるかは、その目でお確かめいただけるとうれしいです。ストーリーのクエスト数は決して多くはないですが、ボスデザインやマップのイメージなどからもストーリーを感じられるようになっており、テキストも良いので、かなり上手くまとまっていると思います。ぜひ、最終層に潜む謎にも挑戦していただけたら嬉しいです。

――最深層チャレンジの難易度も気になるところです。

吉田“アメノミハシラ”がソロチャレンジをするにもちょうどよい難易度だったというお声をいただいているので、今回も最終的にはソロチャレンジをする人たちに楽しんでいただけるコンテンツにしたいと思います。最深部が高層階なのか、はたまた地中深くなのかは内緒ですが、遊びごたえが出るように気を配って調整していきます。

――ちなみにディープダンジョンのセーブデータのスロットは、現状の2個から増える可能性があるのでしょうか。

吉田すみません。あれは特殊セーブワークと呼ばれる、「特定のエリアでしか参照できない保存領域」を使っていて、保存できるデータサイズにかなり制限があり、現状非常にひっ迫している状態なのです。増やしてほしいというお気持ちは理解しているのですが、なかなか難しいところではあります。将来的にまだまだディープダンジョンシリーズが続くと思いますので、今後何かしら手は打ちたいとは思っています。

いまの『FFXIV』に合ったオーバーホールが行われるナイト

――新たな幻討滅戦についてもお聞きします。今回は“幻女神ソフィア討滅戦”が実装されますが、選出の理由を教えてください。

吉田単純な理由としては、前回の“幻魔神セフィロト討滅戦”に続き、幻討滅戦において、“三闘神”シリーズを始めるからです。そうなると「つぎはアレなのか」というお話になりますが……(苦笑)。

『FF14』パッチ6.3インタビュー。“喜びの神域 エウプロシュネ”、“絶”シリーズ第5弾、ナイトの調整など、気になる要素を吉田直樹P/Dに直撃!

――“極女神ソフィア討滅戦”は元祖“脳トレ”のイメージが強いです。今回注目してほしいポイントなどありましたら教えてください。

吉田ありがたいことに、現在では新たなプレイヤーの数がどんどん増えています。そんな新しく入ってくださった方々の中には、いわゆる“脳トレ系コンテンツ”の新しいものに触れてはいるけれど、そのもとになった“極女神ソフィア討滅戦”には未挑戦という人が少なくないと思います。

 “極女神ソフィア討滅戦”は、フィールドが振り子として揺れたり、そこからの落下を防ぐためにギミックの数を数えたりと、“脳トレ”コンテンツの元祖としてうまくまとまっていると思います。途中で出てくるザコ敵についてもロールによって役割が違っていて、コンテンツとしてすごくきれいにできあがっているなと。初心者は“ひとまず信じた人についていく”という動きもアリですし、それでクリアーできる場合もあれば、信じたつもりがいっしょに落ちていくこともあり……(笑)。経験者にとっても「ILが固定されると、こんなにきれいに(ギミックを)解かないといけないのか」と感じられるバトルとなっていますので、ぜひチャレンジしてみてください。

――“極女神ソフィア討滅戦”は2016年に実装されたコンテンツで、すでに6年も経過しているのですね。当時からプレイしていた人も懐かしさを感じながら楽しめそうです。続いてナイトのアクションが調整され、ローテーションが変更となる点についておうかがいします。なぜいまナイトに調整を加えるのか、改めて理由を教えてください。

吉田最初にお伝えしたいのが、「ローテーションに手を入れる」ことを目的とした調整ではないということです。「全面的にナイトというジョブのオーバーホールを行う」ことが主目的で、その結果、ローテーションも変わるというイメージです。

 そもそもナイトは、旧『FFXIV』の途中で僕が担当してから実装された、もっとも歴史の古いジョブのひとつです。それは『新生エオルゼア』にも引き継がれ、それをベースにアクションの追加や調整を行ってきました。ですがタンクロールの中でも大きな手が入ってこなかったジョブであるがゆえに、現在のプレイフィールがほかのタンクと比べて複雑なものになってしまっているのが現状です。たとえばほかのタンクと比べた場合、“ボタンを押せば即その効果が発動する”ものが少ない。アクションを実行したうえで何かをしなくてはいけない、そもそも条件を満たさないと発動しない、といったものが多くなっています。

