先週、人気バトルロイヤルゲーム『フォートナイト』がiOS向けApp Storeから削除されるという事態に発展し、係争中となっているAppleとEpic Gamesのプラットフォーム論争に新展開。本日Epic Gamesが、Appleから先週金曜日にEpic Gamesの開発者アカウントの停止予告を受けていたことを明かした。

 実際の通知はEpic Gamesが公開している訴状の別紙にメール文面が記載されている。これによると、今回の騒動の発端となった『フォートナイト』への独自課金システムの搭載にあたって開発者ライセンス契約の同意書に複数の条項の違反があったため、14日間以内(つまりアメリカ現地時間の8月28日まで)に解消されない限りEpic Gamesの開発者アカウントを停止する、という内容だ。

 これ自体はすでに起こったことに対してありえる範疇の対応なのだが、厄介なのはEpic Gamesが単に『フォートナイト』の開発だけではなく、『PUBG Mobile』などさまざまなゲームが採用しているアンリアルエンジンの開発でもあって、問題の開発者ライセンスは双方を兼ねたものであったことだ。

 特にアンリアルエンジンのようなゲームエンジンは、例えば新しいiOSのバージョンが出るような際に、その一般リリース前にアンリアルエンジンを使うゲーム開発者が自分のゲームを新OSに対応させられるよう、さらにそれに先回りしてアンリアルエンジンを新OSに対応させなくてはならない。

 しかし開発者ライセンスがないと、Appleが外部の開発者のために提供するSDK(ソフトウェア開発キット)やAPIや開発ツール、そしてリリース前のOSプログラムなど、アンリアルエンジンを最新のiOS環境に対応させるための情報に公式にアクセスできなくなる。

 これは、アンリアルエンジン製iOSゲームが直ちに動かなくなるとか配信が停止されるということではないが、和解合意にたどり着くか迂回策でも取らない限り、まず将来的なアップデートへの対応が難しくなって不具合が出る可能性が出始め、さらに最悪のケースではSDKの移行期限が来た際にアンリアルエンジン製ゲームがそのままでは認可されないという可能性を含む(訴状ではiOS 14とmacOS Big Surの登場タイミングから推測して2021年春までに起こりうる事態だとしている)。

 そもそもの論点であるApple側が徴収するストア利用料やハードウェアと紐付いたプラットフォームの独占の是非はともかく、再度繰り返すが、ストアからの削除とアカウントの停止警告をしたAppleの対応自体は規定の対応の範囲内だ。

 しかし「Epic Gamesが『フォートナイト』のファンを人質にした」という揶揄が存在するように「Appleがアンリアルエンジンを採用したiOS開発者を人質にした」と言えてしまう泥仕合の様相を呈してしまっていることや、しかもそれが裁判でEpic Gamesの主張しているAppleの強権的なイメージと重ねて見られかねないというのもまた事実。

 外野としてはさまざまな所に飛び火しないうちに妥協点を見出して欲しいものなのだが、ひとまず今月末に向けて何か解決に向けた動きがあるのか注目だ。