スクウェア・エニックスより、2021年2月26日発売予定のNintendo Switch用ソフト『ブレイブリーデフォルトII』。同作の楽曲を手掛けたのは、シリーズ1作目『ブレイブリーデフォルト』(2012年10月発売)でも楽曲を担当し、珠玉の名曲を生み出したサウンドクリエイターのRevo氏だ。

 約8年半ぶりに『ブレイブリー』シリーズに関わるにあたり、Revo氏はどのように本作と向き合い、楽曲を紡いでいったのか。高橋真志プロデューサーを交えて、お話をうかがった。

※本日(2021年2月19日)18:45~21:48に放送されるテレビ番組『ミュージックステーション 冬の3時間スペシャル』にて、『ブレイブリーデフォルトII』の一度限りのテレビCM特別編(60秒)が放映されることが決定! このCMにはもちろん、Revo氏の音楽が使用されているとのこと。お見逃しなく!

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Revo氏

サウンドクリエイター。音楽プロジェクトSound Horizon、Linked Horizonの主宰。現在、コンサートツアー“Sound Horizon Around 15周年記念祭”の真っ最中。

高橋真志氏(たかはし まさし)

『ブレイブリーデフォルトII』プロデューサー。これまでに『OCTOPATH TRAVELER(オクトパストラベラー)』のプロデューサーなどを担当。
※高橋氏の“高”の字は、正しくは はしごだかです。

開発チームのラブコールで強力タッグが『II』で再び!

――Revoさんに『ブレイブリーデフォルトII』のオファーがあったのは、いつごろでしたか?

Revoいつごろだろう……。

高橋確か、2年と少し前ぐらいだったと思います。

Revoそうでしたね。年末年始の期間に作業をしていた記憶があります。それで、お正月明けに高橋さんたちとお会いして、一連のフィールドの楽曲を聴いてもらったと思います。

――再び『ブレイブリー』シリーズのサウンドを担当することが決まって、どう感じられましたか?

Revoうれしい気持ちと同時に「おお、『II』なのか」という驚きもありましたね。『ブレイブリーセカンド』もありましたから。どんな内容になるんだろうと気になりました。どのくらい前作を踏まえるべきかの課題も感じたので。

高橋Revoさんにご依頼したときは、まだ正式タイトルが決まっていなくて。

Revoコードネームで呼んでいましたよね。

高橋はい。「タイトルは『ブレイブリーデフォルトII』にしようと考えていますが、まだ決まっていないんですよ」とお伝えしたと思います。

――以前、『ブレイブリーデフォルト』のインタビューでは、「膨大なシナリオを読み込んでから曲を書いた」とおっしゃっていましたが、今回もシナリオを熟読するところから始められたのですか?

Revoそうですね。シナリオには作曲を行うためのヒントが散りばめられていますし、シナリオを読み解かなければ、作品の世界観を理解するのは難しいので。

高橋Revoさんには、シナリオの資料をドサッとお渡ししました。“資料”というと、台本のように整えられているものを想像するかもしれませんが、でも、そんなことはなくて(苦笑)。ワードやエクセルにシナリオがバーっと書かれているもので、しかも修正や削除などの編集履歴も残った状態のファイルでした。

Revo“ここでアデルうなずく”的な動作の指示も書いてあったり、“このシーンはがんばりイベント”という補足が残っていたりして(笑)。

――(笑)。ちなみに、“がんばりイベント”というのは?

高橋3Dモデルのムービーなどが入る、開発工数の多いイベントについては、資料に“がんばりイベント”と記載していたんです。そういった細かい指示まで入っている資料だったんですが、Revoさんはゲームに詳しい方なので、それらも作曲の材料になるかなと考えて、あえて消しませんでした。ほかにも、そのとき用意できるファイルをかき集めてRevoさんにお渡ししたのですが、その中には裏設定や年表をまとめたものも入っていて。すべてに目を通していただくのは時間的に難しいだろうなと考えていたのですが、後になって、「この設定はまだ生きていますか?」と質問をしてくれることもあって。細かいところまで読み込んでくれているんだな、と感動したのを覚えています。

