『リネージュ2』。韓国のNCSOFTが2004年に世に送り出したPC用MMORPGだ。昔からPCゲームが浸透していた韓国では、文字通りの“国民的人気作品”。日本で言う『スーパーマリオブラザーズ』や『ドラゴンクエスト』のレベルで認知されているゲームである。

 そんな『リネージュ2』をベースにしたスマホRPGが、2021年3月24日にリリース予定の『リネージュ2M』だ。筆者は昔からのMMORPGファン。『リネージュ2』がスマホ時代にどう生まれ変わるのか、興味があった。

オンラインRPG『リネージュ2M』はRPGではない。いつでも転職可能なシステムによってRPGの呪縛から解放された先行プレイリポート
この記事は『リネージュ2M』の提供でお送りします。

※開発中の画面の為、一部実際の画面と異なる可能性があります。

 すでにPVやテレビCMも公開中。いずれも壮大な世界を感じさせつつも、謎めいた内容となっている。そのため、本作がどんなゲームなのか気にする『リネージュ2』ファンや新作を求めるスマホゲーマーも多いことだろう。

 そんな皆さんに、まずはテストプレイをさせていただいた筆者から、お伝えしたいことがある。

 筆者の個人的な視点から言うと、『リネージュ2M』はRPGではなかったのだ。

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不安と期待がないまぜになる不思議な感覚

 いきなり断言してしまって申し訳ない。少し乱暴だったかもしれない。わかりやすく言うと、『リネージュ2』のスマホ版、あるいはいまどきのスマホRPGのつもりで遊んだら裏切られたということだ。もちろん、いい意味で。

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UI(ユーザーインターフェース)などはスタンダードなスマホRPGに見える……のだが。

 RPGを略さずに言うと“ロールプレイングゲーム”。ロール(役割)を演じる(プレイング)ゲームという言葉通り、主人公の視点から物語を体験していくジャンルだ。物語の登場人物になったかのような感覚を味わえるのも特徴のひとつ。

 もちろん『リネージュ2M』でも主人公の視点に立つことにはなる。だが、筆者が味わったのは、俯瞰視点から主人公の冒険を導いていくような感覚だった。育成シミュレーションゲーム的とでも言えるだろうか。

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物語の中で必死に戦っていく登場人物たちを“神の視点”で見ているような感覚だ。

 プレイしていて疎外感を感じないのか、と不安になる人もいるかと思う。それが不思議と、俯瞰視点を意識してみるとおもしろいのだ。神の視点からでも、精緻なグラフィックで描かれる広大な世界を通して物語を楽しむことができる。この感覚は何なんだ。不安と期待がないまぜになり、少しずつ引き込まれていった。

 今回の先行プレイリポートでは、従来のRPGでは味わったことがない不思議な魅力の根幹について、ゲーム内容やシステムの解説も交えてお伝えしていきたい。

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パッと見の印象は“遊びやすいスマホMMORPG”

 まずは基本的なシステム面について触れていこう。操作方法はスマホRPGとしてはオーソドックスだ。画面左に仮想レバーがあり、各ボタンをタップして攻撃やスキル発動、アイテム使用などを行う。

 本作ではアクション操作はあまり求められず、スキルの使用も含めて戦闘はほぼオート。冒険についても、クエスト名をタップするだけで移動地に移動し、クエストに関わる戦闘や採集などをすべて自動で行ってくれる。

 また、敵の攻撃でHPが減った場合は回復用のポーションを自動使用。いわゆる“事故死”がなくなるので、この辺は便利になったなあという印象だ。

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画面右上のクエスト名をタップするとクエストは自動で進行。クエスト名の右のワープアイコンをタップすると、アデナ(所持金)を消費してクエストの目的地に一瞬で移動できる。
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ショートカットに登録したスキルやアイテムは、下方向にドラッグすることでオート使用状態になる。こうするとリキャストタイムが終わるたびに最速で自動使用される。

