2020年4月24日に2周年を迎えた、アイドル育成&ライブ対戦ゲーム『アイドルマスター シャイニーカラーズ』(以下、『シャニマス』)。本作の2周年を記念して、『アイドルマスター』総合プロデューサー坂上陽三氏と、『シャニマス』制作プロデューサーの高山祐介氏にインタビューを実施。『シャニマス』2年目の振り返りや今後の展開について話を伺った。

※本インタビューは3月下旬に実施しました。

『シャニマス』坂上陽三氏&高山祐介氏インタビュー。283プロが迎える新たな1年とは?_01
写真左:坂上陽三氏、写真右:高山祐介氏

坂上 陽三(さかがみ ようぞう)

『アイドルマスター』総合プロデューサー

高山 祐介(たかやま ゆうすけ)

『アイドルマスター シャイニーカラーズ』制作プロデューサー

アイドルたちの“物語”を描くためのこだわりのシステムやビジュアル

――『シャニマス』の2年目はどんな1年でしたか?

高山この1年は“挑戦”というテーマを掲げ、ビジュアル面ではもちろん、シナリオや楽曲面でも表現の幅を広げ、アイドルたちの魅力をより感じてもらえるよう邁進してきました。プロデューサーの皆さんにも好意的に受け取っていただけたようで、手応えも感じています。

坂上もともと『シャニマス』は、『アイドルマスター』シリーズで培った経験、ノウハウを土台に始めたコンテンツです。それだけにまずは2年目に突入できて、我々の歴史が認められたようで本当によかった(笑)。そしてこの1年では、スタッフがやりたいことがあって、それを演者さんや制作陣が理解して作り上げ、そしてプロデューサーの皆さんがしっかり受け取ってくれるという形ができていて、チームとしての完成度を感じましたね。

――『アイドルマスター』シリーズとして、どんなところにこだわりがあるのでしょうか?

坂上アイドルもののゲームやアニメは、登場するキャラクター=アイドルが主人公となっているものが多いです。しかし、ゲームの『アイドルマスター』では、プロデューサーが主人公となります。ですから、コンテンツとしてはプロデューサーとアイドルの関係性がしっかりと描かれるものであるべきで、その点にはこだわっています。

――そんなシナリオ面はもちろん、イラストも高く評価されている『シャニマス』ですが、全体のコンセプトや、イラスト制作時に意識していることがあれば教えてください。

高山すべてのカードを見渡してみると、表現技法的にはレトロポップ風のフィルターを掛けてみたり、トゥーン調にしてみたりと、幅広い表現が楽しめるようになっていると思います。加えて、ひと目見ただけで、そのイラストの背景にある物語を想像できるような構図で描くように意識しています。そのこだわりが『シャニマス』らしさかもしれませんね。

――中でも、日常を切り取った感が強い印象があります。そこも“らしさ”でしょうか。

高山そうですね。アイドルたちの生活を見ているような構成で描くことで、よりいっそうプロデューサーとの関係性を深く感じさせる効果も生み出しています。そういったプロデューサーとアイドルの関係は、シリーズで一貫しているトンマナ(※)だと思います。

※トンマナ……“トーン&マナー”の略。あるコンテンツに対しての、基本ルール(統一された雰囲気やコンセプトなど)を意味するデザイン用語。広告業界でよく使われる。

――人間関係は本当に深く描かれていますね。

高山『シャニマス』では“ユニット”に強くスポットを当てているという特徴がありますが、そうしたのもアイドルどうしの関係性もしっかり描こうという意図があったからです。

――ビジュアル面では、アニメーションも注目ポイントですが、とくにこだわって作っているところはありますか?

高山“見せたい”場面でもあるのですが、ストーリー性を持たせようとすると、一枚絵ではどうしても表現しきれない部分が出てくるんです。そういったところを補完するために、アニメーションを使っていることが多いですね。

――RのアイドルをSSRに育成できる新機能、アイドルロードが発表されました。これを実装するに至った経緯を教えてください。

高山システムとして“レアリティー”が存在する中で、Rのアイドルを活用できる場面が少なくなってしまっているという現状を何とかしよう、というのがそもそものきっかけです。さらに、2周年ということで新しいプロデューサーさんもたくさん入ってくることもあって、そういった方たちがスタートラインに立つための補助としても役立つだろうと。

坂上コツコツとミッションを続けていけばRがSRになって、それを育成していけばある程度は強くなれますからね。

高山あとは既存のプロデューサーさんにも、“育成”を通じてよりアイドルに愛着を持ってもらえるかなと思って機能を設計しました。

――ほかにも“True End研修”など、初心者に配慮したコンテンツが多く実装されていますが、ヘビーユーザー層に向けた施策は予定されているのでしょうか?