『ブレイブリーデフォルトII』サウンドクリエイターRevo氏インタビュー。RPGファンであるRevo氏がシナリオを読み込んで作った“胸熱”な音楽について聞く

――それは開発者冥利に尽きますね。今回のシナリオを読んだ感想をお聞きしたいです。

Revo最初の打ち合わせの段階で、(『ブレイブリーデフォルト』より)メインキャラクターの年齢設定が上がっているので、大人向けのストーリーになるとは聞いていたのですが、シナリオを読んで「確かにそうだな」と。シリアスな路線が強くなっているなと感じました。一方で、エルヴィスとアデルの軽妙な掛け合いもあり、そういった部分に気持ちが救われるプレイヤーも多いんじゃないかなと思いました。

――シナリオがよりシリアスになったことは、音楽にも影響を与えているのでしょうか?

Revoそうですね。いつにも増して明るい曲は少ないかもしれません。

――高橋さんたちからは、楽曲に関してRevoさんにリクエストしたことはありますか?

高橋僕は『ブレイブリーデフォルト』の曲がものすごく好きだったので、あえて別軸で考えようとはせずに、直球ど真ん中で、前回のような曲作りをしてほしいと考えていました。ですから、「今回はこうしてほしいです」とお話ししたことはなかったと思います。

Revo僕としても「これだ」と思ってもらえる曲にしたいなという想いがありました。『II』でまったく別の方向性の曲に変えてしまうと、ファンは「それなら『II』ではなく、まったく別のタイトルにしてくれないかな」という気持ちになると思うので。「俺たちが求めていた『ブレイブリーデフォルトII』の楽曲は、これなんだ」と感じてもらうためには、“らしさ”みたいなものは絶対に必要だなと。

――Revoさんもゲームファンなので、ファンの心理がわかるというわけですね。

Revoドラゴンクエスト』や『ファイナルファンタジー』もそうですけど。名作の多くにはその曲を聴くだけで、そのシリーズの作品だとわかる曲があるので。それは『ブレイブリーデフォルトII』にも残したいなと思いました。

――『II』のタイトル画面で流れるメインテーマに、『ブレイブリーデフォルト』のメインテーマと同じメロディーを使っているのも、そういった理由からなのですね。

Revo『II』のことを知らないファンの方が聴いても、『ブレイブリーデフォルト』の曲だとわかってもらえるのではないでしょうか。

――逆に、『II』だからあえて変えてみたところはありましたか?

Revoじつは、メインテーマも含め光の戦士たちにまつわるテーマは、ある要素を意識してシーンごとに節回しを変えていたりします。動詞の活用系みたいなものですね。ほかにあえて変えたと言うと……『ファイナルファンタジー』シリーズで慣れ親しんだ「デデデデデデデデ」のイントロのように、『ブレイブリーデフォルト』もシリーズ共通のイントロで通常バトルが始まったら胸熱だなと思って、その部分はあえて残したのですが。今回、そのイントロの前に更にイントロをつけました。効果音の仕事だと捉えられているかもしれませんが、名作へのオマージュ感を仕込みつつ僕が作ってます&サントラにも収録されているのでお楽しみください(笑)。

――『ブレイブリーデフォルト』らしさを感じて、グッとくるイントロでした。高橋さんは、できあがった曲を聴いて、どう思われましたか?

高橋Revoさんは「何かあれば言ってください」とおっしゃるんですが、どの曲も完成度が高いので、「何も言うことはありません。最高です」というやり取りが、今回も多かったと思います。それにバトル曲については、「もし次回作の曲を作るなら、こんな感じかなと(以前から)イメージしていた曲です」と言われ、ますます感動したのを覚えています。

Revo通常バトル曲は長年温めていましたからね。『ブレイブリーセカンド』では楽曲を担当しなかったので、やっと出すときがきたぞって。ある名作へのオマージュ感もあるので、『II』のお話が来ていなければ、このバトル曲はお蔵入りになっていたと思います。

――『II』が制作されることになって、本当によかったです! ところで、長年温めていたと言えば、『ブレイブリーデフォルト』のインタビューでは、とある楽曲について、「この部分が“ブレイブリー”を、つぎの部分が“デフォルト”を表している。続編の展開があったら、このメロディーを使いたい」とお話しされていました。そのメロディーは、『II』に収録されていますか?

