HOME> ニュース> 『プリンス・オブ・ペルシャ』はこうして生まれた【GDC 2011】

●トホホな失敗の連続……。

　2011年2月28日〜3月4日、アメリカ、サンフランシスコのモスコーニセンターにて、GDC（ゲーム・デベロッパーズ・カンファレンス）2011が開催。世界中のゲームクリエイターによる、世界最大規模の技術交流カンファレンスの模様を、ファミ通.comでは総力リポートでお届けする。

　GDC25周年を記念した、クラシックゲームを伝説的クリエイターが自ら振り返る特別講義“Classic Game Postmortem”で、ジョーダン・メックナー氏が、初代『プリンス・オブ・ペルシャ』の開発秘話を語った。

「私は1979年に最初のApple IIを入手した。コンピューターを自分の部屋に持つことで、私の人生は変わった。ゲームセンターで使うお金を節約できるというだけじゃなく、自分でゲームを作ることができるようになったんだ」。そして開発されたのが『カラテカ』で、まだカレッジにいた時期にプログラミングされ、1984年にリリースされた。しかし、つぎに何をすればいいかは定かではなかった。「最大の心配は、Apple IIはルービックキューブのような一時的なブームなんじゃないかということだった。コンピューターゲームの市場は2年後もあるのだろうか？」。

　それでも、『ロードランナー』と自作の『カラテカ』、そして映画『レイダース／失われた聖櫃』などのアドベンチャーストーリーに影響を受けたプラットフォーマー（スーパーマリオに代表されるジャンプゲーム）を開発することになる。

　メックナー氏いわく、多かれ少なかれここでゲームのスタイルが決まったのだという。インディ・ジョーンズが何をするか？　ジャンプして穴を飛び越え、対岸の地面の端をつかみ、自分を引き上げ、門に転がり込む……。「少しくらいジャンプに失敗しようと、自分を引き上げてプレイを続けられるチャンスを残したかった。その代わり、落ちたときには本当に痛く感じられるように」。アラビアという設定は、パブリッシャーのブローダーバンドを訪ねているときに決まったものらしい。「しかしながら、彼らは『カラテカ』の続編を望んでいたので、新IPを開発すると伝えたときにはがっかりしていた」。「いつの時代も一緒だね」と語ると、会場からは笑いが起こった。

　当時の技術的制約は、メックナー氏を慌てさせるものとはならなかった。彼はアニメーション技法のひとつ“ロトスコープ”がビデオゲームに応用できると考えていた。「サイレントムービー時代のテクニックをゲームに使うというアイデアは気に入ったね」。そしてクレジットカードで2500ドルのVHSカメラを買い、彼の弟が走り、ジャンプする様子を録画した……のだが、翌週その中古カメラを店に返しに行くことになる。動作を維持するコストが大変だったからだ。

　しばらくして、スチルフレームつきの家庭用VHSプレイヤーを買い、フレーム送りをしながら、三脚つきのカメラで写真を撮って保存するようになる。一動作ごとに動きを止めては写真を撮り、デジタル化して組み合わせると、シンプルな走るアニメーションの完成だ。メックナー氏は、これをコンセプトの証明としてブローダーバンドに見せた。

　ブローダーバンドはメックナー氏をカリフォルニアに移住させて内部で働かせたがったが、彼は本の著者のように独立を保ちたかった。交渉の結果、ニューヨークの両親の家を出て、西へと向かうことになる。そして、キャラクターが走り、ジャンプできるようにゲームデザインに集中した。これまでとは別のカメラでさらにアニメーションを収録しようとしたところ、彼の弟は1年半で8インチ（約20センチメートル）も身長が伸びてしまっており、調整するハメになる。

　1988年、開発は佳境を迎えたように思えたが、ゲームはまったく楽しいものではなかった。仲間に「あなたのゲームはサバイバルだけがあって、勝利がない」と言われてしまう。そして『カラテカ』を見直し、ゴールを明確にして、進度を表示し、あらためて勝利を設定することになる。そのほかにも、50ステージを10ステージにし、剣の戦いも用意する。このためにメックナー氏は、著作権を無視して1938年の映画『ロビンフッドの冒険』から6秒間のシーンをロトスコープで拝借したことを明かした。こうして1989年、新年の課題はゲームを今度こそ終わらせることだけで、父に音楽を作曲してもらい、ラスボス戦などいくつかの要素を残すのみとなっていた。

