2022年9月15日~18日に千葉県・幕張メッセにて東京ゲームショウ2022が開催。3年ぶりのリアル開催となる同イベントで、ひと際気合が入っていたのがTHQ Nordicブース。欧州ゲームメーカーの雄として、『デストロイ オール ヒューマンズ!2 - リプローブド』や『AEW: Fight Forever』など5タイトルをプレイアブル出展し、来場者からの注目を集めていた。
なかでも人気だったのが、『Alone in the Dark』(アローン・イン・ザ・ダーク)。1992年にフランスのInfogramesより発売され高い評価を獲得した古典的サバイバルホラーのリメイク作だ。
東京ゲームショウ2022では、同作のプロデューサーであるTHQ Nordicのミヒャエル・ペック氏が来日。ファミ通のインタビューに応じてくれた。以下、その模様をお届けしよう。
2023年のプレイヤーに向けて新しいストーリーを作りたかった
ミヒャエル・ペック氏
THQ Nordic プロデューサー
――『アローン・イン・ザ・ダーク』に着目した経緯を教えてください。
ミヒャエル私たちTHQ Nordicでは、“何か新しいゲームがないか”ということでつねにタイトルを探し続けています。『アローン・イン・ザ・ダーク』を見たときに、「まさにこれこそがクラシックなゲームだ。ぜひ新しいものを作らなければ!」と感じたのです。2008年にXbox 360などで『Alone in the Dark』としてリリースされて以降、15年弱シリーズ作が途切れていたので、過去15年くらいよいゲームが出せずにいたので、「ぜひやりたい! いまこそ適切なタイミングではないか」ということで、今回リニューアルすることにしました。
個人的にも1作目の大ファンだったこともあり、今回好きだったIPに取り組めるということは、すごく名誉なことだと感じています。
――オリジナルのどんなところを魅力に感じていたのですか?
ミヒャエル当時、いろいろな意味で新しいゲームでした。グラフィック的な部分では、3Dのキャラクターがスムーズに移動できるというのは、当時すごく新しかったですね。固定カメラというのも新鮮でした。恐怖演出も秀逸でした。キャラクターにそれぞれバックグラウンドがしっかりと用意されているというのも新しかった。それまでにもゲームはたくさん遊んでいたのですが、『アローン・イン・ザ・ダーク』はとにかく新鮮なゲーム体験でした。
あとは、登場人物はふつうの人間なので、何かあれば死んでしまうという緊張感もいままでにはなかったかと思います。それまでにあったゲームはというと、パズルゲームだったりレースゲームだったりと、いわゆる“ファンゲーム”楽しむゲームが多かった。そんななか、緊張感を抱きながらゲームをプレイするというのが初めての経験で、それが『アローン・イン・ザ・ダーク』の魅力なのかなと思います。
――THQ Nordicが『アローン・イン・ザ・ダーク』のIPを取得したのは2018年でしたが、そこから開発は粛々と進められたのですか?
ミヒャエルそうですね。2019年の後半から開発はスタートしています。THQ Nordicでは、往年のIPをリメイクするときは、オリジナルに関わったスタッフになるべく参加してもらうようにしているのですが、オリジナルがリリースされたのが30年前ということで、当時のスタッフを捜すのには苦労しました。ディレクターのフレデリック・レナールさんを始め、2~3人くらいでしょうか。ほかのゲームに比べると、オリジナルゲームのスタッフに参加してもらうのは、今回なかなか難しかったです。
それからきちんとした質の高いグラフィックを実現できるチームを組むことにも、時間がかかったというのはあります。結果としてチームはいい仕事をしてくれています。
――オリジナルスタッフからは適宜アドバイスを?
ミヒャエルフレデリックさんはゲーム開発には参加してくださらなかったのですが、適宜アドバイスはいただいています。「雰囲気もいいし、見た目もいいね」とは言っていただいています。彼には今後もご意見をいただこうかと思っています。
――『アローン・イン・ザ・ダーク』を蘇らせるにあたって、どのようにしたいと思ったのですか?
ミヒャエルよくあるホラーゲームのように、単に歩き回っているだけだと退屈だと思ったんです。たとえば、部屋から部屋へ移動するステップすらも、おもしろいものにできたら……という思いがあって、緊張感があるゲームプレイにしたいということは意識しました。
あとは、ゲームのスタイルにも気を使っていて、ほかとは違うものにしたいと思っています。ホラーゲームというと、恐怖の対象が現れてキャラクターがつねに叫んでいるという印象が強いですが、『アローン・イン・ザ・ダーク』では雰囲気で恐怖にとらわれるような方向性を目指しています。
――精神的な怖さといったところでしょうか。
ミヒャエル本作はラヴクラフトのクトゥルフ神話をモチーフとしてはいますが、モンスターとの死闘を描くゲームではありません。主人公であるエドワードやエミリーは、銃の扱いは知っているものの、あくまで一般人であって、軍人でもないし武術のエキスパートでもありません。もちろん傷を受けることもあります。ふつうの人です。そんな彼らがモンスターと出会ってしまったときの緊張感を表現したいと思っています。
――本作は、“リ・イマジネーション”と謳われていますが、“リ・イマジネーション”で注力したポイントは?
ミヒャエルオリジナルゲームはあまりストーリー性がなく、ジェレミー・ハートウッドが自殺してしまったデルセト屋敷を調査するために、エドワードとエミリーが赴くというものでした。ゲームプレイも3.5時間程度となります。
2023年にプレイヤーに遊んでいただくにあたっては、もっとストーリー性を持たせたいと思っていました。オリジナルでは、ゲームを進めていく過程で、いろいろな説明書きが出てきたと思うのですが、今回“リ・イマジネーション”するにあたっては、そんな説明書きにあるいろいろな情報からストーリーを膨らませています。
たとえば、ドクター・グレイという人物は、オリジナルのゲームではノートの中に名前だけ出てきたのですが、本作では登場人物として出てきます。
オリジナルでは、ジェレミー・ハートウッドが自殺したことになっていますが、本作では失踪としています。オリジナルを最大限尊重しつつ、2023年のプレイヤーに向けて新しいストーリーを作りたかったんです。本作は“Love Letter to the Original(オリジナルへのラブレター)”を謳っていますが、そういう意味も込めています。
――今回、ストーリーも膨らませているとのことですが、ストーリーのテーマを教えてください。
ミヒャエルメンタルヘルス(心の健康)でしょうか。本作では、ジェレミーが診断を受けて、おかしいと感じて姪のエミリーに手紙を書き、探偵のエドワードに調査を依頼するところから物語が始まります。何がリアルで何がリアルではないのか……。
――その曖昧さも緊張感となりそうですね。ちなみに本作のプレイ時間はどれくらいになりそうですか?
ミヒャエルおおむね12時間くらいを想定しています。
――最後に、日本のゲームファンに向けてメッセージをお願いします。
ミヒャエル私たちは、『アローン・イン・ザ・ダーク』を世界のゲームファンにお届けするために、一生懸命制作中です。私たちも大好きなゲームなので、“クラシック”の名に見合ったゲームをお届けできるように務めていきたいと思っています。