Revo収録していますが、ここの部分がそうだと言い切ってしまうとおもしろくないかな。ゲームをプレイして、皆さんが感じたことが正解なのではないでしょうか。仲間が4人いるとか、最大4連続で行動できるとか、そういうシステム的な部分にも音楽的な意味を持たせてリンクさせたつもりです。

『ブレイブリーデフォルトII』サウンドクリエイターRevo氏インタビュー。RPGファンであるRevo氏がシナリオを読み込んで作った“胸熱”な音楽について聞く
約9年前の週刊ファミ通のインタビューより抜粋。すでにこの段階から、Revo氏は続編を見据えて作曲していた。

逆境を乗り越えて生まれた『II』の収録楽曲は60曲以上!

――先ほど、とくに曲作りに関して高橋さんたちからの指示はなかった、とお聞きしましたが、指示がないと、逆に作りにくいという面もあるのでしょうか?

Revo「自由にやってください」と言われたほうが、想像力が湧きやすいタイプなのだろうなと自分でも思いますが。そのあたりは高橋さんたちも感じて、汲んでくれたのではないかと。ただ、100%自由だと、それはそれで難しくなってしまうのは事実です。何曲ぐらい必要で、どういうシーンで流したいのか、といった基本的な情報が曲作りの前段階で必要になってきます。今回も、高橋さんたちが最初にそれらの情報をリストにまとめてくれていたので、路頭に迷うことはありませんでした。そのうえで、自由にやらせてもらった感じですね。リストを見ながら、「この曲とこの曲は、音楽をつなげてくださいというオーダーはないけど、物語上の要素に共通性がある。それなら、メロディーが示唆する情景にも共通性があったほうがいいな」と考えたり。

――シナリオを読んで想像されるのですね。こことここは、メロディーが重なったほうが絶対にいいと。そういった判断は、どのようにされるのですか?

Revo自分がプレイヤーだったら、どっちが胸熱なのかでジャッジするようにしています。迷ったときは、とにかく胸熱の方向に。

高橋できあがった楽曲を聴くときは、僕もプレイヤーになった気持ちで聴いていて非常に楽しかったので、つぎはどんな楽曲が上がってくるのか、ワクワクしていました。

――“胸熱なほうを選ぶ”というのは、ゲームファンだからこそできる判断方法ですね。

Revoどういうところが胸熱なのかというところは言葉で伝えにくいのですが、『II』を遊んでいただければわかってもらえると思います。

――Revoさんは以前にも、「(『ブレイブリーデフォルト』の音楽は)ゲームで遊んでこその音楽だ」と発言されていますよね。

Revoゲームを遊ぶと、「こことここは、同じメロディーだな」と気づくこともありますよね? 記憶力は個人差があるものの、何度も何度も遊んで同じ曲を聴いていたりすると、おのずと頭の中に入ってきて、キャラクターが成長すると同時に、プレイヤーも成長しているというか。音楽を通して、作品の世界のことがますますわかるようになっていると思うので、主人公たちとともに旅をしてきたことをより強く実感してもらえるとうれしいですね。

――プレイヤーの中に、音楽に関する知識が蓄積されていきますからね。『ブレイブリーデフォルト』では、ラスボス曲に各キャラクターの必殺技のメロディーが入っていて、それに気づいたときはとても興奮しました。今回もそういった仕掛けがあるのかなと、楽しみにしています。

Revoありがとうございます。ラスボス曲は、ファンの方たちの評価もすごく高いので、非常にハードルが上がってしまっているなと。

――『ブレイブリーデフォルト』が好評だったからこそのプレッシャーを感じることはありますか?

