大会による来日で特別講義が実現!

 2016年9月12日、都内にある東京アニメ・声優専門学校で、世界的に人気の高いオンラインカードゲーム『ハースストーン』ディレクターによる特別講義が行われた。その模様をリポートする。

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 特別講義はeスポーツを専攻する生徒たちに向けて行われた。講師はブリザード・エンターテイメントにて『ハースストーン』プロダクション・ディレクターを務めるジェイソン・チェイズ氏だ。ジェイソン氏は直前に開催された“ハースストーン日本夏季選手権”のために来日しており、せっかくの機会ということで、eスポーツをテーマとしたこの特別講義が実現した。

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▲講義が行われた東京アニメ・声優専門学校の北葛西校舎。専用バスや正門、壁など、いかにもアニメチックな雰囲気が楽しい。
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▲講師のジェイソン氏は、チームのマネジメントから戦略実行など、幅広い業務を手掛けている。

前半はブリザードの歴史や作品を紹介

 講義では冒頭、ジェイソン氏がブリザード・エンターテイメントの歴史を簡単に説明。ここではスクリーンで、『ウォークラフト』や『ディアブロ』といった名作、そして最新作『オーバーウォッチ』へと連なる流れが紹介されたほか、同氏が手掛けた『ハースストーン』のテレビCMも映された。

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▲数々の名作を生み出してきたブリザード社。
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▲コミカルな演出でバトルの楽しさを表現したテレビCM。

 ジェイソン氏によると、同社はもともとPCゲームの開発会社だったということもあり、コンソールやモバイルでのタイトル開発や日本での展開にはあまり積極的ではなかったとのこと。『ハースストーン』も最初はPC用でスタートしたが、モバイルでも展開しようということになり、そこで初めて「これは日本に進出できるタイミングが来たのでは?」とジェイソン氏は思ったそうだ。その『ハースストーン』も大きな反響を呼んでおり、「どんどんいろいろなゲームを日本に投入していきたいという気持ちです」と、ジェイソン氏は今後の展望を語った。

 続けて、ジェイソン氏は自社の歴代タイトルの分析として、共通する2点の特徴を指摘した。ひとつは「深みがあって戦略性がある」ことで、もうひとつは「見ておもしろい」こと。これはそのまま、eスポーツの人気タイトルにも当てはまる部分だ。
「eスポーツのゲームとして成功するためには、このふたつのポイントが必要であると考えています」(ジェイソン氏)。

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▲内容の深みはもちろん、見た目の魅力も追求。一貫したポリシーのうえで歴史が重ねられてきた。

eスポーツで目指しているゴールは3つ

 講義の後半はいよいよ、テーマの本筋である“eスポーツ”について。まずジェイソン氏が語ったのは、ブリザードが目指すeスポーツにおける3つのゴールだ。
 ひとつ目のゴールは「プレイヤーとの関係強化」。開発者がゲームコンテンツを作ってそれで終わり、プレイヤーが遊んで「おもしろかったね」で終わりではなく、新しいソースを作ってどんどん広げていくことが重要だということだ。
 ふたつ目は「ゲーム認知の拡大」で、これはテレビ放送などでファンが観戦できる体制を作ることによって、より認知度が広げられるということ。
 3つ目は「プレイヤーの成果の称賛」だ。トッププレイヤーを認めて祝福することで、そのステータスを目指し、あとにプレイヤーがどんどん続いていく。この3つのゴールを、うまくシステムとしてまとめ上げたのが、“ハースストーン チャンピオンシップ ツアー”だ。

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▲ジェイソン氏は目指すeスポーツのゴールとして、3つのポイントを挙げた。

 続いてジェイソン氏は、“ハースストーン チャンピオンシップ ツアー”の概要を解説した。同大会では、世界をアメリカ、ヨーロッパ、中国、アジア&パシフィックという4つのリージョンに分類。各地域を勝ち進んだチームが、カリフォルニアでのイベント“BlizzCon”で決戦大会に挑む。
 なお、モバイルアプリという性質上、対戦も様々な場所でできるようなシステムが構築されている。居酒屋でワイワイ集まっているような感覚を楽しめるように、遠く離れた場所のプレイヤー同士の対戦でも、背景は同じにして、臨場感を高めているそうだ。

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▲4エリアで勝ち抜いた猛者たちが、決勝大会に進出する。
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▲遠距離での対戦も、背景を同じにしたら、見た目は同じ場所で対面プレイしているように見える。

 なお、ここでは大会の解説と絡めて、有力プレイヤーの数々も紹介された。過去の大会の優勝者などのほか、終わったばかりの“ハースストーン日本夏季選手権”を制したGundamFlameさんもスクリーンに登場。「みなさんもぜひ日本選手に応援を!」と、ジェイソン氏がエールを送った。

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▲ホヤホヤの日本チャンピオンとなったGundamFlameさん(左)ほか、Knoさん(右)やmattunさんなどの実力者が紹介された。

eスポーツの道はプレイヤーだけじゃない!

 ここまではeスポーツのプレイヤーに関する話がメインだったが、最後にジェイソン氏がまとめとして語ったのは、「いろいろな道でeスポーツに関わっていける」という内容。ジェイソン氏は、大きな分類としてふたつのカテゴリーを挙げた。
 ひとつはプロダクション・クルー、もうひとつはフランチャイズ・マネジメントだ。大まかにいうと、前者は現場の進行を取り仕切り、後者はプロジェクトの全体的な方向性を決める立場。ゲームコンテンツの作り手、送り手という形で、プレイヤーよりもむしろこうした職種に魅力を感じている人も多いかもしれない。

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▲選手ではなく、スタッフとしてeスポーツに関わる道も幅広い。

 それぞれのカテゴリーについて、ジェイソン氏は3つの職種例を紹介した。プロダクション・クルーでは、キャスター、ディレクター、撮影クルー。大会イベントなどでの実況では、いずれも欠かせない職業だ。
 フランチャイズ・マネジメントで例として挙げたのは、プロダクト・オーナー、プロダクト・マネージャー、グラフィック・アーティストの3つ。オーナーはどうやってタイトルをアピールするのかという戦略を考えて、マネージャーは具体的なプロモーションスケジュールを作成する。グラフィック・アーティストは、ソフトに派生するロゴやイメージカットなど、ビジュアル面でフォローする役目。
 こうしてみると、ゲーマーとしてではなくても、eスポーツに関われるチャンスは多そうだ。

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▲それぞれのカテゴリーで3つの職種が紹介された。

 和やかな雰囲気のなかで進んだ特別講義はこれにて終了。ジェイソン氏の以下のあいさつで、フィナーレとなった。

「社内でもeスポーツ関連は急速に伸びており、未知数なところがあるのが非常にエキサイティングだと感じています。学生のみなさんがいま、eスポーツを勉強していることも素晴らしいですね。ぜひ今後、作り手のこっち側に来てください。お待ちしています!」(ジェイソン氏)。