2021年2月6日、『ファイナルファンタジーXIV』(以下、『FFXIV』)の新情報発表会が開催。本イベント終了直後に行われた、吉田直樹プロデューサー兼ディレクターとのメディア合同インタビューの模様をお届け。お披露目されたばかりの次期拡張パッケージ『暁月のフィナーレ』の制作意図を中心に短時間ながらお話をうかがうことができたので、じっくりと読み進めてほしい。

 本記事では、読みやすさを確保するため吉田氏のコメントに少なからず編集を加えている。吉田氏が発言した内容および順番は、実際のやり取りとは異なるので、あらかじめご了承願いたい。

吉田直樹(よしだなおき)

スクウェア・エニックス 取締役執行役員 第三開発事業本部長。『ドラゴンクエスト』シリーズ初のアーケードタイトルである『ドラゴンクエスト モンスターバトルロード』シリーズのゲームデザインとディレクションを担当。2010年12月に『ファイナルファンタジーXIV』のプロデューサー兼ディレクターに就任。現在、『ファイナルファンタジーXVI』のプロデューサーも兼任している。

新ジョブについての質問

――新ジョブの賢者がバリアヒーラーとして発表されました。白魔道士と占星術師がピュアヒーラーで、学者と賢者がバリアヒーラーになるとのことですが、それぞれの役割の中での差別化はどのようになるのでしょうか?

吉田 これはヒーラーに限らずすべてのジョブに対して気を配っている事柄ですが、どのジョブを使っても極端なバランス差は生じないよう意識しています。いちばん大きな違いはやはりゲーム体験の違いです。バリアを張るという行為に対して、(双方で)アプローチのしかたが変わってきます。たとえば学者の場合は、フェアリーとともに回復したりバリアを張ったりして戦っていくことになります。一方で賢者の武器である賢具はもちろんペットではないため、ゲーム体験として、バリアや攻撃などの行為が学者とはまったく異なります。コンテンツのクリアーに支障がないよう、どちらを使っても問題が起きないようバランスを取っていくつもりです。

――白魔道士と占星術師によるピュアヒーラー2構成だったり、あるいはその逆のバリアヒーラー2構成で挑んだ場合、コンテンツをクリアーする感覚は変わってくるのでしょうか?

吉田 プレイヤースキルに依存する形になるのではないのかなと。最近、ヒーラーの皆さんのあいだで「ヒールが暇なんだよね」というお声があったので、今回の希望の園エデン零式:再生編では、ボスの攻撃頻度を高めつつ、被ダメージもきびしめにしました。

 とくに攻略初期の段階ほど、たとえばピュアヒーラーだけの構成できれいにクリアーするのは難しかったりします。バリアも貼っていかないと必然的につらくなる……この味付けは、今回のレイドでは意図的にそうしました。『暁月のフィナーレ』でも役割を分ける以上は、ピュアヒーラーとバリアヒーラーがひとりずつ参加したほうがクリアーしやすい、そんなバランスにするつもりです。

 さきほどもお話ししましたが、レイドファインダーを使って攻略されている方からすると「ピュアヒーラーがふたりの構成でマッチングが成立すると、クリアーができない状態に陥るのでは」という疑問が浮かぶかと思います。そうした事態を防ぐべく、アルゴリズムに調整を入れて、双方(バリアヒーラーとピュアヒーラー)ができる限り揃うようなマッチングにしていきます。

――『暁月のフィナーレ』では、バリアヒーラーとピュアヒーラーのふたつがロールとしてわかれることになるのでしょうか。

吉田 表示上はあくまでもヒーラーです。インスタンスダンジョンであれば、どちらのヒーラーでも当然クリアー可能なので、そこはご安心ください。ロール自体を分けてしまうと新しく入ってくださった方が「よくわからない」となってしまうので、そうならないようにはしたいなと。ただし、極や零式くらいの高難易度コンテンツから、「ピュアヒーラーとバリアヒーラーがひとりずついたほうがいいよ」というオススメのしかたをするので、いまのところ表示として明確に区切るところまでは考えていません。

 ただし、逆にそれがないために混乱が生じると判断したときには、調整する可能性はあります。ですが現時点……開発がだいたい3分の1あたりを過ぎたあたりですが、いまのところ「ムリに分けないで行こう」という感じにはなっています。

――分けることを決めた場合、たとえばリミットブレイクゲージの溜まり具合が変化するといった調整は行われるのでしょうか?

