カルト教団の司祭長となり、教団を存続させろ!

 2019年3月7日より、Nintendo Switch版が配信開始となった『The Shrouded Isle(ザ シュラウディッド アイル)』。本作は、カナダのデベロッパーKitfox Gamesが開発したシミュレーションゲームで、Steamでは2017年より配信され人気を博していた作品だ。

 本作でプレイヤーが演じる役割は、とあるカルト教団の司祭長。司祭長であるあなたは、信奉する邪神へ生贄を捧げ、教団内の反乱分子を処刑し、教団を繁栄させなければならない。

 本作の最終的な目的は、邪神が現世に復活する5年後まで教団を存続させること。「ただ教団を維持するだけなら簡単なんじゃないの?」と思うかもしれないが、さにあらず。信者はいとも簡単に機嫌を損ねて司祭長を裏切るし、放置すればすぐに宗教から目が醒めてしまう。おまけに島には奇妙な伝染病まで流行していて、教団を維持するのも楽ではない。

 このゲームは信者の中から適切な人材を選んで仕事を割り振り、教団内の治安と信仰を維持する“人事ゲー”だ。教団の采配権はすべてあなたに託されている。しかし、くれぐれも裏切り者に後ろから刺されないように注意してほしい。

カルト教団を管理する『The Shrouded Isle』は、中間管理職の苦悩が身に染みる“人事ゲー”だった!? Switch版プレイレビュー_06

邪神を立てれば信者が立たず……中間管理職はツラいよ

 では、具体的にどのようにして教団を運営していくのかを解説しよう。本作において教団を維持するのには2つのパラメータの管理が重要になる。

 ひとつは「無知」「情熱」「自制」「後悔」「服従」という“信者がどれだけ教団に心酔しているか”を表す5種類のパラメータ。これはゲーム内で用いられる言葉ではないが、狂信度とでもいえばわかりやすいだろうか。

 「無知」の数値を基準値以下のまま放置すれば、やがて信者は外の世界の知識を手に入れて教団から離れてしまう。ほかのステータスも同様で、どれもカルト教団の運用に欠かすことのできない要素なのだ。

 そしてもうひとつのパラメータが島に住む貴族の“満足度”。島内には信者を束ねるケグンニ家、イオセフカ家、カドエル家、エファソン家、ジシュカ家の5家系の貴族が暮らしており、彼ら貴族は信者の管理をサポートしてくれる。前述した5種のパラメータも、貴族が儀式を行うことによって変動させてくれる。

カルト教団を管理する『The Shrouded Isle』は、中間管理職の苦悩が身に染みる“人事ゲー”だった!? Switch版プレイレビュー_05

 ところが、彼らは「自分の一族に儀式を行わせてくれない」「一族の者が生贄として処刑された」などさまざまな理由で機嫌を損ねてしまう(満足度が下がる)。そうなると徐々に彼らは不満を募らせていき、最終的には司祭長を裏切ってしまう。

 裏切られて後ろからブスリ……といかれないためには、5つの家系すべてに平等に接しなければならないのだが、これが難しい。まさにあちらを立てればこちらが立たず、だ。

 信者を教団に傾倒させつつも、貴族たちの機嫌を損ねないように立ち回り、かつ邪神の要求する生贄も捧げる……というなかば無茶な要求を司祭長は押しつけられる。上司(神)の要求を呑み、部下(貴族)の機嫌をとり……。中間管理職というのは、辛いものだ。

カルト教団を管理する『The Shrouded Isle』は、中間管理職の苦悩が身に染みる“人事ゲー”だった!? Switch版プレイレビュー_01
病気にかかったキャラは監禁して“治療”してやろう。

キャラごとの性格を見極め、的確な人事を行え!