高山もちろん考えています。アイドルロードシステムも、最後までこなすと信頼度の上限が拡張されたりもしますし、ほかにフェス系の機能のアップデートも考えています。また、新しいプロデュースエリアも追加予定なので、やることがなくなった……という人が出ないように要素を追加していくつもりです。

――豊富なコンテンツのひとつに、ギミー先生が描く4コママンガがあります。こちらも高山さんが監修されているのですか?

高山4コマに関しては、基本的にギミーさんにお任せしています。内容も事細かに指定しているわけではなく、そのときに起こるシナリオイベントの概要だとか、どんなアイドルがフィーチャーされるかといった情報をお渡しして、そこを汲み取って描いていただいているんです。上がってきたものはアートディレクターやシナリオディレクターたちと共有してチェックしています。でも、とくに指示を出すことはありません。コメディーもありつつ、たまにしっとりとしたマジメな話があって、いいバランスなんですよね。

坂上もともと「リリースするまでやろう」というくらいの企画だったんですが、やってみたら読み物としてすごくおもしろいものになったのと、プロデューサーさんに気軽に楽しんでいただける媒体としてこれ以上ないものが出来上がったと思っています。ギミー先生も『シャニマス』、ひいては『アイマス』のことを好きでいてくださって、すごく前のめりに協力してくださっていたので、ここでやめるのはもったいないなということで、連載を続けることになったんです。

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新たな“ドラマ”を生み出す可能性を抱く新ユニット“ノクチル”

――2周年で大きな話題となったのが、新ユニット“ノクチル”です。まずはユニットのコンセプトを教えていただけますでしょうか?

高山コンセプトは、ユニットの説明文にもあるように“透明感”、それから“爽やかさ”を意識しています。ビジュアル的には、光が届かないような深い海から浮上していって、顔を出したときの鮮烈な白い光と、その後に広がるブルー……という爽やかな光景をイメージしてさまざまな設定をしていますね。

坂上初めて名前を聞いたときは、聞き慣れない言葉で「のくちる?」と驚きました(笑)。その名前自体に反対することはありませんでしたが、プロデューサーの皆さんに対して、どうしてそういう名前なのかという由来をしっかり説明したほうがいいよ、ということは高山に言いましたね。

高山じつは“夜光虫”を意味する“ノクチルカ(Noctiluca)”をもじった造語なんですよ。プロデューサーたちも発表以降、由来をあれこれ予想してくれていましたね。

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――6つ目のユニットとなりますが、彼女たちの特徴はどういうところなのでしょうか。

高山設定としては4人全員が幼なじみというところですね。これまでの5つもそうですが、アイドルユニットのメンバーは、アイドルになってから知り合ったという関係性がほとんどなんですよ。でも、ノクチルは始めから全員が顔見知りです。そこに、ほかのユニットとは違うドラマが生まれる素地があるのではないかと期待しています。

――ノクチルは4人編成で初の偶数人数となっています。ここは狙ったのですか?

高山狙いました。4人だと、ペアの関係性が組みやすいんですよ。たとえば“同級生の透と円香”のような横のつながりを作ったり、“透と透を慕っている雛菜”みたいな縦のつながりも2対2なら作りやすい。これが奇数だとバランスが難しいんですよね。

――ちなみに、アイドルたちの名前の付けかたには、シリーズでルールがあったりするのですか?

