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『ザ・サード バースデイ』開発者インタビュー【その3】――衝撃のラスト。キーワードは……
ゲーム PSP●キーワードは「その引き金を引くのか」です(野村)
――野村さんは『パラサイト・イヴ』シリーズではキャラクターデザインを手掛け、本作ではさらにクリエイティブプロデューサーも兼務されています。改めて、本作のプロジェクトがスタートしたきっかけを教えてください。
野村哲也(以下、野村) スクウェア・エニックスはエンターテインメント会社ですから、IP(知的財産のこと。ゲームソフトも含まれる)を大事にして行かなければなりません。新規IPの立ち上げも重要ですが、過去のIPは放っておくと埋もれていく。その中でもアヤ・ブレアはシンボリックなキャラクターで、IPとして埋もれさせるにはもったいなかったんです。そこで、アヤを復活させるために立ち上げたプロジェクトが『ザ・サード バースデイ』でした。
――立ち上げたのは野村さんなんですね。
野村 ファンからの要望が多かったですからね。ただ、『パラサイト・イヴ』も『II』も、どちらも僕はピンチヒッターとしての参加(※後述)でしたので、社内のほかの方が何回かアヤを復活させようとして『パラサイト・イヴIII』の企画が出されていたのを客観的に見ていました。ですが、どのプロジェクトも最終的には流れてしまい、それから誰もアヤの復活を言い出さなくなってしまったので、今回初めて自分からアヤの新シリーズとして企画を提案したんです。
■アヤ・ブレアの復活
――シリーズ名を冠するのではなく『ザ・サード バースデイ』という新たなタイトルにしたのは何故ですか?
野村 前作の発売から10年以上経っていますので、シリーズを遊んでいないユーザーの方も入りやすいようにという意味と、リセットした新規タイトルとして一新しました。キャラクターは年月を置けば、みなさんの中にイメージが固まってしまう。それにはアヤのイメージを残しつつも、イメージをリセットするような、復活をさせたかったんです。
――開発を終え、アヤは復活しましたか?
野村 あとは、ユーザーの皆さんがゲームをやり終えたときにどう感じるかです。オーバーダイブというシステムは、ゲームシステムでありながら、アヤを復活させるためのシステムでもあります。ほかの人に乗り移るというシステムと似たものはほかにもありますが、本作のシステムとは意図が違う。それをどこまで感じてもらえるかがポイントになります。みなさんの思い描く、強く美しいアヤには出会えるはずです。
■アヤ誕生秘話
――初めてアヤを描いた当時のエピソードを教えてください。
野村 『I』のキャラクターデザインは、当初別のスタッフが担当されていたのですが、仕上がったイラストが坂口さん(※坂口博信氏。『ファイナルファンタジー』シリーズを手掛けた人物。現ミストウォーカー代表)のイメージと異なったらしく、自分に話がきたんです。その時のリクエストは、『ファイナルファンタジーVII』のエアリスのようにサイドの髪を長くしてほしいというものでした。ただ、当時別件のキャラクターデザインの話も進んでいて、そちらではショートカットという要望が出ていたんです。自分はその話しだと勘違いして描いたんですが、後から聞いたところでは、坂口さんは本当はアヤはポニーテールがよかったようで。ふたつの別件のキャラを自分が混同してしまって、結果、アヤの髪型は、サイドを伸ばしたショートに。それが、気に入ってもらえたようで、そのまま採用になりました(笑)。
――(笑)。それで、『II』も引き続き担当することに?
野村 いえ、『II』は最初、前作のアヤをベースにまた別のスタッフが描いていたんです。でも、途中でそのスタッフが辞めてしまって、また自分に依頼が舞い戻って来た。ただ、ゲーム内のキャラクターモデルは、元のデザインで進行していたので、自分はそのイメージを崩さないようにしながら自分なりに描き起こしていきましたね。
――アヤのイラストを描く上での、基本コンセプトを教えてください。
野村 強さと儚さ、後は作中でもコンセプトとしてあるセクシーさと言うか、妖艶さでしょうか。新規タイトルとして立ち上がったこともあって、当時はイメージを付けるために、たくさんのイラストを勢いに任せて描いてましたね。いまでは考えられないことですが。
――10年振りのアヤはいかがでしたか?
野村 昔のイラストを見ると、アヤがガッチリした体型なので、自分にはちょっと違和感があるんです。でも、その体型がいいと言う方もいらっしゃって、逆に『ザ・サード バースデイ』のアヤは華奢すぎると言う方もいます。当時はのびのびと描いていたなと思いますね。
――本作はコスチュームが豊富ですね。
野村 コスチュームのデザインも別のスタッフによるものですね。入手するのが難しいものもありますよ。周回で遊ぶ時の、気分を変えるオプション的なとらえ方をして頂ければと思います。
■倒されながら覚える
――このゲームで実現したいと思ったことはどのような点ですか?
野村 地形や敵の配置など、シューターゲームのおもしろさやバランスを練り込んだ、三人称視点のガンアクションを作りたいという気持ちがありました。『ダージュ オブ ケルベロス -ファイナルファンタジーVII-』でもTPS(三人称シューティング)に挑戦していましたが、あれはRPGの延長上アクションとして設計された作りでした。RPGだと、全滅してゲームオーバーというのはショックですが、シューターと呼ばれる本格的なガンシューティングゲームになると、何度もやられながら覚えていくのが基本になるので、本作もそういったゲームの敷居の元作られています。自分も最近遊んでいる『コール オブ デューティー ブラックオプス』で、何度も同じ所で爆発に巻き込まれています(笑)。
――難度の高さも当初の予定通り?
野村 海外には筋骨隆々の男性が主人公のシューターは数多くありますが、今回のアヤのような華奢な女性が主人公なのは、珍しいケースです。アヤを主人公にすることで、少しでも間口を広げて、遊び手を選ばないシューターの新しい可能性を探りたかったんです。この手のジャンルが苦手な人でも、成長システムとオーバーダイブを駆使していただければ、緊張感を持って楽しく遊べると思います。
●続編があるなら長編的作りに
――本作をきっかけに続編も展開していきたいとお話されていましたが?
野村 考えてはいますが、本作の評判次第になると思います。日本ではシューターというジャンルは大ヒットになりづらいですが、本作の開発を経て、つぎはどうすればいいかという方向性が見えました。次を作るとしたら据え置き機でしょうね。シナリオも今作は海外ドラマ風にエピソードを綴っていますが、次は劇場版のような作りをしたいと思っています。このシリーズを、シューターの本場である世界に挑戦し得るものに成長させて行ければと思っています。
――では最後に、これからプレイしようとする人にひと言お願いします。
野村 本作のオフィシャルツイッターでアンケートを取ったところ、本作のファンは『パラサイト・イヴ』シリーズを遊んだことのある年齢層が多かったんです。その方々にとっては、昔のゲームのような歯応えがあって楽しい難度になっていますので、何度も倒されながらがんばってクリアーを目指してください。ありがちな言葉ですが、最後には衝撃のラストが待ち受けています。キーワードは、「その引き金を引くのか」です。
メーカー | スクウェア・エニックス |
---|---|
対応機種 | PSP(プレイステーション・ポータブル) |
発売日 | 2010年12月22日 |
価格 | 6,090円[税込] |
ジャンル | アクションRPG / ガンアクション |
備考 | PlayStation Storeダウンロード版は4980円[税込] |
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