吉田 それはやらないと思います。リミットブレイクの溜まり具合は、タイムアタックをはじめ多方面に影響を及ぼすので、あまり細かく分けすぎると「あえて溜めたほうが有利だ」みたいなことになりかねません。ですので、そこはいまのところ分けないつもりでいます。

【FF14】『暁月のフィナーレ』の新規DPSは竜騎士と同じ枠に!? 『FF14』吉田P/Dメディア合同インタビュー
【FF14】『暁月のフィナーレ』の新規DPSは竜騎士と同じ枠に!? 『FF14』吉田P/Dメディア合同インタビュー

――ヒーラーと同じように、タンクにもMT・STという分類があるかと思いますが、そちらの棲み分けはとくに変更はないのでしょうか。

吉田 現状、向き不向きはあるかと思いますが、どちらでもプレイできる状態ではありますので、いまのところは予定していません。

――すでに4つの近接ジョブがある中で、『暁月のフィナーレ』で、さらに新たな近接DPSを追加することを決めた経緯と、それぞれの近接ジョブ内での棲み分けをお聞かせください。直近の希望の園エデン零式:再生編では近接DPSが動きづらいなど、火力を出すのにきびしい面もあったかと思いますので、そのあたりの調整も含めてお伺いできますか?

吉田 まずは数に関してお答えします。将来的にパッチ7.0など拡張パッケージが発売され、そのタイミングでたとえばタンクが追加された場合、けっきょく(近接DPSの数を上回る)5ジョブになるわけです。DPSというロールのジョブを楽しまれる方は基本的に多いので、僕の中では、拡張パッケージが発売されるタイミングで“攻撃を行うジョブが追加されない”ということは避けたいと思っています。具体的には現状の近接DPSの中で、竜騎士だけが特殊な立ち位置になっているので、枠だけで言えばそこに足すことになります。

 さらにご質問にあった、「近接DPSがきびしい」という部分ですが、当然ながら開発チームでもそれは認識しています。ギミックを複雑にする方向で高難易度コンテンツを作っていくと、移動や攻撃距離に制限が存在するジョブおよびクラスは、どのMMORPGでもきびしくなりがちです。これをどう回避すべきかは、『暁月のフィナーレ』に向けて、どのジョブにどの技を追加していくかと考えていますが……現在調整中です。いずれにしても、遠隔DPSばかりが有利にならないよう、ギミックの構築と同様に、ジョブの追加とは別の軸で思案しているところです。

『暁月のフィナーレ』の世界観について

――今回の『暁月のフィナーレ』のタイトルロゴは、手前に描かれたモノリスのようなものをはじめとして、謎が多い絵柄になっています。今回のタイトルロゴに込められた思いやコンセプトを、お話しできる範囲でお聞かせいただけますか?

吉田 その問いにズバリお答えするのは難しいです(苦笑)。僕は毎回、天野先生(天野喜孝氏。イラストレーター)に直接、コンセプトなどをお伝えしたうえで描いていただいています。

 そして『FFXIV』全体にも言えることですが、ハイデリン・ゾディアーク編で紡いできた物語には、“絶望に対しての希望”みたいところがあると思います。たとえば、『旧FFXIV』発売当時のちょっとした絶望から、『新生エオルゼア』のリリースを迎えて……というイメージもそうです。

 『暁月のフィナーレ』の物語にも、“終末に対しての絶望”の中にどんな希望を見出していくのか、といったテーマがあります。そこに向かっていく英雄たちと隣り合わせの絶望……そんなニュアンスが含まれていると思っていただければなと。明確な答えになっておらず申し訳ありません。

――ロゴの意味に関しては、実際に『暁月のフィナーレ』をプレイすればわかると。

吉田 そうですね。「そういうことだったのか!」と思っていただけるはずです。タイトルロゴの後ろに描かれている丸い部分は、果たして月なのか、もしかすると、惑星ハイデリンかも……。パッチ5.5のメインストーリーも楽しみながら、そうしたところをいろいろ推察していただければいいのではないのかなと思います。