Revo創作は基本的には自分との戦いだと思っているので、外部からのプレッシャーもありますが、より自分の中に前作を超えなければ『II』じゃないという強い想いがあって。その曲が好き、嫌いというのは個人差があるので、一概に『I』よりも『II』のほうがいいとは言えませんが、作品のスケール感や曲数が増えていれば、より複雑な仕掛けをすることも可能です。そういったところに、前作よりも真摯に取り組んだ作品が『II』だと考えています。その取り組みが実を結んでいるかどうかは、最後までプレイしていただければわかると思うので、ぜひクリアーしてもらいたいですね。

高橋今回は曲数も多いですからね。ただ、あまりにも多くて恐縮だったので、Revoさんにオファーする際に、3つのプランを用意しました。1.この曲数は作ってほしいです、2.欲を言えばこの曲数までお願いしたいです、3.さらに言うとこの曲数までやっていただけるとくれるとうれしいです、って(笑)。

一同 (笑)。

『ブレイブリーデフォルトII』サウンドクリエイターRevo氏インタビュー。RPGファンであるRevo氏がシナリオを読み込んで作った“胸熱”な音楽について聞く

高橋結果的に、3のプランよりも多くの楽曲を作ってもらえたので、数が多くて本当にたいへんだったと思います。

Revo最終的に、60数曲になりましたよね。

高橋そうでしたね。しかも、単純にカウントできない楽曲も多くて。ここだけちょっと違いますとか。

Revoサントラの収録曲を見てもらえるとわかるんですが、別バージョンが本当に多いので。

高橋今回のサントラは、通常盤が3枚組で、初回生産限定盤は4枚組になります。初回生産限定盤の4枚目に、バージョン違いの曲が多数収録されているんです。

――作曲期間も長くなったと思いますが、トータルでどのくらいの期間、『II』の作曲作業をしていたのですか?

Revoほかの仕事と並行して作曲をしていたので、どれくらいになるんだろう……。2年前にお話をいただいて、最後の曲ができたのが去年の夏でしたよね?

高橋そうでしたね。一昨年の年初にお話ししたときから少しずつ作っていただいて、去年の夏に終わったので、足掛け1年半ぐらいかかっていると思います。

Revo新型コロナウイルスの影響もあって、当初の予定よりもたいへんでしたね。

高橋『ブレイブリーデフォルト』のときは、Revoさんの収録スタジオにうかがって密なコミュニケーションを取れたのですが、今回はそういうわけにもいかず……。基本的にはメールでのやり取りになってしまいました。メールには長文で、Revoさんの曲に対するコメントが書かれていたので、僕としてはいい思い出になったのですが、ゲームがどう完成しているのかを直接お会いして見せることができなかったのは、心苦しかったですね。

Revo確かに、お会いできる機会は少なかったのですが、高橋さんたちがプレイ動画をたくさん作ってくださったので、すごく助かりました。

高橋ムービーシーンのデモや尺に合わせて作っていただいた曲もありますね。

――たとえば、序章の最後で挿入されるムービーも……?

Revoそうですね。剣を地面に刺す瞬間に曲を転換させたり。ムービーに合わせた楽曲は、「おお、なるほど」と物語を感じてもらえるようなものにできたと思います。

ダンジョンのアレンジ楽曲にもRevo氏ならではのこだわりが

――いろいろと苦労が多かったぶん、ゲームをプレイして楽曲を聴いたときの感動はひとしおだと思いますが、体験版などはプレイされましたか?

Revo先行体験版はすぐにプレイできたのですが、ファイナルデモについては、僕が主宰しているSound Horizonの15周年関連のリリースやライブでバタバタしていて、まだ遊べていなかったんです。でも、インタビューを受けるのにやっていないのはダメだと思って、深夜プレイして、今日ここにきました(笑)。

高橋ありがとうございます(笑)。

RevoB&Dもプレイしましたよ。

――さすがですね!

高橋B&Dは、制限時間(5時間)内にクリアーしないと遊べないですからね。

Revo3時間くらいでクリアーできました。まだナイトメア(※体験版に登場する敵の中で、もっとも強いモンスター)は倒せていないんですけど(苦笑)。

高橋さすが、強敵のナイトメアもご存知で。

Revo『ブレイブリーデフォルト』を遊んでいたので、なんとなく戦いかたのコツを知っているので、スムーズに進められました。初めて遊ぶ方には、歯ごたえのあるバランスだと思いますよ。

