国内外の音楽家やアーティストを多数ゲストに招き、さまざまなデジタルアート、テクノロジー、ライブエンターテインメント、ワークショップなどを行うデジタル・アート&エレクトロニック・ミュージック・フェスティバル“MUTEK.JP 2017”が、2017年11月3日~5日の3日間、東京・日本科学未来館で開催された。

『Rez Infinite』Ken Ishii、水口哲也氏によるジョイントライブ開催、VRと迫力のサウンドが融合した新たな没入感【動画あり】_04
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カナダ・モントリオール発、現在世界6ヵ国で開催されている電子音楽とデジタルアートの祭典“MUTEK.JP 2017”

 最終日となる2017年11月5日には、エンハンス・ゲームズより配信中のプレイステーション4、PC用ソフト『Rez Infinite』のプログラムとして、“Rez Infinite ドーム投影実験 第2弾”&“Rez Infinite Session(Tetsuya Mizuguchi x Ken Ishii)”が実施。本作のプレイ映像を、東京・日本科学未来館にあるドームシアター“ガイア”の大型モニターに投影し、通常はヘッドマウントディスプレイを装着してひとりで楽しむヴァーチャルリアリティ(VR)コンテンツを、約100名の観賞者といっしょに体感することができた。本記事では、『Rez Infinite』のプログラムの模様をリポートする。

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会場には、プレイステーション VR版『Rez Infinite』の試遊コーナーも。

“Area X”の世界を同時に体験“Rez Infinite ドーム投影実験 第2弾”

 直径15メートルのドームシアターと、360度の視野を持つVRコンテンツの融合を目指した試みとして2017年6月3日に第1弾が実施され、大きな注目を集めたドーム投影実験。

 水口氏によると、第1弾では「2Kの映像を使用したことで、解像度や明るさがあまり出なかったし、もう少し音量がほしかった」と感じたそうだが、第2弾では「4Kの映像を使用し、明るさも前回に比べて上がっています。また、スピーカーを増やして音もチューニングしました」と、前回の問題点が大きく改善されていることをアピール。

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エンハンス・ゲームズ 水口哲也氏。

 残念ながら記者はドーム投影実験 第1弾に参加していないため前回と比較できないが、大型モニターに映像が映し出された瞬間、現実世界が『Rez』の電脳空間に変わり、初めてプレイステーション VRで『Rez Infinite』を体験したときのような衝撃を受けた。そして、ズシズシと体に感じる迫力のサウンドと、目の前に広がる電脳空間が融合し、ヘッドマウントディスプレイとはひと味違う没入感を楽しめた。

 水口氏は最後に、「第2弾を迎えるにあたり、たくさんの方に協力していただきました」とスタッフに感謝の言葉を述べると、「また実験したいと思いますので、ぜひお付き合いください」と第3弾の開催を期待させるコメントを残した。

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第1弾同様、事前応募の抽選(倍率は100倍以上)で選ばれたプレイヤーが“Area X”をプレイ。プレイヤーに選ばれたアライさん(左)は、「プレイすると、ほかに人がいることを忘れてしまって、光の中に没入しちゃいました」と語った。

ふたりのクリエイターによる一期一会のセッション“Rez Infinite Session(Tetsuya Mizuguchi x Ken Ishii)”

 “MUTEK.JP 2017”のスペシャルショーケースとして行われた“Rez Infinite Session(Tetsuya Mizuguchi x Ken Ishii)”では、『Rez』の音楽を担当したテクノミュージシャン・DJのKen Ishiiと、水口哲也氏によるライブパフォーマンスだけではなく、両氏と親交の深い弘石雅和氏(当時『Rez』のミュージックコーディネーターを担当)を招いてのトークショーも行われた。

 まず、弘石氏より今回のトークテーマの背景として、Ken Ishiiの代表作である『Extra』についての説明が行われた。1995年にアルバム『Jelly Tones』の1曲目として収録された『Extra』は、アニメ映画『AKIRA』の作画監督を務めた森本晃司氏がビデオクリップを担当し、イギリスの “MTV DANCE VIDEO OF THE YEAR”を受賞。「いまでこそアニメーションのビデオクリップはたくさんありますが、当時はミュージシャンがアニメを使うということはほぼありませんでした」(弘石氏)という。またビデオクリップには、ヘッドマウントディスプレイやVRが登場し、VRの未来が描かれていることも紹介された。

 その『Extra』がきっかけでKen Ishiiの存在を知ったという水口氏は、「1996年か1997年にスイス・チューリッヒに行ったときに、“ストリート・パレード”というテクノパレードが行われていて、パレードで出会うスイス人に「Ken Ishiiを知っているか?」と言われ続けたのですが、そこで初めてテクノに触れた僕は「Ken Ishiiってどなたですか?」というのが最初の印象でした。ですがその日の夜、ホテルのテレビをつけたらMTVで『Extra』がヘビーローテーションで流れていて、すごい人がいるぞと衝撃を受けました」と当時を振り返る。

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 日本が誇るテクノゴッドの Ken Ishiiを始め、イギリスにおけるサンプリング・ミュージックの第一人者であるColdcut、ノイズ・ミュージックプロジェクトのOvalなど、エレクトロミュージック界の錚々たるメンバーが楽曲提供を行っている『Rez』だが、そこまでの道のりは長く、「弘石さんと世界中をまわってテクノアーティストに楽曲提供の依頼を行いました。実現はしませんでしたが、Aphex TwinやFatboy Slimにもオファーしました」(水口氏)と裏話も語られた。

 そして、いよいよライブパフォーマンスへ。そもそも『Rez』は、「アーティストから提供された楽曲を1音、1音、バラバラに細かくして、ゲームの中のいろいろなものに当てはめ、プレイヤーがどういうタイミングでボタンを押しても、気持ちのいい楽曲が再生されるようなプログラムを使用しています」(水口氏)とのこと。

 今回のライブでも水口氏がプレイする“Area3”の音源を6種類ぐらいに分け、Ken Ishiiがその音源にエコーやディレイといったエフェクトをかけ、新たな音を加えながら、7.1サラウンドでリアルタイムにミックスしていくという。この新たな試みに、Ken Ishiiは「やることが多いんですけど、ふだんDJをしているときと違う頭を使う感じで楽しい」と意欲的なコメントを残し、ライブがスタート。

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 水口氏のプレイをもとに、Ken Ishiiがリアルタイムでサウンドを作り、ヤマダヒデト氏がビジュアルにリアルタイムエフェクトを加えることで、新たな“Area3”を構築。刻々と変化するビジュアルを見ながら、太いビートと心地よいシンセの音色、スネアやハットといった高音から生み出されるサウンドを体で感じ、ドーム投影実験とはまた違った感覚を体験できた。最後に、1分にも満たないがライブ中の動画もアップしたので、雰囲気だけでも味わってほしい。