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170万ダウンロードを記録した人気アプリ『ゆれくるコール”for iPhone』の秘密に迫る

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●緊急地震速報をアプリ化

 2011年3月11日の東日本大震災以降、注目される機会が多くなった緊急地震速報。誰しも一度は、携帯電話から発せられるチャイムにびっくりした経験があるのではなかろうか。かく言う記者もそのひとり。自分の携帯電話から鳴り響くチャイムにびっくりしては、地震に身構える……ということもしばしばだった。

 ところで記者は、緊急地震速報のことを“地震を予測すること”だと勘違いしていた。気象庁が何らかのテクノロジーを使って地震の発生を予知し、これから起こるであろう地震に対する警戒を促すのだろう……と。きっと、そんな勘違いをしていた人も少なくないとは思われるのだが(え、そんなことはない?)、緊急地震速報は“予測”ではなく、“速報”である。正確を期すために緊急地震速報の説明を気象庁のホームページから引用すると以下の通りとなる。

 「緊急地震速報は地震の発生直後に、震源に近い地震計でとらえた観測データを解析して震源や地震の規模(マグニチュード)を直ちに推定し、これに基づいて各地での主要動の到達時刻や震度を予測し、可能な限り素早く知らせる地震動の予報・警報です」(気象庁のホームページの説明より)

 地震の揺れが震源地から遠方に伝わるのにはある程度時間がかかる。そこで、地震が発生するや即座に各地への到着時刻や震度を予測して、速報を警報を発するのが緊急地震速報だ――と、前置きが長くなってしまったが、そんな緊急地震速報をアプリ化したのが、この記事の主役である『ゆれくるコール”for iPhone』だ。ここ数年の普及ぶりには目覚しいものがあるスマートフォンだが、じつは緊急地震速報には対応していない(auの端末のみ一部対応)。『ゆれくるコール』は、アプリ化という形で緊急地震速報をスマートフォンに対応させ、ダウンロードが無料ということもあり、利用者からの大きな支持を得るに至ったのだ。

 ここでは、まずは『ゆれくるコール』の利用者を代表する言葉として、CRI・ミドルウェアのモバイル事業推進部 部長である幅朝徳氏の体験をご紹介しよう。CRI・ミドルウェアと『ゆれくるコール”for iPhone』との関わりについては追って説明するとして、幅氏の語ってくれたエピソードは、多くの『ゆれくるコール』ユーザーの体験を象徴しているように思われる。

 「私は発売当初からiPhoneを使っているのですが、スマートフォンが緊急地震速報に対応していないことを知って、“何か緊急時に備えられないか?”ということで、いろいろと探してみたんですね。そうしたら『ゆれくるコール』のアプリを見つけて、インストールすることにしたんです。『ゆれくるコール』のありがたさを感じたのは、やはり3月11日の震災の折です。その日は帰宅困難者のひとりとして、会社の会議室にダンボールを敷いて眠ることにしたのですが、余震続きで怖かった。テレビはうるさくて眠れない。そこで『ゆれくるコール』を設定して、iPhoneのボリュームを最大にして眠りました。そして警報のチャイムが鳴るとスタッフの近くに行って地震に備えて、おさまると会議室に戻って……という感じでしたね。正直言って、出番がないことがいいことだと思うのですが、実際には3月11日が過ぎたあとも毎日のように余震が続いていますし、『ゆれくるコール』には非常にお世話になっています」(幅氏)

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●『ゆれくるコール”for iPhone』のテクノロジーの秘密とは?

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▲『ゆれくるコール』を開発したアールシーソリューションの代表取締役の栗山章氏。

 『ゆれくるコール”for iPhone』を開発したのはソフトウェア企業のアールシーソリューション。2002年に会社を設立後、縁あって“IT関係の防災”に関わることになる。転機となったのは、2007年10月。気象庁が一般向けに緊急地震速報を公開することになり、そのタイミングに合わせて、アールシーソリューションでも緊急地震速報のサービスを始めることになったのだ。当初は専用端末などに組み込んでいた緊急地震速報だが、あるとき思い立ってiPhoneのアプリ化することを決意する。その間の経緯を、アールシーソリューションの代表取締役、栗山章氏は以下のように語る。