――ブレイブ&デフォルトのシステムは、慣れるまで少し時間が必要ですからね。

Revoでも、慣れていたとはいえ、カウンターで眠らせてくる敵には、正直イラっとしましたね。

一同 (笑)。

――サヴァロンの地下水洞のモンスターは、けっこう強いんですよね。

Revoフルブレイブでサンダラを撃ったら、1発目で眠らされて。眠って行動できないのに、残りのブレイブに使ったBPも「全部消費されるんだ!」って。

高橋BPは、ブレイブを実行したときに消費されちゃいますからね。

Revo「俺のBPを返してくれ!」って思いました(笑)。あと、やまびこ草(※沈黙を解消するアイテム)にはお世話になりました。本当はホワイトケープ(※沈黙を無効化するアクセサリー)を装備しておけばよかったんでしょうが、どんな敵が出てくるのかわからないほうが楽しめるので、事前には調べなかったんですよ。とにかく、やまびこ草を飲みまくりました。

高橋そこまでやり込んでいただいて、とても光栄です。

――ご自分の曲を聴きながら冒険してみていかがでしたか?

Revo僕が作った曲ですけど、プレイしているときの意識としては自分の曲ではないというか……。これがエクシラント大陸の音楽なんだな、と自然に受け入れられたというか。ゲームの世界観と齟齬のない曲ができたのかなと安心しました。

――やはり、ゲームの楽曲を作るときにいちばん重視しているのは、作品との調和ということでしょうか。

Revo何十時間も違和感があるものを聴かされ続けるのは辛いですからね。音楽を作っている身としては、自分の音楽に注目してもらいたい気持ちは当然あるのですが、音楽が鳴っているのをいつしか忘れてくれれば良いなと。主張と調和のバランスには気を使いました。楽器の意味、メロディーの意味。それは1曲単位の話ではなく、全体を通して多層構造で組上げられる物語性のようなものなのだと考えています。プレイヤーはそれらを意識する必要はありませんし、気付く必要すらありません。それでも、プレイするうちに、繰り返し聴くうちに自然と刷り込まれていくと思います。謎の胸熱感があったなら、無意識のうちにも届いています。自然に心地よく音楽が鳴り続けていれば、その音楽が流れていることが日常になるというか。空気の一部になってくれたらうれしいです。

――自然と溶け込む音楽を作る際は、シナリオのほか、やはりグラフィックやイラストを見て、ヒントを得ていくのでしょうか。

Revoたとえばダンジョンの曲は、グラフィックなどのビジュアルから得られるヒントが大きいですね。そのダンジョンはどういう風景なのか? というところから音楽を作っていきますから。今回、ダンジョンの楽曲は、ものすごいバリエーションがあるんですよ。

高橋先ほどお話しした通り、サントラの初回生産限定盤の4枚目に、ダンジョン曲のバリエーション違いが収録されています。

Revoディスク4に収録している楽曲は、基本的にディスク3までに収録した楽曲のアレンジ違いバージョンになります。

――フィールド曲も、今回、地域が変わるとアレンジが変わりますよね。

Revoそうですね。ただ、流れ的にフィールド曲のアレンジは通常盤にも入れるべきだと思ったので、ディスク3までに入れています。おもにダンジョン曲の差分などをディスク4に入れました。

高橋ゲームが先に完成していて、それをお見せして「曲をつけてください」とお願いすれば、Revoさんも迷わずに作曲ができると思うのですが、なかなかそうはいきません。ダンジョンについては、作りかけの状態の映像をお渡ししていたのですが、Revoさんは非常に細かい状況も気にされていて。たとえば、このマップには雪が降っていますか、とか。このマップには、花が咲いているところと咲いていないところがありますが、これはどういう意味があるのですか、とか……。

――とても細かいところまで観察されているのですね。

高橋そうなんです。そういった質問にお答えしたところ、「わかりました。それなら、ここにはこういう音を入れたいので、アレンジ違いを作ってみます」と、Revoさんのほうから積極的にご提案をいただいて。あれよあれよという間に60曲を超える曲数になりました。一般的には、ダンジョン曲は1曲できたらそれでおしまいなんですが、雪が降っていたら、水が流れていたら……といろいろなアレンジをご提案いただきました。

――ダンジョン曲のアレンジは、『ブレイブリーデフォルト』では行っていない試みですよね。

Revoハードが変わり楽曲を多く収録できるようになったので、その中でできることのひとつとして取り組みました。それで調子に乗って作っていたら、高橋さんから「そろそろ容量が……」と言われましたけど(苦笑)。結局、考えていたバリエーションをすべて収録できたわけではないので、ハードやメディアが変わっても、理想と現実は、つねにイタチごっこなのかもしれません。

――ダンジョンのアレンジ曲を増やしたのは、マップのわずかな違いを、音楽でも表現したいと思われたから?

