架け橋ゲームズが、2019年5月23日に配信されたTeam17 Digitalによる脱獄シミュレーション『The Escapists: Complete Edition』で、Nintendo Switch(ニンテンドースイッチ)のサポートタイトル100本を達成した。

 念のために説明すると、架け橋ゲームズは、海外インディーゲームスタジオが日本でゲームをリリースするにあたって、パブリッシングサポートを行う会社。2013年の設立以降、ローカライズやPRの支援など、日本と海外のゲームクリエイターおよびユーザーをつなげる“架け橋”となるべく邁進してきた。BitSummitや東京ゲームショウのインディーゲーム出展コーナーを取材すると、「あのタイトルも架け橋ゲームズが」「ここも架け橋がサポートしているのか!」というのはよくある話。今回の100タイトル達成は、同社がいかにアグレッシブにサポートに取り組んできたかの証拠とも言える。4人のスタッフでこれだけのタイトルをこなすのはまさに驚異的というほかない! というわけで、100タイトル達成を記念して、架け橋ゲームズの4人にコメントをいただいた。

架け橋ゲームズがNintendo Switchのサポートタイトル100本を達成!偉業達成に対する思いを聞いた_01
架け橋ゲームズの記念すべきNintendo Switchサポートタイトル100本目となった『The Escapists: Complete Edition』はあらゆる刑務所からさまざまな手段で脱獄するというアクションゲーム。
架け橋ゲームズがNintendo Switchのサポートタイトル100本を達成!偉業達成に対する思いを聞いた_02

Zach Huntley(ザック・ハントリ)

架け橋ゲームズ ビジネスマネージャー 左から3人目

渡辺裕美(わたなべひろみ)

架け橋ゲームズ プロジェクトマネージャー 右端

桑原頼子(くわはらよりこ)

架け橋ゲームズ ローカライゼーションマネージャー 左端

LayerQ(レイヤーキュー)

架け橋ゲームズ マーケティングマネージャー 左からふたり目

ザック・ハントリ氏

――お仕事内容をお教えください。

ザック架け橋ゲームズの社長であり、ビジネスマネージャーです。おもな仕事は、日本でゲームをリリースするにあたってサポートを必要とする欧米のゲームを探すことです。そのうえで、デベロッパーやパブリシャーと密に連絡を取り合ったり、ビジネスに関する業務を日々行なっています。

――仕事をするにあたって心がけていることは?

ザック正直なところ、どのプロジェクトにもそれぞれに課題があるのですが、可能な限りクオリティーの高い日本語ローカライズができるように、ローカライズ業務のワークフローを改善するようにつねに心がけています。それは簡単ではありませんし、たまにクライアントが予期せぬ事態を引き起こすことがありますが、その都度ローカライズチーム(翻訳者さんや架け橋ゲームズスタッフ)のために戦っています!

――Nintendo Switchで100タイトルを達成したことに対する率直な感想をお教えください。

ザックあはは。いまもとっても忙しいですし、つぎの100タイトルについての心配を、いまからしています。とは言え、100タイトル達成というのは特別なことだと思いますし、この偉業を少人数で成し遂げられたことを誇らしく思っています。たくさんのゲームをこれだけ短い期間でリリースすることは、大きなチームでさえも難しいと思いますが、私たちはこれをたった4人で乗り切ったわけですから、本当にクレイジーですよね!

――100タイトル目となった『The Escapists: Complete Edition』に対するセールスポイントをお願いします。

ザック『The Escapists: Complete Edition』でいちばん優れている点は、プレイヤーごとに違った体験ができることです。バラエティーに富んでいて、いくつものユニークな遊びかたができることが、このゲームの価値を高めています。

――今後のそこはかとない目標をお教えください。

ザック架け橋ゲームズを日本だけでなく、アジア全体のインディーゲーム企業として認知度を高めたいです!(笑)。本音を言うと、これからもすばらしいゲームの日本リリースをサポートし続け、つねに刺激をくれるすばらしい開発者たちと仕事を続けていくことです。私自身、以前にゲームデザイナーをしていたこともあり、私たちのクライアントが作るゲームに畏敬の念を抱かずにはいられません。これからも彼らをサポートしていきたいですし、すばらしいインディータイトルを日本のプレイヤーに届けていきたいです。私はこのことを“お金のため”にやっているわけではありません。“ゲーム業界によいインパクトを与えるため”に、いままでも、そしてこれからもずっと続けていきます。