 もうひとつ重要な要素が、顧問の存在だ。このゲームでは季節ごとに5人の顧問を選び出し、彼らに焚書や異端審問といった儀式を行わせることができる。儀式を行うと「無知」や「服従」といったパラメータを変動させられるため、顧問の選出は本作の最重要ポイントといっても差し支えないだろう。

カルト教団を管理する『The Shrouded Isle』は、中間管理職の苦悩が身に染みる“人事ゲー”だった!? Switch版プレイレビュー_02

 そして、儀式の際に貴族がパラメータに与える数値に関係するのが、“徳”“不徳”。人には誰しも長所と短所があるように、本作に登場する貴族たちにもひとりひとりに徳と不徳という長所・短所がある。

 たとえば下の画像では、シェサ・イオセフカは、徳に「情熱に満ちた」、不徳に「反抗」と表記されている。この場合シェサを顧問にして儀式を行わせると、「情熱」の数値が上がり、「服従」の数値が下がる。

カルト教団を管理する『The Shrouded Isle』は、中間管理職の苦悩が身に染みる“人事ゲー”だった!? Switch版プレイレビュー_07

 少々ややこしいが、“すべてのキャラは顧問として働かせた際に好影響と悪影響の両方を引き起こす”と考えてもらえればいい。ゲームクリアーには5つのパラメータのどれもが欠けてはならないため、季節ごとに誰を顧問にして誰に儀式を行わせるかはよく考えたい。

 貴族たちの持つ徳と不徳はゲーム開始時はほぼすべて隠されており、明らかにするには満足度を犠牲にして尋問や調査を行わなければならない。しかし、徳・不徳を明らかにしたいからといって調査に念を入れすぎると、疑いすぎで貴族の満足度を下げてしまう。

 このゲームで求められるのはバランス感覚だ。多くの要素に気を配りながら、邪神復活の時を待とう。

裏切り者を処刑せよ!

 そして本作でもう一点取捨選択が求められるのが、生贄の選出だ。春夏秋冬、季節の終わりには、5人選んだ顧問のうちひとりを生贄として処刑し、神に捧げなければならない。

カルト教団を管理する『The Shrouded Isle』は、中間管理職の苦悩が身に染みる“人事ゲー”だった!? Switch版プレイレビュー_08

 身内から生贄を選ばれた貴族は、激怒して満足度が大幅に下がってしまう。これを避けるためには、できるだけ不徳の数値が高い罪人を処刑する必要がある(罪人であれば処刑しても一族が納得してくれる)。

 そのため、生贄を捧げるフェイズまでに調査・尋問を進めておき、“誰が教団の教えに背く裏切り者か?”を突き止めなければならない。

 不徳の数値が高い罪人は儀式を行った際に、不徳に対応するパラメータが大きく下がるので、そういった場合はそのキャラの不徳を調査してみることをオススメする。不徳がマイナス30になっていた場合、そのキャラは処刑すべき罪人だ。

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カルト教団という派手なモチーフと地道なゲーム性のギャップがクセになる

 『The Shrouded Isle』はカルト教団の管理というユニークな題材を、駆け引きのあるシュミレーションゲームとしてうまくまとめ上げている。キャラクターの徳と不徳を見抜いて適切な人事を行うのは難しく、だからこそおもしろい。

 ただし、文字が小さすぎたり、翻訳がきごちなかったりとテキストメインのゲームにも関わらず肝心の文字が読みにくいのには少々ストレスが溜まった。また、ルールの複雑さに対してチュートリアルや解説が足りておらず、手探りでルールを覚える必要があるのも辛いポイントだった。

 しかし、多少のテキストの読みにくさに慣れ、ゲームのル-ルさえ理解してしまえば、「つぎこそは5年間生き延びてみせるぞ!」と何度でも遊びたくなってくる。

 決して派手なゲームではないが、細かなリソース管理をやり続けるのが好きなマメなゲーマーにはオススメしたい1本だ。ちなみに、貴族のキャラにはそれぞれ自由に名前を付けられるので、会社の同僚やクラスメイトの名前をつけてみて「よし、課長は処刑だな」とロールプレイに興じるのも……アリ?

カルト教団を管理する『The Shrouded Isle』は、中間管理職の苦悩が身に染みる“人事ゲー”だった!? Switch版プレイレビュー_04

■脳間 寺院(のうま・じいん)ゲーム・動画ジャンルが専門のライター。京都生まれポケモン育ち、ボンクラオタクがだいたい友達。Twitterでも面白い動画やゲームについて情報を発信中。
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