Revo『ブレイブリーデフォルト』のときは、森や洞窟、建物の中など、最低限の曲を用意していました。でも本来であれば、普通の森と雪が積もっている森は、同じ音楽じゃないはずです。真摯に情景を描写するなら。ゲーム音楽は、いろいろな制約の中で作られてきた歴史があり、工夫の中で生まれた名曲も多いです。でも、容量があるんだったら別曲とは言わないまでも、別アレンジの曲を当てられたらいいなと僕は考えていて。それが実現したい胸熱感のひとつでした。

『ブレイブリーデフォルトII』サウンドクリエイターRevo氏インタビュー。RPGファンであるRevo氏がシナリオを読み込んで作った“胸熱”な音楽について聞く

――ハードが変わったことで、ほかに実現できたことはありますか?

Revoニンテンドー3DSは、低音が出にくいハードでした。ですので、『ブレイブリーデフォルト』のときはわりと低音をブーストしていましたが、今回はハードの音質も向上しているのでそういった小細工はあまり使っていません。

高橋ニンテンドー3DSは、Nintendo Switchのようにテレビにつなげて映すことはできなかったので、本体のスピーカーでどう聴こえるかがすべてでした。聴いてみて修正作業をしていくのがたいへんだったと記憶しています。『II』は、携帯機モードで遊ぶ方も多いと思いますが、テレビにつないだり、高性能なスピーカーを使ったりする方もいると思うので、細かい調整を前提にするのではなく、いちばんいい音を作ってくださいとお願いしました。

――せっかくのグラフィックと音楽ですから、ぜひテレビでも楽しんでもらいたいですね。ところで、『ブレイブリーデフォルト』ファンの中には、『ルクセンダルク小紀行』や『ルクセンダルク大紀行』のような、ボーカル入りアルバムの発売を期待している人も多いと思います。『II』で、そういったアルバムを制作される予定は?

Revoいまのところ予定はないのですが、『II』がワールドワイドで大ヒットすれば……。

高橋その場合は、歌は日本語になるんですかね?

Revoどうでしょう? もしかしたら英語バージョンの可能性もあるかもしれませんね。

――コロナ禍でなかなか難しいと思いますが、『ブレイブリーデフォルト』のときのように、コンサートが開催されるとうれしいです!

Revoタイミングは非常に難しいのですが、そういう声が多ければ検討したいと思っています。

『ブレイブリーデフォルトII』サウンドクリエイターRevo氏インタビュー。RPGファンであるRevo氏がシナリオを読み込んで作った“胸熱”な音楽について聞く

エンディングまですべての楽曲を堪能してほしい

――Revoさんにとって二度目のゲーム開発参加となりましたが、ゲーム音楽制作には慣れましたか?

Revoまだまだ勉強が必要だなと思いますね。奥深いです。今回もいろいろなことに挑戦していますが、どうしても心残りなことはあって。やりきれなかったことはあります。『ブレイブリーデフォルト』でやり切れなかった悔しさを『II』にぶつけた部分もあるので、いま感じている悔しさを、何かにぶつけて昇華できる機会があればいいなとは思っています。

――気が早いですが、悔しさをぶつけるのは『ブレイブリーデフォルトIII』とか……。

高橋僕が決めていいなら、Revoさんにすぐにでもお願いしたいです(笑)。

Revo『II』がご好評いただければ、おのずとそういう機会もいただけるのかな。この道の先に進んでも良いのか。ゲームの進化も、ゲームの音楽の進化も一本道ではないと思います。

――ゲーム発売が楽しみですね。ちなみに、体験版を遊んだファンからの、音楽への反響はいかがでしたか?