渡辺 裕美氏

――お仕事内容をお教えください。

渡辺ひと言で言うと“黒子”です(笑)。肩書きとしては“プロジェクトマネージャー”という立派な名前がついています。架け橋ゲームズのほかのスタッフが専門的なことに従事しているのに対し、私はそれ以外のすべて(雑務全般。日本語を使うところ専門)を担っています。
 今年からは、“ビジネス開発”という、もともと自分でやりたかった分野に挑戦させてもらえることになったので、“黒子”から脱却して、架け橋ゲームズのスタッフとして認識されるよう、解像度(!?)を上げていこうと思ってます。いままで、「あなた、誰?」と言われることも少なくなかったので……。架け橋ゲームズの中では、ザックのつぎに古いスタッフなんですけどね……(笑)。

――仕事をするにあたって心がけていることは?

渡辺“メンバーが働きやすい環境を整える”ということに関しては、いちばん重きをおいています。ザックはつねに「楽しく仕事をしてほしい」とスタッフに言っています。
 ザックとふたりで架け橋を切り盛りしていたころは、ふたりで話せば何とかなっていましたが、スタッフが増えるとそのスタッフ独自のやりかたもあったりするので、できるだけ負担のかからない方法を考えて調整するようにしています。
 仕事にどうやって向き合ったかということは、必ず結果として現れるものだと思っています。すばらしい作品をさらにすばらしいものにするために、自分も含め、いっしょに仕事をする関係者が楽しく仕事をすることで、インディーゲームファンのみなさまにもゲームをより楽しんでいただけると考えています。

――Nintendo Switchで100タイトルを達成したことに対する率直な感想をお教えください。

渡辺全体で100タイトルを超えたときも驚きましたが、ひとつのプラットフォームで、しかもこの短期間(2年強)に100タイトルを達成できたことは、すばらしいゲームタイトルの数々と、デベロッパー、パブリッシャー、任天堂の各ご担当者様、翻訳者の方々、架け橋ゲームズを支えてくださるまわりの方々とスタッフ、そしてインディーゲームファンのみなさまのおかげです!

――100タイトル目となった『The Escapists: Complete Edition』に対するセールスポイントをお願いします。

渡辺テーマは“脱獄”ですが、私は“人の目を盗んでいたずらし放題のゲーム”だと思っています。仲間の監房に入ってこっそり引き出しのものを盗み、看守の目を盗んで抜け穴を作り……。表向きはしっかりタスクをこなしているように見せかけて、じつは裏で着々と脱獄の準備を進める……。ただたまに、刑務所生活のルーチンタスクが楽しくなり、脱獄するという目的を忘れてしまうこともあるのでご注意を(あれ?私だけ!?)。

――今後のそこはかとない目標をお教えください。

渡辺3人目の子供を産む!(2児の母、41歳)。……あれ?違う? 架け橋ゲームズのカナダ支社を作って、カナダに住む!……あれ?これも違う? 
 真面目な話をしますと……。私個人としての夢(目標)は、架け橋ゲームズのスタッフになった時点でほぼ叶っているので、これからも“すばらしいゲームをインディーゲームファンのみなさまにお届けするための架け橋になる”ということに尽きます。その先で、架け橋ゲームズを設立した当初にザックと架け橋ゲームズのレジェンド矢澤竜太さん(架け橋ゲームズの共同創業者)が行おうとしていた“日本から欧米への架け橋”を、将来的に実現できればと考えています。
 ……なので、架け橋ゲームズのカナダ支社を作って、カナダへの移住を実現でき……(まだ言う)。

桑原頼子氏

――お仕事内容をお教えください。

桑原ローカライゼーション・マネージャーとして、おもに翻訳者さんと開発側の架け橋としてお仕事しています。翻訳者さんのアサインや日々のメールのやりとり、提出された翻訳ファイルや開発側への質問の確認、またLQA(発売前のゲームソフトを実機でプレイして、テキストに関係する不具合がないかを調査すること)によって得られたバグ報告の精査確認をします。
 大型案件や翻訳者さんがお忙しいときには、私がデバッグすることもあります。最近ではSwitchの開発ビルドを確認することも増えました。
 ときには小さめのタイトルを翻訳から担当したり、ニンテンドーeショップ新作入荷情報に掲載される開発者のコメントを翻訳することも。
 また、いままではザックひとりで行っていて手が回らなかった社内外の作業フローについて検討し、よりスムーズにできるように現在絶賛調整中です。

――仕事をするにあたって心がけていることは?