 プレイヤーが操作するキャラクターは、ゲームスタート時に種族と職業を選択。外見のカスタマイズはなく、また性別も固定だ。各種族ごとに防御寄りの前衛、攻撃寄りの前衛、暗殺者タイプの中衛、射撃タイプの後衛、攻撃寄りの魔法後衛、回復・支援寄りの魔法後衛と、RPGではおなじみのタイプの職業が用意されている。

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いつでも可能な“転職”が生む新鮮な感覚

 キャラメイク要素が少ないと思われるかもしれないが、これは本作の転職システムにも関わる部分だ。RPGで転職といえば、“基本職でレベルを上げてから上級職にクラスチェンジ”というイメージがあるかと思うが、本作ではその概念から違う。

 本作の転職は、いつでも、好きなタイミングで、所有する種族・職業にチェンジできる。もはや“変身”である。

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本作の職業はレアリティー付きのカードのような形でコレクションされる。
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さっきまでエルフの女騎士として戦っていた主人公が、一瞬でダークエルフの男の二刀流使いに転職。種族や性別などが根幹から違ってくる。

 一般的なRPGと比べてかなりぶっ飛んだ転職システムではあるが、変身できる理由はきちんと物語中で説明されている。本作の主人公は“継承者”という長年の眠りから目覚めた存在だ。だが、その記憶や使命感についてはあやふやな様子。この辺はゲームを進めるうちに語られるのだと思う。

 ほかの姿に変身できる理由は“継承者”という立場にある。その語感通り、継承者はかつての英雄たちの記憶や能力を借り、その身に宿らせることができるのだ。あやふやな存在であると同時に、だからこそほかの英雄への完全な転職(変身)が可能という設定には唸らされた。

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継承者は“エティス”という悪の存在に対抗するべく、長き眠りから起こされた存在。『リネージュ2』をプレイしていた人にはピンとくる名前などもあるだろうが、基本的にはプレイヤーも継承者と同様に「何がどうなってるの?」という立場に置かれる。

 ダイナミックな転職のシステムが、実際のゲーム内ではかなりおもしろく活用できる。たとえば、スキルこそ強力だがMPの消費が激しい魔法使い系の職業はあっという間にMPが枯渇する。その場合はMPを消費せずに敵を倒せる近接職に転職し、MPが回復するまで暴れてから、また魔法使いに戻ればいい。

 転職は敵とのオートバトル中でも、とくにリキャストタイムなどはなしに無制限で可能。対人戦は未体験だが、こちらが遠距離型の職業だと思った相手が近付いてきたところで近距離型の職業に転職して迎撃するなど、対人戦において重要となる職業の相性や、苦手を克服する使いかたもできそうだ。

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レアな職業は、この世界における特定の英雄そのもの。膨大な数の姿に転職できることで、キャラクターカスタマイズがない本作でも多彩な見た目を楽しめるわけだ。

 なお、各職業には固有の能力値ボーナスがあるほか、伝承者本人もレベルアップするたびに各能力値にボーナスを割り振ることで、ステータスを自由にカスタマイズできる。

 最近のMMORPGではスキルポイントの割り振りは多いが、基本となる能力値は自動で成長していくタイプが主流だ。古参MMORPGプレイヤーにとっては懐かしく、若いゲーマーからしたら新鮮だろう。

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STR(力)、INT(知力)、DEX(器用さ)など、MMORPG黎明期のタイトルではおなじみだった能力値が並ぶ。
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スキルは店や製作で“スキルブック”を入手して習得。シンプルな作りだ。

 STRに極振りして接近戦に特化するような“ステ振り”を楽しめるわけだが、伝承者自身の能力値と入手した職業の乖離が見られることもある。たとえば、STR極振りキャラでINTタイプの魔法使いの職業を使うのは、さすがに相性が悪い。とはいえ、ふつうのフィールド狩りではそこまで能力値が問われる場面もなさそうなので、気に入った職業で楽しめばいいとは思う。