高橋先行体験版のアンケートでは、日本はもちろん、海外の方たちも、よかった点として楽曲を挙げてくださる方が大勢いました。ですから、Revoさんが作る楽曲には、僕たちも全幅の信頼を寄せていました。

Revo僕のところにも「Revoさんの曲でまた冒険できるのが楽しみです」といった、うれしい声は届いています。多くのプレイヤーの皆さんに好意的に受け止めてもらえた、その結果が早期購入特典になったとうかがいました。ちなみに、その特典とは、ハルシオニアで流れる『春風の国』のアレンジ楽曲になります。ハルシオニアは、プレイヤーにとって冒険の始まりとなる地、いわば故郷のようなものです。世界中を巡って平和を取り戻したあとに、再びこの場所に帰ってきてほしいという思いを込めてアレンジしました。冒険の思い出とともに聴いてください。

『ブレイブリーデフォルトII』サウンドクリエイターRevo氏インタビュー。RPGファンであるRevo氏がシナリオを読み込んで作った“胸熱”な音楽について聞く

――ゲームをクリアーした後にアレンジ楽曲を聴くと、違った心持ちで楽しめそうですね。それでは最後に、『ブレイブリーデフォルトII』を待ちわびている皆さんに向けて、メッセージをいただけますでしょうか。

高橋今回の音楽も、Revoさんが細部までこだわり抜いて作曲をしてくれました。僕たち自身、聴くたびに思い入れが強くなっていて、自然と鼻歌が出るくらい慣れ親しんでいます。Revoさんやシリーズファンの方はもちろん、新規で遊ぶ方も楽しめると思うので、まずはゲームをプレイしてお気に入りの曲を見つけてみてください。そして、サントラを聴きながら、ストーリーの思い出に浸れるのも、ゲーム音楽のよさだと思います。ぜひサントラも手にとってもらえるとうれしいです。

Revo高橋さんが僕の代わりにサントラのアピールをしてくれたので(笑)、僕はバトル曲に関して最後にお話ししたいと思います。『II』はバトル曲が非常に多く、それも新たなチャレンジでした。求められる曲数の中でいかに色の違いを出すか、その設計には試行錯誤しました。

高橋ご苦労をおかけしてすみません(苦笑)。僕はRevoさんのバトル曲が大好きなので、自然に数を増やしてしまいました……。すべての曲がお気に入りなのですが、バトル曲の中では、魔剣士のバトル曲がお気に入りです。ファイナルトレーラー(2月18日公開)にその曲をどうしても使いたくて、それを前提にして、別のトレーラーに使う曲を決めたほどなので、まだチェックをしていない方は、ぜひ観てください!

Revoありがとうございます(笑)。魔剣士の曲は初期に作ったので、バトル曲の設計においてマイルストーン的な役割を果たしてくれました。単純な曲の良し悪し、個性の差別化に加え、ゲーム音楽の不文律とも言える“より強い敵が強そうな曲であること”を大事にしました。当然、序盤のボスが魔剣士バトルを超えてしまっては、そのバランスが崩壊します。“魔剣士バトル超え”をしないように意識しながら、ボス戦の曲は右肩上がりに盛り上がっていくよう作曲しました。ラスボス関連曲はさらに力が入ったものになっているので、最後までプレイしてボス戦の盛り上がりとともに冒険のクライマックスを体感してください!

『ブレイブリーデフォルトII』サウンドクリエイターRevo氏インタビュー。RPGファンであるRevo氏がシナリオを読み込んで作った“胸熱”な音楽について聞く
こちらは『II』のアートディレクター生島直樹氏が、Revo氏にプレゼントしたイラスト。セスのすっぴん衣装を着たRevo氏の姿が描かれている。このRevo氏なら、“全力でたたかう”ことができそう!?

オリジナルサウンドトラックが発売決定!

 2021年3月3日に、『II』の楽曲を収録したオリジナルサウンドトラックが発売される。CD3枚組の通常盤のほかに、CD4枚組の初回生産限定盤も用意されており、後者は特殊仕様のパッケージを採用。同梱されているカードの位置を入れ替えることで、セス、グローリア、エルヴィス、アデルをさまざまなジョブにスイッチでき、お気に入りのジョブでパッケージを飾れるのだ。ちなみに、カードに描かれた主人公たちのジョブは、Revo氏がみずから選んだとのこと。

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