クルマ好きならぜひとも体験すべきアトラクションが登場!

 首都圏を中心に総合エンターテインメント事業を展開するアドアーズが運営するVRエンターテインメント施設“VR PARK TOKYO”にて、2017年6月9日よりVRドライビングシミュレーター『T3R Simulator』が登場する。正式稼動に先立ち、2017年6月6日に先行体験会が実施された。同コンテンツの開発に携わったプロレーサー、古賀琢麻氏も登場した体験会の模様をお届けする。

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▲写真左、アドアーズVR担当取締役員・石井学氏。写真右、シボレーレーシング所属プロドライバー・古賀琢麻氏。

 体験会に先立ち、アドアーズ VR担当取締役員の石井学氏と、現役プロドライバーでもあり、『T3R Simulator』の開発やシボレーのオフィシャルアップグレードパーツの製造を手がけるアイロックの代表を務める古賀琢麻氏が登場。石井氏は、「1990年代以降、レースゲームは年を追う毎にリアルになってきていますが、ここ数年のアミューズメント業界の中では、リアルなタイプのものがありませんでした」と語り、昨年本格普及したVRでリアルドライビング体験ができたら、素晴らしいものを提供できるのではと、昨年のVR PARK TOKYOオープン時からの思いを吐露。そんな中、今年の3月に『T3R Simulator』のリリースを目にする機会があり、その場ですぐに古賀氏にアポイントをとって話を進めさせてもらったとのこと。
 古賀氏も、『T3R Simulator』はプロユースとして自動車開発などの現場には導入されていたが、広く体験してもらうためにアミューズメント施設などへの導入を考えていたところ、アドアーズからの申し入れがあり、その熱意が伝わってきたことが今回の導入に至る経緯であったと語ってくれた。

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▲『T3R Simulator』とは、全米自動車協会(National Association for Stock Car Auto Racing)が主催する、ストックカーレース“NASCAR”シリーズに参戦している現役プロレーサー、古賀琢麻氏が監修した、プロユースのVRドライビングシミュレーターの呼称。VRによってもたらされる360度映像と、フローティング4軸モーションテクノロジーによって、これまでにないドライビング体験がもたらされるとのこと。

 ここで、石井氏と古賀氏に、『T3R Simulator』についての簡単な質疑応答が行われた。

−−『T3R Simulator』をプレイしてみた感想は?
石井学氏 想像以上の臨場感です。グラフィックはもちろんのこと、筐体のコックピットのアクションが、タイヤから伝わってくる路面の状況がリアルに再現されていて、Gも感じますし、ゲームをやっている感覚を一瞬忘れます。一日中走っていても全然飽きずに楽しめます。

−−オススメのクルマは?
石井学氏 市販車、GTマシン、フォーミュラーマシンの3タイプが用意されていますが、フォーミュラーマシンは普段乗るタイプのクルマではないので、おもしろいんじゃないかと思います。

−−VRシミュレーターを開発するに至った経緯は?
古賀琢麻氏 僕はこれまでテレビゲームといったものは遊んだことがなく、12歳の頃からカートに乗っていました。ただ、クルマの運転を楽しむ機会を広く提供する必要性はずっと考えていたのですが、そんな中でVRを体験する機会に出会い、これなら実際のドライビングに近い体験ができると思ったのが開発のきっかけです。このVRシミュレーターで、実際のクルマに興味を持ってくれる人が増えてくれたらうれしいですね。

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▲今回の体験会に登場してくれた古賀氏だが、今週末には米・コロラドで開催されるレースに参戦するため、明日にはコロラドに飛び立つとのこと。

 質疑応答の後には、石井氏と古賀氏による『T3R Simulator』でのデモンストレーションレースが実施された。

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▲VR PARK TOKYOで稼動するT3R Simulatorは2台が用意される。今回はその2台を通信で同期し、ふたりのデモレースがお披露目されることに。使用コースはベルギーのスパ・フランコルシャンサーキット。抜きつ抜かれつのデッドヒートがくり広げられた結果、古賀氏の勝利という結果に。

