Windows 10 Fall Creators Updateは4回目の大型アップデート

 日本マイクロソフトは、2017年10月18日、グローバルで17日2時からスタートしたWindows 10 Fall Creators Updateに合わせ、都内でWindows 10 Press Briefingを開催した。ここでは、その模様をリポートする。

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日本マイクロソフト
業務執行役員
Windows&デバイス本部長
三上 智子氏

 まず登壇した日本マイクロソフトの三上智子氏は、これまでマイクロソフトが提唱してきた“モバイルファースト、クラウドファースト”が“インテリジェントエッジ、インテリジェントクラウド”へと進化し、いままで想像もできなかったようなことができる時代になったと語る。インテリジェントエッジとは、PCやスマートファンなどはもちろん、いわゆるIoT(Internet of Things)のデバイスを含めたもので、クラウドとエッジのあいだが密に連携しているという考えかたで、マイクロソフトのサティア・ナデラCEOが示したものだ。
 三上氏によると、こうしたテクノロジーの変化は、我々の日々の働きかたや過ごしかた、コミュニケーションなどにも影響を与えている。そこで、“エッジ”側にあるさまざまなWindowsのプラットフォームについて、どんどんとイノベーションを起こすことで、ユーザーがより多くのことを体験できるようにしていくのが重要だという。

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 Windows 10が提供を開始したのが2015年7月29日で、すでに2年以上が経過した。Windows 10はつねに進化し続けるという言葉通り、今回は4回目のアップデートとなる。今回は3Dのビジョンをさらに推し進め、3DやMixed Reality(複合現実)について、よりすばらしい体験ができるようになる。そんな今回のアップデートのPVを紹介しよう。

 三上氏は「今後の我々のテクノロジーのキーとなる」として、Windows Mixed Realityをあげた。マイクロソフトはMicrosoft HoloLensを展開してきたが、これまでは法人やデベロッパーに限られていた。今回のアップデートではこのMRを、Windows 10の機能のひとつとして提供することで、いままでなかなか体験しづらかったMRの体験が簡単にできるようになる。ちなみに、マイクロソフトのMRの考えかたは、VRからARまでを含めたもの。今回は、Windows Mixed Reality対応のヘッドセットが展示され、ブリーフィング後には体験会も実施された。
 MR対応のヘッドセットだけではなく、PCの世界でも3Dの体験を強化する。ペイント3Dで作ったオブジェクトを現実の世界と融合させればAR的な体験ができ、PowerPointもペイント3Dを使うことでよりパワフルな3Dのプレゼンが可能となる。
 フォトアプリも大きく進化。好きな写真を選ぶだけで、ストリーミングビデオやスライドショーが作成でき、「日々の生活が楽しいものになる」と三上氏。

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かゆいところに手が届くWindows 10 Fall Creators Update

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日本マイクロソフト
Windows プロダクトマネージャー
春日井 良隆氏

 続いては、春日井氏によるWindows 10 Fall Creators Updateのデモが行われた。
 まずはRemix 3D。春日井氏によると「3DのSNS」とのこと。すでにマイクロソフトやユーザーが作った多くの3Dデータが公開されている。今回は、84インチのモニターを使ったデモが行われた。Remix 3Dには“Mixed Realityでの表示”という機能があり、会場にモニターを置いたらどのようになるのか再現。さらに、ペイント3Dで文字を入れたり、PowerPoint内に3Dのオブジェクトとして表示させたりした。こうした使いかたで、3Dを効果的に使ったプレゼンが可能となるわけだ。

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 つぎは、フォトアプリを使ったデモ。デモでは写真を4枚選んだだけで、自動的にスライドショーが作成され、さらに音楽も自動で選んでくれる(※もちろん変更可能)。写真が表示される長さや、フィルターの有無といった細かい編集も自由自在。
 ビデオ編集では、ふたつのビデオをつなげたり、3D効果をつけたりすることも可能。今回のデモでは、テニスボールがネットに当たった瞬間に爆発のエフェクトをかけたが、コマごとに指定する必要もなく、自動でボールの動きに追随していた。

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 “My People”も、今回追加された便利な機能だ。頻繁に連絡を取る人をタスクバー上にピン止めすることができ、メールやSkypeなど、連絡手段もその都度選ぶことができる。
 Microsoft Edgeを使ったデモでは、ブリーフィング会場のマップにペンを使って情報を書き込んだり、音声読み上げの機能を紹介した。OneDriveやセキュリティー対策などの機能も向上している。視線のコントロールによるPC操作も標準でサポートする。

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モリサワ
公共ビジネス推進課
橋爪 明代氏

 日本語変換についてもさまざまな機能向上が行われている。今回のアップデートではモリサワの“UDデジタル教科書体”を標準搭載された。
 その“UDデジタル教科書体”は、通常の教科書体の見づらさやゴシック体での書き順が反映されていないなどの問題点を解消。生徒や教員など、現場の意見を取り入れ、見やすく、学びやすく、そして教えやすいフォントとなっている。橋爪氏は「弱視やディスレクシア(読み書き障害)など、すでに困っているお子様やご両親に対し、よりよい教育現場を作るお手伝いができれば」と語った。

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Windows Mixed RealityをWindows 10に標準搭載

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日本マイクロソフト
執行役員
コンシューマー&デバイス事業本部
デバイスパートナー営業統括本部
梅田 成二氏