――確かに、発動条件が必要なものや、発動してから回復効果を受ける必要があるものなど、ほかのタンクに比べてワンクッション必要な印象があります。

吉田さらに“遠距離から攻撃できるタンク”という特徴も引き継がれてきたのですが、最近のコンテンツでは、ボスのターゲットサークルを大きくするなどして、近接ジョブ全般のストレスをなくすようにしています。ボスの攻撃で離れるときも、極限まで粘って攻撃をすると、GCDが回っているあいだに攻撃範囲に戻れるようにする、などですね。その結果、ナイトの「離れても攻撃できる」という強み自体が薄れてきてしまって、逆に「バーストをしたいタイミングでバーストをしづらい」、「継続ダメージ(DoT)を中心にダメージを積み重ねていくため、ギミックでボスがいなくなるとダメージを稼ぎづらい」といったように、メカニクス的に現状のコンテンツに合わない部分が出てきました。

 そこで今回、いまの『FFXIV』のバトルコンテンツの作りかたにより適した形になるように、全体のオーバーホールをさせていただきます。その際、いまのスキルローテーションを維持しながらオーバーホールをやろうとすると、中途半端な調整になってしまう可能性が高い。ですから皆さんにはご負担をかけることにはなりますが、ローテーションが変わってしまうことを是として、そのかわりにきれいにオーバーホールをしようというのが、今回のナイトの調整意図となっています。

――調整によってコンボの自由度も高まるという認識でしょうか?

吉田ナイトをオーバーホールするときに、コンボを含めてどういったコンセプトに基づいて変えていくのかは、文章も含めてPLLでお伝えしたいと思っています。アクションの中身の数値については実際に遊んでもらわないと理解しづらいところなので、パッチノートが公開されるまで伏せさせていただきます。

――“ホーリーシェルトロン”などの防御バフに手を加えられる予定は?

吉田ほかのタンクに比べて使いづらい防御バフには手が入ると思ってください。

――つぎにPvPについてですが、 “クリスタルコンフリクト”に通称・からくり屋敷と呼ばれる新ステージが追加されます。PLLではユニークなスクリーンショットが公開されましたが、新ステージではどのようなギミックが用意されているのでしょうか?

吉田まさに今日が新ステージのチェック作業でして、ギミックの内容や発生頻度などは、そこで確認しないと何とも言えない状態です。次回のPLLの放送では、実際にプレイしてお見せできるかと思います。ただ、開発名が“からくり屋敷”ですので、ヴォルカニック・ハート以上に凝った仕掛けが作られています。その代わり、頻度を上げ過ぎないようにするなど、遊びやすさにも気を使っています。

『FF14』パッチ6.3インタビュー。“喜びの神域 エウプロシュネ”、“絶”シリーズ第5弾、ナイトの調整など、気になる要素を吉田直樹P/Dに直撃!
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――前回のPLLで公開されたスクリーンショットでは、カゲヤマが小判をばらまいていたのがすごく印象的でした。

吉田急にお立ち台のようなものが出てきて、そこで小判がばらまかれることになると思います。“ザ・フィースト”をやってくれていた方々は、マップの隅にメダルが落ちているのを発見して「メダルがあるぞ!」とざわざわしていましたが、そのあたりも次回のPLLで触れさせていただく予定です。

――前回のPLLでは青魔道士に関しての言及もありました。どのぐらいのタイミングでレベルキャップ開放になりそうかだけでも、わかるとありがたいのですが……。

吉田現状はパッチ6.3のことでいっぱいなので、回答までもう少しお時間をください……。ただ、僕たちが思っている以上に、プレイヤーの皆さんが青魔道士のアップデートを楽しみに待ってくださっていると感じました。SNS上でも「楽しみにしている」というコメントを拝見して、プレイヤーの方々の熱量も感じられたので、僕たちとしてもテンションが上がっています。いまはパッチ6.3の作業に集中していますが、それが終わったらもともと予定していた作業に戻るので、またつぎの情報が出せるタイミングまでお待ちいただけるとうれしいです。そんなにお待たせせずに、とは思っています!