 筆者の場合は取材用に用意してもらったかわいいキャラが気に入ったものの、ステ振りの関係で微妙に与ダメージが伸びなかった。そこで活躍するのが『リネージュ2』でおなじみの“ソウルショット”である。攻撃にダメージボーナスを乗せられる便利な消耗品だ。

 大量に積んで自動使用をセットすれば戦闘効率が飛躍的にアップ。ソウルショット自体も強化できるので、能力値が噛み合わない職業でも、問題なく敵に有効打を与えられる。

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そもそもレアな職業は攻撃速度がかなり優秀。強化したソウルショットと攻撃速度が合わさることで、能力値なんて関係ないとばかりの殲滅速度を叩き出せる。
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レア職業は複数の種類の武器を装備できるので、いろいろな戦いかたを試せるのがおもしろい。さらに、特定のスキルを一段階パワーアップさせる“覚醒”能力も持っている。

 レアな職業はダブった職業を合成することでランダム入手できるほか、課金通貨によるいわゆるガチャで入手できる可能性がある。これらで自分の伝承者の能力値とかみ合わない職業が出てくると、ちょっと残念な気持ちになってしまうのはたしかだ。

 だが、「せっかくだからこのレア職業に適したサブキャラクターを作ってみよう!」と考えるのもアリだと思う。特定の職業ばかりでプレイしていると視野が狭くなりがち。プレイスタイルを広げることでさまざまな発見があるのもMMORPGの魅力だ。

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職業の所有状態は、同アカウント内のキャラクター(初期状態では最大3体まで作成可能)間で共有となる。STR型、DEX型、INT型など、好きな3タイプのキャラクターを作ってみるのもアリ。
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職業のほかにも、ペット的な存在の“アガシオン”と、装備を消費・登録することでキャラクターに能力ボーナスを与えられる収集(コレクション)も同アカウント内で共有。

あることに気づいたとき、RPGの呪縛から解き放たれた

 転職システムのおかげで、戦闘面に独特なプレイ感覚がある本作。先述したとおり、伝承者自身の存在があやふやになる感覚が、筆者がプレイを続けている間はずっと感じられていた。

 ゲームスタート時に選んだ種族と職業でさえも、伝承者自身の出自なのかどうか不明。本当の姿が見えてこない伝承者に、主人公として自分を投影・没入していくというRPGの王道的な遊びかたはなかなかできない。

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固有の名前や人生を持つ英雄たちにも変身できることで、さらに伝承者自身の個が薄れているように感じられる。

 だが、しばらくプレイしつつ担当編集者と意見交換をしているうちに、サブキャラクターを作成して視点を広げてみようと思えてきた。

 そして、冒頭でも書いたように「RPGとは少し違うのでは?」と気付いた瞬間に、目の前がパッと開けた。伝承者が紡ぐ物語に没入するのではなく、“俯瞰”して導いていく遊びかたもあるのではないか。これが育成シミュレーションのような感覚の正体だ。

 なるほど、そういうことだったのか。筆者はRPGの呪縛に囚われていたのかもしれない。ゲームの遊びかたはもっと自由でいい。

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こういった視点を持つと、キャラクターの能力値振りや各種転職が、ドールや変形合体ロボットの超合金など、着せ替え要素があるホビーで遊ぶ感覚に思えてくる。

 この視点の切り替えは、本作をより楽しむうえでも大事なものかと思う。本作には『リネージュ2』から継承された部分がいくつもある。17年前から続くタイトルから持ち込んだこともあり、最近のスマホMMORPGプレイヤーからすると手のかかる要素に思えるだろう。

 主人公に没入した場合は「面倒だ」と感じるであろうそれらの要素も、神の視点からキャラクターの活躍を見守ると、「たいへんだろうが頑張りたまえ」と思えたりする

 具体例としては、重量制限が挙げられる。本作では消耗品は村のNPCから購入する仕様だが、重量制限が厳しいために大量のアイテムは持ち込めない。重量のやり繰りは自身を主人公の立場に置くと単に面倒な事柄だが、俯瞰視点から見ると、これもまたシミュレーション要素として楽しめてくる。