【FF14】『暁月のフィナーレ』の新規DPSは竜騎士と同じ枠に!? 『FF14』吉田P/Dメディア合同インタビュー
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――今回のメインジョブはナイトとのことですが、『FFIV』との関連性を踏まえて今回はナイトを選んだのか、それとも何かほかの理由があってそうしたのかをお聞かせください。

吉田 自分や人々にとっての希望を真正面から描こうと思ったときに、いま『FFXIV』の中にあるジョブとしては、ナイトがふさわしいのではないのかなと。追い詰められた状況でも、すべてを背負っていちばん前に出ていくことを考えると、このジョブが最適……ストレートにそう決断したところが大きいです。

 正直に言うと、すごく悩みました。僕の中では、皆さんの予想の裏をかきたいと言うよりも、想像の範疇を超えたいという思いのほうが強かったりします。たとえば『漆黒のヴィランズ』の物語の初期の構想に、「英雄や光の戦士と呼ばれることに、皆さんは飽きを感じておられるだろう」という部分がじつはあったりします。そこで物語(の裏表を)をひっくり返して、“光を打ち払って闇を取り戻す”ために“闇の戦士として戦ってもらう”というコンセプトを僕が提示しました。

 今回も、物語を裏返したり逆さから見たりすることで体験を変えていきたいので、「ハイデリン・ゾディアーク編のラストを描くぞ」と決めたタイミングで、『FF』の王道を行くラストにすることを決意しました。これまでの『FF』作品では、最終章に突入すると「魔大陸が浮上したぞ!」や「世界がもうやばい!」みたいな展開になりましたよね。『暁月のフィナーレ』は、そこに至ってからの(新作ソフト)1本ぶんのボリュームを持つ物語であると思ってもらいたいなと。

――少し気が早いかもしれませんが、ナイトの新スキルのイメージをお聞かせ願えますか?

吉田 ナイトには大技のパッセージ・オブ・アームズがあるので、あれを超えるのはけっこうたいへんだったりします(笑)。当然ながら主人公が使うジョブだからと言って贔屓するわけにはいかないので……。これはナイトに限らず各ジョブに言えることですが、「こういうのが欲しかったんだ!」と言うものもそうですし、より派手にカッコよくなったことで、自分のメインジョブがさらに好きになってもらえる要素を用意しようと思っています。ぜひ期待に応えられるよう、がんばっていきたいなと。

【FF14】『暁月のフィナーレ』の新規DPSは竜騎士と同じ枠に!? 『FF14』吉田P/Dメディア合同インタビュー

――物語の感動体験として欠かせない音楽について、今回も祖堅さん(祖堅正慶氏。サウンドディレクター)が全力で制作されているかと思いますが、拡張パッケージの楽曲を作るうえで、吉田さんのほうから何か指示を出しましたか?

吉田 すべてを感動巨編みたいな曲にしてしまうと脂っこくなってしまうので、「(盛り上がりの)強弱をシナリオに合わせてうまく配分してほしい」と伝えました。

 祖堅と僕にとって、『SHADOWBRINGERS』という曲はかなり挑戦した部分がありました。途中に入るクリスタルタワーのメロディーで『FF』感は押し出されてはいますが、あれをナシにして考えると、ロックベースで挑戦的な曲でした。それをプレイヤーの皆さんにものすごく受け入れてもらえたと思っていますので、今回も「シリーズ14作目としての『FFXIV』の物語が、ひとつ目の大きなラストを迎えるから、そこを思い切って提示していこう」とお願いしています。祖堅も「このスケジュールはありえない!」とまた言いながらがんばると思います。ぜひ曲のほうも楽しみにしていただければと思います。

――これまでは新しい拡張パッケージの発表に合わせて、タイトルのテーマカラーに関するお話があったかと思うのですが、今回もありますか? ティザートレーラーに登場したナイトの白い装備がすごく印象的だったので、この色が候補になるのかなと思っているのですが……。

吉田 微妙なニュアンスではありますが、開発チーム内ではプラチナという言いかたをしています。夜明けを表す“暁月”をタイトルに採用することを考えたときに、僕は「黒でも白でもない、まさにその一瞬しか見られないプラチナのような黄色がかった輝き」と、スタッフに話しました。彼らは「ムチャを言うなぁ」と言いたげな顔をしていましたが(笑)。ロゴの色も金なのか黄色なのか……そんなギリギリの線を詰めています。