武器強化クエスト“マンダヴィルウェポン”の続きは気楽に挑めるバランスに

――パッチ6.35では“帰ってきたヒルディブランド”クエストと、“マンダヴィルウェポン”クエストが実装されます。前回は物語的に連動していましたが、今回はそれぞれ独立した進行になるのでしょうか?

吉田いえ、今回もマンダヴィルウェポンを更に進行させるには、前提としてパッチ6.35のヒルディブランドクエストも進める必要があります。こちらは、ネタバレになるためあまり言えないのですが、登場人物の一部が絡んでおり……。ただ、サクッと楽しめる物語ですし、今回のヒルディは一段と無茶をやりましたので、ぜひご期待ください。

――前回はアラガントームストーン:天文のみで最初のマンダヴィルウェポンが作成できました。いよいよ今回からが武器強化の本番になると思いますが、どのように強化していくイメージでしょうか?

吉田今回のコンセプトとしては、特定のコンテンツに紐づけて何かをするというよりも、「いろいろなコンテンツをやっていけば自然と貯めていける、交換できるもの」と考えているので、あまり警戒されなくても大丈夫かなと思います。前回からそうなのですが、いろいろなジョブをプレイしてくださるのが現在の『FFXIV』の主流プレイスタイルとなってきているので、今回も複数ジョブでマンダヴィルウェポンの完成までがんばれるようなバランスになる予定です。ですからある程度気楽に挑んでいただいても大丈夫ではないかと思います。

――6.Xシリーズ全般で強化していくことや、最終的に到達するアイテムレベルのイメージも、いままでと同様でしょうか。

吉田はい。ビジュアルエフェクトの付きかたや、どのタイミングでどう強化していくかなどは、従来の武器強化コンテンツの流れを踏襲しています。

――並行して、“帰ってきたヒルディブランド”クエストも6.Xシリーズ全般で引き続き語られていく形でしょうか?

吉田はい。“完”と出るまでは続いていきます。少なくとも6.3ではまだ終わりません。むしろ、もっとたいへんなことになっていって、出てほしかったヤツや、出てほしくなかったヤツまで入り乱れてくると思います(笑)。

――PLLでもおっしゃっていましたが、前回のクエストで登場したコヨコヨの再現度はびっくりしました。

吉田あれは哲さん(野村哲也氏。コヨコヨが初登場した『FFVIII』ではキャラクターデザインを担当)が本当に丁寧にチェックをして指示も出していただきました。絶妙なアンバランスさは、もともと『FFVIII』のときに哲さんがこだわっていらっしゃったので、『FFXIV』のポリゴン数でも持ち味を消さずに作ることができたと思います。

開発チームが自主的に開発・実現した新生エリアの潜水

――先日のPLLでは、高地ラノシアが潜水可能になって刺突漁が追加されるということに驚きました。今後も『新生』や『蒼天』エリアなどにそのような要素が追加される可能性はあるのでしょうか?

吉田今回の潜水可能エリアや刺突漁の追加は、じつは僕が指示を出したわけではありません。僕らは拡張パッケージと大型アップデートを精密なスケジュールで作っていくチームではありますが、発注と発注の谷間に、手すきになるタイミングがあるのです。そこでは本来、自分の勉強の時間にあててもらったり、積みゲーを消化する時間にあてたりと、仕事はしつつも、少しひと息つくというか、決してサボるという意味ではなく、肩の力を抜いて業務をしてもよいのではないか、と思っているのです。しかし、どうやら担当者たちがそのタイミングのときに、「新生エリアに潜れるところを作ってみよう」と密かに作業を進めていたようなのです。僕も「潜れるようになりました」と言われて、「あれっ、いつの間に?」と(笑)。

――なんと、吉田さんからの指示ではなかったのですね。

吉田なんだか、相当前にコスタ・デル・ソルのフライングなどの対応をやっている時のマップチェックで、「いずれ潜れるところが増えていくと良いね」と言った記憶は微かにありますが……。『新生エオルゼア』当時のタイミングでは、PS3にも対応できるようにと、かなり厳しいレギュレーションでフィールドを作っていました。ですがいまでは、BG(背景グラフィック)的にそのレギュレーションを緩められたのも大きかったと思います。もちろんブロンズレイク周辺は泳ぐ、潜るなどの要素を想定していたエリアではありませんので、そのあたりの整合性を取りながら作るのは本当に大変だったのではないでしょうか。

『FF14』パッチ6.3インタビュー。“喜びの神域 エウプロシュネ”、“絶”シリーズ第5弾、ナイトの調整など、気になる要素を吉田直樹P/Dに直撃!