(余談だが、「開発者は『リネージュ2』らしさを敢えてモバイルに持ち込みたかったのだと思う」とは担当編集者の弁。「最近のスマホRPGは自動プレイが主流。すべてが自動だと味気なく、それどころかゲームを遊ぶ意味も薄くなる。“手間がかかる→考えるのが楽しい”という変換を狙っているのかも」だそうだ)

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消耗品各種を一括で、指定した数だけ購入できる自動購入機能がある。昨今のスマホRPGらしい便利機能だが、その購入数をギリギリの重量で調整するのはプレイヤー自身の役割だ。

 転職した際に武器を切り替えるために、複数の武器を持ち歩く必要も出てくる。こうなると本当に重量が厳しく、さらに弓を使う職業の場合、消耗品の矢も買い込まなくてはならない。

 ソウルショットもまた重量がある消耗品だ。自動戦闘がメインとなる本作において、極力長く自動で狩りを続けるためには、徹底した重量調整が避けられない。手動でプレイするにしても、消耗品の価格がかなり高めなので、赤字・黒字の計算も必要になってくる。

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何も考えずにソウルショットや回復ポーションを自動狩りで使い続けると、あっという間に所持金不足に。正直、本作はいわゆる“放置狩り”にはあまり適していない。

 スキルも、オートで使い続ければいいというものではない。たとえば、魔法使い系スキル“ボディ トゥ マインド”は、本作では貴重なMP回復手段だ。使うたびにHPを60消費するが、リキャストタイムは短いため連続使用が可能だ。

 こう聞くと便利に思えるかも知れないが、オートに設定しておくとMPを1ポイントでも消費するたびに使用してしまうため、HPがすごい勢いで減っていく。結果、回復ポーションの自動使用量がとんでもないことになってしまう。

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スキルをオートでうまく使えるようにビルドを組むのは、パズルみたいで地味に楽しかった。

 放置狩りにとっては障害となる、こうした「リアルではあるけど面倒に感じる」要素については、著しい便利化が進む昨今のスマホRPGの中では異端に感じるかもしれない。だが、本作がRPGではなく、伝承者を俯瞰視点から見守り導くシミュレーション的なゲームだと思えば、その面倒な要素もまたゲームプレイの一環となる。

 力と記憶を継承していく伝承者の育成と、そこにRPGならではの壮大なストーリーが加わるという、ほかのタイトルでは見られない異色の組み合わせ。これが本作の独特な魅力を生み出しているのだろう。

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筆者が今回プレイできた範囲では、マウント(乗りもの)がないため徒歩移動がもどかしかった。だがこれも、伝承者の歩みの一端を見守っていると考えれば、ゲームプレイの一環に思える。

クラシカルな要素を現代に繋げる最新の仕様

 重量制限や移動、放置狩りの難度の高さなど、『リネージュ2』から受け継いだクラシック要素がいくつも見られる本作。だが、自動購入設定やクエスト目的地への瞬間移動など、便利な機能もバランスよく取り入れられている。

 この“クラシカルなリアルさ”と“リアルさを切り捨ててでも導入した便利機能”のバランスが絶妙なところで取れているのも、『リネージュ2M』の魅力だろう。昔ながらのMMORPGの魅力というものを知りたいが、それが苦痛になるならプレイまではしたくない……などと考えるレトロなゲームに興味を持つゲーマー諸兄には、本作は最適の参考書になるかと思う。

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いまどきの便利機能を取り入れつつ、クラシカルな要素、シミュレーション的な要素もちゃんと体感できるレベルに保たれている。

 他プレイヤーとの共闘や対決など、MMORPGならではコンテンツも楽しみだ。世界のどこかに突発的に出現する“魔剣ザリチェ”やその周辺に湧き出る敵を駆けつけた他プレイヤーとともに狩ったり、『リネージュ2』の大きな魅力であった数百人規模となる大規模PvPコンテンツ“攻城戦”に参加したり。

