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鈴木裕氏、『シェンムー3』は「環境が整えば作りたい」【GDC 2011】

ゲーム
今年のGDCアワードではパイオニア賞にも選ばれた鈴木裕氏のセッションでは、同氏が過去に手掛けた有名タイトルの裏話がつぎつぎに飛び出すスリリングな内容に!

●いま明かされる、あの有名タイトルの裏話

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 2011年2月28日〜3月4日、アメリカ、サンフランシスコのモスコーニセンターにて、GDC(ゲーム・デベロッパーズ・カンファレンス)2011が開催。世界中のゲームクリエイターによる、世界最大規模の技術交流カンファレンスの模様を、ファミ通.comでは総力リポートでお届けする。

 『ハングオン』、『アウトラン』、『バーチャファイター』シリーズなど、長年にわたりセガのアーケードタイトルの顔として活躍してきた鈴木裕氏。今年のGDCアワードではパイオニア賞にも選ばれた同氏のセッションが、会期3日目に当たる2011年3月2日に実施された。“Yu Suzuki's Gameworks: A Career Retrospective”と題されたこのセッションでは、かつてセガに在籍していたこともあるサーニーゲームズ社長のマーク・サーニー氏を司会に迎え、同氏および来場者から投げかけられる質問に鈴木氏が答えるという形で進行。サーニー氏らの強いセガ愛ゆえ、話題があちこちへ飛ぶこともあったので、ここでは注目の内容を項目ごとに分けてお届けしよう。

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■『R-360』開発者を襲った悲劇
 体感型ゲームの究極形とも呼ばれている、1990年稼働の『R-360』。タイトルどおり360度全方向に動く本作は、その特異な作りゆえ開発中はさまざまなトラブルがあったそうだ。まず、試作機の段階で鈴木氏が被害(?)に遭う。セガのメカトロニクス部隊から試作品ができたと言われた同氏が見たのは、無数のコードに囲まれた椅子、という無骨な物体……。しかも設置場所がビルの屋上ということで、体感中はかなりのスリル味わったとのこと。続いての被害者はプログラマー。同作では開発時にひとつの指示が鈴木氏より発せられた。それは、“危険だからひとりで作業するな”というもの。まるでホラー映画のキャッチコピーだが、その後の展開もまるでホラー映画だ。ある晩、プログラマーのひとりが鈴木氏の忠告を守らずにひとりで『R-360』を操作してしまう……すると! 筐体のセーフティーロックが外れなくなるというトラブルが発生。憐れプログラマーは翌朝ほかのスタッフ出社するまで逆さ吊りの状態で、待つことになってしまったのだ。ちなみに鈴木氏はその部下に対して、みんなが出社するまで放置していっしょに見て笑う、というペナルティーを与えたとのこと。

■『バーチャファイター2』のテクスチャーはソビエト連邦崩壊で実現!?
 鈴木氏が1993年にアーケードへ送り出した、史上初の3D対戦格闘ゲーム『バーチャファイター』。同作は「人を動かして3Dのゲームを作りたかった」という長年の夢がついに実現した作品であり、また歴史遺産としてスミソニアン博物館に所蔵もされたゲーム史におけるメモリアルな作品でもある。セッションでは、『バーチャレーシング』のピットクルーを使い、3Dキャラクターを動かすシミュレーションを行ったなどの開発秘話が語られたが、とくに興味深かったのは続編『バーチャファイター2』に関するエピソードだ。『バーチャファイター』のころは3Dポリゴンによる表現が発展途上であったため、キャラクターはカクカクの角張ったデザインだった。しかし、『2』ではポリゴン数の増大に加えてテクスチャーを使用したことで、キャラクター造形のクオリティーは飛躍的に向上している。じつは、この“テクスチャーを使用”という手法が実現した背景には、かなり壮大な物語があったのだ。鈴木氏いわく、かつてテクスチャーの技術というのは、軍事シミュレーションの分野でしか使用されておらず、民間でそれを所有している会社はなかったという。しかし、1991年にソビエト連邦が崩壊し、同国の軍事用技術が民間でも扱われるようになってくる。そこに目を付けた『バーチャファイター2』開発時の鈴木氏。海外まで足を運び、当時最先端だったテクスチャー技術のゲーム転用を某会社へ交渉したのだ。相手側から提示された価格は200万ドル。これに対して、当時セガの代表取締役社長だった中山隼雄氏は「5000円にしてほしい」と返す。“無理難題”という言葉がふさわしいエピソードだが、「技術開発を進めていったら、最終的に5000円くらいになった」(鈴木)とのことなので、中山氏の判断力恐るべしといったところである……。

■『シェンムー3』は出るのか!?
 ドリームキャストを牽引するタイトルとして期待され、70億円という膨大な開発費も話題を呼んだ『シェンムー』シリーズ。鈴木氏の構想では、壮大なストーリーを複数作にわたって展開する予定だったが、望んでいたほどの成果を得ることができず2001年の9月に『2』を発売したきり、その後のシリーズ展開はなくなってしまった。しかし、“FREE”とジャンル付けされた同シリーズは多くの熱心なファンを生むこととなり、いまも続編の発売を期待する声は止むことがない。セッションではもちろん、この『シェンムー3』の発売を求める意見が鈴木氏に向けられた。これに対して同氏は「作りたいですよ」と回答。「環境が整えば作りたい。スポンサーが付けば作れるかも」と続け、「たぶんセガは作らせてくれるんじゃないかな?」と発言すると会場から大きな拍手が起こった。ちなみに、鈴木氏が代表取締役社長を務めるYS NETでは現在、『シェンムー』の外伝に当たるソーシャルゲーム『シェンムー街』を提供中。これが大ヒットを記録すれば、もしかするともしかする……のかも。

■『ΨΦ PSY-PHI』の開発中止は、指が●●●したから?
 数多くのアーケードタイトルを手掛けてきた鈴木氏だが、2004年ごろに発表した『ΨΦ PSY-PHI』というタイトルは、ゲームとしてかなり形になっていたのにも関わらず発売中止となってしまった。同作はタッチパネルで操作するシステムを採用し、超能力者どうしのバトルを描く対戦格闘(超能力)ゲーム。いまでこそニンテンドーDSシリーズやスマートフォンの普及で、入力デバイスとして市民権を得たタッチパネルだが、約5年も前にそれを取り入れようとしていた鈴木氏の先見はさすがとしか言いようがない。では、なぜ商品化にいたらなかったのか? 答えは、ある意味非常に納得のできるものであった。「操作が激しすぎて、指をやけどしてしまった(笑)」(鈴木)。対戦格闘ゲームの魅力と言えば、素早い入力による激しい攻防。しかし、それをいざタッチパネルでやったところ、機械よりも先に人体に限界が来てしまったのだ。「手袋をすればよかったのかな(笑)」とジョークを言いつつも、「“Kinect(キネクト)”ならちゃんと作れるかもしれない」と最新入力デバイスへの興味も示していた。

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▲かなり完成に近づいていたにも関わらず開発中止となってしまった、『ΨΦ PSY-PHI』。いまの技術なら発売が可能かも!?

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▲セッション終了後、鈴木氏の元にはサインを求める人たちがどっと詰め寄せた。

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