パワーアップして帰ってくる本作はどんなゲームになるのか?

 本誌既報の通り、フロリダ州オーランドで行われた映画「スター・ウォーズ」のファンイベント“Star Wars Celebration”で、エレクトロニック・アーツのアクションシューティング『スター・ウォーズ バトルフロント2』が正式発表された。
 シングルプレイキャンペーンでは、帝国軍の特殊部隊を率いる女性指揮官アイデンを中心にエピソード6「ジェダイの帰還」直後から始まる復讐を描く一方、前作同様に最大40人が参加可能なマルチプレイ対戦では、エピソード1以降の全時代を扱うという。グローバルで2017年11月17日にプレイステーション4/Xbox One/PCで発売予定だ。

 というわけで発表されたばかりの本作について、本誌では会場でインタビューを実施。本作の開発を主導するDICEのクリエイティブ・ディレクターであるベルント・ディーマー氏、共同開発を行うMotive Studiosでプロデューサーを担当するパオラ・ジョワイヨ氏、監修側のルーカスフィルムでデジタル&フランチャイズマネージメント部門のシニアディレクターを務めるダグラス・ライリー氏の3人に話を聞いた。

『スター・ウォーズ バトルフロント2』開発陣にインタビュー。キャンペーン&マルチ双方について気になる部分を直撃_01
▲左から、プロデューサーのパオラ・ジョワイヨ氏、クリエイティブ・ディレクターのベルント・ディーマー氏、ルーカスフィルムのダグラス・ライリー氏。

シングルプレイキャンペーンが帝国側女性主人公になった理由

――複数のスタジオが関わっている本作ですが、それぞれの役割を教えてください。僕の理解だと、DICEがメインスタジオでクリエイティブのコントロールをやりつつ、マルチプレイを開発。Motive Studiosはシングルプレイキャンペーン、Criterionはビークル(乗り物)まわりという感じですが……。
ベルント・ディーマー(以下、ディーマー) えぇと、今言おうと思ってたのがそれです。その通りです(笑)。

――トレイラーに出てきた赤いケープの人物(※1分15秒あたりに登場)は誰なんですか? パルパティーンが喋っているように見えたんですが、第2デス・スター爆発後の話だから、彼はあの時点で死んでいるはずです。どういうことなんでしょう?
パオラ・ジョワイヨ(以下、ジョワイヨ) ああ、あの使者は「Shattered Empire」というコミックブックシリーズに登場したものです。
ダグラス・ライリー(以下、ライリー) 具体的にはあそこで話しているのはセンチネルというドロイドで、記録されたメッセージを顔にあたる部分のディスプレイで表示して、その人が喋っているかのように伝えるという機能があるんだ。つまりあの場面では、皇帝が死の前に託したメッセージがアイデンに伝えられているという形だね。

――キャンペーンの対象になりうる範囲は30年間あります。もしかしてキャンペーンの中で、年を取ったバージョンのアイデンも存在しうるのでは?
ジョワイヨ どういう時点まで扱うかはまだ話せないですけど、ええと……(広報担当に話せる範囲を確認)。確かにキャンペーンモードのストーリーは長い期間を扱いますので、その間に年齢を重ねたアイデンをご覧になるでしょう。

――聞いてみるもんですね! ストーリーについてですが、挑戦的なストーリーテリングで知る人ぞ知る『Spec Ops: The Line』(2K Gamesより発売されたアクションシューティング)のライターである、ウォルト・ウィリアムス氏が関わっていると聞きました。
ジョワイヨ その通りです! ウォルト・ウィリアムスとミッチ・ダイアーの共同執筆になっています。

――ウォルト・ウィリアムス氏のシナリオをまた本作のような大作で体験できるのは非常に楽しみです。ミッチ・ダイアー氏も僕らのようなメディアから開発者になるという夢を叶えた人物ですし、気になりますね。実際どのように執筆されているんですか? スタジオで直接働いている?
ジョワイヨ 直接チームに加わってもらっています。実際、モントリオールのスタジオでミッチは私の隣の席に座ってます(笑)。それと彼らはルーカスフィルムのストーリーチームとも密接にやり取りしてストーリーを構築しています。

――帝国軍の主人公というのはそれなりにチャレンジだったのではと思います。過去には帝国軍をメインにしたゲームもありましたが(『Star Wars: TIE Fighter』など)、やはり反乱同盟軍などが中心になりがちです。そして今回は女性主人公でもある。どのように決断されたんですか?
ジョワイヨ まず帝国軍をメインにやるというのが決まって、男性でも女性でもありうる状態で、それより先にキャラクターやストーリーの元型(アーキタイプ)の開発が進んでいきました。そしてその過程でルーカスフィルムの作り上げてきた「スター・ウォーズ」の歴史の中で女性が果たしてきた役割を再確認したんです。強い女性たちが重要な役割を担ってきましたよね。

――確かにそうでしたね。それとゲーム視点で考えていましたが、「スター・ウォーズ」視点で考えたということであれば、いろいろ納得の気もします。
ジョワイヨ それ(女性キャラの歴史)に対してビデオゲームではあまりそうではなかった。でもそれはチャンスじゃないかと思ったんです。なので「スター・ウォーズ」の築いてきたものを引き継ぐという意味と、女性キャラの役割を押し上げるという意味の双方で、女性指揮官としてのアイデンが生まれたんです。