 「○○が魅力だ」と断言しないのは、テストプレイは少人数で行われたので、多人数での遊びはあまり試せていないからだ。これは一般プレイヤーも入ってきたときの楽しみにしておきたい。

 また、本作はクロスプラットフォームに対応しており、PCとスマホの両方でプレイできる。昨今は珍しくない仕様だが、ここにNCSOFTが提供する最新のクロスプラットフォーム用アプリケーション『パープル』(PURPLE)が用意される。『パープル』を使うと、別アプリを起動せずとも同アプリ内でコミュニティー機能や配信機能を使用できるなど、より利便性が増すという。

 『パープル』の影響で、プレイヤー間の交流にも、従来のタイトルとは異なる変化が生まれるかもしれない。『パープル』の詳しい仕様や魅力については、また別の記事で詳しく紹介したい。

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魔剣ザリチェの周辺に出現する敵からは特殊な報酬が得られる。競争になるのか、共闘になるのか、サービス開始後にどうなるかはプレイヤーしだいだろう。
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攻城戦については、今回の先行プレイでは一部の解説に名前が出ている程度だったが、公式発表によると“1万人以上が集まり繰り広げられる大規模バトル”が用意されているとのこと。これが攻城戦だとしたら、『リネージュ2』の何倍の規模になるだろうか。

 昨今のRPGではほぼ必須となっている、メインストーリーから逸れる寄り道や、デイリー任務的な遊びかたができる要素もしっかりと用意。毎日いくつも受注でき、その日のプレイの指針にもできるサブクエスト“アインハザードの啓示”や、1週間の間に入れる累計時間がそれぞれで決まっているが得られる経験値などがおいしい特殊なフィールド“ダンジョン”などがその代表例だ。

 他MMORPGでいうところのギルドにあたる“血盟”も存在し、攻城戦以外でのPvP、GvGなども気になるところ。これらプレイヤー間の関係性も絡むことになる正式サービスイン後は、今回筆者が感じた各コンテンツの印象もがらりと変わるかもしれない。

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啓示は自分のペースで引き受けられるランダム報酬つきのサブクエスト。毎日いくつ完遂しないといけない、といった強制はない。
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ダンジョンではPvPの有無を確認できなかったが、仕様しだいで性質や楽しみかたが大きく変わりそうだ。

 ここまで記事を書いてきていまさらかもしれないが、筆者はいわゆる“自キャラ愛”勢だ。MMORPGでは主人公の立場に深く没入し、同じ立場で物語に向き合い、自キャラをひたすら愛でて着飾り、スクリーンショット撮影や友人とのキャラの見せ合いを楽しんだりする。

 そんな自キャラ愛勢からすると、本作は没入しづらい部分もある。だが、伝承者自身もプレイヤーと同じようにあやふやな自分の状態に戸惑っていると考えれば、プレイヤーと伝承者は同一の視点を持つものとして没入も可能……かもしれない。

 このように本作は、俯瞰するシミュレーションゲーム的な要素を多く持ちつつも、RPGというジャンルからは乖離していない。クラシカルな要素も含めて、ユニークなバランスのもとで成立しているゲームだと思う。

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自キャラ愛が強い筆者でも、かわいらしい女の子の職業を手に入れたときにはふつうにうれしかった。細かなカスタマイズではなく、その出自や設定も含めて手に入れた職業を知れば、キャラ愛を満たすこともできるだろう。
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ちなみに、テストプレイはiPhone12(左)とiPad Pro(右)の2端末で行った。UIはiPhone向けに最適化されているようだ。文字サイズが気にならないようなら、画面が広く見通せるiPad Proでも問題なし。

 クラシカルさといまどきの便利さ、そして独特な視点での楽しみかたを基軸として、転職システムによるプレイ感覚の変化も味わえる『リネージュ2M』。正式サービスインで多数のプレイヤーが合流したら、この感覚はどう変化するのだろうか。今後の伸びしろを感じさせる部分も多く、筆者が『リネージュ2』プレイヤーであったという点を差し引いても十分に、さまざまな面からじつに楽しみなタイトルだと思えた。

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