　こうして1989年10月、ようやくApple II版の『プリンス・オブ・ペルシャ』が発売された……が、セールスはひどかった。Apple IIの市場は死にかけていたのだ。グラフィックとサウンドを改良したPCとAmigaのバージョンが9ヵ月後に発売されたが、今度もダメだった。小売店が移植版を売りたがらなかったのだ。ここまでですべて合わせて1万本も売れていない。ようやく成功したのは、Appleの新たなMacintoshでプレイ出来るようになってからだ。その数、200万本！　その後、現在まで続くシリーズとなっているのはご存知のとおりだ。（取材、文: ジェイソン・ブルックス、翻訳: 編集部）

その他のニュース

ストップモーション風アドベンチャー『Harold Halibut』配信開始。海に沈んだ宇宙船での生活、パッとしない主人公を導く出会いとは

Slow Bros.は、プレイステーション5（PS5）、Xbox Series S|X、PC（Steam/Windows）用ソフト『Harold Halibut』を2024年4月16日より配信開始した。Xbox/PC Game Pass対応。

『BAR ステラアビス』インタビュー。お酒で仲間と絆を深め、酔ったときの面倒くささすら好きになる。異世界探索シミュレーションRPGの秘密

日本一ソフトウェアから発売されたNintendo Switch、PS5、PS4向けソフト『BAR ステラアビス』の開発者インタビューをお届け。

“インディーワールド2024.4.17”4月17日（水）23時より配信決定。Switchで遊べるタイトルをまとめて紹介する20分

任天堂は“Indie World 2024.4.17”（インディーワールド2024.4.17）を2024年4月17日23時より配信すると発表した。

『ぷよぷよ カートリッジバージョン（コンシューマー版）』が“プロジェクトEGG”にて本日（4/16）より配信。人型ぷよで独特な“ぷよぷよ”を楽しめるパズルゲーム

D4エンタープライズは、レトロゲーム配信サービス“プロジェクトEGG”にて『ぷよぷよ カートリッジバージョン（コンシューマー版）』を本日2024年4月16日配信する。

『ペリッシュ』1885円（35%オフ）、『ウェイ オブ ザ ハンター』2585円（50%オフ）。THQのFPSタイトルを対象としたセールがSteamにて開催

THQ Nordic Japanは、Steamにて販売中のローグライクFPS『PERISH』（ペリッシュ）とハンティングゲーム『Way of the Hunter』（ウェイ オブ ザ ハンター）を対象としたセール“Steam FPS フェス2024”を開催。期間は2024年4月23日（火）まで。

アニメ『呪術廻戦』ギネス世界記録に登録。“世界でもっとも需要の高いテレビアニメ番組”としてギネスブック（2025年版）に掲載

アニメ『呪術廻戦』が“ギネス世界記録2025”に登録決定。“世界でもっとも需要の高いテレビアニメ番組”として2025年版のギネスブックに掲載される。

『呪術廻戦 ファントムパレード』PC版が本日（4/16）よりDMM GAMESにて配信。SSR確定ガチャチケとオリジナルPC壁紙4種がただでもらえるキャンペーンも【ファンパレ】

サムザップは、iOS/Android対応のコマンドバトルRPG『呪術廻戦 ファントムパレード』のPC版をDMM GAMESにて本日2024年4月16日（火）より配信した。

『フォールアウト76』強そうなレベル500プレイヤーが近づいても怖がらないで。公式の初心者ガイドから分かるアパラチアでのおもてなし

『フォールアウト76』公式サイトにて、“プロが教える『FALLOUT 76』の遊び方！”と題した初心者向けのプレイガイドが公開。

【Steam】『バイオRE:4 ゴールドエディション』20％オフでセール初登場。『モンハンライズ』75％オフなどカプコンセールが開催中

カプコンは、Steamストアで開催中の“CAPCOM SPRING SALE”に新たなラインアップを追加した。セール期間は2024年4月30日（火）1:59まで。

夢の世界をカードと戦略で救うSRPG『Dream Tactics』Steamにて本日（4/16）発売。懐かしいGBA風グラフィックでモフモフ軍団に立ち向かう

新作PC向けゲーム『Dream Tactics』が本日2024年4月16日にSteamにて発売。リリースを記念し4月23日まで10％オフの1800円［税込］で販売されている。