『ソルサク デルタ』に注目せよ!

『SOUL SACRIFICE DELTA(ソウル・サクリファイス デルタ)』稲船敬二氏と下川輝宏氏スペシャルインタビュー【TGS2013】_01
▲稲船敬二氏(写真左)と下川輝宏氏(写真右)。ふたりとも『ソルサク』から続いて開発に携わっている。

 2013年9月19日~9月22日の期間、千葉県の幕張メッセで開催中の東京ゲームショウ2013。SCEJAブースでは、2014年3月発売予定の『SOUL SACRIFICE DELTA(ソウル・サクリファイス デルタ)』(以下、『ソルサク デルタ』)が、世界最速でプレイアブル出展されている。“新創”と銘打った本作は、『SOUL SACRIFICE(ソウル・サクリファイス)』(以下、『ソルサク』)からどのような進化を遂げているのか。そこで、本作のキーマンであるコンセプターの稲船敬二氏(comcept)とディレクターの下川輝宏氏(comcept)にお話をうかがった。

“共闘”の幅が広がる第3の勢力

――9月9日に行われた“SCEJ Press Conference 2013”で制作が発表されてから、間を置かずにTGS 2013でのプレイアブル出展となりましたが、『ソルサク デルタ』とはどのような位置づけの作品になるのでしょうか?
稲船敬二氏(以下、稲船) ただの続編ではなく、単にパワーアップさせたものではありません。進化させるべきところを入念に考えた作品です。シリーズを重ねていけるかどうかはビジネスなのでわかりませんが、先々に続く過程をしっかりと考慮して、いまやれるすべてを注ぎ込んでいます。

――仮に続編を『ソルサク2』とするなら、この『ソルサク デルタ』は『1.5』以上の内容になっている?
下川輝宏氏(以下、下川) アップデートと言うにはボリュームが多い。『1.7』くらいは言ってもいいかと思います。
稲船 考えかたによっては『1.9』かもしれません。ユーザーからいただいた意見やネットでの反応をすごく意識して、どこに引っかかったのか、どこがおもしろかったのかを調査しました。それらの意見をもとに「こうしたらいいのではないか」と仮説を立てて、開発を進めています。その流れで、3勢力というアイデアが生まれました。これは、ほかのアクションゲームではできない発想ですよね。『ソルサク』だけができるうえに、『ソルサク』のユーザーだけが望む部分なのかなと。

――本作から登場する第3の勢力“グリム”ですが、この発想はどこから?
下川 “グリム”という勢力のアイデアは、じつは『ソルサク』の開発段階からありましたね。それを実現しようと決めたのは、『ソルサク』のユーザーが生贄を好む人と救済を好む人、どちらでもない遊びかたを好む人がいることがわかったからです。そこで、中立の立場を取る組織がいても『ソルサク』の世界なら不思議ではないと思ったのです。結果、各勢力が三つ巴になって戦うという、本作の根幹ができあがりました。

――その組織を描くにあたって、“グリム童話”を選んだ理由は?
下川 もともと“王道のファンタジー”を描くというコンセプトが『ソルサク』にはあり、みんなが知っている題材をいかに『ソルサク』の世界にアレンジする。この構造は、すごく大事なところでした。そこで、神話以外に“王道のファンタジー”と呼べるモチーフを探したときに、童話が浮かびました。雰囲気も神話とかけ離れていないし、いままでの世界観を壊すこともなく、かつ新鮮味が出せるモチーフということで、“グリム童話”を選びました。
稲船 『ソルサク』は、リブロムという“本”をベースにしていますよね。童話や神話は書物なので、そこでも整合性が取れました。下川からアイデアを聞いたとき、全員が「いいね!」と言いましたよ。“王道のファンタジー”というコンセプトそのものが常識にしばられてもおかしくありませんが、そこをいい形で広げてくれましたね。

――生贄派と救済派のなかに中立の組織が入り込むことで、“共闘”の楽しみかたも広がりますね。
稲船 同じ魔物を倒す、ひとつの目標を目指す仲間でも、その中にライバルがいるシチュエーションは燃えるじゃないですか! これは新しい要素になると思い、焦点を当てました。“いっしょに魔物を倒そう!”と協力して戦うだけではなく、新しい種を蒔くことでさらに共闘が熱くなったと思います。

『SOUL SACRIFICE DELTA(ソウル・サクリファイス デルタ)』稲船敬二氏と下川輝宏氏スペシャルインタビュー【TGS2013】_02

ゲームそのものを進化させる“調整”