桑原“優先順位を見極めながら柔軟に対応する”ことと、“感謝を伝えることを忘れない”ことです。
 私の仕事は開発側の動きによって毎日くるくると変化します。突然新しいビルドが届いたり、かなり前に質問していた件について回答が返ってきたり。それに合わせて自分のタスクを調整し、都度翻訳者さんに連絡してスケジュールを確認する必要があります。「今日はこれをしよう」と余裕をもって予定していたタスクがまったくできなかったなんて日常です(笑)。毎回望んだ通りにプロジェクトが動くわけではないので、与えられた予算と時間で、いま最大限何ができるかをつねに考えています。
 また、仕事はひとりの力だけでなく、たくさんの方の力を借りてやっとできるのだということを日々実感しています。翻訳者さん、開発者・パブリッシャー、架け橋スタッフ、ファンの方々に感謝を伝えることを忘れないように心がけています。

――Nintendo Switchで100タイトルを達成したことに対する率直な感想をお教えください。

桑原毎週何かしらリリースタイトルがあるので、もうすぐ100本と聞いたときに「え? ほんと? いつの間に?」と思ったのが正直な感想で……。あまり実感はありません(笑)。関係者の皆さん全員に本当にお疲れ様ですとお伝えしたいです!

――100タイトル目となった『The Escapists: Complete Edition』に対するセールスポイントをお願いします。

桑原私個人の意見だけでなく、翻訳者さんの声も混ぜてみました。

【1】脱獄ものとは思えないコミカルさ
 脱獄が目的のゲームなのに、シリアスなものではなくて、囚人のひとつひとつのコメントがコミカルだったりかわいらしかったりするところがまず魅力のひとつですね。シャワー浴びているときのひと言とか、思わず笑ってしまうときがあります。囚人なのに人間味があって。

【2】工作要素と成長要素
 いろいろな素材を集めて脱獄道具を作っていくという工作(クラフト)要素があるので、クラフト好きの人は喜ばれると思います。でも抜き打ちで官房の検査があって、せっかく作っても机に禁制品を入れてると没収されることもあります(笑)。
 本を読んだりインターネットを見たりして知力を上げると、より高度なアイテムをクラフトできるようになります。ほかにも攻撃力が増加したり、より多くのダメージに耐えられるようになったりなどの成長要素も。

【3】囚人との友好度
 仲間の囚人とのあいだに友好度があります。朝の点呼のときに、「なぁ、ちょっと頼まれてくれないか……」と声をかけられたりして、そういった頼まれごと引き受けると友好度が上がります。友好度を上げれば仲間を引き連れて歩くこともできますし、気に入らない囚人や看守を攻撃するように指示を出すこともできます。反対に友好度の低い囚人は向こうから攻撃してきたりするので、刑務所内でほかの囚人との関係性をいかにやりくりするか、そういった刑務所ドラマなどでありがちな囚人間のソーシャルな要素もおもしろいです。

【4】いかに看守の目を潜り抜けるか
 一日の流れが基本的に決まっているので、その流れに従っていれば看守からは目を付けられないものの、それだといつまでたっても脱獄ができません(笑)。「私は模範囚です」をアピールしつつも、シーツを作って部屋の鉄格子にかけて、中でやっていることを外から見えないようにしたり、壁に開けた穴をポスターでふさいでごまかしたりなど、アイテムを駆使していかに密かに脱出計画を進めるかというのが、このゲームの醍醐味です!

