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『グランツーリスモ5』プレイインプレッション
ゲーム プレイステーション3 インプレッション●2010年11月25日、満を持して全世界で発売
2004年12月28日にプレイステーション2で『グランツーリスモ4』が発売されてから、じつに6年近く。ついに最新作『グランツーリスモ5』が発売された。度重なる発売日の延期にやきもきしたこともあったが、いざソフトが手元に届いてみると、ついに遊べるのだという期待感で何もかもが吹っ飛んでしまう。プレイした時点では、まだオンライン用のサーバーが稼働していなかったこともあり、今回はオフラインのモードについてインプレッションをお送りし、オンラインについては、また後日お届けしたい。
●より緻密になったシミュレーション精度
現実のクルマの挙動をシミュレートしている点が『グランツーリスモ』シリーズ最大の特徴だが、じつはクルマの外、つまりサーキットを含むランドスケープデザインも注目すべきポイントだ。路面の起伏や傾斜、路面の継ぎ目やコース上の落書きにいたるまで、実際にサーキットで計測し、忠実に再現している。だが、それでもまだ以前の作品では、CGで作られた箱庭的な感覚は否めなかった。ところが本作のランドスケープは違う。一部のコースではあるが、時間が経過して夕方から夜になったり、天気が変わったりするようになった。言葉でこう書くと、なんだそれだけか、という印象かもしれないが、実際にトスカーナのコースで、陽がだんだん落ちてきて夕焼けになり、そして夜のとばりが下りて星々が輝き始めるのを見ると格段に現実味が増し、クルマの外の世界が息づいているように思えてくる。また、雪がしんしんと降るスノーコース、ウォータースクリーンで前が何も見えなくなる雨のコースを走ると、気温や湿度すら伝わってくるかのよう。雨のコースでは、ワイパーやフロントウィンドーに叩きつけられる雨粒が本当にリアルで、ついコックピット視点にしてしまう。本作は、クルマだけでなく、クルマを取り囲む環境ごとシミュレートしようとしているのかもしれない。
もちろん、クルマの挙動シミュレーションも精度を増し、もはやABS(ブレーキのロックを自動的に回避する装置)やASM(スピンを防ぐ機構)、トラクション・コントロール(駆動輪の空転を軽減する装置)といったドライビング・オプションの設定なしでは、通常のコントローラでは操作が難しいレベルにまで達しつつある。個人的には、本作を満喫するにはハンドルコントローラがベストな気がした。やはり舵角を一定に維持でき、アクセルやブレーキも含めて微細な操作ができるという点では、ハンドルコントローラに軍配が上がる。とはいえ、通常のコントローラでも、先述のドライビング・オプション機能を駆使すると、鼻歌交じりで走れるくらい簡単になるが。まあ、このあたりは自分の技量や好みに合わせて設定すればいいと思うけれども、ある程度走れる人は、ハンドルコントローラが欲しくなってくるのではないだろうか。きっとこちらのほうが操作が楽で、なおかつ楽しいはずだ。
●まさに"カーライフRPG"とも言えるBスペックモード
本作でもっとも特徴的なのは、"マイドライバー(コンピュータのドライバー)"にクルマを運転させてレースをするBスペックモードだ。さっそく僕もK.Maruyama、通称"マルやん"というマイドライバーを作成してレースに参戦してみた。どうもマルやんはカッとなりやすい性格なのか、スタート直後からテンションゲージは"HOT"になりっぱなし。HOTになりすぎると、ペースは上がるがミスする可能性も高まるので、序盤はずっと"ペースダウン"で彼のテンションを冷まし続けることに。ただ、マルやんはコーナリングと操作精度に優れるので、いったん集団から抜けると、以降はクルージングモード。ペースキープの指示さえ出していれば、そうそう負けることはなかった。まだどんな仕組みなのかわからない部分もあるが、Bスペックモードでは、マイドライバーのテンションをできるだけニュートラル〜ややHOTあたりにキープすること、そしてできるだけいいマシンを与えることがポイントのように思える。ライバルと同程度のクルマでは、どうしても抜きつ抜かれつの荒れた展開になり、テンションがHOTになりっぱなしで、そのうちミスして自滅しがちだった。とはいえ、ギリギリのせめぎ合いが好きな人は、あえて狙ってやるというのもひとつの楽しみだろう。ラストラップまでなんとかトップの後ろに貼り付き、最終コーナー手前で"パッシング"の指示を出して決まったときの爽快感は、なかなかのものだった。