――会場限定で開発の裏側を見せる映像が流れましたが、アイデンを演じるジャニナ・ガヴァンカーはパフォーマンス・キャプチャーをやったようですね。収録はどうでしたか?
ジョワイヨ 私は現場には同席できなかったんですが、最新のテクノロジーを使って全身の演技と顔の演技をキャプチャーしています。ですから仕上がったものを見ても、非常に真に迫ったものになっていると思います。
ライリー 彼女は素晴らしい演技をしていたよ。いいものに仕上がっていると思う。

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――キャラクターモデルを作るにあたって、アダム・ドライバー(カイロ・レン役)やデイジー・リドリー(レイ役)のフェイスキャプチャーはしたんでしょうか?
ライリー そちらはキャプチャーしていないんだ。(※恐らく写真などから起こして)3Dモデリングしたものだね。

マルチプレイはよりヒーロー/ヴィランになりやすく。クラス制も導入

――本作ではマルチプレイでどうやってヒーローやヴィラン(※ルークやダース・モールなどの主役級キャラ)になるのでしょうか?
ディーマー まず我々は前作のマルチプレイでのヒーローを見直すことからはじめました。前作でヒーローになれたのは、ものすごくゲームを把握しているプレイヤーか、または単に一番ラッキーなプレイヤーです。それのいい部分もありますが、参加しているプレイヤー全体に対してフェアかと言うと、ちょっと違いますよね。
 なので、マップに登場したシンボルを拾ったらヒーロー/ヴィランに変身するというやり方は変えて、一試合の間により多くのプレイヤーがヒーローになる機会を得られるよう、リソースベースのシステムにすることにしました。本作では、より多くのヒーロー/ヴィランを、もっと多く見かけることになると思います。

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――ビークルに特化したモードについて話してもらってもいいですか? 例えばドッグファイトが楽しめる前作の“ファイター・スコードロン”は好きなんですが、ちょっと物足りない部分もありました。
ディーマー DICEにとってビークルは非常に重要で、ビークルこそが我々のゲームをユニークにしていると言っても過言ではありません。今回は、スター・ウォーズのゲームであるからこそ、ビークルの扱いをより進化させるべきだと考えました。歩兵戦の中に単に出すというのではなく、新たな“スペース”を与える。
 というわけで宇宙戦闘です(※実はスペースが掛かったジョーク)。より深みがあり、幅広く、普通のシップもヒーローシップもいろんなビークルが登場します。そしてもっと異なる時代、異なるロケーションで遊べます。

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――本作での成長要素やカスタマイズについて概要を話してもらってもいいですか?
ディーマー まだ詳細については話せないので、我々が基本的に何をしたいかというコンセプトを説明させてください。それはつまり、すべてのキャラクターとビークルに対してヒーローになる機会を与えたいんです。
 これは本作を作るにあたっての我々の指針でもあって、「これがスター・ウォーズである」、そしてプレイヤー自身を含む複雑なメディアとして「ゲームである」という両者を両立するには、「このゲームの中でヒーローになるんだ、成長するんだ」というのがしっくり来たんです。
 例として、トルーパーを考えてみましょう。“彼”はパーソナリティがなくて、名前もない。個性という点では、プレイヤーが自分を滑り込ませることのできる容れ物のような存在です。でも真にトルーパーになるには、単純にプレイするだけでは足りない。あなたがアップグレードやカスタマイズを通じて、自分のトルーパーを作り上げてこそです。そうすることではじめて「自分はトルーパーだ」と感じるキャラクターがそこに生まれる。あなたという英雄の旅の始まりです。
 そういうコンセプトで兵士のシステムを作っていったんですが、これがなかなかしっくり行くものになったこともあって、この考え方がビークルにも適用できることに気が付きました。

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――マルチプレイのクラス(兵科)について教えてください。
ディーマー これはヒーローをもっと戦場に登場させると決めたことの結果のひとつでもあるんです。戦闘がうまく行ってヒーローが増えたら、トルーパーは大変になる。そこで思い出したのが、DICEの核となる要素のひとつであるチームワークでした。協力してうまく行けば成功する。
 なので我々にとってクラス制をミックスするというのは論理的な解法でした。(兵としての特徴がそれぞれある)クラスベースにすれば、友達と協力してチームとして対抗しやすくできます。

――前作に登場した場所は本作で再訪できるんでしょうか? トーントーンがいたので、恐らくホスは入るんだろうと思いますが。
ディーマー そうですね。本作は前回扱わなかった時代も登場しますので、もちろんそのための新しいロケーションがありつつ、ファンに人気の場所などはいくつか本作でも再訪できるというミックスになっています。(※プレスリリースによると、新ロケーションとしてはヤヴィン4のジャングル、タトゥイーンの宇宙港モス・アイズリー、スターキラー基地などが登場する模様)

――VRモードやVRアプリは今回どうなるんでしょうか?
ディーマー そこはまだどうなるかは……でも、前作のは良かったですよね?

――何か答えのような気がしますが、では最後に、本作はオールスターキャストのようなもので、メインの映画シリーズの全部の時代があり、ミッシングリンクを繋ぐ新しいストーリーもある。個人的に一番の部分はなんでしょう?
ディーマー すごくたくさんあるんですけど、強いて言えば素晴らしい「スター・ウォーズ」世界に再び行けるという部分ですかね。
ジョワイヨ そう、「スター・ウォーズ」のファンタジーの中にゲーマーとして生きることができる。これが一番素晴らしい気分ですね。
ライリー てんこ盛りなゲームだからどれっていうのは本当に難しいね。でも我々は筋金入りのストーリーテラーなんだ。バトルフロントの環境の中でさまざまな人々の物語をゲーマーに向けてお届けできるということがエキサイティングなのは間違いないよ。