――実際にゲームをプレイすると、想像していたよりもゲームが変わった印象を受けました。その理由に、第3の勢力はもちろんですが、魔法が大きく進化していることも挙げられます。
下川 連携魔法には注目してほしいですね。『ソルサク』の開発中から、魔法を連携することでさまざまな効果を発揮するというアイデアはありましたが、『ソルサク デルタ』で実現できました。種類も非常に豊富なので、選択肢が増えてプレイスタイルも変わっていくと思います。

――TGS 2013のプレイアブル版では、新しい魔物の“赤ずきん”と“白雪姫”を体験できたのですが、両方とも投擲魔法を防ぐ手段を持っていますね。これは、『ソルサク』で見受けられた「投擲魔法が強い」というユーザーの声を反映したからでしょうか?
稲船 既存の魔法も、ユーザーからいただいた意見を反映して調整を加えています。しかし、単純に魔物を固くしたり、投擲魔法を弱くするという調整は安易でしょう。それに、改良したデータを「バージョンアップ版です」と言ってダウンロードしていただくという形は選びたくなかった。それは、『ソルサク』を否定することにもなりかねません。魔物が投擲魔法をはね返せるように、ゲームそのものを進化させることでバランスを調整したのが『ソルサク デルタ』なんです。
下川 連携させれば無属性の魔法に属性を付けることもできるので、より自分らしさを出せるようになると思いますね。たとえば、救済役のユーザーの方から、攻撃役としてもっと活躍したいという意見をたくさんいただきました。みんなで遊ぶときはものすごく活躍するのですが、ひとりでプレイをしているとなかなかボスが倒せない。『ソルサク』では、一定時間体力を回復する魔法を使いながら、体力を消費する魔法で攻撃するというスタイルをユーザーが見つけてくれました。回復役でもより積極的に攻撃に参加できるようにするには、どうすればいいのか。そこから、種を魔物に植え付けて、回復魔法を当てることでダメージを与えられる新魔法が生まれました。こちらが思いもしなかったプレイスタイルをユーザーが発見してくれるのは、とてもうれしいですし、そもそもゲームの器が大きくないと発想できないでしょう。そこで、『ソルサク デルタ』では前作よりも器を大きくするために、魔法をたくさん提供しようと考えています。

日々進化する『ソルサク デルタ』!

――ユーザーとしてはボリュームが増えるのはうれしい限りですが、発売時期を2014年3月と明言されています。開発状況はいかがですか?
下川 まさに佳境ですが、やはり『ソルサク』なので、ユーザーの意見を取り入れて変更できる余地を残しつつ進めています。文字通り、日々進化していますよ。
稲船 『ソルサク』でできたSCEJAとマーベラスAQL、comceptという3社間の連携は、非常にうまく進んでいます。一体感がさらに深まっている印象ですよ。このプロジェクトは、まさに三つ巴となって作っていますが、その三角形の中心にユーザーがいるというイメージです。PS Vitaのゲームはユーザーとともに作っていくものだと思いますし、それができるハードです。
下川 前作をプレイした方は、供物や刻印、進行度に“リブロムの涙”など、さまざまなデータを引き継ぐことができます。そのうえで、連携魔法やステージ変化、モーションの変更などを新鮮な気持ちで楽しんでいただきたいですね。もちろん、まだ遊ばれていない方も多いでしょうし、新しいPS Vitaをこれから購入される方も多いでしょう。そういった方でも楽しめる作品にしようとがんばっています。

――では、最後に。TGS 2013でプレイアブルを体験するユーザーに注目してほしいポイントは?
下川 「こんな要素があるんだ!」というサプライズはもちろんですが、皆さんからいただいた意見をもとにチューニングを施した結果を、ごく一部ですが反映できているので、その点を実感してほしいですね。
稲船 『ソルサク』と比較するのもいいのですが、一回前作を忘れていただいて真っ白な状態で遊んでもらえれば、より違いが鮮明になると思います。そうすれば、いかに『ソルサク デルタ』が完成されているかがわかるはずです。初めてプレイするという方も、いっしょに楽しんでください。

 『ソルサク』と同様に、『ソルサク デルタ』でもユーザーの皆さんからの意見や要望を、公式サイトで幅広く募集する予定とのこと。キミのひと言が『ソルサク デルタ』を大きく変えるかもしれないぞ!