2019年11月14日~16日(現地時間)、イギリス・ロンドンにてX109が開催。ここでは、会場で実施したXbox ヘッド フィル・スペンサー氏へのインタビューの模様をお届けしよう。数々の新発表に対するフィル・スペンサー氏の手応えは?

フィル・スペンサー氏インタビュー。Xbox Game Passは日本での展開にメドは立った。2020年はXboxにとって飛躍の年となるか?【X019】_02

フィル・スペンサー氏

Xbox ヘッド

――来年のProject Scarlettの発売を控えて、どういった情報を出すか悩まれたと思いますが、X019での発表の位置づけを教えてください。今回のX019の狙いは? とくに注力したポイントはどのへんですか?

フィルX019はファンの皆さんのためのイベントです。ゲームに対する愛が中心にあるイベントとなります。ファーストパーティーやサードパーティーの新しいゲームをお見せすることが目的となります。とくに日本にはすばらしいパブリッシャーさんがたくさんあります。そういったタイトルをお見せする場なのです。Project Scarlettは2020年にローンチされますので、そのときが来たらプランはお教えするつもりでいます。今回はそうではなくて、“ゲームを愛するファンの皆さんの集い”ということで、『スター・ウォーズ ジェダイ:フォールン・オーダー』を筆頭に、ファンの皆さんに喜んでいただけるようなソフトをラインアップしたのです。

――ロンドンで開催された理由を教えてください。

フィルかつて、 “X0”のイベントは、ヨーロッパ各地で開催していました。昨年“X0”イベントのコンセプトを再構築して、X018はメキシコシティで実施しました。とてもすばらしいイベントでした。そのときに、「2019年はどこで開催すべきだろう?」ということで、議論しました。そこで、ロンドンにはたくさんのゲームファンがいるので……ということで、最適な選択に思えました。
 すでに来年のことも考えています。E3のような大きなショウに行けなくて、大きなローカルイベントもないところで……ということで検討しています。なかなかイベント会場に足を運ぶ機会が持てない方たちとゲームを祝福したいのです。

――すでに来年の候補地はある程度絞っているのですか?

フィルいくつかのアイデアはあります。どこかオススメがありますか?

――あはは(笑)。そう聞かれると“日本”とお答えしたいです!

フィル(笑)。“X0”イベントは、日本で成功すると思いますか?

――もちろんです! 盛り上がると思います。

フィルそれはすばらしい。参考にさせていただきます。もちろん、東京のことも候補にあがっていますよ。

――Project xCloudとXbox Game Passでの展開は、やはり次世代機を睨んでのことなのでしょうか?

フィルProject xCloudやXbox Game Passは、ユーザーの皆さんに選択肢を提供するサービスです。どこでプレイして、どうやってゲームを購入するのか……という。Project Scarlettは、“ゲームをプレイするのに最適の場所”になります。テレビを目の前にしてゲームをプレイすることを想定しています。ただし、必ずしもコンソールをゲームする環境が整っていない人もいます。そのような方でもProject xCloudがあれば、ネット環境さえ整っていればゲームがプレイできます。今回対応コントローラーを増やす発表をしたのも、そのような観点からのものです。

――もしかしてProject xCloudは、コンソールがあまり普及していない国や地域をおもなターゲットにしているのですか?

フィルというわけでもありません。もちろんコンソールが普及してない国や地域でも楽しんでいただきたいですが、PCやXboxのゲームが普及している国でこそ楽しんでほしいです。旅行などでPCのないところに行っても手軽に楽しめますし、とても利便性は高いです。とはいえ、今回、2020年にインドでProject xCloudのプレビューを実施することを発表しましたが、どのような反響をもたらすか興味深いです。たくさんのゲームユーザーの潜在層がありながら、PCゲームやコンソールはまだそこまでは普及していないので。いずれにせよ、私たちの技術力の研鑽により、コンソール向けゲームを、コンソールを持っていないユーザーさんにも楽しんでいただけるのがProject xCloudではありますね。

――ちなみに、Project xCloudは、いろいろなデバイスに拡大するとアナウンスしていましたが、将来的にはコンソール機、つまりProject Scarlettでもサービスを想定しているのですか?

フィルストリーミングにはふたつのテクノロジーがあります。私たちのデータセンターからストリーミングするのと、プレイヤーがお持ちのコンソールでストリーミングするのとです。クラウドを活用するいちばんのポイントは、どのデバイスでもプレイできるということです。言ってみれば、Project Scarlettは“ゲームをプレイするのに最適の場所“です。ふつうにゲームを楽しめばいいわけで、ストリーミングに対して重きをおいているわけではありません。

フィル・スペンサー氏インタビュー。Xbox Game Passは日本での展開にメドは立った。2020年はXboxにとって飛躍の年となるか?【X019】_01

――『龍が如く』シリーズと『ファイナルファンタジー』シリーズ、『キングダムハーツ』シリーズがXbox Game Passでリリースされることが決まりました。その経緯を教えてください。なぜそこまで日本のタイトルの獲得に熱心になってくれているのでしょうか?