 『漆黒のヴィランズ』は夜が訪れない独特の天候から物語が始まりましたが、今回も皆さんに驚いてもらえる仕掛けをゲーム内に用意しています。僕たちはそのテーマカラーに合わせて色調整を行っていくので、皆さんは「何となくプラチナなんだな」と覚えておいていただくければと。明確な色をお示しできずに申し訳ないのですが物語が一周してきたことで生まれた、最後の輝きみたいなものを今回はイメージしています。

――ゲーム体験について、もう少し掘り下げさせてください。いままでは“飛行”や“潜水”といった新たな楽しみが追加されてきましたが、今回はそういったアクションは入るのでしょうか?

吉田 移動に関する新しいアクションは、今回もなくていいという話をしています。とくに今回はハイデリン・ゾディアーク編のラストを迎えるので、RPGを遊んだ時に感じられる「ついに終盤まで来た。まもなくゲームが終わるに違いない!」といったテンションの高まりを、ひとつの拡張パッケージ全体で表現したいなと。

 そうしたストーリー体験に沿って、自分でキャラクターを操作してバトルを勝ち抜きつつ、いろんな冒険が楽しめる……今回はそこへ完全にフォーカスしています。僕たちがそれが最高のゲーム体験であると思ったからこそ、今回の拡張パッケージを提供しようと決意したので、ぜひそのあたりにご注目いただければと思っています。これが(新規アクションを入れなかった)ひとつ目の理由です。

 もうひとつの理由は、ごめんなさい。僕にはもうネタがないからです(苦笑)。今回は月に行くこともあり、開発チームから「無重力ですか?」と言われました。でも、「それは泳いでいる様子と変わらないよね」と。ひとたび飛び上がったら、地面に戻ってこれなくなりますし(笑)。一般的な操作にまつわるゲーム体験はすでに揃っているので、そこにムリにひねり出した要素を入れても、面倒くさいことをやるだけになってしまいます。そうしたこともあり、「やらなくていいよ」という話をスタッフに伝えました。むしろ、皆さんがいいネタをお持ちであれば教えていただきたいくらいです(笑)。

――そういう意味では、月での体験は“ふつう”なのでしょうか?

吉田 現実の世界でも、そもそも月とは何なのかや、その裏側や中身はどうなっているのか、今後宇宙はどうなっていくのかについてなど、いろいろな研究が存在すると思います。

 そのうえで、今回“僕たちなりの月”を大きく描いている瞬間があります。それを通じて、「なるほど。『FFXIV』の開発チームは月をそう定義しているのか」と感じてもらいたいなと。そのうえで、ふと実際の月を見上げると、不思議と想像力を掻き立てられる……そんなことをやろうと思っています。抽象的なニュアンスではありますが、せっかくの『FF』なので、僕たちの思う月の存在というものをドーンと前面に出していくつもりです。

 ちなみに、空気はなぜか存在します。画面に窒息ゲージが表示されて、長いあいだ滞在できないなんてことはありません(笑)。そうしたところもシナリオで語られていくので、楽しみにお待ちください。

『暁月のフィナーレ』で追加・変更になるコンテンツについて

――無人島開拓についておうかがいします。貿易の遊びかたは、たとえばプレイヤーがマウントなどを活用して、特産物を直接運搬するデザインなのでしょうか? もしそうであるならば、時間を掛けたプレイヤーほど有利になるTime to Winの状態になってしまうため、別のコンテンツに挑みづらくなってしまいそうです。

吉田 今回はスローライフをコンセプトにしているので、たとえばほかのプレイヤーと何かを競い合ったり、開拓の迅速化を目指したりといった要素は、極力なくすようにしています。他人との交流はゼロではありませんが、基本はソロで進めていけるものだと思っていてください。

 貿易に関しても、自分が開拓した無人島で、植えたり育てたりして得られた特産物を、システム側の流通の仕組みと交換し、ギルなどの報酬を獲得していく遊びにするつもりです。「誰かが何かを達成したので自分もがんばらないと」みたいな味付けにはなりません。あくまでも、ご自身のペースでゆっくりと開拓していただきたいです。