「最初は専用の端末を用意していたので、どうしてもコストがかかるし、いらぬ手間もかかる。そこで苦戦していたんですね。それでiPhoneアプリ化を行うことにしたのですが、当初は若いエンジニアが“いま流行りのiPhoneで何か作ってみたい”という軽い気持ちから始まりました。で、実際にとりかかってみると、スマートフォンにもともと組み込まれているテクノロジーを使うと、専用の端末を用意して……という煩わしさが一切ないんです。予想以上にインターフェースもやさしくて、手応えを感じていました。当初は、スマートフォンに緊急地震速報がないことはあまり意識してはいませんでした」(栗山氏)

 2010年11月にリリースされた『ゆれくるコール”for iPhone』の目標は、当初10000ダウンロード。そのできあがりに自信はあったものの、宣伝費用なども一切かけられなかったために、「100人くらいだったどうしよう」という不安もあったのだという。それがいざ蓋をあけてみると、すぐさま10万ダウンロードを記録することになる。その要因を栗山氏は「Twitterの書き込みやiTunesのレビューによる口コミ効果にありました」と分析する。ご存じの通り、緊急地震速報で伝えられる内容は必要最低限の事項に留まるが、『ゆれくるコール』ではそれぞれの端末に対して、ユーザーが設定した地域に「何秒後に震度がいくつか」という詳細な情報が伝えられる。その詳細さが受けたのだ。

 「『ゆれくるコール』の情報は気象庁の緊急地震速報より詳細だ」といったユーザーからの意見も多いようだが、「『ゆれくるコール』の情報は、気象庁が提供する緊急地震速報をもとに許可を得た方法により予測する仕組みから1歩も出るものではありません」と栗山氏。気象庁は、“一般向け”と“高度利用者向け”という2種類の緊急地震速報を発表しており、テレビや携帯電話の端末では、この“一般向け”を速報として伝えている。「音を聞いて身の安全を確保してほしい」という気象庁の方針に則ってのものだ。一方で、“高度利用者向け”は、緊急地震速報をしっかりと理解している人向けで、たとえば精密機械を扱っていたり、劇薬を扱っていたりと、震度1でもビジネスに影響がある事業者などを対象としている。『ゆれくるコール”for iPhone』は、この“高度利用者向け”緊急地震速報を「iPhone向けに、一般に広く展開しましょう」(栗山氏)という発想のもとに開発されているのが特徴で、iPhoneのGPS機能を使って各端末にそれぞれ個別の情報を送ることになる。

 「『ゆれくるコール”for iPhone』では、技術的にはそんなにびっくりするようなことはしていないです。サーバー側で配信するのは、利用者が設定した住所に対して、“○秒後に震度○の地震がきます”という情報だけなんです」と栗山氏は言う。とはいえ、「“高度利用者向け”情報を一般向けに提供したことがコロンブスの卵的なアイデアで、ユーザーに大きな支持を受けた要因だと思います」とは幅氏の言葉だ。

●アールシーソリューション×CRI・ミドルウェアによる緊急地震速報のゲーム化を企画!

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 配信そうそう10万ダウンロードと、大きな反響を呼んだ『ゆれくるコール』だが、その後さらに脚光を浴びることになる。きっかけとなったのは、言うまでもなく2011年3月11日の東日本大震災だ。3月11日以降、『ゆれくるコール』のダウンロード数は一気に170万に跳ね上がったのだという。10万から170万へ――そうなると、ネックになるのがサーバーであることは容易に想像がつくところだ。このピンチをどうしたのか? 結論から先に言うと、最終的に栗山氏は、東京中小企業家同友会を通じて全国の企業にサーバー増強の支援を募り、いくつかの企業から援助を受け、危機を脱するに至る。栗山氏が話してくれたエピソードは、非常に興味深く、それだけで1本の記事ができてしまいそうだが、残念ながらスペースの兼ね合いもあり今回は割愛させていただくこととする。ただ、ひとつだけ挙げさせていただくとしたら、そこでCRI・ミドルウェアとの出会いがあった。「じつは、もともとアールシーさんには震災前からご連絡をしようと思っていたんです。それが、“社会的な意義が高いアプリがサーバーで困っている”というニュースを知りまして、大したことはできませんが、ご協力させていただければ……と思ったんです」と幅氏。