 PVに続いて登場した梅田氏は、MRについての解説を行った。
「MRの登場によって、これまでできなかった新しいことができるようになった」と梅田氏。時間や場所、デバイスなどの物理的な制約を取り払い、新しいユーザー体験を提供できるとした。マイクロソフトは、2016年にMicrosoft HoloLensを発売し、以降さまざまな用途で使ってきたが、今回Windows 10にWindows Mixed Realityを実装することで、ユーザーにとって使いやすい環境を整えた。
 前述の通り、マイクロソフトはARからVRまでを含めたものをMRとして捉えている。用途によって、VRがいい場合やARが合っている場合があり、それらを全方位的にカバーすることを目指している。
 Windows Mixed Realityの特徴は、「一般的なPCで楽しめる」、「素早く簡単な設定」、「革新がワクワクをもたらす」の3つ。梅田氏によると、スペック的には、現在市場にある約4割のPCでWindows Mixed Realityが可能だという。

 実際にはどのように見えるかというと、Windows 10 Fall Creators Updateが行われたPCにHMD(ヘッドマウントディスプレイ)を接続すると、“クリフ・ハウス”(直訳すると、崖の上の家)が出現。仮想的に作られたこの家の中に、さまざまなアプリを貼り付け、使用することができる。また、Windows Storeから無料でダウンロードできる“Windows Mixed Reality PC Check”を使うと、自分のPCのスペックの判定を行ってくれるそうだ。

 梅田氏は、パートナーとの協業によるWindows Mixed Reality市場作りが重要だと語る。デバイスやコンテンツを揃え、店頭で実際に体験してもらうことが必要だ。全国の販売店で、11月18日から体験コーナーも設置される予定。

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 ここで、三上氏が巨人を倒していく『TITAN SLAYER』というゲームを実際にプレイすることに。無残にも倒されてしまった三上氏だが、11月18日からの店頭体験会では、ユーザーにきちんと新しい体験をしてもらうために、コンテンツやインストラクターの準備を行うとした。また、体験コーナーができる店舗は、全国で約400店舗にも及ぶそうだ。これはアメリカと同等かそれ以上の数だそうで、Windows Mixed Realityに対する並々ならぬ決意がうかがえる。

 One Windowsとして、ホリデーシーズンに向けた新しいデバイスを紹介された。
 まずは、11月7日に発売されるXbox One X。また、Xbox OneにもFll Updateが提供され、UIが使いやすく進化する。Xbox Oneについても、今後さまざまな機能の強化が行われるとのこと。
 そして、Surface Book 2。「もっとパワフルなPCが欲しい」というフィードバックが多く、13インチモデルが11月16日より国内発売が開始される。さらに、Surface Laptopでは、Core i7 4色9モデルが2017年内に発売となり、また、法人向けの取り扱いも開始となる。
 最後に、2020年にサポートが終了するWindos 7とOffice 2010。前回Windows XPのサポート終了時、混乱が見られたことから、今回は早くから周知活動を徹底するそうだ。

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MR世界の実現は2~3年後? 三上氏に聞く

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 ブリーフィング終了後、Windowsのキーマン・三上智子氏に話を聞いた。

――マイクロソフトが、MRに注力する理由はなぜですか?
三上智子氏(以下、三上) MRは、確実に将来のコンピューティングの軸になると思います。目指しているのは、PCだけではなく、さまざまなデバイスで3Dの体験ができることです。時と場所を超えて、コミュニケーションができることです。ゲームはMRやVRと親和性が高く、分かりやすいのですが、我々は働きかたやコミュニケーションも変わると思っています。

――Microsoft HoloLensを展開していたので、MRに特化するものと思っていました。
三上 MRには、ARもVRも含まれています。ARとVRとの違いはデジタルの量ですし、コンテンツによっては、一部分はデジタルが強いけれど、一部はデジタルが弱い場合もあります。AR or VRではなく、MR、AR&VRなのです。それらをすべてWindowsというプラットフォームでサポートするわけです。
 VRはゲームがいちばん分かりやすいかもしれません。また、クラウドとつながることで、ゲームの体験はもっと変わっていくでしょう。そうすると、ゲームの没入感だけでなく、いろいろな人とつながることでの情報共有も重要な要素になっていくと思います。マイクロソフトが見ているMRは、ゲームやエンターテインメントだけではなく、働きかたや生活スタイルをアップデートするほどの可能性を秘めています。

――三上さんが思い描いているMRの世界は、実現までにどのくらいかかりますか?
三上 Kinectなどを生んだ、弊社のアレックス・キッドマンによると、「いまから2~3年後の世界」。全部がMRになるのではなく、PCやいろいろなデバイスも存在していると思います。願わくば、そこにCortanaのような存在がいると楽しいでしょうね(笑)。技術的には可能らしいので、ワクワクしますね。

――実現や普及に対しての課題はありますか?
三上 たとえば、Microsoft HoloLensはいかに1000ドル以下にするかとか、重量を軽くするかとか。アプリケーションやコンテンツの量や質も重要でしょう。カフェに行ったらアプリが置いてあるとか、リアルとデジタルが融合する世界観を目指したいです。ヘッドセットでも価格や装着感、みんながアッと驚くようなアプリの登場も必要でしょうね。いまはいろいろな種から芽がわっと出てきている状態ですが、マイクロソフトというビッグ・テクノロジー・カンパニーとしては、より世の中をよくしていく使命も感じています。確実に変化しているので、私自身も楽しみにしています。