 ご自身で手に入れたお気に入りのミニオンを愛でる場所にしてもらってもいいですし、連れてきた動物を育てていただいても構いません。そのあたりはできるだけカジュアルに楽しめるよう、“他者と競わない”味付けで作っているのでご安心いただければなと。

【FF14】『暁月のフィナーレ』の新規DPSは竜騎士と同じ枠に!? 『FF14』吉田P/Dメディア合同インタビュー

――『漆黒のヴィランズ』でフェイスが導入されたことで、おもにソロで楽しむプレイヤーからたくさんのよろこびの声が上がったと思います。『暁月のフィナーレ』でフェイスに新機能が追加されるとのことですが、そのあたりについての詳細や、あるいはソロプレイヤーがよろこびそうな、そのほかのお話があればお聞かせください。

吉田 シナリオに関わるところなので、あまり直接的に触れることはできません。「8人向けコンテンツもひとりで遊べるようになる?」や、「古いコンテンツでフェイスが利用可能になれば新規の方もよろこぶのでは?」というお声は世界中のプレイヤーからいただいています。僕たちとしても、この要素をすべてに展開させたいと思っていますし、そうすればより多くの方に遊んでもらえるはずです。

ただ、フェイスのアルゴリズムは、インスタンスダンジョンごとにガチガチのフルスクラッチで制作されているおかげで、NPCが気持ちよく動いてくれるわけで……、開発には信じられないほど膨大なコストが掛かります。それを軽減すべく、汎用的に組み込むにはどうすればいいのか。現在は、そうしたところにチャレンジしようとしています。いまのタイミングで具体的なことはお話しできませんが、そういう方向での広がりを目指していると、思っていただけるとうれしいです。

 メインストーリーに沿って登場するインスタンスダンジョンに関しては、 『暁月のフィナーレ』もフェイスに対応しています。最新の物語を駆け抜けるに当たり、少なくともインスタンスダンジョンの進行で困ることはないはずです。暁の血盟のメンバーたちと必死に戦っていける部分は、ゲーム体験としてもちろんご用意するつもりです。

【FF14】『暁月のフィナーレ』の新規DPSは竜騎士と同じ枠に!? 『FF14』吉田P/Dメディア合同インタビュー

――帯防具が削除されますが、それに伴って減少するパラメータは、ほかの防具で補われるのでしょうか?

吉田 もともとアクセサリは、単体で見るとひとつひとつの装備が与えるパラメータ面の影響はさほど大きくありません。もちろん積み重ねることで総合的な影響力は大きくなりますが、(帯が削除されることによる)数字面の影響は小さめです。ただし、帯がなくなったことでプレイ感が変わってしまわないよう、調整はさせていただくつもりです。このあたりは、さほど心配しなくても大丈夫かと思います。

 ご質問に改めてお答えしますと、減ったぶんのパラメータをほかの装備への振り分けも行っていくつもりです。その一方で、今回はパラメータのデノミネーションの存在がものすごく大きいので、内部の計算式は変わっていなくても、受ける影響の度合いはそちらのほうが顕著かもしれません。ただ、そうであっても、あまり気づかないくらいの変化に落ち着かせるつもりです。

 ちなみにマテリアに関する話を壇上でしたところ、開発チームから即座に反応がありまして、「マテリアを外さなくてもしっかりと処理するから何もしなくて大丈夫です」とプレイヤーの皆さんに向けたメッセージが届きました。遺失物管理人から帯を受け取った後、改めてマテリアを取り出せばいいので、事前の準備はまったく必要はありません。

――帯を軍票などに交換したりといったことも引き続き可能ですか?

吉田 分解も含めて、可能です。装備できなくなることを除けば、“かつて冒険者の腰を守っていたと思われていた装備”みたいな記述が説明欄に追加されるくらいの変化しかないのではないかなと(笑)。

――新たな少人数PvPについて、少人数かつロールフリーで楽しめるとのことですが、過去の8人対8人による対戦が思い浮かびます。過去のコンテンツと比較して、どういったところが変わってくるのでしょうか?

吉田 ルールだけでなくマップもすべて変わります。現状はヒーラーの負担がすごく高い状態で、回復役次第であっと言う間に勝負がついてしまうこともあります。逆に言えば「ヒーラーがつらすぎてやりたくない」という理由でマッチングしない傾向も強かったりします。いま計画しているのは、参加者全員が自己回復を持ち、それぞれジョブの特徴を活かして戦っていく方向で作っています。

――フロントラインよりも、ザ・フィ―ストに近い感じですか?

