MCとゲストが実体感をともなって出現し、目の前でトークを展開
PC用VRヘッドマウントディスプレイOculus Riftが3月28日より正式ローンチ。すでにお届けしたハードウェア周りについてのリポートに引き続き、注目のソフトウェアを連日紹介していく。
本日紹介するのは、FOO VRによるVRトークショー番組「The FOO Show」だ。Oculus Riftの公式ストアでパイロット版が無料配信中。今夏よりRiftとHTC Vive向けに正式サービスを開始し、毎週配信を予定している。
ゲーム世界をクリエイター本人とともに訪れることも可能
番組のホストを務めるのは、FOO VRの創始者であるウィル・スミス氏(技術系ブログのTestedなどで執筆していた元ライターで、ハリウッド俳優とは同名の別人)。パイロット版となる初回は、本誌でも紹介したアドベンチャーゲーム『Firewatch』のクリエイティブ・ディレクターJake Rodkin氏とシナリオを担当したSean Vanaman氏がゲストとして登場し、同作の開発の裏側などを披露している。
この番組がユニークなのは、エンターテインメント系のVR映像コンテンツでありがちな360度全天周実写映像での収録ではなく、ゲーム同様に3Dモデルによるリアルタイムシーンとして全体が構成されていること。出演者もモーションキャプチャーを適用した3Dキャラクターとして登場し、VR空間内のバーチャルスタジオを舞台に、視聴者の目の前でトークを繰り広げる。人間のモーションが反映されているので、3Dキャラクターではありながら、そこにいる実在感が確かに感じられて面白い。
途中からはバーチャルスタジオを離れ、『Firewatch』で中心的な役割を果たす監視塔にワープし、小道具などを手に取りながらトークが続く。視聴者もコントローラーなどで小道具をピックアップしてズームしたり、回転させながら眺めることが可能だ。
クリエイターとともにゲーム中の名所を再訪できるというのは、まさにVRならでは。『Firewatch』自体は一人称視点ゲームであるもののVR対応はしていないので、ウルトラレアな体験となる。『Firewatch』の事を知らなくても、自分の好きなゲームにあてはめてみれば、この番組の方式がどれだけゲームファンにとってたまらないものになりうるか、すぐに想像がつくだろう。
VRはすべての映像エンターテインメントに関わる
The FOO Showは英語コンテンツなので自分には関係ないという人も多いだろうが、VRではこういったことが可能で、この番組のようなやり方が持っている可能性はゲームだけに留まらないということは覚えておいて欲しい。
もともとVR対応がしやすいゲームエンジンUnityを採用している『Firewatch』ほどインタラクティブなものにできるかは限らないが、理論上は3Dを使っているアニメや映画や、場合によってはスポーツなどのテーマでも、こういったVRならではの特性を活かしたトーク番組を作れるはず。
ちなみに360度実写映像の番組だと、収録時の固定カメラから視点を移動できなかったり、ストリーミングでの視聴ではノイズが目立ってクリアーな映像が得にくかったりもするが、3Dのリアルタイムシーンとして作られたThe FOO Showの場合は頭も自由に動かせるし、ポジションの移動も可能。途中で使われる資料ビデオなども含めて映像の品質は非常に綺麗だ。
その分、毎エピソードが一個の3D短編ゲームのようなものなので容量が膨れ上がるのだが、実写映像でもどっちみち全天周映像の場合は最高解像度だとギガバイト単位になることも多いので、実はそこはあまり変わらない(ただし映像の場合はストリーミングができるという違い)。
もっとも、全部を3Dシーンとして作るのは労力がそれなりにかかる一方、360度映像によるドキュメンタリーやニュース映像など、そこに実在感を感じられる実写映像をスピーディーに出していくことが重要な場合もあるし、これは手法の向き不向きの話に過ぎない(両者のいい部分をミックスした表現なども出てくるだろうし)。重要なのは、VRはゲームをするためだけのものではないということ。映画やドキュメンタリーだってVRになりうるし、もちろんトークショー番組だってできるのだ。