フィルそうですね(笑)。ファンの皆さんの声に耳を傾けての結果です。以前、E3で『キングダム ハーツIII』をXbox Oneでリリースすることを発表したときにファンの方にとても喜んでいただけたのですが、一方で「シリーズ作をXbox Oneでプレイしたい」とのご要望もいただきました。私たちはスクウェア・エニックスさんと良好な関係を築いており、このことに関して話し合いを続けてきたわけです。
 これは、『キングダム ハーツ』シリーズだけではありません。『ファイナルファンタジー』シリーズにしてもしかりです。私は、Xbox Game Passのユーザーが、『キングダム ハーツ』シリーズや『ファイナルファンタジー』シリーズをプレイしてくれるのを楽しみにしています。
 『龍が如く』シリーズをXbox Game Passにラインアップできたのも、同様に誇らしく思っています。ここ数年にわたって、セガゲームスさんとは良好な関係を築いてきました。ご存じのとおり、今年のE3のXboxのブリーフィングでは、日本のスタジオが大きな存在感を見せました。フロム・ソフトウェアさんは『ELDEN RING(エルデンリング)』を発表しましたし、バンダイナムコさんは複数のタイトルをステージでお披露目しました。ファンの皆さんの反応もとてもポジティブです。日本のパブリッシャーさんもXboxを、有望なグローバルプラットフォームとして期待してくださっているようです。今回橋本さんがロンドンにいらっしゃいましたが、今後のタイトルについての話もしています。

――『龍が如く』シリーズは3作目以降もリリースされますか?

フィルそうですね。そうなってくれればいいなと、とても望んでいます。セガさんとの良好な関係が築かれているので。『ファンタシースターオンライン2』でシリーズが、Xboxプラットフォームに帰ってくるのにあたっては、綿密な話し合いを重ねました。『龍が如く』シリーズにしてもそうです。Xboxのコミュニティーが、それらのタイトルをサポートしてくれることを強く望んでいます。今回のアナウンスにいたるまでには長い道のりがありました。もちろん、私たちはユーザーの皆さんがどんなゲームをプレイしたいか、理解しています。

――では、『ファイナルファンタジーXIV』のXbox Game Passでの展開の可能性はありますか?

フィル今回のアナウンスでは、『ファイナルファンタジーXIV』は入っていませんでした。スクウェア・エニックスの吉田さんとは、『ファイナルファンタジーXIV』をXbox Oneでプレイできるように、直接お話をしています。そのために必要なソリューションも見つけました。明確な日にちはお伝えできませんが、Xboxファンが、『ファイナルファンタジーXIV』を期待しているということは理解しています。

――そのほか、Xbox Game Passで、リリースしたい日本のタイトルはありますか?

フィルあはは(笑)。たくさんあります。日本には、Xbox でプレイできないタイトルがたくさんあります。パブリッシャーさんに呼びかけて、それらのタイトルをXboxでプレイしてもらうようにするのが、プラットフォーマーリーダーである私の仕事です。パブリッシャーさんと良好な関係を築き、Xboxでリリースしてくれる機会を探すのです。『NieR:Automata BECOME AS GODS Edition』や『鉄拳7』がまさにそうでした。日本のパブリッシャーさんはすばらしいコンテンツを持っているところが多いので、すべての日本のパブリッシャーさんは私にとって重要です。

――で、肝心のお話なのですが、Xbox Game Passの日本でのサービスインはどうなりますでしょうか?

フィルこれまでもお話している通り、サービスインの予定はあります。これまでは、レーティングの違いがネックだったのですが、解決方法を見つけました。いまは具体的なお話はできませんが、来年になれば、その計画についてもっとしっかりとお話しできるかと思います。

――つまり、2020年は日本でも、Project xCloudとXbox Game Passというふたつのサービスが楽しめる可能性が高い、ということですね?

フィル2020年にProject xCloudのプレビューが日本でも行われるというアナウンスはしましたが、Xbox Game Passに関しては明確なことはお話していません。ただ、チームとは、日本市場がどれだけ重要かわかっています。とても真剣に取り組んでいるので、2020年が日本のXboxユーザーにとって、すばらしい年になればいいなと思っています。

――最後に、これから来年のProject Scarlettの発売に向けて、日本市場での施策を教えてください。

フィルProject Scarletは2020年に世界中でローンチします。これは以前にもお答えしたかと思いますが、日本ではXboxはナンバーワンのプラットフォームではありません。いまXbox Oneを遊んでくださっているファンの方々は、私たちにとってはとても大切で、日本のクリエイティブコミュニティーもとても大切です。始めの段階からProject xCloudのプレビューを日本で実施するのも、日本を大切にしているがためです。Project Scarletは日本でも、ぜひとも成功してほしいと思っています。

 インタビューを終えて率直に思ったのは、Project Scarlettの話題に対するガードは固いということだが(当たり前か)、日本のパブリッシャーに対して親近感を抱いてくれていることは、記者としても思わずうれしくなってしまう。『龍が如く』シリーズや『ファイナルファンタジー』シリーズ、『キングダム ハーツ』シリーズが、Xbox Game Passにラインアップされるのはフィル・スペンサー氏の大きな成果。Project xCloudもプレビューも2020年に日本で行われるとのことで、2020年はXboxに期待したい。