 石井氏、古賀氏による『T3R Simulator』の説明とデモンストレーションレースが行われた後は、待望のメディア体験会の時間に。

 この『T3R Simulator』は、基本的にはゲームではないため、ゲーム的なカウントダウンによるスタートやゴールといった要素が排除されており、純粋に走りだけを堪能できるものとなっている。そのため、実際のサービス開始後の体験走行は、一定時間を区切ったものになるとのこと。設定によって、本物のレーシングマシン並のセッティングと操作法にすることもできるが、そうするとまともに走ることが困難になるため、ある程度の調整は施されている。とはいえ、リアルドライビングシミュレーターと銘打つだけあり、その挙動やフィーリングによるリアル感はなかなかのものであった。

 これは筆者の個人的な感想になるが、VR+リアルドライビングゲーム+稼動レーシングシートは、VR体験における最強の環境と思っている。もともと、VR+レースゲームは、プレイヤー(ドライバー)は座ったまま動かないという運転の特性から、VRとの相性が非常に高いコンテンツのひとつ。VRヘッドセットの装着も、ヘルメットを被っている感覚を錯覚させるもので、これも親和性を高めるのにひと役買っている。インターフェイスとなるハンドルコントローラーも、ステアリング軸を中心に回転するだけの動作になるので、これまたVR空間内とのシンクロ率が高くなる要因であろう。
 今回の『T3R Simulator』も、可動筐体を採用しているとはいえ、路面振動とクルマの姿勢をアクチュエーターで再現するもので、コーナリングや加減速時のGが感じられるほどの動きはしていない。にも関わらず、VRヘッドセットを装着してコースに出てみると、コーナリング時や減速時に横Gや縦Gが感じられるほど、脳が本格的に騙されてしまった。当然、感じ方には個人差があると思われるが、とくに普段クルマに乗っている人ほど身体に染みついている感覚によって、リアル感が増すのではないだろうか。

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▲フレームむき出しのため一見すると無骨に見えるが、細部までこだわった仕上がりは垂涎もののクオリティで、工芸品としての完成度の高さがうかがえる。
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▲ステアリングは、縁石に乗り上げた際の振動やグリップ感、ハイドロプレーンを忠実に再現するフォースフィードバックシステムを採用。
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▲ペダルも、バイブレーションフィードバックを採用することで、実際のレーシングカー同様のフィーリングを実現している。
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▲シートに連動したふたつのアクチュエーターによって、レーシングカーの挙動を忠実に再現。
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▲筐体の下部に取り付けられたふたつのアクチュエーターは、路面からの振動などの状況をフィードバックしている。
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▲今回の体験では使用しなかったが、コックピットの脇には7速ミッションのシフトレバーも用意。当然、クラッチペダルも装着されている。
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▲シートには、RECAROのフルバケットを奢るほどの本格使用。筐体そのものも熟練の職人がハンドメイドで組み上げているだけあり、工芸品としても見ていられる完成度の高さ。
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▲シートの前方と後方にスピーカーが配置されており、音響面でもリアルさが追求されている。
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▲この『T3R Simulator』では、コックピットに座る前にヘッドマウントディスプレイを装着すると、VR空間でクルマの外観を眺めるといった楽しみもできる。こういった自動車ショールーム的な体験ができるのも、VRならではの魅力のひとつ。
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▲VRシステムはHTC VIVEが採用されている。車外からクルマを眺められるといった体験も、ルームスケールを採用するVIVEならではといったところだろう。

 VRの体験はどんな動画や写真、テキストを用意しても、その魅力の一部しか伝えることができず、最終的には体験するしかないとしか言えないのは、どのコンテンツに対しても同じになってしまうが、この『T3R Simulator』は、クルマ好きにはとくに体験してもらいたいアトラクションである。もちろん、クルマの運転を普段しない人や、免許を持っていない人でも十分に楽しむことができるし、VRならではの体験をするには最適のコンテンツといえるが、実際にスポーツドライビングを楽しんでいる人にこそ、その凄さがしっかりと伝わることだろう。アミューズメントでのアトラクションであるため試乗時間は限られてしまうが、筆者は一日中走り続けたいと思ったほどで、クルマ好きには格別の体験をもたらせてくれるに違いない。
 石井氏は、他店舗での展開や、参加をくり返して腕前が上達することで、上位マシンに乗れるといったライセンス性、ボトルキープのように、セッティングキープといったサービスなど、『T3R Simulator』の今後の広がりにも期待を持っていると語っていた。本アトラクションの一般導入開始は2017年6月9日より。これだけ本格的なVRドライブ体験ができる施設は現状ではほとんどないので、少しでも興味を持った人はVR PARK TOKYOに足を運んでみてはいかがだろうか。