基本プレイ料金無料で楽しめる“フリー・トゥプレイ”(F2P)スタイル。家庭用ゲームでもいち早くF2Pタイトルを展開してきたセガが、ニンテンドー3DS向けに『頭文字D パーフェクトシフト ONLINE』をリリースすることが発表された。今回は、週刊ファミ通12月26日号(2013年12月12日発売)に掲載された、同作の開発スタッフである小川陽二郎氏、新井健二氏へのインタビューの完全版をお届けする。

『頭文字D パーフェクトシフト ONLINE』開発スタッフインタビュー完全版_01
左:セガ 第一CS研究開発部
プロデューサー 小川陽二郎氏
本作のプロデューサー。『きみのためなら死ねる』や『クロヒョウ』シリーズなどを手掛ける。

右:セガ 第一研究開発本部
プロデュースセクション
プロデューサー 新井健二氏
アーケード版『頭文字D』シリーズのプロデューサー。本作では、世界観などの監修を務める。

――本作は、基本プレイ無料の“F2P(フリー・トゥ・プレイ)”スタイルを導入したタイトルですが、なぜ『頭文字D』シリーズを採用したのか、その狙いを教えてください。

小川陽二郎氏(以下、小川) 原作の『頭文字D』はもちろんですが、セガが持つアーケードタイトルの中でも『頭文字D ARCADE STAGE』シリーズの認知度が高いため、“F2P”タイトルとして採用しました。

新井健二氏(以下、新井) アーケード版の『頭文字D ARCADE STAGE』シリーズは11年目になります。僕らは“卒業生”や“新入生”と言っているのですが、一時期は新入生よりも卒業生の方が多く、『6』で導入した新モード“タッグバトル”で、若い方や親子の新入生が増えていき、原作コミックのパワーを改めて実感しました。とはいえ、ゲームをあまりプレイしない方にはアーケード版は難しいのでは、というのが正直な意見です。そういう方も気軽にプレイできるのが『頭文字D パーフェクトシフト ONLINE』だと思います。

――レースバトルの操作がシフトチェンジのみというのは、幅広い『頭文字D』ファンが気軽に楽しめるようにという意図なのでしょうか?

小川 そうですね。新しい試みですのでユーザーにどう受け止めてもらえるのか期待が膨らみますが、逆に不安でもあります。ふつうのドライブゲームにすると『頭文字D ARCADE STAGE』シリーズのプレイヤー向けになってしまう。本作では幅広いユーザーに向けて、カジュアルに遊べるようにドライブ感をなるべく出して、シフトアップダウンに特化しました。実際にクルマを操作するわけではありませんが、「こういうのもありだな」と思ってもらえればいいかなと。

――シフトアップダウンだけでも走った感じが伝わるゲーム性になっているということですよね?

小川 それを目指して開発しています。無課金でも十分遊べて、お子さんもプレイできるように作っていますので、安心して楽しんでいただけると思います。

『頭文字D パーフェクトシフト ONLINE』開発スタッフインタビュー完全版_03
『頭文字D パーフェクトシフト ONLINE』開発スタッフインタビュー完全版_02

――新井さんは本作の監修を担当されていますが、アドバイスをすることもあるのでしょうか?

小川 ニンテンドー3DS版とアーケード版の開発チームは別ですが、新井のチームが監修としてすべてをチェックしていますし、アーケード版で培ったノウハウ、とくにクルマとパーツの関係をサポートしてくれるので非常に助かっています。

新井 たとえばエアロパーツでは、“AE86”というクルマには前期型と後期型があり、前期型と後期型でウインカーの付いている場所が異なります。ウインカーの場所が違うとエアロパーツも変わる、というような資料が膨大にあるわけです。

小川 最初はデータだけもらって、ちょっと見ていただくぐらいのつもりだったのですが、データ量がものすごくて……。いま、泣きながら作っています。

――レースバトルのほかに、本作で新しくチャレンジした要素があれば教えてください。

小川 ソーシャルゲームが普及したことで、画面をタッチして操作することに世の中の人が慣れてきていると思っています。電車での移動中にちょっと遊んだり、テレビを見ているときにCMのあいだだけ遊ぶなど、ゲームをプレイするサイクルが変化してきたので、そこに新たな提案をできればと考えています。ニンテンドー3DSのゲームならガッツリ遊ばないと嫌だと言われるかもしれません。もちろん、ガッツリと遊ぶこともできますが、それよりは宿題の合間にちょっと遊んだり、時間の隙間に遊んでいただくのがあってもいいのかなと。基本プレイ無料のダウンロードソフトですので、ソフトを買いに行く手間もありません。いつもゲームが本体に入っていて、ちょっと立ち上げてちょっと遊ぶというような、位置づけのタイトルになったらうれしいですね。

新井 15年前、20年前は、メーカー側のほうがプレイヤーの変化よりも早くて、プレイヤーが息を切らしながらついてくる感じでしたが、最近はそれが逆になったと感じています。ですので、僕らがこれまでの既成概念を崩していかないと、あっと言う間にプレイヤーから飽きられてしまいますからね。

小川 今回のプロジェクトを足掛かりにニンテンドー3DSの“F2P”ビジネスの方向性の壮大なプランがありますので、ご期待いただければと思います。

――では、最後にファンへメッセージをお願いします。

新井 アーケード版や据え置き機版が難しいと思っている皆さん。新しくて簡単、それでいて奥が深いひと味違った『頭文字D パーフェクトシフト ONLINE』を、ぜひ味わっていただきたいと思います。

小川 無料でしっかり遊べる作品になっていますので、まずはダウンロードして触っていただければ、「セガはこういうことをやろうとしているんだ」とご理解いただけると思います。まずは、気軽に手に取っていただければなと思います。ご期待ください。

『頭文字D パーフェクトシフト ONLINE』開発スタッフインタビュー完全版_04
『頭文字D パーフェクトシフト ONLINE』開発スタッフインタビュー完全版_05
『頭文字D パーフェクトシフト ONLINE』開発スタッフインタビュー完全版_06