――今後のそこはかとない目標をお教えください。

桑原ローカライゼーション・マネージャーとしての目標は、翻訳者さんと開発の潤滑油になることです。みんなが楽しく気持ちよく、無理をしないでお仕事に臨めるようになれたらと思っています。スケジュールに余裕があったり、開発側の理解が深かったり、ゲーム自体がとてもおもしろかったり、翻訳者さんが笑顔になれるような何かしらの要素を増やしていきたいです。翻訳者さんが楽しく翻訳する→ユーザーさんに伝わる →開発側も喜ぶ といった、素敵ループを目指しています。
 個人としての目標は……いつか“架け橋感謝祭”的なフェスティバルというか、イベントができればいいですね。各国の開発者さんに日本に来ていただいて、いままでリリースしたタイトルをお披露目して、翻訳者さんの名前も公開して。架け橋ゲームズだからできる、開発と翻訳者さん&ファンの方々の距離が近い、暖かいイベントができれば... :)

LayerQ氏

――お仕事内容をお教えください。

LayerQマーケティングマネージャーとして、ゲームのストアテキストやプレスリリースを制作するのがおもな業務内容です。ストアテキストというのは、皆さんがニンテンドーeショップやPS Storeなどでゲームを調べたときに目にするゲーム説明文のことです。そのタイトルのキャッチコピーや特徴などをわかりやすく制作する、というのが僕の仕事です。そのほかにもSNSアカウントの管理、日本語版トレーラーの監修、紹介動画の制作などにも取り組んでいます。

――仕事をするにあたって心がけていることは?

LayerQ誰が読んでもゲームの内容が伝わる文章制作を心がけています。幅広い年齢層や、ふだんからあまりゲームをプレイしない方も想定して、より多くの人にゲームを伝えたいと思っています。また、インディーゲームはメジャーゲームよりもユニークなアイデアが詰まっていて、誰も見たことのないような世界観や存在していることが多いです。ですので、そういう部分を皆さんに文章でうまく伝えていけるように努力しています。

――Nintendo Switchで100タイトルを達成したことに対する率直な感想をお教えください。

LayerQ小さなチームですが、架け橋ゲームズだからこそ達成できた数字だと思います。個人としては、皆さんが日本でインディーゲームを楽しむサポートを少しでもできていることが何よりも嬉しいです! これからもつぎの100タイトルに向けて、海外インディーゲームをひとつひとつ丁寧にお届けしていきたいです。

――100タイトル目となった『The Escapists: Complete Edition』に対するセールスポイントをお願いします。

LayerQThe Escapists』は、プレイヤーが囚人としてさまざまな刑務所へと送られて、そこから脱獄を目指すアクションシミュレーションゲームです。『The Escapists: Complete Edition』は、これまでの追加コンテンツがすべてひとつになった決定版です。
 刑務所という非日常的な舞台で、自分なりの脱獄計画を立てていくのがとてもおもしろいポイントです。最初は囚人としての振る舞いや日々の過ごしかたとまどうかもしれませんが、少し慣れてくるといつの間にか看守の目を盗んで密かに脱獄を目論む立派な囚人になれると思います。
 また、刑務所のロケーションや設定もバリエーション豊かで、別の囚人仲間といっしょに脱獄を目指す“エスケープチーム”や、サンタが幅を利かせる“サンタの搾取工場”など、ちょっと笑えるような要素があるのも魅力のひとつです。

――今後のそこはかとない目標をお教えください。

LayerQいまよりも皆さんにわかりやすくゲームの魅力を伝える文章を作っていきたいと思います。日本でニンテンドーeショップのテキストをいちばん多く書いているので、いつか自分にしかできないようなインディーゲームの伝えかたができるようになりたいですね。
 チームとしては、最近インターネット番組やTV番組で架け橋ゲームズのサポートタイトルを取り扱っていただくことも増えてきたので、お茶の間の皆さんにも楽しくインディーゲームを知ってもらうための取り組みにもチャレンジしていきたいと考えています。

 ちなみに、架け橋ゲームズの皆さんからコメントをいただいたのが、5月下旬。あれから約ひと月……。架け橋ゲームズのNintendo Switchサポートタイトルは103本となっている。これから怒涛のタイトルラッシュがあるのだとか……。架け橋ゲームズは100本を超えても元気なようです!