吉田 いわゆるダウンを取るのがザ・フィーストのルールだと思うのですが、それだけではなくなります。陣取りのような要素も加わってくるので、“敵を倒すことだけ”の戦いから脱却することで、カジュアル性とマップを使った戦略性を出せそうかなと。さらに、レーティングマッチのほか、フリーで遊びたい方やPvPランクだけを上げて報酬を入手するためにコツコツと戦うというプレイヤーのどちらにもマッチするよう、ふたつの軸で遊べるようにします。

 報酬についても、装備だけではなく、なにか欲しくなるものをこのコンテンツのために開発しているところです。そうしたあたりも、いずれお伝えできればなと。

――ザ・フィ―ストは、いまお話にあった自己回復のせいでバランスがいまひとつの状況にある気がします。以前から、大人数コンテンツとザ・フィ―ストのあいだで調整を分けてほしいという要望があったかと思いますが、こちらについてはいかがでしょうか?

吉田 つぎの少人数PvPのタイミングから、分けていくつもりでいます。

――現状のザ・フィ―ストも同じ調整になると。

吉田 ザ・フィ―ストをそのまま残すかどうかについては、まだ決めきれていません。いったん閉じる可能性もある、とだけお伝えしておきます。新しいコンテンツにひとまず集中していただいて、フィードバックをいただきたいため、そのときにザ・フィ―ストもあるとなれば、プレイヤーが分散しますし、調整もたいへんになります。ですので、一度閉じる可能性は高いです。

――発表会の最中に、ヒルディブランドの名前が挙がりました。『紅蓮のリベレーター』で飛んで行った後、『漆黒のヴィランズ』で音沙汰がありませんでしたが、つぎの拡張パッケージで何か動きがあるのでしょうか?

吉田 インスタンスダンジョンの漆黒決戦 ノルヴラントで、彼が召喚されていましたよね。『紅蓮のリベレーター』のお話はそこに繋がっていたのでしょうね(笑)。ヒルディブランドに関しては、少しマンネリ化してきたなと思っていたところがあったので、ちょっと1回お休みして、その分充電はできたかなと思っています。世界中からかわいがっていただいているキャラクターで、「つぎが見たい!」というお声もたくさんいただいていますので、その声にはできる限り応えられるものをご用意したいとは思っています。ぜひ再登場にご期待ください……でいいのかな(笑)。

――今回の拡張パッケージでグラフィックスが向上したり、PC版の要求スペックが引き上げられたりするのでしょうか?

吉田 いいえ。プレイステーション5に向けて描画に手を入れて、もう少し高品質な画面で遊べるようにする、といったことはやっていますが、基本的にはそのままです。ただ、今後グラフィックスエンジンの一新はやりたいとは思っています。

 これまでの10年間で作ってきたアセットの数がものすごく多いうえに、データのフォルダ構成もすべて再構築しなおさなければなりません。加えて、4K(対応モニター)向けのテクスチャーへの対応も求められます。

 そもそも、作りかたを変えなければならないと思います。たとえばマントをもっとヒラヒラさせるには、ボーンという概念からリグに変えて、物理エンジンを搭載して、キャラクターに対して個別に物理調整を行う必要が出てきます。するとパフォーマンス過多になるので、これに対応すべくほかのプレイヤーの物理(演算)をオフに設定できるようにする。ですがこれをやると、ほかのプレイヤーのマントの見た目がバキバキになってしまいます。これらすべての要素を詰め直さなければならないので、今回はハイデリン・ゾディアーク編のラストというゲーム体験に重きを置きたかったこともあり、見送りました。

 ただし、下準備といいますか、調査は行っています。先ほど発表させていただいたデータセンタートラベルもそうですが、我々は数年単位で計画を進めています。今回はある意味、いままでと変わらないスペックでもっとワクワクした冒険に出られるので、より安心して遊べると思っていただきたいなと。ですが「吉田はいつかやりたいと言ってる」という部分は、お伝えいただいて構いません。また併せて、途方もなくたいへんな作業になることも報じていただけると(笑)。