――景観の整合性を取りながら水中を作るのは苦労しそうです。

吉田つぎの拡張パッケージの作業が始まってしまうと、こういった要素にも手が回らなくなりますので、やれるところは少しでもやっておこうと作業を進めていたようです。『FFXIV』全体に存在しているプレイヤーの行動体験を広げていけば、まだ『新生エオルゼア』部分だけを遊ばれている人にも「こういったゲーム体験がある」ということが届けられる。そういうところを誰から言われるでもなく対応して、プレイヤーの皆さんのプレイフィールやゲーム体験を向上していこうとする姿勢は、『FFXIV』チームのとても良いところだと思います。

 裏を返せば、そういうタイミングがくれば開発チームは放っておいても、「新生エリアだけでなく蒼天エリアも……」と、作業の手が伸びていくはずです。ですからぜひパッチ6.3後は、刺突漁をしなくてもいいので高地ラノシアの水中に潜りに行って、スクリーンショットを撮ってSNS上で盛り上がっていただければと思います。そうするとスタッフのやる気も上がって「つぎはこのエリアもやろう!」となるはずですので。

やりたいことを思い切り詰め込んだパッチ6.3

――さて、いよいよ来年は“新生”から10周年という節目であり、さらにファンフェスも開催されていきます。現在計画していることやその進捗について、お話できる範囲でお聞かせください。

吉田やはり、いちばん大きいものとしては、ファンフェスティバルになります。ファンフェスティバルは4年ぶりにリアル&グローバルで開催します。プレイヤーの皆さんに直接お会いしたり、顔を見ながらお話をしたり盛り上がったりという機会は、僕らもすごく楽しみにしています。ご自宅で視聴されるという楽しみかたも含めて、ぜひ期待してもらいたいです。

 ほかにもまだ具体的なことはお話できませんが、いろいろな企業さんとの取り組みや、「ひとつのゲームでそんなことまでやるんだ!」というものなど、ゲーム内外に驚きと楽しさを振りまくことを仕込んでいます。そのあたりは年が明ければ順次見えてくると思いますので、ぜひ楽しみにしてください。

 またチケット争奪戦にはなってしまいましたが、12月のオーケストラコンサートから、THE PRIMALSのライブと合わせ、本格的にリアルイベントが再開する形になります。オーケストラコンサートは、『暁月のフィナーレ』までの総まとめというところもあって、そちらも10周年のコンテンツのひとつとして楽しんでもらえるように、フルスロットルでクオリティー高いものをお届けしようと思っています。そういった施策で皆さんと盛り上がりたいと思っていますので、ぜひ10周年の節目を楽しんでもらえたらなと思います。

――最後に、パッチ6.3をどのように楽しんでもらいたいか、光の戦士たちへメッセージをお願いします。

吉田今回のパッチ6.3では、ひさびさに「完全新機軸」というコンテンツはありませんが、全体のコンテンツボリュームとしては相当なものになっています。さらに内容的にはカジュアルにも、そして深くにも楽しめるアップデートになり、ディープダンジョンにソロで挑むという遊びも含めて、ありとあらゆるフィードバックに応えながら、僕らもやりたいことを思いっきり詰め込めたパッチだと思います。

 いままでのアップデート間隔より約2週間、3.5ヵ月のところを4ヵ月にさせていただいたからこそのボリュームを実現しつつ、不具合もできるだけなくし、しっかりと運営品質を保っていきたいと思っています。ですから一度に全部の要素をやろうとせず、まずは好きなコンテンツだけをプレイする形でもいいかもしれません。年末年始はほかのゲームを遊びながらお待ちいただいて、パッチ6.3がリリースされたらご自身のペースでどっぷり『FFXIV』をプレイしてもらえるとうれしいです。これから半月ぐらいで全部のチェックを終えられるように僕もがんばりますので、ぜひ楽しみにしていてください!