現状はOuya独占だが、PCなどでもリリース予定

我が子のためにプランテーションから脱走した黒人奴隷女性を描く『Thralled』と、作品を通じて恥ずべき歴史に向き合うということ【Indiecade 2014】_03

 「この恥ずべき歴史は、僕らの国ではあんまりちゃんと教えられてないんだ。「ウチの国が日本に初めて行ったんだ!」とか、そういうこととは違ってね。だからこのゲームを作ったという部分もある。ポルトガル人として」

 『Thralled』のクリエイティブ・ディレクターを務めるミゲル・オリベイラ氏はポルトガル出身で、南カリフォルニア大学(USC)でインタラクティブエンターテインメントを学び、現在もロサンゼルスで活動中。ロサンゼルス近郊のカルバーシティで行われたインディーゲームイベント“Indiecade”のセレクションに選ばれ、デモを披露していた。

 本作は、18世紀ブラジルを舞台に、サトウキビ農園から脱走した黒人奴隷の女性を主人公とするパズルアドベンチャーゲームだ。その背景にあるのは、ポルトガルの奴隷貿易に基づいたプランテーション農業であり、主人公も祖国コンゴからポルトガルの植民地ブラジルへ奴隷として売られてきたという過去を持っている。オリベイラ氏にとって本作は、自国の恥ずべき過去と向き合う作品でもあるのだ。

 デモは基本的に、先に行けない場所に遭遇したら赤子を横たえてパズルを解き(荷車を押してきて段差を越えるための台にするとか、岩が重なった場所を崩落させて平らにするとか)、また進んでいくという内容。
 とくに素晴らしかったのが全体の雰囲気だ。プレイヤーをじりじりと追ってくる青白い顔をした女性に追いつかれるとアウトなのだが、赤子が横たえている間に本格的に泣き始めるとあやして泣き止ませないといけないというギミックがあったり、雨の音と赤子の泣き声が響く中でのサバイバルが呪術的なダークなトーンで描かれている。

我が子のためにプランテーションから脱走した黒人奴隷女性を描く『Thralled』と、作品を通じて恥ずべき歴史に向き合うということ【Indiecade 2014】_01
▲パズルを解くために赤子を地面に横たえることもできるのだが、再び連れて行く時は泣き止ませないといけない。その間にも青白い顔をした女が迫ってくる。

 彼女に過酷な歴史的事実を超えた救いは訪れるのだろうか? 本作はAndroidベースの独立系ゲームコンソールであるOuyaとの時限独占契約が結ばれており、年内にリリース予定。オリベイラ氏によると、その後にPCやプレイステーションプラットフォームでの発売も検討しているそうなので、さらなる展開に期待したい。