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▲CRI・ミドルウェアのモバイル事業推進部 部長、幅朝徳氏

 ファミ通.comでも何度かお伝えしているが、大手ミドルウェアメーカーとして知られるCRI・ミドルウェアでは現在スマートフォンビジネスに力を注いている。「震災前からアールシーソリューションに連絡を取ろうと思っていた」という幅氏には、スマートフォンビジネスにおけるいくつかの思惑があった。それは、教育や医療業界ではCRI・ミドルウェアが提供する“CLOUDIA(クラウディア)”などのスマートフォン向けソリューションが活用されつつあり、これらの業界こそ緊急地震速報の意義が大きいと考えていたのだ。そこでCRIのソリューションに『ゆれくるコール』の技術を融合したいと相談しているうちに、幅氏は栗山氏からある提案を受けることになる。端的に言うと、緊急地震速報のゲーム化だ。緊急地震速報のゲーム化を発想するに至った経緯を栗山氏はこう説明する。

「防災・減災に関心をもってもらうのはたいへんです。防災・減災が話題になるのは何かがあったときだけ。日頃から防災・減災に興味を持ってもらう何らかの取り組みが必要だと、かねてから考えていました。ならば、ゲーム化という形で、広く皆さんに興味を持っていただければ……と思ったんです。そうは言っても基本私たちは真面目なので、何かをやろうとしてもどうしても真面目に取り組んでしまって、なかなかアイデアが出てこない。そこで、CRI・ミドルウェアさんを始めとするゲーム業界の方のお力をお借りできればと期待しました」(栗山氏)

 一方の幅氏も、緊急地震速報のゲーム化については、大きな意義を感じているようだ。

 「栗山さんと何度かお話をさせていただいているうちに、緊急地震速報をエンターテインメントはもとより、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)やCGM(消費者生成メディア)的な使いかたができないかというご相談を受けたんです。端的に言うと、ゲームとの融合です。言葉づらだけを捉えると、不謹慎だとか、自粛すべきだということに直結しがちかもしれないのですが、アールシーソリューションさんのように長年防災意識・減災意識に取り組んでいらっしゃった方たちの“どうがんばっても正攻法では浸透しない”という現実意識があるなかで、ゲームを通して緊急地震速報の認知度を高めるというのは社会的にも意義深いことだと思います」(幅氏)

 アールシーソリューションとCRI・ミドルウェアでは、ただいま緊急地震速報のゲーム化に向けてのプロジェクトを進行中だ。「社会貢献って必ずしも寄付だけではないと思います。こういう出会を大切にして形ある具体的なステップに進めていきたいです。その上で、こういうプロジェクトは限られたメンバーでやっているよりも、いろいろな意見があったほうがいいと思うので、興味をお持ちのメーカーさんは、ご連絡をお待ちしております」と幅氏。

 今回の取材からはいくつものテーマが汲み取れるのではないかと、記者は考えている。それは、アールシーソリューション側からしてみれば、“勢いのあるスマートフォンビジネスへの取り組み”であったり、CRI・ミドルウェア側からしてみれば“ゲームメーカーからのスマートフォンビジネスへの取り組み”であったりするのかもしれない。ユーザーサイドからしてみれば、“防災・減災への取り組み”という視点で見ることもできるかもしれない。ただひとつ言えるのは、スマートフォンの分野はいま間違いなく“ホット”だということ。今後は、どのゲームメーカーにとっても、その対応が事業展開の大きな鍵を握ることだけは間違いなさそうだ。

 ちなみに、ご存じの通りスマートフォンの分野は相当なスピード感を持ってものごとが進行しており、アールシーソリューションでは2011年4月末から『ゆれくるコール” for Android』を配信中で、NTTドコモ、ソフトバンクもこの夏から、すべてのAndroid端末に緊急地震速報を対応させることを明言している。アールシーソリューションとCRI・ミドルウェアがコラボしての緊急地震速報のゲーム化プロジェクトも、あるいは思ったよりも早いタイミングでご紹介できるのかも? と思ったりもするのだが……両社の今後の取り組みに期待したい。

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※アールシーソリューションの公式サイトはこちら
※CRI・ミドルウェアの公式サイトはこちら

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