バンダイナムコスタジオとキャラクターライブの歩み

 2018年8月22日~24日の期間中、パシフィコ横浜にて開催される、日本最大のゲームディベロッパー向けカンファレンス“CEDEC2018”。2日目にあたる23日には、“バンダイナムコスタジオによるキャラクターライブへの挑戦”と題し、キャラクターが現実のステージ上で歌って踊る“キャラクターライブ”についての講演が行われた。

『アイマス』やEGOISTなど、キャラクターライブで重要なのは、優れたエンジニア、知識、経験、そして設営時間!【CEDEC2018】_01

 本講演に登壇したのは、モーションキャプチャーとCGキャラクターを組み合わせたライブコンテンツ提供サービス“BanaCAST”の開発に携わる、バンダイナムコスタジオの大曽根淳氏と森本直彦氏。冒頭では、大曽根氏から“BanaCAST”を使ったこれまで取り組みなどが紹介された。

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大曽根淳氏
森本直彦氏

 そもそもの始まりは、キャラクターをリアルの世界(ステージ)に立たせたいという、社内の技術者たちが集まったところからだったという本企画。2014年から開発がスタートしたのだが、社内に人材が揃っていたということもあり、2015年には一般向けのサービス開始された。

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 そして、2016年の“東京ゲームショウ”では本サービスを利用し、音楽グループ・EGOISTによるシークレットライブを実施。リアルタイムで動く、“楪いのり”のキャラクターライブは見事成功をおさめ、今年の8月にはアジアツアーが行われるまでに至っている。また、バンダイナムコのキャラクターとしては、2017年に開催された“THE IDOLM@STER PRODUCER MEETING 2017”で、天海春香がステージに登場。これも好評であったことから、今年の4月に765PRO ALLSTARSのキャラクターが日替わりでライブを行う“THE IDOLM@STER MR ST@GE!! MUSIC♪GROOVE☆”を実施。9月には、本ライブの“2nd SEASON”開催も決定している。

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 ほかにも、スマートフォンゲーム『プロジェクト東京ドールズ』(スクウェア・エニックス)の公式YouTubeチャンネル“ヤマダダ”では、“BanaCAST”で動画配信をしているアイドル・ヤマダのアニメーションを制作。本サービスがさまざまな現場で用いられていることが語られた。

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 つぎに大曽根氏は、“BanaCAST”の技術を実際に体感してもらうため、キャラクターを会場に呼ぶことに。「小町ちゃん!」と大曽根氏が呼ぶと、スクリーンにバンダイナムコスタジオのオリジナルキャラクター・ミライ小町が登場。リアルタイムで動きながら講演の来場者に質問をしたり、大曽根氏と会話をしたりした。さらに、ボーカロイドでもあるミライ小町は、急な振りであるにも関わらず、自身の楽曲を歌い、躍動感あるダンスも披露。ライブ後には、実際にモーションキャプチャーを行っている、別室の様子が公開され、キャラクターをリアルタイムで動かすための現場が明らかとなった。

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機材の組み立てはとにかく早く! キャラクターライブの現場を解説

 続いて講壇に立った森本氏は、“BanaCAST”に用いられている技術について紹介。本サービスにはキャラクターを投影する基本的な技術として、“Unreal Engine”または“Unity”、モーションキャプチャーの技術として。“VICON”が使われているそうだ。この“VICON”は光学式のモーションキャプチャーシステムなのだが、森本氏いわく、現状のキャラクターライブでは、“光学式”の技術のほうが運用に適しているとのこと。光学式のモーションキャプチャーだと、長時間のライブイベントでも安定して、キャラクターを滑らかに動かし続けることができると、その利点を語った。

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 また、“BanaCAST”を使用したライブの舞台裏についても、実際の写真を使いながら解説。キャラクターライブでは、ステージにLEDディスプレイが設置され、そこにリアルタイムで動くキャラクターCGを投影しているのだが、これを実現させるため、森本氏たちはふたつの班に分かれて作業をしているという。

 まず、モーションキャプチャーの班がカメラを取り付けたトラスを設営し、アクターがそのなかでキャラクターになりきって演技。それをもとに映像を担当する班がCGを生成し、ディスプレイに投影している。今回紹介されたEGOISTのライブ会場の写真では、会場全体が見渡せる位置に映像の制御核を作り、ステージ脇にモーションキャプチャーが可能な空間が設営されていた。

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 さらに、森本氏はこういったライブを実現させるのに必要なスペックについても言及。モーションキャプチャーのために必要な動ける範囲や使用するソフトウェアなどなど、参考になる情報を提示してくれたのだが、なかでも森本氏は時間面を重要視。準備段階から過密なスケジュールになるライブでは、いかにムダな時間を作らないかが重要とのことで、「驚異的ですが、機材の組み立てとテストには2.5時間しか書けません」と語ると驚く人もいた。

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 また、それら以外の重要な要素として、専門用語や機材といった通常のライブで培われてきたノウハウは、キャラクターライブでも必ず必要になってくるそう。これに関しては、ゲーム業界ではなかなか身に付ける機会がないので、とにかく現場で経験を積むことが重要だとのこと。一方で森本氏は、この経験を通していままで関わることがなかった世界を知ることができ、新鮮な刺激を得られたとキャラクターライブの魅力もアピールした。

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 そして最後には、今後の野望についても言及。現状の技術では4~5人のキャラクターを同時に投影させられるが、それ以上では安定性が保てないので、これを10人同時に投影できるようにしたいと語った。さらに、ゆくゆくはドーム規模でのライブにも挑戦したいと話す森本氏。「2年後にスポーツの祭典があるんですよ……」と、オリンピックでも“BanaCAST”で何かしたいと大きな願望も語り、今回のプログラムは終了。ミライ小町のあいさつで講演は締めくくられた。

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