ちなみに、本作ではレースの出場条件が、マイドライバーのLVによって決められている。レースを行うごとに、結果に応じた経験値がマイドライバーに加算され、一定の数値に達するとLVが上がるという、RPGではよくあるシステムだ。プレイヤーが自分でクルマを操作するAスペックモードでは、プレイヤー自身に経験値が与えられ、LVが上がっていく。もちろんAスペックでのレースも、LVによって出場条件が制限されており、プレイ開始そうそうプロフェッショナル・シリーズのようなハイクラスのレースに参戦することはできない。つまり、段階を踏んでステップアップしていくようになっているということだ。ただ、前作までにあったライセンスモードも健在で、ここで取得したライセンスは何の条件となるのか、いまのところわからない。先述のように、レース出場もクルマの購入もLVによる制限なので、ライセンスが条件としてどこにも出てこないのだ。単に「どうだ! 国際A級取ったぜ!」と自己満足するためだけとも思えず、今後ライセンスが何か隠されたコンテンツの条件になるような気がしてならない。
●クルマにまつわるすべてのエンターテイメントがここに
個人的にハマッたのは、"スペシャルイベント"だ。このモードでは、レーシングカートやラリー、NASCARといった、ちょっと趣向を凝らしたレースが盛り込まれている。とくにおもしろいと感じたのは、トップギア・テストトラックをフォルクスワーゲンのサンババスで走るワンメイクレース。性能は100km/hそこそこしか出ないクルマだが、みんな同じ性能なのでなかなか前のクルマをパスできない。コーナーごとにほんの少しずつライバルをかわし、トップにジリジリと迫っていくレース展開は、けっこう熱いものがあった。
思えば、本作は、市販車、チューンドカー、GTマシン、Cカー、F1、WRCマシンにNASCARにレーシングカートと、四輪レースの主立ったレースカテゴリーをほぼ網羅していることになる。世界にはこんなにおもしろいクルマの世界があるのかということを知ることができるのも、『グランツーリスモ』シリーズの魅力のひとつなのだと、あらためて感じることができた。そう言えば、僕自身もこの作品に出会ったことでクルマに興味を持ち、免許を取って自分で運転するようになった。ペーパー、いやモニタードライバーかもしれないが(笑)。まあつまらない冗談はさておき、もしかしたら、この作品が開いてくれた"クルマの楽しさ"という世界の扉から、また誰かが現実の世界に向けて羽ばたいていくかもしれない。何はともあれ、まずは無事に発売されたことを喜び、これからしばらくのあいだ、ただひたすらに『グランツーリスモ』の世界を楽しみたい。
■筆者紹介 後手青木プロ
週刊ファミ通編集部の編集者。1997年にプレイステーションで『グランツーリスモ』が発売されて以来、シリーズとは13年の付き合いになる。いちばん好きなクルマは、アウトビアンキ A112 アバルト '79。
メーカー | ソニー・コンピュータエンタテインメント |
---|---|
対応機種 | プレイステーション3 |
発売日 | 2010年11月25日 |
価格 | 7980円[税込] |
ジャンル | シミュレーター / レース |
備考 | PlayStation Network対応、3D立体視対応、フェイストラッキング対応、初回限定生産版は、特製ブックレット、プレゼントカーのダウンロードコード同梱、『PlayStation3 GRAN TURISMO 5 RACING PACK』は35980円[税込]、開発:ポリフォニー・デジタル、プロデューサー:山内一典 |
Produced under license of Ferrari Spa. FERRARI, the PRANCING HORSE device, all associated logos and distinctive designs are trademarks of Ferrari Spa. The body designs of the Ferrari cars are protected as Ferrari property under design, trademark and trade dress regulations.
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