坂上名前のルールはあってないようなもので、だいたいシリーズごとに作っています。765プロは艦船の名前から取っているというのは知られていますよね。じつは『ミリオンライブ!』でも、当初は高速道路のインターチェンジの名前から考えていたんです。ただ、それだと人数ぶん考えるのが難しくて、途中から関係なくなってしまったんですが(笑)。

高山それで今回の『シャニマス』では、現実でもありそうな名前を考えて付けています。“名は体を表す”ものにしようということも考えてはいたものの、インパクトが強すぎる名前になってしまうので、それなら身近に感じられる名前にしようということになりました。

――ノクチルの楽曲についても、どういう点を意識して作ったのかお聞きしたいです。

高山バンドサウンドでありつつも、ビジュアルイメージと同じようにアイドルらしい爽やかさや、透明感を意識しています。9月16日発売予定のCDに収録される表題曲の『いつだって僕らは』も、透明感と疾走感を持つ爽やかなサウンドになっていますが、ユニットとしてそういう方向性を目指しています。

――プロデューサー陣からは、「ソロ曲は出さないんですか?」という声も聞かれます。

高山ソロ曲に関しては、そのご要望は認識しています。「やらない」と思っているわけではなく、長期的なテーマと合うタイミングでやれればと考えています。

――同様に、ユニットを超えたコラボ楽曲も要望が多いところだと思いますが……。

高山コラボについては、今後は増やしていく予定です。これまでそれほどやってこなかったのは、最初はユニットの印象だとか特徴を知られていないと、伝えるのも難しいと考えていたからなんです。2年かけて種は蒔いたので、これからを楽しみにしてください。

坂上ソロ曲もコラボも、我々がやりたいと思う気持ちは大事だと思うのですが、こちらから押しつけるような形にはしたくなかったんです。皆が「楽しそう」と想像が頭に浮かぶようになってからやっていきたいですね。

――2年目の“挑戦”に続き、3年目ではどんなテーマを考えていますか?

高山4月8日からスタートする新しいCDシリーズを“GR@DATE WING(グラデート・ウィング)”と名付けました。“グラデート”というのは徐々に色を変えていくという意味なのですが、アイドルたちも成長したり、それにともなって考えかたが変わっていっています。それを色の変化と表現して、楽曲や物語として描いていければと考えています。

坂上これまでの2年は『シャニマス』とはどういうコンテンツなのかをプロデューサーたちに伝えるフェーズでした。これからは『シャイニーカラーズ』が『アイドルマスター』シリーズを引っ張っていくようなコンテンツに育っていってほしいと思っています。

――『アイドルマスター スターリットシーズン』には、『シャニマス』からも5人登場しますが、どのように決めたのでしょうか?

坂上最初はぜんぜん決まらなかったんですよ。でも「発案者である高木社長だったらどんなふうに選ぶのかな」と考えまして。そうしたら、各プロダクションで似たような役割の子を選ぶことはないだろうし、アイドルの成長を考えたりするだろうと。その考えのもと、各タイトルのプロデューサーに相談しながら、起用するアイドルを決めました。

高山選出に関しては、久多良木(勇人氏。『スターリットシーズン』プロデューサー)と話し合いながら、誰を出せばドラマが生まれやすいかを考えました。たとえば、283プロで最年少の果穂を出したら、亜美や真美、やよいら年の近いアイドルと何かできるかも、とか。甜花だったら、同じ“姉”つながりで城ヶ崎美嘉との関係性が描けるかも、とか。そういったドラマを作れる、作りたいと思った5人を選んでみました。

――『スターリットシーズン』でのモデリングはどうですか?

高山かわいいですね(笑)。ゲームの動画やスクリーンショットも見せてもらうのですが、僕らもふだん後ろ姿を見ることがないので、そこまで描かれているのが新鮮でしたね。

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――それでは、最後にファンの方へ3年目の抱負をお願いします。

高山ゲームはもちろん、CDを買ってくださったりイベントに参加してくださるプロデューサーの皆様のおかげで、2周年を迎えることができました。温かい声、きびしい声をいただきながら、それらを励みにしてここまで来られたと思っています。それは演者さんも含め、制作チーム一同、同じ思いです。3年目も真摯に取り組んでいきたいと思います。

坂上今年で『シャニマス』は3年目に突入し、『アイドルマスター』も15周年を迎えます。このコンテンツはスタッフ、演者を含めてすべてのクリエイターが集まった総合力で成り立っています。その中にプロデューサーの皆さんが加わって、今日まで続けることができました。奇跡ではないかと思うくらいすばらしいことです。これからも皆さんとともにがんばっていきたいと思います。

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